説明

多孔性金属酸化物材料又は多孔性金属材料とポリマーコーティングとを含み、かつ治療剤を送達するための医療装置

本発明は、患者の身体の組織に治療剤を送達するための血管内ステントのような医療装置と、同医療装置を製造するための方法に関する。より詳細には、本発明は医療装置であって、同医療装置の表面に複数の孔を備えた金属酸化物材料又は金属材料と、同金属酸化物材料又は金属材料上に配置されたポリマーとを含む医療装置に関する。本発明はまた、表面及び外側領域を有する医療装置であって、複数の孔を備えた金属酸化物材料又は金属材料と、同金属酸化物材料又は金属材料上に配置されたポリマーとを含む表面及び外側領域を有する医療装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の身体の組織に治療剤を送達するための医療装置と、同医療装置を製造するための方法に関する。より詳細には、本発明は医療装置であって、同医療装置の表面に複数の孔を備えた金属酸化物材料又は金属材料と、同金属酸化物材料又は金属材料上に配置されたポリマーと、を含む医療装置に関する。本発明はまた、表面及び外側領域を有する医療装置であって、複数の孔を備えた金属酸化物材料又は金属材料と、同金属酸化物材料又は金属材料上に配置されたポリマーとを含む表面及び外側領域を有する医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移植可能なステントのような医療装置は、患者の身体の組織に治療剤を直接送達し、特に、再狭窄を治療するために使用されてきた。特に、治療剤は医療装置構造物自体に取り込まれるか、又は同医療装置の表面に配置されたコーティング部内に取り込まれる。
【0003】
幾らかの例において、医療装置により送達されるべき治療剤の量を増大することが望ましい。しかしながら、医療装置の表面積は、医療装置内に送達される、又は同医療装置上に送達される治療剤の量を制限するものである。従って、より多量の治療剤が医療装置内又は医療装置上に取り込まれるように、より大きな表面積を備えた医療装置又は同医療装置のためのコーティングを備えることが望ましい。
【0004】
更に、幾らかの例において、医療装置からの治療剤の放出速度を制御することが望ましい。例えば、長期間にわたって治療剤を一定の速度にて放出することが望ましい。一定の放出速度を確保するために、移植可能な医療装置に装填される治療剤の量は、所定の量より多くする必要があり、同時に医療装置から放出可能である必要がある。一定の放出速度を達成するために医療装置に適切な量の治療剤を確保することに加えて、例えばバースト効果を回避するために、治療剤が医療装置から標的組織へと急激に放出されることを回避することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、所望の量又は用量の治療剤を送達し得る医療装置の必要性が存在する。更に、医療装置から放出される治療剤の所望の量を取り込むことができるより大きな表面積を有する医療装置を製造する方法の必要性が存在する。また、長期間にわたって所望の速度又は制御された様式にて所望の量の治療剤を送達し得る医療装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的及びその他の目的は本発明によって達成される。本発明は、ステントのような移植可能な医療装置に関し、同医療装置は表面積が増大されており、治療剤の制御可能な放出速度を有するものである。
【0007】
本発明の医療装置は、同医療装置の表面積を増大する多孔性の表面を含み、同医療装置により多くの量の治療剤を装填することが可能である。加えて、孔内に配置された又は同医療装置の表面に配置された治療剤の量又は濃度を制御することと、孔のサイズ、深さ、位置及び数を制御することとによって、治療剤の放出速度が制御され得る。
【0008】
加えて、本発明の医療装置は、同医療装置の表面に多孔性のコーティングを含み得る。治療剤の放出速度は更に、コーティングの厚み及び空隙率を制御することによって制御され得る。
【0009】
本発明は、一実施形態において、移植可能な医療装置を提供し、同医療装置は、(a)表面と、(b)同表面上に配置されたコーティングとを含み、(i)同表面の少なくとも一部に配置された複数の孔をその内部に含む金属酸化物又は金属からなる第一の材料と、(ii)同第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも一部に配置される第一のポリマーとからなり、同第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔には第一の治療剤が配置され、同第一のポリマーは複数の孔をその内部に含む。
【0010】
本発明の医療装置は同表面に隣接した外側領域を更に含み、同外側領域はその内部に複数の孔を有する金属酸化物又は金属からなる第二の材料を含み、同第二の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔には第二の治療剤が配置されている。第一の金属酸化物材料又は金属材料と、第二の金属酸化物材料又は金属材料とは、同じであってもよい。
【0011】
付随的に、本発明の医療装置は更に外側領域に隣接した内側領域を含み得、同内側領域は実質的に孔を備えていない。
また、本発明の医療装置は、第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に配置された第二のポリマーを更に含む。付随的に、第一のポリマーと第二のポリマーとは同じであってもよい。
【0012】
適切なポリマーは、それらに限定されるものではないが、ポリエチレン−コ−酢酸ビニルのようなエチレン−酢酸ビニルコポリマー;ポリ(n−ブチルメタクリレート)のようなポリメタクリレート;ポリ(スチレン−b−.イソブチレン−b−スチレン)のようなスチレン−イソブチレンコポリマー及びポリ乳酸−グリコール酸のようなポリ乳酸を含み得る。
【0013】
本発明に従って、第一の金属酸化物材料又は金属材料は層の形態であり得る。また、第一のポリマーも層の形態であり得る。
適切な金属材料は、それらに限定されるものではないが、金、白金、ステンレス鋼、チタン、タンタル、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム又はクロムであり得る。
【0014】
適切な金属酸化物は、遷移金属の酸化物を含む。適切な金属酸化物は、それらに限定されるものではないが、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン又は酸化ロジウムであり得る。付随的に、金属酸化物材料又は金属材料は放射線不透過性であり得る。
【0015】
第一の金属酸化物材料又は金属材料の孔はミクロ孔、ナノ孔又はその組合せであり得る。第一の金属酸化物材料又は金属材料の孔は、約1nm乃至約10μmの平均幅又は平均径を有し得る。付随的に、孔の大きさは、同孔に配置される治療剤の大きさに適するように設計されるか、又は加工され得る。
【0016】
第一の治療剤は、抗再狭窄剤、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、成長因子、免疫抑制剤又は放射化学剤を含み得る。好ましくは、治療剤は抗再狭窄剤であり得る。適切な治療剤は、それらに限定されるものではないが、パクリタキセル、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス又はエベロリムスであり得る。付随的に、第一の治療剤及び第二の治療剤は同一であり得る。
【0017】
別の実施形態において、本発明は(a)表面と同表面に隣接する外側領域と、(b)同外側領域に隣接する内側領域と、(c)同表面の少なくとも一部に配置される第一のポリマーと、を含む移植可能な医療装置を提供し、同表面及び外側領域はその内部に複数の孔を有する金属酸化物又は金属からなる材料と、同金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に配置される治療剤と、を含み、同内側領域は実質的に孔を備えておらず、同第一のポリマーはその内部に複数の孔を有する。第一のポリマーは層の形態であり得る。
【0018】
第一のポリマーは同第一のポリマーの孔に配置される第二の治療剤も含み得、同第一の治療剤及び第二の治療剤は同一であり得る。
医療装置は更に、金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に配置される第二のポリマーを含み得る。付随的に、第一のポリマーと第二のポリマーとは同じであってもよい。適切なポリマーは、それらに限定されるものではないが、ポリエチレン−コ−酢酸ビニルのようなエチレン−酢酸ビニルコポリマー;ポリ(n−ブチルメタクリレート)のようなポリメタクリレート;ポリ(スチレン−b−.イソブチレン−b−スチレン)のようなスチレン−イソブチレンコポリマー及びポリ乳酸−グリコール酸のようなポリ乳酸を含む。
【0019】
適切な金属材料は、それらに限定されるものではないが、金、白金、ステンレス鋼、チタン、タンタル、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム又はクロムであり得る。
金属酸化物は、遷移金属の酸化物を含む。適切な金属酸化物は、それらに限定されるものではないが、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン又は酸化ロジウムであり得る。付随的に、金属酸化物材料又は金属材料は放射線不透過性であり得る。
【0020】
金属酸化物材料又は金属材料の孔はミクロ孔、ナノ孔又はその組合せであり得る。金属酸化物材料又は金属材料の孔は、約1nm乃至約10μmの平均幅又は平均径を有し得る。
【0021】
治療剤は、抗再狭窄剤、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、成長因子、免疫抑制剤又は放射化学剤を含み得る。好ましくは、治療剤は抗再狭窄剤であり得る。適切な治療剤は、それらに限定されるものではないが、パクリタキセル、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス又はエベロリムスであり得る。
【0022】
更に別の実施形態において、本発明は血管内ステントを提供し、同ステントは、(a)患者の血管に移植するために設計された金属製の側壁ステント構造部であって、同側壁ステント構造部に複数のストラットと複数の開口部を含むとともに同ストラットの少なくとも一つが表面を有する、金属製側壁ステント構造部と、(b)同表面に配置されたコーティングとを含み、(i)同ストラットの表面の一部に配置された金属酸化物又は金属からなる第一の材料であって、その内部に複数の孔を有する第一の材料と、第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも一部に配置される第一のポリマーであってその内部に複数の孔を有する第一のポリマーと、からなり、第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔には第一の治療剤が配置されている。
【0023】
第一の金属酸化物材料又は金属材料と第一のポリマーとは、側壁ステント構造部の開口部を保存するために同表面に適合し得る。また、側壁ステント構造部はバルーン拡張可能であり得る。
【0024】
治療剤は抗生物質を含み、かつポリマーはエチレン酢酸ビニルコポリマーを含み得る。
更に別の実施形態において、本発明は血管内ステントを提供し、同ステントは、(a)患者の血管に移植するために設計された金属製の開口格子型側壁ステント構造部であって、同側壁ステント構造部に複数のストラットと複数の開口部とを含むとともに同ストラットの少なくとも一つが(i)表面と同表面に隣接する外側領域と、(ii)同外側領域に隣接する内側領域と、を含み、同表面及び外側領域が金属酸化物又は金属からなる材料であって、その内部に複数の孔を有する材料と、金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に配置される治療剤と、を含み、同内側領域が実質的に孔を有していない、金属製の開口格子型側壁ステント構造部と、(b)同第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも一部に配置される第一のポリマーであって、その内部に複数の孔を有する第一のポリマーと、を含む。
【0025】
第一のポリマーは、側壁ステント構造部の開口部を保存するために同表面に適合し得る。また、側壁ステント構造部はバルーン拡張可能であり得る。
治療剤は抗生物質を含み、かつポリマーはエチレン酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0026】
本発明はまた、本発明の医療装置を製造するための方法に関する。一実施形態において、本発明は移植可能な医療装置を製造する方法を提供し、同方法は、(a)表面を有する医療装置を提供する工程と、(b)同表面の少なくとも一部に複数の孔を有するとともに金属酸化物又は金属を含む第一の材料からなるコーティングを形成する工程と、(c)同第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に第一の治療剤を堆積させる工程と、(d)第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも一部に配置されるとともにその内部に複数の孔を有する第一のポリマーからなるコーティングを形成する工程と、を含む。
【0027】
その内部に複数の孔を有する第一の金属酸化物材料又は金属材料のコーティングを形成する工程は、(i)第一の金属酸化物材料又は金属材料と、第二相材料と、からなる組成物を同表面の少なくとも一部に適用する工程と、(ii)第二相材料を除去して、第一の金属酸化物材料又は金属材料に複数の孔を形成する工程と、を含む。
【0028】
適切な第二相材料としては、それらに限定されるものではないが、炭素、アルミニウム、ニッケル又はそれらの組合せを含む。その他の適切な第二相材料はポリマーを含む。好ましくはポリマーは浸出され得る。
【0029】
第二相材料は、アニーリング又は化学エッチングによって除去され得る。
付随的に、その内部に複数の孔を有する第一の金属酸化物材料又は金属材料のコーティングを形成する工程は、第一の金属酸化物材料又は金属材料からなる組成物を、スパッタリング、電気メッキ、電子ビーム蒸発又は熱蒸発によって表面の少なくとも一部に適用する工程を含む。
【0030】
第一の治療剤は、真空含浸又は電気泳動輸送によって第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に堆積され得る。
複数の孔を有する第一のポリマーを形成する工程は、(i)第一のポリマーと、第二相材料と、からなる組成物を第一の金属酸化物材料又は金属材料のコーティングに適用する工程と、(ii)第二相材料を除去して、第一のポリマーに複数の孔を形成する工程と、を含む。
【0031】
適切な第二相材料は、それらに限定されるものではないが、溶解又は浸出によって除去され得るポリマー又は金属を含む。適切なポリマーは、それらに限定されるものではないが、ポリスチレンのようなスチレン含有ポリマーを含む。適切な金属は、それらに限定されるものではないが、アルミニウム、ニッケル又はそれらの組合せを含む。
【0032】
第二相材料は、同第二相材料を選択的に溶解又は浸出することによって除去され得る。
別の実施形態において、本発明は移植可能な医療装置を製造する方法を提供し、同方法は、(a)(i)表面と同表面に隣接する外側領域と、(ii)同外側領域に隣接する内側領域と、を有する医療装置を提供する工程であって、同表面及び外側領域が金属酸化物又は金属からなる材料であって、その内部に複数の孔を有する材料からなり、かつ同内側領域が実質的に孔を有していない、工程と、(b)同金属酸化物材料又は金属材料中の少なくとも幾らかの孔に治療剤を堆積させる工程と、(c)同表面の少なくとも一部に配置される第一のポリマーであって複数の孔を有する第一のポリマーのコーティングを形成する工程と、を含む。
【0033】
本発明の方法はまた、表面及び外側領域の金属酸化物材料又は金属材料に孔を形成する工程を含み得る。孔は、医療装置をマイクロ粗化することによって形成され得る。
治療剤は、真空含浸又は電気泳動輸送によって金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に堆積され得る。
【0034】
付随的に、複数の孔を有するポリマーコーティングを形成する工程は、(i)第一のポリマーと第二相材料とからなる組成物を表面に適用する工程と、(ii)第二相材料を除去して、第一のポリマーに複数の孔を形成する工程と、を含む。
【0035】
適切な第二相材料は、それらに限定されるものではないが、溶解又は浸出によって除去され得るポリマー又は金属を含む。適切なポリマーは、それらに限定されるものではないが、ポリスチレンのようなスチレン含有ポリマーを含む。適切な金属は、それらに限定されるものではないが、アルミニウム、ニッケル又はそれらの組合せを含む。
【0036】
第二相材料は、同第二相材料を選択的に溶解又は浸出することによって除去され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明は以下の図面を参照して説明される。
本発明の一実施形態において、その内部に複数の孔を有する金属酸化物又は金属を含む材料が、医療装置の表面の少なくとも一部に配置される。図1は、本発明のそのような実施形態の一例を示す。本実施形態において、医療装置10は同医療装置10の外側領域30に隣接した表面20を有する。外側領域30は医療装置の内側領域(図示しない)に隣接している。金属酸化物又は金属35を含む材料は表面20の少なくとも一部に配置される。この材料は層の形態であり得る。複数の孔40は金属酸化物材料又は金属材料35に存在している。好ましくは、少なくとも幾らかの孔40は相互に連結されている。また、少なくとも幾らかの孔40は第一の治療剤50を含む。第一の治療剤50は粒状の形態であり得る。加えて、第一の治療剤50は部分的に、又は完全に孔40を満たし得る。
【0038】
図1の第一の金属酸化物材料又は金属材料35には第一のポリマー60が配置されており、コーティングを形成する。ポリマーは層の形態であり得る。ポリマー60はその内部に複数の孔70を有する。本実施形態において、ポリマー60中の孔は第二の治療剤80を含み、それは、第一の治療剤50と同じであっても異なっていてもよい。その他の実施形態において、ポリマー60中の孔70は治療剤を含んでいないか、或いは治療剤を実質的に含んでいない、即ち治療剤が孔の体積の5%未満を占めているもの、であってもよい。
【0039】
幾らかの実施形態において、金属酸化物材料又は金属材料35の孔40はポリマー60に加えて第二のポリマー65を含み得る。第二のポリマー65は第一のポリマー60と同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
本発明の別の実施形態が図2に示されている。図1に示された実施形態と同様に、この実施形態は、金属酸化物材料又は金属材料35からなるとともに医療装置10の表面20の少なくとも一部に配置される第一の材料を含む。複数の孔40が金属酸化物材料又は金属の材料35に存在している。第一の治療剤50及び選択的に第二のポリマー65は孔40の少なくとも幾らかに存在している。その内部に複数の孔70を有する第一のポリマー60は金属酸化物材料又は金属材料35に存在し得る。第一のポリマー60の孔70は第二の治療剤80を含み得る。
【0041】
図2のこの実施形態において、表面20は医療装置10の外側部30に隣接しており、次に、同外側部30は医療装置10の内側部32に隣接している。外側部30はその内部に複数の孔95を有する金属酸化物又は金属90からなる第二の材料から構成されている。第二の材料90は第一の金属酸化物材料又は金属材料35と同じであっても異なっていてもよい。第一の治療剤50又は第二の治療剤80と同じであるか、又は異なっている治療剤100が金属酸化物材料又は金属材料90の孔95に配置され得る。医療装置10の内側部32は実質的に孔を有していない、即ち、内側部32の体積の5%未満が孔によって占有されている。内側部32は実質的に孔を有していないが、外側部30を形成するために使用したものと同じ金属酸化物材料又は金属材料で形成されていてもよい。
【0042】
図3は本発明の別の実施形態の断面図を示す。本実施形態において、医療装置10は表面20と、同表面20に隣接する外側領域30と、同外側領域30に隣接する内側領域32とを含む。外側領域30はその内部に複数の孔95を有する金属酸化物又は金属90を含む材料から構成されている。金属酸化物材料又は金属材料90中の孔95は治療剤100と、選択的にポリマー105とを含んでいる。医療装置10の内側部32は実質的に孔を有していない、即ち、内側部32の体積の5%未満が孔によって占有されている。表面20には一定量の別のポリマー60が配置されており、それは、孔95に配置されたポリマー105と同じであっても異なっていてもよい。一定量のポリマー60はその内部に孔70を含み得る。一定量のポリマー60中の孔70は第二の治療剤80を含み得る。
【0043】
図4は外側領域30に隣接した内側領域32を有するステントストラット150の断面図を示す。ストラット150はまた、外側領域30に隣接した表面20も有する。図1に示された実施形態と同様に、その内部に複数の孔40を有する金属酸化物又は金属35からなる材料は、表面20の少なくとも一部に配置される。孔40の少なくとも幾らかは第一の治療剤50を含む。第一の金属酸化物材料又は金属材料35には第一のポリマー60が配置されており、同第一のポリマー60はコーティングを形成する。ポリマー60は複数の孔70をその内部に含む。本実施形態において、ポリマー60中の孔は第二の治療剤80を含み、それは、第一の治療剤50と同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
好ましくは、複数の孔を有する金属酸化物材料又は金属材料は生体適合性である。適切の金属酸化物は遷移金属酸化物を含む。これらとしては、それらに限定されるものではないが、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム又はそれらの組合せを含み得る。適切な金属は、それらに限定されるものではないが、金、白金、ステンレス鋼、タンタル、チタン、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム又はクロムを含み得る。
【0045】
また、医療装置がX線又は蛍光透視法の下で視認できるように、金属酸化物材料又は金属材料は放射線不透過性であることが好ましい。適切な放射線不透過性材料としては、限定されるものではないが、金、タンタル、白金、ビスマス、イリジウム、ジルコニウム、ヨウ素、チタン、バリウム、銀、スズ又はこれらの金属の合金が挙げられる。
【0046】
金属酸化物材料又は金属材料中の孔の幾らか又はすべては、他の孔と相互に連結され得る。幾らかの実施形態において、孔は離間されているか、又はパターンに配置され得る。また、金属酸化物材料又は金属材料の孔の幾らか又はすべては、同金属酸化物材料又は金属材料の外面と連通され得る。例えば、図1〜2において、孔40aは金属酸化物材料又は金属材料の外面37と連通している。外面とのそのような連通により治療剤が医療装置から容易に放出可能となる。加えて、薬物の溶出が完了すると、外面と連通した孔を有することは、長期間にわたり炎症を伴うことなく血管新生と細胞被覆とを助ける。
【0047】
加えて、金属酸化物材料又は金属材料中の孔は任意の形状を備え得る。例えば、孔はチャネル、間隙経路又は微細管のように形状化され得る。付随的に、金属酸化物材料又は金属材料中の孔は任意の大きさ又は大きさの範囲を備え得る。幾らかの例において、孔はマイクロ孔又はナノ孔であり得る。また、幾らかの実施形態において、孔の平均幅又は平均径は約1nm乃至約10μmであると好ましい。
【0048】
孔のサイズ化はまた、治療剤の放出速度を制御するために使用され得る。例えば、より大きな平均幅を有する孔は、より小さな平均幅を有する孔よりも治療剤をより迅速に放出可能である。また、金属酸化物材料又は金属材料中の孔の数は治療剤の放出速度を更に良好に放出するために調整され得る。例えば、金属酸化物材料又は金属材料の単位体積又は単位質量当たりにより多くの孔が存在すると、より少ない孔が存在する材料よりも治療剤の放出速度をより大きくすることができる。
【0049】
その内部に孔を有する金属酸化物材料又は金属材料であって表面に適用される金属酸化物材料又は金属材料は任意の厚みを備え得る。幾らかの実施形態において、材料の平均厚さは約1.0乃至約50ミクロンであると好ましい。同様に、その内部に孔を有する金属酸化物材料又は金属材料からなる医療装置の外側領域は、任意の厚みを備え得る。幾らかの実施形態において、この外側領域は、同外側領域を含む医療装置の部分の厚さの約1乃至約10%であると好ましい。医療装置の部分がステントのストラットである場合において、多孔性の金属酸化物材料又は金属材料を含むストラットの外側領域は同ストラットの厚さの約1乃至約10%であることが好ましい。
【0050】
金属酸化物材料又は金属材料上に配置されたポリマーは治療剤の所望の放出速度を達成するために必要な任意の厚みであり得る。より厚い、又はより薄いポリマーのコーティングは、治療剤が溶出される速度に影響を与えるために好ましい場合がある。幾らかの場合において、ポリマーは約1乃至約20ミクロンの厚さを有することが好ましい。
【0051】
また、ポリマーはその内部に複数の孔を有し得る。ポリマーはまた、金属酸化物材料又は金属材料の孔と同じ又は異なった治療剤をその孔に含み得る。孔の大きさ及び数は、ポリマーの孔に分散され得る治療剤の放出速度を制御するために調整され得る。
【0052】
A.医療装置
本発明の適切な医療装置は、それらに限定されるものではないが、ステントと、外科用ステープルと、中心静脈カテーテル及び動脈カテーテルのようなカテーテルと、ガイドワイヤと、カニューレと、心臓ペースメーカーのリード又はリードチップと、細動除去器のリード又はリードチップと、移植可能な血管アクセスポートと、血液貯蔵バッグと、血管チューブと、血管移植体又はその他の移植体と、大動脈内バルーンポンプと、心臓弁と、心臓血管縫合装置と、完全人工心臓ポンプ及び心室補助ポンプと、血液酸素付加装置、血液フィルタ、血液透析ユニット、血液灌流ユニット及び血漿交換ユニットのような体外装置と、を含む。
【0053】
本発明に特に適した医療装置は医療用の目的のための任意のステントを含み、それは当業者には周知である。例えば、適切なステントは、自己拡張可能なステント及びバルーン拡張可能なステントのような血管用ステントを含む。自己拡張可能なステントの例は、ウォルステン(Wallsten)に付与された米国特許第4655771号明細書及び米国特許第4954126号及びウォルステンらに付与された米国特許第5061275号明細書に例示されている。適切なバルーン拡張可能なステントの例はピンチャシック(Pinchasik)らに付与された米国特許第5449373号明細書に示されている。好ましい実施形態において、本発明に適したステントは、Expressステントである。より好ましくは、Expressステントは、Express(登録商標)又はExpress2(登録商標)ステント(マサチューセッツ州、ナティックに所在のボストンサイエンティフィック社)である。
【0054】
図5は、本発明の使用に適した医療装置の一例を示す。同図は、複数のストラット230からなる側壁210と、同側壁210にある少なくとも一つの開口部250とを含む移植可能な血管内ステント200の一部を示す。一般的に、開口部250は隣接するストラット230の間に配置される。本実施形態は、ステントのストラットと開口部が開口した格子側壁ステント構造を画定しているステントの例である。また、側壁210は第一の側壁表面260と、図5に図示されていない相対向する第二の側壁表面とを有し得る。第一の側壁表面260は、ステントが移植された際に体腔の壁部に対面する外側側壁表面であるか、又は体腔の壁部から離間して対面する内側側壁表面であり得る。同様に、第二の側壁表面は外側側壁表面又は内側側壁表面であり得る。その内部に開口部を備えた側壁ステント構造を有するステントにおいて、幾らかの実施形態では、ステントに適用されるコーティングは、側壁ステント構造内の開口部が保存される、即ち、同開口部がコーティング材料で全体又は一部が閉塞されないように、同ステントの表面に一致していると好ましい。
【0055】
適切なステントのフレームは当業者に周知の種々の方法にて形成され得る。同フレームは溶接されるか、成形されるか、レーザ切断されるか、電気形成されるか、又は連続した構造を形成するために、共に巻回された、又は編み組されたフィラメント又は繊維から構成され得る。
【0056】
本発明に適した医療装置は金属材料、セラミック材料、ポリマー材料又はそれらの組合せから製造され得る。好ましくは、同材料は生体適合性である。金属材料はより好ましい。適切な金属材料は、チタン(ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料のような)、ステンレス鋼、タンタル、ニッケル−クロム又はElgiloy(登録商標)及びPhynox(登録商標)のようなコバルト−クロム−ニッケル合金を含むある種のコバルト合金を含む。金属材料はまた、国際出願公開第94/16646号に開示されているようなクラッド複合体フィラメントを含む。
【0057】
適切なセラミック材料は、それらに限定されるものではないが、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムのような遷移元素の酸化物、カーバイド又は窒化物を含む。シリカのようなシリコンベースの材料もまた使用され得る。
【0058】
医療装置を形成するための適切なポリマー材料は生体安定性であり得る。また、ポリマー材料は生体分解性であり得る。適切なポリマー材料は、それらに限定されるものではないが、スチレンイソブチレンスチレン、ポリエテールオキシド、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリ−2−ヒドロキシ−ブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)及びテフロン(登録商標)を含む。
【0059】
本発明の医療装置を形成するために使用され得るポリマー材料は、それらに限定されるものではないが、イソブチレンベースのポリマー、ポリスチレンベースのポリマー、ポリアクリレート及びポリアクリレート誘導体、酢酸ビニルベースのポリマー及びそのコポリマー、ポリウレタン及びそのコポリマー、シリコン及びそのコポリマー、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、セルロース(Cellulosics)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、アクリル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、セルロース、コラーゲン及びキチンを含む。
【0060】
医療装置の材料として使用されるその他のポリマーは、それらに限定されるものではないが、ダクロンポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキザレート、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシアノアクリレート、ポリフォスファゼン、ポリ(アミノ酸)、エチレングリコールIジメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリテトラフルオロエチレンポリ(HEMA)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリ(グリコリド−ラクチド)コーポリマー、ポリ乳酸、ポリ(γ−カプロラクトン)、ポリ(γ−ヒドロキシブチレート)、ポリジオキサノン、ポリ(γ−エチルグルタメート)、ポリイミノカーボネート、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、アルギン酸塩、デキストラン、キチン、コットン、ポリグリコール酸、ポリウレタン又はそれらの誘導体化物、即ち、例えばタンパク質、核酸等のような細胞及び分子の付着を可能にしながらもポリマーがその構造全体を保持している、例えばRGDのような付着部位又は架橋基を含むように修飾されたポリマー、を含む。
【0061】
医療装置はまた、非ポリマー材料から形成され得る。有用な非ポリマー材料の例は、コレステロール、スチグマステロール、β−シトステロール及びエストラジオールのようなステロール;ステアリン酸コレステリルのようなコレステリルエステル;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸のようなC12―C24脂肪酸;モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノドコサン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノデセン酸(monodicenoate)グリセリル、ジパルミチン酸グリセリル、ジドコサン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、ジデセン酸グリセリル、トリドコサン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリデセン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセロール及びそれらの混合物のようなC18−C36モノ−、ジ−及びトリアシルグリセリド;スクロースジステアレート及びスクロースパルミテートのようなスクロース脂肪酸エステル;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート及びソルビタントリステアレートのようなソルビタン脂肪酸エステル;セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール及びセトステアリルアルコールのようなC16―C18脂肪アルコール;セチルパルミテート及びセテアリル(cetearyl)パルミテートのような脂肪アルコールと脂肪酸のエステル;無水ステアリン酸のような脂肪酸の無水物、フォスファチジルコリン(レシチン)、フォスファチジルセリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール及びそれらのリソ誘導体を含むリン脂質;スフィンゴシン及びその誘導体、ステアリルスフィンゴミエリン、パルミトイルスフィンゴミエリン、トリコサニルスフィンゴミエリンのようなスフィンゴミエリン;ステアリルセラミド及びパルミトイルセラミドのようなセラミド;スフィンゴ糖脂質;ラノリン及びラノリンアルコール及びそれらの組合せ及び混合物を含む。好ましい非ポリマー材料は、コレステロール、モノステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセロール、ステアリン酸、無水ステアリン酸、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル及びアセチル化されたモノグリセリドを含む。
【0062】
B.治療剤
本発明にて使用されている用語「治療剤」は薬物、遺伝学的材料及び生物学的材料を包含し、「生物学的に活性な材料」と相互に変換可能に使用され得る。一実施形態において、治療剤は抗再狭窄剤である。その他の実施形態において、治療剤は平滑筋細胞の増殖、収縮、遊走又は異常亢進を抑制する。適切な治療剤の非限定的な例としては、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン(PPack)、エノキサプリン、アンジオペプチン、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ラパマイシン(シロリムス)、ピメクロリムス、アムロジピン、ドキサゾシン、グルココルチコイド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸、メサラミン、パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキセート、アザチオプリン、アドリアマイシン、ムタマイシン、エンドスタチン、アンジオスタチン、チミジンキナーゼ阻害剤、クラドリビン、リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、トラピジル、リプロスチン、ダニ抗血小板ペプチド、5−アザシチジン、血管内皮成長因子、成長因子受容体、転写活性化因子、翻訳プロモータ、抗増殖剤、成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写レプレッサ、翻訳レプレッサ、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とから構成される二機能分子、抗体と細胞毒素とから構成される二機能分子、コレステロール低下剤、血管拡張剤、内因性血管拡張機構を妨害する薬剤、抗酸化剤、プロブコール、抗生物質、ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラマイシン、血管新生物質、繊維芽細胞成長因子、エストロゲン、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、17−βエストラジオール、ジゴキシン、ベータ遮断剤、カプトプリル、エナロプリル、スタチン、ステロイド、ビタミン、パクリタキセル(並びにその誘導体、類似体又はタンパク質に結合されたパクリタキセル、例えば、Abraxane(登録商標))、2’−スクシニル−タキソール、2’−スクシニルタキソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タキソール、2’−グルタリル−タキソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミン塩酸塩との2’−O−エステル、ニトログリセリン、亜酸化窒素、酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオール及び配糖体を含む。一実施形態において、治療剤は平滑筋細胞阻害剤又は抗生物質である。好ましい実施形態において、治療剤はタキソール(例えば、Taxol(登録商標))又はその類似体或いは誘導体である。別の好ましい実施形態において、治療剤はパクリタキセル、又はその類似体或いは誘導体である。更に別の好ましい実施形態において、治療剤は、エリスロマイシン、アムホテリシン、ラパマイシン、アドリアマイシン等の抗生物質である。
【0063】
「遺伝学的材料」なる用語は、DNA又はRNAを意味し、限定されるものではないが、ウィルス性ベクタ又は非ウィルス性ベクタを含むヒト体内に挿入されることを意図された以下に記載の有用なタンパク質をコードするDNA/RNAを含む。
【0064】
「生物学的材料」なる用語は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカイン及びホルモンを含む。ペプチド及びタンパク質の例は、血管内皮成長因子(VEGF)、形質転換成長因子(TGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来の成長因子(BDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン成長因子(CGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、低酸素症誘導因子−1(HIF−1)、幹細胞由来因子(SDF)、幹細胞因子(SCF)、内皮細胞成長補助剤(ECGS)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、成長分化因子(GDF)、インテグリン変調因子(IMF)、カルモジュリン(CaM)、チミジンキナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16等)、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15等)、リンフォカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(すべてのタイプ)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞結合ドメイン(例えば、RGD)及びテナスシンを含む。現在好適なBMPはBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7である。これらの二量体タンパク質はホモ二量体、ヘテロ二量体又はそれらの組合せの単独にて提供され得るか、或いは他の分子とともに提供され得る。細胞は、ヒト由来のもの(自己、又は同種異系)或いは動物由来(異種)であり得、所望によっては、移植部位にある関心のあるタンパク質に送達されるように遺伝的に加工され得る。送達培地は、細胞の機能と生存とを維持するために必要なものとして処方化され得る。細胞は、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、繊維芽細胞、マクロファージ、衛星細胞を含む。
【0065】
その他の非遺伝的治療剤としては、以下のものを含む。
ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)のような抗血栓形成剤。
【0066】
エノキサプリン、アンジオペプチン又は平滑筋細胞増殖を阻止することが可能なモノクロナール抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、アムロジピン及びドキサゾシンのような抗増殖剤。
【0067】
グルココルチコイド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸及びメサラミンのような抗炎症剤。
【0068】
パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキセート、アザチオプリン、アドリアマイシン及びムタマイシン;エンドスタチン、アンジオスタチン及びチミジンキナーゼ阻害剤、クラドリビン、及びタキソール及びその類似体或いは誘導体のような、抗新生物/抗増殖/抗縮瞳剤。
【0069】
リドカイン、ブピバカイン、ロピバカインのような麻酔剤。
D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗剤、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンはまた麻酔剤、解熱剤及び抗炎症剤としても分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害剤、トラピジル、リプロスチン、ダニ抗血小板ペプチドのような抗血小板剤のような抗凝血剤。
【0070】
5−アザシチジンのようなDNA脱メチル化剤、それはまたある種のガン細胞においては細胞の成長を阻害してアポトーシスを誘導するRNA又はDNA代謝物としても分類される。
【0071】
成長因子、血管内皮成長因子(VEGF、VEGF−2を含むすべてのタイプ)、成長因子受容体、転写活性化剤及び翻訳プロモータのような血管細胞成長プロモータ。
抗増殖剤、成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗剤、転写レプレッサ、翻訳レプレッサ、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素とから構成される二機能分子、抗体と細胞毒素とから構成される二機能分子のような血管細胞成長阻害剤。
【0072】
コレステロール低下剤、血管拡張剤及び内因性血管拡張機構を妨害する薬剤。
プロブコールのような抗酸化剤。
ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラマイシン、ラパマイシン(シロリムス)のような抗生物質。
【0073】
繊維芽細胞成長因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)及び17−βエストラジオールを含むエストロジェンのような血管新生物質。
ジゴキシン、ベータ遮断剤、カプトプリル、エナロプリルを含むアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、スタチン及び関連化合物のような心不全のための薬物。
【0074】
シロリムス又はエベロリムスのようなマクロライド系。
好ましい生物学的材料は、ステロイド、ビタミン及び再狭窄阻害剤を含む抗増殖剤を含む。好ましい再狭窄阻害剤は、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(例えば、パクリタキセル、又はパクリタキセル類似体或いはパクリタキセル誘導体及びそれらの混合物)のような微小管安定化剤を含む。例えば、本発明に使用されるのに適した誘導体は、2’−スクシニル−タキソール、2’−スクシニル−タキソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タキソール、2’−グルタリル−タキソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミン塩酸塩との2’−O−エステルを含む。
【0075】
その他の適切な治療剤は、タクロリムス、ハロフジノン、ゲルダナマイシンのようなHSP90熱ショックタンパク質の阻害剤、エポチロンのような微小管安定化剤、クリオスタゾールのようなホスホジエステラーゼ阻害剤、Barkct阻害剤、ホスホランバン阻害剤及びSerca2遺伝子/タンパク質を含む。
【0076】
その他の好ましい治療剤は、ニトログリセリン、亜酸化窒素、酸化窒素、アスピリン、ジギタリス、エストラジオール及び配糖体のようなエストロゲン誘導体を含む。
一実施形態において、治療剤は、タンパク質合成、DNA合成、紡錘体形成、細胞増殖、細胞遊走、微小管形成、マイクロフィラメント形成、細胞外マトリックス合成、細胞外マトリックス分泌、又は細胞容積の増大のような細胞の代謝を変更するか、又は細胞活性を阻害することが可能なものである。別の実施形態において、治療剤は、細胞の増殖及び/又は遊走を阻害することが可能である。
【0077】
ある実施形態において、本発明の医療装置に使用される治療剤は、当業者に周知の方法にて合成され得る。代替的に、治療剤は化学会社及び製薬会社から購入可能である。
幾らかの実施形態において、治療剤は、多孔性金属酸化物材料又は多孔性金属材料の重量の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%又はそれ以上である。好ましくは、治療剤は、同治療剤を含む多孔性金属酸化物材料又は多孔性金属材料の約0.1乃至約10重量%である。より好ましくは、同治療剤は、同治療剤を含む多孔性金属酸化物材料又は多孔性金属材料の約0.5乃至約10重量%である。
【0078】
C.ポリマー
コーティングを形成するために多孔性の金属酸化物材料又は金属材料に配置される一定量のポリマーとして使用されるポリマーは、生体適合性、特に、同装置の身体への挿入又は移植時において生体適合性であり、かつ身体の組織に対する炎症が回避されるものであるべきである。そのようなポリマーの例としては、それらに限定されるものではないが、ポリウレタン、ポリイソブチレン及びそのコポリマー、シリコン及びポリエステルを含む。その他の適切なポリマーはポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデンのようなポリビニリデンハロゲン化物、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマーのようなビニルモノマーとオレフィンのコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、66ナイロン及びポリカプロラクトンのようなポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマーを含む。
【0079】
ポリマーがステントのような、拡張及び収縮のような機械的拘束を受ける医療装置の一部に適用される場合、同ポリマーは好ましくは、シリコン(例えば、ポリシロキサン及び置換されたポリシロキサン)、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリオレフィンエラストマー及びEPDMゴムのようなエラストマー系ポリマーから選択される。ポリマーは、ステントが応力又は圧力を受けた場合に、ストラット表面に同コーティングがより良好に接着可能となるように選択される。更に、コーティングは一つのタイプのポリマーを使用して形成され得るが、種々のポリマーの組合せも使用され得る。
【0080】
一般的に、親水性の治療剤が使用される場合、同治療剤よりも親水性の低い別の材料と比べて同治療剤との親和性が大きい親水性ポリマーが好ましい。疎水性の治療剤が使用される場合、同治療剤に対してより大きな親和性を有する疎水性ポリマーが好ましい。しかしながら、幾らかの実施形態において、親水性治療剤が疎水性ポリマーとともに使用され、疎水性治療剤が親水性ポリマーとともに使用され得る。
【0081】
適切な疎水性ポリマー又はモノマーの例としては、それらに限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ヘキサジエンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、二つ以上のポリオレフィン及び二つ以上の異なる不飽和モノマーから調製されたランダムコポリマー及びブロックコポリマーのようなポリオレフィン;ポリ(スチレン)、ポリ(2−メチルスチレン)、約20モル%未満のアクリロニトリルを含むスチレン−アクリロニトリルコポリマー及びスチレン−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレートコポリマーのようなスチレンポリマー;ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、クロロトリフルオロエチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレンコポリマー、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリ(塩化ビニル)及びポリ(フッ化ビニリデン)のようなハロゲン化炭化水素ポリマー;ポリ(ビニルブチレート)、ポリ(ビニルデカノエート)、ポリ(ビニルドデカノエート)、ポリ(ビニルヘキサデカノエート)、ポリ(ビニルヘキサノエート)、ポリ(ビニルプロピオネート)、ポリ(ビニルオクタノエート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシエチレン)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシプロピレン)及びポリ(メタアクリロニトリル)のようなビニルポリマー;ポリ(n−酢酸ブチル)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(1−クロロジフルオロメチル)テトラフルオロエチルアクリレート、ポリジ(クロロフルオロメチル)フルオロメチルアクリレート、ポリ(1,1−ジヒドロヘプタフルオロブチルアクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタフルオロイソプロピルアクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタデカフルオロオクチルアクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート)、ポリ5−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ペンチルアクリレート、ポリ11−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ウンデシルアクリレート、ポリ2−(ヘプタフルオロプロポキシ)エチルアクリレート及びポリ(ノナフルオロイソブチルアクリレート)のようなアクリル酸ポリマー;ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ドデシルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(オクタデシルメタクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタデカフルオロオクチルメタクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)、ポリ(1−ヒドロテトラフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロテトラフルオロプロピルメタクリレート)、ポリ(1−ヒドロヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)及びポリ(t−ノナフルオロブチルメタクリレート)のようなメタクリル酸ポリマー;ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート)のようなポリエステル;ポリウレタン及びシロキサン−ウレタンコポリマーのような縮合型ポリマー;ポリオルガノシロキサン、即ち、RaSiO4−a/2(ここで、Rは一価の置換された、或いは置換されていない炭化水素ラジカルであり、かつaの値は1又は2である)で示されるシロキサン基を繰り返すことにより特徴付けられるポリマー材料;及びゴムのような天然由来の疎水性ポリマーが含まれる。
【0082】
適切な親水性ポリマー又はモノマーの例としては、それらに限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;マレイン酸及びフマル酸のような不飽和二塩基或いはこれらの不飽和二塩基酸の半エステル、或いはこれら二塩基付加物のアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩又は半エステルに加えられるポリマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸のような不飽和スルホン酸又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩が加えられるポリマー;及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0083】
ポリビニルアルコールもまた、親水性ポリマーの例である。ポリビニルアルコールは、ヒドロキシル基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、アンモニウム基又はスルホニル(−SO3)基のような複数の親水基を含み得る。親水性ポリマーはまた、それらに限定されるものではないが、デンプン、ポリサッカライド及び関連したセルロースポリマー、ポリエチレンオキシドのようなポリアルキレングリコール及び酸化物;アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸、及びこれらの酸に由来する部分エステル及びアルキレングリコールのような多価アルコールのような重合化エチレン不飽和カルボン酸;アクリルアミドに由来するホモポリマー及びコポリマー、及びビニルピロリドンのホモポリマー及びコポリマーを含む。
【0084】
その他の適切なポリマーは、限定されるものではないが、ポリウレタン、シリコン(例えば、ポリシロキサン及び置換ポリシロキサン)及びポリエステル、スチレン−イソブチレン−コポリマーを含む。使用され得るその他のポリマーは医療装置にて溶解され、かつ硬化されるか或いは重合され得るもの、生物学的活性材料と混合され得る比較的融点の低いポリマーを含む。更なる適切なポリマーは、それらに限定されるものではないが、一般的な熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、ポリ塩化ビニルのようなハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、ポリビニルメチルエーテルのようなポリビニルエーテル、フッ化ポリビニリデン及び塩化ポリビニリデンのようなハロゲン化ポリビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンのようなポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニルのようなポリビニルエステル、ビニルモノマーのコポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマーのようなビニルモノマーとオレフィンのコポリマー、66ナイロン及びポリカプロラクトンのようなポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルブロックアミド、エポキシ樹脂、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム、フルオロポリマー、フルオロシリコン、ポリエチレングリコール、ポリサッカライド、リン脂質及びそれらの組合せを含む。
【0085】
D.コーティングを形成する方法
医療装置の表面及び外側領域が複数の孔を有する金属酸化物材料又は金属材料からなる本発明の医療装置の実施形態(図2及び3等に記載のもの)において、幾らかの場合、孔は反応性プラズマ又はイオン衝撃電解質エッチングの使用を含むマイクロ粗化技術により作製され得る。孔はまた、サンドブラスティング、レーザエッチング又は化学エッチングのようなその他の方法によっても作製され得る。
【0086】
医療装置が複数の孔を有する金属酸化物材料又は金属材料のコーティングを含む実施形態(例えば、図1及び2に記載のもの)において、そのようなコーティングは種々の方法にて形成され得る。幾らかの場合において、コーティングは、孔が材料中に形成されるように特殊な様式にて同材料を堆積する方法によって形成され得る。例えば、金属酸化物材料又は金属材料は、スパッタリング及び蒸着条件を調整することのような蒸着方法により多孔性に形成され得る。調整又は変更され得る蒸着条件としては、それらに限定されるものではないが、チャンバ圧、基質温度、基質バイアス(bias)、基質配向、スパッタ速度又はそれらの組合せを含む。
【0087】
代替的な方法において、複数の孔を有するコーティングは、孔の形成を促進する所定のプロセスパラメータの下に金属酸化物又は金属からなる噴霧組成物の真空プラズマ噴霧を使用して医療装置の表面に形成され得る。
【0088】
加えて、金属酸化物材料又は金属材料の多孔性コーティングは、共蒸着技術によって形成され得る。そのような技術において、金属酸化物材料又は金属材料は、組成物を形成するために第二相材料と組合せられる。第二相材料は、炭素、アルミニウム、ニッケルのような、金属又は非金属であり得る。好ましくは、非金属の二次的材料は、ポリスチレンのようなろ取可能なポリマーを含む。二次的材料は種々の大きさの中空の球又は細片状の管のような粒子の形態であり得る。形成される孔の大きさは使用される第二相材料の大きさによって決定されるであろう。例えば、中空の球状の第二金属が第二相材料として使用された場合、球の大きさは形成される孔のサイズを決定するであろう。
【0089】
幾らかの実施形態において、組成物は、多孔性コーティングを形成するために使用される金属と、第二相材料として使用される金属と、を含む。二つの金属は、例えば金/銀合金のような合金を形成し、この場合、金は多孔性コーティングを形成するために使用される金属であり、銀は第二相材料である。また、二つの金属は混合物又は複合材料の形態であり得る。以下に論ぜられているように、第二相材料はコーティング中の孔を形成するために除去される。従って、仮に二つの金属が組成物中にて使用される場合、それらの金属は第二相材料として使用される金属の除去を容易にするために異なる化学的特性又は物理的特性を備えるべきである。例えば、除去される金属は電気化学的活性が大きいものであるべきであり、例えば、多孔性コーティングを形成するために使用される金属と比較して腐食耐性が小さいものであるべきである。幾らかの実施形態において、除去される金属は、多孔性コーティングを形成するために使用される金属と比較して融点が低いものであるべきである。更に別の実施形態において、除去される金属はコーティングを形成するために使用される金属と比較して蒸気圧が高いものであるべきである。また、別の実施形態において、除去される金属は、コーティングを形成するために使用される金属と比較して選択された溶媒中にてより溶解されやすいものである。
【0090】
金属酸化物材料又は金属材料を含む組成物は、医療装置の表面に適用される第二相材料と組合せられる。適切な適用方法は、それらに限定されるものではないが、浸漬、噴霧、塗布、電気メッキ、蒸発、プラズマ蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、静電気的、電気メッキ、電気化学的、上記の組合せ等を含む。
【0091】
その後、第二相材料は組成物から除去されて、多孔性コーティングを形成する。例えば、第二相材料は、同第二相材料の選択的溶出のような脱合金法によって同組成物から除去され得る。この方法において、組成物は、第二相材料を除去する酸にさらされる。従って、コーティングを形成するために使用される金属酸化物又は金属は、好ましくは酸にさらされた場合に溶解されないものが好ましい一方で、第二相材料は、酸に溶解されるものである。任意の適切な酸を使用して、第二相材料を除去し得る。当業者は、使用するための適切な濃度及び反応条件を認識するであろう。例えば、仮に第二相材料が銀である場合、硝酸は、35%までの濃度であり、かつ120°F(49℃)の温度にて使用され得る。また、80°F(27℃)での硝酸及び硫酸の混合物(95%/5%)での浸漬工程が使用され得る。反応条件は、コーティングの寸法、分布及び深さを変更するために変更可能である。
【0092】
代替的に、第二の金属はアノードにて除去され得る。例えば、銀が第二相材料として使用される場合、銀は、15%までの硝酸を含む希硝酸浴を使用して表面に適用された組成物からアノードにて除去され、ここで、アノードは医療装置であり、カソードは白金を含む。電極間には10Vまでの直流電圧(DC)が印加される。浴の化学的性質、温度、印加される電圧及び処理時間が、コーティングの寸法、分布及び深さを変更するために変更され得る。
【0093】
更に、仮に第二相材料が多孔性コーティングに使用される金属酸化物又は金属よりも低い融点を有する場合、金属酸化物又は金属と第二相材料とを含む組成物でコーティングされた装置は、第二相材料は液体となり、かつ金属酸化物又は金属から除去可能となるような温度にまで加熱され得る。多孔性コーティングのための適切な金属の例としては、より融点の高い第一の金属:即ち、白金、金、ステンレス鋼、チタン、タンタル及びイリジウムの一つを含み、それを、アルミニウム、バリウム及びビスマスのようなより融点の低い第二相材料と組み合わせる。
【0094】
別の実施形態において、第二相材料は多孔性コーティングを形成するために使用される金属酸化物又は金属よりも高い蒸気圧を有する。医療装置の表面に適用される組成物を真空にて加熱すると、第二相材料は気化して、金属酸化物又は金属から除去される。
【0095】
治療剤は、任意の適切な方法にて金属酸化物又は金属の孔に堆積され、同方法としては、浸漬コーティング、噴霧コーティング、スピンコーティング、プラズマ蒸着、濃縮、電気化学的、静電気的、蒸発、プラズマ蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、又は流動床を含むが、それらに限定されるものではない。治療剤の分子を孔に堆積するために、コーティング、或いは医療装置の表面及び外側領域の孔のサイズを修正することが必要かもしれない。孔の大きさは例えば熱処理のような任意の適切な方法にて修正され得る。ポリマーが孔に堆積される場合、同ポリマーは、治療剤と、選択的に溶媒と、組み合わせられる。ポリマー及び治療剤を含む組成物は孔に堆積され得る。代替的に、ポリマー及び治療剤は別々に孔に堆積され得る。
【0096】
ポリマーは任意の方法にて、多孔性金属酸化物材料又は金属材料に適用される。適切な方法の例として、それらに限定されるものではないが、従来のノズル又は超音波ノズル等による噴霧、浸漬、圧延、静電蒸着、及び空気サスペンション、パンコーティング若しくは超音波ミスト噴霧のようなバッチ工程を含む。また、一つ以上のコーティング法を使用することができる。ポリマーの、多孔性金属酸化物材料又は金属材料への適用を容易にするために、同ポリマーは溶媒に分散又は溶解され得る。溶媒及びポリマーを含む組成物を適用後、同溶媒は除去される。ポリマーを介して気体をバブリングすることにより、又は第二相材料を溶媒及びポリマー組成物に加えて、第二相材料を溶解することにより、ポリマーに孔が形成され得る。加えて、治療剤は、同治療剤を金属酸化物材料又は金属材料の孔に装填するために、上記した方法によって同ポリマーの孔に装填され得る。
【0097】
本明細書に含まれる記載は、例示の目的にてなされたものであり、本発明を制限する目的ではない。明細書に記載の実施形態に対して変更及び修正が可能であり、それらは本発明の範囲内にある。更に、自明な変更、修正又は変化は当業者にとって起こり得ることである。また、上記に引用されたすべての参考文献は本明細書中にて、この開示に関連したすべての目的のために、その全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態であって、医療装置の表面に配置された金属酸化物又は金属からなる材料を含む一実施形態の断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態であって、医療装置の表面に配置された金属酸化物又は金属からなる材料を含む別の実施形態の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態であって、医療装置が、金属酸化物又は金属からなる材料を含む表面及び外側領域を含む、一実施形態の断面図である。
【図4】ステントのストラットであって、金属酸化物又は金属からなる材料が同ストラットの表面に配置されたストラットの断面図である。
【図5】血管内ステントの一部の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面と、(b)前記表面に配置されたコーティングと、を含む移植可能な医療装置において、
(i)前記表面の少なくとも一部に配置され、かつその内部に複数の孔を有する、金属酸化物又は金属からなる第一の材料と、
(ii)前記第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも一部に配置される第一のポリマーと、からなり、
前記第一の金属酸化物材料又は金属材料の孔の少なくとも幾らかに第一の治療剤が配置されており、かつ前記第一のポリマーはその内部に複数の孔を有する、移植可能な医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置は前記表面に隣接される外側領域を更に含み、前記外側領域はその内部に複数の孔を有する金属酸化物又は金属からなる第二の材料からなり、かつ前記第二の金属酸化物材料又は金属材料の孔の少なくとも幾らかには第二の治療剤が配置されている、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置は前記外側領域に隣接する内側領域を更に含み、前記内側領域は実質的に孔を有していない、装置。
【請求項4】
前記第一の金属酸化物材料又は金属材料と、前記第二の金属酸化物材料又は金属材料とは同じである、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置は、前記第一の金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に配置される第二のポリマーを更に含む、装置。
【請求項6】
前記ポリマーは、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリメタクリレート、スチレン−イソブチレンコポリマー及びポリ乳酸を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第一の金属酸化物材料又は金属材料は層の形態である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第一のポリマーは層の形態である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記金属材料は、金、白金、ステンレス鋼、チタン、タンタル、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム又はクロムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記金属酸化物材料は遷移金属の酸化物を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記金属酸化物の材料は、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン又は酸化ロジウムである、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第一の金属酸化物材料又は金属材料の孔は約1nm乃至約10μmの平均幅を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第一の治療剤は、抗再狭窄剤、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、成長因子、免疫抑制剤又は放射性化学物質を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記治療剤は、抗再狭窄剤を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記治療剤はパクリタキセルを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記治療剤は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス又はエベロリムスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
(a)表面と、同表面に隣接した外側領域と、
(b)前記外側領域に隣接した内側領域と、
(c)前記表面の少なくとも一部に配置された第一のポリマーと、を含む移植可能な医療装置において、
前記表面及び外側領域は、その内部に複数の孔を有する、金属酸化物又は金属からなる材料を含み、前記金属酸化物材料又は金属材料の孔の少なくとも幾らかに治療剤が配置されており、前記内側領域は実質的に孔を備えておらず、かつ前記第一のポリマーはその内部に複数の孔を有する、移植可能な医療装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置は、前記金属酸化物材料又は金属材料の少なくとも幾らかの孔に配置される第二のポリマーを更に含む、装置。
【請求項19】
前記第一のポリマー及び前記第二のポリマーは同一である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記ポリマーは、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−b−.イソブチレン−b−スチレン)及びポリ乳酸−グリコール酸を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項21】
前記第一のポリマーは層の形態である、請求項17に記載の装置。
【請求項22】
前記金属材料は、金、白金、ステンレス鋼、チタン、タンタル、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム又はクロムを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項23】
前記金属酸化物材料は遷移金属の酸化物を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項24】
前記金属酸化物の材料は、酸化タンタル、酸化チタン、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン又は酸化ロジウムである、請求項17に記載の装置。
【請求項25】
前記金属酸化物材料又は金属材料の孔は約1nm乃至約10μmの平均幅を有する、請求項17に記載の装置。
【請求項26】
前記第一のポリマーは、同第一のポリマーの孔に分配された第二の治療剤を含み、かつ前記第一の治療剤及び第二の治療剤は同じである、請求項17に記載の装置。
【請求項27】
前記第一の治療剤は、抗再狭窄剤、抗血栓形成剤、抗血管新生剤、抗増殖剤、抗生物質、成長因子、免疫抑制剤又は放射性化学物質を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項28】
前記治療剤は、抗再狭窄剤を含む、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記治療剤はパクリタキセルを含む、請求項17に記載の装置。
【請求項30】
前記治療剤は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス又はエベロリムスを含む、請求項17に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−531137(P2009−531137A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502926(P2009−502926)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/007488
【国際公開番号】WO2007/126768
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】