説明

壁面材の製造法

【課題】側端面を一定角度に切断した二枚の板材1a,1bを突き合わせて、高周波誘電加熱によって接着する窯業系サイジング材などの壁面材1の製造法において、長寸法のものであっても全長にわたって良好な接着状態を実現することができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】板材1a,1bは、接着すべき姿勢を保つ受け台3上に載置し、板材1a,1bの接着面に近接した左右両側を上下方向押圧手段と左右方向押圧手段で押圧し、接着面を高周波誘電加熱によって加熱する。上下方向押圧手段では板材に下方向の分力と接着面を押圧する分力が作用し、左右方向押圧手段によっては上方向の分力と接着面を押圧する分力が作用する。板材に対する下方向の分力と上方向の分力が相殺され、接着面を押圧する力が効果的に作用し、良好な接着状態を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、側端面を一定角度に切断して接着剤を塗布した二枚の板材を突き合わせ、接着剤を塗布した接着面を高周波誘電加熱によって加熱接着する壁面材の製造法に関する発明である。具体的な例として、建造物の外壁を形成する窯業系サイジィング材のコーナー部分は、細幅の二枚の板材の側端面を一定角度(通常は直角)に突き合わせて接着したコーナー用壁面材1を配置し、コーナー用の壁面材の側方に通常の板材Aを配置して施工しているが、本発明はこのような壁面材の製造法に係る発明である。
【0002】
【従来の技術】従来、窯業系サイジィング材の主としてコーナー用の壁面材を加工するには、突き合わせ部分に例えばエポキシ系接着剤を塗布し、二枚の板材を所定の角度に保持させる型にセットして、加圧状態(コールドプレス)に1〜2日間保持して接着剤の硬化を待っていた。このような方法では生産効率が悪いため、特開平10−60383号に開示されるように一定の傾斜角度に支受させた二枚の板材の側端面どうしを高周波誘電加熱によって短時間に加熱接着する装置が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特開平10−60383号には、側端面を一定角度に切断した二枚の板材を断面略山形の支受台に支受させ、接着面の左右両側を押圧部材で上方から押圧することによって接着面を密着させて高周波電流を印加する方法が開示されている。この方法では、板材の長さが比較的短いものでは良好な結果を得られたが、板材の長さが長くなると問題が発生することが判明した。すなわち、接着しようとする二枚の板材が、主として長寸法の窯業系サイジィング材である場合、外観上の微小な歪みや内部応力が発生していたり、寸法誤差が生じていることがあり、接着面の左右両側に設けた一対の押圧部材だけで板材を押圧すると、接着位置の微小なずれや接着強度のばらつきを生じる可能性があることが判明した。
【0004】上記、従来技術の欠点に鑑み、本発明は、被加工材である板材の長手方向の全長にわたって接着面に対して一定の押圧力を加えることができ、接着面にずれを生じないとともに、全長にわたって一定の安定した接着力が得られる製造法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】接着しようとする二枚の板材1a,1bは、側端面を一定角度に切断し接着剤を塗布して突き合わせ、突き合わせた側縁が上位置にあって接着面が正対する、すなわち二枚の板材1a,1bを接着面の方向が一致する傾斜角度に保持させる。その状態で、接着面に近い左右両側方部分を上方から押圧する上下方向押圧手段と、横方向から押圧する左右方向押圧手段とで押圧して接着面を密着させ、この状態で高周波電流を印加し加熱接着させる。
【0006】接着面の方向が一致する傾斜角度に保持された二枚の板材を、上下方向押圧手段によって上方から押圧する力は、図3に矢印で示すように、板材を下方に押圧する分力と接着面を押しつける分力として作用する。一方、左右方向押圧手段によって横方向から押圧する力は、図4に矢印で示すように板材を斜め上方に押し上げる分力と接着面を押しつける分力として作用する。これら分力のうち板材を斜め下方に押し出す分力と、板材を斜め上方に押し上げる分力とは打ち消し合って、板材全体には接着面を押しつける大きな力が作用することになる。
【0007】また、板材の歪みなどによって多少の位置ずれが生じた場合、上下方向の押圧力又は左右方向の押圧力だけでは位置ずれを矯正することができないが、上下方向の押圧力と左右方向の押圧力のバランスによって正常な位置に矯正されることになる。換言すれば、板材の歪みなどによって接着面に浮き上がりを生じようとする部分にはより大きな押圧力が作用し、その結果接着面の全体になるべく均等な押圧力を作用させることができ、位置ずれを生じないで均一な接着圧力が作用した状態で加熱接着されて壁面材1が完成することになる。
【0008】上下方向押圧手段と左右方向押圧手段は、左右が同じ傾斜角度に支受された二枚の板材の、接着位置を挟んで左右対称位置に配置するのが好ましいが、上下方向押圧手段と左右方向押圧手段の長手方向の配列は、例えば上下方向押圧手段と左右方向押圧手段が必ずしも同じ比率で配列される必要はない。しかしながら、上下方向押圧手段と左右方向押圧手段をなるべく交互に配列すると、接着面の押圧力を均等にする上で効果的である。
【0009】横方向押圧手段は、水平方向であってもよいが必ずしも水平方向である必要はない。横方向押圧手段を水平方向とする場合、反力として作用する上方向への分力が大きくなりすぎる可能性があり、本発明者らの実験によれば横方向押圧手段を少し下向けに作用させたときに良好な結果を得ることができた。もっとも、この斜め上方の傾斜角度や横方向押圧力の大きさは、支受される板材の傾斜角度や上下方向押圧手段の押圧力の大きさなど、全体の力のバランスを勘案して接着面の押圧力を均等に作用させることができる値を選定するのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明壁面材の製造法の好ましい実施の形態を添付の図面に基づいて説明する。図1R>1は、本発明に係る製造法を実施する壁面材の製造装置の一部を拡大して示す正面図である。図2は、図1の壁面材の製造装置の主要部分のみの側面図で一部を切断して示してある。
【0011】図1に示す高周波誘電加熱装置の下定盤2上には、被加工材である二枚の板材を一定角度(通常略90度)に支受するための受け台3を設け、受け台3の上方には上定盤4によって支持されシリンダー5によって昇降駆動される昇降フレーム6を配置している。昇降フレーム6には、受け台3の中心線上に上部電極7を配置し、上部電極7の左右両側方には、受け台上の板材1a,1bをシリンダー9によって上方から押圧する上下方向押圧部材8と、板材1a,1bをシリンダー11によって横方向から中心方向に向けて押圧する左右方向押圧部材10を設けている。
【0012】受け台3は、図2に示すように水平な下定盤2の上に、丈夫な金属製の板材を左右それぞれ45度の傾斜角度で設置し、その上に板材1a,1bを載置するようにしている。左右それぞれ45度の傾斜角度で金属板を配置した受け台は、下定盤2の上に配置した截頭の略二等辺三角形の枕材12の上に金属板を固定して完成させている。このとき、受け台3の上端部は左右の金属板の間に隙間を形成し、該隙間部分に弾性を有するバネ材で形成した下部電極15を突出させている。これにより、受け台3に載置した板材1a,1bの下面に下部電極15が当接し、上方に配置した上部電極7との間で接着面の高周波誘電加熱が行われることによって壁面材1が完成する。
【0013】上下方向押圧手段の具体例を図3に示している。この図示例では、昇降フレーム6に固定した二つのシリンダー9,9を固定し、このシリンダーによって下方に向けてそれぞれ上下方向押圧部材8,8を作動させている。二つのシリンダー9,9によって駆動される上下方向押圧部材8,8は、その下方にある受け台の中心に対し左右対称位置に配置し、被加工材である板材1a,1bの接着面の近くを左右同じ条件で押圧することができるようにしている。上下方向押圧部材8,8の外側方には、ガイド部材8a,8bを設けて上下方向押圧部材が外側方に逃げないようにしている。
【0014】左右方向押圧手段の具体例を図4に示している。この図示例では、昇降フレーム6の左右両側の対称位置において、下方に向けて突出させた固定したシリンダー取り付け台11a ,11b にシリンダー11,11を固定し、内方に向けて左右方向押圧部材10,10が進退し、被加工材である板材1a,1bの上部を左右両側から同じ条件で押圧することができるようにしている。昇降フレーム6の左右両側に配置した左右方向押圧部材10,10は、水平方向ではなく僅かに(図面では傾斜角度が15度)斜め上方から斜め下方に向けて板材を押圧するようにしている。
【0015】図5は、高周波誘電加熱のための上部電極の構造を示している。上部電極7は長手方向に連続する棒状であって、受け台3の中心線の直上に位置している。この棒状の上部電極7は、昇降フレーム3から下方に向けて、一定寸法の昇降を許容する態様でガイド杆13によって支持するとともに、左右両側方にガード14,14を突出させている。このガード14は、合成樹脂材などの非導電性材料で形成し、上部電極7よりも一定寸法下方に突出している。昇降フレーム6が降下したときには、最初にガード14の先端が被加工材である板材1a,1bの表面に当接し、その後は上部電極7のガイド杆13と昇降フレーム3は遊動する。これにより、上部電極7と板材の上端との間に一定の間隙Xが維持され、接着面から溢れた接着剤が上部電極7に付着したり、板材1a,1b側面に付着することが防止できる。
【0016】上下方向押圧部材8と左右方向押圧部材10は、長さ方向に1対2や2対3といった任意の比率で適宜配列してもよいが、図1の図示例では上下方向押圧部材8と左右方向押圧部材10を交互に配置し、板材1aと1bの接着面を全体としてなるべく均一に押圧することができるようにしている。
【0017】次に、二枚の板材1a,1bを一定角度に突き合わせて接着する例えばコーナー用の壁面材1の製造工程について説明する。接合しようとする板材1a,1bは、それぞれ一方の側端面を一定角度(90度に接着しようとする場合は、側端面を45度)に切断し、この切断面に接着剤を塗布して受け台3上に載置する。接着しようとする板材は接着する側面を上位置とし、接着面どうしが正対するように配置する。このとき、接着面どうしが当接し得るように配慮し、板材の幅が合わない場合は、受け台2の両裾部分にスペーサー12を介在させて板材を載置する。
【0018】しかる後、昇降フレーム6を降下させると、上部電極7のガード14が受け台2上に載置されている板材表面に当接し上部電極7と下部電極15が接着面を誘電加熱することが出来る位置関係に配置される。この状態で、シリンダー9を作動させて上下方向押圧部材8,8で板材1a,1b上部を上下方向に押圧するとともに、シリンダー11を作動させて左右方向押圧部材10,10で板材1a,1b上部を左右方向に押圧し、上下方向の押圧力と左右方向の押圧力によって接着面が押圧されて密着している状態で高周波電流を印加すると、高周波誘電加熱によって板材1a,1bの間の接着剤が加熱されて接着作業が完了する。
【0019】図3に示す上下方向押圧部材8で白矢印で示すように板材1a,1bを下方に押圧すると、板材には黒矢印で示すように下方への分力と内方への分力が作用する。また、図4に示す左右方向押圧部材10,10で白矢印で示すように、板材1a,1bを下方に押圧すると板材には黒矢印で示すように上方への分力と内方への分力が作用する。上下方向押圧手段のみで板材を押圧すると、接着面を押圧するだけでなく板材を引き離す作用があるため、板材1a,1bや受け台などの関係寸法が正確であれば接着面に均等な押圧力が作用するが、微小な歪みや寸法誤差があると一方の板材が下方に移動して接着位置がずれたり接着圧力が不足して十分な強度が得られない可能性がある。また、左右方向押圧手段のみで板材を押圧すると、板材には接着面を押圧するだけでなく板材を押し上げる作用があるため、接着面の位置ずれを生じる可能性がある。
【0020】本発明では、上下方向押圧手段と左右方向押圧手段を併用することによって、板材を下方に押圧する力と上方に押し上げる力が相殺され接着面を押圧する力のみが有効に作用する。さらに、板材の歪みなどによって板材の微小な位置ずれに対し、上下、左右方向からの押圧力は、それ自体で位置補正をする作用があり、被加工物である板材の全長にわたって正確な位置に均等な押圧力で加熱接着されることになる。
【0021】
【発明の効果】請求項1記載の本発明壁面材の製造法によれば、接着すべき二枚の板材が長寸法のものであっても、その全長にわたって正確な位置関係であって、かつ均等な接着圧がかかった状態で高周波誘電加熱を行うことができ、部分的な接着不良などがない均質に接着された壁面材を提供することができる。
【0022】請求項2及び3記載の発明によれば、上下方向押圧力と左右方向押圧力の組合せをなるべくバランスのよい状態を選択し、均質に接着された壁面材を提供することができる作業条件を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明壁面材の製造法を実施する壁面材の製造装置の正面図、
【図2】図1の壁面材の製造装置の主要部分のみの側面図、
【図3】図1の壁面材の製造装置の上下方向押圧手段部分の縦断側面図、
【図4】図1の壁面材の製造装置の左右方向押圧手段部分の縦断側面図、
【図5】図1の壁面材の製造装置の電極装置部分の縦断側面図、
【図6】壁面材の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
1…壁面材、 1a,1b…板材、 2…下定盤、 3…受け台、 4…上定盤、5,9,11…シリンダー、 6…昇降フレーム、 7…上部電極、 8…上下方向押圧部材、 8a,8b…ガイド部材、 10…左右方向押圧部材、 12…枕材、13…ガイド杆、 14…ガード、 A…板材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】側端面を一定角度に切断して接着剤を塗布した二枚の板材を突き合わせ、該突き合わせた接着面を高周波誘電加熱によって加熱接着する壁面材の製造法において、接着剤を塗布した二枚の板材は、接着面の側辺を上位置とし接着面が正対するべく一定の傾斜角度に支受し、二枚の板材はそれぞれ接着面に近接した左右両側方部分を上方から押圧する上下方向押圧手段と、板材の上部を横方向から押圧する左右方向押圧手段とで接着面を押圧して密着させ、この接着面を密着させた状態で高周波電流を印加し加熱接着することを特徴とする壁面材の製造法。
【請求項2】上下方向押圧手段と左右方向押圧手段は、それぞれ二枚の板材の接着位置を挟んで左右対称位置に配置し、なおかつ接着する二枚の板材の長手方向に上下方向押圧手段と左右方向押圧手段を交互に配置してなる請求項1記載の壁面材の製造法。
【請求項3】左右方向押圧手段は、水平方向よりも僅かに斜め上方から二枚の板材を押圧してなる請求項1又は2記載の壁面材の製造法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−145094(P2000−145094A)
【公開日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−338489
【出願日】平成10年11月11日(1998.11.11)
【出願人】(390024394)山本ビニター株式会社 (16)
【出願人】(599115675)ゴウダ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】