説明

基準電圧発生回路及びそれを用いた電源装置

【課題】温度依存性をもたない基準電圧を発生させる。
【解決手段】SOI層膜厚のみが異なることで互いにしきい値電圧が異なる2つの完全空乏型SOI−MOSFETMN1,MN2について、ソース及びボディを接地し、ゲート及びドレインを定電流源CCS1,CCS2とボルテージフォロア回路Amp1−1,1−2の入力端子に接続し、ボルテージフォロア回路Amp1−1,1−2の出力端子に第1抵抗R1−1,R1−2と第2抵抗R2−1,R2−2を直列に接続する。第2抵抗R1−2を接地し、第1抵抗R2−1と第2抵抗R2−1の間の端子を差動増幅器Amp2の非反転入力端子に接続する。第2抵抗R2−2を差動増幅器Amp2の出力端子に接続し、第1抵抗R1−2と第2抵抗R2−2の間の端子を差動増幅器Ampの反転入力端子に接続する。差動増幅器Amp2の出力電圧を基準電圧Vrefとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧発生回路及びそれを用いた電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば定電圧発生回路(ボルテージレギュレータ回路)等の電源装置は、電源電圧によらず一定の出力電圧を発生させるために基準電圧発生回路が必要となる。つまり電源電圧VDDが変動しても、その出力電圧変動を基準電圧と比較し、ドライバトランジスターをエラーアンプで制御することで出力電圧を一定に保っている。
【0003】
一般的に用いられる基準電圧発生回路として、エンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)とデプレッション型MOSFETを備え、デプレッション型MOSFETを電流源として用いたED型基準電圧発生回路がある(例えば特許文献1,2,3を参照。)。
【0004】
ED型基準電圧発生回路が出力する基準電圧は、MOSFETの温度特性に起因して変動してしまうため、エンハンスメント型MOSFETとデプレッション型MOSFETのチャネルサイズ比(L/W)を変更することによって、各MOSFETの利得係数(β=μ・Cox・(W/L))の温度特性を調整し、基準電圧が温度によらず一定になるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記手法では、異なる種類(エンハンスメント型とデプレッション型)のMOSFETの製造上のバラツキにより、調整できる範囲が限られており、必ずしも基準電圧の温度依存性をゼロにすることはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、温度依存性をもたない基準電圧を発生させることができる基準電圧発生回路及びそれを用いた電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる基準電圧発生回路は、SOI層膜厚のみが異なることで互いにしきい値電圧が異なる2つの完全空乏型SOI−MOSFETを備えている。
さらに、本発明の基準電圧発生回路は、各完全空乏型SOI−MOSFETについて、ソース及びボディを接地し、ゲート及びドレインを定電流源に接続し、上記ゲート及び上記ドレインをボルテージフォロア回路の入力端子に接続し、上記ボルテージフォロア回路の出力端子に第1抵抗と第2抵抗を直列に接続した回路を備えている。ここで、一方の上記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する上記ボルテージフォロア回路、上記第1抵抗及び上記第2抵抗は、他方の上記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する上記ボルテージフォロア回路、上記第1抵抗及び上記第2抵抗と同じ特性をもつ。
さらに、本発明の基準電圧発生回路は、しきい値電圧が高い方の上記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する上記第2抵抗の上記第1抵抗とは反対側の端子を接地し、かつ上記第1抵抗と上記第2抵抗の間の端子を差動増幅器の非反転入力端子に接続し、しきい値電圧が低い方の上記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する上記第2抵抗の上記第1抵抗とは反対側の端子を上記差動増幅器の出力端子に接続し、かつ上記第1抵抗と上記第2抵抗の間の端子を上記差動増幅器の反転入力端子に接続し、上記差動増幅器の出力電圧を基準電圧として出力する。
【0008】
完全空乏型SOI−MOSFETにおいては、BOX層があることで空乏層の拡がりが制限されるため、空乏層内の電荷量がSOI層膜厚に依存する。つまり、完全空乏型SOI−MOSFETのしきい値電圧は式(1)のように決定できる。
【0009】
【数1】

【0010】
式(1)で、φmsはゲート電極の仕事関数差、Qssはゲート酸化膜の界面順位、Coxはゲート酸化膜容量、2φFは強反転時の表面ポテンシャルの曲がり、qは電子の電荷量、Ndはチャネル領域の不純物濃度、tsはSOI層膜厚である。式(1)より、SOI層膜厚tsのみを変えることでしきい値電圧が変化することが分かる。このため、SOI層膜厚のみを変え、その他の製造工程を同じとすることで得られるMOSFETのしきい値電圧差を検出することで、温度依存性を排除することができる。
【0011】
本発明の基準電圧発生回路において、上記第1抵抗と上記第2抵抗は同じ抵抗値をもつようにすれば、2つの完全空乏型SOI−MOSFETのしきい値電圧差(ΔVth)を基準電圧として出力することができる。ただし、第1抵抗の抵抗値R1と第2抵抗の抵抗値R2は互いに異なっていてもよい。この場合、出力される基準電圧Vrefは、Vref=(R2/R1)(Vth1−Vth2)になる。
【0012】
本発明にかかる電源装置の一態様は、入力電圧を分割して分割電圧を供給するための分割抵抗回路と、基準電圧を供給するための基準電圧発生回路と、上記分割抵抗回路からの分割電圧と上記基準電圧発生回路からの基準電圧を比較するための比較回路をもつ電圧検出回路を備えた電源装置であって、上記基準電圧発生回路として本発明の基準電圧発生回路を備えているものである。
【0013】
本発明にかかる電源装置の他の態様は、入力電圧の出力を制御する出力ドライバと、出力電圧を分割して分割電圧を供給するための分割抵抗回路と、基準電圧を供給するための基準電圧発生回路と、上記分割抵抗回路からの分割電圧と上記基準電圧発生回路からの基準電圧を比較し、比較結果に応じて上記出力ドライバの動作を制御するための比較回路をもつ定電圧発生回路を備えた電源装置であって、上記基準電圧発生回路として本発明の基準電圧発生回路を備えているものである。
【0014】
本発明にかかる電源装置のさらに他の態様は、基準電圧発生回路からの基準電圧に基づいて動作する発振回路からの発振出力に基づく内臓スイッチの切替え動作によりコンデンサに電荷を充放電させることで電流を流すチャージポンプ方式のDC/DCコンバータを備えた電源装置であって、上記基準電圧発生回路として本発明の基準電圧発生回路を備えているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の基準電圧発生回路は、SOI層膜厚のみが異なることで互いにしきい値電圧が異なる2つの完全空乏型SOI−MOSFETのしきい値電圧差に応じた電圧を基準電圧として出力するので、温度依存性をもたない基準電圧を発生させることができる。
【0016】
本発明の基準電圧発生回路において、第1抵抗と第2抵抗は同じ抵抗値をもつようにすれば、2つの完全空乏型SOI−MOSFETのしきい値電圧差(ΔVth)を基準電圧として出力することができる。
【0017】
本発明にかかる電源装置の一態様では、分割抵抗回路と、基準電圧発生回路と、分割電圧と基準電圧を比較するための比較回路をもつ電圧検出回路を備えた電源装置において、上記基準電圧発生回路として本発明の基準電圧発生回路を備えているようにしたので、温度変化に対して基準電圧の変動が小さい本発明の基準電圧発生回路により、電圧検出能力の安定化及び精度の向上を図ることができる。
【0018】
本発明にかかる電源装置の他の態様では、出力ドライバと、分割抵抗回路と、基準電圧発生回路と、分割電圧と基準電圧を比較して比較結果に応じて上記出力ドライバの動作を制御するための比較回路をもつ定電圧発生回路を備えた電源装置において、上記基準電圧発生回路として本発明の基準電圧発生回路を備えているようにしたので、温度変化に対して基準電圧の変動が小さい本発明の基準電圧発生回路により、出力電圧の安定化及び精度の向上を図ることができる。
【0019】
本発明にかかる電源装置のさらに他の態様は、基準電圧発生回路からの基準電圧に基づいて動作する発振回路からの発振出力に基づく内臓スイッチの切替え動作によりコンデンサに電荷を充放電させることで電流を流すチャージポンプ方式のDC/DCコンバータを備えた電源装置において、上記基準電圧発生回路として本発明の基準電圧発生回路を備えているようにしたので、温度変化に対して基準電圧の変動が小さい本発明の基準電圧発生回路により、出力電圧の安定化及び精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】基準電圧発生回路の一実施例を説明するための回路図である。
【図2】本発明の基準電圧発生回路で基準電圧0.37Vに設定したときの温度依存性を示す図である。
【図3】同一のSOI基板上でSOI層膜厚が互いに異なる領域を形成する工程の一例を説明するための概略的な工程断面図である。
【図4】定電圧発生回路を備えた電源装置の一実施例を示す回路図である。
【図5】電圧検出回路を備えた電源装置の一実施例を示す回路図である。
【図6】反転型チャージポンプDC/DCコンバータを備えた電源装置の一実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、基準電圧発生回路の一実施例を説明するための回路図である。
SOI層膜厚のみが異なることで互いにしきい値電圧が異なる2つの完全空乏型SOI−NチャネルMOSFETMN1,MN2(以下、トランジスタMN1,MN2と称す。)が設けられている。トランジスタMN1のSOI層膜厚はトランジスタMN2のSOI層膜厚よりも厚く形成されている。トランジスタMN1のしきい値電圧Vth1は、トランジスタMN2のしきい値電圧Vth2よりも高い。この実施例では、トランジスタMN1,MN2について、基板バイアス効果によるしきい値電圧変動をなくすためにソース接地とした。また、SOI基板の支持基板は接地されている。
【0022】
トランジスタMN1について、ソース及びボディが接地され、ゲート及びドレインが定電流源CCS1に接続され、かつゲート及びドレインがボルテージフォロア回路Amp1−1の入力端子に接続されている。ボルテージフォロア回路Amp1−1の出力端子に第1抵抗R1−1と第2抵抗R2−1が直列に接続されている。
【0023】
トランジスタMN2について、ソース及びボディが接地され、ゲート及びドレインが定電流源CCS2に接続され、かつゲート及びドレインがボルテージフォロア回路Amp1−2の入力端子に接続されている。ボルテージフォロア回路Amp1−2の出力端子に第1抵抗R1−2と第2抵抗R2−2が直列に接続されている。
【0024】
ボルテージフォロア回路Amp1−1と1−2は同じ特性をもつ。第1抵抗R1−1とR1−2は同じ特性をもつ。第2抵抗R2−1とR2−2は同じ特性をもつ。定電流源CCS1,CCS2には電源電圧VDDが供給される。定電流源CCS1,CCS2は例えばデプレッション型トランジスタによって構成される。
【0025】
第2抵抗R2−1の第1抵抗R1−1とは反対側の端子は接地されている。第1抵抗R1−1と第2抵抗R2−1の間の端子は差動増幅器Amp2の非反転入力端子(+)に接続しされている。
第2抵抗R2−2の第1抵抗R1−2とは反対側の端子は差動増幅器Amp2の出力端子に接続されている。第1抵抗R1−2と第2抵抗R2−2の間の端子は差動増幅器のAmp2の反転入力端子(−)に接続されている。
【0026】
この実施例の基準電圧発生回路は、差動増幅器Amp2の出力電圧を基準電圧Vrefとして出力する。
この実施例において、トランジスタMN1,MN2以外の各MOSトランジスタは完全空乏型で動作しても部分空乏型で動作してもよい。
【0027】
トランジスタMN1のゲートとドレインが短絡され、ドレインと電源電圧VDDの間に設けられ定電流源CCS1から定電流が流されることで、トランジスタMN1のゲートとソースの間にトランジスタMN1のしきい値電圧Vth1が発生する。この出力電圧がボルテージフォロワ回路Amp1−1に入力されると、ボルテージフォロワ回路Amp1はしきい値電圧Vth1を出力する。
トランジスタMN2についても同様にして、ボルテージフォロワ回路Amp1−2からトランジスタMN2のしきい値電圧Vth2が出力される。
【0028】
ボルテージフォロワ回路Amp1の出力は、第1抵抗R1−1と第2抵抗R2−1で分圧されて、差動増幅器Amp2の非反転入力端子(+)に入力される。ボルテージフォロワ回路Amp1−2の出力は、第1抵抗R1−2と第2抵抗R2−2で分圧されて、差動増幅器Amp2の反転入力端子(−)に入力される。差動増幅器Amp3は2つの入力端子が同電位になるように動作するため、抵抗R1−1、R2−1間の電圧と抵抗R1−2、R2−2間の電圧が等しくなるような電圧を出力する。すなわち、差動増幅器Amp2には電流が流れ込まないため、第1抵抗R1−1,R1−2に流れる電流はそのまま第2抵抗R2−1,R2−2に流れる。第1抵抗R1−1,R1−2の抵抗値R1と第2抵抗R2−1,R2−2の抵抗値R2を同じ抵抗値に設定すれば、差動増幅器Amp2の反転入力端子(−)に接続された第1抵抗R1−2にVth2−Vth1/2だけの電圧がかかり、それに応じた電流が流れる。その電流はそのまま第2抵抗R2−2へ流れるため、差動増幅器Amp2の出力端子にはさらにVth1/2の電圧からVth2−Vth1/2の電圧分だけ降圧された、トランジスタMN1とMN2のしきい値電圧差分の電圧(Vth1−Vth2=ΔVth)が発生する。
【0029】
このとき、例えば、トランジスタMN1のSOI層膜厚を600Å(オングストローム)、トランジスタMN2のSOI層膜厚を400Åとすれば、しきい値電圧差ΔVthとして基準電圧0.1〜0.4V(ボルト)程度が得られる。この値は、トランジスタNM1,MN2のチャネル領域の不純物濃度を、トランジスタNM1,MN2が完全空乏型SOI−MOSFETとして動作する範囲で調整することで、0.1V〜0.4V程度まで変動する。これに対し、本発明の基準電圧発生回路は、しきい値電圧差ΔVthを検出しており、温度依存性は無いので、しきい値電圧差ΔVthをある値に設定しておけば温度変化や電源電圧の変動によらず常に一定の基準電圧Vrefを得ることができる。
【0030】
図2は、式(1)に基づいて計算によって求めた、本発明の基準電圧発生回路で基準電圧0.37Vに設定したときの温度依存性を示す図である。左縦軸はしきい値電圧Vth1,Vth2(単位はV)、右縦軸はしきい値電圧差ΔVth(単位はV)、横軸は温度(単位はK(ケルビン))を示す。
トランジスタNM1,NM2のしきい値電圧Vth1,Vth2は、温度変化によって変動しているが、トランジスタNM1,NM2の温度特性は同じなので、しきい値電圧Vth1,Vth2は温度変化によって同じように変動する。これにより、しきい値電圧Vth1とVth2のしきい値電圧差ΔVthは温度変化によらずほぼ一定になり、温度変化で変動しない基準電圧Vrefが得られる。
【0031】
図3は、同一のSOI基板上でSOI層膜厚が互いに異なる領域を形成する工程の一例を説明するための概略的な工程断面図である。図3中のかっこ数字は以下に説明する工程(1)〜(4)に対応している。
(1)支持基板1上に、埋込み酸化膜2が3000Åの膜厚で形成され、さらにその上にP型SOI層3が700Åの膜厚で形成されたP型SOI基板を用いる。
【0032】
(2)熱酸化処理を施して、SOI層3の表面に膜厚が100Åのバッファ酸化膜4を形成する。CVD(chemical vapor deposition)方により、バッファ酸化膜4上に膜厚が300Åの窒化シリコン膜5を形成する。写真製版技術及びウェットエッチング技術により、SOI層3の膜厚をより薄く加工する領域の窒化シリコン膜5及びバッファ酸化膜4を除去する。ここでのエッチングはドライエッチングであってもよい。
【0033】
(3)バッファ酸化膜4及び窒化シリコン膜5をマスクにして、例えば1000℃の条件でウェット酸化処理を施して、バッファ酸化膜4及び窒化シリコン膜5で覆われていない領域のSOI層3表面に膜厚が400Åの酸化シリコン膜6を形成する。このとき、SOI層3は垂直方向で表面から200Åの膜厚だけ酸化される。
【0034】
(4)ウェットエッチング技術により、窒化シリコン膜5、バッファ酸化膜4及び酸化シリコン膜6を全面除去する。これにより、SOI層膜厚が600Åの領域とSOI膜厚が400Åの領域を作り分けることができる。
その後は、通常のMOSFET製造方法と同様にMOSFETを作成することで、トランジスタMN1,MN2を作成することができる。
なお、同一のSOI基板上でSOI層膜厚が互いに異なる領域を形成する工程は図3を参照して説明した工程に限定されるものではない。例えば、ドライエッチング技術やウェットエッチング技術により、SOI層の一部の領域を薄膜化することにより、同一のSOI基板上でSOI層膜厚が互いに異なる領域を形成することも可能である。
【0035】
本発明の基準電圧発生回路は、例えば電源装置に適用することができる。以下に、本発明の基準電圧発生回路を備えた電源装置の実施例について説明する。ただし、本発明の基準電圧発生回路の用途は電源装置に限定されるものではない。
【0036】
図4は定電圧発生回路を備えた電源装置の一実施例を示す回路図である。
直流電源7からの電源を負荷9に安定して供給すべく、定電圧発生回路11が設けられている。定電圧発生回路11は、直流電源7が接続される入力端子(Vbat)13、基準電圧発生回路(Vref)15、差動増幅器(比較回路)17、出力ドライバを構成するPチャネルMOSトランジスタ(以下、PMOSと略記する)19、分割抵抗素子R1,R2及び出力端子(Vout)21を備えている。基準電圧発生回路15として、本発明の基準電圧発生回路を備えている。
【0037】
定電圧発生回路11の差動増幅器17では、出力端子がPMOS19のゲート電極に接続され、反転入力端子(−)に基準電圧発生回路15から基準電圧Vrefが印加され、非反転入力端子(+)に出力電圧Voutを抵抗素子R1とR2で分割した電圧が印加され、抵抗素子R1,R2の分割電圧が基準電圧Vrefに等しくなるように制御される。
この実施例では、基準電圧発生回路15として本発明の基準電圧発生回路を備えているので、プロセス変動や温度変化などの外的不安定要因に対して基準電圧の変動が小さい本発明の基準電圧発生回路により、出力電圧の安定化及び精度の向上を図ることができる。
【0038】
図5は、電圧検出回路を備えた電源装置の一実施例を示す回路図である。
電圧検出回路23において、17は差動増幅器で、その反転入力端子(−)に基準電圧発生回路15が接続され、基準電圧Vrefが印加される。入力端子(Vsens)25から入力される測定すべき端子の電圧が分割抵抗素子R1とR2によって分割されて差動増幅器17の非反転入力端子(+)に入力される。差動増幅器17の出力は出力端子(Vout)27を介して外部に出力される。基準電圧発生回路15として、本発明の基準電圧発生回路を備えている。
【0039】
電圧検出回路23では、測定すべき端子の電圧が高く、分割抵抗素子R1とR2により分割された電圧が基準電圧Vrefよりも高いときは差動増幅器17の出力がHレベルを維持し、測定すべき端子の電圧が降下してきて分割抵抗素子R1とR2により分割された電圧が基準電圧Vref以下になってくると差動増幅器17の出力がLレベルになる。
この実施例では、基準電圧発生回路15として本発明の基準電圧発生回路を備えているので、プロセス変動や温度変化などの外的不安定要因に対して基準電圧の変動が小さい本発明の基準電圧発生回路により、電圧検出能力の安定化及び精度の向上を図ることができる。
【0040】
図6は、反転型チャージポンプDC/DCコンバータを備えた電源装置の一実施例を示す回路図である。
回路には、入力端子(Vin)29、出力端子(Vout、反転出力)31、GND端子(GND)33、ポンプ容量正側端子(CP+)35とポンプ容量負側端子(CP−)37が設けられている。ポンプ容量正側端子35とポンプ容量負側端子37の間には、外付け部品のコンデンサ(図示は省略)が接続されている。
【0041】
内部には、入力端子29とGND端子33の間に、順にPMOSトランジスタ39とNMOSトランジスタ41が設けられている。PMOSトランジスタ39とNMOSトランジスタ41の間にポンプ容量正側端子35が接続されている。NMOSトランジスタ41とGND端子33の間はGND電位43に接続されている。
GND電位43と出力端子31の間に、順にNMOSトランジスタ45,47が接続されている。NMOSトランジスタ45,47の間にポンプ容量負側端子37が接続されている。
【0042】
基準電圧発生回路(Vref)49からの基準電圧に基づいて、入力端子29と同じ大きさの電圧(Vin電圧)及びGND端子33と同じ大きさの電圧(GND電圧)を交互に発振する発振回路(OSC)51が設けられている。基準電圧発生回路15として本発明の基準電圧発生回路を備えている。発振回路51の出力端子は、NMOSトランジスタ41,47のゲート電極に直接接続されており、NMOSトランジスタ45のゲート電極にインバータ53を介して接続されており、PMOSトランジスタ39のゲート電極にインバータ53及び55を介して接続されている。
【0043】
この反転型チャージポンプDC/DCコンバータは、発振回路51を通して4つのトランジスタ39,41,45,47のゲート電極に電圧を与えてスイッチングさせ、ポンプ容量正側端子35とポンプ容量負側端子37の間に接続されたコンデンサを充放電させることにより電流を流し、出力端子31に入力電圧29の反転電圧が出力される仕組みになっている。
【0044】
発振回路51からGND電圧を発したとき、PMOSトランジスタ39とNMOSトランジスタ45がオンし、他の2つのNMOSトランジスタ41,47はオフになる。このとき、ポンプ容量正側端子35とポンプ容量負側端子37の間に接続されたコンデンサに電荷がたまる。
発振回路51からVin電圧が発せられると、PMOSトランジスタ39とNMOSトランジスタ45はオフになり、他の2つのNMOSトランジスタ41,47はオンする。このとき、電荷をためたコンデンサは放電するが、出力端子31がGND端子33よりも低い電位にされているので、入力電圧でたまった電荷とは反転電圧が出力端子31から出力される。
上記の動作が繰り返されることにより、入力電圧の反転電圧で電流が流れ続ける。
【0045】
この実施例では、基準電圧発生回路15として本発明の基準電圧発生回路を備えているようにしたので、プロセス変動や温度変化などの外的不安定要因に対して基準電圧の変動が小さい本発明の基準電圧発生回路により、出力電圧の安定化及び精度の向上を図ることができる。
【0046】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例は完全空乏型SOI−MOSFETとしてNチャネルMOSトランジスタを用いているが、完全空乏型SOI−MOSFETはPチャネルMOSトランジスタであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、基準電圧発生回路及びそれを用いる電子回路に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
Amp1−1,1−2 ボルテージフォロワ回路
Amp2 差動増幅器
CCS1,CCS2 定電流源
MN1 トランジスタ(しきい値電圧が高い方の完全空乏型SOI−MOSFET)
MN2 トランジスタ(しきい値電圧が低い方の完全空乏型SOI−MOSFET)
R1−1,R1−2 第1抵抗
R2−1,R2−2 第2抵抗
Vref 基準電圧
Vth1 トランジスタMN1のしきい値電圧
Vth2 トランジスタMN2のしきい値電圧
ΔVth しきい値電圧Vth1とVth2のしきい値電圧差
7 直流電源
9 負荷
11 定電圧発生回路
13 入力端子
15 基準電圧発生回路
17 演算増幅器
19 PチャネルMOSトランジスタ
21 出力端子
23 電圧検出回路
25 入力端子
27 出力端子
29 入力端子
31 出力端子
33 GND端子
35 ポンプ容量正側端子
37 ポンプ容量負側端子
39 PMOSトランジスタ
41,45,47 NMOSトランジスタ
43 GND電位
49 基準電圧発生回路
51 発振回路
53,55 インバータ
Q1 NMOSデプレッショントランジスタ
Q2 NMOSエンハンスメントトランジスタ
Q3 PMOSエンハンスメントトランジスタ
Q4 PMOSデプレッショントランジスタ
R1,R2 分割抵抗素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0049】
【特許文献1】特公平4?65546号公報
【特許文献2】特開平09−326469号公報
【特許文献3】特開2005?340337号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SOI層膜厚のみが異なることで互いにしきい値電圧が異なる2つの完全空乏型SOI−MOSFETを備え、
各完全空乏型SOI−MOSFETについて、ソース及びボディを接地し、ゲート及びドレインを定電流源に接続し、前記ゲート及び前記ドレインをボルテージフォロア回路の入力端子に接続し、前記ボルテージフォロア回路の出力端子に第1抵抗と第2抵抗を直列に接続し、
一方の前記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する前記ボルテージフォロア回路、前記第1抵抗及び前記第2抵抗は、他方の前記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する前記ボルテージフォロア回路、前記第1抵抗及び前記第2抵抗と同じ特性をもち、
しきい値電圧が高い方の前記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する前記第2抵抗の前記第1抵抗とは反対側の端子を接地し、かつ前記第1抵抗と前記第2抵抗の間の端子を差動増幅器の非反転入力端子に接続し、
しきい値電圧が低い方の前記完全空乏型SOI−MOSFETに対応する前記第2抵抗の前記第1抵抗とは反対側の端子を前記差動増幅器の出力端子に接続し、かつ前記第1抵抗と前記第2抵抗の間の端子を前記差動増幅器の反転入力端子に接続し、
前記差動増幅器の出力電圧を基準電圧として出力する基準電圧発生回路。
【請求項2】
前記第1抵抗と前記第2抵抗は同じ抵抗値をもつ請求項1に記載の基準電圧発生回路。
【請求項3】
入力電圧を分割して分割電圧を供給するための分割抵抗回路と、基準電圧を供給するための基準電圧発生回路と、前記分割抵抗回路からの分割電圧と前記基準電圧発生回路からの基準電圧を比較するための比較回路をもつ電圧検出回路を備えた電源装置において、
前記基準電圧発生回路として請求項1又は2に記載の基準電圧発生回路を備えていることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
入力電圧の出力を制御する出力ドライバと、出力電圧を分割して分割電圧を供給するための分割抵抗回路と、基準電圧を供給するための基準電圧発生回路と、前記分割抵抗回路からの分割電圧と前記基準電圧発生回路からの基準電圧を比較し、比較結果に応じて前記出力ドライバの動作を制御するための比較回路をもつ定電圧発生回路を備えた電源装置において、
前記基準電圧発生回路として請求項1又は2に記載の基準電圧発生回路を備えていることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
基準電圧発生回路からの基準電圧に基づいて動作する発振回路からの発振出力に基づく内臓スイッチの切替え動作によりコンデンサに電荷を充放電させることで電流を流すチャージポンプ方式のDC/DCコンバータを備えた電源装置において、
前記基準電圧発生回路として請求項1又は2に記載の基準電圧発生回路を備えていることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−59097(P2012−59097A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202695(P2010−202695)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】