説明

塗布処理方法、塗布処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体

【課題】レジスト液などの塗布液をスピンコーティングにより塗布するにあたって、塗布液の消費量を抑え、かつ塗布膜の膜厚について高い面内均一性を得る。
【解決手段】先ずウェハWの中心部に溶剤S1を供給し、ウェハWの表面をプリウェットする。続いて第1の工程において、ウェハWを第1の回転数まで加速回転させ、回転中のウェハWの中心部へレジスト液Rを供給する。その後第2の工程において、ウェハWを第2の回転数まで減速回転させ、回転中のウェハWの周辺部に溶剤S2を供給する。そして第2の工程でレジスト液RをウェハWの端まで拡散させる。その後第3の工程において、ウェハWを第2の回転数よりも高い第3の回転数まで加速させ、ウェハW上のレジスト液Rを乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板の塗布処理方法、塗布処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などが順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成されている。
【0003】
上述のレジスト塗布処理では、回転中のウェハの表面上の中心部にノズルからレジスト液を供給し、遠心力によりウェハ上でレジスト液を拡散することによってウェハの表面にレジスト液を塗布する、いわゆるスピン塗布法が多く用いられている。また、このスピン塗布法において、レジスト液をより均一に塗布する方法として、例えばウェハ上にレジスト液の溶剤を供給してプリウェットした後、ウェハを第1の回転数で高速回転させて、この回転中のウェハにレジスト液を供給し、続いてウェハの回転を第2の回転数まで一旦減速して、ウェハ上のレジスト液を平坦化し、その後ウェハの回転を第3の回転数まで再び上げて、ウェハ上のレジスト液を乾燥させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−260717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体デバイスのパターンの微細化と薄膜化とが要求されることから、そのようなフォトリソグラフィーに適応できるレジスト液が種々開発されているが、レジスト液に厳しい物性が要求されることから、レジスト液のコストが以前に増して高騰しつつあり、現状ではレジスト液は極めて高価のものとなっている。このためレジスト液の消費量をより一層抑えなければならない状況にある。
【0006】
しかしながら、レジスト液の供給量を少量にした場合に、上述の塗布方法を用いると、ウェハを第1の回転数で回転させる間にレジスト液が乾燥して流動性が低くなるため、レジスト液はウェハの端まで完全に拡がらないことがわかった。そしてこの場合、次の第2及び第3の回転数によって、レジスト液がかろうじてウェハ全面に拡がることが確認されている。このような場合、第1の回転数の回転により拡散するレジスト液と、第2及び第3の回転数の回転により拡散するレジスト液との膜厚が異なり、同心円状にむらが生じることがわかった。例えば直径が300mmのウェハの場合、半径が120mmとなる円周を境に、外側と内側ではレジスト膜の膜厚が異なり、膜厚の面内均一性が低くなっている。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、レジスト液などの塗布液をスピンコーティングにより塗布するにあたって、塗布液の消費量を抑え、かつ塗布膜の膜厚について高い面内均一性を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板に塗布液の溶剤を供給して基板表面を溶剤で被覆した後に、当該基板に対して塗布液を塗布する方法であって、前記溶剤を供給した後、基板を第1の回転数まで加速回転させ、基板表面上の中心部に塗布液を供給する第1の工程と、その後、基板を前記第1の回転数よりも遅い第2の回転数まで減速させ、当該第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、その後、基板を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させ、当該第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、を有し、前記第2の工程時に、前記基板表面上の中心部に供給された塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給することを特徴としている。
【0009】
例えば塗布液の供給量を少量にした場合、第1の工程の前に基板表面のプリウェット用に供給した溶剤が乾燥することにより、第1の工程時に塗布液が基板の端まで拡がらない場合でも、本発明によれば、第2の工程時に、塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して溶剤を供給しているので、この溶剤によって塗布液の流動性が向上し、塗布液を基板の端まで円滑に拡げることができる。また、第2の工程において、ウェハの低速回転中に溶剤が供給されるので、この溶剤が乾燥しない。そうすると、基板上に形成される塗布膜に従来のように同心円状のむらが発生せず、塗布膜の膜厚の面内均一性が高くなる。すなわち、少量の塗布液でありながら膜厚の面内均一性の高い塗布処理を行うことができる。
【0010】
前記第1の工程時にも、前記塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給してもよい。これによって、第1の工程中に塗布液をより広い範囲に拡げることができる。その結果、より少量の塗布液で膜厚の面内均一性の高い塗布処理を行うことができる。
【0011】
別の観点による本発明は、基板に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、基板に所定のタイミングで塗布液を供給する塗布液ノズルと、基板に所定のタイミングで塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルと、基板を保持して基板を所定の速度で回転させる回転保持部と、前記溶剤ノズルにより前記溶剤を基板に供給した後、前記回転保持部により基板を第1の回転数まで基板を第1の回転数まで加速回転させ、前記塗布液ノズルにより基板表面上の中心部に塗布液を供給する第1の工程と、その後、基板を前記第1の回転数よりも遅い第2の回転数まで減速させ、当該第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、その後、基板を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させ、当該第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、を実行し、前記第2の工程時に、前記基板表面上の中心部に供給された塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給するように前記塗布液ノズル、前記溶剤ノズル及び前記回転保持部の動作を制御する制御部と、を有することを特徴としている。
【0012】
前記制御部は、前記第1の工程時にも、前記塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給するように前記溶剤ノズルの動作を制御してもよい。
【0013】
また別の観点による本発明によれば、前記の塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0014】
さらに別の観点による本発明によれば、前記のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板表面上の周辺部を被覆した溶剤によって、基板に供給される塗布液が円滑に基板の端まで拡がるため、塗布液の供給量を少量にした場合でも、基板上に形成される塗布膜の膜厚の面内均一性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる塗布処理方法を実施するための塗布処理装置としてのレジスト塗布装置を搭載した、塗布現像処理システム1の構成の概略を示す平面図であり、図2は、塗布現像処理システム1の正面図であり、図3は、塗布現像処理システム1の背面図である。
【0017】
塗布現像処理システム1は、図1に示すように例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部から塗布現像処理システム1に対して搬入出したり、カセットCに対してウェハWを搬入出したりするカセットステーション2と、フォトリソグラフィー工程の中で枚葉式に所定の処理を施す複数の各種処理装置を多段に配置している処理ステーション3と、この処理ステーション3に隣接して設けられている露光装置(図示せず)との間でウェハWの受け渡しをするインターフェイスステーション4とを一体に接続した構成を有している。
【0018】
カセットステーション2には、カセット載置台5が設けられ、当該カセット載置台5は、複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在になっている。カセットステーション2には、搬送路6上をX方向に向かって移動可能なウェハ搬送体7が設けられている。ウェハ搬送体7は、カセットCに収容されたウェハWのウェハ配列方向(Z方向;鉛直方向)にも移動自在であり、X方向に配列された各カセットC内のウェハWに対して選択的にアクセスできる。
【0019】
ウェハ搬送体7は、Z軸周りのθ方向に回転可能であり、後述する処理ステーション3側の第3の処理装置群G3に属する温度調節装置60やウェハWの受け渡しを行うためのトランジション装置61に対してもアクセスできる。
【0020】
カセットステーション2に隣接する処理ステーション3は、複数の処理装置が多段に配置された、例えば5つの処理装置群G1〜G5を備えている。処理ステーション3のX方向負方向(図1中の下方向)側には、カセットステーション2側から第1の処理装置群G1、第2の処理装置群G2が順に配置されている。処理ステーション3のX方向正方向(図1中の上方向)側には、カセットステーション2側から第3の処理装置群G3、第4の処理装置群G4及び第5の処理装置群G5が順に配置されている。第3の処理装置群G3と第4の処理装置群G4の間には、第1の搬送装置A1が設けられており、第1の搬送装置A1の内部には、ウェハWを支持して搬送する第1の搬送アーム10が設けられている。第1の搬送アーム10は、第1の処理装置群G1、第3の処理装置群G3及び第4の処理装置群G4内の各処理装置に選択的にアクセスしてウェハWを搬送できる。第4の処理装置群G4と第5の処理装置群G5の間には、第2の搬送装置A2が設けられており、第2の搬送装置A2の内部には、ウェハWを支持して搬送する第2の搬送アーム11が設けられている。第2の搬送アーム11は、第2の処理装置群G2、第4の処理装置群G4及び第5の処理装置群G5内の各処理装置に選択的にアクセスしてウェハWを搬送できる。
【0021】
図2に示すように第1の処理装置群G1には、ウェハWに所定の液体を供給して処理を行う液処理装置、例えばウェハWに塗布液としてのレジスト液を塗布するレジスト塗布装置20、21、22、露光処理時の光の反射を防止する反射防止膜を形成するボトムコーティング装置23、24が下から順に5段に重ねられている。第2の処理装置群G2には、液処理装置、例えばウェハWに現像液を供給して現像処理する現像処理装置30〜34が下から順に5段に重ねられている。また、第1の処理装置群G1及び第2の処理装置群G2の最下段には、各処理装置群G1、G2内の液処理装置に各種処理液を供給するためのケミカル室40、41がそれぞれ設けられている。
【0022】
図3に示すように第3の処理装置群G3には、温度調節装置60、トランジション装置61、精度の高い温度管理下でウェハWを温度調節する高精度温度調節装置62〜64及びウェハWを高温で加熱処理する高温度熱処理装置65〜68が下から順に9段に重ねられている。
【0023】
第4の処理装置群G4には、例えば高精度温度調節装置70、レジスト塗布処理後のウェハWを加熱処理するプリベーキング装置71〜74及び現像処理後のウェハWを加熱処理するポストベーキング装置75〜79が下から順に10段に重ねられている。
【0024】
第5の処理装置群G5には、ウェハWを熱処理する複数の熱処理装置、例えば高精度温度調節装置80〜83、ポストエクスポージャーベーキング装置84〜89が下から順に10段に重ねられている。
【0025】
図1に示すように第1の搬送装置A1のX方向正方向側には、複数の処理装置が配置されており、例えば図3に示すようにウェハWを疎水化処理するためのアドヒージョン装置90、91、ウェハWを加熱する加熱装置92、93が下から順に4段に重ねられている。図1に示すように第2の搬送装置A2のX方向正方向側には、例えばウェハWのエッジ部のみを選択的に露光する周辺露光装置94が配置されている。
【0026】
インターフェイスステーション4には、例えば図1に示すようにX方向に向けて延伸する搬送路100上を移動するウェハ搬送体101と、バッファカセット102が設けられている。ウェハ搬送体101は、Z方向に移動可能でかつθ方向にも回転可能であり、インターフェイスステーション4に隣接した露光装置(図示せず)と、バッファカセット102及び第5の処理装置群G5に対してアクセスしてウェハWを搬送できる。
【0027】
次に、上述のレジスト塗布装置20〜22の構成について説明する。図4は、レジスト塗布装置20の構成の概略を示す縦断面の説明図であり、図5は、レジスト塗布装置20の構成の概略を示す横断面の説明図である。
【0028】
レジスト塗布装置20は、例えば図4に示すように処理容器120を有し、その処理容器120内の中央部には、ウェハWを保持して回転させる回転保持部としてのスピンチャック130が設けられている。スピンチャック130は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する吸引口(図示せず)が設けられている。この吸引口からの吸引により、ウェハWをスピンチャック130上に吸着保持できる。
【0029】
スピンチャック130は、例えばモータなどを備えたチャック駆動機構131を有し、そのチャック駆動機構131により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動機構131には、シリンダなどの昇降駆動源が設けられており、スピンチャック130は上下動可能である。
【0030】
スピンチャック130の周囲には、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するカップ132が設けられている。カップ132の下面には、回収した液体を排出する排出管133と、カップ132内の雰囲気を排気する排気管134が接続されている。
【0031】
図5に示すようにカップ132のX方向負方向(図5の下方向)側には、Y方向(図5の左右方向)に沿って延伸するレール140が形成されている。レール140は、例えばカップ132のY方向負方向(図5の左方向)側の外方からY方向正方向(図5の右方向)側の外方まで形成されている。レール140には、例えば二本のアーム141、142が取り付けられている。
【0032】
第1のアーム141には、図4及び図5に示すように塗布液としてのレジスト液を供給するレジスト液ノズル143が支持されている。第1のアーム141は、図5に示すノズル駆動部144により、レール140上を移動自在である。これにより、レジスト液ノズル143は、カップ132のY方向正方向側の外方に設置された待機部145からカップ132内のウェハWの中心部上方まで移動でき、さらに当該ウェハWの表面上をウェハWの径方向に移動できる。また、第1のアーム141は、ノズル駆動部144によって昇降自在であり、レジスト液ノズル143の高さを調整できる。
【0033】
レジスト液ノズル143には、図4に示すように、レジスト液供給源146に連通する供給管147が接続されている。供給管147には、レジスト液の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群148が設けられている。
【0034】
第2のアーム142には、レジスト液の溶剤、例えばシンナーを供給する溶剤ノズル150が支持されている。第2のアーム142は、図5に示すノズル駆動部151によってレール140上を移動自在であり、溶剤ノズル150を、カップ132のY方向負方向側の外方に設けられた待機部152からカップ132内のウェハWの中心部上方まで移動させることができる。また、ノズル駆動部151によって、第2のアーム142は昇降自在であり、溶剤ノズル150の高さを調節できる。
【0035】
溶剤ノズル150には、図4に示すように溶剤供給源153に連通する供給管154が接続されている。供給管154には、溶剤の流れを制御するバルブや流量調節部等を含む供給機器群155が設けられている。なお、以上の構成では、レジスト液を供給するレジスト液ノズル143と溶剤を供給する溶剤ノズル150が別々のアームに支持されていたが、同じアームに支持され、そのアームの移動の制御により、レジスト液ノズル143と溶剤ノズル150の移動と供給タイミングを制御してもよい。
【0036】
上述のスピンチャック130の回転動作と上下動作、ノズル駆動部144によるレジスト液ノズル143の移動動作、供給機器群148によるレジスト液ノズル143のレジスト液の供給動作、ノズル駆動部151による溶剤ノズル150の移動動作、供給機器群155による溶剤ノズル150の溶剤の供給動作などの駆動系の動作は、制御部160により制御されている。制御部160は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、例えばメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、レジスト塗布装置20におけるレジスト塗布処理を実現できる。なお、レジスト塗布装置20におけるレジスト塗布処理を実現するための各種プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどの記憶媒体Hに記憶されていたものであって、その記憶媒体Hから制御部160にインストールされたものが用いられている。
【0037】
なお、レジスト塗布装置21、22の構成は、上述のレジスト塗布装置20と同じであるので、説明を省略する。
【0038】
次に、以上のように構成されたレジスト塗布装置20で行われる塗布処理プロセスを、塗布現像処理システム1全体で行われるウェハ処理のプロセスと共に説明する。
【0039】
先ず、ウェハ搬送体7によって、カセット載置台5上のカセットC内からウェハWが一枚取り出され、第3の処理装置群G3の温度調節装置60に搬送される。温度調節装置60に搬送されたウェハWは、所定温度に温度調節され、その後第1の搬送装置10によってボトムコーティング装置23に搬送され、反射防止膜が形成される。反射防止膜が形成されたウェハWは、第1の搬送装置10によって加熱装置92、高温度熱処理装置65、高精度温度調節装置70に順次搬送され、各装置で所定の処理が施される。その後ウェハWは、レジスト塗布装置20に搬送される。
【0040】
図6は、レジスト塗布装置20における塗布処理プロセスの各工程におけるウェハWの回転数のプロファイル(レシピ)を示し、図7は、図6に示した各タイミングにおけるウェハ表面上の液膜の状態を模式的に示している。なお図7における各プロセスの時間の長さは、技術の理解の容易さを優先させるため、必ずしも実際の時間の長さに対応していない。
【0041】
レジスト塗布装置20に搬入されたウェハWは、先ず、スピンチャック130に吸着保持される。続いて第2のアーム142により待機部152の溶剤ノズル150がウェハWの中心部の上方まで移動する。次に、図6に示すようにウェハWが停止している状態で、溶剤ノズル150から例えば2.5mlの溶剤が供給され、ウェハWの中心部に溶剤が供給される。その後、チャック駆動機構131を制御してスピンチャック130によりウェハWを回転させ、その回転数を例えば1000rpmまで上昇させる。このウェハWの回転により、図7(i)に示すように、ウェハWの中心部に供給された溶剤S1は周辺部に向かって拡げられ、すなわちプリウェットが行われ、ウェハWの表面が溶剤S1で濡れた状態になる。そしてこのように溶剤が拡散している間に、溶剤ノズル150がウェハWの中心部上方から移動し、第1のアーム141により待機部145のレジスト液ノズル143がウェハWの中心部上方まで移動する。
【0042】
その後、例えば図6に示すようにウェハWの回転数を第1の回転数である例えば2200rpmまで加速させ、その後第1の回転数でウェハWを回転させる。このウェハWの回転数が1000rpmから第1の回転数まで加速され、ウェハWを第1の回転数で回転させる工程が本発明における第1の工程である。そして第1の工程において、図6及び図7(ii)に示すように、レジスト液ノズル143からウェハWの中心部にレジスト液を例えば0.5ml供給する。供給されたレジスト液Rは、ウェハWの回転によりウェハW上を拡散する。しかしながら、この第1の工程において、供給されるレジスト液Rを少量にすると、レジスト液Rが乾燥して流動性が低くなるため、レジスト液はウェハWの全面に拡がらない(図7(iii))。
【0043】
第1の工程が終了すると、図6に示すようにウェハWの回転数を第2の回転数である例えば500rpmまで減速させる。そして第2の工程中にウェハWが第2の回転数で回転中に、ウェハW上のレジスト液Rは均されて平坦化される。このウェハWの回転数が第1の回転数から第2の回転数まで減速され、ウェハWを第2の回転数で回転させる工程が本発明における第2の工程である。
【0044】
この第2の工程の直前に、レジスト液ノズル143をウェハWの周辺部上方へ移動させる。そして第2の工程において、図6及び図7(iv)に示すように溶剤ノズル150からウェハWの周辺部に例えば1.0mlの溶剤S2を供給する。このとき、溶剤S2はレジスト液Rが拡散していないウェハWの周辺部に対して供給される。この溶剤S2によってレジスト液Rの流動性が向上し、レジスト液RはウェハWの周辺部を拡散する。
【0045】
第2の工程が終了すると、図6に示すようにウェハWの回転数を例えば第1の回転数よりも低い第3の回転数である例えば1400rpmまで加速し、その後第3の回転数でウェハWを回転させる。このウェハWの回転数が第2の回転数から第3の回転数まで加速され、ウェハWを第3の回転数で回転させる工程が本発明における第3の工程である。そして第3の工程におけるウェハWの回転により、図7(v)に示すようにレジスト液RがウェハWの端までむらなく円滑に拡散し、その膜厚が調整される。そしてウェハWの全面に拡散したレジスト液Rは乾燥される。
【0046】
ウェハW上のレジスト液Rが乾燥した後、ウェハWの回転が停止されて、スピンチャック130上からウェハWが搬出されて、一連のレジスト塗布処理が終了する。
【0047】
レジスト塗布処理後、ウェハWは第1の搬送アーム10によってプリベーキング装置71に搬送され、加熱処理が施される。続いて第2の搬送アーム11によって周辺露光装置94、高精度温度調節装置83に順次搬送されて、各装置において所定の処理が施される。その後、インターフェイスステーション4のウェハ搬送体101によって露光装置(図示せず)に搬送され、ウェハW上のレジスト膜に所定のパターンが露光される。露光処理の終了したウェハWは、ウェハ搬送体101によってポストエクスポージャーベーキング装置84に搬送され、所定の処理が施される。
【0048】
ポストエクスポージャーベーキング装置84における熱処理が終了すると、ウェハWは第2の搬送アーム11によって高精度温度調節装置81に搬送されて温度調節され、その後現像処理装置30に搬送され、ウェハW上に現像処理が施され、レジスト膜にパターンが形成される。その後ウェハWは、第2の搬送アーム11によってポストベーキング装置75に搬送され、加熱処理が施された後、高精度温度調節装置63に搬送され温度調節される。そしてウェハWは、第1の搬送アーム10によってトランジション装置61に搬送され、ウェハ搬送体7によってカセットCに戻されて一連のフォトリソグラフィー工程が終了する。
【0049】
以上の実施の形態によれば、例えばレジスト液Rの供給量を少量にした場合、第1の工程の前にプリウェット用に供給した溶剤S1が乾燥するために、第1の工程でレジスト液RがウェハWの端まで拡がらない場合でも、ウェハWの中心部に供給されたレジスト液Rが拡散していないウェハWの周辺部に対して、溶剤S2を第2の工程中に供給しているので、この溶剤S2の流動性によってレジスト液Rの流動性が向上し、レジスト液RをウェハWの端まで円滑に拡げることができる。そうすると、ウェハW上に形成されるレジスト膜に従来のように同心円状のむらが発生せず、レジスト膜の膜厚の面内均一性が高くなる。すなわち、少量のレジスト液Rでありながら膜厚の面内均一性の高い塗布処理を行うことができる。
【0050】
また、溶剤S2は第2の工程の低速回転中のウェハWの周辺部に供給してされるので、ウェハWの周辺部を被覆した溶剤S2は乾燥しない。これにより、レジスト液Rの流動性を確実に向上させることができる。
【0051】
以上の実施の形態では、ウェハWの周辺部に供給される溶剤S2は第2の工程で供給されていたが、図8に示すように、第1の工程においてもウェハWの周辺部に溶剤S2を供給してもよい。かかる場合、第1の工程で供給される溶剤S2は、レジスト液Rが拡散していないウェハWの周辺部に供給される。これにより、第1の工程中にレジスト液Rをより広い範囲に拡げることができる。その結果、より少量のレジスト液Rで膜厚の面内均一性の高い塗布処理を行うことができる。
【0052】
なお、第1の工程におけるウェハWの周辺部への溶剤S2の供給と、第2の工程におけるウェハWの周辺部への溶剤S2の供給は連続して行われなくてもよい。例えば第1の工程で溶剤S2の供給後、所定の時間をおいて、第2の工程で溶剤S2の供給を行ってもよい。
【0053】
以上の実施の形態では、ウェハWの中心部への溶剤S1の供給と周辺部への溶剤S2の供給は、同一の溶剤ノズル150を用いて行われていたが、これらの溶剤S1、S2の供給は、例えば別々のアームに支持された溶剤ノズルを用いてそれぞれ行われてもよい。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。例えば以上の実施の形態では、レジスト液の塗布処理を例に採って説明したが、本発明は、レジスト液以外の他の塗布液、例えば反射防止膜、SOG(Spin On Glass)膜、SOD(Spin On Dielectric)膜などを形成する塗布液の塗布処理にも適用できる。また、以上の実施の形態では、ウェハWに塗布処理を行う例であったが、本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板の塗布処理にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板の塗布処理方法、塗布処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態にかかる塗布処理方法を実施するためのレジスト処理装置を搭載した、塗布現像処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【図2】本実施の形態にかかる塗布現像処理システムの正面図である。
【図3】本実施の形態にかかる塗布現像処理システムの背面図である。
【図4】レジスト塗布装置の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図5】レジスト塗布装置の構成の概略を示す横断面の説明図である。
【図6】ウェハの回転数のプロファイルとレジスト液及び溶剤の供給のタイミングとを対応付けたレシピの一例を示す説明図である。
【図7】図6に示したレシピの各タイミングにおける状態を模式的に示す作用説明図である。
【図8】ウェハの回転数のプロファイルとレジスト液及び溶剤の供給のタイミングとを対応付けたレシピの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 塗布現像処理システム
20〜22 レジスト塗布装置
130 スピンチャック
131 チャック駆動機構
132 カップ
143 レジスト液ノズル
146 レジスト液供給源
148 供給機器群
150 溶液ノズル
153 溶剤供給源
155 供給機器群
160 制御部
R レジスト液
S1、S2 溶剤
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に塗布液の溶剤を供給して基板表面を溶剤で被覆した後に、当該基板に対して塗布液を塗布する方法であって、
前記溶剤を供給した後、基板を第1の回転数まで加速回転させ、基板表面上の中心部に塗布液を供給する第1の工程と、
その後、基板を前記第1の回転数よりも遅い第2の回転数まで減速させ、当該第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、
その後、基板を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させ、当該第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、を有し、
前記第2の工程時に、前記基板表面上の中心部に供給された塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給することを特徴とする、塗布処理方法。
【請求項2】
前記第1の工程時にも、前記塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給することを特徴とする、請求項1に記載の塗布処理方法。
【請求項3】
基板に塗布液を塗布する塗布処理装置であって、
基板に所定のタイミングで塗布液を供給する塗布液ノズルと、
基板に所定のタイミングで塗布液の溶剤を供給する溶剤ノズルと、
基板を保持して基板を所定の速度で回転させる回転保持部と、
前記溶剤ノズルにより前記溶剤を基板に供給した後、前記回転保持部により基板を第1の回転数まで基板を第1の回転数まで加速回転させ、前記塗布液ノズルにより基板表面上の中心部に塗布液を供給する第1の工程と、その後、基板を前記第1の回転数よりも遅い第2の回転数まで減速させ、当該第2の回転数で基板を回転させる第2の工程と、その後、基板を前記第2の回転数よりも速い第3の回転数まで加速させ、当該第3の回転数で基板を回転させる第3の工程と、を実行し、前記第2の工程時に、前記基板表面上の中心部に供給された塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給するように前記塗布液ノズル、前記溶剤ノズル及び前記回転保持部の動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする、塗布処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の工程時にも、前記塗布液が拡散していない基板表面上の周辺部に対して、前記塗布液の溶剤を供給するように前記溶剤ノズルの動作を制御することを特徴とする、請求項3に記載の塗布処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の塗布処理方法を塗布処理装置によって実行させるために、当該塗布処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−307488(P2008−307488A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159233(P2007−159233)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】