塗膜形成装置および塗膜形成方法
【課題】外周縁部が平坦な塗膜を製造コストを高騰させることなく形成し得る塗膜形成装置を提供する。
【解決手段】基材11の一面側に樹脂材料Rを展延する展延部と、樹脂材料Rを硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて基材11の一面側に塗膜を形成可能に構成され、基材11における一面の外周縁部に向けてプレス用部材82を押圧させるプレス部35を備え、制御部は、展延部に対して樹脂材料Rを展延させた後に、硬化処理部に対して樹脂材料Rを半硬化させ、次いで、プレス部35に対して基材11の外周縁部に向けてプレス用部材82を押圧させて外周縁部上における半硬化状態の樹脂材料Rをプレスするプレス処理を実行させる。
【解決手段】基材11の一面側に樹脂材料Rを展延する展延部と、樹脂材料Rを硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて基材11の一面側に塗膜を形成可能に構成され、基材11における一面の外周縁部に向けてプレス用部材82を押圧させるプレス部35を備え、制御部は、展延部に対して樹脂材料Rを展延させた後に、硬化処理部に対して樹脂材料Rを半硬化させ、次いで、プレス部35に対して基材11の外周縁部に向けてプレス用部材82を押圧させて外周縁部上における半硬化状態の樹脂材料Rをプレスするプレス処理を実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一面側に塗布用材料を展延して塗膜を形成する塗膜形成装置および塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体用の基材の一面側に塗膜を形成する方法として、スピンコート法が従来から知られている。このスピンコート法では、基材の一面側に塗布用材料を滴下した後に基材を高速回転させることによって遠心力で塗布用材料を展延させる。したがって、このスピンコート法によれば、塗膜を比較的均一な厚みに形成することが可能となっている。一方、スピンコート法によって塗布用材料を展延させた際には、遠心力によって基材の外周縁部よりも外側に塗布用材料がはみ出すため、このはみ出した塗布用材料がスピンコートの終了時における基材の回転速度の低下に伴って塗布用材料自体の表面張力によって外周縁部に引き戻される結果、外周縁部に上向きの凸部が形成されることがある。この場合、例えば、データ記録(読出し)用レーザービームの照射側の塗膜が100μm程度の厚みに規定され、かつ駆動時におけるドライブ装置の光ピックアップと塗膜との間の距離(ワーキングディスタンス)が100μm程度に規定されている情報記録媒体においてこの凸部が大きいときには、ドライブ装置の光ピックアップが凸部に接触してトラブルが発生するおそれがある。この問題点を解決可能な技術として、この凸部をトリミング処理によって除去して光ディスク(情報記録媒体)を製造する製造方法が特開平11−86355号公報に開示されている。この製造方法では、スピンコーティング法(スピンコート法)によって紫外線硬化性樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)を基板に塗布する。次に、紫外線を照射して、塗布した樹脂を硬化させる。これにより、基板の信号面に光透過層が形成されたディスクが完成する。この場合、この状態のディスクの外周縁部には、上記したように、樹脂による凸部(盛り上がり部分)が形成されている。次いで、トリミング処理を実行する。具体的には、ディスクを回転させつつその外周縁部にトリミング用の工具を押し付ける。この際に、工具によってディスクの外周縁部(硬化した樹脂)が削り取られる。これにより、ディスクの外周縁部に形成された凸部が除去される。
【特許文献1】特開平11−86355号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の製造方法には、以下の問題点がある。すなわち、この製造方法では、基板に塗布した樹脂を硬化させた後に、工具によって樹脂を削り取るトリミング処理を実行している。この場合、硬化した樹脂を削り取る際に、樹脂が粉状となって飛散してディスクに付着することがある。したがって、この製造方法には、粉状の樹脂の付着に起因してディスク(光ディスク)の使用時においてエラーが発生するおそれがあるという問題点が存在する。この場合、クリーニング工程を追加して付着した粉状の樹脂を除去する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、クリーニング工程を追加する分、製造コストが高騰することとなる。したがって、この方法を採用するのは困難である。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、外周縁部が平坦な塗膜を製造コストを高騰させることなく形成し得る塗膜形成装置および塗膜形成方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく本発明に係る塗膜形成装置は、基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させるプレス部を備え、前記制御部は、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる。なお、本明細書における硬化には、塗布用材料の流動性が低下する程度の硬化状態から塗布用材料の全てが硬化反応をした硬化状態に至るまでの全ての硬化状態が含まれる。また、本明細書における半硬化には、塗布用材料の流動性が低下し、かつプレス処理による塗布用材料の変形が可能な全ての硬化状態が含まれる。
【0006】
この場合、基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させつつ当該外周縁部に沿って当該プレス用部材を移動させるプレス部を備え、前記制御部が、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させつつ当該外周縁部に沿って当該プレス用部材を移動させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる構成を採用することができる。
【0007】
また、基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させつつ当該基材を回転させるプレス部を備え、前記制御部が、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させつつ前記基材を回転させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる構成を採用することができる。
【0008】
また、前記制御部が、前記展延部に対して前記基材を回転させつつ前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させる構成を採用することができる。
【0009】
また、前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行する除去処理部を備え、前記制御部が、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記塗布用材料の半硬化に先立って前記除去処理部に対して前記除去処理を実行させる構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る塗膜形成方法は、基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧して当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行する。
【0011】
この場合、基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ当該外周縁部に沿って当該プレス用部材を移動させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することができる。
【0012】
また、基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ前記基材を回転させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することができる。
【0013】
また、前記基材を回転させつつ前記塗布用材料を半硬化させることができる。
【0014】
また、前記塗布用材料を展延した後に、前記塗布用材料の半硬化に先立ち、前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に塗布用材料を半硬化させ、基材における一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧して外周縁部上における半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することにより、外周縁部に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の塗布用材料に対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の塗布用材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく外周縁部に凸部のない平坦な塗膜を形成することができる。
【0016】
また、上記の塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に塗布用材料を半硬化させ、基材における一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ外周縁部に沿ってプレス用部材を移動させて外周縁部上における半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することにより、外周縁部に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の塗布用材料に対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の塗布用材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく外周縁部に凸部のない平坦な塗膜を形成することができる。
【0017】
また、上記の塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に塗布用材料を半硬化させ、基材における一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ基材を回転させて外周縁部上における半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することにより、外周縁部に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の塗布用材料に対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の塗布用材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく外周縁部に凸部のない平坦な塗膜を形成することができる。
【0018】
また、上記の塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、基材を回転させつつ塗布用材料を半硬化させることにより、塗布用材料がその表面張力で引き戻されることに起因する基材の外周縁部における凸部の形成を抑えることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に、塗布用材料の半硬化に先立ち、基材における外周面上の塗布用材料、および基材における外周縁部上の塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行することにより、基材の回転停止後にその表面張力で外周縁部に引き戻される塗布用材料を少ない量に抑えることができるため、外周縁部における凸部の形成を抑えて平坦化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る塗膜形成装置および塗膜形成方法の最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、光記録媒体1の構成について、図面を参照して説明する。
【0022】
光記録媒体(情報記録媒体)1は、図1に示すように、主要な機能層としての情報層12と、情報層12を覆うようにして形成された樹脂層13(本発明における塗膜)とが基材11の表面(本発明における一面)側に積層されて構成されている。また、光記録媒体1は、同図に示すように、樹脂層13側からレーザービームが照射されることによってデータの記録および読出しが可能に構成されている。基材11は、後述する製造装置21(図2参照)の基材作製装置22を用いて、例えばポリカーボネートを射出成形することによって作製される。この場合、基材11は、例えば、直径が120mm程度で厚みが1.2mm程度の円板状(平板形状)に形成されている。また、図1に示すように、基材11の中心部には、ドライブ装置に装着するための直径15mm程度の装着用の中心孔11aが形成されている。さらに、基材11の表面には、配列ピッチが例えば0.32μmのグルーブパターン(図示せず)が形成されている。
【0023】
情報層12は、一例として、反射層、誘電体層および相変化型記録層等で構成される機能層であって、製造装置21の情報層形成装置23を用いて形成される。樹脂層13は、光透過層として機能し、製造装置21の樹脂層形成装置24を用いて、本発明に係る塗膜形成方法に従って形成される。この場合、樹脂層13は、一例として、その厚みが100μmに規定されている。
【0024】
次に、光記録媒体1を製造する製造装置21の構成について、図面を参照して説明する。
【0025】
製造装置21は、図2に示すように、基材作製装置22、情報層形成装置23および樹脂層形成装置24を備えて構成されている。基材作製装置22は、例えば、射出成形機で構成されて、図1に示す基材11を射出成形によって作製する。情報層形成装置23は、例えば、スパッタ装置で構成されて、情報層12をスパッタ法によって形成する。
【0026】
樹脂層形成装置24は、本発明に係る塗膜形成装置に相当し、図3に示すように、滴下部31、回転部32、トリミング部33、エネルギー線照射部34、プレス部35、記憶部36、制御部37、操作部38および遮蔽板39を備えて構成され、本発明に係る塗膜形成方法に従って樹脂層13を形成する。この場合、滴下部31および回転部32によって本発明における展延部が構成される。滴下部31は、同図に示すように、樹脂材料供給機構41、移動機構42および吐出口43を備えている。樹脂材料供給機構41は、制御部37によって制御されて、樹脂層13形成用の例えば紫外線硬化型の樹脂材料R(本発明における塗布用材料。一例として、ウレタンアクリレート)を吐出口43に供給することにより、吐出口43から樹脂材料Rを吐出させて基材11(情報層12)の上に滴下する。移動機構42は、制御部37によって制御されて、回転部32のターンテーブル51(ターンテーブル51に載置された基材11)の上方において吐出口43を移動させる。
【0027】
回転部32は、図3に示すように、ターンテーブル51およびモータ52を備えている。ターンテーブル51は、全体として円板状に形成されて、図4に示すように、その上面における中心部には、基材11の中心孔11aに嵌め込み可能な環状突起51aが形成されている。また、ターンテーブル51の下面における中心部には、モータ52の回転軸(図示せず)に連結されるシャフト51bが取り付けられている。モータ52は、制御部37によって制御されて、ターンテーブル51を回転させる。
【0028】
トリミング部33は、本発明における除去処理部に相当し、図3に示すように、移動機構61およびトリミング工具62を備え、基材11の外周面11b(図4参照)に付着している樹脂材料R、および基材11の表面における外周縁部(以下、「表面外周縁部11c」ともいう)に付着している(塗布されている)樹脂材料Rを除去するトリミング処理(本発明における除去処理)を実行する。移動機構61は、制御部37によって制御されて、ターンテーブル51に載置された基材11の外周面11bに対して接離する方向にトリミング工具62を移動させる。トリミング工具62は、図5に示すように、本体部71と、本体部71の側面71aから突出する突出部72とが一体に形成されている。具体的には、このトリミング工具62は、本体部71部分に相当する長方形形状と突出部72部分に相当する台形形状とを一体化した形状の金属製の板状部材で形成されている。この場合、本体部71は、板状部材の上部および下部を直角に折り曲げて側面視コ字状に形成され、突出部72は、その先端部が本体部71における折り曲げられた先端部側に15度程度傾斜し、かつ本体部71における側面71aの上部に位置するように形成されている。また、突出部72は、その下端面72aが水平面に対して45度程度傾斜するようにして形成されている。この場合、本体部71および突出部72は、紫外線の反射を防止するために、暗色に着色されている。このトリミング工具62は、図9に示すように、基材11の外周面11bの近傍に移動させられたときに、本体部71の側面71aが外周面11bに近接して外周面11bに付着している樹脂材料Rを除去すると共に、突出部72の下端面72aが表面外周縁部11cに近接して表面外周縁部11cに付着している樹脂材料Rを除去する。
【0029】
エネルギー線照射部34は、本発明における硬化処理部に相当し、例えば、回転部32のターンテーブル51および後述するプレス部35の固定テーブル81の上方に配設されて、制御部37の制御に従ってターンテーブル51および固定テーブル81に載置されている基材11に向けて紫外線を照射する。この場合、エネルギー線照射部34は、制御部37の制御に従い、トリミング処理が行われた樹脂材料Rに対して所定の照射量の紫外線を照射することによって樹脂材料Rを半硬化させ、後述するプレス処理が行われた樹脂材料Rに対して所定の照射量の紫外線を照射することによって樹脂材料Rを完全(またはほぼ完全)に硬化させる。
【0030】
プレス部35は、図3に示すように、固定テーブル81、プレス用部材82および押圧機構83を備え、基材11の表面外周縁部11cに向けてプレス用部材82を押圧することにより、表面外周縁部11c上の半硬化状態の樹脂材料Rをプレスするプレス処理を実行する。固定テーブル81は例えば円板状に形成されて、基材11を載置可能に構成されている。この場合、固定テーブル81の上面における中心部には、図10に示すように、基材11の中心孔11aに嵌め込み可能な環状突起81aが形成されている。プレス用部材82は、図6に示すように、例えば金属によって円筒状に形成されている。この場合、プレス用部材82は、一例として、その外径が基材11の直径(この場合120mm)よりも大径の130mm程度で、その内径が基材11の直径よりもやや小径の118mm程度に形成されている。また、プレス用部材82の表面には、樹脂材料Rの付着を防止するためのコーティング加工が施されている。押圧機構83は、制御部37の制御に従って固定テーブル81に載置された基材11に向けてプレス用部材82を押し下げる(プレスする)。
【0031】
記憶部36は、樹脂材料Rの供給量、ターンテーブル51の回転速度(回転数)や回転時間、トリミング工具62を移動させる移動距離や移動タイミング、紫外線の照射量、およびプレス用部材82をプレスするプレス力等を含む樹脂層13の形成に必要な形成条件が記述された形成条件テーブルを記憶する。制御部37は、操作部38の操作によって設定された樹脂層13の厚み目標値にそれぞれ対応付けられた形成条件を記憶部36から読み出すと共に、読み出した形成条件に従い、滴下部31、回転部32、トリミング部33、エネルギー線照射部34およびプレス部35を制御する。操作部38は、樹脂層13の厚み目標値を入力するための入力ボタン等の各種操作ボタンを備えて構成され、これらの操作ボタンの操作に応じた操作信号を制御部37に出力する。遮蔽板39は、紫外線を遮蔽可能な例えば金属板で形成されて、ターンテーブル51の近傍でかつエネルギー線照射部34の下方の位置に配設されている。この場合、遮蔽板39は、トリミング部33の移動機構61によってその下方に移動されたトリミング工具62への紫外線を遮蔽する。
【0032】
次に、製造装置21を用いた光記録媒体1の製造方法について、樹脂層形成装置24による樹脂層13の形成方法(本発明に係る塗膜形成方法)を中心にして図面を参照して説明する。
【0033】
まず、製造装置21の基材作製装置22を用いて、例えばポリカーボネートを射出成形することによって基材11を作製する。この場合、基材作製装置22の射出成形用金型内にセットされたスタンパー(いずれも図示せず)の凹凸パターンが転写されて、基材11の表面側にグルーブパターンが形成される。次に、製造装置21の情報層形成装置23を用いて、反射層、誘電体層、相変化型記録層および誘電体層をスパッタ法によってこの順序で基材11の表面側に積層して情報層12を形成する。
【0034】
次いで、製造装置21の樹脂層形成装置24を用いて情報層12を覆うようにして基材11の上に樹脂層13を形成する。具体的には、まず、図4に示すように、情報層12が形成された面を上向きにした状態で、回転部32におけるターンテーブル51の環状突起51aに中心孔11aを嵌め込んで基材11を載置する。続いて、環状突起51aの内側に閉塞部材14の凸部14bを嵌め込むことによって基材11の中心孔11aを閉塞する。次に、操作部38を操作して、樹脂層13の厚み目標値である100μmを入力する。これに応じて、制御部37が、100μmの厚み目標値に対応付けられた形成条件を記憶部36から読み出す。次いで、制御部37は、読み出した形成条件に従って回転部32のモータ52を制御することにより、例えば120rpmの低回転速度でターンテーブル51を回転させる。続いて、制御部37は、滴下部31の移動機構42を制御して、図7に示すように、閉塞部材14の本体部14aの上方に吐出口43を移動させた後に、形成条件に従って滴下部31の樹脂材料供給機構41を制御して、樹脂材料Rを所定量だけ吐出口43に供給させる。これにより、吐出口43から樹脂材料Rが吐出されて、同図に示すように、ターンテーブル51の回転に伴って回転させられている基材11(閉塞部材14における本体部14aの外周面)に樹脂材料Rが滴下される。
【0035】
次に、制御部37は、モータ52の回転速度を上昇させて、例えば、1700rpmの高回転速度でターンテーブル51を回転させる。この際に、図8に示すように、樹脂材料Rが、回転に伴う遠心力によって基材11の表面外周縁部11cに向けてほぼ均一の厚みに展延される。また、同図に示すように、樹脂材料Rの一部が、遠心力によって基材11の外側に押し出される。次いで、制御部37は、形成条件に従い、トリミング部33に対してトリミング処理を実行させる。具体的には、制御部37は、モータ52の回転速度を1700rpmに維持させつつ、図9に示すように、トリミング部33の移動機構61を制御してトリミング工具62を基材11の外周面11bの近傍に移動させる。この際に、トリミング工具62における本体部71の側面71aが基材11の外周面11bに近接して、外周面11bに付着している樹脂材料Rを掻き取るようにして除去する。また、トリミング工具62における突出部72の下端面72aが基材11の表面外周縁部11cに近接して、表面外周縁部11cに付着している(塗布された)樹脂材料Rを掻き取るようにして除去する。また、表面外周縁部11cには、同図に示すように、遠心力によって外側に移動しようとする樹脂材料Rが突出部72によって堰き止められることにより、僅かな凸部RCが形成される。
【0036】
続いて、制御部37は、モータ52の回転速度を1700rpm、つまりトリミング処理時における回転速度と同じ回転速度に維持させつつ、移動機構61を制御してトリミング工具62を基材11から離間させて遮蔽板39の下方に移動させる。次に、制御部37は、モータ52の回転速度を例えば1700rpmに維持させつつ、エネルギー線照射部34を制御して樹脂材料R(基材11)に向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。この際に、樹脂材料Rは、紫外線の照射によって流動性が失われる程度に半硬化する。この場合、形成トリミング処理を実行したことにより、表面外周縁部11c上の樹脂層13は、僅かな凸部RCだけが形成されて大きな凸部のない比較的平坦な状態に形成される。
【0037】
次いで、制御部37は、モータ52の回転速度を低下させる。続いて、ターンテーブル51が停止した後に、閉塞部材14を基材11から取り外す。続いて、基材11をターンテーブル51から取り外して、樹脂材料Rが展延された面を上向きにした状態で、プレス部35における固定テーブル81の環状突起81aに中心孔11aを嵌め込んで基材11を載置する。次に、制御部37は、形成条件に従い、プレス部35に対してプレス処理を実行させる。具体的には、制御部37は、プレス部35の押圧機構83を制御して、固定テーブル81に載置された基材11に向けてプレス用部材82を移動させる。次いで、制御部37は、押圧機構83に対して基材11の表面外周縁部11cに向けてプレス用部材82をさらに移動させて押圧させることにより、表面外周縁部11c上の樹脂材料Rをプレスする。この際に、図10に示すように、表面外周縁部11c上に形成されていた凸部RCが、プレス用部材82によって押し潰される。この場合、樹脂材料Rが半硬化状態のため、プレス用部材82の押圧によって凸部RCを比較的容易に押し潰すことができる。これにより、図11に示すように、表面外周縁部11c上の樹脂層13が平坦な状態となる。続いて、制御部37は、押圧機構83に対してプレス用部材82を上方に移動させる。次に、制御部37は、形成条件に従い、エネルギー線照射部34を制御して固定テーブル81に載置された基材11の樹脂材料Rに向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。この際に、樹脂材料Rは、紫外線の照射によって完全(またはほぼ完全)に硬化する。次いで、固定テーブル81から基材11を取り外す。これにより、光記録媒体1が完成する。
【0038】
このように、この樹脂層形成装置24および樹脂層13の形成方法によれば、基材11の表面側に樹脂材料Rを展延させた後に、樹脂材料Rを半硬化させ、次いで、表面外周縁部11cに向けてプレス用部材82を押圧させて表面外周縁部11c上における半硬化状態の樹脂材料Rをプレスするプレス処理を実行することにより、表面外周縁部11c上に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の樹脂材料Rに対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の樹脂材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく表面外周縁部11c上に凸部のない平坦な樹脂層13を形成することができる。
【0039】
また、基材11を回転させつつ樹脂材料Rを半硬化させることにより、樹脂材料Rがその表面張力で引き戻されることに起因する表面外周縁部11c上における凸部の形成を抑えることができる。また、樹脂材料Rの半硬化に先立ち、基材11における外周面11b上の樹脂材料R、および基材11における表面外周縁部11c上の樹脂材料Rを除去するトリミング処理を実行することにより、基材11の回転停止後にその表面張力で表面外周縁部11c側に引き戻される樹脂材料Rを少ない量に抑えることができるため、表面外周縁部11c上における凸部の形成を抑えて平坦化することができる。
【0040】
なお、本発明は上記の構成や方法に限定されない。例えば、図12,13に示すように、上記したプレス部35に代えて、プレス用工具84およびモータ85を備えたプレス部35Aを採用することもできる。プレス用工具84は、同図に示すように、本発明におけるプレス用部材に相当する4つのローラ91,91・・と、各ローラ91,91・・を回転可能に支持する支持部92と、モータ85に連結される回転軸93とを備えて構成されている。この場合、ローラ91は、例えば、その幅が20mm程度の金属製の円錐状部材で形成されている。また、ローラ91の表面には、樹脂材料Rの付着を防止するためのコーティング加工が施されている。
【0041】
このプレス部35Aを備えた樹脂層形成装置(塗膜形成装置)を用いて樹脂層(塗膜)を形成する際には、上記の塗膜形成方法と同様にして、基材11の表面に展延した樹脂材料Rに対してトリミング処理を実行した後に、固定テーブル81に基材11を載置する。次に、制御部37が、プレス部35Aの押圧機構83を制御して、基材11に向けてプレス用工具84を移動させる。次いで、制御部37は、押圧機構83に対して基材11に向けてプレス用工具84をさらに移動させて押圧させることにより、表面外周縁部11c上の樹脂材料Rをプレスする。続いて、制御部37は、モータ85を制御して、プレス用工具84を回転させることにより、樹脂材料Rをプレスさせつつ表面外周縁部11cに沿ってローラ91を移動させる。この際に、表面外周縁部11c上に形成されていた凸部RCが、プレス用工具84の各ローラ91,91・・によって押し潰される。これにより、表面外周縁部11c上の樹脂層13が平坦化される。続いて、制御部37は、モータ85に対してプレス用工具84の回転を停止させると共に、押圧機構83に対してプレス用工具84を上方に移動させた後に、エネルギー線照射部34を制御して樹脂材料Rに向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。これにより、樹脂材料Rが紫外線の照射によって完全(またはほぼ完全)に硬化して光記録媒体1が完成する。このプレス部35Aを備えた樹脂層形成装置、およびこの樹脂層形成装置を用いた塗膜形成方法においても、上記した樹脂層形成装置24および塗膜形成方法と同様にして、製造コストの高騰を招くことなく表面外周縁部11c上に凸部のない平坦な樹脂層13を形成することができる。なお、ローラ91の幅は、20mmに限定されず、適宜変更することができる。また、円錐状のローラ91に代えて、円筒状のローラを採用することもできる。この場合、この円筒状のローラを斜め上方向から表面外周縁部11c上の樹脂材料Rに対して斜め下方向に押圧する構成を採用することもできる。
【0042】
また、図14に示すように、上記のプレス部35に代えて、押圧機構83、ターンテーブル86、モータ87および上記のプレス用工具84を備えたプレス部35Bを採用することもできる。このプレス部35Bを備えた樹脂層形成装置を用いて樹脂層を形成する際には、上記の塗膜形成方法と同様にして、基材11の表面に展延した樹脂材料Rに対してトリミング処理を実行した後に、ターンテーブル86に基材11を載置する。次に、制御部37が、プレス部35Bの押圧機構83を制御して、基材11に向けてプレス用工具84を移動させる。次いで、制御部37は、押圧機構83に対して基材11に向けてプレス用工具84をさらに移動させて押圧させることにより、表面外周縁部11c上の樹脂材料Rをプレスする。続いて、制御部37は、モータ87を制御して、ターンテーブル86を回転させることにより、樹脂材料Rをプレスさせつつ表面外周縁部11cに沿ってローラ91を相対的に移動させる。この際に、表面外周縁部11c上に形成されていた凸部RCが、プレス用工具84の各ローラ91,91・・によって押し潰される。これにより、表面外周縁部11c上の樹脂層13が平坦化される。続いて、制御部37は、モータ87に対してターンテーブル86の回転を停止させると共に、押圧機構83に対してプレス用工具84を上方に移動させた後に、エネルギー線照射部34を制御して樹脂材料Rに向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。これにより、樹脂材料Rが紫外線の照射によって完全(またはほぼ完全)に硬化して光記録媒体1が完成する。このプレス部35Bを備えた樹脂層形成装置、およびこの樹脂層形成装置を用いた塗膜形成方法においても、上記した樹脂層形成装置24および塗膜形成方法と同様にして、製造コストの高騰を招くことなく表面外周縁部11c上に凸部のない平坦な樹脂層13を形成することができる。
【0043】
また、基材11を回転させつつ樹脂材料Rを半硬化させる例について上記したが、基材11の回転を停止させた後に樹脂材料Rを半硬化させる方法を採用することもできる。さらに、トリミング処理の際に、基材11の外周面11bに付着した樹脂材料R、および基材11の表面外周縁部11c上に付着した樹脂材料Rの双方を除去する例について上記したが、トリミング処理の際に、外周面11bに付着した樹脂材料R、および表面外周縁部11c上に付着した樹脂材料Rのいずれか一方のみを除去する塗膜形成方法を採用することもできる。また、回転部32のターンテーブル51をプレス処理用のテーブルとして兼用する構成を採用することもできる。この構成によれば、固定テーブル81(またはターンテーブル86)を不要にすることができるため、その分だけ樹脂層形成装置24を簡易かつ小形に構成することができる。
【0044】
また、本発明における塗布用材料には、上記した紫外線硬化型の樹脂材料Rに限定されず、電子線硬化型の塗布用材料や熱線硬化型の塗布用材料が含まれる。また、樹脂に限定されず、各種の有機材料も本発明における塗布用材料に含まれる。この場合、エネルギー線照射部34に代えて、樹脂硬化用のエネルギー線としての電子線や熱線を照射可能なエネルギー線照射部を採用することにより、上記の各種の塗布用材料で樹脂層13を形成することができる。また、エネルギー線を照射することなく、熱風を吹き付けて塗布用材料を硬化させる方法(強制乾燥する方法)を採用することもできるし、所定時間放置することによって塗布用材料を硬化させる方法(自然乾燥する方法)を採用することもできる。また、レーザービームの照射側に位置して光透過層として機能する樹脂層13を形成する例について上記したが、カバー層として機能する塗膜などを形成する際に本発明を適用することもできる。さらに、情報層12が1層だけ形成された光記録媒体1を製造する例について上記したが、複数の情報層が形成された多層情報記録媒体を製造する製造工程において、各情報層間にスペーサ層を形成する際に本発明を適用することもできる。
【0045】
また、反射層、誘電体層および相変化型記録層等で構成された情報層12を有する光記録媒体1を製造する際に本発明を適用する例について上記したが、追記型の記録層を有する情報記録媒体や、基材およびスペーサ層の表面に情報用の凹凸パターンを形成した再生専用の情報記録媒体などを製造する際に本発明を適用することもできる。また、トリミング工具62を1つ備えた構成例について上記したが、トリミング工具62を複数備えた構成を採用することもできる。また、本体部71と突出部72とを一体形成したトリミング工具62を用いる例について上記したが、本体部71に相当する部材と、突出部72に相当する部材とを別体に構成し、これらを基材11の外周部における別々の位置に個別的に移動させる構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】光記録媒体1の断面図である。
【図2】製造装置21の構成を示すブロック図である。
【図3】樹脂層形成装置24の構成を示すブロック図である。
【図4】基材11、ターンテーブル51および閉塞部材14の断面図である。
【図5】トリミング工具62の斜視図である。
【図6】プレス用部材82の斜視図である。
【図7】滴下部31が樹脂材料Rを滴下している状態の基材11、ターンテーブル51および閉塞部材14の断面図である。
【図8】樹脂材料Rを展延している状態の基材11およびターンテーブル51の断面図である。
【図9】トリミング部33がトリミング処理を実行している状態の基材11およびターンテーブル51の断面図である。
【図10】プレス部35がプレス処理を実行している状態の基材11の断面図である。
【図11】樹脂層13が形成された基材11および固定テーブル81の断面図である。
【図12】プレス用工具84の斜視図である。
【図13】プレス部35Aがプレス処理を実行している状態の基材11の断面図である。
【図14】プレス部35Bがプレス処理を実行している状態の基材11の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
11 基材
11c 表面外周縁部
13 樹脂層
31 滴下部
32 回転部
33 トリミング部
34 エネルギー線照射部
35,35A,35B プレス部
37 制御部
82 プレス用部材
91 ローラ
R 樹脂材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一面側に塗布用材料を展延して塗膜を形成する塗膜形成装置および塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報記録媒体用の基材の一面側に塗膜を形成する方法として、スピンコート法が従来から知られている。このスピンコート法では、基材の一面側に塗布用材料を滴下した後に基材を高速回転させることによって遠心力で塗布用材料を展延させる。したがって、このスピンコート法によれば、塗膜を比較的均一な厚みに形成することが可能となっている。一方、スピンコート法によって塗布用材料を展延させた際には、遠心力によって基材の外周縁部よりも外側に塗布用材料がはみ出すため、このはみ出した塗布用材料がスピンコートの終了時における基材の回転速度の低下に伴って塗布用材料自体の表面張力によって外周縁部に引き戻される結果、外周縁部に上向きの凸部が形成されることがある。この場合、例えば、データ記録(読出し)用レーザービームの照射側の塗膜が100μm程度の厚みに規定され、かつ駆動時におけるドライブ装置の光ピックアップと塗膜との間の距離(ワーキングディスタンス)が100μm程度に規定されている情報記録媒体においてこの凸部が大きいときには、ドライブ装置の光ピックアップが凸部に接触してトラブルが発生するおそれがある。この問題点を解決可能な技術として、この凸部をトリミング処理によって除去して光ディスク(情報記録媒体)を製造する製造方法が特開平11−86355号公報に開示されている。この製造方法では、スピンコーティング法(スピンコート法)によって紫外線硬化性樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)を基板に塗布する。次に、紫外線を照射して、塗布した樹脂を硬化させる。これにより、基板の信号面に光透過層が形成されたディスクが完成する。この場合、この状態のディスクの外周縁部には、上記したように、樹脂による凸部(盛り上がり部分)が形成されている。次いで、トリミング処理を実行する。具体的には、ディスクを回転させつつその外周縁部にトリミング用の工具を押し付ける。この際に、工具によってディスクの外周縁部(硬化した樹脂)が削り取られる。これにより、ディスクの外周縁部に形成された凸部が除去される。
【特許文献1】特開平11−86355号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の製造方法には、以下の問題点がある。すなわち、この製造方法では、基板に塗布した樹脂を硬化させた後に、工具によって樹脂を削り取るトリミング処理を実行している。この場合、硬化した樹脂を削り取る際に、樹脂が粉状となって飛散してディスクに付着することがある。したがって、この製造方法には、粉状の樹脂の付着に起因してディスク(光ディスク)の使用時においてエラーが発生するおそれがあるという問題点が存在する。この場合、クリーニング工程を追加して付着した粉状の樹脂を除去する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、クリーニング工程を追加する分、製造コストが高騰することとなる。したがって、この方法を採用するのは困難である。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、外周縁部が平坦な塗膜を製造コストを高騰させることなく形成し得る塗膜形成装置および塗膜形成方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく本発明に係る塗膜形成装置は、基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させるプレス部を備え、前記制御部は、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる。なお、本明細書における硬化には、塗布用材料の流動性が低下する程度の硬化状態から塗布用材料の全てが硬化反応をした硬化状態に至るまでの全ての硬化状態が含まれる。また、本明細書における半硬化には、塗布用材料の流動性が低下し、かつプレス処理による塗布用材料の変形が可能な全ての硬化状態が含まれる。
【0006】
この場合、基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させつつ当該外周縁部に沿って当該プレス用部材を移動させるプレス部を備え、前記制御部が、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させつつ当該外周縁部に沿って当該プレス用部材を移動させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる構成を採用することができる。
【0007】
また、基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させつつ当該基材を回転させるプレス部を備え、前記制御部が、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させつつ前記基材を回転させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる構成を採用することができる。
【0008】
また、前記制御部が、前記展延部に対して前記基材を回転させつつ前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させる構成を採用することができる。
【0009】
また、前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行する除去処理部を備え、前記制御部が、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記塗布用材料の半硬化に先立って前記除去処理部に対して前記除去処理を実行させる構成を採用することができる。
【0010】
また、本発明に係る塗膜形成方法は、基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧して当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行する。
【0011】
この場合、基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ当該外周縁部に沿って当該プレス用部材を移動させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することができる。
【0012】
また、基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ前記基材を回転させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することができる。
【0013】
また、前記基材を回転させつつ前記塗布用材料を半硬化させることができる。
【0014】
また、前記塗布用材料を展延した後に、前記塗布用材料の半硬化に先立ち、前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に塗布用材料を半硬化させ、基材における一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧して外周縁部上における半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することにより、外周縁部に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の塗布用材料に対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の塗布用材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく外周縁部に凸部のない平坦な塗膜を形成することができる。
【0016】
また、上記の塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に塗布用材料を半硬化させ、基材における一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ外周縁部に沿ってプレス用部材を移動させて外周縁部上における半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することにより、外周縁部に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の塗布用材料に対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の塗布用材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく外周縁部に凸部のない平坦な塗膜を形成することができる。
【0017】
また、上記の塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に塗布用材料を半硬化させ、基材における一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧しつつ基材を回転させて外周縁部上における半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行することにより、外周縁部に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の塗布用材料に対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の塗布用材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく外周縁部に凸部のない平坦な塗膜を形成することができる。
【0018】
また、上記の塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、基材を回転させつつ塗布用材料を半硬化させることにより、塗布用材料がその表面張力で引き戻されることに起因する基材の外周縁部における凸部の形成を抑えることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る塗膜形成装置および塗膜形成方法によれば、塗布用材料を展延した後に、塗布用材料の半硬化に先立ち、基材における外周面上の塗布用材料、および基材における外周縁部上の塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行することにより、基材の回転停止後にその表面張力で外周縁部に引き戻される塗布用材料を少ない量に抑えることができるため、外周縁部における凸部の形成を抑えて平坦化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る塗膜形成装置および塗膜形成方法の最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、光記録媒体1の構成について、図面を参照して説明する。
【0022】
光記録媒体(情報記録媒体)1は、図1に示すように、主要な機能層としての情報層12と、情報層12を覆うようにして形成された樹脂層13(本発明における塗膜)とが基材11の表面(本発明における一面)側に積層されて構成されている。また、光記録媒体1は、同図に示すように、樹脂層13側からレーザービームが照射されることによってデータの記録および読出しが可能に構成されている。基材11は、後述する製造装置21(図2参照)の基材作製装置22を用いて、例えばポリカーボネートを射出成形することによって作製される。この場合、基材11は、例えば、直径が120mm程度で厚みが1.2mm程度の円板状(平板形状)に形成されている。また、図1に示すように、基材11の中心部には、ドライブ装置に装着するための直径15mm程度の装着用の中心孔11aが形成されている。さらに、基材11の表面には、配列ピッチが例えば0.32μmのグルーブパターン(図示せず)が形成されている。
【0023】
情報層12は、一例として、反射層、誘電体層および相変化型記録層等で構成される機能層であって、製造装置21の情報層形成装置23を用いて形成される。樹脂層13は、光透過層として機能し、製造装置21の樹脂層形成装置24を用いて、本発明に係る塗膜形成方法に従って形成される。この場合、樹脂層13は、一例として、その厚みが100μmに規定されている。
【0024】
次に、光記録媒体1を製造する製造装置21の構成について、図面を参照して説明する。
【0025】
製造装置21は、図2に示すように、基材作製装置22、情報層形成装置23および樹脂層形成装置24を備えて構成されている。基材作製装置22は、例えば、射出成形機で構成されて、図1に示す基材11を射出成形によって作製する。情報層形成装置23は、例えば、スパッタ装置で構成されて、情報層12をスパッタ法によって形成する。
【0026】
樹脂層形成装置24は、本発明に係る塗膜形成装置に相当し、図3に示すように、滴下部31、回転部32、トリミング部33、エネルギー線照射部34、プレス部35、記憶部36、制御部37、操作部38および遮蔽板39を備えて構成され、本発明に係る塗膜形成方法に従って樹脂層13を形成する。この場合、滴下部31および回転部32によって本発明における展延部が構成される。滴下部31は、同図に示すように、樹脂材料供給機構41、移動機構42および吐出口43を備えている。樹脂材料供給機構41は、制御部37によって制御されて、樹脂層13形成用の例えば紫外線硬化型の樹脂材料R(本発明における塗布用材料。一例として、ウレタンアクリレート)を吐出口43に供給することにより、吐出口43から樹脂材料Rを吐出させて基材11(情報層12)の上に滴下する。移動機構42は、制御部37によって制御されて、回転部32のターンテーブル51(ターンテーブル51に載置された基材11)の上方において吐出口43を移動させる。
【0027】
回転部32は、図3に示すように、ターンテーブル51およびモータ52を備えている。ターンテーブル51は、全体として円板状に形成されて、図4に示すように、その上面における中心部には、基材11の中心孔11aに嵌め込み可能な環状突起51aが形成されている。また、ターンテーブル51の下面における中心部には、モータ52の回転軸(図示せず)に連結されるシャフト51bが取り付けられている。モータ52は、制御部37によって制御されて、ターンテーブル51を回転させる。
【0028】
トリミング部33は、本発明における除去処理部に相当し、図3に示すように、移動機構61およびトリミング工具62を備え、基材11の外周面11b(図4参照)に付着している樹脂材料R、および基材11の表面における外周縁部(以下、「表面外周縁部11c」ともいう)に付着している(塗布されている)樹脂材料Rを除去するトリミング処理(本発明における除去処理)を実行する。移動機構61は、制御部37によって制御されて、ターンテーブル51に載置された基材11の外周面11bに対して接離する方向にトリミング工具62を移動させる。トリミング工具62は、図5に示すように、本体部71と、本体部71の側面71aから突出する突出部72とが一体に形成されている。具体的には、このトリミング工具62は、本体部71部分に相当する長方形形状と突出部72部分に相当する台形形状とを一体化した形状の金属製の板状部材で形成されている。この場合、本体部71は、板状部材の上部および下部を直角に折り曲げて側面視コ字状に形成され、突出部72は、その先端部が本体部71における折り曲げられた先端部側に15度程度傾斜し、かつ本体部71における側面71aの上部に位置するように形成されている。また、突出部72は、その下端面72aが水平面に対して45度程度傾斜するようにして形成されている。この場合、本体部71および突出部72は、紫外線の反射を防止するために、暗色に着色されている。このトリミング工具62は、図9に示すように、基材11の外周面11bの近傍に移動させられたときに、本体部71の側面71aが外周面11bに近接して外周面11bに付着している樹脂材料Rを除去すると共に、突出部72の下端面72aが表面外周縁部11cに近接して表面外周縁部11cに付着している樹脂材料Rを除去する。
【0029】
エネルギー線照射部34は、本発明における硬化処理部に相当し、例えば、回転部32のターンテーブル51および後述するプレス部35の固定テーブル81の上方に配設されて、制御部37の制御に従ってターンテーブル51および固定テーブル81に載置されている基材11に向けて紫外線を照射する。この場合、エネルギー線照射部34は、制御部37の制御に従い、トリミング処理が行われた樹脂材料Rに対して所定の照射量の紫外線を照射することによって樹脂材料Rを半硬化させ、後述するプレス処理が行われた樹脂材料Rに対して所定の照射量の紫外線を照射することによって樹脂材料Rを完全(またはほぼ完全)に硬化させる。
【0030】
プレス部35は、図3に示すように、固定テーブル81、プレス用部材82および押圧機構83を備え、基材11の表面外周縁部11cに向けてプレス用部材82を押圧することにより、表面外周縁部11c上の半硬化状態の樹脂材料Rをプレスするプレス処理を実行する。固定テーブル81は例えば円板状に形成されて、基材11を載置可能に構成されている。この場合、固定テーブル81の上面における中心部には、図10に示すように、基材11の中心孔11aに嵌め込み可能な環状突起81aが形成されている。プレス用部材82は、図6に示すように、例えば金属によって円筒状に形成されている。この場合、プレス用部材82は、一例として、その外径が基材11の直径(この場合120mm)よりも大径の130mm程度で、その内径が基材11の直径よりもやや小径の118mm程度に形成されている。また、プレス用部材82の表面には、樹脂材料Rの付着を防止するためのコーティング加工が施されている。押圧機構83は、制御部37の制御に従って固定テーブル81に載置された基材11に向けてプレス用部材82を押し下げる(プレスする)。
【0031】
記憶部36は、樹脂材料Rの供給量、ターンテーブル51の回転速度(回転数)や回転時間、トリミング工具62を移動させる移動距離や移動タイミング、紫外線の照射量、およびプレス用部材82をプレスするプレス力等を含む樹脂層13の形成に必要な形成条件が記述された形成条件テーブルを記憶する。制御部37は、操作部38の操作によって設定された樹脂層13の厚み目標値にそれぞれ対応付けられた形成条件を記憶部36から読み出すと共に、読み出した形成条件に従い、滴下部31、回転部32、トリミング部33、エネルギー線照射部34およびプレス部35を制御する。操作部38は、樹脂層13の厚み目標値を入力するための入力ボタン等の各種操作ボタンを備えて構成され、これらの操作ボタンの操作に応じた操作信号を制御部37に出力する。遮蔽板39は、紫外線を遮蔽可能な例えば金属板で形成されて、ターンテーブル51の近傍でかつエネルギー線照射部34の下方の位置に配設されている。この場合、遮蔽板39は、トリミング部33の移動機構61によってその下方に移動されたトリミング工具62への紫外線を遮蔽する。
【0032】
次に、製造装置21を用いた光記録媒体1の製造方法について、樹脂層形成装置24による樹脂層13の形成方法(本発明に係る塗膜形成方法)を中心にして図面を参照して説明する。
【0033】
まず、製造装置21の基材作製装置22を用いて、例えばポリカーボネートを射出成形することによって基材11を作製する。この場合、基材作製装置22の射出成形用金型内にセットされたスタンパー(いずれも図示せず)の凹凸パターンが転写されて、基材11の表面側にグルーブパターンが形成される。次に、製造装置21の情報層形成装置23を用いて、反射層、誘電体層、相変化型記録層および誘電体層をスパッタ法によってこの順序で基材11の表面側に積層して情報層12を形成する。
【0034】
次いで、製造装置21の樹脂層形成装置24を用いて情報層12を覆うようにして基材11の上に樹脂層13を形成する。具体的には、まず、図4に示すように、情報層12が形成された面を上向きにした状態で、回転部32におけるターンテーブル51の環状突起51aに中心孔11aを嵌め込んで基材11を載置する。続いて、環状突起51aの内側に閉塞部材14の凸部14bを嵌め込むことによって基材11の中心孔11aを閉塞する。次に、操作部38を操作して、樹脂層13の厚み目標値である100μmを入力する。これに応じて、制御部37が、100μmの厚み目標値に対応付けられた形成条件を記憶部36から読み出す。次いで、制御部37は、読み出した形成条件に従って回転部32のモータ52を制御することにより、例えば120rpmの低回転速度でターンテーブル51を回転させる。続いて、制御部37は、滴下部31の移動機構42を制御して、図7に示すように、閉塞部材14の本体部14aの上方に吐出口43を移動させた後に、形成条件に従って滴下部31の樹脂材料供給機構41を制御して、樹脂材料Rを所定量だけ吐出口43に供給させる。これにより、吐出口43から樹脂材料Rが吐出されて、同図に示すように、ターンテーブル51の回転に伴って回転させられている基材11(閉塞部材14における本体部14aの外周面)に樹脂材料Rが滴下される。
【0035】
次に、制御部37は、モータ52の回転速度を上昇させて、例えば、1700rpmの高回転速度でターンテーブル51を回転させる。この際に、図8に示すように、樹脂材料Rが、回転に伴う遠心力によって基材11の表面外周縁部11cに向けてほぼ均一の厚みに展延される。また、同図に示すように、樹脂材料Rの一部が、遠心力によって基材11の外側に押し出される。次いで、制御部37は、形成条件に従い、トリミング部33に対してトリミング処理を実行させる。具体的には、制御部37は、モータ52の回転速度を1700rpmに維持させつつ、図9に示すように、トリミング部33の移動機構61を制御してトリミング工具62を基材11の外周面11bの近傍に移動させる。この際に、トリミング工具62における本体部71の側面71aが基材11の外周面11bに近接して、外周面11bに付着している樹脂材料Rを掻き取るようにして除去する。また、トリミング工具62における突出部72の下端面72aが基材11の表面外周縁部11cに近接して、表面外周縁部11cに付着している(塗布された)樹脂材料Rを掻き取るようにして除去する。また、表面外周縁部11cには、同図に示すように、遠心力によって外側に移動しようとする樹脂材料Rが突出部72によって堰き止められることにより、僅かな凸部RCが形成される。
【0036】
続いて、制御部37は、モータ52の回転速度を1700rpm、つまりトリミング処理時における回転速度と同じ回転速度に維持させつつ、移動機構61を制御してトリミング工具62を基材11から離間させて遮蔽板39の下方に移動させる。次に、制御部37は、モータ52の回転速度を例えば1700rpmに維持させつつ、エネルギー線照射部34を制御して樹脂材料R(基材11)に向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。この際に、樹脂材料Rは、紫外線の照射によって流動性が失われる程度に半硬化する。この場合、形成トリミング処理を実行したことにより、表面外周縁部11c上の樹脂層13は、僅かな凸部RCだけが形成されて大きな凸部のない比較的平坦な状態に形成される。
【0037】
次いで、制御部37は、モータ52の回転速度を低下させる。続いて、ターンテーブル51が停止した後に、閉塞部材14を基材11から取り外す。続いて、基材11をターンテーブル51から取り外して、樹脂材料Rが展延された面を上向きにした状態で、プレス部35における固定テーブル81の環状突起81aに中心孔11aを嵌め込んで基材11を載置する。次に、制御部37は、形成条件に従い、プレス部35に対してプレス処理を実行させる。具体的には、制御部37は、プレス部35の押圧機構83を制御して、固定テーブル81に載置された基材11に向けてプレス用部材82を移動させる。次いで、制御部37は、押圧機構83に対して基材11の表面外周縁部11cに向けてプレス用部材82をさらに移動させて押圧させることにより、表面外周縁部11c上の樹脂材料Rをプレスする。この際に、図10に示すように、表面外周縁部11c上に形成されていた凸部RCが、プレス用部材82によって押し潰される。この場合、樹脂材料Rが半硬化状態のため、プレス用部材82の押圧によって凸部RCを比較的容易に押し潰すことができる。これにより、図11に示すように、表面外周縁部11c上の樹脂層13が平坦な状態となる。続いて、制御部37は、押圧機構83に対してプレス用部材82を上方に移動させる。次に、制御部37は、形成条件に従い、エネルギー線照射部34を制御して固定テーブル81に載置された基材11の樹脂材料Rに向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。この際に、樹脂材料Rは、紫外線の照射によって完全(またはほぼ完全)に硬化する。次いで、固定テーブル81から基材11を取り外す。これにより、光記録媒体1が完成する。
【0038】
このように、この樹脂層形成装置24および樹脂層13の形成方法によれば、基材11の表面側に樹脂材料Rを展延させた後に、樹脂材料Rを半硬化させ、次いで、表面外周縁部11cに向けてプレス用部材82を押圧させて表面外周縁部11c上における半硬化状態の樹脂材料Rをプレスするプレス処理を実行することにより、表面外周縁部11c上に凸部が形成されたとしても、その凸部をプレス処理によって押し潰して平坦化することができるため、硬化後の樹脂材料Rに対する削り取り処理を不要にすることができる。したがって、削り取り処理によって発生する粉状の樹脂材料を除去するためのクリーニング工程も不要にすることができる結果、これらの処理や工程に起因する製造コストの高騰を招くことなく表面外周縁部11c上に凸部のない平坦な樹脂層13を形成することができる。
【0039】
また、基材11を回転させつつ樹脂材料Rを半硬化させることにより、樹脂材料Rがその表面張力で引き戻されることに起因する表面外周縁部11c上における凸部の形成を抑えることができる。また、樹脂材料Rの半硬化に先立ち、基材11における外周面11b上の樹脂材料R、および基材11における表面外周縁部11c上の樹脂材料Rを除去するトリミング処理を実行することにより、基材11の回転停止後にその表面張力で表面外周縁部11c側に引き戻される樹脂材料Rを少ない量に抑えることができるため、表面外周縁部11c上における凸部の形成を抑えて平坦化することができる。
【0040】
なお、本発明は上記の構成や方法に限定されない。例えば、図12,13に示すように、上記したプレス部35に代えて、プレス用工具84およびモータ85を備えたプレス部35Aを採用することもできる。プレス用工具84は、同図に示すように、本発明におけるプレス用部材に相当する4つのローラ91,91・・と、各ローラ91,91・・を回転可能に支持する支持部92と、モータ85に連結される回転軸93とを備えて構成されている。この場合、ローラ91は、例えば、その幅が20mm程度の金属製の円錐状部材で形成されている。また、ローラ91の表面には、樹脂材料Rの付着を防止するためのコーティング加工が施されている。
【0041】
このプレス部35Aを備えた樹脂層形成装置(塗膜形成装置)を用いて樹脂層(塗膜)を形成する際には、上記の塗膜形成方法と同様にして、基材11の表面に展延した樹脂材料Rに対してトリミング処理を実行した後に、固定テーブル81に基材11を載置する。次に、制御部37が、プレス部35Aの押圧機構83を制御して、基材11に向けてプレス用工具84を移動させる。次いで、制御部37は、押圧機構83に対して基材11に向けてプレス用工具84をさらに移動させて押圧させることにより、表面外周縁部11c上の樹脂材料Rをプレスする。続いて、制御部37は、モータ85を制御して、プレス用工具84を回転させることにより、樹脂材料Rをプレスさせつつ表面外周縁部11cに沿ってローラ91を移動させる。この際に、表面外周縁部11c上に形成されていた凸部RCが、プレス用工具84の各ローラ91,91・・によって押し潰される。これにより、表面外周縁部11c上の樹脂層13が平坦化される。続いて、制御部37は、モータ85に対してプレス用工具84の回転を停止させると共に、押圧機構83に対してプレス用工具84を上方に移動させた後に、エネルギー線照射部34を制御して樹脂材料Rに向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。これにより、樹脂材料Rが紫外線の照射によって完全(またはほぼ完全)に硬化して光記録媒体1が完成する。このプレス部35Aを備えた樹脂層形成装置、およびこの樹脂層形成装置を用いた塗膜形成方法においても、上記した樹脂層形成装置24および塗膜形成方法と同様にして、製造コストの高騰を招くことなく表面外周縁部11c上に凸部のない平坦な樹脂層13を形成することができる。なお、ローラ91の幅は、20mmに限定されず、適宜変更することができる。また、円錐状のローラ91に代えて、円筒状のローラを採用することもできる。この場合、この円筒状のローラを斜め上方向から表面外周縁部11c上の樹脂材料Rに対して斜め下方向に押圧する構成を採用することもできる。
【0042】
また、図14に示すように、上記のプレス部35に代えて、押圧機構83、ターンテーブル86、モータ87および上記のプレス用工具84を備えたプレス部35Bを採用することもできる。このプレス部35Bを備えた樹脂層形成装置を用いて樹脂層を形成する際には、上記の塗膜形成方法と同様にして、基材11の表面に展延した樹脂材料Rに対してトリミング処理を実行した後に、ターンテーブル86に基材11を載置する。次に、制御部37が、プレス部35Bの押圧機構83を制御して、基材11に向けてプレス用工具84を移動させる。次いで、制御部37は、押圧機構83に対して基材11に向けてプレス用工具84をさらに移動させて押圧させることにより、表面外周縁部11c上の樹脂材料Rをプレスする。続いて、制御部37は、モータ87を制御して、ターンテーブル86を回転させることにより、樹脂材料Rをプレスさせつつ表面外周縁部11cに沿ってローラ91を相対的に移動させる。この際に、表面外周縁部11c上に形成されていた凸部RCが、プレス用工具84の各ローラ91,91・・によって押し潰される。これにより、表面外周縁部11c上の樹脂層13が平坦化される。続いて、制御部37は、モータ87に対してターンテーブル86の回転を停止させると共に、押圧機構83に対してプレス用工具84を上方に移動させた後に、エネルギー線照射部34を制御して樹脂材料Rに向けて所定の照射量の紫外線を照射させる。これにより、樹脂材料Rが紫外線の照射によって完全(またはほぼ完全)に硬化して光記録媒体1が完成する。このプレス部35Bを備えた樹脂層形成装置、およびこの樹脂層形成装置を用いた塗膜形成方法においても、上記した樹脂層形成装置24および塗膜形成方法と同様にして、製造コストの高騰を招くことなく表面外周縁部11c上に凸部のない平坦な樹脂層13を形成することができる。
【0043】
また、基材11を回転させつつ樹脂材料Rを半硬化させる例について上記したが、基材11の回転を停止させた後に樹脂材料Rを半硬化させる方法を採用することもできる。さらに、トリミング処理の際に、基材11の外周面11bに付着した樹脂材料R、および基材11の表面外周縁部11c上に付着した樹脂材料Rの双方を除去する例について上記したが、トリミング処理の際に、外周面11bに付着した樹脂材料R、および表面外周縁部11c上に付着した樹脂材料Rのいずれか一方のみを除去する塗膜形成方法を採用することもできる。また、回転部32のターンテーブル51をプレス処理用のテーブルとして兼用する構成を採用することもできる。この構成によれば、固定テーブル81(またはターンテーブル86)を不要にすることができるため、その分だけ樹脂層形成装置24を簡易かつ小形に構成することができる。
【0044】
また、本発明における塗布用材料には、上記した紫外線硬化型の樹脂材料Rに限定されず、電子線硬化型の塗布用材料や熱線硬化型の塗布用材料が含まれる。また、樹脂に限定されず、各種の有機材料も本発明における塗布用材料に含まれる。この場合、エネルギー線照射部34に代えて、樹脂硬化用のエネルギー線としての電子線や熱線を照射可能なエネルギー線照射部を採用することにより、上記の各種の塗布用材料で樹脂層13を形成することができる。また、エネルギー線を照射することなく、熱風を吹き付けて塗布用材料を硬化させる方法(強制乾燥する方法)を採用することもできるし、所定時間放置することによって塗布用材料を硬化させる方法(自然乾燥する方法)を採用することもできる。また、レーザービームの照射側に位置して光透過層として機能する樹脂層13を形成する例について上記したが、カバー層として機能する塗膜などを形成する際に本発明を適用することもできる。さらに、情報層12が1層だけ形成された光記録媒体1を製造する例について上記したが、複数の情報層が形成された多層情報記録媒体を製造する製造工程において、各情報層間にスペーサ層を形成する際に本発明を適用することもできる。
【0045】
また、反射層、誘電体層および相変化型記録層等で構成された情報層12を有する光記録媒体1を製造する際に本発明を適用する例について上記したが、追記型の記録層を有する情報記録媒体や、基材およびスペーサ層の表面に情報用の凹凸パターンを形成した再生専用の情報記録媒体などを製造する際に本発明を適用することもできる。また、トリミング工具62を1つ備えた構成例について上記したが、トリミング工具62を複数備えた構成を採用することもできる。また、本体部71と突出部72とを一体形成したトリミング工具62を用いる例について上記したが、本体部71に相当する部材と、突出部72に相当する部材とを別体に構成し、これらを基材11の外周部における別々の位置に個別的に移動させる構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】光記録媒体1の断面図である。
【図2】製造装置21の構成を示すブロック図である。
【図3】樹脂層形成装置24の構成を示すブロック図である。
【図4】基材11、ターンテーブル51および閉塞部材14の断面図である。
【図5】トリミング工具62の斜視図である。
【図6】プレス用部材82の斜視図である。
【図7】滴下部31が樹脂材料Rを滴下している状態の基材11、ターンテーブル51および閉塞部材14の断面図である。
【図8】樹脂材料Rを展延している状態の基材11およびターンテーブル51の断面図である。
【図9】トリミング部33がトリミング処理を実行している状態の基材11およびターンテーブル51の断面図である。
【図10】プレス部35がプレス処理を実行している状態の基材11の断面図である。
【図11】樹脂層13が形成された基材11および固定テーブル81の断面図である。
【図12】プレス用工具84の斜視図である。
【図13】プレス部35Aがプレス処理を実行している状態の基材11の断面図である。
【図14】プレス部35Bがプレス処理を実行している状態の基材11の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
11 基材
11c 表面外周縁部
13 樹脂層
31 滴下部
32 回転部
33 トリミング部
34 エネルギー線照射部
35,35A,35B プレス部
37 制御部
82 プレス用部材
91 ローラ
R 樹脂材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、
前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させるプレス部を備え、
前記制御部は、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる塗膜形成装置。
【請求項2】
前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行する除去処理部を備え、
前記制御部は、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記塗布用材料の半硬化に先立って前記除去処理部に対して前記除去処理を実行させる請求項1記載の塗膜形成装置。
【請求項3】
基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、
前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧して当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行する塗膜形成方法。
【請求項4】
前記塗布用材料を展延した後に、前記塗布用材料の半硬化に先立ち、前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行する請求項3記載の塗膜形成方法。
【請求項1】
基材の一面側に塗布用材料を展延する展延部と、前記塗布用材料を硬化させる硬化処理部と、制御部とを備えて前記一面側に塗膜を形成可能に構成され、
前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧させるプレス部を備え、
前記制御部は、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記硬化処理部に対して前記塗布用材料を半硬化させ、次いで、前記プレス部に対して前記外周縁部に向けて前記プレス用部材を押圧させて当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行させる塗膜形成装置。
【請求項2】
前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行する除去処理部を備え、
前記制御部は、前記展延部に対して前記塗布用材料を前記一面側に展延させた後に、前記塗布用材料の半硬化に先立って前記除去処理部に対して前記除去処理を実行させる請求項1記載の塗膜形成装置。
【請求項3】
基材の一面側に塗布用材料を展延し、当該展延した前記塗布用材料を硬化させて前記一面側に塗膜を形成する際に、
前記塗布用材料を展延した後に前記塗布用材料を半硬化させ、前記基材における前記一面の外周縁部に向けてプレス用部材を押圧して当該外周縁部上における前記半硬化状態の塗布用材料をプレスするプレス処理を実行する塗膜形成方法。
【請求項4】
前記塗布用材料を展延した後に、前記塗布用材料の半硬化に先立ち、前記基材における外周面上の前記塗布用材料、および前記外周縁部上の前記塗布用材料の少なくとも一方を除去する除去処理を実行する請求項3記載の塗膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−43553(P2006−43553A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226599(P2004−226599)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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