説明

塗布検査装置及び塗布検査条件の設定方法

【課題】塗布検査条件を容易に設定することができる塗布検査装置及び塗布検査条件の設定方法の提供。
【解決手段】塗布検査装置にハードウェア又はソフトウェアとして、ある特定の塗布条件と設計情報において実際に塗布を行ったときの塗布形状を認識し特徴を計測し、塗布状態及びそのばらつき、塗布条件を1つ変化させたときの塗布状態の変化についての相関データを作成する相関データ作成手段1aと、塗布条件と設計情報とを取得し、相関データに基づいて、目標とする塗布形状が得られる塗布条件を関数近似により推定し、推定した塗布条件における特徴のばらつきなどから検査項目ごとの標準的な計測値と合否判定値を求める検査パラメータ生成手段1bとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ペーストや接着剤などの樹脂の塗布状態を検査する塗布検査装置及び該塗布検査装置を用いた塗布検査条件の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップマウント装置や貼り合わせ装置等を用いて基板や部品上に銀ペーストや接着剤などの樹脂を塗布し、その上にチップや基板などを貼り合わせる実装が行われている。このような実装において、良好な貼り合わせ状態を得るために、塗布装置で樹脂を塗布した後、樹脂の塗布量や塗布領域などを検査する必要がある。
【0003】
画像処理を用いた塗布検査として、図10に示すように、塗布状態をカメラにて撮像し、撮像した画像から塗布領域の面積、外接矩形、塗布領域の数などの特徴を計測し、その計測値から判定値を決定して良否を判定する手法が広く用いられている。このような手法の例として、例えば、下記特許文献1には、撮像装置によりウェハを撮像し、該撮像装置が撮像した画像内にウェハエッジが1個あるいは複数個検出された場合に画像処理手段はその段には良品ペレットがないと判断して次の段にスキップして検査を実行し、次の段以降の良品ペレットをピックアップしてフレームにボンディングするペレットボンディング方法が開示されている。
【0004】
さらに近年では、樹脂を充填したノズルを上下方向のみならずXY方向に制御する手段を備え、登録された所定の手順でノズルを制御し所定の形状となるよう塗布を行うことで、マウント動作や貼り合わせ動作直後の樹脂の広がり、濡れ性を改善する手法が提案されている。この手法は、図11に示すように、塗布対象の製品の設計情報を取得して画像情報に変換し、画像情報から特徴を計測し、その計測値から判定値を決定して良否を判定する手法であり、その例として、例えば、下記特許文献2には、ノズルの先端部に樹脂玉を形成し、当該樹脂玉を基板上に転写させて塗布するバルブ式のディスペンサと、ノズルの先端部に付着している樹脂を撮像する撮像部を備える画像認識手段と、撮像された画像データに基づいて、ノズルからの樹脂の吐出量を制御部とを備える樹脂塗布装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許2539015号公報
【特許文献2】特開2004−273541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者の手法を用いて検査条件の設定を行う場合は、あらかじめ良品を撮像し、撮像した画像から得られる特徴の計測結果を限度範囲の中央値とする方法が一般的である。従って、この手法では、良品サンプルをあらかじめ作成する必要があるため、その作成までに試行錯誤が必要であり、調整作業にも時間がかかるという問題点があった。
【0007】
また、後者の手法で検査条件の設定を行う場合は、塗布形状の多様化に伴い検査条件も複雑になっているため、新たな塗布形状が定義された時に最適な塗布検査条件を即座に見つけられないという問題点があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、塗布検査条件を容易に設定することができる塗布検査装置及び塗布検査条件の設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、塗布装置の塗布状態を検査する塗布検査装置において、所定の塗布条件における塗布液の塗布状態を撮像する撮像手段と、撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成する相関データ作成手段と、前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、目標とする塗布状態を得るための塗布条件を推定し、推定した前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定する検査パラメータ生成手段と、を少なくとも備えるものである。
【0010】
また、本発明は、塗布装置の塗布状態を検査する塗布検査装置において、所定の塗布条件における塗布液の塗布状態を撮像する撮像手段と、撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成する相関データ作成手段と、前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、前記相関データにない塗布条件における塗布形状を推定し、前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定する検査パラメータ生成手段と、を少なくとも備えるものである。
【0011】
本発明においては、前記塗布装置は、ノズルを用いて塗布液を点状に吐出する装置であり、前記塗布条件は、塗布パターン、前記塗布液の吐出圧力、吐出動作時の前記ノズルの下降位置、前記塗布液の総塗布量のいずれか一を含み、前記特徴は、前記塗布液の半径、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、前記塗布液の占有面積、前記塗布液の占有比率のいずれか一を含む構成とすることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記塗布装置は、ノズルを用いて塗布液を線状に吐出する装置であり、前記塗布条件は、塗布パターン、前記塗布液の吐出圧力、吐出動作時の前記ノズルの下降位置、前記塗布液の総塗布量、前記ノズルの移動速度、単位時間あたりの前記塗布液の吐出量、ステージの移動手順のいずれか一を含み、前記特徴は、前記塗布液の端点座標、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、前記塗布液の占有面積、前記塗布液の占有比率、前記塗布液の線幅のいずれか一を含む構成とすることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記塗布装置は、ローラを用いて塗布液を面状に塗布する装置であり、前記塗布条件は、前記塗布液の塗布量、塗布速度、塗布時間、塗布後に前記塗布液をならすための塗布圧のいずれか一を含み、前記特徴は、前記塗布液の輝度分布、前記塗布液の平均輝度、前記塗布液の輝度の標準偏差のいずれか一を含む構成とすることができる。
【0014】
また、本発明は、塗布装置の塗布状態を検査するための塗布検査条件の設定方法であって、所定の塗布条件で試し打ちを行うステップと、塗布液の塗布状態を撮像するステップと、撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成するステップと、前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、目標とする塗布状態を得るための塗布条件を推定するステップと、推定した前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定するステップと、を少なくとも有するものである。
【0015】
また、本発明は、塗布装置の塗布状態を検査するための塗布検査条件の設定方法であって、所定の塗布条件で試し打ちを行うステップと、塗布液の塗布状態を撮像するステップと、撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成するステップと、前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、前記相関データにない塗布条件における塗布形状を推定するステップと、前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定するステップと、を少なくとも有するものである。
【0016】
このように、所定の塗布条件の塗布形状を撮像して特徴を計測し、その特徴と塗布条件とを関連付けて相関データを作成し、相関データに基づいて目標とする塗布形状が得られる塗布条件又は相関データにない塗布条件における塗布形状を推定し、その塗布条件のばらつきから塗布検査条件を決定することにより、塗布検査条件を容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布検査装置及び塗布検査条件の設定方法によれば、塗布検査条件を容易に設定することができる。
【0018】
その理由は、塗布検査装置に、所定数の塗布条件による塗布動作により生成された塗布形状を撮像して特徴を計測し、その特徴と塗布条件とを関連付けて相関データを作成する相関データ作成手段と、その相関データと設定情報とに基づいて目標とする塗布形状が得られる塗布条件又は相関データにない塗布条件における塗布形状を推定し、その塗布条件における特徴のばらつきに基づいて良否の基準とする塗布検査条件を決定する検査パラメータ設定手段とを設けることにより、塗布条件の教示と目視による塗布条件の調整を行うだけで塗布検査条件を設定することができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
従来技術で示したように、塗布検査の手法として、塗布状態をカメラにて撮像し、撮像した画像から特徴を計測し、その計測値から判定値を決定して検査する手法、すなわち、実際の塗布状態のみに基づいて検査する手法と、設計情報を取得して画像情報に変換し、画像情報から特徴を計測し、その計測値から判定値を決定して検査する手法、すなわち、設計情報のみに基づいて検査する手法とがある。しかしながら、前者は、実際の塗布状態のみから良否を判定するために良品サンプルをあらかじめ作成する必要があり、後者は、設計情報のみから良否を判定するために新たな塗布形状が定義された時に最適な検査条件を即座に見つけられないという問題点があった。
【0020】
そこで、本発明では、図1に示すように、本発明の塗布検査装置にハードウェア又はソフトウェアとして、ある特定の塗布条件と設計情報において実際に塗布を行ったときの塗布形状を認識し特徴を計測し、塗布状態及びそのばらつき、塗布条件を1つ変化させたときの塗布状態の変化についての相関データを作成する相関データ作成手段1aと、塗布条件と設計情報とを取得し、相関データに基づいて、目標とする塗布形状が得られる塗布条件又は相関データにない塗布条件における塗布形状を関数近似などにより推定し、推定した塗布条件における特徴のばらつきなどから検査項目ごとの標準的な計測値と合否判定値を求める検査パラメータ生成手段1bと、を設ける。
【実施例1】
【0021】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係る塗布検査装置及び塗布検査条件の設定方法について、図2乃至図8を参照して説明する。図2は、本実施例の塗布装置及び塗布検査装置の構成を模式的に示す図であり、図3は、本実施例の塗布検査条件の設定手順を示すフローチャート図である。また、図4は、塗布形状の例を示す図であり、図5は、ノズルの移動手順を示す図である。また、図6は、塗布画像の例を示す図であり、図7及び図8は、ノズルの移動速度が異なる場合の塗布状態の違いを説明する図である。
【0022】
図2に示すように、本実施例の塗布装置は、樹脂を塗布するためのノズル6およびシリンジ5、およびそれを具備し位置決めを行うための3軸ステージ7、樹脂の塗布量を制御するためのディスペンサ4、塗布の対象となる製品11を搭載するための搭載ステージ9、前記3軸ステージ7とディスペンサ4を制御するための制御部2などから構成され、さらに用途に応じて、塗布量の調整および状態を確認するための捨て打ちステージ10や、搭載ステージ9に製品11を移載するためのハンドラやコンベア等の移載手段を備えてもよい。
【0023】
上記構成の塗布装置においては、前記3軸ステージ7を所定の塗布位置に移動してノズル6部分を製品表面に接触、もしくは表面から一定距離となるようZ軸を下降し、樹脂をディスペンサ4にて一定量吐出後、Z軸を上昇させる点塗布動作、もしくは、吐出開始後、Z軸を下降した状態のままXY軸を所定の軌道上にて移動させ、終点にて吐出を終了してZ軸を上昇させる動作を繰り返す線塗布動作の機能をもつ。この特徴をもつ装置としてはチップマウント装置や基板貼り付け装置などがあり、平板状のもの同士を貼り付ける目的の装置における接着剤の塗布を目的とする。
【0024】
別の構成をもつ塗布装置として、前記ノズル6およびシリンジ5、ディスペンサ4の代わりにボールペン等を構成要素としてもよい。この場合、Z軸の下降動作に関しては塗布対象製品に対して所定の圧力をもって接する状態を目標に制御されるため、図2の構成例のモータに対してシリンダ、バネ、カム等が用いられる。この特徴をもつ樹脂塗布装置としてはペンプロッタなどがあり、主に紙などの平面状の媒体表面へのパターン、文字、図形の描画を目的とする。
【0025】
更に、本発明の塗布検査条件の設定の対象となる塗布検査装置は、図2に示すように、上記3軸ステージ7上、もしくは搭載ステージ9上に備えられ、製品11の表面の塗布状態を撮像するカメラ8と、撮像された画像から塗布形状の部分を抽出し、その特徴を検査基準と比較して良否を判定し、制御部2に通知するための画像処理部3とから構成され、図1に示した相関データ作成手段1aと検査パラメータ生成手段1bとは画像処理部3にハードウェア又はソフトウェアとして構成される。ここで、塗布装置の制御部2と塗布検査装置の画像処理部3は塗布条件と塗布検査条件とを互いに参照することができるものとする。
【0026】
なお、塗布検査装置の構成は対象となる塗布装置の構成には依存しない。また、塗布検査装置を塗布装置の内部に配置するか、単独の検査工程として塗布装置と併設して配置するかは問わない。また、塗布装置が塗布する塗布液の種類は問わない。
【0027】
次に、図2の構成の塗布装置を対象とした塗布検査条件の設定手順の一例について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0028】
最初に、塗布装置に対して塗布動作の教示と塗布条件の設定を行う。そして教示した塗布動作および塗布条件の設定における塗布状態の撮像と検査値の登録を行う。塗布条件にはたとえば以下のようなものがある。
【0029】
・塗布パターン(XY方向の移動とZ方向の昇降の順序、および順序別の移動速度)
・樹脂の吐出圧力
・吐出動作時のZ方向の下降位置
・樹脂の総塗布量
【0030】
次に、ステップS1で、代表的な塗布条件を設定し、ステップS2で、その塗布条件のもとで試し打ちを実行する。試し打ちを行う位置は専用のステージ、試し打ち用の製品などがあるが、その外観をカメラ8で撮像できる位置であればよい。
【0031】
次に、ステップS3で、作業者は試し打ちされた樹脂の塗布状態を直接または塗布検査装置に備えられたカメラ8を用いて目視確認し、塗布形状の良否を判定する。そして、塗布形状が不良と判断した場合は、ステップS1に戻り、その塗布条件は許容範囲外として別の塗布条件を設定して、撮像と確認を繰り返す。
【0032】
一方、塗布状態が良好と判断した場合は、ステップS4で、画像処理部3(相関データ作成手段1a)はその塗布形状を認識し、ステップS5で、塗布形状の特徴(例えば、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、占有面積、占有率など)を計測する。そして、ステップS6で、相関データを十分持ち合わせているかを判断し、持ち合わせていなければ、ステップS7で特徴と塗布条件とを関連付けて相関データを作成し、記憶する。これが、ステップS9における、後述の塗布装置の運用時に塗布動作を提示されたときの塗布条件の推定のよりどころとなる。
【0033】
たとえば簡単のため、塗布条件は総塗布量のみ、塗布形状の特徴は塗布後の樹脂の占有領域の半径のみとする。また、樹脂の表面張力が非常に大きく、塗布後の塗布形状が図4のような球体を2つに割った形とした場合は、総塗布量Lと樹脂の占有領域の半径rとの関係は、塗布された樹脂の高さhが一定として、
L = πrh/3
となる。
【0034】
そして、ステップS8で相関データの作成が完了したかを判断し、相関データの作成が完了しない場合は、総塗布量Lを一定にして試し打ちを繰り返し、更に総塗布量Lを変えて試し打ちを行い、樹脂の占有領域の半径や面積のばらつきを求める。
【0035】
一方、相関データの作成が完了したら、ステップS9で、画像処理部3(検査パラメータ生成手段1b)は、この相関データと塗布装置の設計情報(例えば、塗布形状など)とに基づいて目標とする塗布形状を得るための塗布条件(又は相関データにない塗布条件における塗布形状)を推定する。求められた相関が前述の式のとおりであったとするなら、目標とする塗布形状情報である樹脂の占有領域の半径rに対して、塗布条件である総塗布量L(又は相関データにない塗布条件である総塗布量Lに対して、塗布形状情報である樹脂の占有領域の半径r)を決めることができる。さらには検査実施時の計測値である占有面積としてr2を定めることができる。
【0036】
最後に、ステップS10で、画像処理部3(検査パラメータ生成手段1b)は総塗布量Lを一定としたときの占有領域のばらつきをもとに、占有領域の半径や面積の許容上限、許容下限を合否判定値として決定し、登録する。なお、合否判定値の決定は、代表的な手段である平均値E、分散値σに対して許容上限E+kσ、許容下限E−kσという値でよい(k=3〜6)。
【0037】
上記の例では点塗布の場合を例に挙げたが、線塗布の場合は塗布条件にノズルの移動速度や時間あたりの樹脂吐出量、ステージの移動手順などの条件が加わるため、相関データは複雑になるものの、塗布条件を一意で決めることは可能である。
【0038】
まず、試し打ちされた塗布形状をカメラ8にて撮像し、起点座標、終点座標、線幅を計測する。次に、撮像した塗布形状を細線化して得られる端点座標と、塗布条件として設定されたステージの移動手順とを対応づける。
【0039】
移動手順が図5のようなX字形(実線矢印はノズル下降、点線矢印はノズル上昇状態を示す)であれば、まず、ステージの軌道座標(1)〜(6)を入力画像の座標系に変換する。次に、図6に示す塗布形状を撮像した画像を2値化、細線化し、その端点座標C1〜C4を求め、入力画像の座標系に変換する。こうして軌道座標の位置関係から、C1と(1)、(3)、C2と(4)、(6)、C3と(2)、C4と(5)が関連付けられることとなる。
【0040】
同じ塗布条件で複数回の塗布を行い、更に塗布条件を変化させて塗布を行い、その結果、C1〜C4の座標、塗布の線幅、塗布形状のばらつきを記録し、それらの結果から、特徴(たとえば外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、占有面積、占有率、端点座標、塗布領域線幅など)と塗布条件(例えば、塗布パターン、樹脂の吐出圧力、吐出動作時のZ方向の下降位置、樹脂の総塗布量、ノズルの移動速度、時間あたりの樹脂吐出量、ステージの移動手順など)とを関連付けた相関データを得る。
【0041】
参考までに、ノズル6の移動速度のみが異なる2つの条件下で図5の手順で塗布をさせた場合、速度によって図7(a)、(b)のような塗布状態の違いが出るが、移動手順をZ型に変えて同じく2通りの塗布速度で塗布を行うと図8(a)、(b)のようになる。つまり本例では塗布形状の幅(特徴)はノズルの移動速度(塗布条件)に依存して得られることになる。
【0042】
最後に、この相関データと塗布装置の設計情報(例えば、塗布経路や塗布幅、厚みの基準値やその許容範囲など)とに基づいて目標とする塗布状態を得るための塗布条件(又は相関データにない塗布条件における塗布形状)を推定する。そして、その塗布条件における占有領域のばらつきに基づいて合否判定基準となる上限や下限を設定する。これが教示した塗布条件(又は塗布形状)に対する標準的な塗布検査条件となる。
【0043】
さらに単純化したい場合は、塗布形状の軌道を用いずに直接得られた同一塗布条件下での複数の塗布画像から上記の特徴量のうち、外接矩形の大きさと占有面積をそのまま計測し、その平均とばらつきから合否判定値を求めても良い。この場合は塗布形状と塗布条件の組み合わせごとに判定値を求めるため、塗布形状から正確な塗布画像を推定しにくい場合に有効である。
【0044】
そして、実際の運用で用いる塗布状態と塗布条件の相関が得られたら、作業者は塗布検査装置に対して得られた塗布動作条件の通知と検査条件の設定指示を行う。
【0045】
なお、本実施例では捨て打ちステージ10による試し打ちによる教示情報と特徴点の関連付けの手段を備えた形態としたが、かわりに実際の塗布動作の最適な状態を直接撮像した画像に対して細線化処理などの形状認識を行い、その端点と分岐点の座標と軌道座標を比較して検査条件を生成する形態でもよい。また、端点座標とステージ制御座標との関連付けを各座標の上下左右の位置関係のみで行い、あわせて入力画像上の座標系とステージ制御座標系との関係を示すカメラ分解能を測定する手段を付加してもよい。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の第2の実施例に係る塗布検査装置及び塗布検査条件の設定方法について、図9を参照して説明する。図9は、本実施例の塗布装置及び塗布検査装置の構成を模式的に示す図である。本実施例では、第1の実施例とは別の構成の塗布装置を対象とした塗布検査条件の設定手順について説明する。
【0047】
塗布検査装置の対象となる塗布装置の第2の構成例は、図9に示すように、前記第1の実施例中の製品表面に樹脂を吐出する手段として、シリンジ5、ディスペンサ4のかわりにスプレーや一度樹脂を樹脂プール15にて浸潤させたローラ刷毛14、もしくはスキージ等を備え、これらを製品11表面上で所定の領域上を動かすことにより製品表面に吐出された樹脂を所定の厚みで均一にならす動作を行うものであり、転写装置、印刷装置や塗装装置など、樹脂を面状に均一に塗布することを目的とする。
【0048】
本実施例の塗布装置の場合、面状の塗布を行うという性質上、それを対象とする塗布検査装置は樹脂を均一に塗布する動作前後の状態をそれぞれ撮像するための搭載ステージ17上に固定もしくはXY方向に移動可能なカメラ16と、カメラ16によって撮像された塗布状態の画像から塗布圧など特徴を抽出し、その良否を判定して制御部12に通知するための画像処理部13から構成される。
【0049】
この構成例の塗布装置および塗布検査装置においても、塗布条件の設定手順は基本的には第1の実施例と同じであり、フローチャートも図3と同一である。
【0050】
最初に、塗布装置に対して塗布動作の教示と試し打ちによる動作条件設定を行う(ステップS1〜S3)。そして教示した塗布動作および塗布条件の設定における塗布状態の撮像と、検査で用いる特徴値の相関データの登録を行う。面状の塗布の場合の塗布条件としてはたとえば以下のようなものがある。
【0051】
・樹脂塗布量
・塗布速度、時間(樹脂ならし動作の往復時間)
・塗布圧(樹脂ならし動作において製品またはステージを押さえつける圧力)
【0052】
試し打ちで塗布された樹脂の状態を撮像して得られた画像から、その特徴、たとえば輝度分布、平均輝度、標準偏差などを求め(ステップS4、S5)、上記塗布条件との関連付けを行って相関データを作成する(ステップS7)。そして、相関データと設計情報に基づいて、目標とする塗布状態を得るための塗布条件(又は相関データにない塗布条件における塗布形状)を推定し(ステップS9)、同一条件下で塗布を行った場合の特徴の平均やばらつきから合否判定基準値を求める(ステップS10)。
【0053】
本実施例の場合、新たな塗布状態の目標が与えられた場合、上記の相関データをもとに塗布条件を推定する。簡単な例で、浸潤時間、塗布速度一定下で塗布圧P1に対して入力画像の平均輝度L1、塗布圧P2に対して平均輝度L2が相関データとしてあり、その相関が直線的である場合、ある目標の塗布状態である平均輝度値L3に対して塗布圧P3は
L3=(P3−P1)×(L2−L1)/(P2−P1)+L1
という関係となる。この関係は1対1のため、逆に塗布条件の目標から塗布状態を推定することも可能である。
【0054】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の効果が得られる限りにおいて、塗布条件や特徴、設計情報などは適宜変更可能である。また、上記各実施例では、塗布検査装置に、相関データ作成手段と検査パラメータ設定手段とを設けたが、これらをプログラムとして構成し、塗布装置の制御部上で機能させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、塗布状態を検査する任意の塗布検査装置及びその塗布検査装置を用いた塗布検査条件の設定方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗布検査条件の設定手順及び手段を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る塗布装置及び塗布検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る塗布検査条件の設定手順を示すフローチャート図である。
【図4】塗布形状の例を示す図である。
【図5】ノズルの移動手順を示す図である。
【図6】塗布画像の例を示す図である。
【図7】ノズルの移動速度が異なる場合の塗布形状の違いを説明する図である。
【図8】ノズルの移動速度が異なる場合の塗布形状の違いを説明する図である。
【図9】本発明の第2の実施例に係る塗布装置及び塗布検査装置の構成を模式的に示す図である。
【図10】従来の塗布検査手法を示す図である。
【図11】従来の塗布検査手法を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1a 相関データ作成手段
1b 検査パラメータ生成手段
2、12 制御部
3、13 画像処理部
4 ディスペンサ
5 シリンジ
6 ノズル
7 3軸ステージ
8、16 カメラ
9、17 搭載ステージ
10 捨て打ちステージ
11 製品
14 ローラ
15 樹脂プール
18 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布装置の塗布状態を検査する塗布検査装置において、
所定の塗布条件における塗布液の塗布状態を撮像する撮像手段と、
撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成する相関データ作成手段と、
前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、目標とする塗布状態を得るための塗布条件を推定し、推定した前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定する検査パラメータ生成手段と、を少なくとも備えることを特徴とする塗布検査装置。
【請求項2】
塗布装置の塗布状態を検査する塗布検査装置において、
所定の塗布条件における塗布液の塗布状態を撮像する撮像手段と、
撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成する相関データ作成手段と、
前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、前記相関データにない塗布条件における塗布形状を推定し、前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定する検査パラメータ生成手段と、を少なくとも備えることを特徴とする塗布検査装置。
【請求項3】
前記塗布装置は、ノズルを用いて塗布液を点状に吐出する装置であり、
前記塗布条件は、塗布パターン、前記塗布液の吐出圧力、吐出動作時の前記ノズルの下降位置、前記塗布液の総塗布量のいずれか一を含み、
前記特徴は、前記塗布液の半径、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、前記塗布液の占有面積、前記塗布液の占有比率のいずれか一を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布検査装置。
【請求項4】
前記塗布装置は、ノズルを用いて塗布液を線状に吐出する装置であり、
前記塗布条件は、塗布パターン、前記塗布液の吐出圧力、吐出動作時の前記ノズルの下降位置、前記塗布液の総塗布量、前記ノズルの移動速度、単位時間あたりの前記塗布液の吐出量、ステージの移動手順のいずれか一を含み、
前記特徴は、前記塗布液の端点座標、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、前記塗布液の占有面積、前記塗布液の占有比率、前記塗布液の線幅のいずれか一を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布検査装置。
【請求項5】
前記塗布装置は、ローラを用いて塗布液を面状に塗布する装置であり、
前記塗布条件は、前記塗布液の塗布量、塗布速度、塗布時間、塗布後に前記塗布液をならすための塗布圧のいずれか一を含み、
前記特徴は、前記塗布液の輝度分布、前記塗布液の平均輝度、前記塗布液の輝度の標準偏差のいずれか一を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布検査装置。
【請求項6】
塗布装置の塗布状態を検査するための塗布検査条件の設定方法であって、
所定の塗布条件で試し打ちを行うステップと、
塗布液の塗布状態を撮像するステップと、
撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成するステップと、
前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、目標とする塗布状態を得るための塗布条件を推定するステップと、
推定した前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定するステップと、を少なくとも有することを特徴とする塗布検査条件の設定方法。
【請求項7】
塗布装置の塗布状態を検査するための塗布検査条件の設定方法であって、
所定の塗布条件で試し打ちを行うステップと、
塗布液の塗布状態を撮像するステップと、
撮像した画像を取得して特徴を抽出し、前記特徴と前記塗布条件とを関連付ける相関データを作成するステップと、
前記相関データと前記塗布装置から取得した設計情報とに基づいて、前記相関データにない塗布条件における塗布形状を推定するステップと、
前記塗布条件における前記特徴のばらつきに基づいて塗布状態の合否判断の基準となる判定値を設定するステップと、を少なくとも有することを特徴とする塗布検査条件の設定方法。
【請求項8】
前記塗布装置は、ノズルを用いて塗布液を点状に吐出する装置であり、
前記塗布条件は、塗布パターン、前記塗布液の吐出圧力、吐出動作時の前記ノズルの下降位置、前記塗布液の総塗布量のいずれか一を含み、
前記特徴は、前記塗布液の半径、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、前記塗布液の占有面積、前記塗布液の占有比率のいずれか一を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗布検査条件の設定方法。
【請求項9】
前記塗布装置は、ノズルを用いて塗布液を線状に吐出する装置であり、
前記塗布条件は、塗布パターン、前記塗布液の吐出圧力、吐出動作時の前記ノズルの下降位置、前記塗布液の総塗布量、前記ノズルの移動速度、単位時間あたりの前記塗布液の吐出量、ステージの移動手順のいずれか一を含み、
前記特徴は、前記塗布液の端点座標、外接矩形の大きさ、外接矩形の中心位置、前記塗布液の占有面積、前記塗布液の占有比率、前記塗布液の線幅のいずれか一を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗布検査条件の設定方法。
【請求項10】
前記塗布装置は、ローラを用いて塗布液を面状に塗布する装置であり、
前記塗布条件は、前記塗布液の塗布量、塗布速度、塗布時間、塗布後に前記塗布液をならすための塗布圧のいずれか一を含み、
前記特徴は、前記塗布液の輝度分布、前記塗布液の平均輝度、前記塗布液の輝度の標準偏差のいずれか一を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の塗布検査条件の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−196972(P2008−196972A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32401(P2007−32401)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】