説明

塩化ビニル系樹脂

【課題】プラスチゾルの設計自由度を確保しつつ、脱泡性の良いプラスチゾルを与える塩化ビニル系樹脂、これを用いたプラスチゾル組成物を提供する
【解決手段】塩化ビニル系樹脂の粒子形分布において、少なくとも0.9μm以上1.3μm未満に1つの極大値を示し、且つ3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上50重量%未満であり、K値が70.0以上74.5未満の範囲である塩化ビニル系樹脂、更に上記した塩化ビニル系樹脂を含有し、ブルックフィールド型粘度計で測定した、25℃V30で測定したプラスチゾル粘度が300mPa・s以下であることを特徴とするプラスチゾル組成物により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂及びこれを用いたプラスチゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂を用いたペースト加工は、塩化ビニル系樹脂に、可塑剤、必要に応じて安定剤及びその他の成分を撹拌混合してプラスチゾル化し、その流動性を利用して賦形し、加熱溶融後冷却してフィルム等の各種成形品を製造する方法である。プラスチゾルに気泡を含んだままの状態で使用すると、成形品に穴が開くピンホールの原因になる等、表面性を悪くして商品価値を害することから、混練時あるいは混練後に減圧脱泡するのが通常である。脱泡性の劣るプラスチゾルは時間の浪費と、脱泡設備へのプラスチゾル充填量制限等のプラスチゾル飛散防止対策が必要となる。またプラスチゾルの脱泡を充分に行っても、プラスチゾルの移送やこれを成形加工する際に気泡を巻き込む可能性があり、これらの気泡が速やかに破泡するといった特性を有するプラスチゾルを与える塩化ビニル系樹脂が求められている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂を用いた製品の中で、床材クッションフロアおよびレザーのトップ層、手袋、玩具、人形、鋼板、マーキングフィルム等の非発泡用途では、特にプラスチゾルの脱泡性及び破泡性が良いことが求められる。特にディッピング加工を行い、成形物の肉厚が100μm程度のディスポーザブル手袋に好適である。
【0004】
プラスチゾルの脱泡性を改良する手段として特定の重合乳化剤を用いる方法(特許文献1)が提案されている。しかし、これら乳化剤を用いて重合して得られたプラスチゾルの強制脱泡性は確かに優れるものの、成形物の熱安定性に劣り、またプラスチゾル中の樹脂が沈降分離し易くなり、プラスチゾル貯蔵タンクでの払い出し口閉塞の発生が懸念される等の問題点を有するものである。
【0005】
また「酸価数0.7〜8mgKOH/gのポリエステル系可塑剤を使用する」方法が提案されている(特許文献2)が、可塑剤種が限定され、それによってプラスチゾルの構成や成分選択の制限を受ける為、プラスチゾルの設計自由度を確保しつつ、脱泡性の良いプラスチゾルを与える塩化ビニル系樹脂の開発が望まれていた。
【特許文献1】特公昭63−35166
【特許文献2】特開平8−217938
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラスチゾルの設計自由度を確保しつつ、脱泡性の良いプラスチゾルを与える塩化ビニル系樹脂、これを用いたプラスチゾル組成物、及び成型物を提供することを目的とする。具体的には、塩化ビニル系樹脂自身の改良により、脱泡性の良いプラスチゾルを与える塩化ビニル系樹脂、これを用いたプラスチゾル組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、塩化ビニル系樹脂の粒子形分布において、少なくとも0.9μm以上1.3μm未満に1つの極大値を示し、且つ3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上50重量%未満であり、K値が70.0以上74.5未満の範囲である塩化ビニル系樹脂である。また本発明のプラスチゾル組成物は、上記した塩化ビニル系樹脂を含有し、ブルックフィールド型粘度計で測定した、25℃V30で測定したプラスチゾル粘度が300mPa・s以下であることを特徴とするプラスチゾル組成物である。
【0008】
一方、本発明の製造方法は、塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合して得られる塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル単量体100重量部に対して、重合用乳化剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5重量部使用することを特徴とし、塩化ビニル系樹脂の粒子形分布において、0.9μm以上1.3μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上、50重量%未満であり、K値が70以上74.5未満の範囲である塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塩化ビニル系樹脂は、脱泡性が良く、初期ゲル化性も良好なプラスチゾルを与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の塩化ビニル系樹脂の製造方法は特に制限はなく、例えば微細懸濁重合や乳化重合法、播種乳化重合法及び播種微細懸濁重合等で作成した後に、目的の粒子径分布が得られるように所定比率で混合しても良い。
【0012】
本発明の塩化ビニル系樹脂は、例えば、塩化ビニル単量体、または塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な単量体の混合物を水性媒体中で、乳化剤、必要に応じて、高級アルコール、高級脂肪酸などの分散助剤、更に油溶性重合開始剤を加えて均質化した後微細懸濁重合するか、水溶性開始剤を加えて乳化重合、播種乳化重合する等により得られる。
【0013】
続いて、重合後の塩化ビニル系樹脂の水性均質分散液(ラテックス)を噴霧乾燥することにより製品とされる。微細懸濁重合においては、均質化条件によって単量体液滴径の大きさが制御され、通常均質化装置の吸入側と吐出側の圧力差が小さいほど、大きな粒子径を持つ粒子が得られ、乳化重合法より比較的容易に大きな粒子が得やすいことから本発明の製造方法として好ましい。
【0014】
通常用いられる均質化装置としては、1段または多段の高圧ホモジナイザー、コロイドミル、1段又は多段の遠心ポンプおよびパイプラインミキサー等の機械的分散装置が挙げられ、これらは単独または組み合わせて用いられ、吸入側と吐出側の圧力差は0.2から3MPaの範囲で調整することにより所望の粒子径を持つラテックスが得られる。
【0015】
本発明の塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂の粒子形分布において、少なくとも0.9μm以上1.3μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上〜50重量%未満であり、K値が70.0以上74.5未満の範囲である塩化ビニル系樹脂である。なおこの塩化ビニル系樹脂の粒子径は、塩化ビニル系樹脂を実施例に示す方法でプラスチゾルとした後に粒子径分布を測定したものである。
ここでK値はJISK7367−2(JISハンドブック2005)で規定されている方法で求めた。
【0016】
この極大値が0.9μmより小さくなるとプラスチゾル粘度が高くなる傾向があり、1.3μm以上であると初期ゲル化性が低下する傾向にあることから0.9μm以上1.3μm未満の範囲にあることが好ましい。
【0017】
プラスチゾル粘度の上昇は希釈剤使用量の増加により調整できるが、配合コストを上昇させまた製品の外観を損ねるなどの可能性がある。また初期ゲル化性の低下はプラスチゾルの流動停止が遅くなることを意味し、加工方法によっては製品の厚み分布等に影響する可能性がある。
【0018】
また本発明の塩化ビニル系樹脂は、粒子形分布において、3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上、50重量%未満であり、K値が70以上74.5未満の範囲である。
【0019】
2μm以上の粒子の重量分率が25重量%以上であることによりプラスチゾルの脱泡性が良好になるが、50重量%を超えても脱泡性の向上は少なく、初期ゲル化性が悪化する傾向にある。K値が70以上74.5未満の範囲であることと2μm以上粒子の重量分率が50重量%未満であることにより脱泡性を改良したなかで、良好な初期ゲル化性も維持できる。
【0020】
また2μm以上の粒子の構成としては、3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示すことが脱泡性と初期ゲル化性から好ましい。3μm未満では脱泡性の向上が十分でなく、6μm以上では初期ゲル化性が低下する傾向にある。
【0021】
例えば一般的に手袋用に用いられる塩化ビニル樹脂は0.9〜1.5μmの範囲にひとつの極大値を持ち、そのK値は70から77程度の範囲である。本発明の塩化ビニル系樹脂は粒子径分布の調節により、プラスチゾルの脱泡性を改良しつつ初期ゲル化性もこの範囲を維持できる。
【0022】
本発明で用いられる塩化ビニル系単量体は、塩化ビニル単量体単独、または塩化ビニル単量体およびこれと共重合可能な単量体の混合物を示す。
【0023】
塩化ビニルと共重合可能な単量体の例としては、特に制限はないが、例えばエチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のカルボン酸のビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキル基を有するビニルエーテル類、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその酸無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和カルボン酸エステル類、スチレン、αーメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、更にはジアリルフタレート等の架橋性モノマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該塩化ビニルと共重合可能な単量体は、塩化ビニル単量体に対して、50重量%以下の範囲で使用するのが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる界面活性剤は特に限定されるのもではないが、アニオン性界面活性剤が通常単量体100重量部当たり0.1〜3重量部程度用いられる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホン酸、アルキルエーテルリン酸エステル等のカリウム、ナトリウム、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、重合安定性とプラスチゾルとしたときの脱泡性からアルキル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5重量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0025】
アルキル硫酸ナトリウムとしては炭素数8から20のものを用いるのが好ましく、具体的には、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、エイコシル硫酸ナトリウム等の炭素数が偶数のアルキル硫酸ナトリウムが挙げられる。また、炭素数が9、11、13、15、17、19等奇数のアルキル硫酸ナトリウムを使用しても良い。これらの中では、デシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウムが特に好ましい。
【0026】
本発明では重合時及び又は重合終了後にノニオン性乳化剤を併用しても良い。特に制限はないが、たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックコポリマー等のポリオキシアルキレンブロックコポリマー類、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、シリコン系乳化剤、などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明の分散助剤としては、特に制限はないが、たとえばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類が挙げられる。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量について特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系単量体100重量部に対して0〜2重量部の範囲で用いる。
【0028】
本発明の油溶性開始剤としては、特に制限はないが、たとえばジラウロイルパーオキサイド、ジ−3、5、5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系開始剤および2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量に特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系単量体100重量部に対して、0〜3重量部の範囲で用いる。
【0029】
本発明の水溶性開始剤としては、特に制限はないが、たとえば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素等などが挙げられ、必要に応じて亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート(ロンガリット)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤が併用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量に特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系単量体100重量部に対して、0〜3重量部の範囲で用いる。
【0030】
本発明のプラスチゾル組成物は、塩化ビニル系樹脂と可塑剤を必須成分とし、必要に応じて、安定剤、希釈剤、減粘剤、充填剤、補強剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、表面処理剤、チキソトロープ剤、接着性付与剤、防カビ剤などを加えて撹拌混合して、プラスチゾル組成物に加工される。
【0031】
前記可塑剤について特に制限はないが、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジノルマルオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤、トリクレジルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェートなどのリン酸エステル系可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのアジピン酸エステル系可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸エステル系可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルアゼレートなどのアゼライン酸エステル系可塑剤、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、ジ−2−エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールイソブチレートベンゾエートなどの安息香酸エステル系可塑剤、アセチルトリブチルシトレートなどのクエン酸エステル系可塑剤、グリコール酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン系可塑剤、塩素化脂肪酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、テキサノールイソブチレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量について特に制限はないが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して30〜200重量部の範囲で使用される。
【0032】
前記安定剤としては、特に制限はないが、例えばジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫マレート、ジブチル錫ラウレート等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、燐酸エステル等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその使用量は特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0〜20重量部の範囲で使用される。
【0033】
前記希釈剤について特に制限はないが、例えば2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジイソブチレート(TXIB)や、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量について特に制限はないが、使用する場合は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0〜200重量部の範囲で使用される。
その他、減粘剤、充填剤、補強剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、表面処理剤、チキソトロープ剤、接着性付与剤、防カビ剤については、本発明の目的を達するものであれば、特に制約なく使用することができる。
【0034】
本発明の成型物は、プラスチゾル組成物を賦形し、そののち加熱ゲル化することにより成形される。成型物は、たとえば壁紙、床材クッションフロア、床材カーペットタイル、天井材、レザー、帆布、鋼板、シーラント、自動車内装材、自動車アンダーボディコート、マーキングフィルム、テーブルクロス、人形、手袋、防水用被覆材、絶縁用被覆材、医療用品、キャップシール、食品模型、その他各種の用途で好適な製品を提供するのに使用される。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例で用いた各評価方法を以下に示す。
【0036】
(1)プラスチゾル作成方法
500mlSUSカップに粉砕後の塩化ビニル系樹脂150g、DOP(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)120g、Ca−Zn系安定剤(AC−311:旭電化工業株式会社製)3g、エポキシ化大豆油(O−130P:旭電化工業株式会社製)3g、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジイソブチレート(TXIB)18gを加え、均一になるまで混合させた後、ディゾルバー型混練機(ROBO MICS/TOKUSHU KIKA社製、ディゾルバー翼5cm径)を用い、室温下、3000rpmで2分間混練して、プラスチゾルを作製した。
【0037】
(2)プラススチゾルの脱泡性評価方法
前述のようにして作成したプラスチゾル10gを直径35mmのメスシリンダーに移し、20リットル容積の減圧用デシケーターの中に入れ、油回転型高真空ポンプ(大阪真空機器製作所社製)を用いて20mmHgの減圧度まで15秒かけて減圧し、その後20mmHgの減圧度で静置し、ゾル中の気泡が膨張上昇して破泡した時のゾルの体積(mL)を測定した。ゾル中の気泡が膨張上昇して破泡した時のゾルの体積(mL)を測定した。破泡した時のゾルの体積が小さいほど脱泡性が優れる。
【0038】
(3)ラテックス及び樹脂粒子径測定方法 (小さいのは測定できているか)
ラテックス及び樹脂の粒子径は マイクロトラックHRA MODEL9320−X100(日機装株式会社)を用いて、粒子径分布を測定し、体積基準の中位径をもって、平均粒子径とした。測定条件としては、温度25℃、物質情報は透明で屈折率1.51、球形粒子のチェックはなし、キャリアーは水を用い屈折率は1.33とした。またSET ZERO 10秒、計測10秒、DRY CUT計算なしとした。
【0039】
(4)樹脂粒子径測定方法
500mlSUSカップに粉砕後の塩化ビニル系樹脂200g、DOP120gを加え、均一になるまで混合させた後、ディゾルバー型混練機(ROBO MICS/TOKUSHU KIKA社製、ディゾルバー翼5cm径)を用い、室温下、3000rpmで2分間混練して、プラスチゾルを作製した。このプラスチゾル0.2gを2gのノニオン性乳化剤(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)に均一分散させた後、これに水を加えて溶解分散させたものをサンプルとして用いた他は、ラテックス粒子径測定に準じて行った。
【0040】
(5)初期ゲル化性測定方法
TAInsuturuments社製レオメーター AR2000を使用。6cm2°のコーンプレートでGapを53μmにセットし、ゾル重量2.4gで25℃から95℃まで10℃/分の昇温速度でストレス制御(3Pa一定)の測定を行い、プラスチゾル粘度が温度上昇とともに低下後、可塑剤吸収により粘度上昇を開始する温度を初期ゲル化開始温度とした。このときから粘度が1Paに到達する温度を読み取り、粘度差/温度差を求め初期ゲル化速度とした。この数字が大きいほど初期ゲル化性は良好である。
【0041】
(6)プラスチゾル粘度測定
作成したプラスチゾルを25℃の恒温水槽に1時間漬けた後に、ブルックフィールド型粘度計(TOKIMEK製)を用い、No.1スピンドルV6の測定開始1分後の値を読み取ってプラスチゾル粘度とした。
【0042】
(製造例1〜4)
予め脱気したステンレス製撹拌機付き耐圧容器に、塩化ビニル単量体100重量部、イオン交換水300重量部、ラウリル硫酸ナトリウム1重量部、セチルアルコール1重量部およびターシャルブチルパーオキシネオデカノエート0.05重量部を仕込み、高圧式ホモジナイザーを用いて均質化した後、50℃に昇温して重合を行い、重合圧力が降下した時点で未反応の単量体を除去し、重合を終了させた。なお、均質化時の分散条件、すなわち分散圧力水準を変えることと重合温度を変えることで、表1記載のラテックスを得た。
【0043】
(実施例1)
製造例1と製造例3のラテックスを樹脂あたりの重量比で70:30の割合で混合し、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー0.03重量部を添加し、スプレー乾燥機(三菱化工機株式会社製)を用い、入口135℃、出口52℃の条件で噴霧乾燥を行った後にバンタムミル(AP−B型、ホソカワミクロン製)で粉砕して塩化ビニル系樹脂を得た。
【0044】
粉砕後の塩化ビニル系樹脂から先に記載した方法でプラスチゾルを作成し、その評価結果を表2に示した。
【0045】
(実施例2)
製造例1と製造例3のラテックスを樹脂あたりの重量比で55:45の割合で混合し、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー0.025重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。
【0046】
(実施例3)
製造例1と製造例3のラテックスを樹脂あたりの重量比で45:55の割合で混合し、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー0.02重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。
【0047】
(比較例1)
製造例1のラテックスに樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーを0.04重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。初期ゲル化性は良好であるが、強制脱泡性は劣る傾向であった。
【0048】
(比較例2)
製造例1と製造例3のラテックスを樹脂あたりの重量比で82:18の割合で混合し、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーを0.035重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。初期ゲル化性は良好である。強制脱泡性は比較例1より改良されているが、実施例と比較すると差が見られた。
【0049】
(比較例3)
製造例2のラテックスに、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーを0.03重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。強制脱泡性は実施例と比較すると差が見られた。
【0050】
(比較例4)
製造例6のラテックスに樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーを0.04重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。強制脱泡性が劣る傾向であった。
【0051】
(比較例5)
製造例5と製造例6のラテックスを樹脂あたりの重量比で45:55の割合で混合し、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー0.02重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。
【0052】
強制脱泡性は良好であるが、初期ゲル化性が劣る傾向にある。
(比較例6)
製造例1と製造例4のラテックスを樹脂あたりの重量比で75:25の割合で混合し、樹脂100重量部に対してポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー0.015重量部とした他は実施例1と同様に実施した結果を表2に示した。
強制脱泡性は良好であるが、初期ゲル化性が劣る傾向にある。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂の粒子径分布において、0.9μm以上1.3μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上、50重量%未満であり、K値が70以上74.5未満の範囲である塩化ビニル系樹脂
【請求項2】
請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂を含有し、ブルックフィールド型粘度計で測定した、25℃V30で測定したプラスチゾル粘度が300mPa・s以下であることを特徴とするプラスチゾル組成物
【請求項3】
塩化ビニル系単量体を微細懸濁重合して得られる塩化ビニル系樹脂であって、塩化ビニル単量体100重量部に対して、重合用乳化剤としてアルキル硫酸ナトリウムを0.5〜1.5重量部使用することを特徴とし、塩化ビニル系樹脂の粒子径分布において、0.9μm以上1.3μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ3μm以上6μm未満に少なくとも1つの極大値を示し、且つ2μm以上の粒子の重量分率が、25重量%以上、50重量%未満であり、K値が70以上74.5未満の範囲である塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−96918(P2009−96918A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271320(P2007−271320)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】