説明

塗布装置

【課題】 重量が大きく反りが大きい基板に対して塗布液を塗布する場合においても、装置コストを増大させることなく、短い処理時間で精度よく塗布液を塗布することが可能な塗布装置を提供する。
【解決手段】 基板は、基板搬送機構14によりステージ12上に搬送されて、その保持面30に吸着保持される。そして、ステージ12上に吸着保持された基板の表面に、スリットノズル41における塗布液吐出用スリットを近接させた状態で、スリットノズル41を基板に対して移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する。しかる後、塗布液が塗布された基板は、基板搬送機構15によりステージ上から搬出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機EL表示装置用ガラス基板、液晶表示装置用ガラス基板、太陽電池用パネル基板、PDP用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板等の基板に対して塗布液を塗布するための塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような塗布装置においては、基板をステージ上に載置するとともに、スリットノズルにおける塗布液吐出用スリットをステージ上に載置された基板の表面と近接させた状態で、このスリットノズルを基板の表面に沿って移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する構成が採用されている。
【0003】
このような塗布装置においては、基板をステージ上に搬入し、または、ステージ上から基板を搬出するときには、ステージ上に昇降可能に配設されたリフトピンと、このリフトピンとの間で基板を受け渡す搬送ロボットとが使用される(特許文献1参照)。
【0004】
また、基板をローラにより搬送しながら、スリットノズルから基板の表面に塗布液を塗布する構成の塗布装置も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−287914号公報
【特許文献2】特開2009−61380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたように、リフトピンと搬送ロボットにより基板を搬送する場合には、基板の搬送に時間がかかることから、塗布処理に要する時間が長くなるという問題がある。また、基板として、比較的厚い太陽電池用パネル基板を使用する場合には、基板の重量が大きくなることから、基板を昇降するリフトピンや基板を搬送する搬送ロボットも大型化し、装置のコストが大きくなるという問題がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載されたように、基板をローラにより搬送しながらスリットノズルから基板の表面に塗布液を塗布する構成を採用した場合においては、基板の搬送に余分な時間を要することはないが、塗布液を精度よく塗布することができないという問題がある。また、基板として、比較的厚く反りが大きい太陽電池用パネル基板を使用する場合には、基板の反りにより基板とスリットノズルとの距離を一定とすることができず、塗布液の塗布精度がさらに悪化する。さらに、基板の反りが大きい場合には、基板とスリットノズルとが衝突する危険もある。なお、このような現象は、その厚みが1.7mm以上の太陽電池用パネル基板において、特に生じやすい現象である。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、例えば、太陽電池用パネル基板のように、重量が大きく反りが大きい基板に対して塗布液を塗布する場合においても、装置コストを増大させることなく、短い処理時間で精度よく塗布液を塗布することが可能な塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板を吸着保持するステージと、塗布液吐出用スリットを、前記ステージ上に載置された基板の表面と近接させた状態で、前記基板に対して水平方向に相対的に移動させることにより、前記基板の表面に塗布液を塗布するスリットノズルと、前記ステージに対して基板を水平に搬送する基板搬送機構と、前記ステージに配設され、少なくともその一部が前記ステージの表面より上方に配置されることにより、前記基板搬送機構との間で基板を搬送する搬送位置と、その全部が前記ステージの表面より下方に配置されることにより、前記基板を前記ステージの表面に吸着保持させるための退避位置との間を昇降可能な複数の基板搬送部材とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数の基板搬送部材は、ステージに形成された孔部内において、互いに同期して昇降可能に配設された複数のローラまたはベルトである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記スリットノズルは、前記ステージに対して第1の方向に往復移動するとともに、前記基板搬送機構および前記複数の基板搬送部材は、前記第1の方向と直交する第2の方向に基板を搬送する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記基板搬送機構は、前記ステージに近接し基板を受け渡す受渡位置と、前記ステージと前記基板搬送機構との間を前記第1の方向に前記スリットノズルが往復移動可能となる離間位置との間を往復移動する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明において、前記スリットノズルにより前記基板に塗布液を塗布している間、前記基板の裏面の複数の位置を吸着保持した状態で、前記基板を前記ステージの表面に押し付け、前記基板を前記ステージに対して平坦に保持する複数の吸着部材を備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記吸着部材は、弾性材からなる皿状の吸着部と減圧手段に連通する基部とを備え、前記ステージに形成された孔部内において、吸着部の先端が前記ステージの表面より突出した状態で、その基部が前記ステージに固定された吸着盤より構成され、前記吸着部の先端と前記基板の裏面とが当接した状態で、前記吸着部と前記基板とにより形成される空間内を排気することにより、前記吸着部が弾性変形する作用を利用して、前記基板の裏面を前記ステージの表面に押し付ける。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明において、前記基板は、太陽電池用パネル基板である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記基板の厚みは、1.7mm以上である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、基板搬送部材によりステージ上に搬送した基板を、ステージに吸着保持した後、スリットノズルにより塗布液を塗布することができることから、装置コストを増大させることなく、短い処理時間で精度よく塗布液を塗布することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、基板搬送機構および複数の基板搬送部材により基板を一方向に搬送しながら、スリットノズルによりそれと直交する方向に塗布液を塗布することができ、効率的に塗布動作を実行することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ステージに対する基板の搬送を確実に行うとともに、基板を搬送する方向と直交する方向に往復移動しつつ塗布処理を行うスリットノズルとの干渉を防ぐことができる。これにより、安定した塗布液の塗布を行うことができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、複数の吸着部材により、塗布液を塗布されている間、基板をステージの表面に押し付けることから、反りが大きい基板であっても、塗布動作中においても基板の反りを積極的に矯正することにより、基板に精度よく塗布液を塗布することが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、吸着盤をステージに対して昇降させるための特別な機構を設けることなく、基板の裏面をステージの表面に押し付けることが可能となる。
【0022】
請求項7および請求項8に記載の発明によれば、比較的厚く、反りが大きい太陽電池用パネル基板に対して正確に塗布液を塗布することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の第1実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【図2】スリットノズル41による塗布液の供給動作を模式的に示す説明図である。
【図3】スリットノズル41を一部破断して示す正面図である。
【図4】ローラ81の昇降機構を示す概要図である。
【図5】吸着盤71の断面図である。
【図6】ステージ12に形成された孔部33内に配設された吸着盤71を示す説明図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係る塗布装置の斜視図である。
【0025】
この塗布装置は、太陽電池用パネル基板(以下、単に「基板」という)に対して塗布液を塗布するためのものであり、本体11上に配設されたステージ12と、このステージ12の保持面30に対して水平方向に往復移動するスリットノズル41と、ステージ12に対して基板を搬入する基板搬送機構14と、ステージ12から基板を搬出する基板搬送機構15とを備える。なお、この塗布装置により塗布液が塗布される基板は、一般的に、1.7mm以上の厚みを有し、大きな反りが生じているものが多い。また、塗布液としては、例えば、ナノメタルインクやレジスト液を採用することができる。
【0026】
このため、この塗布装置においては、基板は、基板搬送機構14によりステージ12上に搬送されて、その保持面30に吸着保持される。そして、ステージ12の保持面30上に吸着保持された基板の表面に、スリットノズル41における塗布液吐出用スリットを近接させた状態で、このスリットノズル41を基板に対して水平方向に移動させることにより、基板の表面に塗布液を塗布する。しかる後、塗布液が塗布された基板を、基板搬送機構15によりステージ12上から搬出する。
【0027】
上記基板搬送機構14は、ステージ12の一方側に配設されている。基板搬送機構14は、一対の側板97の両端部に軸支され、図示しないモータの駆動により回転する一対の駆動軸96を備える。この駆動軸96は、各々、3個のプーリを備え、これらのプーリ間には、3本のベルト95が巻回されている。これら3本のベルト95は、一対の駆動軸96の回転に伴って、互いに同期して回動し、ベルト95の上部に載置された基板をステージ12上に水平に搬入する。なお、一対の側板97は、これらの側板97をスライド可能に支持する支持部98に沿って、各ベルト95等がステージ12に近接し、ベルト95上に載置された基板をステージ12に受け渡し可能とする受渡位置と、ステージ12から離隔して後述する移動子50bの移動を可能とする離間位置との間を往復移動可能となっている。
【0028】
同様に、上記基板搬送機構15は、ステージ12の他方側に配設されている。基板搬送機構15は、一対の側板93の両端部に軸支され、図示しないモータの駆動により回転する一対の駆動軸92を備える。この駆動軸92は、各々、3個のプーリを備え、これらのプーリ間には、3本のベルト91が巻回されている。これら3本のベルト91は、一対の駆動軸92の回転に伴って、互いに同期して回動し、ベルト91の上部に載置された基板をステージ12から水平に搬出する。なお、一対の側板93は、これらの側板93をスライド可能に支持する支持部94に沿って、各ベルト91等がステージ12に近接し、ステージ12に載置された基板をベルト91に受け渡し可能とする受渡位置と、ステージ12から離隔して後述する移動子50bの移動を可能とする離間位置との間を往復移動可能となっている。
【0029】
つまり、基板搬送機構14と、ステージ12と、基板搬送機構15とは一列に配置されている。したがって、基板は、基板搬送機構14によってステージ12の一方側から搬入され、ステージ12上で塗布液の塗布処理が行われた後、ステージ12の他方側から基板搬送機構15によって搬出される。
【0030】
また、基板搬送機構14と、基板搬送機構15は、ステージ12に対して基板をステージ12に受け渡し可能とする受渡位置と、ステージ12から離隔して後述する移動子50bの移動を可能とする離間位置との間を往復移動可能となっているため、基板を搬送する際には、ステージ12に近接することで基板をステージ12に確実に搬送することができる。また、後述するスリットノズル41が塗布液の塗布を行う際には、ステージ12から離間することで、スリットノズル41との干渉を防ぎ、安定した塗布液の塗布を行うことができる。
【0031】
上記スリットノズル41は、ステージ12を跨ぐように設けられた架橋構造を有するノズル支持部40により支持されている。すなわち、スリットノズル41は、ノズル支持部40の下面に付設されている。一方、ステージ12の両側部分には、それぞれ固定子(ステータ)50aと移動子50bを備える一対のACコアレスリニアモータ(以下、単に、「リニアモータ」と略する。)50が配設されている。そして、ノズル支持部40の両端は、一対の移動子50bに固定されている。なお、この移動子50b内には、ノズル支持部40の両端と連結された図示しない左右一対の昇降機構が配設されている。このため、スリットノズル41は、リニアモータ50の作用によりステージ12の表面に沿って往復移動するとともに、図示しない昇降機構の作用によりステージ12に対して昇降する構成となっている。なお、このスリットノズル41の往復移動方向は、基板搬送機構14、15による基板の搬送方向と直交する方向となっている。
【0032】
図2はスリットノズル41による塗布液の供給動作を模式的に示す説明図であり、図3はスリットノズル41を一部破断して示す正面図である。
【0033】
このスリットノズル41は、その長手方向(図2における紙面に垂直な方向であり図3における左右方向)に延びるスリット状の吐出用スリット44を有する。この吐出用スリット44の長手方向の長さは、基板Sにおける矩形状の素子形成部分の短辺の長さ以上の長さである。塗布液供給配管46により供給された塗布液45は、図2に示すように、基板Sの表面に近接配置されたスリット状の吐出用スリット44を介して、基板Sの表面に供給される。そして、基板Sの表面に塗布液膜が形成される。
【0034】
再度図1を参照する。上記ステージ12の表面には、基板Sを吸着保持するための吸着溝72が形成されている。そして、ステージ12の表面には、基板搬送部材としての複数のローラ81が、2列状をなして配設されている。これらのローラ81は、その一部がステージ12の保持面30の表面より上方に配置される搬送位置と、その全部がステージ12の保持面30の表面より下方に配置される退避位置との間を互いに同期して昇降可能となっている。また、ステージ12の表面には、吸着部材としての多数の吸着盤71が、ステージ12における保持面30の表面にその一部を突出させた状態で配設されている。なお、ローラ81は2列以上の列をなして配設されていてもよい。
【0035】
図4は、ローラ81の昇降機構を示す概要図である。
【0036】
列をなす複数のローラ81は、支持部材82により回転可能に支持されている。そして、支持部材82は、一対のエアシリンダ83の駆動により昇降する。このため、複数のローラ81は、一対のエアシリンダ83の駆動により、図4に示すように、その一部が、図4において仮想線で示すステージ12の保持面30の表面より上方に配置される搬送位置と、その全部がステージ12の保持面30の表面より下方に配置される退避位置との間を互いに同期して昇降する。
【0037】
図5は、吸着盤71の断面図である。また、図6は、ステージ12に形成された凹形状の孔部33内に配設された吸着盤71を示す説明図である。なお、図5(a)および図6(a)は、吸着盤71に応力や吸着力が作用していない状態を示しており、図5(b)および図6(b)は、吸着盤71により基板Sを吸着保持した状態を示している。
【0038】
この吸着盤71は、図5に示すように、弾性材料からなり、応力や吸着力によって弾性変形可能な皿状の吸着部71aと、減圧手段に連通する連通孔71cが形成された基部71bとから構成される。弾性材としては、シリコンゴムやフッ素ゴム等の樹脂材を採用することができる。この吸着盤71は、図6に示すように、ステージ12に形成された孔部33内において、吸着部71aの先端がステージ12の保持面30より突出した状態で配設されている。そして、吸着盤71の基部71bには、ネジ部74が付設されており、このネジ部74は、ステージ12の下面に配設された支持板34に固定されている。そして、吸着部71aの先端のステージ12の保持面30からの突出量は、ネジ35により調整可能となっている。なお、ネジ部74は、中空構造を有し、図5に示す連通孔71cは、図6に示す配管73を介してファンや真空ポンプ等の減圧手段と連通されている。
【0039】
この吸着盤71により基板Sを吸着保持する場合に、吸着盤71が図5(a)および図6(a)に示す状態から、図5(b)および図6(b)に示す弾性変形した状態に遷移する。その際、吸着盤71の基部71bが固定されていた場合は、吸着盤71の吸着部71aと基板Sとの当接面の位置が基部71b側に移動する。これに伴って、そこに吸着保持する基板Sを基部71b側に移動させるという作用を生ずる。
【0040】
すなわち、吸着盤71における吸着部71aの先端と基板Sの裏面とが当接した状態で、減圧手段の作用により連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を排気することで、図5(b)および図6(b)に示すように、吸着部71aが、空間内の気体を排気することで生じた応力によって弾性変形する。つまり、吸着部71aの開口部側の開口面積が広がり、深さのある皿状から平坦な皿状になる。言い換えると、吸着部71aと基板Sとが当接する当接面の面積が大きくなる。これにより、吸着部71aの基板Sに対する吸着力が大きくなり、確実に基板Sを吸着することができる。
【0041】
このときには、吸着盤71の基部71bが支持板34に固定されていることから、吸着部71aが弾性変形するときに、そこに吸着保持された基板Sも支持板34側に引き込まれる。このため、吸着盤71における吸着部71aの高さ位置を、吸着部71aの先端が前記ステージ12の保持面30より突出する状態とすることにより、基板Sの吸着保持時に、基板Sが反っていた場合でも吸着部71aは基板Sを吸着することができ、吸着部71aが弾性変形する作用を利用して、基板Sの裏面をステージ12の保持面30に押し付けることが可能となる。したがって、基板Sの反りが比較的大きい場合であっても確実に吸着部71aは基板Sを吸着することができ、そして、吸着部71aが弾性変形することで基板Sをステージ12に対して平坦に保持することができる。なお、本発明において、基板Sをステージ12に対して押し付けるとは、基板Sがステージ12側からの引き付けられる力によって、基板Sをステージ12に対して押し付けるものも含まれる。
【0042】
次に、上述した塗布装置により基板Sに塗布液を塗布する塗布動作について説明する。
【0043】
基板Sに対して塗布を開始するときには、図4に示すエアシリンダ83の作用により、複数のローラ81を、基板Sを搬送するための搬送位置に配置する。つまり、各ローラ81の上端は、基板搬送機構14における3本のベルト95の上端と同一高さ位置に配置される。このとき、基板搬送機構14もステージ12に近接した位置である受渡位置に移動する。
【0044】
この状態において、3本のベルト95を一対の駆動軸96の回転に伴って互いに同期して回動させる。また、各ローラ81を、ベルト95の回動と同期して回転させる。そして、これらのベルト95およびローラ81の作用により、基板Sを基板搬送機構14からステージ12における保持面30上に搬送する。
【0045】
基板Sがステージ12の上部まで移動すれば、ベルト95およびローラ81を停止させる。そして、各ローラ81を、エアシリンダ83の作用により、図4に示すように、ローラ81の一部である上端部がステージ12の保持面30より上方に配置された搬送位置から、ローラ81の上端部がステージ12の保持面30より下方に配置される退避位置に移動させる。言い換えると、ローラ81の全体がステージ12の保持面30より下方に配置される。これにより、基板Sは、吸着盤71における吸着部71aの先端付近と当接する。
【0046】
また、基板Sをステージ12の上部まで移動させた後には、基板搬送機構14における一対の側板97を移動させ、各ベルト95をステージ12に近接する受渡位置から、ステージ12から離隔して移動子50bの移動を可能とする離間位置に移動させる。なお、基板搬送機構15も、ステージ12から離隔して移動子50bの移動を可能とする離間位置に配置しておく。
【0047】
また、ステージ12上で塗布処理が行われた基板と、新たに塗布処理を行う基板を同時に搬入および搬出する場合は、基板搬送機構14と基板搬送機構15をステージ12に近接した位置である受渡位置に移動し、ステージ12から基板搬送機構15へ基板を搬出するとともに、基板搬送機構14からステージ12に基板を搬入するように動作させればよい。そして、塗布処理が行われる際には、基板搬送機構14および基板搬送機構15をステージ12から離隔した離間位置に配置すればよい。
【0048】
そして、減圧手段の作用により連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を排気する。これにより、図5(b)および図6(b)に示すように、吸着部71aが弾性変形し、基板Sの裏面がステージ12の保持面30に押し付けられる。また、これと並行して、吸着溝72からも排気を行い、基板Sの裏面側を大気圧に対して負圧とすることにより、基板Sを保持面30に吸着保持する。このため、基板Sとして、比較的厚く反りが大きい太陽電池用パネル基板を使用する場合においても、この基板Sをステージ12の保持面30に押し付けて、基板Sの反りを矯正することが可能となる。
【0049】
この状態において、スリットノズル41における吐出用スリット44をステージ12の保持面30に吸着保持された基板Sの表面と近接させた状態で、スリットノズル41をリニアモータ50の駆動により基板Sの表面に沿って移動させる。そして、図2に示すように、塗布液供給配管46により供給された塗布液45を、基板Sの表面に供給する。これにより、基板Sの表面に塗布液45の薄膜が形成される。
【0050】
このときにも、吸着盤71による基板Sの吸着保持は継続しており、基板Sの裏面は、吸着盤71の作用により、ステージ12の保持面30に押し付けられている。このため、基板Sとして、その厚みが1.7mm以上で、比較的大きな反りを有する太陽電池用パネル基板を使用する場合においても、塗布動作を継続中に、この基板Sをステージ12の保持面30に常時押し付けて、基板Sの反りを矯正しておくことが可能となる。このため、基板Sとスリットノズル41との距離を一定とすることができ、塗布液45の塗布精度を向上させることが可能となるとともに、基板Sの反りが大きい場合にも、基板Sとスリットノズル41とが衝突する危険を回避することが可能となる。
【0051】
また、この塗布装置においては、基板Sをリフトピンや搬送ロボットを利用して搬送する必要がないことから、装置構成を簡易化することができるとともに、塗布に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0052】
基板Sへの塗布液の塗布が完了すれば、連通孔71cを介して吸着部71aと基板Sとにより形成される空間内を大気解放する。これにより、吸着盤71は、図5(a)および図6(a)に示す状態に復帰する。また、複数のローラ81の上端部がステージ12の保持面30の表面より上方に配置される搬送位置まで上昇させる。さらに、基板搬送機構15を各ベルト91がステージ12に近接する受渡位置に移動させる。そして、3本のベルト91を一対の駆動軸92の回転に伴って互いに同期して回動させる。また、各ローラ81を、ベルト91の回動と同期して回転させる。そして、これらのベルト91およびローラ81の作用により、基板Sをステージ12上から基板搬送機構15に向けて搬出する。
【0053】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図7は、この発明の第2実施形態に係る塗布装置の斜視図である。なお、上述した実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0054】
上述した第1実施形態に係る塗布装置においては、2列状をなして配設された複数のローラ81により基板Sを搬送する構成を採用しているが、この第2実施形態に係る塗布装置においては、一対のベルト84により基板Sを搬送する構成を有する。これら一対のベルト84は、図4に示すローラ81の昇降機構と同様、エアシリンダ等により、その一部がステージ12の保持面30の表面より上方に配置される受渡位置と、その全部がステージ12の保持面30の表面より下方に配置される退避位置との間を互いに同期して昇降可能となっている。
【0055】
この第2実施形態に係る塗布装置においても、基板Sをリフトピンや搬送ロボットを利用して搬送する必要がないことから、装置構成を簡易化することができるとともに、塗布に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、基板搬送機構14、15は、架橋構造をなすスリットノズル41の支持機構との干渉を避けるために、各ベルト91、95等がステージ12に近接する受渡位置と、ステージ12から離隔する離間位置との間を往復移動可能となっている。しかしながら、基板Sの剛性が高い場合には、ステージ12と基板搬送機構14との間、および、ステージ12と基板搬送機構15との間に、移動子50bが通過可能な隙間を設け、基板搬送機構14、15を固定するようにしてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態においては、基板搬送機構14によりステージ12上に基板Sを搬入するとともに、基板搬送機構15によりステージ12上から基板Sを搬出する構成を採用しているが、単一の基板搬送機構により、ステージ12への基板Sの搬入と搬出とを実行してもよい。この場合には、上述した各実施形態のように、スリットノズル41の往復移動方向と基板搬送機構14、15による基板Sの搬送方向とを直交する方向とするかわりに、スリットノズル41の移動方向と同一方向に基板Sを搬送(搬入・搬出)する基板搬送機構を使用してもよい。
【0058】
また、上述した実施形態においては、基板搬送機構14および基板搬送機構15は、ベルト91、95によって基板Sをステージ12に搬入または搬出しているが、この実施形態に限定されるものではない。本発明においては、ステージ12に対して水平に基板Sを搬送すればよく、例えば、ローラを用いたローラ搬送や、水平方向に往復移動するシャトルを用いたシャトル搬送や、基板の裏面にエアを吹き付けることによって浮上させて搬送する浮上搬送等によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 本体
12 ステージ
14 基板搬送機構
15 基板搬送機構
30 保持面
40 ノズル支持部
41 スリットノズル
44 吐出用スリット
45 塗布液
50 リニアモータ
50a 固定子
50b 移動子
71 吸着盤
71a 吸着部
71b 基部
71c 連通孔
72 吸着溝
81 ローラ
82 支持部材
83 エアシリンダ
84 ベルト
91 ベルト
92 駆動軸
93 側板
95 ベルト
96 駆動軸
97 側板
S 基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着保持するステージと、
塗布液吐出用スリットを、前記ステージ上に載置された基板の表面と近接させた状態で、前記基板に対して水平方向に相対的に移動させることにより、前記基板の表面に塗布液を塗布するスリットノズルと、
前記ステージに対して基板を水平に搬送する基板搬送機構と、
前記ステージに配設され、少なくともその一部が前記ステージの表面より上方に配置されることにより、前記基板搬送機構との間で基板を搬送する搬送位置と、その全部が前記ステージの表面より下方に配置されることにより、前記基板を前記ステージの表面に吸着保持させるための退避位置との間を昇降可能な複数の基板搬送部材と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、
前記複数の基板搬送部材は、ステージに形成された孔部内において、互いに同期して昇降可能に配設された複数のローラまたはベルトである塗布装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の塗布装置において、
前記スリットノズルは、前記ステージに対して第1の方向に往復移動するとともに、
前記基板搬送機構および前記複数の基板搬送部材は、前記第1の方向と直交する第2の方向に基板を搬送する塗布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の塗布装置において、
前記基板搬送機構は、前記ステージに近接し基板を受け渡す受渡位置と、前記ステージと前記基板搬送機構との間を前記第1の方向に前記スリットノズルが往復移動可能となる離間位置との間を往復移動する塗布装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の塗布装置において、
前記スリットノズルにより前記基板に塗布液を塗布している間、前記基板の裏面の複数の位置を吸着保持した状態で、前記基板を前記ステージの表面に押し付け、前記基板を前記ステージに対して平坦に保持する複数の吸着部材を備える塗布装置。
【請求項6】
請求項5に記載の塗布装置において、
前記吸着部材は、弾性材からなる皿状の吸着部と減圧手段に連通する基部とを備え、前記ステージに形成された孔部内において、吸着部の先端が前記ステージの表面より突出した状態で、その基部が前記ステージに固定された吸着盤より構成され、
前記吸着部の先端と前記基板の裏面とが当接した状態で、前記吸着部と前記基板とにより形成される空間内を排気することにより、前記吸着部が弾性変形する作用を利用して、前記基板の裏面を前記ステージの表面に押し付ける塗布装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の塗布装置において、
前記基板は、太陽電池用パネル基板である塗布装置。
【請求項8】
請求項7に記載の塗布装置において、
前記基板の厚みは、1.7mm以上である塗布装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−66868(P2013−66868A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208738(P2011−208738)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】