説明

多地点測定データ取得装置および多地点測定システムおよび多地点測定データ取得方法

【課題】圃場に埋設された複数のセンサユニットの位置を設置後に収集可能な多地点測定データ取得装置および多地点測定システムおよび多地点測定データ取得方法を提供する。
【解決手段】1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置から前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は、複数地点における測定結果を取得するための多地点測定データ取得装置および多地点測定システムおよび多地点測定データ取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる畑などの圃場を適切に管理するために、水分量や肥料濃度などを測定するセンサを圃場内の多数の地点に設置して、多数の地点における測定データを取得する多地点測定システムが提案されている。
【0003】
このような多地点測定システムでは、設置された各センサの位置を把握した上で、それぞれの位置における測定データを取得することが望ましい。
【0004】
多地点測定システムに含まれる各センサの設置位置を把握するための技術としては、設置時に個々のセンサの位置情報を登録する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、センサで得られた測定データを収集する技術として、様々な手法が提案されている。その一つは、各センサから送出される無線信号を測定データ取得装置で受信する手法である(特許文献1,2参照)。また、各センサと測定データ取得装置とを接続するシリアルケーブルを介して収集する手法などが提案されている(特許文献3参照)。なお、複数のセンサによる測定データを、1本のケーブルによって集約的に収集する技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−085059号公報
【特許文献2】特開2007−333705号公報
【特許文献3】特公平7−120480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
広い圃場に多数のセンサユニットを設置する際に、個々のセンサユニットの設置場所を登録する作業は、GPS(Global Positioning System)などの位置特定サービスを援用したとしても煩雑である。また、各センサユニットから測定データを含む無線信号を送信させるためには、個々のセンサユニットのアンテナ部分は少なくとも地上に露出させておく必要がある。しかしながら、このように地上に露出した部分があると、圃場での作業に支障がある場合がある。
【0007】
本件開示の装置および方法は、圃場に埋設された複数のセンサユニットの位置を設置後に収集可能な多地点測定データ取得装置および多地点測定システムおよび多地点測定データ取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的は、以下に開示する多地点測定データ取得装置、多地点測定システムおよび多地点測定方法によって達成することができる。
【0009】
一つの観点による多地点測定データ取得装置は、1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端との距離と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部とを有する。
【0010】
また、別の観点による多地点測定システムは、1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットと、前記複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端との距離と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部とを有する。
【0011】
また、別の観点による多地点測定方法は、1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答を収集し、収集した前記応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端との距離と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出し、抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットそれぞれによって測定データが取得される位置を推定する。
【発明の効果】
【0012】
本件開示の装置および方法によれば、圃場に埋設された複数のセンサユニットの位置を設置後に収集可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】多地点測定システムの一実施形態を示す図である。
【図2】配置推定処理の一例を説明する図である。
【図3】多地点測定システムの別実施形態を示す図である。
【図4】位置情報収集動作を表す流れ図である。
【図5】位置情報通知動作を表す流れ図である。
【図6】座標算出動作を表す流れ図である。
【図7】座標算出処理を説明する図である。
【図8】センサユニットの別実施形態を示す図である。
【図9】多地点測定システムの別実施形態を示す図である。
【図10】多地点測定システムの別実施形態を示す図である。
【図11】センサユニットの別実施形態を示す図である。
【図12】センサユニットの別実施形態を説明する図である。
【図13】位置情報収集動作の別実施形態を表す流れ図である。
【図14】多地点測定システムの別実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本件開示の多地点測定データ取得装置および多地点測定システムおよび多地点測定データ取得方法の実施形態について詳細に説明する。
(多地点測定システムの一実施形態)
図1に、多地点測定システムの一実施形態を示す。
【0015】
図1に示した例では、多地点測定システムは、複数のセンサユニット101と伝送路102と多地点測定データ取得装置110とを有している。図1に示した複数のセンサユニット101は、一本の伝送路102に物理的に近接されて固定されている。なお、図1において、個々のセンサユニット101を伝送路102に固定するための保持具の図示は省略した。
【0016】
また、図1に示した例では、伝送路102として、例えば、単線式あるいは平行二線式給電線、同軸給電線、漏洩同軸ケーブルなどを含む高周波給電線を用いる。そして、各センサユニット101は、伝送路102から漏洩する高周波信号を受信することにより、多地点測定データ取得装置110からの信号を受け取る。また、各センサユニット101は、伝送路102に高周波信号を漏洩させることにより、多地点測定データ取得装置110に信号を送出する。
【0017】
つまり、図1に示した各センサユニット101と多地点測定データ取得装置110との間の通信は、伝送路102とこの伝送路102と各センサユニット101との間の高周波漏洩を利用して行われる。このような構成では、各センサユニット101と伝送路102とを高周波漏洩による信号伝達が可能な程度に近接させて固定すればよい。
【0018】
また、図1に示した多地点測定データ取得装置110は、情報抽出部111と配置推定部112と測定データ収集部117とを有している。図1に示した実施形態では、情報抽出部111は、送受信部113と要求送出部114と応答検出部115と伝送路長算出部116とを有している。また、配置推定部112は、配置情報テーブル118と、並べ替え部119とベクトル加算部120とを有している。
【0019】
情報抽出部111に含まれる要求送出部114は、各センサユニット101に対して、位置情報の通知を要求する要求信号を送出する処理を行う。この要求信号は、送受信部113により、高周波漏洩を利用して、伝送路102に伝えられる。そして、この伝送路102により、上述した要求信号が、各センサユニット101に伝達される。また、上述した要求信号が送出された時刻t1は、要求送出部114により、伝送路長算出部116に通知される。
【0020】
また、各センサユニット101からの応答信号は、同様に、伝送路102からの高周波漏洩により、送受信部113に伝えられる。応答検出部115は、各センサユニット101からの応答信号が送受信部113に到来した時刻t2と、応答信号に含まれる伝送路102の屈曲方向を示す情報を検出する。また、応答検出部115は、応答信号の到来時刻t2を伝送路長算出部116に通知する。一方、屈曲方向を示す情報は、応答検出部115から配置推定部112に通知される。
【0021】
伝送路長算出部116は、上述した要求信号の送出時刻t1と応答信号の到来時刻t2とに基づいて、応答信号を返したセンサユニット101と多地点測定データ取得装置110との間の伝送路長Lを算出する。例えば、伝送路長Lは、センサユニット101での応答までの遅延時間Δtと、伝送路102における高周波信号の伝播速度vを用いて、式(1)のように表すことができる。なお、式(1)では、高周波信号の伝播速度vを、光速cと定数αとの積で置き換えて示した。
【0022】
L=(t2−t1−Δt)×(α×c)/2 ・・・(1)
配置推定部112の配置情報テーブル118は、伝送路長算出部116によって算出された各センサユニット101までの伝送路長と、応答検出部115から通知された屈曲方向とを含む位置情報を保持する。例えば、配置情報テーブル118は、個々のセンサユニット101を識別するID(Identifier)に対応して、上述した位置情報を保持することができる。個々のセンサユニット101のIDは、例えば、多地点測定システムにおいて一意となるように予め設定しておくことができる。並べ替え部119は、配置情報テーブル118に格納された位置情報を、伝送路長に基づいて並べ替える。並べ替え部119は、例えば、伝送路長が短い順に、センサユニット101のIDと位置情報との組を並べ替えることができる。ベクトル加算部120は、並べ替えられた位置情報に基づいて、伝送路長の順に各センサユニット101と隣接するセンサユニット101との間の変位に対応するベクトルを求める。更に、ベクトル加算部120は、求めたベクトルを順次に加算することにより、各センサユニット101の2次元あるいは3次元の配置を示す座標を算出する。算出された座標は、センサユニット101のIDに対応して配置情報テーブル118に格納される。したがって、測定データ取得部117は、配置情報テーブル118を参照することにより、各センサユニット101の位置を示す配置情報を得ることができる。なお、各センサユニット101の配置を推定する処理の詳細については後述する。
【0023】
測定データ取得部117は、上述した送受信部113を介して各センサユニット101から測定データを受け取る。これらの測定データは、測定データ取得部117において、上述した配置情報で示される各センサユニット101の位置と対応付けられる。
【0024】
このように、図1に示したような情報抽出部111により、複数のセンサユニット101を圃場に設置した後に、各センサユニット101からの応答から個々のセンサユニット101の位置を特定するための情報を収集することができる。そして、収集した情報に基づいて、配置推定部112により、各センサユニット101の位置を求めることができる。
【0025】
これにより、多数のセンサユニットを広大な圃場に設置する作業を省力化することが可能である。なぜなら、各センサユニット101を設置する際に、個々のセンサユニット101の位置を登録する作業を省略することができるからである。
【0026】
また、高周波漏洩を利用した通信を行う構成では、各センサユニット101と伝送路102とを物理的に接続する必要はない。この特徴は、複数のセンサユニット101および伝送路102を圃場のように水分の多い環境に埋設する場合に、非常に有用である。なぜなら、各センサユニット101と伝送路102との間に防水性のコネクタなどの接合部を設ける必要がないからである。これにより、個々のセンサユニット101の低コスト化および信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
次に、上述したようにして収集された情報に基づいて、配置推定部112により、各センサユニット101の位置を推定する処理について説明する。
【0028】
図2に、配置推定処理の一例を説明する図を示す。なお、図2に示した例では、各センサユニット101を符号S1〜S10で示した。また、各センサユニット101の位置における伝送路102の屈曲方向は、当該センサユニット101に入ってくる伝送路102と出て行く伝送路102とのなす角を、反時計回りに測った値で示される。
【0029】
図2(A)に、センサユニットS1〜S10および多地点測定データ取得装置110を有する多地点測定システムの配置例を示した。また、図2(B)に、各センサユニットS1〜S10に対応して、応答に含まれる屈曲方向を示す角度と要求送出から応答が到達するまでの応答時間τ1〜τ10を示した。なお、応答時間は、各センサユニットについて検出された要求信号の送出時刻t1と応答信号の到来時刻t2との差分(t2−t1)に相当する。
【0030】
したがって、各センサユニットS1〜S10に対応する応答時間τ1〜τ10に基づいて、多地点測定データ取得装置110と各センサユニットS1〜S10との間の伝送路長L1〜L10を求めることができる。そして、例えば、伝送路長L2から伝送路長L1を差し引くことにより、センサユニットS1,S2間の伝送路長を求めることができる。また、センサユニットS1からの応答で示された屈曲方向により、センサユニットS2がセンサユニットS1から見てどの方向にあるかが分かる。これらの情報から、上述したベクトル加算部120は、センサユニットS1の位置を基準にして、センサユニットS2の位置を特定するベクトルを求めることができる。そして、ベクトル加算部120において、求めたベクトルを、センサユニットS1の位置を示す座標に加算することにより、センサユニットS2の位置を示す座標を求めることができる。同様の処理を、センサユニットS3〜S10について繰り返すことにより、これらのセンサユニットS3〜S10の位置を順次に特定することができる。
【0031】
なお、図2に示した例では、センサユニットS1〜S10は、同一平面上に配置されている。また、伝送路102は、センサユニット101の位置で90度を単位として屈曲させて配置されている。この場合は、各センサユニット101の位置を推定する処理は、隣接するセンサユニット101との伝送路長を座標軸方向に加算あるいは減算する処理によって実現することができる。
【0032】
上述した情報抽出部111による処理および配置推定部112による処理は、例えば、マイクロコントローラを有する多地点測定データ取得装置110によって実現することもできる。同様に、各センサユニット101にマイクロコントローラを設けて、屈曲方向を含む応答を送出する処理を制御することもできる。
(多地点測定システムの別実施形態)
図3に、多地点測定システムの別実施形態を示す。なお、図3に示した構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0033】
図3に示した多地点測定データ取得装置110は、マイクロコントローラ201とメモリ202と送受信部210とを有している。図3に示した送受信部210は、図1に示した送受信部113に相当する。
【0034】
また、センサユニット101は、温度センサ221と水分センサ222と温度計測部223と土中水分計測部224とマイクロコントローラ225とメモリ226と送受信部210とを有している。なお、図3においては、一つのセンサユニット101について、一実施形態を示し、他のセンサユニット101についての図示は省略した。図示を省略したセンサユニット101も、図3に示したセンサユニット101と同様に構成することができる。
【0035】
多地点測定データ取得装置110およびセンサユニット101にそれぞれの送受信部210は、いずれも、伝送路102に近接して配置されている。この送受信部210において、変調器211による変調によって生成された高周波信号は、増幅器212で増幅された後、送信アンテナ213によって送信される。この高周波信号は、高周波漏洩によって伝送路102に伝達される。また、伝送路102を介して伝送される高周波信号は、高周波漏洩によって送受信部210の受信アンテナ214に伝えられる。この受信アンテナ214に到達した受信信号は、増幅器215によって増幅された後に、復調器216によって復調される。
【0036】
多地点測定データ取得装置110では、送受信部210の変調器211および復調器216は、マイクロコントローラ201に接続されている。センサユニット101では、送受信部210の変調器211および復調器216は、マイクロコントローラ225に接続されている。
【0037】
また、センサユニット101において、温度センサ221の出力は、温度計測部223を介してマイクロコントローラ225に送られる。同様に、水分センサ222の出力も、土中水分計測部224を介してマイクロコントローラ225に送られる。なお、センサユニット101には、上述した温度センサ221、水分センサ222の他に、土壌の状態を表す様々なデータを取得するためのセンサを配置することができる。また、センサユニット101に配置するセンサの種類は、一つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0038】
また、センサユニット101に含まれるメモリ226は、ID保持部227を有している。ID保持部227に保持するIDとしては、例えば、シリアル番号などのセンサユニット101固有の識別情報を用いることができる。また、このメモリ226は、当該センサユニット101の位置における伝送路102の屈曲方向を示す角度情報を保持する角度情報保持部228を有している。角度情報保持部228に角度情報を設定する方法については、後述する。
【0039】
マイクロコントローラ225は、センサユニット101に含まれる復調器216を介して受け取った要求信号に応じて、メモリ226に保持されたIDおよび角度情報を用いて応答信号を生成する。この応答信号は、センサユニット101に含まれる変調器211に入力される。
【0040】
次に、多地点測定データ取得装置110のマイクロコントローラ201およびセンサユニット101のマイクロコントローラ225の処理により、位置情報を収集する動作について説明する。
【0041】
図4に、位置情報収集動作を表す流れ図を示す。また、図5に、位置情報通知動作を表す流れ図を示す。図4、図5では、多地点測定データ取得装置110からの要求に応じて、要求で指定されたセンサユニット101が、角度情報を含む応答信号を返送する例を示す。
【0042】
多地点測定データ取得装置110に含まれるマイクロコントローラ201は、まず、送受信部210を介して、複数のセンサユニット101を宛先として指定するIDの一つを含む要求信号を送出する(ステップ301)。マイクロコントローラ201は、例えば、メモリ202に準備されたセンサユニット101のIDのリストから順次に要求信号に含めるIDを選択することができる。なお、このようなIDのリストは、例えば、位置情報収集動作を開始する前に、多地点測定システムに登録される可能性のあるセンサユニット101について準備しておくことができる。
【0043】
次いで、マイクロコントローラ201は、IDに対応するセンサユニット101からの応答時間の測定を開始する(ステップ302)。そして、指定されたセンサユニット101からの応答を検出したときに(ステップ303の肯定判定)、マイクロコントローラ201は、ステップ304に進む。
【0044】
ステップ304で、マイクロコントローラ201は、上述した式(1)を用いて、応答時間から指定したIDに対応するセンサユニット101までの伝送路長を算出する。なお、式(1)を用いて応答時間から算出される伝送長の精度は、応答時間の測定精度によって制限される。したがって、多地点測定データ取得装置110および各センサユニット101に含まれる送受信部210は、高い精度で応答時間を計測することが可能なインパルス列を送受信する機能を有していることが望ましい。
【0045】
次いで、マイクロコントローラ201は、検出した応答に含まれている角度情報と、ステップ304で算出した伝送路長とを含む位置情報を、上述したIDに対応してメモリ202に保持する(ステップ305)。その後、処理は、ステップ306に進む。
【0046】
一方、応答信号が検出されなかった場合に(ステップ303の否定判定)、マイクロコントローラ201は、宛先として指定したセンサユニット101は多地点測定システム内に存在しないと判断する。マイクロコントローラ201は、例えば、ステップ301で要求信号を送出してから所定の時間が経過しても応答信号が到来しなかった場合に、応答信号が検出されないと判断することができる。なお、上述した所定の時間は、多地点測定システムに用いられる伝送路102の全長に基づいて予め決定しておくことができる。ステップ303の否定判定の場合に、処理は、ステップ304,305をスキップして、ステップ306に進む。
【0047】
ステップ306において、マイクロコントローラ201は、上述したIDのリストにある全てのセンサユニット101を宛先とする要求信号の送出が完了したか否かを判定する。まだ宛先として指定されていないセンサユニットがある場合に(ステップ306の否定判定)、マイクロコントローラ201は、ステップ301に戻って、処理を続行する。この際に、マイクロコントローラ201は、例えば、上述したIDのリストに従って、宛先IDを更新する(ステップ307)。
【0048】
上述したステップ301からステップ307を繰り返して実行していき、IDのリストに含まれる全てのIDについての処理が完了したときに(ステップ306の肯定判定)、処理はステップ308に進む。
【0049】
ステップ308で、マイクロコントローラ201は、メモリ202に保持した位置情報を伝送路長順に並べ替える。図3に示した多地点測定データ取得装置110の例のように、マイクロコントローラ201が上述したステップ308を実行する構成は、図1に示した並べ替え部119の一例である。
【0050】
次いで、マイクロコントローラ201は、図2を用いて説明したようにして、伝送路長と角度情報とに基づいて、各センサユニットの位置を示す座標を算出する(ステップ309)。なお、座標を算出する方法の具体例は後述する。
【0051】
そして、各センサユニット101について算出された座標を、マイクロコントローラ201が、それぞれのIDに対応してメモリ202に保持していくことにより、複数のセンサユニット101の配置を示す配置情報を生成することができる(ステップ310)。
【0052】
一方、センサユニット101に含まれるマイクロコントローラ225は、センサユニット101の設置時に、角度情報をメモリ226の角度情報保持部228に設定する(図5のステップ311)。
【0053】
その後、ステップ312を繰り返して要求信号の到来を待ち受ける。伝送路102を伝播する要求信号が到来したときに(ステップ312の肯定判定)、送受信部210の復調器216から、IDを含む要求信号がマイクロコントローラ225に渡される。
【0054】
これに応じて、マイクロコントローラ225により、要求信号から宛先を示すIDが抽出される(ステップ313)。そして、抽出されたIDとメモリ226のID保持部227に保持された自装置のIDとが一致しない場合に(ステップ314の否定判定)、マイクロコントローラ225は、要求信号は自装置宛でないと判断する。この場合に、処理は、ステップ312に戻って、新たな要求信号を待ち受ける処理が続行される。
【0055】
一方、抽出されたIDとメモリ226のID保持部227に保持された自装置のIDとが一致した場合に(ステップ314の肯定判定)、マイクロコントローラ225は、要求信号は自装置宛であると判断する。この場合に、マイクロコントローラ225は、メモリ226に保持された角度情報を含む応答信号を生成する。そして、生成された応答信号は、送受信部210を介して送出される(ステップ315)。
【0056】
上述したようにして、多地点測定データ取得装置110と各センサユニット101との間で要求信号と応答信号とを授受することにより、各センサユニット101の設置後に、個々のセンサユニット101の配置情報を収集することができる。
【0057】
なお、配置情報に含まれる各センサユニット101の座標は、次に説明するようにして算出することができる。
【0058】
図6に、座標算出動作を表す流れ図を示す。また、図7に、座標算出処理を説明する図を示す。なお、図6,7において、伝送路長の短い順にj番目のセンサユニットを符号S(j)で示す。また、このj番目のセンサユニットに対応する位置情報を、角A(j)と伝送路長L(j)で示す。
【0059】
図6に示したステップ321で、マイクロコントローラ201は、座標P(x,y)に初期値を設定する。また、このとき、変数jに初期値1が設定される。更に、上述した座標P(x,y)が、多地点測定データ取得装置110に最も近いセンサユニットS(1)の位置としてメモリ202に保存される。
【0060】
次いで、マイクロコントローラ201は、j番目、j+1番目のセンサユニットに対応してメモリ202に保持された伝送路長L(j)、L(j+1)の差分D(j)を算出する(ステップ322)。この差分D(j)は、j番目のセンサユニットとj+1番目のセンサユニットとの間の距離を示している。
【0061】
次に、マイクロコントローラ201は、この差分D(j)とj番目のセンサユニットに対応してメモリ202に保持された角A(j)とに基づいて、j番目のセンサユニットからj+1番目のセンサユニットに向かうベクトルV(x,y)を求める(ステップ323)。
【0062】
例えば、図7に示した例では、センサユニットS(1)の位置を原点とする座標軸が、このセンサユニットS(1)に入る伝送路102の方向とX軸の向きとが一致するように配置されている。このように、多地点測定データ取得装置110に最も近いセンサユニットS(1)の位置を基準とすれば、このセンサユニットS(1)に対応する角A(1)に基づいて、センサユニットS(1)からセンサユニットS(2)に向かうベクトルV(x,y)とx軸とのなす角θ(1)を求めることができる。この角θ(1)と、このベクトルV(x,y)の長さは、センサユニットS(1),S(2)に対応する伝送路長L(1),L(2)の差分D(1)とを用いれば、ベクトル(x,y)を算出することができる。同様にして、j番目のセンサユニットS(j)からj+1番目のセンサユニットに向かうベクトルV(x,y)を求めることができる。
【0063】
このようにして求めたベクトルV(x,y)は、マイクロコントローラ201により、上述した座標P(x,y)に加算される(ステップ324)。例えば、ステップ321で初期値が設定された座標P(x,y)に、センサユニットS(1)からセンサユニットS(2)に向かうベクトルV(x,y)を加算することにより、センサユニットS(2)の位置を示す座標を得ることができる。同様にして、座標P(x,y)がj番目のセンサユニットの位置を示す場合に、この座標P(x,y)にベクトルV(x,y)を加算することにより、j+1番目のセンサユニットの位置を示す座標を算出することができる。
【0064】
このようにマイクロコントローラ201がステップ322〜ステップ324の処理を行う構成は、図1に示したベクトル加算部120の一例である。
【0065】
ステップ324の加算結果として得られた座標P(x,y)は、マイクロコントローラ201により、センサユニットS(j+1)の位置としてメモリ202に保存される(ステップ325)。
【0066】
その後、マイクロコントローラ201は、全てのセンサユニット101についての処理が完了したか否かを判定する(ステップ326)。例えば、応答信号を検出したセンサユニットの数Nと変数jとを比較することにより、マイクロコントローラ201は、ステップ326の判定を行うことができる。
【0067】
ステップ326の否定判定の場合に、マイクロコントローラ201は、変数jを更新した上で、ステップ322に戻り、次に多地点測定データ取得装置110に近いセンサユニット101の位置に基づく処理を行う。
【0068】
上述したステップ322〜ステップ327の処理を繰り返すことにより、多地点測定データ取得装置110に近い順に、各センサユニット101の位置を特定することができる。そして、全てのセンサユニット101について位置の特定が完了したときに、ステップ326の肯定判定として、マイクロコントローラ201は、位置情報収集処理を終了する。
【0069】
このようにして、本件開示の多地点測定システムによれば、複数のセンサユニット101を設置した後に、個々のセンサユニット101の位置情報を収集することができる。したがって、本件開示の多地点測定システムによれば、個々のセンサユニット101を設置する際に、位置情報を個別に登録するなどの煩雑な作業を行う必要がない。このような特徴は、大規模な圃場に多数のセンサユニット101をまとめて設置する場合などに非常に有用である。
【0070】
また、上述した配置推定処理により、各センサユニット101の3次元における配置を推定することもできる。この場合に、多地点測定データ取得装置110は、例えば、隣接するセンサユニット101の設置位置と高さが異なる位置に設置されたセンサユニット101から高さの変化を示す情報の通知を受ければよい。そして、配置推定部112により、高さの変化が通知されたセンサユニットよりも伝送路長が長い各センサユニット101の座標について、高さの変化分を反映することにより、各センサユニット101の3次元における配置を示す座標を算出することができる。
【0071】
なお、個々のセンサユニット101のメモリ226に角度情報を設定する方法としては、次に説明するような方法が考えられる。
(センサユニットの別実施形態)
図8に、センサユニットの別実施形態を示す。なお、図8に示した構成要素のうち、図1および図3に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0072】
図8(A)は、センサユニット101の別実施形態の平面図である。また、図8(B)は、センサユニット101の別実施形態の右側面図である。また、図8(C)は、センサユニット101の別実施形態の正面図である。
【0073】
図8に示した例では、センサユニット101に含まれる制御用回路部230は、防水性を有するケースに封入されている。このケースの上面には、伝送路102として用いられる同軸ケーブルなどが収まる程度の幅を有する溝231が形成されている。図8に示した例では、この溝231は、ケースの中央部で直交するように形成されている。なお、ケース内に封入されている制御用回路部230は、図3に示した温度計測部223と土中水分計測部224とマイクロコントローラ225とメモリ226と送受信部210の一部とを含んでいる。
【0074】
また、上述した溝231のケースの外周部に近い位置には、ツメ状の伝送路保持部232が設けられている。この伝送路保持部232は、溝231に伝送路102が押し込まれたときに、この伝送路102を押し込まれた状態に保持する。更に、図8に示した例のように、ネジ留め式のカバー233で抑えることにより、伝送路102を溝231内に安定的に保持することもできる。
【0075】
このように、センサユニット101の上面に伝送路102を保持するための機構により、センサユニット101の位置において、伝送路102が例えば90度単位で屈曲された状態を維持させることができる。図8(A)に示した例では、センサユニット101に入ってくる伝送路102と出て行く伝送路102とのなす角は180度である。一方、図8(D)に、センサユニット101に入ってくる伝送路102と出て行く伝送路102とが、270度をなしている例を示した。
【0076】
また、図8(A)に示すように、センサユニット101の溝231の一つに設けられた伝送路保持部232に対応して、センサユニット101に伝送路102を入れる方向を示すマークを付しておくこともできる。なお、図8(A)の例では、上述したマークとして、向き合った黒い三角形が付されている。そして、このマークで示された溝231に対応する位置に、センサユニット101の送受信アンテナ234を配置することができる。なお、この送受信アンテナ234は、図3に示した送信アンテナ213と受信アンテナ214を含んでいる。センサユニット101の設置の際に、このマークに従って伝送路102が挿入されれば、センサユニット101に含まれる送受信アンテナ234と伝送路102とは自動的に近接して配置される。
【0077】
更に、上述した溝231に伝送路102を機械的に押し込む操作により、センサユニット101の位置における伝送路102の屈曲方向を示す角度情報をセンサユニット101内のメモリ226(図3参照)に設定することもできる。
【0078】
例えば、図8(B)に示した方向情報生成部236は、十字状の溝231の各分岐に設けられたスイッチ235とマイクロコントローラ(MC:Micro-Controller)225とを有している。これらのスイッチ235は、例えば、図8(A),(D)に示すように、伝送路保持部232に対応して、伝送路102の挿入に伴って操作されるように設けることができる。そして、これらのスイッチ235が操作されたか否かを示す情報は、マイクロコントローラ225によって収集される。収集した情報と上述した溝231における各分岐の位置関係に基づいて、マイクロコントローラ225は、センサユニット101に挿入された伝送路102の屈曲方向を示す角度情報を生成することができる。このようにして生成された角度情報は、メモリ226の角度情報保持部228に保持される。
【0079】
なお、センサユニット101のケースに形成する溝231の形状は、図8に示した十字状に限定されない。例えば、ケースの中央部からN(Nは自然数)方向に分岐するような溝を形成することもできる。更に、例えば、多地点測定データ取得装置110から遠い側で溝が多数に分岐するように、溝の分岐を非対称に配置することもできる。
【0080】
また、ケースを窪ませて溝231を形成する代わりに、例えば、ケースの上面に伝送路102を保持し、かつ、上面と平行な平面状で自由に屈曲可能なガイドを設けることもできる。そして、このガイドを屈曲させる機構を利用して、制御用回路部231に含まれるマイクロコントローラ225に、伝送路102の屈曲方向を示す角度情報を取得させることも可能である。
【0081】
図6および図7を用いて説明した座標算出処理は、各センサユニット101から通知される角度情報が直角を単位とする以外の任意の角度を示している場合にも適用可能である。したがって、本件開示の多地点測定システムは、不規則な形状の圃場に、不規則に設置された複数のセンサユニット101から通知される応答信号に基づいて、個々のセンサユニット101の位置情報を収集することができる。
【0082】
図9に、多地点測定システムの別実施形態を示す。なお、図9に示した構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。また、図9において、各センサユニット101は、多地点測定データ取得装置110に近い順の番号と符号Sとを組み合わせた符号S1〜S11を付した白丸あるいは黒丸で示されている。
【0083】
図9に示したセンサユニットS1〜S11のうち、角度情報が180度であるセンサユニットS2,S5,S8,S9,S11は、黒丸で示されている。一方、図9において白丸で示されたセンサユニットS1,S3,S4,S6,S7,S10の角度情報は、それぞれ符号Aと対応する番号とを組み合わせた符号で示されている。
【0084】
ここで、j番目のセンサユニットSjの角度情報が180度である場合に、このセンサユニットSjの前後で、伝送路102の方向は変化しない。つまり、多地点測定データ取得装置110のマイクロコントローラ201は、センサユニットSj+1までの距離とセンサユニットSjにいたる伝送路102の方向とに基づいて、センサユニットSj+1の位置を算出することができる。
【0085】
したがって、図9に黒丸で示したセンサユニットS2,S5,S8,S9,S11は、多地点測定データ取得装置110からの要求信号に対して、角度情報を省略した応答信号を返すことができる。
【0086】
また、複数本の伝送路102に沿ってセンサユニット101を直線的に配置することもできる。この場合は、これらのセンサユニット101と多地点測定データ取得装置110との間の伝送路長に基づいて、各センサユニット101の2次元的な配置を特定することができる。
【0087】
図10に、多地点測定システムの別実施形態を示す。なお、図10に示した構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0088】
図10に示した多地点測定データ取得装置110は、スイッチ103を介して、m本の伝送路102に接続されている。このスイッチ103は、多地点測定データ取得装置110に接続された端子T0を、m本の伝送路102にそれぞれ対応する端子T1〜Tmのいずれかに接続する。スイッチ103における接続端子の切り替えは、多地点測定データ取得装置110からの指示に応じて行うことができる。
【0089】
m本の伝送路102には、それぞれn個のセンサユニット101が固定されている。なお、図10において、端子Tjに対応する伝送路102に固定されたk番目のセンサユニットを符号Sjkを付して示した。
【0090】
図10に示した多地点測定データ取得装置110は、スイッチ103により、端子T0とTjとを接続させた状態で、j番目の伝送路102に固定されたセンサユニットSj1〜Sjnによって返される応答信号を収集することができる。そして、これらの応答信号に対応する応答時間に基づいて、これらのセンサユニットSj1〜Sjnまでの伝送路長が算出される。
【0091】
また、図10の例では、各伝送路102が互いに平行に設置されている。そして、スイッチ103によってm本の伝送路102が収束されている地点に向かう各伝送路102の方向とセンサユニット101が固定されている区間の伝送路102の方向とは直交している。このような配置の場合に、例えば、各伝送路102の設置間隔と各センサユニットについて得られた伝送路長とに基づいて、個々のセンサユニットの配置を特定することができる。
【0092】
このように、伝送路102を直線的に設置する場合には、この伝送路102に沿って固定される各センサユニット101は、ID情報のみを含んだ応答信号を返送すればよい。つまり、各センサユニット101において、角度情報の設定や送出にかかわる機能を省略することができる。
【0093】
なお、センサユニット101が固定された伝送路102を設置する際には、例えば、圃場に設けられた畝などに沿って伝送路102を埋設する方法を採ることができる。このような場合には、伝送路102およびセンサユニット101を埋設した後に、畝の間隔を測定することにより、伝送路102相互の間隔を得ることができる。
【0094】
したがって、図10に示したような複数本の伝送路102を収束させて用いる構成を有する多地点測定システムにおいても、個々のセンサユニット101を設置する際に位置登録などの煩雑な作業は不要である。
【0095】
ところで、各センサユニット101からの応答時間に基づいて、多地点測定データ取得装置110と各センサユニット101との間の伝送路長を算出する代わりに、各センサユニット101から伝送路長を示す情報を含む応答信号を返すことも可能である。
(センサユニットの別実施形態)
図11に、センサユニットの別実施形態を示す。なお、図11に示した構成要素のうち、図3に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0096】
図11に示した伝送路102には、例えば、所定の間隔で伝送路102の一端からの長さを示す長さマーク104が付けられている。更に、図11の伝送路102のセンサユニット101が固定された箇所には、伝送路の屈曲方向を示す屈曲角マーク104がつけられている。
【0097】
また、図11に示したセンサユニット101は、光学センサ241を有している。この光学センサ241は、長さマーク読み取り部242と屈曲角マーク読み取り部243とを含んでいる。そして、長さマーク読み取り部242による読み取り結果は、メモリ226にも受けられた伝送路長保持部244に保持される。また、屈曲角マーク読み取り部243による読み取り結果で示される角度情報は、角度情報保持部228に保持される。
【0098】
図12に、センサユニットの別実施形態を説明する図を示す。なお、図12に示した構成要素のうち、図3および図11に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0099】
図12(A)に、センサユニット101に含まれる光学センサ241と伝送路102との配置例を示す。また、図12(B)、(C)に、長さマーク104および屈曲角マーク105の配置例を示す。
【0100】
図12(A)に示した例では、センサユニット101の制御用回路部230が収められたケースに紙面内の左右方向に設けられた溝231に対応して光学センサ241が配置されている。例えば、上述した溝231の一部に透明部材等で形成された窓を設けることにより、ケース内の光学センサ241に長さマーク104および屈曲角マーク105を読み取らせることができる。
【0101】
また、図12(B)に示した長さマーク104の例は、例えば0.1m間隔で、伝送路102の一端からの長さを表す数値を、伝送路102として用いられる同軸ケーブルの被覆膜に印刷したものである。なお、図12(B)に示した例では、同軸ケーブルの周方向に複数回にわたって長さを示す数値が印刷されている。このような長さマーク104が適用される場合に、図11に示した長さマーク読取部242は、上述した窓を介して伝送路102の皮膜に印刷されたいくつかの数字を読み取ることができる。そして、長さマーク読取部242により、この読み取り結果に対応する伝送路長を表す伝送路長データが生成される。この伝送路長データは、伝送路長保持部244に保持される。
【0102】
図12(C)に示した長さマーク104の例は、伝送路102の一端からの長さを示すバーコードを、伝送路102として用いられる同軸ケーブルの被覆膜に印刷したものである。バーコードに含まれる各バーは、同軸ケーブルの周方向に一周するように印刷することができる。このような長さマーク104が適用される場合に、図11に示した長さマーク読取部242は、上述した窓を介して伝送路102の皮膜に印刷されたバーコードを読み取ることができる。そして、長さマーク読取部242により、読み取ったバーコードに対応する伝送路長を表す伝送路長データが生成される。この伝送路長データは、伝送路長保持部244に保持される。
【0103】
このような長さマーク104を有する伝送路102を用いた多地点測定システムでは、各センサユニット101は、光学センサ241によって長さマーク104が読み取り可能な配置で固定される。したがって、このような多地点測定システムでは、多地点測定データ取得装置110が各センサユニット101に対応する伝送路長の精度は、長さマーク104が同軸ケーブルの皮膜に印刷される際の印刷位置の精度と同等の精度となる。
【0104】
図12(B),(C)に示した屈曲角マーク105の例は、伝送路102の屈曲角を表す色のテープを、伝送路102として用いられる同軸ケーブルの被覆膜に巻きつけたものである。屈曲角に対応するテープの色は、例えば、90度ごとなどに予め決定しておくことができる。また、伝送路102がセンサユニット101の位置で屈曲させられていない場合には、屈曲角マーク105の付加を省略することもできる。
【0105】
このような屈曲角マーク105を用いる場合に、センサユニット101に含まれる屈曲角マーク読取部243は、屈曲角マーク105として付されたテープの色を識別する。そして、識別された色に対応する角度情報が、屈曲角マーク読取部243によって生成される。図11に示したセンサユニット101の例のように、屈曲マーク読取部243によって上述した屈曲マーク105を読み取る構成は、方向情報生成部の別の一例である。この屈曲角マーク読取部243で生成された角度情報は、角度情報保持部228に保持される。なお、屈曲角マーク105が省略されている場合に、屈曲角マーク読取部243は、同軸ケーブルの皮膜の色に対応する読取結果に基づいて、屈曲角が180度である旨の角度情報を生成することができる。このようにして生成された角度情報は、角度情報保持部228に保持される。
【0106】
図11に示したセンサユニット101に含まれるマイクロコントローラ225は、多地点測定データ取得装置110から自装置のIDを含む要求信号を受け取ったときに、角度情報とともに伝送路長データを含む応答信号を生成する。このとき、マイクロコントローラ225は、角度情報によって屈曲角が180度であることが示されているか否かを判定し、肯定判定の場合には、角度情報を省略することができる。
【0107】
また、図11に示したようなセンサユニット101からの応答信号に応じて、多地点測定データ取得装置110のマイクロコントローラ201は、以下に述べるようにして、配置情報を収集することができる。
【0108】
図13に、位置情報収集動作の別実施形態を表す流れ図を示す。なお、図13に示した構成要素のうち、図4に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。
【0109】
図13に示した流れ図では、図4に示したステップ302とステップ304の代わりに、ステップ303の肯定判定のときに、ステップ331が実行される。ステップ331において、マイクロコントローラ201は、応答信号から伝送路長Lを示す伝送路長データを検出する。
【0110】
次いで、マイクロコントローラ201は、応答信号に角度情報が含まれているか否かを判定する(ステップ332)。応答信号から角度情報を検出できなかった場合に(ステップ332の否定判定)、マイクロコントローラ201は、IDで示されるセンサユニット101に対応する屈曲角Aは180度である旨の角度情報を生成する(ステップ333)。
【0111】
このステップ333の終了後および上述したステップ332の肯定判定の場合に、処理は、ステップ305に進む。そして、このステップ305において、マイクロコントローラ201により、上述したようにして得られた伝送路長および角度情報がメモリ202に保持される。
【0112】
なお、図12(B),(C)に例示したような長さマーク104と、図8に示した溝231に設けられたスイッチを利用して角度情報を取得する仕組みとを組み合わせて適用することもできる。
【0113】
また一方、複数のセンサユニット101の伝送路上での配置位置を、伝送路102の一端から所定の長さDの倍数で示される位置に限定することもできる。
【0114】
図14に、多地点測定システムの別実施形態を示す。なお、図14に示した構成要素のうち、図1に示した構成要素と同等のものについては、同一の符号を付して示し、その説明は省略する。また、図14において、各センサユニット101は、多地点測定データ取得装置110に近い順の番号と符号Sとを組み合わせた符号S1〜S9を付した白丸で示されている。
【0115】
例えば、伝送路102には、多地点測定データ取得装置110に接続されているほうの一端から、所定の長さDごとに設置位置マークを付けておくことができる。なお、この所定の長さDは、圃場に設けられる畝の間隔などに基づいて決定することができる。そして、センサユニット101を設置する際に、例えば、この設置位置マークのいずれかをセンサユニット101のケースの中心とを一致させるように、センサユニット101を伝送路102に固定することができる。
【0116】
このようにして、各センサユニット101までの伝送路長を、上述した所定の長さDの倍数に限定することができる。このような限定が成り立つ場合は、応答時間の測定精度が制限される場合でも、個々のセンサユニット101に対応する伝送路長を高い精度で特定することができる。つまり、応答時間の測定結果に基づいて、長さマーク104を読み取るための光学センサ241を設けた場合と同等の精度の位置情報を取得することが可能である。
【0117】
以上の説明に関して、更に、以下の各項を開示する。
(付記1)
1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置から前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部と
を有することを特徴とする多地点測定データ取得装置。
(付記2)
付記1に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記情報抽出部は、
前記各センサユニットとともに地中に埋設された前記伝送路を介して所定の周波数の信号を伝送する際の漏洩信号を検出する信号検出部を有し、
前記所定の周波数の信号は、前記伝送路が埋設された地中に漏洩した際に、前記複数のセンサユニットと前記多地点測定データ取得装置との最短距離よりも短い距離の伝播によって減衰する特性を有する
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
(付記3)
付記1または付記2に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記情報抽出部は、
前記伝送路を介して、前記各センサユニット宛に前記応答を要求する要求信号を送出する要求送出部と、
前記要求信号が送出されてから、当該要求信号の宛先の前記センサユニットから前記応答が返されるまでの時間に基づいて、前記宛先のセンサユニットまでの前記伝送路長を算出する伝送路長算出部とを有する
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
(付記4)
付記1乃至付記3のいずれか一に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記情報抽出部は、前記複数のセンサユニットの一つから返される応答に前記伝送路の屈曲方向に関する情報が省略されている場合に、当該センサユニットに至る伝送路の方向と当該センサユニットを出る伝送路の方向とが同一である旨の情報を抽出する
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
(付記5)
付記1乃至付記4のいずれか一に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記配置推定部は、
前記各センサユニットと前記伝送路の一端までの伝送路長が短い順に、前記各センサユニットの配置位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報と前記各センサユニットの識別情報とを並べ替える並べ替え部と、
前記並べ替え部によって決定された順序に従ってj番目のセンサユニットに対応する伝送路長Dとj+1番目のセンサユニットに対応する伝送路長Dj+1の差分を長さとし、前記j番目のセンサユニットからの応答に含まれる屈曲方向に関する情報で示される方向を有するベクトルを前記j番目のセンサユニットの位置に加算することで、前記j+1番目のセンサユニットの位置を算出するベクトル加算部とを有する
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
(付記6)
付記1乃至付記5のいずれか一に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記各センサユニットから返される応答に含まれる前記伝送路の屈曲方向に関する情報は、前記各センサユニットの設置位置の高さを隣接して設定された別のセンサユニットの高さを基準として示す情報を含む
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
(付記7)
1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットと、
前記複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部とを有する
ことを特徴とする多地点測定システム。
(付記8)
付記7に記載の多地点測定システムにおいて、
前記複数のセンサユニットは、
前記伝送路が当該センサユニットに到達する方向と前記センサユニットから出る方向とを固定するように前記伝送路を保持する伝送路保持部と、
前記伝送路保持部によって前記伝送路が保持された方向を示す情報に基づいて、前記伝送路の前記センサユニットの位置における屈曲方向を示す情報を生成する方向情報生成部とを有する
ことを特徴とする多地点測定システム。
(付記9)
付記7に記載の多地点測定システムにおいて、
前記複数のセンサユニットは、前記伝送路の一端からの長さが所定の長さの整数倍となる位置に固定される
ことを特徴とする多地点測定システム。
(付記10)
1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答を収集し、
収集した前記応答から、前記各センサユニットが固定された位置から前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出し、
抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットそれぞれによって測定データが取得される位置を推定する
ことを特徴とする多地点測定データ取得方法。
【符号の説明】
【0118】
101…センサユニット;102…伝送路;103,235…スイッチ;104…長さマーク;105…屈曲角マーク;110…多地点測定データ取得装置;111…情報抽出部;112…配置推定部;113,210…送受信部;114…要求送出部;115…応答検出部;116…伝送路長算出部;117…測定データ収集部;118…配置情報保持部;119…並べ替え部;120…ベクトル加算部;201,225…マイクロコントローラ;202,226…メモリ;211…変調器;212,215…増幅器;213…送信アンテナ;214…受信アンテナ;216…復調器;221…温度センサ;222…水分センサ;223…温度計測部;224…土中水分計測部;227…ID保持部;228…角度情報保持部;230…制御用回路部;231…溝;232…伝送路保持部;233…カバー;234…送受信アンテナ;236…方向情報生成部;241…光学センサ;242…長さマーク読取部;243…屈曲角マーク読取部;244…伝送路長保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部と
を備えたことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記情報抽出部は、
前記伝送路を介して、前記各センサユニット宛に前記応答を要求する要求信号を送出する要求送出部と、
前記要求信号が送出されてから、当該要求信号の宛先の前記センサユニットから前記応答が返されるまでの時間に基づいて、前記宛先のセンサユニットまでの伝送路長を算出する伝送路長算出部とを備えた
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の多地点測定データ取得装置において、
前記配置推定部は、
前記各センサユニットと前記伝送路の一端までの伝送路長が短い順に、前記各センサユニットの配置位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報と前記各センサユニットの識別情報とを並べ替える並べ替え部と、
前記並べ替え部によって決定された順序に従ってj番目のセンサユニットに対応する伝送路長Dとj+1番目のセンサユニットに対応する伝送路長Dj+1の差分を長さとし、前記j番目のセンサユニットからの応答に含まれる屈曲方向に関する情報で示される方向を有するベクトルを前記j番目のセンサユニットの位置に加算することで、前記j+1番目のセンサユニットの位置を算出するベクトル加算部とを備えた
ことを特徴とする多地点測定データ取得装置。
【請求項4】
1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットと、
前記複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出する情報抽出部と、
前記情報抽出部で抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットの配置を推定する配置推定部とを備えた
ことを特徴とする多地点測定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の多地点測定システムにおいて、
前記複数のセンサユニットは、
前記伝送路が当該センサユニットに到達する方向と前記センサユニットから出る方向とを固定するように前記伝送路を保持する伝送路保持部と、
前記伝送路保持部によって前記伝送路が保持された方向を示す情報に基づいて、前記伝送路の前記センサユニットの位置における屈曲方向を示す情報を生成する方向情報生成部とを備えた
ことを特徴とする多地点測定システム。
【請求項6】
1本の伝送路に固定された複数のセンサユニットそれぞれによって前記伝送路を介して返される応答を収集し、
収集した前記応答から、前記各センサユニットが固定された位置と前記伝送路の一端までの伝送路長と前記各センサユニットの固定位置における前記伝送路の屈曲方向に関する情報とを含む情報を抽出し、
抽出された情報に基づいて、前記複数のセンサユニットそれぞれによって測定データが取得される位置を推定する
ことを特徴とする多地点測定データ取得方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−127686(P2012−127686A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276986(P2010−276986)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】