説明

増強された薬理学的性質を有する活性物質を送達するための方法および組成物

バイオエラスティックポリマーまたはエラスチン様ペプチドに結合された活性物質を被験者に投与することを含み、バイオエラスティックポリマーまたはELPに結合(または会合)せずに被験者に投与した時の同じ活性物質と比較して活性物質のインビボ効果が増強される、活性物質のインビボ効果を増強する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、国立衛生研究所から助成金番号EB00188およびGM−061232の下での政府援助を得て為された。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、被験体に送達される活性物質の薬理学的性質を改善するための方法および製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの候補組成物に関して、さらには臨床使用されている組成物に関しても、重要な問題はインビボでの効果が十分でないまたは満足のいかないものであることである。不十分なインビボ効果は、例えば(i)活性化合物の低いバイオアベイラビリティー、(ii)活性化合物の望ましくない短い半減期、(iii)および/または活性化合物の望ましくない高い全身毒性のような様々な要因により現れ得る。さもなければ有望な組成物を臨床使用から排除してしまうことを避けるため、ヒトおよび動物被験体への送達において活性化合物のインビボ効果を増強する新しいアプローチが求められている。
【0004】
Danielle et al.への米国特許第6,004,782号は、バイオエラスティックポリペプチドおよび宿主細胞におけるその発現を述べている。治療薬を含有する融合タンパク質としてのその使用は、その中の第15段、43〜53行目で大まかに説明されている。活性物質のインビボ効果を増強することは示唆あるいは記述されていない。
【0005】
Chilkotiへの米国特許第6,582,926号は、中でも特に、送達される化合物を、逆温度転移を受けるポリマー(ELPなど)との複合体として投与することにより、化合物を被験体における対象領域へと標的する方法を述べている。送達される化合物は、第11段、6〜21行目に述べられているある種の放射性核種、化学療法剤、細胞傷害性組成物、および造影剤を含む。活性物質のインビボ効果を増強することは示唆あるいは記述されていない。
【0006】
Chilkotiへの米国特許第6,852,834は、中でも特に、主として製造の間の収率を改善するための、相転移によって単離可能な融合タンパク質を述べている。治療用タンパク質の融合タンパク質は、一般に第11段、10〜24行目に述べられている。活性物質のインビボ効果を増強することは示唆あるいは記述されていない。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、バイオエラスティックポリマーまたはエラスチン様ペプチドに結合された活性物質を被験体に投与することを含み、バイオエラスティックポリマーまたはELPに結合(または会合)せずに被験体に投与したときの同じ活性物質と比較して活性物質のインビボ効果が増強される、活性物質のインビボ効果を増強する方法を提供する。インビボ効果は、以下の方法、溶解度、バイオアベイラビリティー、有効治療用量、製剤適合性、タンパク質分解に対する抵抗性、投与されるペプチド活性治療薬の半減期、投与後の体内での持続性、および投与後の体内からのクリアランス速度の1以上において増強され得る。
【0008】
異なる記述がない限り、本発明は、活性物質を被験体に送達する方法であって、前記活性物質とエラスチン様ペプチドの複合体を被験体に投与することを含み、前記活性物質が前記複合体として複合形態で前記被験体に投与されたとき、非複合形態で前記被験体に投与された同じ量の前記活性物質と比較して前記活性物質のインビボ効果が増強される、前記方法を提供する。一部の実施形態では、前記活性物質が前記複合体として複合形態で前記被験体に投与されたとき、非複合形態で同じ方法により前記被験体に投与された同じ量の前記活性物質(例えば同じビヒクルまたは担体組成物中で、同じ投与経路によって投与された同じ用量の活性物質)と比較して、(i)前記活性物質のバイオアベイラビリティーがより大きい;(ii)前記活性物質の半減期がより長い;(iii)前記被験体において前記活性物質の全身毒性がより少ないことの少なくとも1つの効果を有する。
【0009】
活性物質は、診断薬、治療薬、造影剤、または化学療法剤であり得る。一部の実施形態では、活性物質は、(i)低分子、(ii)放射性核種、(iii)ペプチド、(iv)ペプチドミメティック、(v)タンパク質、(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、(vii)ペプチド核酸、(viii)siRNA、(ix)金属キレート、または(x)炭水化物である。一部の実施形態では、活性物質はタンパク質またはペプチドである。一部の実施形態では、活性物質は、治療用抗体または診断用抗体などの抗体である。
【0010】
複合体は、一般に、非経口注射などの何らかの適切な経路により治療有効量で被験体に投与される。
【0011】
本発明のさらなる態様は、医薬的に許容される担体中の本明細書で述べる複合体である。
【0012】
本発明のさらなる態様は、本明細書で述べる方法を実施するための、本明細書で述べる複合形態での、本明細書で述べる活性物質の使用である。
【0013】
本発明の前記および他の目的ならびに態様を、本明細書中の図面および以下の明細書においてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書で引用する全ての米国特許参考文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
本明細書で使用する「活性物質」は、治療薬および診断薬または造影剤を含む、何らかの適切な活性物質であり得る。
【0016】
造影剤の例は、以下を含むが、これらに限定されない。放射性同位体(例えばH、114C、35S、125I、131I)、蛍光標識(例えばFITC、ローダミン、ランタニドリン)、MRI造影剤(例えばガドリニウムキレート(Gd))、ルミノールなどの発光標識;酵素標識(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、ビオチニル基(標識アビジン、例えば光学的方法または熱量測定法によって検出できる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジンによって検出することができる)、二次リポーターによって認識されるあらかじめ定められたポリペプチドエピトープ(例えばロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。一次抗原−抗体反応を二次抗体の導入によって増幅する、間接的方法も使用し得る。
【0017】
本明細書で使用する「治療薬」は、以下を含むが、これらに限定されない、何らかの適切な治療薬であり得る。放射性核種、化学療法剤、細胞傷害性組成物、上皮小体ホルモン関連タンパク質(副甲状腺ホルモン関連タンパク質)、成長ホルモン(GH)、特にヒトおよびウシ成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン;α−、β−またはγ−インターフェロン等を含むインターフェロン、インターロイキンI、インターロイキンII;α−およびβ−エリスロポエチン(EPO)を含むエリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、抗血管新生タンパク質(例えばアンギオスタチン、エンドスタチン)、PACAPポリペプチド(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド)、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、バソプレッシン、アルギニンバソプレッシン(AVP)、アンギオテンシン、カルシトニン、心房性ナトリウム利尿因子、ソマトスタチン、アドレノコルチコトロピン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、オキシトシン、インスリン、ソマトトロピン、B型肝炎ウイルスのHBS抗原、プラスミノーゲン組織活性化因子、第VIIIおよび第IX凝固因子を含む凝固因子、グリコシルセラミダーゼ、サルグラモスチム、レノグラスチン、フィルグラスチン、インターロイキン2、ドルナーゼα、モルグラモスチム、PEG−L−アスパラギナーゼ、PEG−アデノシンデアミナーゼ、ヒルジン、エプタコグα(ヒト血液凝固第VIIa因子)、神経成長因子、トランスフォーミング増殖因子、上皮増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、VEGF;低分子量ヘパリンを含むヘパリン、カルシトニン;心房性ナトリウム利尿因子;抗原;モノクローナル抗体;ソマトスタチン;アドレノコルチコトロピン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン;オキシトシン;バソプレッシン;クロモリンナトリウム;バンコマイシン;デフェロキサミン(DFO);副甲状腺ホルモン、抗菌薬、抗真菌薬、免疫原または抗原、モノクローナル抗体などの抗体、またはそれらの組合せ。例えば米国特許第6,967,028号;同第6,930,090号;および同第6,972,300号参照。
【0018】
治療薬の例は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、W.Hunter,D.Gravett et al.への米国特許出願公開第20050181977号(2005年8月18日公開)(Angiotech International AGに許諾された)の段落0065〜0388の記載されている全ての治療薬を含む。
【0019】
本明細書で述べる「放射性核種」は、227Ac、211At、131Ba、77Br、109Cd、51Cr、67Cu、165Dy、155Eu、153Gd、198Au、166Ho、113mIn、115mIn、123I、125I、131I、189Ir、191Ir、192Ir,194Ir、52Fe、55Fe、59Fe、177Lu、109Pd、32P、226Ra、186Re、188Re、153Sm、46Sc、47Sc、72Se、75Se、105Ag、89Sr、35S、177Ta、177mSn、121Sn、166Yb、169Yb、90Y、212Bi、119Sb、197Hg、97Ru、100Pd、101mRh、および212Pbを含むが、これらに限定されない、腫瘍または癌細胞に治療線量の放射線を送達するのに適した何らかの放射性核種であり得る。放射性核種はまた、それらの化合物が治療のために有用ではない場合でも、画像化または診断のために検出可能な線量を送達するのに有用なものであり得る。
【0020】
本明細書で使用する「化学療法剤」は、メトトレキサート、ダウノマイシン、マイトマイシン、シスプラチン(シス白金またはシス−ジアミンジクロロ白金(II)(CCDP))、ビンクリスチン、エピルビシン、フルオロウラシル、ベラパミル、シクロホスファミド、シトシンアラビノシド、アミノプテリン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、デモコルシン、エトポシド、ミトラマイシン、クロラムブシル、メルファラン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、カンプトテシン、アクチノマイシンD、およびシタラビン、コンブレスタチンおよびその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書で使用する「細胞傷害性組成物」は、リシン(またはより特定するとリシンA鎖)、アクラシノマイシン、ジフテリア毒素、モネンシン、ベルカリンA、アブリン、ビンカアルカロイド類、トリコテセン、およびシュードモナス属細菌体外毒素Aを含むが、これらに限定されない。
【0022】
「免疫原」および「抗原」は交換可能に使用され、細胞性または体液性免疫応答が対象とする何らかの化合物を意味し、細菌抗原、ウイルス抗原、および腫瘍抗原を含む。非生存免疫原(例えば死滅免疫原、サブユニットワクチン、組換えタンパク質またはペプチド等)が現在好ましい。適切な免疫原の例は、糖質ベースのワクチンにおいて使用できる細菌表面多糖に由来するものを含む。細菌は、典型的には糖タンパク質、糖脂質、リポ多糖のO特異的側鎖、莢膜多糖等の一部としてそれらの細胞表面に糖質を発現する。例示的な細菌株は、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)、サルモネラ属(Salmonella spp.)、赤痢菌属(Shigella spp.)およびB型連鎖球菌(Group B streptococci)を含む。本発明における免疫原として使用し得る多くの適切な細菌炭水化物エピトープが当分野において記述されており(例えばSanders,et al.Pediatr.Res.37:812−819(1995);Bartoloni,et al.Vaccine 13:463−470(1995);Pirofski,et al.,Infect.Immun.63:2906−2911(1995)および国際公開公報第WO93/21948号)、さらに米国特許第6,413,935号に述べられている。例示的なウイルス抗原または免疫原は、HIVに由来するもの(例えばgp120、nef、tat、pol)を含む。例示的な真菌抗原は、鵞口瘡カンジダ、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、コクシジオイデス属(Coccidoides spp.)、ヒストプラスマ属(Histoplasma spp.)、およびアスペルギルス属(Aspergillus spp.)に由来するものを含む。寄生生物抗原は、プラスモディウム属(Plasmodium spp.)、トリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)、住血吸虫属(Schistosoma spp.)、リーシュマニア属(Leishmania spp.)等に由来するものを含む。本発明における抗原または免疫原として使用し得る例示的な炭水化物エピトープは、以下を含むが、これらに限定されない。Galα1,4Galβ−(細菌ワクチンのため);GalNAcα−(癌ワクチンのため);Manβ1,2(Manβ)Manβ−(例えば鵞口瘡カンジダに対して有用な真菌のため)(式中、n=0→∞である);GalNAcβ1,4(NeuAcα2,3)Galβ1,4Glcβ−O−セラミド(癌ワクチンのため);Galα1,2(Tyvα1,3)Manα1,4Rhaα1,3Galα1,2(Tyα1,3)Manα4Rha−およびGalα1,2(Abeα1,3)Manα1,4Rhaα1,3Galα1,2(Abeα1,3)Manα1,4Rhaアルファ,3GaIα1,2(Abeα1,3)Manα1,4Rha−(どちらも、例えばサルモネラ属(Salmonella spp.)に対して有用である)。抗原または免疫原としての炭水化物エピトープおよびその合成は、さらに米国特許第6,413,935号に述べられている。1つの実施形態では、免疫原は、炭疽免疫原、すなわち炭疽ワクチン、A(Michigan Department of Health,Lansing,Mich.;米国特許第5,728,385号に述べられている)などの、炭疽菌に対する防御免疫を生じさせる免疫原であり得る。免疫原または抗原の他の例は、以下の疾患および疾患の原因となる物質に対して免疫応答または抗原応答を生じさせるものとを含むが、これらに限定されない。アデノウイルス;百日咳菌;ボツリヌス中毒;ウシ伝染性鼻気管炎;カタル球菌;イヌ肝炎;イヌジステンパー;クラミジア属(Chlamydiae);コレラ;コクシジオイデス真菌症;牛痘;サイトメガロウイルス;サイトメガロウイルス;デング熱;デングトキソプラスマ症(dengue toxoplasmosis);ジフテリア;脳炎;腸毒性大腸菌;エプスタイン‐バーウイルス;ウマ脳炎;ウマ伝染性貧血;ウマインフルエンザ;ウマ肺炎;ウマライノウイルス;ネコ白血病;フラビウイルス;グロブリン;インフルエンザ菌B型;インフルエンザ菌;ヘモフィルス・ペルタッシス(Haemophilus pertussis);ピロリ菌;ヘモフィルス属;肝炎;A型肝炎;B型肝炎;C型肝炎;ヘルペスウイルス;HIV;HIV−1ウイルス;HIV−2ウイルス;HTLV;インフルエンザ;日本脳炎;クレブシエラ属;レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila);リーシュマニア;らい病;ライム病;マラリア免疫原;麻疹;髄膜炎;髄膜炎菌;A群髄膜炎菌多糖;C群髄膜炎菌多糖;流行性耳下腺炎;流行性耳下腺炎ウイルス;ミコバクテリア;ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis);ナイセリア属(Neisseria);淋菌;髄膜炎菌;ヒツジブルータング;ヒツジ脳炎;乳頭腫;パラインフルエンザ;パラミクソウイルス;パラミクソウイルス;百日咳;ペスト;肺炎球菌(Pneumococcus);ニューモシスティス(Pneumocystis carinii);肺炎;ポリオウイルス;プロテウス属(Proteus species);緑膿菌;狂犬病;RSウイルス;ロタウイルス;風疹;サルモネラ属;住血吸虫症;赤痢菌属;サル免疫不全ウイルス;痘瘡;黄色ブドウ球菌;ブドウ球菌属(Staphylococcus species);肺炎連鎖球菌;化膿連鎖球菌;連鎖球菌属(Streptococcus species);ブタインフルエンザ;破傷風;梅毒トレポネーマ;腸チフス;完全痘疱;水痘帯状疱疹ウイルス;およびコレラ菌。抗原または免疫原は、以下のワクチンにおいて一般的に使用される抗原などの、様々なトキソイド、ウイルス抗原および/または細菌抗原を含み得る。水痘ワクチン;ジフテリア、破傷風および百日咳ワクチン;インフルエンザ菌b型ワクチン(Hib);A型肝炎ワクチン;B型肝炎ワクチン;インフルエンザワクチン;麻疹、流行性耳下腺炎および風疹ワクチン(MMR);肺炎球菌ワクチン;ポリオワクチン;ロタウイルスワクチン;炭疽ワクチン;および破傷風・ジフテリアワクチン(Td)。例えば米国特許第6,309,633号参照。本発明を実施するために使用される抗原または免疫原は、機能を増強するためまたはそのターゲティングまたは送達増強などの付加的な機能を達成するために、1以上の付加的な群を複合または結合することなどによる、Pizzo et al.への米国特許第6,493,402号(α−2マクログロブリン複合体);米国特許第6,309,633号;同第6,207,157号;同第5,908,629号等に述べられている手法を含むが、これらに限定されない、何らかの方法で誘導体化または修飾されるものを含む。
【0023】
本明細書で使用されるインターフェロン(IFN)は、ウイルス、細菌、寄生生物および腫瘍細胞などの外来性物質による攻撃誘発に応答して大部分の脊椎動物の免疫系の細胞によって産生される天然タンパク質を指し、その機能は、他の細胞内でのウイルス複製を阻害することである。インターフェロンは、サイトカインとして知られる糖タンパク質の大きなクラスに属する。ヒトに関してインターフェロンの3つの主要クラスが、それらがシグナル伝達する受容体の種類に従って分類される、I型、II型およびIII型として発見された。ヒトI型IFNは、IFN−α、IFN−β、IFN−κ、IFN−δ、IFN−ε、IFN−τ、IFN−ωおよびIFN−ζと称される、膨大でさらに増加しつつあるIFNタンパク質の群を含む。(Interferon−ζ/limitin:Novel type I Interferon that displays a narrow range of biological activity,Oritani Kenji and Tomiyama Yoshiaki,International Journal of hematology,2004,80,325−331;Characterization of the type I interferon locus and identification of novel genes,Hardy et al.,Genomics,2004,84,331−345参照。)I型IFNに相同な分子は、哺乳動物を含む多くの種において認められ、一部は鳥類、爬虫類、両生類および魚類において同定されている。(The interferon system of non−mammalian vertebrates,Schultz et al.,Developmental and Comparative Immunology,28,499−508参照。)全てのI型IFNは、IFNAR1鎖およびIFNAR2鎖からなる、IFN−α受容体(IFNAR)として知られる特異的細胞表面受容体複合体に結合する。II型IFNは、IFN−γと呼ばれる1つの成員だけを有する。成熟IFN−γは、IFN−γ受容体(IFNGR)複合体に結合してその標的細胞内でシグナル惹起する、逆平行ホモ二量体である。III型IFN群は、IFN−λ1、IFN−λ2およびIFN−λ3(それぞれIL29、IL28AおよびIL28Bとも呼ばれる)と呼ばれる3つのIFN−λ分子からなる(Novel interferons,Jan Vilcek,Nature Immunology,2003,4、8−9参照)。FN−λ分子は、IL10R2(CRF2−4とも呼ばれる)およびIFNLR1(CRF2−12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を通してシグナル伝達する(Murine interferon lambdas(type III interferons)exhibit potent antiviral activity in vivo in a poxvirus infection model,Bartlett et al.,Journal of General Virology,2005,86,1589−1596参照)。
【0024】
本明細書で使用する「抗体」は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを含む、全ての型の免疫グロブリンを指す。「免疫グロブリン」という用語は、IgG、IgG、IgG、IgG等のような、これらの免疫グロブリンの亜型を含む。これらの免疫グロブリンのうちで、IgMおよびIgGが好ましく、IgGが特に好ましい。抗体は、(例えば)マウス、ラット、ウサギ、ウマまたはヒトを含む、いかなる起源の種でもよく、あるいはヒト化またはキメラ抗体でもよい。本明細書で使用する「抗体」という用語は、標的抗原に結合する能力を保持する抗体フラグメント、例えばFab、F(ab’)およびFvフラグメント、およびIgG以外の抗体から得られる対応するフラグメントを含む。そのようなフラグメントはまた、公知の手法によっても作製される。抗体は診断用または治療用であり得る。治療用抗体の例は、ハーセプチン、リツキサン、カンパス(Mellinium pharma Inc.)、ゲムツズマブ(Cell tech.)、ハーセプチン(Genentech)、パノレックス(Centocor GSK)、リツキシマブ(Genentech)、ベキサール(Coraxia GSK)、エドレコロマブ(Glaxo−wellcome)、アレムツズマブ(ILEX Pharmaceuticals)、ミロトラグ(mylotrag)(Whety−Ayerst)、IMC−C225、スマルチン(smartin)195およびミトモマブ(Imclone systems)を含むが、これらに限定されない。治療用抗体は、治療化合物および、非特異的結合を低減するためなどの、「コールドドース(cold dose)」抗体に結合したものを含む。例えばAbrams et al.,米国特許第RE38,008号参照。
【0025】
本明細書で使用する「治療する」は、被験体の状態(例えば1以上の症状)の改善、疾患の進行の遅延、症状の発現の遅延または症状の進行の緩慢化等を含む、疾患に侵された被験体または疾患を発症する危険度が高い被験体に利益を与えるあらゆる種類の治療または予防を指す。それ自体で、「治療」という用語はまた、症状の発現を防ぐための被験体の予防的処置を含む。本明細書で使用する、「治療」および「予防」は、必ずしも症状の治癒または完全な根絶を意味することは意図されておらず、患者の状態(例えば1以上の症状)の改善、疾患の進行の遅延等を含む、疾患に侵された患者に利益を与えるあらゆる種類の治療を意味することが意図されている。
【0026】
本明細書で使用する「治療有効量」は、癌、糖尿病、細菌またはウイルス感染等のような状態に罹患した患者に対して、患者の状態(例えば1以上の症状)の改善、疾患の進行の遅延等を含む、所望作用を生じさせるのに十分な抗体の量を意味する。免疫原に関して「治療有効量」は、細菌、ウイルス、真菌、原生動物または他の微生物因子によるその後の感染に対して免疫応答または防御免疫を生じさせる(全体的または部分的に)のに有効な量であり得る。
【0027】
本明細書で使用する「複合体」は、2以上の群が本明細書で述べる方法の条件下で単一構造として共に機能するように、互いに共有結合または非共有結合によって連結された2以上の部分または官能基を指す。1つの実施形態では、複合体は融合タンパク質である。一部の実施形態では、複合体は、互いに化学的または酵素的に結合された2つの部分を指す。
【0028】
本明細書で使用する「融合タンパク質」は、発現時に共有結合によって2番目のタンパク質またはペプチドに連結される1番目のタンパク質またはペプチドからなる、組換え手段(すなわち核酸からの発現)によって生産されるタンパク質またはペプチドを指す。
【0029】
「逆温度転移を受けるポリマー」は、本明細書では、より低温で水溶液に可溶性であり、より高温で水溶液に不溶性であるポリマーを指す。
【0030】
本明細書で使用する「転移温度」または「T」は、それより上では逆温度転移を受けるポリマーが水系(例えば水、生理食塩水)に不溶性であり、それより下ではそのようなポリマーが水系に可溶性である温度を指す。
【0031】
「バイオエラスティックポリマー」は、一般に、逆温度転移を示すポリペプチドである。バイオエラスティックポリマーは以下でより詳細に論じる。そのようなバイオエラスティックポリマーは、典型的にはエラスチン様ペプチドである。
【0032】
本発明は主としてヒト被験体の治療に関するが、本発明はまた、獣医学的用途のために、動物被験体、特にイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ等のような哺乳動物被験体の治療のためにも使用され得る。
【0033】
本明細書で述べる方法による治療を必要とする被験体は、固形腫瘍あるいは肺、結腸、乳房、脳、肝臓、前立腺、脾臓、筋肉、卵巣、膵臓、皮膚(黒色腫を含む)等のような癌に罹患している被験体;ウイルス、細菌、原生動物または他の微生物感染に罹患しているまたは発症する危険度が高い被験体等を含むが、これらに限定されない、本明細書で述べる活性物質によって従来または現在治療または診断される何らかの疾患に罹患している被験体を含む。
【0034】
バイオエラスティックポリマー。バイオエラスティックポリマーは公知であり、例えばUrry et al.への米国特許第5,520,672号に述べられている。一般に、バイオエラスティックポリマーは、バイオエラスティックペンタペプチド、テトラペプチドおよび/またはノナペプチド(すなわち「エラスチン様ペプチド」)のエラストマー単位を含むポリペプチドである。従って一部の実施形態では、エラストマー単位はペンタペプチドであり、他の実施形態では、エラストマー単位はテトラペプチドであり、さらなる他の実施形態では、エラストマー単位はノナペプチドである。本発明を実施するために使用し得るバイオエラスティックポリマーは、バイオエラスティックポリマーを形成するために使用できる多くのテトラペプチドおよびペンタペプチド反復単位を記述する、米国特許第4,474,851号に示されている。本発明を実施するために使用できる特定のバイオエラスティックポリマーは、米国特許第4,132,746号;同第4,187,852号;同第4,500,700号;同第4,589,882号;および同第4,870,055号にも述べられている。バイオエラスティックポリマーのさらなる他の例は、Urryへの米国特許第6,699,294号、FertalaとKoへの米国特許第6,753,311号、およびWallaceへの米国特許第6,063,061号に示されている。
【0035】
1つの実施形態では、本発明を実施するために使用されるバイオエラスティックポリマーは、一般式(VPGXG)(式中、Xは任意のアミノ酸(例えばAla、Leu、Phe)であり、mは、2、3または4から60、80または100以上のような何らかの適切な数である)のポリペプチドである。4番目のアミノ酸としての様々なアミノ酸の出現頻度、ならびにXの出現頻度は変化され得る。例えば本発明を実施するために使用されるバイオエラスティックポリマーは、一般式[(VPGXG)(VPGKG)(式中、mは、2、3または4から20または30までであり、nは、1、2または3であり、oは、少なくとも2、3または4から30、40または50以上である)のポリペプチドであり得る。X/Kのいかなる比率も可能であり、それは、式中、mが1、2または3から100、150または300以上であり、nが1、2または3から100または150または300以上であり、oが少なくとも1、2または3から100、150または300以上であることを意味する。
【0036】
例えば本発明を実施するために使用されるバイオエラスティックポリマーは、バイオエラスティックペンタペプチドおよびテトラペプチドからなる群より選択される反復エラストマー単位を含むことができ、その場合、反復単位は疎水性アミノ酸およびグリシン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基を含み、および反復単位は、式:
【化1】

(式中、R−Rは、アミノ酸残基1−5の側鎖を表わし、mは、反復単位がテトラペプチドであるときは0であり、または反復単位がペンタペプチドであるときは1である)
のβターンを有する立体配座で存在する。ノナペプチド反復単位は、一般に連続的なテトラおよびペンタペプチドからなる。好ましい疎水性アミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンからなる群より選択される。多くの場合、反復単位の最初のアミノ酸残基は、バリン、ロイシン、イソロイシンまたはフェニルアラニンの残基であり;2番目のアミノ酸残基はプロリンの残基であり;3番目のアミノ酸残基はグリシンの残基であり;および4番目のアミノ酸残基は、グリシン、あるいはトリプトファン、フェニルアラニンまたはチロシンなどの極めて疎水性の残基である。特定例は、テトラペプチドVal−Pro−Gly−Gly、テトラペプチドGGVP、テトラペプチドGGFP、テトラペプチドGGAP、ペンタペプチドVal−Pro−Gly−Val−Gly、ペンタペプチドGVGVP、ペンタペプチドGKGVP、ペンタペプチドGVGFP、ペンタペプチドGFGFP、ペンタペプチドGEGVP、ペンタペプチドGFGVPおよびペンタペプチドGVGIPを含む。例えばUrryへの米国特許第6,699,294号参照。
【0037】
複合体の結合は、化学的および組換え手段を含む、何らかの適切な手段によって実施し得る。化学的または酵素的結合は、当分野において公知の手順によって実施し得る。(例えば米国特許第6,930,090号;同第6,913,903号;同第6,897,196号;および同第6,664,043号参照)。組換え手段による複合体の結合(例えば融合タンパク質の発現などの組換え手段によって、エラスチンをインターロイキンなどのタンパク質またはペプチドに連結する場合)も、当分野で公知の手順によって実施し得る(例えば米国特許第6,974,572号;同第6,972,322号;同第6,962,978号;および同第6,956,112号参照)。
【0038】
製剤および投与。被験体への複合体の投与は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、腫瘍内投与、経口投与、吸入投与、経皮投与等のような何らかの適切な手段によって実施し得る。好ましい投与手法は、典型的には、対象とする特定領域が特異的に標的されない「全身的」投与である。
【0039】
上述した複合体(または「活性化合物」)は、様々な状態の治療のために単一医薬担体中または別々の医薬担体中で投与のために製剤され得る。本発明に従った医薬製剤の製造において、生理的に許容されるその塩を含む活性化合物、またはそれらのいずれかの酸誘導体は、典型的には、中でも特に、許容される担体と混合される。担体は、言うまでもなく、製剤中のいかなる他の成分とも適合性であるという意味で許容されねばならず、また患者に対して有害であってはならない。担体は、固体または液体、またはその両方であり得、好ましくは単位用量製剤、例えば0.5重量%〜95重量%の活性化合物を含有し得る錠剤として、化合物と共に製剤される。1以上の活性化合物を本発明の製剤に組み込んでもよく、本発明の製剤は、基本的に、場合により1以上の副成分を含む、成分を混合することからなる、製薬学の周知の手法のいずれかによって調製され得る。
【0040】
本発明の製剤は、経口、直腸、局所、口腔(例えば舌下)、非経口(例えば皮下、筋肉内、皮内または静脈内)および経皮投与に適するものを含むが、所与の場合の最も適切な経路は、治療される状態の性質と重症度および使用される特定活性化合物の性質に依存する。
【0041】
経口投与に適する製剤は、各々があらかじめ定められた量の活性化合物を含有する、カプセル、カシェ剤、ロゼンジまたは錠剤などの不連続単位で;粉末または顆粒剤として;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは水中油型または油中水型乳剤として、提供され得る。そのような製剤は、活性化合物と適切な担体(上記のような1以上の副成分を含み得る)を組み合わせる工程を含む、製薬学の何らかの適切な方法によって調製され得る。一般に、本発明の製剤は、活性化合物を液体または微細に分割された固体担体またはその両方と均一且つ密接に混合すること、その後、必要に応じて、生じた混合物を成形することによって調製される。例えば錠剤は、場合により1以上の副成分と共に、活性化合物を含む粉末または顆粒を圧縮または成形することによって製造され得る。圧縮錠剤は、場合により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤および/または界面活性剤/分散剤と混合された粉末または顆粒などの易流動性形態の化合物を、適切な機械で圧縮することによって調製され得る。成形錠剤は、不活性液体結合剤で湿らせた粉末状化合物を、適切な機械で成形することによって作製され得る。非経口投与に適する本発明の製剤は、好都合には活性化合物の滅菌水性製剤を含有し、前記製剤は、好ましくは意図される受容者の血液と等張である。これらの製剤は、皮下、静脈内、筋肉内または皮内注射によって投与され得る。そのような製剤は、好都合には、化合物を水またはグリシン緩衝液と混合すること、および生じた溶液を滅菌し、血液と等張にすることによって調製され得る。
【0042】
経皮投与に適する製剤は、長期間にわたって受容者の表皮と密接な接触を保持するように適合された不連続パッチとして提供され得る。経皮投与に適する製剤はまた、イオン導入法(例えばPharmaceutical Research 3(6):318(1986)参照)によっても送達でき、典型的には、場合により緩衝された活性化合物の水溶液の形態をとり得る。適切な製剤は、クエン酸緩衝液またはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含み、0.1〜0.2M有効成分を含有する。その使用が本発明の範囲内である、いずれか1つの活性物質の治療有効用量は、化合物ごと、患者ごとに幾分異なり、患者の状態および送達経路などの因子に依存する。そのような用量は、当業者に公知の常套的な薬理学的手順に従って、特に本明細書で提供する開示に照らして、決定され得る。一例では、用量は、被験体の体重キログラム当たり活性化合物1〜10μgである。
【0043】
治療薬が131Iである、もう1つの例では、患者への線量は、典型的には10mCi〜100、300、さらには500mCiである。異なる記述がない限り、治療薬が131Iである場合、患者への線量は、典型的には5,000Rad〜100,000Rad(好ましくは少なくとも13,000Rad、さらには少なくとも50,000Rad)である。他の放射性核種についての線量は、典型的には殺腫瘍線量が131Iについての前記範囲に相当するように選択される。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明の改善された薬理学的性質が、被験体への送達および/または投与計画を改善するために利用される。例えば活性物質の改善された半減期は、患者への投与の頻度を低減するために利用される(例えば3日または4日ごとに1回の投薬または投与;より好ましくは週に1回の投与、さらにより好ましくは2週間ごとに1回の投与;さらに一層好ましくは月に1回の投与);改善されたバイオアベイラビリティーは、患者に投与される活性物質の全体的用量を低減するために利用される等である。
【0045】
本発明を以下の非限定的実施例においてより詳細に説明する。
【実施例】
【0046】
本発明の目標は、治療効果を改善し、全身毒性を制限するために組成物または造影剤を罹患部位に選択的に送達することである。
【0047】
本発明は4つの部分を有する。
(1.組成物または造影剤担体)担体は、エラスチン様ポリペプチド(ELP)からなる、新規高分子組成物担体である。ELPは、逆温度相転移を受ける独特のクラスの生体高分子に属する。それらは、転移温度(T)以下の温度では可溶性であるが、それらのTを上回る温度で不溶性になり、凝集する[1−3]。
(i)ELPは、罹患部位で凝集するように罹患部位の局所温度以下であるTを有するように設計され得る。
(ii)あるいはELPは、可溶性形態のままであるように罹患部位の局所温度を上回るTを有するように設計され得る。
(iii)ELPは、組成物または造影剤または標的部分の共有結合または酵素結合のための部位を含有し得る。
(iv)ELPはまた、ELPを罹患部位または器官に特異的に標的するペプチドまたはタンパク質などの遺伝的にコード可能な標的部分(1以上)を含むように設計され得る。
(2.定義)
(A)組成物:何らかの疾患に対して治療価値を有する何らかの分子。
(B)造影剤:罹患部位または器官の視覚化を提供する何らかの分子。
組成物または造影剤の例は、排他的ではないが、(i)低分子、(ii)放射性核種、(iii)ペプチド、(iv)ペプチドミメティック、(v)タンパク質、(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、(vii)ペプチド核酸、(viii)siRNA、(ix)金属キレート、(x)炭水化物を含む。
(3.組成物または造影剤の連結または会合)
組成物は、安定なまたは不安定な結合方式を通してELPに共有結合され得る。組成物は、ELPと疎水的に会合し得る。組成物は、キレート化法を通してELPに連結され得る。組成物は、二次結合を通した分子認識によりELPと会合し得る。組成物はまた、酵素の作用を通してELPに連結され得る。組換えによって生産され得るペプチドタンパク質などの分子の場合は、ELPと組成物は、合成またはクローン化遺伝子から適切な宿主(大腸菌、ピキア・パストリス(pichia pastoris)、哺乳動物細胞またはバキュロウイルス)において単一実体として生産され得る。「ELP組成物/造影剤複合体」は、複合体の間の結合が単一実体を治療薬または造影剤として送達するために安定であるように合成され得るか、またはELPから組成物を遊離させるためにpHまたは光の作用、あるいは酵素の作用下で不安定であるように設計され得る。
(4.投与)
ELP組成物複合体または融合タンパク質は、(i)被験体に全身的に注入されるか(iv、ia、ipまたはim)、(ii)罹患部位または器官に局所的に注入されるか、(iii)経口的に送達されるか、あるいは(iv)非経口的に送達される。
【0048】
注入されたELP組成物/造影剤複合体または融合タンパク質は、遊離組成物と比較して、(1)遊離組成物/造影剤に比べてその複合体形態での組成物/造影剤の高い溶解度、長い循環半減期、体内からのクリアランスの低減、または組成物/造影剤の高いバイオアベイラビリティーの1以上を示し、用量および注射の頻度の低減、改善された治療指数、あるいは罹患部位または器官の改善された視覚化を生じさせる。
【0049】
(実施例)
ELPの合成と特性決定。ELPは、典型的には大腸菌における組換え合成によって調製される。しかし、他の宿主も組換え合成のために使用し得る。ELPはまた、化学合成によっても調製され得る。組換え合成の典型的な例では、重合工程は、ELPのための反復配列(典型的にはVPGXGの約10個のペンタペプチドをコードする)についての合成遺伝子を頭−尾方向に反復して連結する、反復方向指示型連結(recursive directional ligation)(RDL)と呼ばれる方法によって遺伝子レベルで実施される。プラスミドへのn回の連結後、これは、全てが同じペプチド配列をコードするが、組成物の倍数である分子量を有する、n+1個のELP遺伝子のライブラリーを提供する。
【0050】
ELP組成物の複合。ユニークC末端システイン残基を含むELPを合成し、逆転移サイクリング(ITC)によって精製して、4つの異なるpH感受性、マレイミド活性化、ヒドラゾンリンカーを通してドキソルビシン分子に複合する。リンカーの構造または長さは、ELPドキソルビシン複合体のTにほとんど影響を及ぼさない。全ての複合体のTは天然ELPと同様であるためである(データは示していない)。しかし、より長いリンカーを有するELPドキソルビシン複合体は、短いリンカーを有するELPドキソルビシン複合体よりも緩やかな転移速度を示す。pH4で、最も短いリンカーを有するELPドキソルビシン複合体からのドキソルビシンの放出は、72時間でほぼ80%に達した。
【0051】
ELPドキソルビシン複合体の細胞毒性。酸不安定性ELPドキソルビシン複合体を、FaDu細胞でのインビトロ細胞培養アッセイにおいて細胞毒性に関して試験する。対照複合体である非複合ELPは固有の細胞毒性を示さず、従って実質的なインターナリゼーションにもかかわらずELPが非毒性であることを示唆する(図4)。これに対し、ELPドキソルビシン複合体は24時間または72時間の間に実質的な細胞毒性を示し、毒性のレベルは等しいドキソルビシン濃度のものと同様である。固形腫瘍におけるELPの蓄積。FaDu固形癌を担持するヌードマウスに14C標識ELPを全身的に注入することにより、生体分布試験を実施する。移植した腫瘍におけるELPの蓄積は、注入用量の10〜20%/グラム(%ID/g)の範囲内である。約40℃のTを有するELPをマウスに全身的に注入し、移植腫瘍を42℃に加熱したとき、蓄積は約20%ID/gである。これに対し、腫瘍を加熱せずに同じELPを注入したとき、蓄積は約10%ID/gであった。このデータは、腫瘍を加熱しないときでも、有意の濃度(%ID/g)の放射性標識ELPが腫瘍内に局在したことを示す。これに対し、非複合形態の小さな放射性標識分子(分子量<500Da)の注入は、腫瘍内の有意に低い蓄積を生じさせる。この実施例は、ELPが罹患部位における有意の局在化を生じさせ得ることを明らかにする。
【表1】

【表2】

【0052】
上記は本発明の説明であり、本発明の限定と解釈されるべきではない。本発明は、特許請求の範囲とその中に含まれる特許請求の範囲の等価物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】遺伝子レベルで重合し、大腸菌において発現させ、ELPの相転移を利用することによって精製したELPのライブラリーのSDS−PAGE。
【図2】(A)銅染色によって視覚化した14C−ELPのSDS−PAGE分析、(B)SDS−PAGE後の14C−ELPのオートラジオグラフィー。(C)マウス(Balb/c nu/nu)における14C−ELPの薬物動態分析は、特徴的な分布と最終半減期8.4時間の排泄応答を示す。
【図3】ELPの取込みと局在化。全ての画像は、LSM−510レーザー走査型共焦点蛍光顕微鏡で撮影した扁平上皮癌(FaDu)細胞である。細胞を共染色の前に1時間、ELP−Alexa488(緑色)と共にインキュベートする。(A)細胞膜を標識するために細胞をDiI−CM(赤色)で染色する。(B)リソソームを選択的に染色するLysotracker Red(赤色)で細胞を共染色する。ELPはLysotracker Red染料と共局在する(黄色蛍光が認められる)。
【図4】(A)末端マレイミドを有する誘導体の合成:末端マレイミドを有する誘導体が、pH感受性ヒドラゾンリンカーを13−ケト位置で癌化学療法剤、ドキソルビシン(以下Dox)に結合することによって調製されることを示す。次に、誘導体の末端マレイミドを、1以上のシステイン残基を提示するELPに複合する。(B)MTT細胞生存性アッセイにおける、ELP2−160JM2複合体に複合したドキソルビシン(以下ELP−Dox)の細胞毒性の一例である。ELPドキソルビシンおよび非複合Doxの細胞毒性は、等しいドキソルビシン濃度の関数である。遊離組成物と比較すると、ELPドキソルビシンは遊離組成物とほぼ等しい細胞毒性を示す。(C)ELP−DoxおよびDoxを同じ濃度で尾静脈注射によってマウスに注入する。1時間後、Doxはマウスの血液試料から検出できない。しかし、約20注入グラム/血清グラム(%ID/g)がELP−Doxを注射したマウスから検出される。この実験の結果は、複合形態が組成物のより長い血漿半減期を有することを明らかにする。(D)ヒト腫瘍異種移植片を有する、DoxおよびELP−Doxを注射したヌードマウスの生体分布を示す。ELPへのDoxの複合語、異なる分布パターンが得られる。心臓、肝臓および肺におけるDoxの濃度はELP−OPDXの濃度よりも高いが、腫瘍におけるELP−Doxの濃度はDoxの濃度よりも高い。
【図5】腫瘍における14C標識ELPの蓄積。報告されている2つのELPは、41.5℃に加熱するかまたは加熱していない腫瘍における熱感受性ELP1と熱非感受性ELP2である。
【図6】組換えELP−タンパク質複合体の例としての種々のELP融合タンパク質の発現。全てのELP−タンパク質複合体は、タンパク質の遺伝子、ELPの融合および異種発現系(例えば大腸菌)における発現によって調製される。左のパネルは、青色蛍光タンパク質(BFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)およびクリングル1−3ドメイン(K1−3:アンギオスタチン)の例を示す。右のパネルは、精製ELP−タンパク質複合体の他の例を示す。
【図7】以下の方向でのELP融合タンパク質の精製のSDS−PAGE:タンパク質−ELPおよびELP−タンパク質の製剤は、ELPのタンパク質複合体がいずれの方向でも合成できることを示す。(A)CAT、(B)BFP、(C)Trx、(D)CATの活性を示す薄層クロマトグラフィー、(D)融合物におけるBDFPの機能性を示すBFP−ELPおよびELP−BFPの蛍光。
【図8】(I)逆転移精製のSDS−PAGE特性決定:チオレドキシン/90量体ELP融合物(49.9kDa、レーン1〜5)についての精製の各々の段階を示す。レーンA:可溶性溶解産物;レーンB:廃棄された、夾雑大腸菌タンパク質を含有する上清;レーン3:精製融合タンパク質を含む再可溶化ペレット画分;レーン4:2回目の上清;レーン5:2回目のペレット;レーン6:分子量マーカー(kDa)。(II)チオレドキシン/90量体ELPの精製の各々の段階についての全タンパク質活性(緑色)およびチオレドキシン(Trx)活性(赤色)。数値は、可溶性溶解産物について測定されたものに基準化している。
【図9】ELP−ペプチド複合体の合成の例。全ての複合体は、ELPとの融合物として組換えによって調製する。A〜Fの各々のSDS−PAGEゲルにおける2つのレーンは、左側に融合物(複合体)、右側にペプチドを示す。各精製ペプチドについての質量分析結果をSDS−PAGEゲルの下に示す。(A)モルヒネ調節性神経ペプチド(MMN)、(B)ニューロペプチドY(NPY)、(C)オレキシンB、(D)レプチン、(E)ACTH、(F)プロカルシトニン。
【図10】ELP−ペプチド複合体の例。ELPと抗菌性ペプチドMSI−78の組換え融合物(ELP−ペプチド複合体)。MSI−78の配列:配列=GIGKFLKKAKKFGKAFVKILKK。(A)ELP1−90−MSI−78およびMSI−78の精製。SDS−PAGEゲルは、組換え生産された複合体およびペプチドの両方の高い純度を示す。(B)質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィーによって測定したEP−MSI−78複合体の純度。1つの化合物が2476.6の分子量で検出され、純度は、LC−ELSDによって>99%である。(C)MSI−78の殺菌活性。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者へ送達用の薬剤を製造するためのエラスチン様ペプチドに結合した活性物質の使用であって、
前記活性物質が前記結合により複合体として前記被験者に投与されたとき、前記活性物質が前記複合体としてでなはく、同量が前記被験者に投与された場合と比較して前記活性物質のインビボでの効果が増強される、使用。
【請求項2】
前記活性物質が前記結合により複合体として前記被験体に投与されたとき、前記活性物質が前記複合体としてでなはく、同じ方法により同じ量が前記被験者に投与された場合と比較して、(i)前記活性物質のバイオアベイラビリティーがより大きいか、(ii)前記活性物質の半減期がより長いか、又は(iii)前記被験体において前記活性物質の全身毒性がより少ないかのうち少なくとも1つの効果を有する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記活性物質が診断薬である請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記活性物質が治療薬である請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記活性物質が化学療法剤である請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記化学療法剤が、(i)ドキソルビシン、(ii)パクリタキセル、(iii)シスプラチン、および(iv)コンブレスタチンからなる群より選択される請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記活性物質が造影剤である請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記造影剤がガドリニウムキレート(Gd)である請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記活性物質が、(i)低分子、(ii)放射性核種、(iii)ペプチド、(iv)ペプチドミメティック、(v)タンパク質、(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、(vii)ペプチド核酸、(viii)siRNA、(ix)金属キレート、および(x)炭水化物からなる群より選択される請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記活性物質がタンパク質またはペプチドである請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記タンパク質またはペプチドが、(i)抗体、(ii)インターフェロン、および(iii)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)からなる群より選択される請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記活性物質が治療用抗体である請求項1に記載の使用。
【請求項13】
前記複合体が治療有効量で前記被験体に投与される請求項1に記載の使用。
【請求項14】
前記複合体が非経口注射によって前記被験体に投与される請求項1に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−525946(P2009−525946A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547476(P2008−547476)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/048572
【国際公開番号】WO2007/073486
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(507421762)デューク・ユニヴァーシティ (3)
【Fターム(参考)】