説明

塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法

【課題】2つのノズルを用いることによって基板の塗布処理にかかるタクトタイムを向上し、且つ、かかるコストを抑制する。
【解決手段】基板搬送方向に沿って前後に配された第1のノズル16と第2のノズル17とを保持するノズル保持手段12と、前記ノズル保持手段を基板搬送方向に沿って移動させるノズル移動手段11と、前記第1のノズル及び前記第2のノズルの駆動制御と前記ノズル移動手段の駆動制御とを行う制御手段40とを備え、前記制御手段は、前記第1のノズルと前記第2のノズルが基板搬送路上の同一の塗布位置に配置されるよう前記ノズル移動手段を制御し、該ノズル移動手段により前記ノズル保持手段を移動させ、前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板に対して処理液を塗布する塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
このフォトリソグラフィ工程では、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、処理液であるフォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布されレジスト膜(感光膜)が形成される。そして、回路パターンに対応して前記レジスト膜が露光され、これが現像処理され、パターン形成される。
【0003】
ところで近年、このフォトリソグラフィ工程におけるレジスト膜の形成工程にあっては、スループット向上の目的により、被処理基板を略水平姿勢の状態で搬送しながら、その被処理面に対しレジスト液を塗布する構成が多く採用されている。
基板搬送の構成としては、基板支持部材のレジスト塗布面への転写を防止するため、基板を略水平姿勢の状態で所定の高さに浮上させ、基板搬送方向に搬送する浮上搬送が注目されている。
【0004】
この浮上搬送を用いた塗布膜形成装置について図7に基づいて説明する。
図7の塗布膜形成装置200は、被処理基板であるガラス基板Gを浮上搬送するための浮上ステージ201と、浮上ステージ201上に浮上する基板Gの左右両端を保持して基板搬送方向(X軸方向)に搬送する搬送手段(図示せず)とを備えている。
浮上ステージ201の上面には、上方に向かって不活性ガスを噴射するための多数のガス噴射孔(図示せず)と、吸気を行うための多数の吸気孔(図示せず)とが夫々、一定間隔で交互に設けられている。そして、前記ガス噴射孔から噴射されるガス噴射量と前記吸気孔からの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、基板Gを浮上ステージ201の表面から一定の高さに浮上させるように構成されている。
【0005】
また、浮上ステージ201の上方には、浮上搬送される基板Gの表面にレジスト液を供給するレジストノズル203が昇降移動自在に設けられている。
レジストノズル203には、レジストポンプ等からなるレジスト供給源204が接続され、塗布処理時においてレジスト供給源204からレジストノズル203にレジスト液が供給されるようになっている。また、レジストノズル203に供給されたレジスト液は、ノズル先端に形成された基板幅方向に長いスリット状の吐出口203aから吐出されるように構成されている。
【0006】
また、浮上ステージ201の上方において、ノズル203の近くには、ノズル先端に付着したレジスト液Rを均一化する(プライミング処理と呼ぶ)ためのプライミング処理部206が設けられている。
プライミング処理部206は、ケーシング207内に回転自在に収容されたプライミングローラ205を有している。このプライミングローラ205にノズル吐出口203aが近接された状態で所定量のレジスト液が吐出され、プライミングローラ205が所定方向に回転されることによりプライミング処理が行われる。尚、ケーシング207内にはプライミングローラ205に付着したレジスト液を除去するための洗浄液(シンナー液)が貯留されている。
このプライミング処理部206によるプライミング処理を塗布処理前に行うことにより、塗布処理時における塗布斑の発生を防止することができる。
【0007】
この構成において、基板Gへの塗布処理前にあっては、ノズル先端に対しプライミング処理部206が近接され、プライミングローラ205上に所定量のレジスト液が吐出される。そして、プライミングローラ205が所定方向に回転されることにより、吐出口203aに付着しているレジスト液の状態が整えられる(プライミング処理が完了する)。プライミング処理が完了すると、レジスト供給ノズル203は下降移動し、図示するように塗布開始位置で待機する基板Gに近接する。
そして、基板GがX軸方向に沿って移動されると共に、吐出口203aよりレジスト液が帯状に供給され、レジスト液が基板Gに塗布される。
【0008】
しかしながら、前記塗布膜形成装置200の構成にあっては、1枚の基板Gに対する塗布処理の度にプライミング処理を施す必要があるため、各基板Gにおける塗布処理のタクトタイムが長くなるという課題があった。
【0009】
前記課題を解決するため、特許文献1には、1つの基板搬送路上に2つの独立したレジスト供給ノズルを配置した塗布膜形成装置が開示されている。
図8を用いて、特許文献1に開示された塗布膜形成装置の概略構成について説明する。図8に示す塗布膜形成装置300は、基板搬送路を形成する浮上ステージ301を備え、この浮上ステージ301は、基板搬入部301Aと、塗布処理部301Bと、基板搬出部301Cとにより構成されている。
基板搬入部301A及び基板搬出部301Cには、その上面に複数のガス噴射孔(図示せず)が形成され、それらガス噴射孔から噴射される不活性ガスを基板下面に吹き付けることにより基板Gを浮上するようになっている。
【0010】
一方、塗布処理部301Bには、その上面に複数のガス噴射孔(図示せず)と複数のガス吸引孔(図示せず)とが形成され、ガス噴射孔から噴射した不活性ガスをガス吸引孔から吸引することによって基板上に気流を形成し、基板Gを安定して浮上させるようになっている。
尚、浮上ステージ301を浮上する基板Gは、基板搬送手段(図示せず)によって、その左右両端部が保持され、ステージ上を基板搬送路に沿ってX軸方向に搬送されるようになっている。
【0011】
また、塗布処理部301Bには、その幅方向に跨ぐように配置された門型のノズルアーム302が設けられ、このノズルアーム302の頂部には、その前後に、基板幅方向に延びる第1のノズル303と第2のノズル304とがそれぞれ設けられている。
前記第1のノズル303と第2のノズル304とは、それぞれ昇降移動可能な独立したノズルであり、いずれか一方が塗布処理を行う際には、そのノズルが下降移動され、その下端の吐出口が基板Gに近接されるようになっている。
【0012】
また、塗布処理部301Bの上方には、各ノズル303,304にそれぞれ対応する第1のプライミング処理部305と第2のプライミング処理部306とが基板搬送方向に沿って移動自在に設けられ、それぞれ対応するノズル303,304に対して近接可能となっている。
【0013】
このような構成によれば、第1のノズル303により基板Gへの塗布処理を行う間に、第2のノズル304に対しプライミング処理部306によるプライミング処理が施される。一方、第2のノズル304により基板Gへの塗布処理を行う間に、第1のノズル303に対しプライミング処理部305によるプライミング処理が施される。
即ち、従来、ノズルに対しプライミング処理を行っていた時間に、基板Gに対する塗布処理を行うことができ、各基板Gに対する塗布処理のタクトタイムを短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−173368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、図8に示す塗布膜形成装置300の構成にあっては、基板Gに対し2つのノズル303,304の塗布位置がそれぞれ異なるため、浮上ステージ301から搬出した時点での乾燥状態がばらつくという課題があった。
また、塗布処理部301Bにおいて、各ノズル303,304によりそれぞれ塗布処理を行う領域を確保する必要があるため、浮上ステージ301の全長が長くなり、また、各ノズル303,304に対しプライミング処理部305,306や基板検出センサ等が必要となるため、コストが嵩張るという課題があった。
【0016】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、被処理基板に処理液を塗布する塗布膜形成装置において、2つのノズルを用いることによって基板の塗布処理にかかるタクトタイムを向上し、且つ、かかるコストを抑制することのできる塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成装置は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有する第1のノズルと第2のノズルとを備え、前記ノズルの下方を基板搬送路に沿って搬送される前記基板に対し、前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一方の吐出口から処理液を吐出し、前記基板上に所定の塗布膜を形成する塗布膜形成装置であって、基板搬送方向に沿って前後に配された前記第1のノズルと第2のノズルとを保持するノズル保持手段と、前記ノズル保持手段を基板搬送方向に沿って移動させるノズル移動手段と、前記第1のノズル及び前記第2のノズルの駆動制御と前記ノズル移動手段の駆動制御とを行う制御手段とを備え、前記制御手段は、前記第1のノズルと前記第2のノズルとが基板搬送路上の同一の塗布位置に配置されるよう前記ノズル移動手段を制御し、前記ノズル移動手段により前記ノズル保持手段を移動させ、前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させるように制御することに特徴を有する。
【0018】
尚、前記第1のノズルと前記第2のノズルのいずれか一方の吐出口から所定量の処理液が吐出されたプライミングローラを回転させることにより、該ノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理部と、前記プライミング処理部を基板搬送方向に沿って移動させるプライミング移動手段とを備え、前記制御手段は、前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させると共に、プライミング処理部及び前記プライミング移動手段を制御し、前記プライミング移動手段により前記プライミング処理部を他のノズルに近接させ、該他のノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理を行うように制御することが望ましい。
また、前記制御手段は、基板搬送路を連続して搬送される基板ごとに、前記第1のノズルと前記第2のノズルとが交互に前記基板搬送路上の前記同一の塗布位置に配置されるよう前記ノズル移動手段を制御し、該ノズル移動手段により前記ノズル保持手段を移動させるように制御することが望ましい。
【0019】
また、前記ノズル保持手段は、前記基板搬送路を基板幅方向に跨ぐ門型のフレームであって、前記フレーム上部の前後に、前記第1のノズルと第2のノズルをそれぞれ昇降移動可能に保持する第1のノズル昇降手段と第2のノズル昇降手段とを備えることが望ましい。
また、前記被処理基板を基板搬送路に沿って移動させる基板搬送手段を備え、前記基板搬送手段は、前記基板搬送路の左右両側に、該基板搬送路に沿って敷設された一対の第1のレールと、前記基板の幅方向端部を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段を支持すると共に前記第1のレールに沿って移動可能な第1のスライダとを有し、前記ノズル移動手段は、前記基板搬送路の左右両側であって、前記一対の第1のレールの外側に前記基板搬送路に沿って敷設された一対の第2のレールと、前記ノズル保持手段を支持すると共に前記第2のレールに沿って移動可能な第2のスライダとを有し、前記プライミング移動手段は、前記基板搬送路の左右両側であって、前記一対の第1のレールと前記一対の第2のレールとの間に前記基板搬送路に沿って敷設された一対の第3のレールと、前記プライミング処理部を支持すると共に前記第3のレールに沿って移動可能な第3のスライダとを有することが望ましい。
【0020】
このように構成することにより、2つのノズルによる塗布位置を同一の位置にすることができるため、基板間での乾燥状態のばらつきを無くすことができる。
また、第1のノズルと第2のノズルとを具備しても、その塗布位置が同一の位置であるため、従来のように基板搬送路の長さを延ばす必要がなく、また、プライミング処理部や基板検出センサ等を共通に用いることができるため、コスト増加を抑制することができる。
また、前記プライミング移動手段を備えることによって、第1のノズルと第2のノズルのいずれか一方が塗布処理を行っている間には、他のノズルのプライミング処理を実施することができ、基板処理のタクトタイムを短縮することができる。
【0021】
更に、前記構成によれば、第1のノズル(または第2のノズル)により連続的に塗布処理を行っている間に、第2のノズル(または第1のノズル)に供給する処理液の供給源を取り替える作業を行うことができる。
このため、例えば、複数枚単位でそれぞれ種類の異なる処理液の塗布処理を行う場合、第1のノズル(または第2のノズル)による複数枚の基板への処理を連続的に行った後、すぐに第2のノズル(第1のノズル)による複数枚の基板への処理を連続的に行うことができる。
【0022】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗布膜形成方法は、被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有する第1のノズル及び第2のノズルと、前記第1のノズルと前記第2のノズルのいずれか一方の吐出口から所定量の処理液が吐出されたプライミングローラを回転させることにより、該ノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理部とを備える塗布膜形成装置において、前記ノズルの下方を基板搬送路に沿って搬送される前記基板に対し、前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一方の吐出口から処理液を吐出し、前記基板上に所定の塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、前記第1のノズルと前記第2のノズルいずれか一方のノズルを基板搬送路上の同一の塗布位置に配置し、前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させると共に、前記プライミング処理部を他のノズルに近接させ、該他のノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理を行うように制御することに特徴を有する。
【0023】
このような方法によれば、2つのノズルによる塗布位置を同一の位置にすることができるため、基板間での乾燥状態のばらつきを無くすことができる。
また、第1のノズルと第2のノズルとを具備しても、その塗布位置が同一の位置であるため、従来のように基板搬送路の長さを延ばす必要がなく、また、プライミング処理部や基板検出センサ等を共通に用いることができるため、コスト増加を抑制することができる。
また、第1のノズルと第2のノズルのいずれか一方が塗布処理を行っている間には、他のノズルのプライミング処理を実施することができるため、基板処理のタクトタイムを短縮することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被処理基板に処理液を塗布する塗布膜形成装置において、被処理基板に処理液を塗布する塗布膜形成装置において、2つのノズルを用いることによって基板の塗布処理にかかるタクトタイムを向上し、且つ、かかるコストを抑制することのできる塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に係る一実施の形態を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明にかかる一実施形態の概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図1のA−A矢視断面図である。
【図4】図4は、図1のレジスト塗布処理ユニットの動作の流れを示すフロー図である。
【図5】図5(a)、図5(b)は、図4のフローにおける動作を説明するためのレジスト塗布処理ユニットの側面図である。
【図6】図6(a)、図6(b)は、図4のフローにおける動作を説明するためのレジスト塗布処理ユニットの側面図である。
【図7】図7は、従来の塗布膜形成装置の概略構成を説明するための側面図である。
【図8】図8は、他の従来の塗布膜形成装置の概略構成を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の塗布膜形成装置及び塗布膜形成方法にかかる一実施形態を、図面に基づき説明する。尚、この実施形態にあっては、塗布膜形成装置を、被処理基板であるガラス基板を浮上搬送しながら、前記基板に対し処理液であるレジスト液の塗布処理を行うレジスト塗布処理ユニットに適用した場合を例にとって説明する。
図1は、本発明に係る一実施の形態を示すレジスト塗布処理ユニットの平面図であり、図2は、その概略側面図である。また、図3は、図1のA−A矢視断面図である。
【0027】
図1、図2に示すように、このレジスト塗布処理ユニット1は、ガラス基板Gを枚様式に一枚ずつ浮上搬送するための浮上搬送ステージ2(基板搬送路)を備え、基板Gが所謂平流し搬送されるように構成されている。
浮上ステージ2は、基板搬送方向(X軸方向)に沿って、基板搬入部2Aと、塗布処理部2Bと、基板搬出部2Cとが順に配置され構成されている。基板搬入部2A及び基板搬出部2Cの上面には、図1に示すように多数のガス噴出口2aがX方向とY方向に一定間隔で設けられ、ガス噴出口2aからの不活性ガスの噴出による圧力負荷によって、ガラス基板Gを浮上させている。
【0028】
また、塗布処理部2Bの上面には、多数のガス噴出口2aとガス吸気口2bとがX方向とY方向に一定間隔で交互に設けられている。そして、この塗布処理部2Bにおいては、ガス噴出口2aからの不活性ガスの噴出量と、ガス吸気口2bからの吸気量との圧力負荷を一定とすることによって、ガラス基板Gをよりステージに近接させた状態で浮上させている。
【0029】
また、浮上ステージ2の幅方向(Y軸方向)の左右側方には、X軸方向に平行に延びる一対のガイドレール5(第1のガイドレール)が設けられている。この一対のガイドレール5には、基板搬送方向(X軸方向)に移動可能に取り付けられたスライダ6(第1のスライダ)が設けられ、各スライダ6には、それぞれ基板Gの幅方向端部を下方から吸着保持する基板保持部7(基板保持手段)が設けられている。尚、前記一対のガイドレール5と各スライダ6と各基板保持部7とにより基板搬送手段が構成される。
【0030】
また、図示するように、浮上ステージ2上には、ガラス基板Gにそれぞれレジスト液を吐出可能な2つのノズル16、17が設けられている。ノズル16、17は、それぞれY方向に向けて例えば長い略直方体形状に形成され、ガラス基板GのY方向の幅よりも長く形成されている。
図2、図3に示すようにノズル16、17の下端部には、浮上ステージ2の幅方向に長いスリット状の吐出口16a,17aがそれぞれ形成されている。
【0031】
これらのノズル16、17は、図2に示すように、独立して設けられた第1のレジスト供給源18と第2のレジスト供給源19とからそれぞれレジスト液が供給され、その吐出の切り替えは、コンピュータからなる制御部40(制御手段)によってなされる。尚、前記第1のレジスト供給源18と第2のレジスト供給源19とは、それぞれレジスト液の貯留タンク(図示せず)と、前記貯留タンクからレジスト液を吸引して補充し、ノズル16,17に供給するレジストポンプ(図示せず)等により構成される。
【0032】
また、図1に示すようにノズル16、17の左右両側には、X方向に延びる一対のガイドレール10(第2のガイドレール)が設けられている。このガイドレール10に沿ってスライド移動可能な一対のスライダ11(第2のスライダ)が設けられ、図3に示すように一対のスライダ11の上に、浮上ステージ2を跨ぐように門型のフレーム12(ノズル保持手段)が立設されている。前記フレーム12は、前記スライダ11の上に立設された一対のシャフト部12aと、一対のシャフト部12aの上端部の間に架設された直棒状のノズルアーム12bとからなる。
ノズルアーム12bの前後の側面にはノズル16,17をそれぞれ吊り下げて保持すると共に、ノズル16,17を昇降移動させる例えばボールネジ機構からなる昇降駆動機構20,21が設けられている。
この昇降駆動機構20,21により、塗布処理時には各ノズル16,17は、下方を搬送される基板Gに近接するために下降移動され、待機時には、上昇移動される。図2に示すように、昇降駆動機構20,21は、制御部40によって、その駆動が制御される。
【0033】
かかる構成において、フレーム12を支持するスライダ11がガイドレール10に沿って移動することにより、ノズル16,17はX軸に沿って移動され、昇降駆動機構20,21が駆動することにより、塗布処理部2Bにおいて昇降移動されるようになっている。
尚、前記一対のガイドレール10と各スライダ11とフレーム12とによりノズル移動手段が構成される。
【0034】
また、浮上ステージ2の上方には、基板搬送方向(X軸方向)に沿って上流側から順に、第1の待機部26とプライミング処理部27と第2の待機部28とが設けられている。
第1の待機部26は、第1のノズル16の吐出口16aに付着した余分なレジスト液を洗浄し除去するノズル洗浄部26aと、いわゆるダミー吐出を行うダミーディスペンス部26bとを有している。
また、第2の待機部28は、第2のノズル17の吐出口17aに付着した余分なレジスト液を洗浄し除去するノズル洗浄部28aと、いわゆるダミー吐出を行うダミーディスペンス部28bとを有している。
【0035】
また、プライミング処理部27は、ノズル16,17の吐出口16a、17aに付着しているレジスト液を整えるためのプライミングローラ27aと、プライミングローラ27aを回転自在に収容し、洗浄液(シンナー液)が貯留されたケーシング27bとを有している。
【0036】
また、浮上ステージ2の左右両側であって前記一対のガイドレール10とガイドレール5との間には、基板搬送路に沿ってさらに一対のガイドレール22(第3のガイドレール)が設けられ、このガイドレール22には、レール上をスライド移動可能な一対のスライダ23,24,25が上流側から順に設けられている。そして、スライダ23は第1の待機部26をX軸に沿って移動自在に支持し、スライダ24(第3のスライダ)はプライミング処理部27をX軸に沿って移動自在に支持し、スライダ25は第2の待機部28をX軸に沿って移動自在に支持している。尚、前記一対のガイドレール22と各スライダ24とによりプライミング移動手段が構成される。
【0037】
これにより、第1の待機部26は、第1のノズル16の下方に進退移動自在とされ、第2の待機部28は、第2のノズル17の下方に進退移動自在となされる。また、プライミング処理部27は、塗布処理を行うノズル16,17のいずれかの下方に移動可能となされ、プライミング処理を行うようになされている。
【0038】
尚、図1に示すように、前記ガイドレール5をスライド移動するスライダ6と、前記ガイドレール10をスライド移動するスライダ11と、前記ガイドレール22をスライド移動するスライダ23,24,25とは、をそれぞれ制御部40によって駆動制御される。
【0039】
続いて、このように構成されたレジスト塗布処理ユニット1における基板Gへのレジスト液の塗布処理の一連の流れについて図4乃至図6を用いて説明する。
レジスト塗布処理ユニット1において、図5(a)に示すように浮上ステージ2の基板搬入部2Aに新たにガラス基板G1が搬入されると、基板G1はステージ上に形成された不活性ガスの気流によって下方から支持され、基板キャリア7(図1参照)により保持される。
【0040】
このとき、第1のノズル16は、制御部40がスライダ11を駆動制御することによりX軸上の塗布位置x1に配置され、プライミング処理部27によってプライミング処理が施される。また、第2のノズル17は、X軸上の待機位置x2に配置され、第2の待機部28のノズル洗浄部28aによって洗浄処理が施される(図4のステップS1)。
尚、第1のノズル16のプライミング処理が完了すると、制御部40は第2のノズル17の直下にあった第2の待機部28を下流側に退かせ、第1のノズル16の下方にあったプライミング処理部27を、図5(b)に示すように第2のノズル17の下方(X軸上の待機位置x2)に移動する。
【0041】
また、図5(b)に示すように基板G1が基板搬入部2Aから塗布処理部2Bに搬入されると、制御部40は、第1のノズル16を下降移動させ、その吐出口16aが基板面に近接される。そして、下方を搬送される基板G1にレジスト液が吐出される。これにより基板G1の上面にレジスト液が塗布される。
一方、ノズル先端の洗浄処理を終えた第2のノズル17の下方には、前記のようにプライミング処理部27が配置されており、吐出口17aに付着するレジスト液を整えるプライミング処理が施される(図4のステップS2)。
【0042】
塗布処理部2Bにおいて塗布処理が施された基板G1は、図6(a)に示すように基板搬出部2Cから搬出され(図4のステップS3)、次に塗布処理を行う基板が有る場合には(図4のステップS4)、基板G2が基板搬入部2Aに搬入される。
基板G2が基板搬入部2Aに搬入された際、前記塗布処理を終えた第1のノズル16は、制御部40がスライダ11を駆動制御することによりX軸上の塗布位置x1から上流側の待機位置x3に移動され、第1の待機部26のノズル洗浄部26aによりノズル先端の洗浄処理が施される。
【0043】
また、X軸上の待機位置x2でプライミング処理を施されていた第2のノズル17は、図6(a)に示すようにプライミング処理部27と共にX軸上の塗布位置x1に移動され、継続してプライミング処理が施される(図4のステップS5)。
尚、第2のノズル17のプライミング処理が完了すると、制御部40は第1のノズル16の直下にあった第1の待機部26を上流側に退かせ、第2のノズル17の下方にあったプライミング処理部27を、図6(b)に示すように第1のノズル16の下方(X軸上の待機位置x3)に移動する。
【0044】
また、図6(b)に示すように基板G2が基板搬入部2Aから塗布処理部2Bに搬入されると、制御部40は、第2のノズル17を下降移動させ、その吐出口17aが基板面に近接される。そして、下方を搬送される基板G2に対しレジスト液が吐出される。これにより基板G2の上面にレジスト液が塗布される。
一方、ノズル先端の洗浄処理を終えた第1のノズル16の下方には、前記のようにプライミング処理部27が配置されており、吐出口16aに付着するレジスト液を整えるプライミング処理が施される(図4のステップS6)。
また、塗布処理が終了した基板G2は基板搬出部2Cから搬出され(図4のステップS7)、次に塗布処理を行う基板が有る場合には(図4のステップS8)、ステップS1の処理に戻る。
【0045】
以上のように、本発明にかかる実施の形態によれば、浮上ステージ2において、基板搬送方向(X軸)に沿って移動自在な第1のノズル16及び第2のノズル17を備え、塗布処理の際には、いずれか一方のノズルが同一の塗布位置x1に配置される。
また、前記第1のノズル16と第2のノズル17は、浮上ステージ2を基板搬送方向に沿って移動可能な共通のプライミング処理部27によってプライミング処理が施される。
このため、ノズル16,17のいずれか一方が塗布処理を行っている間には、他のノズルのプライミング処理を実施することができ、基板処理のタクトタイムを短縮することができる。
また、2つのノズル16,17の塗布位置は同一の位置(x1)であるため、浮上ステージ2から搬出した時点で、基板間での乾燥状態のばらつきを無くすことができる。また、2つのノズル16,17を具備しても、塗布位置が同一の位置であるため、塗布処理部2B(浮上ステージ2)の基板搬送方向の長さを延ばす必要がなく、また、プライミング処理部207や基板検出センサ等を共通に用いることができるため、コスト増加を抑制することができる。
【0046】
尚、前記実施の形態にあっては、連続的に搬入される基板Gに対し第1のノズル16と第2のノズル17とにより交互に塗布処理を行うものとしたが、本発明の構成によれば、第1のノズル16(または第2のノズル17)により連続的に複数の基板Gの塗布処理を行っている間に、第2のノズル17(または第1のノズル16)に供給する処理液の供給源を取り替える作業を行うことができる。
したがって、例えば、複数枚単位でそれぞれ種類の異なる処理液の塗布処理を行う場合、第1のノズル16(または第2のノズル17)による複数枚の基板Gへの処理を連続的に行った後、すぐに第2のノズル17(第1のノズル16)による複数枚の基板Gへの処理を連続的に行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 レジスト塗布処理ユニット(塗布膜形成装置)
10 レール(ノズル移動手段)
11 スライダ(第2のスライダ、ノズル移動手段)
12 フレーム(ノズル保持手段、ノズル移動手段)
16 第1のノズル
16a 吐出口
17 第2のノズル
17a 吐出口
20 制御部(制御手段)
G ガラス基板(被処理基板)
R レジスト液(処理液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有する第1のノズルと第2のノズルとを備え、前記ノズルの下方を基板搬送路に沿って搬送される前記基板に対し、前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一方の吐出口から処理液を吐出し、前記基板上に所定の塗布膜を形成する塗布膜形成装置であって、
基板搬送方向に沿って前後に配された前記第1のノズルと第2のノズルとを保持するノズル保持手段と、前記ノズル保持手段を基板搬送方向に沿って移動させるノズル移動手段と、前記第1のノズル及び前記第2のノズルの駆動制御と前記ノズル移動手段の駆動制御とを行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1のノズルと前記第2のノズルとが基板搬送路上の同一の塗布位置に配置されるよう前記ノズル移動手段を制御し、前記ノズル移動手段により前記ノズル保持手段を移動させ、前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させるように制御することを特徴とする塗布膜形成装置。
【請求項2】
前記第1のノズルと前記第2のノズルのいずれか一方の吐出口から所定量の処理液が吐出されたプライミングローラを回転させることにより、該ノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理部と、
前記プライミング処理部を基板搬送方向に沿って移動させるプライミング移動手段とを備え、
前記制御手段は、
前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させると共に、
プライミング処理部及び前記プライミング移動手段を制御し、前記プライミング移動手段により前記プライミング処理部を他のノズルに近接させ、該他のノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理を行うように制御することを特徴とする請求項1に記載された塗布膜形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、基板搬送路を連続して搬送される基板ごとに、前記第1のノズルと前記第2のノズルとが交互に前記基板搬送路上の前記同一の塗布位置に配置されるよう前記ノズル移動手段を制御し、該ノズル移動手段により前記ノズル保持手段を移動させるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された塗布膜形成装置。
【請求項4】
前記ノズル保持手段は、
前記基板搬送路を基板幅方向に跨ぐ門型のフレームであって、
前記フレーム上部の前後に、前記第1のノズルと第2のノズルをそれぞれ昇降移動可能に保持する第1のノズル昇降手段と第2のノズル昇降手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された塗布膜形成装置。
【請求項5】
前記被処理基板を基板搬送路に沿って移動させる基板搬送手段を備え、
前記基板搬送手段は、前記基板搬送路の左右両側に、該基板搬送路に沿って敷設された一対の第1のレールと、前記基板の幅方向端部を保持する基板保持手段と、前記基板保持手段を支持すると共に前記第1のレールに沿って移動可能な第1のスライダとを有し、
前記ノズル移動手段は、前記基板搬送路の左右両側であって、前記一対の第1のレールの外側に前記基板搬送路に沿って敷設された一対の第2のレールと、前記ノズル保持手段を支持すると共に前記第2のレールに沿って移動可能な第2のスライダとを有し、
前記プライミング移動手段は、前記基板搬送路の左右両側であって、前記一対の第1のレールと前記一対の第2のレールとの間に前記基板搬送路に沿って敷設された一対の第3のレールと、前記プライミング処理部を支持すると共に前記第3のレールに沿って移動可能な第3のスライダとを有することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載された塗布膜形成装置。
【請求項6】
被処理基板の幅方向に長いスリット状の吐出口を有する第1のノズル及び第2のノズルと、前記第1のノズルと前記第2のノズルのいずれか一方の吐出口から所定量の処理液が吐出されたプライミングローラを回転させることにより、該ノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理部とを備える塗布膜形成装置において、前記ノズルの下方を基板搬送路に沿って搬送される前記基板に対し、前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一方の吐出口から処理液を吐出し、前記基板上に所定の塗布膜を形成する塗布膜形成方法であって、
前記第1のノズルと前記第2のノズルいずれか一方のノズルを基板搬送路上の同一の塗布位置に配置し、前記同一の塗布位置に配置された前記第1のノズルと第2のノズルのいずれか一のノズルにより前記基板に処理液を吐出させると共に、
前記プライミング処理部を他のノズルに近接させ、該他のノズルの吐出口に付着した処理液を整えるプライミング処理を行うように制御することを特徴とする塗布膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−199413(P2012−199413A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62995(P2011−62995)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】