説明

外用組成物及びその製造方法

【課題】べたつきや油性感が抑制され、みずみずしい感触を有するトラネキサム酸エステルを有効成分とする外用組成物及びその製造方法の提供。
【解決手段】トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を有効成分として含む外用組成物であって、前記塩が微粒子状態で前記組成物中に分散してなる外用組成物の製造方法。トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の結晶を溶媒中に溶解させ、得られた溶液に塩析剤を添加することによって析出させてなる前記塩を微粒子状態で外用組成物中に分散させることによって、油性成分を多量に用いることなく、トラネキサム酸エステルを配合することができ、使用感及び安定性に優れた外用組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を有効成分として含む外用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸エステルは美白効果を奏することが知られており、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の外用組成物における美白成分として用いられている。例えば、特開平4−46144号公報(特許文献1)では、トラネキサム酸エステルを有効成分とする抗色素沈着外用剤が記載されている。また、特開2003−306419号公報(特許文献2)では、コエンザイムQ10と併用できる美白成分としてトラネキサム酸及びその誘導体が例示されている。さらに、特開2004−107262号公報(特許文献3)では、L−アスコルビン酸テトラ分枝脂肪酸エステル誘導体と併用できる油溶性美白剤として、トラネキサム酸セチルエステルが例示されている。
しかし、トラネキサム酸エステルは、水や油に対する溶解度が低く、長時間安定な状態で組成物中に配合させることは困難であるといった問題があり、製剤化するためには、溶解性や製剤の安定性の改善が課題となっている。
【0003】
一方、特開2002−234836号公報(特許文献4)では、トラネキサム酸エステルを有効成分とするストレス対応皮膚外用剤が記載されている。該公報では、オリーブ油などの油性成分を多量に用いてトラネキサム酸エステルを溶解させることが記載されている。しかし、この方法では、油性成分を多量に用いるため、剤形がクリームや乳液等に限られてしまう。また、得られた外用剤はべたつきや油性感があり、使用感が優れない。
【0004】
また、特開2006−306744号公報(特許文献5)では、トラネキサム酸エステル又はその塩とシリコーン油とを併用した皮膚外用剤が記載されている。該公報では、トラネキサム酸エステル又はその塩とシリコーン油とを併用することで、組成物中におけるトラネキサム酸エステル又はその塩の溶解性を高めることができ、トラネキサム酸エステルの有する効果を長期間持続できることが記載されている。シリコーン油は比較的さっぱりとした使用感を与える油性成分として知られているが、トラネキサム酸エステルを溶解させるために多量に用いる必要があり、皮膚外用剤の剤形の選択の幅が狭くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−46144号公報
【特許文献2】特開2003−306419号公報
【特許文献3】特開2004−107262号公報
【特許文献4】特開2002−234836号公報
【特許文献5】特開2006−306744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような状況の下、べたつきや油性感が抑制され、みずみずしい感触を有する使用感の良好なトラネキサム酸エステル含有製剤の提供が望まれている。また、剤形の選択の幅が広いトラネキサム酸エステル含有製剤の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、トラネキサム酸エステルを組成物中に溶解させるのではなく、トラネキサム酸エステル塩を微粒子状態で組成物中に分散させることによって、トラネキサム酸エステル由来の有効成分を組成物中に安定に保持することに成功した。さらに、該組成物中にノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子を前記塩と共存させることで、より安定な状態でトラネキサム酸エステル塩を分散させることができることを見い出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に示すようなトラネキサム酸エステル塩が安定分散した外用組成物の製造方法及び該方法で得られるトラネキサム酸エステル塩の安定化微粒子を提供するものである。また本発明は、トラネキサム酸エステル塩が微粒子状態で分散してなる組成物、及びこの組成物を局所適用することにより皮膚の過剰な色素沈着を抑制し及び/又は美白し、しみ又は色素沈着を薄くする化粧方法を提供するものである。
【0009】
[1]外用組成物の製造方法であって、
a)トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を溶媒に溶解する工程と、
b)得られた溶液に塩析剤を少なくとも1種添加し、平均粒子径0.01μm〜100μmの微粒子状態の結晶として前記塩を析出させる工程と、
c)前記析出した塩を外用組成物中に分散させる工程と
を含む、外用組成物の製造方法。
[2]前記トラネキサム酸エステルが、下記式(1)
【化1】


[式中、Rは、水酸基及びアミノ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。]
で示される、[1]記載の製造方法。
[3]前記トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩が、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩である、[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]前記トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の結晶が、平均粒子径0.05μm〜50.0μmの微粒子状態である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5]前記溶媒が、水、低級アルコール、多価アルコール、エーテル類、エステル類、ケトン類及びこれらの混合物からなる群から選ばれるものである、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]前記塩析剤が、クエン酸塩、エデト酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、臭素酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、炭酸塩及び金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の方法で得られた外用組成物。
[8]トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の含有量が、組成物の全重量に対して0.1〜10.0重量%である、[7]記載の外用組成物。
[9]トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の含有量が、組成物の全重量に対して0.5〜5.0重量%である、[7]又は[8]記載の外用組成物。
[10]ノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子をさらに含む、[7]〜[9]のいずれか1項に記載の外用組成物。
[11]前記水溶性高分子が、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのステアロイルエステルからなる群から選択される少なくとも1種である、[10]記載の外用組成物。
[12]しみ又は色素沈着を薄くするために皮膚を色素沈着抑制及び/又は美白するための[7]〜[11]のいずれか1項に記載の外用組成物の化粧料としての使用。
[13][7]〜[11]のいずれか1項に記載の外用組成物を皮膚に局所適用することを含む、皮膚を色素沈着抑制及び/又は美白するための化粧方法。
[14]a)トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を溶媒に溶解する工程と、b)得られた溶液に塩析剤を少なくとも1種添加し、前記塩を析出させる工程と、
を含む方法で得られるトラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の微粒子。
[15][14]記載の微粒子を含む外用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、油性成分を多量に用いることなく、トラネキサム酸エステルに由来する有効成分を安定な状態で組成物中に分散させることができるので、トラネキサム酸エステルに由来する有効成分を含む外用組成物の剤形の選択の幅が広がり、多様な製品形態の外用組成物を提供することが可能である。本発明の好ましい態様によれば、べたつきや油性感が抑制され、みずみずしい感触の外用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の外用組成物及びその製造方法等について詳細に説明する。
本発明の外用組成物は、トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩(以下「トラネキサム酸エステル塩」ということがある。)を有効成分として含むものであって、前記塩が微粒子状態で前記組成物中に分散してなるものである。
【0012】
本発明の外用組成物は、トラネキサム酸エステル塩が、組成物中に微粒子状態で分散してなるものであるので、周囲環境の変化によって有効成分の結晶成長が生じにくく、長期間安定な状態で有効成分を組成物中に分散させることができる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の外用組成物は、皮膚に対して長期間美白効果を奏することができる。
なお、本明細書において、「微粒子状態」というときは、組成物中で白濁分散できる程度に粒子が細かい状態をいう。微粒子の粒子径は、特に制限されないが、例えば、メディアン径が0.01μm〜100μm程度であることが好ましく、0.05μm〜50.0μmがより好ましく、0.10μm〜10.0μmがさらに好ましい。トラネキサム酸エステル塩が組成物中で結晶沈降するものは、ここでいう「微粒子状態」に含まれない。
【0013】
本発明の外用組成物は、例えば、
a)トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の結晶を溶媒に溶解する工程と、
b)得られた溶液に塩析剤を少なくとも1種添加し、前記塩を析出させる工程と、
c)前記析出した塩を外用組成物中に平均粒子径0.01μm〜100μmの微粒子状態で分散させる工程と
を含む方法によって製造することができる。
【0014】
以下、上記工程a)〜c)について具体的に説明する。
【0015】
(1)工程a)
まず、工程a)について説明する。
工程a)では、トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を溶媒に溶解する。この際、トラネキサム酸エステル塩を溶媒中で攪拌しながら溶解することが好ましい。また、溶媒の温度を50〜120℃に加熱することが好ましく、70〜100℃に加熱することがより好ましく、80〜90℃に加熱することが特に好ましい。
【0016】
本発明において、トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩に用いられるトラネキサム酸エステルは、下記(1)で示されるものが好ましい。
【化2】


[式中、Rは、水酸基及びアミノ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。]
【0017】
上記式(1)中、Rは、炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基の水素原子は水酸基及びアミノ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい。
脂肪族炭化水素基は、非環式であってもよいし、環式であってもよい。脂肪族炭化水素基が非環式の場合には、直鎖でもよいし、分岐鎖でもよい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルジエニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキルアルキル基などが含まれる。これらの中でも、アルキル基が好ましい。炭素数は8〜20が好ましく、特に12〜18が好ましい。
【0018】
該脂肪族炭化水素基の置換基の数は特に制限されない。該脂肪族炭化水素基が置換基を2以上有する場合は、該置換基は、水酸基又はアミノ基のいずれかであってもよいし、水酸基及びアミノ基の両方であってもよい。
【0019】
上記式(1)で示されるトラネキサム酸エステルとしては、具体的には、トラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ミリスチルエステル、トラネキサム酸セチルエステル及びトラネキサム酸ステアリルエステル等が挙げられる。これらの中でも、トラネキサム酸セチルエステルが特に好ましい。
【0020】
本発明に用いられるトラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩は、本発明の目的を阻害しないものであれば特に制限されないが、トラネキサム酸エステルの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩;シュウ酸塩、乳酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩;炭酸塩などが好ましく挙げられる。
【0021】
中でも、本発明に用いられるトラネキサム酸エステル塩としては、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩、トラネキサム酸セチルエステルリン酸塩、トラネキサム酸セチルエステル硫酸塩、トラネキサム酸セチルエステル臭素酸塩、トラネキサム酸セチルエステル硝酸塩、トラネキサム酸セチルエステルシュウ酸塩、トラネキサム酸セチルエステル乳酸塩、トラネキサム酸セチルエステルクエン酸塩及びトラネキサム酸セチルエステル炭酸塩からなる群から選択されるものが好ましい。特に、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩が好ましい。
トラネキサム酸エステル塩は1種単独で用いても、2種以上用いてもよい。
【0022】
原料となるトラネキサム酸エステル塩は、一般的には、カルボキシル基を持つトラネキサム酸と水酸基を持つ高級アルコールなどとを、脱水縮合反応させるエステル化方法で得ることができる。トラネキサム酸は公知の化合物であり、例えば特開平9−077726号公報などに記載された方法に従って製造することができる。上記方法で得られるトラネキサム酸エステル塩は、通常、粒径0.1mm〜10.0mm程度の結晶であり、溶媒中に直接かつ安定な状態で溶解又は分散させることは困難であるが、本発明の方法に従って、トラネキサム酸エステル塩の結晶を溶媒に溶解し、塩析剤を用いて塩析させることで、トラネキサム酸エステル塩を溶媒中に微粒子状態で分散させることができる。
【0023】
使用できる溶媒は、特に制限されなく、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール(好ましくは炭素数1〜5のアルコール);1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;或いはこれらの混合物を挙げることができる。中でも、溶解性が比較的高いことから、水、又は、水と極性有機溶媒との混合物が好ましく、特に水が好ましい。
【0024】
トラネキサム酸エステル塩を溶媒に溶解した後の溶液中のトラネキサム酸エステル塩の濃度は、使用する溶媒に対するトラネキサム酸エステル塩の溶解度によって適宜選択されるものであり、特に制限されない。トラネキサム酸エステル塩を効率よく析出させるために、例えば、組成物(トラネキサム酸エステル塩及び任意にその他の水溶性成分を溶媒に溶解して得られる溶液)の全重量に対して0.1〜20.0重量%が好ましく、0.5〜10.0重量%がより好ましく、1.0〜5.0重量%が特に好ましい。
【0025】
(2)工程b)
次に、工程b)について説明する。
工程b)では、工程a)で得られた溶液に塩析剤を少なくとも1種添加し、前記塩を析出させる。
【0026】
塩析剤としては、溶液中、トラネキサム酸エステル塩を析出させることができるものであれば特に制限されない。例えば、クエン酸塩、エデト酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、臭素酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、炭酸塩、金属塩等が挙げられる。これらの塩析剤の中でも、少量の塩析剤で効率よく所望の塩を析出させることができ、他の配合成分との相溶性が良好であることから、クエン酸塩、エデト酸塩、グリコール酸塩、硫酸塩、リン酸塩、金属塩が好ましい。
より具体的には、クエン酸塩としてクエン酸ナトリウム、エデト酸塩としてエデト酸ナトリウム、グリコール酸塩としてグリコール酸ナトリウム、硫酸塩として硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸塩としてリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、金属塩として塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。これらの塩析剤の中でも、クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムがさらに好ましい。塩析剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
塩析の条件は特に制限されない。工程a)で得られた溶液に塩析剤を添加するときの温度は例えば30〜120℃が好ましく、40〜100℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。
【0028】
また、均一な微粒子状態の塩を生成させるため、溶液を攪拌しながら塩析剤を添加することが好ましい。
【0029】
塩析剤の使用量は特に制限されないが、組成物(トラネキサム酸エステル塩及び任意にその他の水溶性成分を溶媒に溶解して得られる溶液と塩析剤との混合液)の全重量に対して0.05〜5.0重量%が好ましく、0.1〜2.0重量%がより好ましく、0.2〜1.0重量%がさらに好ましい。
【0030】
塩析剤を添加した後、得られた混合液を、好ましくは攪拌しながら塩を析出させる。混合液の温度が室温よりも高い場合には、混合液の温度を室温(20〜40℃)まで冷却することが好ましい。冷却速度は特に制限されない。冷却する際には温度調節装置を用いてもよいし、自然冷却であってもよい。
【0031】
(3)工程c)
工程c)では、工程b)において平均粒子径0.01μm〜100μmの微粒子状態の結晶として析出した塩を外用組成物中に分散させる。なお、本明細書において「平均粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-7000、SHIMADZU社製)で測定(算出)した値(メディアン径)をいう。
【0032】
本発明においては、工程b)で生成した微粒子状態のトラネキサム酸エステル塩を組成物中に分散させた状態でこの組成物をそのまま外用組成物として用いることもできるし、得られた組成物から微粒子状態のトラネキサム酸エステル塩を単離回収してこれを別の外用組成物に配合して用いることもできる。トラネキサム酸エステルの塩の分離回収方法は特に制限されない。例えば、遠心分離、ろ過分離、スプレードライ、フリーズドライなどが用いられる。
【0033】
上記工程a)〜c)に従って本発明の外用組成物を得ることができる。
本発明の外用組成物中に分散されるトラネキサム酸エステル塩の含有量は有効量であれば特に制限されなく、剤形や製品形態等によって適宜選択すればよい。例えば、該組成物の全重量に対して0.01〜20.0重量%が好ましく、0.1〜10.0重量%がより好ましく、0.5〜5.0重量%がさらに好ましい。
【0034】
本発明の外用組成物は、ノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子をさらに含むことが好ましい。該組成物中に、ノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子が含まれていることで、長期間保存してもトラネキサム酸エステル塩の凝集物を生じにくく、安定な分散状態を維持することができる。該水溶性高分子は、トラネキサム酸エステル塩が析出した後で添加してもよいし、トラネキサム酸エステル塩を析出させる際に添加してもよい。例えば、水溶性高分子を、工程a)又はb)において添加してもよいし、工程c)において添加してもよい。
【0035】
本発明に用いられるノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子としては、例えば、変性されていてもよい多糖類(例えば、デキストリン)、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロイルエステル、グルコマンナン、キシラン、マンナン、寒天)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVM(ポリビニルメチルエーテル)、PVP(ポリビニルピロリドン)、天然ガム類(例えば、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、タマリンドガム)等が挙げられる。
中でも、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロイルエステルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明の外用組成物におけるノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子の配合量は、トラネキサム酸エステルの塩を安定な状態で保持することができる範囲であれば特に制限されない。例えば、外用組成物の全重量に対して、合計で、0.01〜5.00重量%が好ましく、0.05〜2.00重量%がより好ましく、0.1〜1.00重量%がさらに好ましい。
【0037】
本発明の外用組成物のpHは、十分な効能が得られると共に安全性を高める観点から、3.0〜8.0、好ましくは4.0〜6.0であることが望ましい。
【0038】
本発明の外用組成物は、上述したとおり、トラネキサム酸エステル塩を溶媒に溶解させ、得られた溶液に塩析剤を添加することによって前記塩を微粒子状態で析出させ、これを外用組成物中に分散させて製造される。
本発明では、溶解/不溶解状態の不安定なトラネキサム酸エステル塩を組成物中に微粒子状態で分散させることにより、外用組成物中にトラネキサム酸エステルに由来する有効成分を長期間安定な状態で保持することができる。この微粒子状態のトラネキサム酸エステル塩は、水性媒体中にも分散させることができるため、有効成分を分散させるために多量の油性成分を用いる必要がなく、べたつきや油性感を抑制したさっぱりとした使用感の外用組成物を得ることができる。また、外用組成物中に油性成分を配合する場合も、その使用量を目的に応じて適宜調整することができるので、外用組成物の剤形や製品形態の選択の幅が広がる。
【0039】
上記のようにして得られる本発明の外用組成物は、通常化粧品又は医薬品に配合可能な成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール(好ましくは炭素数6以上のアルコール、より好ましくは炭素数10以上のアルコール)、合成エステル油、シリコーン化合物、界面活性剤、コサーファクタント、保湿剤、皮膜剤、増粘剤、ゲル化剤、無機鉱物類、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール又はその誘導体、単糖、オリゴ糖、アミノ酸、植物抽出物、有機アミン、高分子エマルジョン、酸化防止剤、酸化防止助剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、血流促進剤、殺菌剤、消炎(抗炎症)剤、細胞(皮膚)賦活化剤、角質溶解剤、清涼剤、収斂剤、美白剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防腐剤、pH調整剤、緩衝剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができ、目的とする剤形に応じて常法により製造することができる。
これらの添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限されなく、剤形や製品形態などによって適宜選択される。これらの添加剤は、いずれの工程で添加してもよい。添加剤の種類によって添加するタイミングを適宜選択すればよい。
【0040】
粉末成分としては、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウムまたはアルミニウムレーキ等の有機顔料;天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)等が挙げられる。
【0041】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0042】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0043】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0044】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、水添ポリデセン等が挙げられる。
【0045】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0046】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0047】
合成エステル油としては、ジネオペンタン酸トリプロピレングリコール、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0048】
シリコーン化合物としては、シリコーン油、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンエラストマー、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
【0049】
シリコーンエラストマーとしては、例えば、非乳化オルガノポリシロキサンエラストマー又は乳化オルガノシロキサンエラストマーが挙げられる。非乳化オルガノポリシロキサンエラストマーとしては、ジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー、ラウリルジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマーなどが挙げられる。
ジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマーとしては、DOW CORNING社より「DC9040」及び「DC9045」などの名称で市販されているもの、GENERAL ELECTRIC社より「SFE839」及び「Velvasil」シリーズ製品、信越化学工業株式会社より「KSG−15」、「KSG―16」、「KSG−18」などの名称で市販されているもの([ジメチコーン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー])、GRANT INDUSTRIES社より「グランシル」(商標)シリーズ製品などが挙げられる。
ラウリルジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマーとしては、信越化学工業株式会社より「KSG−31」、「KSG−32」、「KSG−41」、「KSG−42」、「KSG−43」及び「KSG−44」などの名称で市販されているものなどが挙げられる。
乳化オルガノシロキサンエラストマーとしては、ポリアルコキシル化シリコーンエラストマー又はポリグリセロール化シリコーンエラストマーなどが挙げられる。
ポリアルコキシル化シリコーンエラストマーとしては、DOW CORNING社より「DC9010」及び「DC9011」などの名称で市販されているもの、信越化学工業株式会社より「KSG−20」、「KSG−21」、「KSG−30」、「KSG−31」、「KSG−32」、「KSG−33」、「KSG−210」、「KSG−310」、「KSG−320」、「KSG−330」、「KSG−340」及び「X−226146」などの名称で市販されているものなどが挙げられる。
ポリグリセロール化シリコーンエラストマーとしては、信越化学工業株式会社より「KSG−710」、「KSG−810」、「KSG−820」、「KSG−830」、「KSG−840」、「KSG−31」、「KSG−32」、「KSG−41」、「KSG−42」、「KSG−43」及び「KSG−44」などの名称で市販されているものなどが挙げられる。
【0050】
また、シリコーンレジン化加水分解タンパク質を用いることもできる。シリコーンレジン化加水分解タンパク質としては、(加水分解シルク/PG−プロピルメチルシランジオール)クロスポリマー及び(トリメチルシリル加水分解コムギタンパク/PGプロピルメチルシランジオール)クロスポリマーなどが挙げられる。シリコーンレジン化加水分解タンパク質としては市販品を用いてもよい。市販品としては、株式会社成和化成より「プロテシルFN」、「プロテシルLH」及び「プロテシルGLH」などの名称で市販されているものなどが挙げられる。
【0051】
界面活性剤としては、親油性ノニオン性界面活性剤及び親水性ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
親油性ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0052】
親水性ノニオン性界面活性剤としては、例えば、POE−ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビタンモノオレエート、POE−ソルビタンモノステアレート、POE−ソルビタンモノオレート、POE−ソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POE−ソルビットモノラウレート、POE−ソルビットモノオレエート、POE−ソルビットペンタオレエート、POE−ソルビットモノステアレート等);POE−グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POE−グリセリンモノステアレート、POE−グリセリンモノイソステアレート、POE−グリセリントリイソステアレート等);POE−脂肪酸エステル類(例えば、POE−モノオレエート、POE−ジステアレート、POE−モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE−アルキルエーテル類(例えば、POE−ラウリルエーテル、POE−オレイルエーテル、POE−ステアリルエーテル、POE−ベヘニルエーテル、POE−2−オクチルドデシルエーテル、POE−コレスタノールエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック等);POE・POP−アルキルエーテル類(例えば、POE・POP−セチルエーテル、POE・POP−2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POP−モノブチルエーテル、POE・POP−水添ラノリン、POE・POP−グリセリンエーテル等)等が挙げられる。
【0053】
コサーファクタントとしては、例えば、高級アルコールが挙げられる。中でも、直鎖アルコールである、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等が好ましく、特にセチルアルコールが好ましい。
【0054】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0055】
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。
【0056】
多価アルコール又はその誘導体としては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、1,2,6−ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等)等が挙げられる。
【0057】
単糖としては、例えば、三炭糖(例えば、D−グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等);四炭糖(例えば、D−エリトロース、D−エリトルロース、D−トレオース、エリスリトール等);五炭糖(例えば、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソース、D−アラビノース、D−リボース、D−リブロース、D−キシルロース、L−キシルロース等);六炭糖(例えば、D−グルコース、D−タロース、D−プシコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、L−ガラクトース、L−マンノース、D−タガトース等);七炭糖(例えば、アルドヘプトース、ヘプロース等);八炭糖(例えば、オクツロース等);デオキシ糖(例えば、2−デオキシ−D−リボース、6−デオキシ−L−ガラクトース、6−デオキシ−L−マンノース等);アミノ糖(例えば、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、アミノウロン酸、ムラミン酸等);ウロン酸(例えば、D−グルクロン酸、D−マンヌロン酸、L−グルロン酸、D−ガラクツロン酸、L−イズロン酸等)等が挙げられる。
【0058】
オリゴ糖としては、例えば、ショ糖、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ゲンチオビオース、ウンビリシン、ラフィノース、ゲンチアノース、マルトトリオース、メレジトース、プランテオース、ウンベリフェロース、スタキオース、ベルバスコース等が挙げられる。
【0059】
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ−アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0060】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0061】
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0062】
これらの添加剤は、米国化粧品工業会(Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association)より発行されている「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(第9版、2002年)に収載されているので、これを参照することができる。
【0063】
本発明の外用組成物は、ビタミン類、酸化防止剤、保湿剤、感触改良剤、血流促進剤、抗菌剤、細胞(皮膚)活性剤、皮膚軟化剤、老化防止剤、抗汚染剤、角質溶解剤、収斂剤、抗炎症剤、ホワイトニング剤、日焼け防止剤などの種々の活性成分をさらに含んでいてもよい。
【0064】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、Eおよびその誘導体、パントテン酸およびその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0065】
酸化防止剤としては、例えば、パルミチン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、グルコシドアスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、ソルビン酸アスコルビルなどのアスコルビン酸及びその誘導体;
酢酸トコフェロール、ソルビン酸トコフェロール、その他のトコフェロールのエステルなどのトコフェロール及びその誘導体;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA);没食子酸エステル;リン酸;クエン酸;マレイン酸;マロン酸;スクシン酸;フマル酸;ケファリン;ヘキサメタリン酸塩;フィチン酸;エチレンジアミンテトラ酢酸:及びアイリッシュモス(Chondrus crispus)、ロディオラ属(Rhodiola)、高度好熱菌、マテ茶葉、オーク材、カユ・ラペ樹皮(kayu rapet bark)、サクラ葉、イランイラン葉(ylang ylang leaves)などの植物エキスが挙げられる。
【0066】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;グリセリン;1,3−ブチレングリコール;キシリトール;ソルビトール;マルチトール;コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類;ヒアルロン酸;ヒアルロン酸ナトリウム;ヒアルロン酸アセチルナトリウム;ムコイチン硫酸;カロニン酸;アテロコラーゲン;コレステリル−12−ヒドロキシステアレート;胆汁酸塩;ピロリドンカルボン酸塩及び乳酸塩などのNMF(自然保湿因子)の主成分;尿素、システイン及びセリンなどのアミノ酸類;短鎖可溶性コラーゲン;ジグリセリン(EO)PO付加物;日油株式会社より「Lipidure HM」及び「Lipidure PBM」などの名称で市販されている2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンのホモポリマー又はコポリマー;パンテノール;アラントイン;日油株式会社より「Wilbride S 753」の名称で市販されているPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン;旭化成ケミカルズ株式会社より「AMINOCOAT」の名称で市販されているトリメチルグリシン;スウィートチェスナット(Castanea sativa)エキス、ヘーゼルナットタンパク質加水分解物、チューベローズ(Polianthes tuberosa)多糖類、アルガンツリー種子油(Argania spinosa kernel oil)、丸善製薬株式会社より「真珠エキス」(登録商標)の名称で市販されているコンキオリン含有真珠エキスなどの各種植物エキスが挙げられる。
【0067】
感触改良剤としては、一般に外用組成物の感触改良剤として知られているものを使用できる。例えば、前述したノニオン性高分子、カチオン性高分子のほか、アニオン基を含むアニオン性高分子及び両イオン性高分子(例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ペクチン、フコイダン、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、コラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウム、アルカシーラン(アルカリゲネス産生多糖体)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロースなど)が挙げられる。
【0068】
皮膚軟化剤としては、ポリメタクリル酸グリセリル;メチルグルセス−20(methyl gluceth-20)などが挙げられる。
【0069】
老化防止剤としては、例えば、アシルアミノ酸(具体的には、SEDERMA社より「Maxilip」、「Matrixyl 3000」、「Biopeptide CL」の名称で市販されているもの、SEPPIC社より「Sepilift」の名称で市販されているものなどが挙げられる。);エンドウ(Pisum sativum)エキス;ダイズタンパク質加水分解物;マンヌロン酸メチルシラノール;加水分解ペポカボチャ種子油粕;セネデスムスエキスなどが挙げられる。
【0070】
抗汚染剤としては、例えば、ワサビノキ種子エキス(Moringa pterygosperma seed extracts)(具体的には、LSN社より「Purisoft」の名称で市販されているものが挙げられる。);シアバターエキス(具体的には、SILAB社より「Detoxyl」の名称で市販されているもの、セイヨウキズタエキス(ivy extract)、フィチン酸、ヒマワリ種子エキスのブレンド(例えば、SEDERMA社より「OSMOPUR」の名称で市販されているもの)などが例示される。)などが挙げられる。
【0071】
角質溶解剤としては、例えば、α−ヒドロキシ酸(具体的には、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、マンデル酸及び酒石酸などが例示される)、β−ヒドロキシ酸(具体的には、サリチル酸などが例示される)、それらのエステル(具体的には、乳酸C12−13アルキル)及びこれらのヒドロキシ酸を含む植物エキス(具体的には、ロゼリソウ(Hibiscus sabdriffa)エキスなどが例示される)などが挙げられる。
【0072】
収斂剤としては、例えば、マンサク(hamamelis)エキスなどが挙げられる。
【0073】
抗炎症剤としては、例えば、ビサボロール、アラントイン、トラネキサム酸、酸化亜鉛、硫黄酸化物及びその誘導体、コンドロイチン硫酸塩、グリチルリチン酸及びその誘導体(グリチルリチン酸塩など)などが挙げられる。
【0074】
本発明の外用組成物は、メラニン形成メカニズム(ステージI)に含まれるメラニン細胞特異的タンパク質であるPmel17などの構造タンパク質の合成を阻害する目的で、ホワイトニング剤を少なくとも1種含んでいてもよい。ホワイトニング剤としては、BASF社より「Cytovector」(登録商標)の名称で市販されているフェルラ酸含有サイトベクター(水、グリコール、レシチン、フェルラ酸、ヒドロキシエチルセルロース)などが挙げられる。
【0075】
さらに必要に応じて、本発明の外用組成物は、国際公開第2009/010356号パンフレットに記載されているペプチドを少なくとも1種含んでいてもよい。
【0076】
さらに必要に応じて、本発明の外用組成物は、メラニン合成、小眼球症関連転写因子発現、抗チロシナーゼ活性、エンドテリン-1合成に対して阻害効果を有するホワイトニング剤を含んでいてもよい。例えば、丸善製薬株式会社より「Licorice extract」(登録商標)の名称で市販されている甘草エキス(Glycyrrhiza glabra extract)などが挙げられる。
【0077】
さらに必要に応じて、本発明の外用組成物は、ビタミンC化合物などの抗酸化作用をも有するホワイトニング剤を含んでいてもよい。例えば、アスコルビン酸塩、脂肪酸又はソルビン酸のアスコルビルエステル、その他のアスコルビン酸誘導体などが挙げられる。具体的には、リン酸アスコルビル塩(リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウムなど)、アスコルビン酸のサッカリドエステル(アスコルビル−2−グルコシド、2−O−α−D−グルコピラノシル L−アスコルビン酸、6−O−β−D−ガラクトピラノシル L−アスコルビン酸など)が例示される。このタイプの活性成分は、DKSH社より「Ascorbyl glucoside」(登録商標)の名称で市販されている。
【0078】
さらに必要に応じて、本発明の外用組成物は、他のホワイントニング剤を含んでいてもよい。例えば、植物エキス(房咲水仙などのエキス)、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、システイン、4−チオレゾルシン、レゾルシノールもしくはルシノール又はそれらの誘導体、グリチルリチン酸及びヒドロキノン−β−グルコシドなどの色素沈着抑制剤を含んでいてもよい。
【0079】
本発明の外用組成物は、さらに必要に応じて、有機日焼け防止剤及び/又は無機日焼け防止剤を含んでいてもよい。
有機日焼け防止剤としては、ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン誘導体(HOFFMANN LA ROCHEより「Parsol 1789」の名称で市販されているものなど);メトキシケイヒ酸エチルへキシルなどのケイヒ酸誘導体(HOFFMANN LA ROCHEより「Parsol MCX」の名称で市販されているものなど);サリチル酸塩;パラアミノ安息香酸;β,β’−ジフェニルアクリレート誘導体;ベンゾフェノン誘導体;テレフタリリデンジカンファースルホン酸などのベンジリデンカンファー誘導体;フェニルベンジイミダゾール誘導体;トリアジン誘導体;フェニルベンゾトリアゾール誘導体;アントラニル酸誘導体などが挙げられる。これらは被覆又はカプセル化されていてもよい。
無機日焼け防止剤としては、顔料あるいは金属酸化物を任意に被覆してなるナノ顔料などが挙げられる。ナノ顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム又は酸化セリウムなどが挙げられる。これらの化合物はいずれもUV光防御剤としてよく知られている。
【0080】
本発明の外用組成物の剤形は、任意に選択可能であり、溶液系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ゲル系等の剤形を採用することができる。
また、本発明の外用組成物の製品形態も任意に選択することができ、洗顔料、化粧水、美容液、乳液、クリーム、パック等のフェイシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料やボディー化粧料、毛髪化粧料、口腔化粧料、芳香化粧料、洗浄料、軟膏等に用いることができる。
【0081】
本発明の外用組成物の製造方法は、これまで製剤化が困難であった難溶性生理活性物質の製剤化に応用することができる。
すなわち、本発明は、難溶性生理活性物質の生理学的に許容される塩を溶媒中に溶解させ、得られた溶液に塩析剤を添加することによって前記塩を微粒子状態で析出させて製剤中に分散させることを含む、難溶性生理活性物質の製剤化方法をも提供するものである。
本発明の製剤化方法は、トラネキサム酸エステルなどの難溶性の生理活性物質を有効成分として製剤化する際に、溶媒中に溶解させるのではなく、微粒子状態で分散させるといった従来とは全く逆の発想で難溶性生理活性物質を製剤化するものである。この方法によれば、多量の油性成分と混練するなどの必要がなく、所望量の難溶性生理活性物質を含む製剤を得ることができる。本発明によれば、多量の油性成分を用いる必要がないため、使用感に優れた製剤を得ることができる。難溶性生理活性物質としては、トラネキサム酸エステルのほか、カルニチン塩酸塩、アセチルカルニチン塩酸塩、オクタノイルカルニチン塩酸塩、ヘキサデカノイルカルニチン塩酸塩、オクタデカノイルアスコルビン酸塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩、グリチルリチン酸塩等が挙げられる。
難溶性生理活性物質を溶媒中に溶解させる際は、溶媒を加熱してもよい。加熱温度は、特に制限されなく、難溶性生理活性物質の溶解度や用いる溶媒等によって適宜選択すればよい。また、塩析剤の種類や使用量も、難溶性生理活性物質の性質や溶液中の濃度等によって、適宜決定すればよい。その他、塩析条件は、トラネキサム酸エステル塩の塩析条件等を参考にしながら、用いる難溶性生理活性物質の種類等に応じて適宜選択される。
なお、ここでも、「微粒子状態」とは、組成物中で白濁分散できる程度に粒子が細かい状態をいい、難溶性生理活性物質が組成物中で結晶沈降するものは含まれない。微粒子の粒径(メディアン径)は、特に制限されなく、例えば、0.01μm〜100μm程度であることが好ましく、0.05μm〜50.0μmがより好ましく、0.10μm〜10.0μmがさらに好ましい。
このようにして得られた製剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧品等の分野で幅広く使用することができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
〔実施例1〜6〕
表1に示す組成の外用組成物を次のとおり調製した。
成分1〜3を85±5℃に加熱撹拌溶解し、この組成物を85±5℃に保ち撹拌しながら、70±5℃に加温した成分Bを徐々に加えた。その後、得られた混合物を撹拌しながら室温(25±5℃)まで冷却し、成分5又は成分6にてpH5.0±0.5に調整した。
【0084】
【表1】

【0085】
〔比較例1〜3〕
表2に示す組成を用いたことを除いては、実施例1〜6と同様にして外用組成物を調製した。
【0086】
【表2】

【0087】
〔実施例1〜6及び比較例1〜3の安定性評価〕
実施例1〜6及び比較例1〜3の皮膚外用剤について、室温(20〜25℃)に一晩放置した後、目視にて凝集物の有無及び結晶の析出状態を確認した。結果を表3に示す。
【0088】
【表3】

【0089】
表3に示されるように、実施例1〜6の外用組成物においてトラネキサム酸セチルエステル塩酸塩は結晶が沈降せずに均一な微粒子の白濁分散状態が得られた。一方、比較例1〜3では、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩の結晶が沈降物として存在した。
【0090】
〔実施例1〜6及び比較例1〜3の粒度分布測定〕
実施例1〜6及び比較例1〜3の皮膚外用剤について、室温(20〜25℃)に一晩放置した後、微粒子の分散状態が得られた実施例1〜6におけるトラネキサム酸セチルエステル塩酸塩の微粒子の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−7000、SHIMADZU社製)にて測定した。
予め蒸留水で満たし循環させてあるフローセル中に試料を適正濃度になるまで投入し、測定した。結果をメディアン径にて表4に示す。
【0091】
【表4】

【0092】
表4に示されるように、実施例1〜6の外用組成物に分散しているトラネキサム酸セチルエステル塩酸塩の微粒子は一定の粒度を有していることが確認された。
【0093】
〔実施例7〜16〕
表5に示す組成の外用組成物を次のとおり調製した。
水相成分1〜6及び油相成分7〜14をそれぞれ85±5℃に加熱撹拌溶解し、85±5℃に保った水相成分に油相成分を撹拌しながら加えた。次いで70±5℃に加温した成分Bを撹拌しながら加え、その後、撹拌しながら室温(25±5℃)まで冷却した。
【0094】
【表5】

【0095】
〔実施例7〜16の安定性評価〕
実施例7〜16で得られた外用組成物について、調製直後の状態、調製後室温(20〜25℃)に一晩放置した後、調製後45℃にて2週間あるいは2ヶ月間放置後の状態を目視にて観察した。次の評価基準にて外用組成物の状態を評価し、結果を表6に示す。
(評価基準)
◎:調製直後に均一な状態の外用組成物を得たうえで、45℃にて2ヶ月間放置後まで同じ状態を保持できた。
○:調製直後に均一な状態の外用組成物を得たうえで、45℃にて2週間放置後まで同じ状態を保持できた。
△:調製直後に均一な状態の外用組成物を得ることができたが、45℃にて2週間放置後には分離、又は凝集が認められた。
×:調製直後に凝集物を生じ、均一な状態の外用組成物を得ることができなかった。
【0096】
【表6】

【0097】
表5に示されるように、実施例7〜16の外用組成物では均一な白濁分散状態が得られた。特に水溶性高分子としてローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロイルエステルを使用した場合には高温度下(45℃)においても、非常に良好な安定性が認められた。
【0098】
〔実施例17〜24〕
表7に示す組成の外用組成物(W/O型の美容液)を次のとおり調製した。
水相成分1〜9及び油相成分10〜19をそれぞれ85±5℃に加熱撹拌溶解し、85±5℃に保った水相成分に油相成分を撹拌しながら加えた。次いで成分B及び粉体成分を撹拌しながら加え、その後、撹拌しながら室温(25±5℃)まで冷却した。実施例17及び24では攪拌冷却の途中で成分Cを加えた。
【0099】
【表7】

【0100】
〔比較例4〜7〕
表8に示す組成を用いたことを除いては、実施例17〜24と同様にして外用組成物を調製した。
【0101】
【表8】

【0102】
〔実施例17〜24及び比較例4〜7の安定性評価〕
実施例17〜24及び比較例4〜7の外用組成物について、調製直後の状態、調製後室温(20〜25℃)にて一晩放置した後、調製後45℃にて2週間又は2ヶ月間放置後の状態を目視にて確認した。次の評価基準にて外用組成物の状態を評価し、結果を表9に示す。
(評価基準)
◎:調製直後に均一な状態の外用組成物を得たうえで、45℃にて2ヶ月間放置後まで均一な状態を保持できた。
○:調製直後に均一な状態の外用組成物を得たうえで、45℃にて2週間放置後まで均一な状態を保持できた。
△:調製直後に均一な状態の外用組成物を得ることができたが、45℃にて2週間放置後には分離、又は凝集が認められた。
×:調製後翌日には分離、離水を生じ、均一な状態の外用組成物を得ることができなかった。
【0103】
【表9】

【0104】
表9に示されるように、実施例17〜24の外用組成物については、均一な白濁分散状態が得られた。特に、クエン酸ナトリウムと他の塩析剤を併用することで、安定性の向上が認められた。一方、比較例4〜7の外用組成物については、分離又は凝集が認められ、均一な分散状態を保つことができなかった。特に成分Aを1.0重量%以上配合した場合では、外用組成物調製後、即日、分離又は離水を生じ、均一な分散状態の外用組成物を得ることができなかった。
【0105】
〔実施例25〜27〕
表10に示す組成の外用組成物(O/W型の乳液)を次のとおり調製した。
1)水相成分1〜10を85±5℃に加熱撹拌溶解した(水相混合物1)。
2)油相成分13〜22を85±5℃に加熱撹拌溶解した(油相混合物)。
3)85±5℃に保った水相混合物1にクエン酸ナトリウム(成分11)を撹拌しながら加えた(水相混合物2)。水相混合液2は目視で透明状態であった。
4)85±5℃に保った水相混合物2に硫酸マグネシウム(成分12)を撹拌しながら加えた(水相混合物3)。水相混合物3は白濁し、トラネキサム酸セチルエステルが微細粒子として析出した。
5)85±5℃に保った水相混合物3に85±5℃に保った油相混合物を攪拌しながら加えた(乳化混合物)。
6)乳化混合物を攪拌しながら冷却を開始し、35±5℃にて、成分23〜26を順次加えて、乳液を得た。
なお、上記実施例では、成分11と12を順次添加したが、これらを同時に添加してもよい。
【0106】
【表10】

【0107】
〔実施例25〜27の乳液の安定性評価〕
調製直後に均一な状態の乳液が得られた。得られた乳液はいずれも、45℃にて2ヶ月間放置後まで均一な状態を保持できた。
【0108】
〔実施例28〜30〕
表11に示す組成の外用組成物(W/O型のクリーム)を次のとおり調製した。
1)水相成分1〜8を85±5℃に加熱撹拌溶解した(水相混合物1)。
2)油相成分15〜24を撹拌混合した(油相混合物)。
3)85±5℃に保った水相混合物1にクエン酸ナトリウム(成分9)を撹拌しながら加えた(水相混合物2)。水相混合物2は目視で透明状態であった。
4)85±5℃に保った水相混合物2に硫酸マグネシウム(成分10)を撹拌しながら加えた(水相混合物3)。水相混合物3は白濁し、トラネキサム酸セチルエステルが微細粒子として析出した。
5)水相混合物3を撹拌しながら35±5℃まで冷却した後、撹拌しながら、成分11〜14を順次加えた(水相混合物4)。
6)油相混合物に水相混合物4を強く撹拌しながら加え、クリームを得た。 なお、上記実施例では、成分9と10を順次添加したが、これらを同時に添加してもよい。
【0109】
【表11】

【0110】
〔実施例28〜30のクリームの安定性評価〕
調製直後に均一な状態のクリームが得られた。得られたクリームはいずれも、45℃にて2ヶ月間放置後まで均一な状態を保持できた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の外用組成物は、べたつきや油性感が抑制され、良好な使用感を有する外用組成物として、医薬品、医薬部外品及び化粧品等に好適に用いられる。本発明の外用組成物は、様々な剤形及び製品形態で用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用組成物の製造方法であって、
a)トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を溶媒に溶解する工程と、
b)得られた溶液に塩析剤を少なくとも1種添加し、平均粒子径0.01μm〜100μmの微粒子状態の結晶として前記塩を析出させる工程と、
c)前記析出した塩を外用組成物中に分散させる工程と
を含む、外用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記トラネキサム酸エステルが、下記式(1)
【化3】

[式中、Rは、水酸基及びアミノ基から選ばれる置換基で置換されていてもよい炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を表す。]
で示される、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩が、トラネキサム酸セチルエステル塩酸塩である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の結晶が、平均粒子径0.05μm〜50.0μmの微粒子状態である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が、水、低級アルコール、多価アルコール、エーテル類、エステル類、ケトン類及びこれらの混合物からなる群から選ばれるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記塩析剤が、クエン酸塩、エデト酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、臭素酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、炭酸塩及び金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で得られた外用組成物。
【請求項8】
トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の含有量が、組成物の全重量に対して0.1〜10.0重量%である、請求項7記載の外用組成物。
【請求項9】
トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の含有量が、組成物の全重量に対して0.5〜5.0重量%である、請求項7又は8記載の外用組成物。
【請求項10】
ノニオン性高分子及びカチオン性高分子から選ばれる水溶性高分子をさらに含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の外用組成物。
【請求項11】
前記水溶性高分子が、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのステアロイルエステルからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10記載の外用組成物。
【請求項12】
しみ又は色素沈着を薄くするために皮膚を色素沈着抑制及び/又は美白するための請求項7〜11のいずれか1項に記載の外用組成物の化粧料としての使用。
【請求項13】
請求項7〜11のいずれか1項に記載の外用組成物を皮膚に局所適用することを含む、皮膚を色素沈着抑制及び/又は美白するための化粧方法。
【請求項14】
a)トラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩を溶媒に溶解する工程と、
b)得られた溶液に塩析剤を少なくとも1種添加し、前記塩を析出させる工程と、
を含む方法で得られるトラネキサム酸エステルの生理学的に許容される塩の微粒子。
【請求項15】
請求項14記載の微粒子を含む外用組成物。

【公開番号】特開2011−140487(P2011−140487A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274637(P2010−274637)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(304040474)株式会社シャネル化粧品技術開発研究所 (7)
【Fターム(参考)】