説明

多層配線基板及びその製造方法

【課題】低コストで基板強度を高めることができる多層配線基板を提供する。
【解決手段】コアレス配線基板10の主面12上には、ICチップ31を搭載するための複数の端子パッド27が設けられるとともに、裏面13上には外部基板との電気的接続を図るための複数のBGA用パッド41が設けられている。コアレス配線基板10では、裏面13を覆うようにソルダーレジスト42が形成され、ソルダーレジスト42に接着剤層51を介して樹脂製の補強板50が面接触状態で固定されている。ソルダーレジスト42、補強板50、及び接着剤層51には、BGA用パッド41に対応する位置に、開口部45,52,53が形成されている。ソルダーレジスト42の開口部45の径及び補強板50の開口部52の径が、接着剤層51の開口部53の径よりも小さくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア基板を有さず、導体層及び絶縁層を交互に積層して多層化した構造を有する多層配線基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのマイクロプロセッサ等として使用される半導体集積回路素子(ICチップ)は、近年ますます高速化、高機能化しており、これに付随して端子数が増え、端子間ピッチも狭くなる傾向にある。一般的にICチップの底面には多数の端子が密集してアレイ状に配置されており、このような端子群はマザーボード側の端子群に対してフリップチップの形態で接続される。ただし、ICチップ側の端子群とマザーボード側の端子群とでは端子間ピッチに大きな差があることから、ICチップをマザーボード上に直接的に接続することは困難である。そのため、通常はICチップをICチップ搭載用配線基板上に搭載してなるパッケージを作製し、そのパッケージをマザーボード上に搭載するという手法が採用される。
【0003】
この種のパッケージを構成するICチップ搭載用配線基板としては、コア基板の表面及び裏面にビルドアップ層を形成した多層配線基板が実用化されている。この多層配線基板において、コア基板は、例えば、補強繊維に樹脂を含浸させた樹脂基板(ガラスエポキシ基板など)が用いられている。そして、そのコア基板の剛性を利用して、コア基板の表面及び裏面に層間絶縁層と導体層とを交互に積層することにより、ビルドアップ層が形成されている。つまり、この多層配線基板において、コア基板は、補強の役割を果たしており、ビルドアップ層と比べて非常に厚く形成されている。また、コア基板には、表面及び裏面に形成されたビルドアップ層間の導通を図るための配線(具体的には、スルーホール導体など)が貫通形成されている。
【0004】
ところで、近年では、半導体集積回路素子の高速化に伴い、使用される信号周波数が高周波帯域となってきている。この場合、コア基板を貫通する配線が大きなインダクタンスとして寄与し、高周波信号の伝送ロスや回路誤動作の発生につながり、高速化の妨げとなってしまう。この問題を解決するため、ICチップ搭載用配線基板として、コア基板を有さないコアレス配線基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このコアレス配線基板は、比較的に厚いコア基板を省略することにより全体の配線長が短くなるため、高周波信号の伝送ロスが低減され、半導体集積回路素子を高速で動作させることが可能となる。
【0005】
上記コアレス配線基板は、コア基板を省略して製造されているため、その強度を十分に確保することができない。このため、ICチップを搭載する素子搭載面に枠体を接合して補強することにより、コアレス配線基板の強度が確保されている。この枠体は、ICチップを囲むように基板の外縁部に設けられている。また、特許文献1では、素子搭載面の反対側となる裏面側に、絶縁処理を施した金属板を接着固定し、前記枠体と金属板とでコアレス配線基板を挟み込むことにより、配線基板の強度を確保して配線基板の反りを防止するための技術が開示されている。このコアレス配線基板において、裏面側に設けられる補強用の金属板には、外部接続端子用パッドを露出させるための貫通孔が複数形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3664720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に開示されている従来のコアレス配線基板において、補強用の金属板は、外部接続端子用パッドなどの導体パターンが形成された最外層の樹脂絶縁層上に接着剤を使用して接合されている。従って、補強用の金属板を接合するためには、導体パターンの金属や樹脂絶縁層の樹脂に対して良好な接着性を有する接着剤を用いる必要がある。つまり、樹脂同士を接着するための樹脂専用接着剤などのように材料コストが比較的に安い汎用的な接着剤を用いた場合では十分な接合強度を得ることができない。さらに、補強用の金属板は、樹脂板と比較して加工性が悪く、材料コストも高くなってしまう。また仮に、金属板の代わりに樹脂製の補強板を用いた場合でも、導体パターンが形成された樹脂絶縁層上にその補強板を固定する必要があるため、十分な接着強度を得ることが困難である。
また、上記特許文献1のコアレス配線基板において、補強用の金属板の接合後には、その金属板に形成された貫通孔を介して外部接続端子用パッド上にはんだバンプが形成されている。つまり、補強用の金属板はソルダーレジストとしての役割を果たすため、特許文献1の配線基板には、ソルダーレジストは形成されていない。ところが、補強用の金属板は、ソルダーレジストとは異なり、接着剤を使用して配線基板に接合されている。このため、はんだバンプの形成時に加わる熱によって、接着剤が溶けて貫通孔の内側に漏れ、その接着剤がはんだバンプに不純物として混入してしまうといった問題が懸念される。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで基板強度を高めることができる多層配線基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、コア基板を有さず、導体層及び層間絶縁層を交互に積層して多層化した積層構造体であり、その主面上に半導体集積回路素子を搭載するための複数の表面側接続端子が設けられるとともに、前記主面の反対側にある裏面上に外部基板との電気的接続を図るための複数の裏面側接続端子が設けられた多層配線基板であって、前記複数の裏面側接続端子に対応する位置に複数のソルダーレジスト開口部を有し、前記裏面を覆うように形成されたソルダーレジストと、前記複数の裏面側接続端子に対する位置に複数の補強板開口部を有する非金属材料製の補強板と、前記複数の裏面側接続端子に対応する位置に複数の接着剤層開口部を有し、前記補強板を前記ソルダーレジストに対して面接触状態で固定させている接着剤層とを備え、前記ソルダーレジスト開口部の径及び前記補強板開口部の径が、前記接着剤層開口部の径よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする多層配線基板がある。
【0010】
従って、手段1の多層配線基板によると、非金属材料製の補強板がソルダーレジストに対して面接触状態で固定されているので、従来技術のように導体パターンが形成された樹脂絶縁層上に金属製の補強板を固定する場合と比較して、十分な接着強度を得ることができる。また、補強板は、非金属材料からなり加工性に優れるため、裏面側接続端子に対応する位置に補強板開口部を容易に形成することができ、さらに材料コストも低減することができる。さらに、ソルダーレジスト開口部の径及び補強板開口部の径が、接着剤層開口部の径よりも小さくなるように設定されているので、ソルダーレジスト開口部や補強板開口部の内側に接着剤層がはみだすことなく補強板を確実に固定することができる。従って、裏面側接続端子上にはんだバンプを設け、そのはんだバンプを介して外部基板に多層配線基板を実装する場合、溶融したはんだバンプが接着剤層に接触することがなく、接着剤成分がはんだバンプに混入するといった問題を回避することができる。
【0011】
前記補強板開口部の径が前記ソルダーレジスト開口部の径よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。このように、補強板開口部の径を小さくすることにより、補強板自体の剛性を確保することができるとともに、補強板による補強面積も十分に確保できる。さらに、多層配線基板の裏面において、熱膨張係数(CTE)のミスマッチが生じる領域を最小限に抑えることができ、多層配線基板の信頼性を高めることができる。
【0012】
前記補強板は合成樹脂を主体材料とするものであり、前記接着剤層は熱硬化性樹脂の硬化物であることが好ましい。前記ソルダーレジストは耐熱性に優れた樹脂材料で形成されているため、合成樹脂製の補強板を使用すれば、樹脂材料からなるソルダーレジストに対して確実に接着固定することができる。
【0013】
前記裏面側接続端子上には、はんだバンプまたは端子ピンが設けられる。このはんだバンプまたは端子ピンを介して裏面側接続端子と外部基板との電気的接続が図られる。
【0014】
前記はんだバンプをなす金属としては、搭載される電子部品の接続端子等の材質等に応じて適宜選択すればよいが、90Pb−10Sn、95Pb−5Sn、40Pb−60SnなどのPb−Sn系ハンダ、Sn−Sb系ハンダ、Sn−Ag系ハンダ、Sn−Ag−Cu系ハンダ、Au−Ge系ハンダ、Au−Sn系ハンダなどのハンダが挙げられる。
【0015】
また、前記端子ピンとしては、Cu合金又は鉄・ニッケル・コバルト合金等のリード端子を用いることができ、はんだ付けなどの手法で裏面側接続端子上に固定される。
【0016】
前記ソルダーレジスト開口部の径は、例えば前記接着剤層開口部の径よりも50μm以上小さくなるように設定されることがよい。このようにすることで、接着剤層のはみだしをより確実に防止しつつ、補強板を確実に固定することができる。同様の理由で、前記補強板開口部の径は、例えば前記接着剤層開口部の径よりも50μm以上小さくなるように設定されることがよい。
【0017】
また、補強板における補強板開口部は、非接着面側から接着面側に行くほど径が小さくなっていることがよい。このようにすれば、基板裏面に対する補強板の接着面積を十分に確保することができ、多層配線基板の剛性が向上する。また、多層配線基板の裏面において、補強板による補強面積を増やすことにより、熱膨張係数(CTE)のミスマッチが生じる領域を減少させることができ、多層配線基板の信頼性を高めることができる。
【0018】
また、前記裏面側接続端子上にははんだボールが接合されるとともに、前記補強板開口部の最大径が前記はんだボールの直径よりも大きく、かつ、前記補強板開口部の最小径が前記はんだボールの直径よりも小さくなるように設定されていることが好ましい。このようにすると、補強板の補強板開口部を介して裏面側接続端子上にははんだボールを確実に接合できるとともに、補強板の接着面積を十分に確保することができる。
【0019】
なお、本発明のコアを有さない多層配線基板とは、「主に同一の層間絶縁層を主体として構成されている多層配線基板」や「同一方向に拡径したビアのみにより各導体層を接続している多層配線基板」を挙げることができる。
【0020】
前記層間絶縁層は、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。前記層間絶縁層の形成材料の好適例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂等が挙げられる。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料、あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。
【0021】
前記導体層は、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって、層間絶縁層上にパターン形成される。前記導体層の形成に用いられる金属材料の例としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、スズ、スズ合金などが挙げられる。
【0022】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、前記多層配線基板の製造方法であって、導体層及び層間絶縁層を交互に積層して多層化した積層構造体の裏面を覆うようソルダーレジストを形成し、前記ソルダーレジストにソルダーレジスト開口部を形成するソルダーレジスト形成工程と、複数の補強板開口部を有し、未硬化状態の接着剤層を片側面に有し、接着剤層開口部の径が補強板開口部の径及び前記ソルダーレジスト開口部の径よりも大きくなるように設定された非金属材料製の補強板を準備する補強板準備工程と、前記接着剤層を介して前記補強板を前記ソルダーレジストに対して面接触状態で固定する補強板接着工程と、未硬化状態の前記接着剤層をはんだ溶融温度よりも低い温度で硬化させる硬化工程とを含む多層配線基板の製造方法がある。
【0023】
従って、手段2の多層配線基板の製造方法によると、非金属材料製の補強板がソルダーレジストに対して面接触状態で固定されるので、従来技術のように配線パターンが形成された樹脂絶縁層上に金属製の補強板を固定する場合と比較して、十分な接着強度を得ることができる。また、補強板準備工程で準備される補強板は、非金属材料からなり加工性に優れるため、裏面側接続端子に対応する位置に補強板開口部を容易に形成することができ、材料コストも低減することができる。さらに、ソルダーレジスト開口部の径及び補強板開口部の径が、接着剤層開口部の径よりも小さくなるように設定されているので、ソルダーレジスト開口部や補強板開口部の内側に接着剤層がはみだすことなく補強板を確実に固定することができる。従って、裏面側接端子上にはんだバンプを設け、そのはんだバンプを介して外部基板に多層配線基板を実装する場合、溶融したはんだバンプが接着剤層に接触することがなく、接着剤成分がはんだバンプに混入するといった問題を回避することができる。
【0024】
前記裏面側接続端子上にはんだバンプまたは端子ピンを設ける場合、そのはんだバンプまたは端子ピンの配設工程を、前記補強板接着工程よりも先に実施することが好ましい。ここで、はんだバンプまたは端子ピンの配設工程を補強板接着工程よりも後に実施すると、その配設工程におけるはんだ接合の熱ストレスが補強板や接着剤層に加わる。これに対して、はんだバンプまたは端子ピンの配設工程を補強板接着工程よりも先に実施すれば、そのはんだ接合による熱ストレスの問題を回避することができる。なお、前記補強板や接着剤層を耐熱性に優れた材料で形成する場合には、前記補強板接着工程の後に、はんだバンプまたは端子ピンの配設工程を行うようにしてもよい。
【0025】
前記接着剤層は、前記補強板準備工程において前記補強板の片側面に仮接着された後、前記補強板接着工程にてソルダーレジストに接着されている。これとは逆に、ソルダーレジスト側に接着剤層を仮接着した後に補強板を接着する場合、裏面側接続端子上のはんだバンプまたは端子ピンが邪魔になり、接着剤層の仮接着が困難となる。これに対して、前記補強板には、はんだバンプまたは端子ピンのような凹凸がないため、前記補強板準備工程においてその補強板の片面側に接着剤層を容易に仮接着することができる。さらに、前記硬化工程では、未硬化状態の接着剤層がはんだ溶融温度よりも低い温度で硬化されるので、裏面側接続端子上のはんだバンプや裏面側接続端子に端子ピンを接合しているはんだ接合部が溶融するといった問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施の形態のコアレス配線基板の概略構成を示す断面図。
【図2】コアレス配線基板の要部を示す拡大断面図。
【図3】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図4】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図5】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図6】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図7】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図8】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図9】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図10】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図11】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図12】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図13】コア配線基板の製造方法の説明図。
【図14】別の実施の形態のコアレス配線基板の概略構成を示す断面図。
【図15】別の実施の形態のコア配線基板の要部を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施の形態のコアレス配線基板(多層配線基板)の概略構成を示す断面図である。
【0028】
図1に示されるように、本実施の形態のコアレス配線基板10は、コア基板を有さず、エポキシ樹脂からなる4層の樹脂絶縁層(層間絶縁層)21,22,23,24と銅からなる導体層26とを交互に積層して多層化した積層構造体である。樹脂絶縁層21〜24は、同一の厚さ及び材料からなる層間絶縁層であり、エポキシ樹脂からなるシート状のビルドアップ材を用いて形成されている。
【0029】
コアレス配線基板10の主面12上(第4層の樹脂絶縁層24の表面上)には、端子パッド27(表面側接続端子)がアレイ状に配置されている。さらに、樹脂絶縁層24の表面はソルダーレジスト28によってほぼ全体的に覆われている。このソルダーレジスト28には、各端子パッド27を露出させる開口部29が形成されている。端子パッド27の表面上には、複数のはんだバンプ30が配設されている。各はんだバンプ30は、矩形平板状をなすICチップ31(半導体集積回路素子)の面接続端子32に電気的に接続されている。なお、各端子パッド27及び各はんだバンプ30が形成されている領域は、ICチップ31を搭載可能なICチップ搭載領域33である。
【0030】
コアレス配線基板10の裏面13上(第1層の樹脂絶縁層21の下面上)には、裏面側接続端子としてのBGA(ボールグリッドアレイ)用パッド41がアレイ状に配設されている。また、樹脂絶縁層21の下面は、ソルダーレジスト42によってほぼ全体的に覆われている。ソルダーレジスト42において、BGA用パッド41に対応する位置には、BGA用パッド41を露出させる開口部45(ソルダーレジスト開口部)が形成されている。さらに、樹脂絶縁層21,22,23,24には、それぞれビア穴46及びビア導体47が設けられている。各ビア穴46は、逆円錐台形状をなし、各樹脂絶縁層21〜24に対してYAGレーザまたは炭酸ガスレーザを用いた穴あけ加工を施すことで形成される。各ビア導体47は、同一方向(図では上方向)に拡径した導体であって、各導体層26、端子パッド27、及びBGA用パッド41を相互に電気的に接続している。
【0031】
本実施の形態のコアレス配線基板10において、ソルダーレジスト42には、補強板50が接着剤層51を介して面接触状態で接着固定されている。補強板50としては、厚さが0.5mm程度の非金属材料製の板材、例えば、エポキシ樹脂とガラス繊維とからなるガラスエポキシ基板が用いられる。この補強板50において、複数のBGA用パッド41に対応する位置に複数の開口部52(補強板開口部)が形成されている。
【0032】
接着剤層51は、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂の硬化物であり、例えば、エポキシ樹脂からなるフィルム状の接着シートを硬化させることで形成される。接着剤層51において、複数のBGA用パッド41に対応する位置に複数の開口部53(接着剤開口部)が形成されている。
【0033】
本実施の形態において、複数のBGA用パッド41は、平面視形状が円形となるよう形成され、ソルダーレジスト42、補強板50、及び接着剤層51に形成される開口部45,52,53も平面視形状が円形となるよう形成されている。
【0034】
図2に示されるように、本実施の形態のコアレス配線基板10において、補強板50の開口部52の径D1及びソルダーレジスト42の開口部45の径D2が、接着剤層51の開口部53の径D3よりも小さくなるよう設定されている。また、補強板50の開口部52の径D1がソルダーレジスト42の開口部45の径D2よりも小さくなるように設定されている。つまり、補強板50の開口部52の径D1が最も小さく、ソルダーレジスト42の開口部45の径D2、接着剤層51の開口部53の径D3の順に大きくなるように各開口部45,52,53が形成されている。
【0035】
また、各BGA用パッド41の表面上には、各開口部45,52,53を介してはんだバンプ55が配設されており、各はんだバンプ55により、図1に示されるコアレス配線基板10は図示しないマザーボード上に実装される。
【0036】
上記構成のコアレス配線基板10は例えば以下の手順で作製される。
【0037】
本実施の形態では、十分な強度を有する支持基板(ガラスエポキシ基板など)を準備し、その支持基板上に、コアレス配線基板10の樹脂絶縁層21〜24及び導体層26をビルドアップしていく方法を採用している。図3〜図13は、その製造方法を示す説明図であり、支持基板の上面側に形成される樹脂絶縁層21〜24及び導体層26等を示している。なお、図示を省略しているが支持基板の下面側にも樹脂絶縁層21〜24及び導体層26が同様に形成される。
【0038】
詳述すると、図3に示されるように、支持基板60上に、エポキシ樹脂からなるシート状の絶縁樹脂基材を半硬化の状態で貼り付けることにより下地樹脂絶縁層61を形成する。そして、図4に示されるように、その下地樹脂絶縁層61の上面に、積層金属シート体62を配置する。ここで、半硬化の状態の下地樹脂絶縁層61上に積層金属シート体62を配置することにより、以降の製造工程で積層金属シート体62が下地樹脂絶縁層61から剥がれない程度の密着性が確保される。積層金属シート体62は、2枚の銅箔62a,62bを剥離可能な状態で密着させてなる。具体的には、金属めっき(例えば、クロムめっき)を介して各銅箔62a,62bを積層することで積層金属シート体62が形成されている。
【0039】
その後、図5に示されるように、積層金属シート体62を包むようにシート状の絶縁樹脂基材63を配置し、真空圧着熱プレス機(図示しない)を用いて真空下にて加圧加熱することにより、絶縁樹脂基材63を硬化させて第1層の樹脂絶縁層21を形成する。ここで、樹脂絶縁層21は、積層金属シート体62と密着するとともに、その積層金属シート体62の周囲領域において下地樹脂絶縁層61と密着することで、積層金属シート体62を封止する。
【0040】
そして、図6に示されるように、レーザ加工を施すことによって樹脂絶縁層21の所定の位置にビア穴46を形成し、次いで各ビア穴46内のスミアを除去するデスミア処理を行う。その後、従来公知の手法に従って無電解銅めっき及び電解銅めっきを行うことで、各ビア穴46内にビア導体47を形成するとともに、樹脂絶縁層21上に導体層26を形成する。さらに、従来公知の手法(例えばセミアディティブ法)によってエッチングを行うことで、樹脂絶縁層21上に導体層26をパターン形成する(図7参照)。
【0041】
第2層〜第4層の樹脂絶縁層22〜23及び導体層26についても、上述した第1層の樹脂絶縁層21及び導体層26と同様の手法によって形成し、樹脂絶縁層21上にビルドアップしていく。そして、端子パッド27が形成された樹脂絶縁層24上に感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト28を形成する。次に、所定のマスクを配置した状態で露光及び現像を行い、ソルダーレジスト28に開口部29をパターニングする。以上の製造工程によって、支持基板60上に積層金属シート体62、樹脂絶縁層21〜24、及び導体層26を積層した積層体70を形成する(図8参照)。この積層体70において、積層金属シート体62上に位置する領域がコアレス配線基板10となるべき配線積層部20(積層構造体)である。
【0042】
この積層体70をダイシング装置(図示略)により切断し、積層体70における配線積層部20の周囲領域を除去する。この際、図8に示すように、配線積層部20とその周囲部71との境界において、配線積層部20の下方にある下地樹脂絶縁層61及び支持基板60ごと切断する。この切断によって、樹脂絶縁層21にて封止されていた積層金属シート体62の外縁部が露出した状態となる。つまり、周囲部71の除去によって、下地樹脂絶縁層61と樹脂絶縁層21との密着部分が失われる。この結果、配線積層部20と支持基板60とは積層金属シート体62のみを介して連結した状態となる。
【0043】
ここで、図9に示されるように、積層金属シート体62における2枚の銅箔62a,62bの界面にて剥離して、配線積層部20を支持基板60から分離する。そして、図10に示されるように、配線積層部20(樹脂絶縁層21)の裏面13(下面)上にある銅箔62aをエッチングによりパターンニングして、BGA用パッド41を形成する。その後、図11に示されるように、BGA用パッド41が形成された樹脂絶縁層21上に感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、配線積層部20の裏面13を覆うようにソルダーレジスト42を形成する(ソルダーレジスト形成工程)。次に、所定のマスクを配置した状態で露光及び現像を行い、ソルダーレジスト42に開口部45をパターニングする。
【0044】
そして、配線積層部20の主面12側に形成されている複数の端子パッド27上にはんだバンプ30を形成する。具体的には、図示しないはんだボール搭載装置を用いて各端子パッド27上にはんだボールを配置した後、はんだボールを所定の温度に加熱してリフローすることにより、各端子パッド27上にはんだバンプ30を形成する。同様に、配線積層部20の裏面13側に形成されている複数のBGA用パッド41上にもはんだバンプ55を形成する。
【0045】
次いで、図12に示されるように、複数の開口部52を有し、片面側に未硬化状態の接着剤層51を有する補強板50を準備する(補強板準備工程)。ここで、補強板50の開口部52は、例えば、従来周知のドリル加工装置を用いたドリル加工により形成される。また、接着剤層51の開口部53は、例えば、フィルム状の接着シートに対して従来周知の打ち抜き金型を用いた打ち抜き加工により形成される。なお、接着剤層51の開口部53は補強板50の開口部52の径よりも大きくなるよう形成されている。
【0046】
そして、図13に示されるように、接着剤層51を介して補強板50をソルダーレジスト42に対して面接着状態で固定する(補強板接着工程)。その後、はんだバンプ55のはんだ溶融温度(例えば、210℃)よりも低い温度(例えば、150℃)で加熱して未硬化状態の接着剤層51を硬化させる(硬化工程)。これにより、図1に示すコアレス配線基板10が得られる。
【0047】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施の形態のコアレス配線基板10では、ガラスエポキシ基板からなる樹脂製の補強板50がソルダーレジスト42に対して面接触状態で接着固定されるので、従来技術のように導体パターンが形成された樹脂絶縁層上に金属製の補強板を接着固定する場合と比較して、十分な接着強度を得ることができる。また、補強板50は、樹脂材料からなり加工性に優れるため、BGA用パッド41に対応する位置に開口部52を容易に形成することができ、材料コストも低減することができる。さらに、補強板50の開口部52の径D1及びソルダーレジスト42の開口部45の径D2が、接着剤層51の開口部53の径D3よりも小さくなるように設定されているので、ソルダーレジスト42の開口部45や補強板50の開口部52の内側に接着剤層51がはみだすことなく補強板50を確実に固定することができる。従って、BGA用パッド41上のはんだバンプ55が接着剤層51に接触することがなく、コアレス配線基板10をマザーボードに実装する際に、溶融したはんだバンプ55に接着剤成分が混入するといった問題を回避することができる。
【0049】
(2)本実施の形態のコアレス配線基板10では、BGA用パッド41上にはんだバンプ55を設ける工程を、補強板50の接着工程よりも先に実施している。そして、硬化工程では、未硬化状態の接着剤層51がはんだ溶融温度よりも低い温度で硬化されている。このようにすると、接着剤層51の硬化工程において、BGA用パッド41に設けたはんだバンプ55が溶融するといった問題を回避することができる。
【0050】
(3)本実施の形態のコアレス配線基板10の場合、補強板50の開口部52の径D1がソルダーレジスト42の開口部45の径D2よりも小さくなるように設定されている。このように補強板50の開口部52の径D1を小さくすることにより、補強板50自体の剛性を確保することができるとともに、補強板50による補強面積も十分に確保できる。この結果、コアレス配線基板10にICチップ31を搭載する工程において、コアレス配線基板10が撓んだり破損したりすることなく、その配線基板10の位置決めを確実に行うことができる。また、コアレス配線基板10の裏面13において、熱膨張係数(CTE)のミスマッチが生じる領域を抑えることができ、コアレス配線基板10の信頼性を高めることができる。
【0051】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・上記実施の形態では、コアレス配線基板10のパッケージ形態はBGA(ボールグリッドアレイ)であるが、PGA(ピングリッドアレイ)のパッケージ形態を採用してもよい。図14には、そのコアレス配線基板10Aを示している。コアレス配線基板10Aにおいては、裏面13上(第1層の樹脂絶縁層21の下面上)には、裏面側接続端子としてのPGA用パッド41Aがアレイ状に配設されており、各PGA用パッド41A上に端子ピン56がはんだ接合されている。なお、コアレス配線基板10Aは、PGA用パッド41Aに端子ピン56が設けられている点以外は、コアレス配線基板10と同様の構成となっている。
【0053】
具体的には、図15に示されるように、端子ピン56は、軸部57と軸部57よりも径の大きい頭部58とを有するネイルヘッド形状をなし、頭部58がはんだ接合部59を介してPGA用パッド41Aに接続されている。また、端子ピン56の軸部57が補強板50の開口部52に挿通され、その先端が補強板50の下面から突出している。補強板50は、接着剤層51を介してソルダーレジスト42に面接触状態で固定されている。このコアレス配線基板10Aにおいても、補強板50の開口部52の径D1及びソルダーレジスト42の開口部45の径D2が、接着剤層51の開口部53の径D3よりも小さくなるよう設定されている。従って、ソルダーレジスト42における開口部45や補強板50における開口部52の内側に接着剤層51がはみだすことなく補強板50を確実に固定することができる。また、補強板50の開口部52の径D1がソルダーレジスト42の開口部45の径D2よりも小さくなるように設定されている。このように、補強板50の開口部52の径D1を小さくすることにより、補強板50自体の剛性を確保することができるとともに、補強板50による補強面積も十分に確保できる。
【0054】
・上記実施の形態では、BGA用パッド41上にはんだバンプ55を形成した後に、補強板接着工程及び硬化工程を実施して補強板50をコアレス配線基板10に固定するものであったが、これとは逆に、補強板50の固定後に、BGA用パッド41上にはんだバンプ55を形成するようにしてもよい。
【0055】
・上記実施の形態のコアレス配線基板10,10Aにおいて、補強板50は、ガラスエポキシ基板を用いて形成されていたが、これに限定されるものではない。具体的には、例えば、絶縁性を維持できる程度の少量の金属粉(例えば、銅フィラー)を合成樹脂材料に混入して補強板50を形成することで、補強板50の放熱性を高めるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0056】
10,10A…多層配線基板としてのコアレス配線基板
12…主面
13…裏面
20…積層構造体としての配線積層部
21〜24…層間絶縁層としての樹脂絶縁層
26…導体層
27…表面側接続端子としての端子パッド
31…半導体集積回路素子としてのICチップ
41…裏面側接続端子としてのBGA用パッド
41A…裏面側接続端子としてのPGA用パッド
42…ソルダーレジスト
45…ソルダーレジスト開口部
50…補強板
51…接着剤層
52…補強板開口部
53…接着剤層開口部
55…はんだバンプ
56…端子ピン
D1…補強板開口部の径
D2…ソルダーレジスト開口部の径
D3…接着剤層開口部の径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基板を有さず、導体層及び層間絶縁層を交互に積層して多層化した積層構造体であり、その主面上に半導体集積回路素子を搭載するための複数の表面側接続端子が設けられるとともに、前記主面の反対側にある裏面上に外部基板との電気的接続を図るための複数の裏面側接続端子が設けられた多層配線基板であって、
前記複数の裏面側接続端子に対応する位置に複数のソルダーレジスト開口部を有し、前記裏面を覆うように形成されたソルダーレジストと、
前記複数の裏面側接続端子に対する位置に複数の補強板開口部を有する非金属材料製の補強板と、
前記複数の裏面側接続端子に対応する位置に複数の接着剤層開口部を有し、前記補強板を前記ソルダーレジストに対して面接触状態で固定させている接着剤層と
を備え、前記ソルダーレジスト開口部の径及び前記補強板開口部の径が、前記接着剤層開口部の径よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする多層配線基板。
【請求項2】
前記補強板開口部の径が前記ソルダーレジスト開口部の径よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
前記補強板は合成樹脂を主体材料とするものであり、前記接着剤層は熱硬化性樹脂の硬化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層配線基板。
【請求項4】
前記裏面側接続端子上には、はんだバンプまたは端子ピンが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項5】
前記ソルダーレジスト開口部の径が前記接着剤層開口部の径よりも50μm以上小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記補強板における非接着面側から接着面側に行くほど前記補強板開口部の径が小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多層配線基板。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多層配線基板の製造方法であって、
導体層及び層間絶縁層を交互に積層して多層化した積層構造体の裏面を覆うようソルダーレジストを形成し、前記ソルダーレジストにソルダーレジスト開口部を形成するソルダーレジスト形成工程と、
複数の補強板開口部を有し、未硬化状態の接着剤層を片側面に有し、接着剤層開口部の径が補強板開口部の径及び前記ソルダーレジスト開口部の径よりも大きくなるように設定された非金属材料製の補強板を準備する補強板準備工程と、
前記接着剤層を介して前記補強板を前記ソルダーレジストに対して面接触状態で固定する補強板接着工程と、
未硬化状態の前記接着剤層をはんだ溶融温度よりも低い温度で硬化させる硬化工程と
を含む多層配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−260335(P2009−260335A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77500(P2009−77500)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】