説明

変性メラミン樹脂組成物及びポストフォーム用メラミン化粧板

【課題】 小さいR、特に4R以下の曲げ加工が可能なポストフォーム用メラミン化粧板を得ることを目的とする。
【解決手段】 メラミンを必須成分とするアミノ化合物1.0モルに対してホルムアルデヒド化合物を1.0〜1.5モルの割合、グリシジルエーテル類を0.02〜0.1モルの割合でそれぞれ配合したものを塩基性雰囲気下で反応させ変性メラミン樹脂組成物を得る。この変性メラミン樹脂組成物を主成分とする含浸用樹脂液が化粧板用の化粧紙に含浸された樹脂含浸化粧紙と、化粧板用のコア材に熱硬化性樹脂が含浸された樹脂含浸コア紙とを積層し、加熱加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板に使用する樹脂組成物に関するものであり、より詳しくは変性メラミン樹脂組成物及びポストフォーム用メラミン化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流し台、カウンターなどの天板や扉などの各種用途に用いられるポストフォーム用メラミン化粧板は、通常のメラミン化粧板と比べ曲げ加工ができることを特徴としている。しかしながら一般にポストフォーム用メラミン化粧板は表層をなす化粧層にはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、またコア層にはフェノール樹脂といった熱硬化性樹脂を用いているため、安定したポストフォーム加工の曲げ半径(Rmm)には制限があり、小R、とりわけ6R以下は困難であり、更に4R以下は極めて困難なものであった。
【0003】
かような問題を解決する方法として、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を合成する際のモル比を下げたり、可塑剤を添加する方法があるが、これらの方法では、ポストフォーム加工の曲げ半径はある程度小さくできるが未だ充分な性能を有しておらず、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂本来の優れた表面硬度、耐水性、耐熱性、耐汚染性などの一般性能が低下するといった問題があった。
【特許文献1】特開昭61−76364号公報
【特許文献2】特開昭59−37108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、前記のような課題、即ち、6R以下の小さいR、特に2.5〜4Rといったようなほぼ直角に近い曲げ加工が可能なポストフォーム用メラミン化粧板を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意、検討した結果、メラミンを必須成分とするアミノ化合物1.0モルに対してホルムアルデヒドを1.0〜1.5モルの割合、グリシジルエーテル類を0.02〜0.1モルの割合でそれぞれ配合したものを塩基性雰囲気下で反応させてなることを特徴とする変性メラミン樹脂組成物を、ポストフォーム用メラミン化粧板の表層となる化粧紙に適用することにより前記の課題を解決できることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の変性メラミン樹脂組成物はポストフォーム用メラミン化粧板の原材料として好適であり、優れた曲げ加工性を示すものである。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の変性メラミン樹脂組成物を得るには、メラミンと、必要により尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのアミノ化合物の混合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド化合物と、グリシジルエーテル類を、水を溶媒として70〜100℃の加熱下で、塩基性雰囲気下、例えばpH8〜11、好ましくはpH9.2〜9.4で反応させアミノ−アルデヒド樹脂初期縮合物を生成する。
【0009】
反応中のpHについては下限未満の場合は、メチロール化メラミンの縮合が大きくなりゲル化が起こりやすく、上限を越えると樹脂の安定性が悪くなる。pHを上記範囲にするための塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0010】

メラミンを必須成分とするアミノ化合物とホルムアルデヒド化合物のモル比は、アミノ化合物1.0モルに対してホルムアルデヒド化合物を1.0〜1.5モルとするのが好ましく、下限未満では、アミノ化合物の溶解が悪い上、樹脂が硬化する際不完全なものとなり、表面物性が劣りやすくなり、上限を越えると最終段階の樹脂の網目結合が過度になり曲げ加工性が劣りやすくなる。アルデヒド化合物は、とりわけ安価でアミノ化合物との反応性が良いホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドを用いるのが好ましい。
【0011】
アミノ化合物とグリシジルエーテル類のモル比は、アミノ化合物1.0モルに対してグリシジルエーテルは0.02〜0.1モルとするのが好ましく、下限未満の場合は、曲げ加工性が劣りやすく、また、上限を超えると比較例2に示すように耐熱水性が劣りやすくなる。
【0012】
グリシジルエーテル類としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのグリシジルエーテル類を添加することにより架橋間距離が長くなるため、ポストフォーム加工性が向上する。
【0013】
前記グリシジルエーテル類の中でもポストフォーム加工性、耐熱水性に優れた効果を発揮する化1で示されるポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが望ましく、とりわけnが2〜11のものが好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
また、化2で示されるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルも同様の理由から望ましく、とりわけnが2〜13のものが好ましい。
【0016】
【化2】

【0017】
また、1分子中に存在するグリシジルエーテル基の数は2〜3のものが好ましい。
【0018】
次に、前記の初期縮合物を、中性〜微塩基性、例えばpH6.8〜7.5に調整した後、60〜80℃の条件で加熱する。pHが下限未満の場合は、反応が進み過ぎ曲げ加工性が劣りやすく、上限を越えると反応が遅くなり架橋反応が進みにくくなる。pH調整するための酸性触媒としては塩酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、トルエンスルホン酸、ギ酸などが挙げられる。
【0019】
次いで、化粧板用の化粧紙に樹脂液を含浸、乾燥し樹脂含浸化粧紙を得る。一方、コア層として、クラフト紙に熱硬化性樹脂、例えばメラミンもしくはフェノール樹脂からなる樹脂液を含浸、乾燥し、樹脂含浸コア紙を得、樹脂含浸化粧紙と樹脂含浸コア紙を積層し、加熱加圧することにより本発明のポストフォーム用メラミン化粧板が得られる。
【実施例1】
【0020】
変性メラミン樹脂組成物
メラミン1.0モルに対して、ホルムアルデヒドを1.0モルと、化1で示されるnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール(登録商標)EX−920、ナガセケムテックス株式会社製)0.02モルと、適量の水を加え、水酸化ナトリウムでpHを9.3に調整し、95℃で1時間反応させた後、ギ酸でpHを7.0に調整し80℃で1時間加熱し、固形分が40%となるように水を加え変性メラミン樹脂組成物を得た。
化粧板用樹脂組成物
ポストフォーム用メラミン化粧板
樹脂含浸化粧紙
130g/mの化粧紙に化粧板用の樹脂組成物を数1で示す含浸率が120%となるように含浸し、乾燥して樹脂含浸化粧紙を得た。

【0021】
樹脂含浸コア紙
180g/mのクラフト紙にフェノール樹脂を主な成分とするメラミン化粧板コア用樹脂液を数1で示す含浸率が60%となるように含浸し、乾燥して樹脂含浸コア紙を得た。
ポストフォーム用メラミン化粧板
樹脂含浸化粧紙を1枚、樹脂含浸コア紙を3枚積層し、温度125℃、時間70分、圧力60kgf/cmで加熱加圧し、実施例1の厚み0.8mmのポストフォーム用メラミン化粧板を得た。
【実施例2】
【0022】
実施例1において、メラミン1.0モルに対して、化1で示されるnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを0.1モルとした以外は同様に実施してポストフォーム用メラミン化粧板を得た。
【実施例3】
【0023】
実施例1において、メラミンに対してホルムアルデヒドを1.5モルとした以外は同様に実施した。
【実施例4】
【0024】
実施例1において、メラミンに対してホルムアルデヒドを1.5モル、化1で示されnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを0.1モルとした以外は同様に実施した。
【実施例5】
【0025】
実施例4において、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルに代えて、化2で示されnが4のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコール(登録商標)EX−821、ナガセケムテックス株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【実施例6】
【0026】
実施例4において、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルに代えて、官能基数が3のグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコール(登録商標)EX−313、ナガセケムテックス株式会社製)を用いた以外は同様に実施した。
【0027】
比較例1
実施例1において、メラミン1.0モルに対してホルムアルデヒドを1.3モル、化1で示されnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを0.01モルとした以外は同様に実施した。
【0028】
比較例2
実施例1において、メラミン1.0モルに対してホルムアルデヒドを1.3モル、化1で示されnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを0.13モルとした以外は同様に実施した。
【0029】
比較例3
実施例1において、メラミン1.0モルに対してホルムアルデヒドを1.7モル、化1で示されnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを0.04モルとした以外は同様に実施した。
【0030】
比較例4
実施例1において、メラミン1.0モルに対してホルムアルデヒドを0.9モル、化1で示されnが3のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを0.
04モルとした以外は同様に実施した。
【0031】
【表1】

【0032】
評価方法は以下の通りとした。
【0033】
曲げ加工性;曲げ加工性のテスト方法は、抄紙の流れ方向に平行に150mm幅にサンプルを切り出し、所定の半径を持つ曲げ成形治具によって化粧板の温度を160℃まで加熱して曲げ成形を行い、目視によりクラックの発生の有無を確認し、クラックなきR[mm]を測定し、2.5Rを◎、4Rを○、6Rを×として評価を行った。
【0034】
耐熱水性;JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に基づき実施し、化粧板の表面に膨れ、ひび割れ、変色等の変化があるものを×、変化が見られないものは〇とした。
【0035】
耐煮沸性;JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に基づき実施し、化粧板の層間はく離があるものを×、ないものを○とした。
【0036】
耐熱性;JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に基づき実施し、化粧板の表面に膨れ、ひび割れ、光沢の減少等変化があるものを×、変化がないものを○とした。
【0037】
樹脂安定性;メラミン樹脂組成物を5℃及び40℃の恒温槽で96時間保存し、分離、白濁、固化など性状に大きな変化のあるものを×、ないものを○とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンを必須成分とするアミノ化合物1.0モルに対してホルムアルデヒド化合物を1.0〜1.5モルの割合、グリシジルエーテル類を0.02〜0.1モルの割合でそれぞれ配合したものを塩基性雰囲気下で反応させてなることを特徴とする変性メラミン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の変性メラミン樹脂組成物を主成分とする含浸用樹脂液が化粧板用の化粧紙に含浸された樹脂含浸化粧紙と、化粧板用のコア材に熱硬化性樹脂が含浸された樹脂含浸コア紙とが積層され、加熱加圧されてなることを特徴とするポストフォーム用メラミン化粧板。


【公開番号】特開2008−56866(P2008−56866A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238399(P2006−238399)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】