多段構造のアクチュエータ
【課題】長尺の案内レールを使用することなく被駆動体をロングストロークにわたって搬送可能とする。
【解決手段】この多段構造のアクチュエータ1は、複数の駆動ユニット10A〜10Dそれぞれが、二つのボールねじ11A,11Bを有している。二つのボールねじ11A,11Bは、相互のナット5,5が逆方向に駆動され、また、隣り合う駆動ユニット10A〜10Dのナット5,5相互が連結されている。さらに、各駆動ユニット10A〜10Dには、案内レール2が取り付けられ、これを支持する複数の案内部材3は、各駆動ユニット10A〜10D毎に軸方向に離間してベースBに配置されている。そして、各案内レール2は、各駆動ユニット10A〜10Dの移動に伴って、複数の案内部材3に順次に受け渡されるようになっている。
【解決手段】この多段構造のアクチュエータ1は、複数の駆動ユニット10A〜10Dそれぞれが、二つのボールねじ11A,11Bを有している。二つのボールねじ11A,11Bは、相互のナット5,5が逆方向に駆動され、また、隣り合う駆動ユニット10A〜10Dのナット5,5相互が連結されている。さらに、各駆動ユニット10A〜10Dには、案内レール2が取り付けられ、これを支持する複数の案内部材3は、各駆動ユニット10A〜10D毎に軸方向に離間してベースBに配置されている。そして、各案内レール2は、各駆動ユニット10A〜10Dの移動に伴って、複数の案内部材3に順次に受け渡されるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロングストロークの位置決めに好適な多段構造のアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロングストロークの位置決めに使用し得るアクチュエータとしては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。同文献に記載の技術では、被駆動体としての可動テーブルを、案内ユニットを介してベース上に設け、この可動テーブルを、一つのモータによってスライド移動される二つのナットで駆動している。なお、案内ユニットの案内レールは、上記ベース側に取り付けられている。
【0003】
また、ロングストロークの位置決めを目的とした他のアクチュエータとして、特許文献2に記載の技術も知られている。同文献に記載の技術は、上下方向に大きなストロークが必要な場合に好適な技術であって、上下に配設された2軸のボールねじをサーボモータで駆動する駆動ユニットを備え、これをスライド機構毎に別個の案内ユニットを用いた2段の多段構造とすることで被駆動体に対しロングストロークを得ている。
【特許文献1】特開2003−127044号公報(図2)
【特許文献2】特開2006−102886号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、案内ユニットの案内レールをベースに取り付けているため、案内レールの長さは、移動するストローク分の長さに可動テーブルの長さを加えただけ必要となる。そのため、特許文献1に記載の技術は、1系統のみのスライド機構であれば特に問題はないものの、これを多段構造とした場合には、段数を増やすに従ってストロークが長くなる。したがって、敷設する案内レールが非常に長くなってしまうという問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献2に記載の技術では、スライド機構毎に別個の案内ユニットを用いているので、1つのスライド機構の案内レールはボールねじと同ストロークでよい。しかし、特許文献2に記載の技術は、上下移動の用途に使用する場合には問題ないものの、水平移動の用途に使用する場合には、スライド機構が片持ちになってしまう。そのため、ロングストロークになるほど重力の影響によって案内ユニットに対応する案内部材に過大なモーメント荷重がかかる。また、これが更に多段構造(例えば4段構造)となった場合には、水平方向で自重を支えることが困難なので、駆動ユニットを支えるために別途に長尺の案内ユニットが必要となる。したがって、敷設する案内レールが非常に長くなってしまうという問題を解決することができない。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、長尺の案内ユニット(案内レール)を使用することなく被駆動体をロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めを可能とし得る多段構造のアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間してベース上に配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっていることを特徴としている。
【0008】
第一の発明に係る多段構造のアクチュエータによれば、各駆動ユニットと一体に移動する案内レールを各駆動ユニットに取り付け、案内レールを保持する案内部材をベースに各駆動ユニット毎に軸方向に複数配置し、案内レールは、案内部材によって軸方向にスライド移動可能に支持されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って離間配置された案内部材に順次に受け渡されるので、長尺の案内レールを使用することなく、ロングストロークに亘って搬送および位置決めが可能である。
【0009】
ここで、上記第一の発明に係る多段構造のアクチュエータによれば、各駆動ユニットを二つのボールねじ(左右ねじ含む)を1つのモータで駆動し、全ての駆動ユニットには案内レールが付設されており、軸方向に複数配置された案内部材によってベース上で順次に受け渡されるため、多段構造とした場合に、ストロークが長くなるにつれ、配置される案内部材の数もそれに応じて多数必要となる。そこで、本発明のうち第二の発明は、ストロークが長くなった場合であっても、配置される案内部材の数を少なくし得るものである。
【0010】
すなわち、本発明のうち第二の発明は、複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間して配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結され、1段目と最終段目の駆動ユニットは、これに付設される案内レールに対応する案内部材が、当該1段目と最終段目の駆動ユニット毎にその軸方向に離間してベース上に複数配置されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっており、さらに、隣り合う駆動ユニット相互間には、前記案内ユニットが、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されていることを特徴としている。
【0011】
第二の発明に係る多段構造のアクチュエータによれば、多段構造の両端に位置することになる1段目と最終段目の駆動ユニットは、これと一体に移動する案内レールを駆動ユニットに取り付け、その案内レールを支持する複数の案内部材をベースに軸方向に配置することで、上記第一の発明に係る多段構造のアクチュエータ同様に、両端に位置する駆動ユニットは、その移動に伴い案内レールが案内部材に順次に支持される。したがって、長尺の案内レールを使用することなく、ロングストロークに亘って搬送および位置決めが可能である。
【0012】
そして、隣り合う駆動ユニット相互間には、前記案内ユニットが、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されているので、隣り合う駆動ユニット同士で相互を支持することができる。そのため、第一の発明に係る多段構造のアクチュエータに比較して、1段目と最終段目以外の他の駆動ユニットに対応する案内部材の個数を少なくすることができる。したがって、上記第一の発明に係る多段構造のアクチュエータに比べて、多数の案内部材を使用することなく、ロングストロークに亘って搬送および位置決めが可能である。
【0013】
なお、上記第一ないし第二の発明に係る多段構造のアクチュエータにおいて、前記各駆動ユニットの二つのボールねじは、前記一つのモータによってねじ軸回転で駆動され、互いのねじ溝のねじれ方向が同じ場合には、ボールねじのナットを互いに逆方向に回転させ、互いのねじ溝のねじれ方向が逆の場合には、ボールねじのナットを互いに同方向に回転させてナット相互を逆方向に移動させる構成であれば、本発明に係る多段構造のアクチュエータの駆動ユニットとして好適に用いることができる。
【0014】
また、上記第一ないし第二の発明に係る多段構造のアクチュエータにおいて、例えば、前記各案内ユニットは、前記案内レールと前記案内部材との間に予圧が付与されていれば、案内部材が案内レールを隙間なく支持することによってユニットの振動を抑える上でより好適であり、また、静音化を図る上で好ましい。さらに、このような構成とすれば、駆動ユニットの軸直角方向の剛性が上がるので、隣り合う駆動ユニットのナットからモーメント力が発生した場合においても、軸方向に換算した際の位置決め精度を向上させることができる。
【0015】
また、上記第一ないし第二の発明に係る多段構造のアクチュエータにおいて、例えば、前記各案内レールは、対応する案内部材と接触する面に、当該案内レールが案内部材に進入する際に徐々に荷重がかかるように自身を導く傾斜面を有していれば、案内レールが案内部材に受け渡される際に、その受け渡しをより円滑にする上で好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明によれば、長尺の案内レールを使用することなく被駆動体をロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めを可能とし得る多段構造のアクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る多段構造のアクチュエータの実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、4つの駆動ユニットを用いて多段構造を構成した例である。
まず、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第一実施形態について図1ないし図2を適宜参照しつつ詳しく説明する。なお、図1は本発明に係る多段構造のアクチュエータの第一実施形態の平面図である。また、図2は、図1の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットを説明する図であり、同図(a)はその正面図、また同図(b)は右側面図である。
【0018】
図1に示すように、この多段構造のアクチュエータ1は、複数の駆動ユニット10A,10B,10C,10Dと、その複数の駆動ユニット10A〜10Dをそれぞれ案内する複数の案内ユニット20・・・とを備えて構成されている。複数の駆動ユニット10A〜10Dは、いずれも同じ構成を有しており、図2に示すように、各駆動ユニット10A〜10Dは、一つのサーボモータ8と、そのサーボモータ8によって同時に駆動される二つのボールねじ11A,11Bとを有する。各ボールねじ11A,11Bは、ねじ軸4と、これに多数のボール(不図示)を介して外嵌するナット5とを有し、ボールねじ11A,11B相互のナット5,5は、互いに逆方向に移動されるように構成されている。
【0019】
詳しくは、図2に示すように、各駆動ユニット10A〜10Dは、3つのハウジング14,15,16を備えている。モータ側のモータハウジング14は、サーボモータ8、カップリング17および支持軸受18を有する。そして、同図左のボールねじ11Aは、そのねじ軸4が、このモータハウジング14内のカップリング17を介してサーボモータ8の出力軸に連結されている。また、中央の連結ハウジング15は、二つのボールねじ11A,11B間に設けられ、二つのボールねじ11A,11B相互のねじ軸4は、この連結ハウジング15内のカップリング17を介して同軸上に直列に接続されるとともに、両端の二つの支持軸受18で回転自在に支持されている。さらに、モータとは反対側の支持ハウジング16は、ボールねじ11Bのねじ軸端を支持軸受18で回転自在に支持している。
【0020】
そして、上記二つのボールねじ11A,11Bのうち、同図左のボールねじ11Aのねじ溝は右ねじであり、一方、同図右のボールねじ11Bのねじ溝は左ねじになっており、サーボモータ8によってボールねじ11Aが駆動されると、これに直列に接続されたボールねじ11Bも同時に駆動され、これにより、二つのボールねじ11A,11B相互のナット5,5は、互いに逆方向に移動されるようになっている。ここで、本実施形態の例では、二つのボールねじ11A,11Bは、支持構造として連結ハウジング15を相互間に設けたことにより、単に長尺のボールねじ1本で構成した場合に比べて、ねじ軸の固有振動に伴う危険速度回転数を高く設定することを可能としている。
【0021】
そして、図1に示すように、上記駆動ユニット10A〜10Dは、ベースB上に並列に配置され、隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結されている。具体的には、図1での最下のユニットから順に、第一駆動ユニット10A、第二駆動ユニット10B、第三駆動ユニット10C、第四駆動ユニット10Dとすると、1段目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aは、その右側のナット5がベースBに対して固定腕7によって固定されている。また、第一駆動ユニット10Aの左側のナット5は、第二駆動ユニット10Bの左側のナット5に連結腕6によって連結されている。さらに、第二駆動ユニット10Bの右側のナット5は、第三駆動ユニット10Cの右側のナット5に連結腕6によって連結されている。以下同様に最終段目の駆動ユニットである第四駆動ユニット10Dまで隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結され、最終段目の第四駆動ユニット10Dの右側のナット5は、被駆動体Aに対して被駆動体連結腕12によって連結されるようになっている。
【0022】
さらに、図1および図2に示すように、上記各案内ユニット20は、一つの案内レール2と、複数の案内部材3(この例では8個の案内部材3)とを有している。案内レール2は、各駆動ユニット10A〜10Dにこれと一体に移動するように付設されており、本実施形態の例では、案内レール2は、各駆動ユニット10の3つのハウジング14,15,16の下面に直接固定され、3つのハウジング14,15,16相互を一体に連結している。そして、複数の案内部材3は、各駆動ユニット10A〜10D毎に、前記軸方向に離間してベースB上に配置されており、対応する一つの案内レール2をその軸方向にスライド移動可能に支持するようになっている。
【0023】
ここで、複数の案内部材3が軸方向に離間して配置された全体の長さL1(図1参照)は、一つの案内レール2の全長L2(図2参照)よりも長くなっており、本実施形態の例では、8個の案内部材3のうち、隣り合う5つの案内部材3によって案内レール2が支持される。そして、駆動ユニット10が軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3に順次に受け渡されるようになっている。なお、本実施形態では、案内部材3としては、使用する案内レール2に応じて、転動体にボールやコロを用いた直動案内装置のスライダ(転動体脱落防止仕様)を用いた。
【0024】
次に、上記第一実施形態の作用および効果について説明する。
この第一実施形態の多段構造のアクチュエータ1によれば、上記構成を有することにより、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cについてナット5,5間を広げ、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dについてナット5,5間を縮めるように駆動することで、図1において、多段構造のアクチュエータ1全体として同図左方向に移動することができる。また逆に、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cについてナット5,5間を縮め、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dについてナット5,5間を広げるように駆動することで、多段構造のアクチュエータ1全体として同図右方向に移動することができる。したがって、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結すれば、被駆動体Aをロングストロークにわたって搬送することができる。
【0025】
そして、この多段構造のアクチュエータ1によれば、各駆動ユニット10A,10B,10C,10Dと一体に移動する案内レール2を各駆動ユニット10A〜10Dに取り付け、案内レール2を保持する案内部材3をベースBに各駆動ユニット10A〜10D毎に軸方向に複数配置し、案内レール2は案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されるとともに、各案内レール2が各駆動ユニット10A〜10Dの移動に伴って離間配置された案内部材3に順次に受け渡される構成としたので、長尺の案内レールを使用することなく被駆動体をロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めが可能である。
【0026】
次に、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第二実施形態について図3ないし図4を適宜参照しつつ詳しく説明する。なお、図3は、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第二実施形態の平面図である。また、図4は、図3の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、および右側面図(b)である。なお、上記第一実施形態と同様または対応する構成には同一の符号を付し、その説明については適宜省略する。
【0027】
この第二の実施形態の多段構造のアクチュエータは、複数の駆動ユニット10A〜10Dの二つのボールねじ11A,11Bを、上下に並行して配置した点が上記第一実施形態と異なっている。
すなわち、図4に示すように、この第二の実施形態の多段構造のアクチュエータ1では、複数の駆動ユニット10A〜10Dは、本実施形態においては、二つのボールねじ11A,11Bとして、同じねじれ方向のねじ溝をもつボールねじを用い、これを上下に並列配置している。各駆動ユニット10A〜10Dは、2つのハウジング14,16を備え、モータハウジング14は、サーボモータ8、カップリング17、歯車機構19および支持軸受18を有する。そして、上下のボールねじ11A,11Bのいずれか(この例では上側のボールねじ11A)とモータ8の出力軸とをカップリング17を介して接続している。そして、二つのボールねじ11A,11B相互のねじ軸4は、歯車機構19を介して連結されており、この歯車機構19によって互いに逆方向に回転するようになっている。さらに、モータ8とは反対側の支持ハウジング16は、二つのボールねじ11A,11Bのねじ軸端を、上下二つの支持軸受18で回転自在にそれぞれ支持している。
【0028】
そして、上記モータハウジング14および支持ハウジング16は、各ハウジング14,16の下面が案内レール2に直接取り付けられている。案内レール2は、ベースBに複数配置した案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持され、上記第一実施形態同様に、駆動ユニット10が軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3に順次に受け渡されるようになっている。
【0029】
そして、この第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1においては、上述した駆動ユニット10A〜10Dを、図3に示すようにベースB上に並列に複数配置しており、また、同図に示すように、各駆動ユニット10A〜10Dは、隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結されている。
具体的には、図3での最下のユニットから順に、第一駆動ユニット10A、第二駆動ユニット10B、第三駆動ユニット10C、第四駆動ユニット10Dとすると、1段目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aは、その二つのボールねじ11A,11Bのうち下側のナット5がベースBに固定腕7によって固定されている。また、第一駆動ユニット10Aの上側のナット5は、第二駆動ユニット10Bの上側ナット5に連結腕6によって連結されている。さらに、第二駆動ユニット10Bの下側のナット5は、第三駆動ユニット10Cの下側のナット5に連結腕6によって接続され、以下同様に最終段目の第四駆動ユニット10Dまで隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結され、最終段目の第四駆動ユニット10Dの下側のナット5は、被駆動体Aに対して被駆動体連結腕12によって連結されるようになっている。
【0030】
このような構成によって、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cと、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dとを、互いに逆方向にモータ8を回転させることで、多段構造のアクチュエータ1全体を同一方向に移動させることができる。そのため、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結すれば、被駆動体Aをロングストロークにわたって搬送することができる。
【0031】
そして、この第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1においても、上記第一実施形態同様に、各駆動ユニット10A,10B,10C,10Dと一体に移動する案内レール2を各駆動ユニット10A〜10Dに取り付け、案内レール2を保持する案内部材3をベースBに各駆動ユニット10A〜10D毎に軸方向に複数配置し、案内レール2は案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されるとともに、各案内レール2が各駆動ユニット10A〜10Dの移動に伴って離間配置された案内部材3に順次に受け渡される構成としたので、長尺の案内レールを使用することなく被駆動体Aをロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めが可能である。
【0032】
また、この第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1のような構成であれば、二つのボールねじ11A,11Bを上下に並行して配置したことで、上記第一実施形態に比べて軸方向の長さをコンパクトにすることができる。
ここで、上記第一ないし第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、二つのボールねじ11A,11Bを1つのモータ8でねじ軸回転によって駆動し、全ての駆動ユニット10A〜10Dには案内レール2が付設されており、ベースBに対し軸方向に複数配置された案内部材3によって順次受け渡し可能に支持される例である。そのため、多段構造とした場合に、ストロークが長くなるにつれ、ベースBに配置される案内部材3がストロークに応じて多数必要となる。
【0033】
そこで、次に、第三実施形態として、ストロークが長くなった場合であっても、配置される案内部材の数を上記第一ないし第二実施形態に比べて少なくし得る多段構造のアクチュエータについて図5〜図9を適宜参照しつつ説明する。なお、図5は、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第三実施形態の平面図であり、図6は図5の右側面図(X方向から見た図)、また、図7〜9は各駆動ユニットをそれぞれ説明する図である。
【0034】
この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、図5に示すように、駆動ユニット10A〜10DがベースB上に並列に複数配置されている点、および駆動ユニット10A〜10Dのナット5相互の連結構造については上記第二の実施形態同様に構成されている。これに対し、上記第二の実施形態に対し、各駆動ユニット10A〜10Dがユニットテーブル9を有し、上記モータハウジング14および支持ハウジング16は、各ハウジング14,16の下面が、板部材からなるユニットテーブル9に取り付けられている点が異なっている。また、この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、上記第二の実施形態に対し、案内ユニット20の付設構成が異なっており、隣り合う駆動ユニット相互間には、案内ユニット20が、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されている。
【0035】
詳しくは、1段目の第一駆動ユニット10Aは、図7に示すように、上記ユニットテーブル9の下面に案内レール2が配置され、この案内レール2がベースBに複数配置した案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されている。そして、第一駆動ユニット10Aが軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3が案内レール2を順次にベースB上で受け渡し、常に複数の案内部材3によって支持される。さらに、この第一駆動ユニット10Aのユニットテーブル9の側面9bには、隣り合う第二駆動ユニット10Bを案内するための案内部材3が軸方向に複数付設されている。
【0036】
また、最終段目の第四駆動ユニット10Dは、図8に示すように、上記ユニットテーブル9の下面に案内レール2が配置され、この案内レール2がベースBに複数配置した案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されている。そして、第四駆動ユニット10Dが軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3が案内レール2を順次にベースB上で受け渡し、常に複数の案内部材3によって支持される。さらに、この第四駆動ユニット10Dのユニットテーブル9の側面9aには、隣り合う第三駆動ユニット10Cを案内するための案内レール2が付設されている。
【0037】
さらに、1段目と最終段目以外の他の駆動ユニットとなる、第二駆動ユニット10Bおよび第三駆動ユニット10Cは、図9に示すように、ユニットテーブル9の下面には案内レール2が配置されない。その代わり、ユニットテーブル9の一方の側面9aに案内レール2が付設され、他方の側面9bには軸方向に離間して複数の案内部材3が付設される。
そして、本実施形態では、図6に示すように、上記第一駆動ユニット10Aの側面9bに付設された複数の案内部材3は、第二駆動ユニット10Bの側面9aに付設された案内レール2を支持し、第二駆動ユニット10Bの側面9bに付設された複数の案内部材3は、第三駆動ユニット10Cの側面9aに付設された案内レール2を支持する。さらに、第三駆動ユニット10Cの側面9bに付設された複数の案内部材3は、第四駆動ユニット10Dの側面9aに付設された案内レール2を支持する。このように、この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、順次に隣り合う駆動ユニットを支持する構造となっている。
【0038】
この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1によれば、上記第二実施形態同様に、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cと、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dとを、互いに逆方向にモータ8を回転させることで、多段構造のアクチュエータ1全体として同一方向に移動する。これにより、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結すれば、被駆動体Aをロングストロークに亘ってベースBとの相対運動をさせることができる。
【0039】
また、この第三実施形態によれば、多段構造の両端に位置する1段目と最終段目の駆動ユニット10A,10Dは、これと一体に移動する案内レール2を駆動ユニット10A,10Dに取り付け、その案内レール2を支持する複数の案内部材3をベースBに軸方向に配置することで、上記第一ないし第二実施形態同様に、両端に位置する駆動ユニット10A,10Dは、その移動に伴い案内レール2が案内部材3に順次に受け渡されつつ支持することができる。
【0040】
そして、この第三実施形態によれば、隣り合う駆動ユニット10A〜10D相互間は、案内ユニット20を、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設しているので、隣り合う駆動ユニット同士で相互を支持することができる。そのため、上記第一ないし第二実施形態の多段構造のアクチュエータに比較して、多数の案内部材3を使用することなく、被駆動体Aをロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めが可能である。
【0041】
なお、本発明に係る多段構造のアクチュエータは、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記各実施形態では、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結可能とし、この被駆動体Aをロングストロークに亘ってベースBとの相対運動をさせる例を説明したが、これに限らず、例えば、被駆動体Aが複数存在する場合には、各駆動ユニット10A〜10Dや各連結腕6と被駆動体Aとを連結し、各駆動ユニット10A〜10Dを独立で制御することで、複数の被駆動体Aを独立して位置決めする構成としてもよい。
【0042】
また、例えば上記実施形態では、案内部材3としては、使用する案内レール2に応じて、転動体にボールやコロを用いた直動案内装置のスライダを用いた例で説明したが、これに限らず、本発明に係る多段構造のアクチュエータは、案内部材3として、例えば図10に示すように、複数の転がり軸受3fによって案内するフオロアタイプのリニアガイドを用いてもよい(例えば特開2003−329035号公報参照)。この種のフオロアタイプのリニアガイドであれば、案内レール2を支持していない状態であっても転動体が案内部材3内から脱落するおそれがない。さらに、案内レール2が自重によるたわみや振動などで本来の位置からずれて案内部材3に進入してきても、同じサイズの転動体としてボールやコロを用いた直動案内装置に比べて、転がり軸受3fのローラの径を大きくし得るので、ローラ径に対するズレ量の比がより小さくなり、ズレ量をより許容することができる。
【0043】
また、例えば上記第二実施形態では、各駆動ユニット10A〜10Dのボールねじ11A,11Bにおいて、同じねじれ方向のねじ溝をもつボールねじを用いた例で説明したが、これに限らず、互いに逆のねじれ方向のねじ溝をもつボールねじを配置した場合には、上記歯車機構19に替えて、各ねじ軸4にタイミングプーリを装着し、タイミングベルト等を介してボールねじが同一方向に回転するように構成してもよい。また、二つのボールねじ11A,11Bの配置についても、上下に限定するものではなく、例えば左右に配置してもよい。
【0044】
また、上記各実施形態では、予圧については特に言及していないが、案内レールと案内部材は予圧を持って隙間なく保持されていることが望ましい。案内レールと案内部材相互が隙間なく保持されることによって各駆動ユニット10A〜10Dの振動を抑えることができ、静音化が図れる。また、各駆動ユニット10A〜10Dの軸直角方向の剛性が上がるので、隣り合うナットからモーメント力が発生した場合においても軸方向に換算した際の位置決め精度を向上させることができる。
【0045】
さらに、各案内レール2は、対応する案内部材3側の転動体、あるいは転がり軸受と接触する接触面に、案内レール2が案内部材3に進入する際に徐々に荷重がかかるように自身を導く傾斜面を加工し、案内レール2が案内部材3に進入する際に徐々に予圧がかかるようにしてもよい。このような構成とすれば、案内レールが案内部材に受け渡される際に、その受け渡しをより円滑にすることができる。
【0046】
また、上記第一および第二実施形態では、案内レール2と各ハウジングとを直接連結した例で説明したが、これに限らず、例えば更に剛性を高めるために、第三実施形態に示したように、各ハウジング相互を一つの平板からなるユニットテーブル9で連結し、このユニットテーブル9を介して案内レール2を固定してもよい。
また、上記各実施形態では、案内部材3をベースB上に取り付けた例で説明したが、これに限らず、カムフォロア等の案内部材をベース自体に組み込んだ構造としてもよい。
【0047】
また、上記第三実施形態について、例えば、最終段目の第四駆動ユニット10Dを鉛直方向で支持する案内ユニット20(案内レール2および案内部材3)は、被駆動体Aを案内するために基台等に付設する不図示の案内機構と共通化してもよい。
また、上記第三実施形態について、各駆動ユニット10A〜10Dのユニットテーブル9の側面に配置される案内部材3を、図11に例示するように、左右端に配置される案内部材3を増設してダブル案内部材構造としてもよい。また、同図に示すように、その増設に対応させて案内レール2の全長を、軸方向に張り出すように延長してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る多段構造のアクチュエータの第一実施形態の平面図である。
【図2】図1の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、および右側面図(b)である。
【図3】本発明に係る多段構造のアクチュエータの第二実施形態の平面図である。
【図4】図3の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、および右側面図(b)である。
【図5】本発明に係る多段構造のアクチュエータの第三実施形態の平面図である。
【図6】図5の右側面図(X方向から見た図)である。
【図7】図5の多段構造のうちの1段目の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)である。
【図8】図5の多段構造のうちの最終段目の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)である。
【図9】図5の多段構造のうちの1段目と最終段目以外の他の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)である。
【図10】案内ユニットの変形例を説明する図であり、同図(a)は正面図、(b)は(a)でのA−A断面図である。
【図11】案内ユニットの変形例を説明する図であり、同図は図9に対応して、正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)を示している。
【符号の説明】
【0049】
1 多段構造のアクチュエータ
2 案内レール
3 案内部材
4 ねじ軸
5 ナット
6 連結腕
7 固定腕
8 サーボモータ(モータ)
9 ユニットテーブル
10A,10B,10C,10D 駆動ユニット
11A,11B ボールねじ
12 被駆動体連結腕
14 モータハウジング
15 連結ハウジング
16 支持ハウジング
17 カップリング
18 支持軸受
19 歯車機構
20 案内ユニット
A 被駆動体
B ベース
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロングストロークの位置決めに好適な多段構造のアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロングストロークの位置決めに使用し得るアクチュエータとしては、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。同文献に記載の技術では、被駆動体としての可動テーブルを、案内ユニットを介してベース上に設け、この可動テーブルを、一つのモータによってスライド移動される二つのナットで駆動している。なお、案内ユニットの案内レールは、上記ベース側に取り付けられている。
【0003】
また、ロングストロークの位置決めを目的とした他のアクチュエータとして、特許文献2に記載の技術も知られている。同文献に記載の技術は、上下方向に大きなストロークが必要な場合に好適な技術であって、上下に配設された2軸のボールねじをサーボモータで駆動する駆動ユニットを備え、これをスライド機構毎に別個の案内ユニットを用いた2段の多段構造とすることで被駆動体に対しロングストロークを得ている。
【特許文献1】特開2003−127044号公報(図2)
【特許文献2】特開2006−102886号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、案内ユニットの案内レールをベースに取り付けているため、案内レールの長さは、移動するストローク分の長さに可動テーブルの長さを加えただけ必要となる。そのため、特許文献1に記載の技術は、1系統のみのスライド機構であれば特に問題はないものの、これを多段構造とした場合には、段数を増やすに従ってストロークが長くなる。したがって、敷設する案内レールが非常に長くなってしまうという問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献2に記載の技術では、スライド機構毎に別個の案内ユニットを用いているので、1つのスライド機構の案内レールはボールねじと同ストロークでよい。しかし、特許文献2に記載の技術は、上下移動の用途に使用する場合には問題ないものの、水平移動の用途に使用する場合には、スライド機構が片持ちになってしまう。そのため、ロングストロークになるほど重力の影響によって案内ユニットに対応する案内部材に過大なモーメント荷重がかかる。また、これが更に多段構造(例えば4段構造)となった場合には、水平方向で自重を支えることが困難なので、駆動ユニットを支えるために別途に長尺の案内ユニットが必要となる。したがって、敷設する案内レールが非常に長くなってしまうという問題を解決することができない。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、長尺の案内ユニット(案内レール)を使用することなく被駆動体をロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めを可能とし得る多段構造のアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間してベース上に配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっていることを特徴としている。
【0008】
第一の発明に係る多段構造のアクチュエータによれば、各駆動ユニットと一体に移動する案内レールを各駆動ユニットに取り付け、案内レールを保持する案内部材をベースに各駆動ユニット毎に軸方向に複数配置し、案内レールは、案内部材によって軸方向にスライド移動可能に支持されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って離間配置された案内部材に順次に受け渡されるので、長尺の案内レールを使用することなく、ロングストロークに亘って搬送および位置決めが可能である。
【0009】
ここで、上記第一の発明に係る多段構造のアクチュエータによれば、各駆動ユニットを二つのボールねじ(左右ねじ含む)を1つのモータで駆動し、全ての駆動ユニットには案内レールが付設されており、軸方向に複数配置された案内部材によってベース上で順次に受け渡されるため、多段構造とした場合に、ストロークが長くなるにつれ、配置される案内部材の数もそれに応じて多数必要となる。そこで、本発明のうち第二の発明は、ストロークが長くなった場合であっても、配置される案内部材の数を少なくし得るものである。
【0010】
すなわち、本発明のうち第二の発明は、複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間して配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結され、1段目と最終段目の駆動ユニットは、これに付設される案内レールに対応する案内部材が、当該1段目と最終段目の駆動ユニット毎にその軸方向に離間してベース上に複数配置されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっており、さらに、隣り合う駆動ユニット相互間には、前記案内ユニットが、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されていることを特徴としている。
【0011】
第二の発明に係る多段構造のアクチュエータによれば、多段構造の両端に位置することになる1段目と最終段目の駆動ユニットは、これと一体に移動する案内レールを駆動ユニットに取り付け、その案内レールを支持する複数の案内部材をベースに軸方向に配置することで、上記第一の発明に係る多段構造のアクチュエータ同様に、両端に位置する駆動ユニットは、その移動に伴い案内レールが案内部材に順次に支持される。したがって、長尺の案内レールを使用することなく、ロングストロークに亘って搬送および位置決めが可能である。
【0012】
そして、隣り合う駆動ユニット相互間には、前記案内ユニットが、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されているので、隣り合う駆動ユニット同士で相互を支持することができる。そのため、第一の発明に係る多段構造のアクチュエータに比較して、1段目と最終段目以外の他の駆動ユニットに対応する案内部材の個数を少なくすることができる。したがって、上記第一の発明に係る多段構造のアクチュエータに比べて、多数の案内部材を使用することなく、ロングストロークに亘って搬送および位置決めが可能である。
【0013】
なお、上記第一ないし第二の発明に係る多段構造のアクチュエータにおいて、前記各駆動ユニットの二つのボールねじは、前記一つのモータによってねじ軸回転で駆動され、互いのねじ溝のねじれ方向が同じ場合には、ボールねじのナットを互いに逆方向に回転させ、互いのねじ溝のねじれ方向が逆の場合には、ボールねじのナットを互いに同方向に回転させてナット相互を逆方向に移動させる構成であれば、本発明に係る多段構造のアクチュエータの駆動ユニットとして好適に用いることができる。
【0014】
また、上記第一ないし第二の発明に係る多段構造のアクチュエータにおいて、例えば、前記各案内ユニットは、前記案内レールと前記案内部材との間に予圧が付与されていれば、案内部材が案内レールを隙間なく支持することによってユニットの振動を抑える上でより好適であり、また、静音化を図る上で好ましい。さらに、このような構成とすれば、駆動ユニットの軸直角方向の剛性が上がるので、隣り合う駆動ユニットのナットからモーメント力が発生した場合においても、軸方向に換算した際の位置決め精度を向上させることができる。
【0015】
また、上記第一ないし第二の発明に係る多段構造のアクチュエータにおいて、例えば、前記各案内レールは、対応する案内部材と接触する面に、当該案内レールが案内部材に進入する際に徐々に荷重がかかるように自身を導く傾斜面を有していれば、案内レールが案内部材に受け渡される際に、その受け渡しをより円滑にする上で好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明によれば、長尺の案内レールを使用することなく被駆動体をロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めを可能とし得る多段構造のアクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る多段構造のアクチュエータの実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、4つの駆動ユニットを用いて多段構造を構成した例である。
まず、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第一実施形態について図1ないし図2を適宜参照しつつ詳しく説明する。なお、図1は本発明に係る多段構造のアクチュエータの第一実施形態の平面図である。また、図2は、図1の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットを説明する図であり、同図(a)はその正面図、また同図(b)は右側面図である。
【0018】
図1に示すように、この多段構造のアクチュエータ1は、複数の駆動ユニット10A,10B,10C,10Dと、その複数の駆動ユニット10A〜10Dをそれぞれ案内する複数の案内ユニット20・・・とを備えて構成されている。複数の駆動ユニット10A〜10Dは、いずれも同じ構成を有しており、図2に示すように、各駆動ユニット10A〜10Dは、一つのサーボモータ8と、そのサーボモータ8によって同時に駆動される二つのボールねじ11A,11Bとを有する。各ボールねじ11A,11Bは、ねじ軸4と、これに多数のボール(不図示)を介して外嵌するナット5とを有し、ボールねじ11A,11B相互のナット5,5は、互いに逆方向に移動されるように構成されている。
【0019】
詳しくは、図2に示すように、各駆動ユニット10A〜10Dは、3つのハウジング14,15,16を備えている。モータ側のモータハウジング14は、サーボモータ8、カップリング17および支持軸受18を有する。そして、同図左のボールねじ11Aは、そのねじ軸4が、このモータハウジング14内のカップリング17を介してサーボモータ8の出力軸に連結されている。また、中央の連結ハウジング15は、二つのボールねじ11A,11B間に設けられ、二つのボールねじ11A,11B相互のねじ軸4は、この連結ハウジング15内のカップリング17を介して同軸上に直列に接続されるとともに、両端の二つの支持軸受18で回転自在に支持されている。さらに、モータとは反対側の支持ハウジング16は、ボールねじ11Bのねじ軸端を支持軸受18で回転自在に支持している。
【0020】
そして、上記二つのボールねじ11A,11Bのうち、同図左のボールねじ11Aのねじ溝は右ねじであり、一方、同図右のボールねじ11Bのねじ溝は左ねじになっており、サーボモータ8によってボールねじ11Aが駆動されると、これに直列に接続されたボールねじ11Bも同時に駆動され、これにより、二つのボールねじ11A,11B相互のナット5,5は、互いに逆方向に移動されるようになっている。ここで、本実施形態の例では、二つのボールねじ11A,11Bは、支持構造として連結ハウジング15を相互間に設けたことにより、単に長尺のボールねじ1本で構成した場合に比べて、ねじ軸の固有振動に伴う危険速度回転数を高く設定することを可能としている。
【0021】
そして、図1に示すように、上記駆動ユニット10A〜10Dは、ベースB上に並列に配置され、隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結されている。具体的には、図1での最下のユニットから順に、第一駆動ユニット10A、第二駆動ユニット10B、第三駆動ユニット10C、第四駆動ユニット10Dとすると、1段目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aは、その右側のナット5がベースBに対して固定腕7によって固定されている。また、第一駆動ユニット10Aの左側のナット5は、第二駆動ユニット10Bの左側のナット5に連結腕6によって連結されている。さらに、第二駆動ユニット10Bの右側のナット5は、第三駆動ユニット10Cの右側のナット5に連結腕6によって連結されている。以下同様に最終段目の駆動ユニットである第四駆動ユニット10Dまで隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結され、最終段目の第四駆動ユニット10Dの右側のナット5は、被駆動体Aに対して被駆動体連結腕12によって連結されるようになっている。
【0022】
さらに、図1および図2に示すように、上記各案内ユニット20は、一つの案内レール2と、複数の案内部材3(この例では8個の案内部材3)とを有している。案内レール2は、各駆動ユニット10A〜10Dにこれと一体に移動するように付設されており、本実施形態の例では、案内レール2は、各駆動ユニット10の3つのハウジング14,15,16の下面に直接固定され、3つのハウジング14,15,16相互を一体に連結している。そして、複数の案内部材3は、各駆動ユニット10A〜10D毎に、前記軸方向に離間してベースB上に配置されており、対応する一つの案内レール2をその軸方向にスライド移動可能に支持するようになっている。
【0023】
ここで、複数の案内部材3が軸方向に離間して配置された全体の長さL1(図1参照)は、一つの案内レール2の全長L2(図2参照)よりも長くなっており、本実施形態の例では、8個の案内部材3のうち、隣り合う5つの案内部材3によって案内レール2が支持される。そして、駆動ユニット10が軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3に順次に受け渡されるようになっている。なお、本実施形態では、案内部材3としては、使用する案内レール2に応じて、転動体にボールやコロを用いた直動案内装置のスライダ(転動体脱落防止仕様)を用いた。
【0024】
次に、上記第一実施形態の作用および効果について説明する。
この第一実施形態の多段構造のアクチュエータ1によれば、上記構成を有することにより、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cについてナット5,5間を広げ、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dについてナット5,5間を縮めるように駆動することで、図1において、多段構造のアクチュエータ1全体として同図左方向に移動することができる。また逆に、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cについてナット5,5間を縮め、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dについてナット5,5間を広げるように駆動することで、多段構造のアクチュエータ1全体として同図右方向に移動することができる。したがって、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結すれば、被駆動体Aをロングストロークにわたって搬送することができる。
【0025】
そして、この多段構造のアクチュエータ1によれば、各駆動ユニット10A,10B,10C,10Dと一体に移動する案内レール2を各駆動ユニット10A〜10Dに取り付け、案内レール2を保持する案内部材3をベースBに各駆動ユニット10A〜10D毎に軸方向に複数配置し、案内レール2は案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されるとともに、各案内レール2が各駆動ユニット10A〜10Dの移動に伴って離間配置された案内部材3に順次に受け渡される構成としたので、長尺の案内レールを使用することなく被駆動体をロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めが可能である。
【0026】
次に、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第二実施形態について図3ないし図4を適宜参照しつつ詳しく説明する。なお、図3は、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第二実施形態の平面図である。また、図4は、図3の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、および右側面図(b)である。なお、上記第一実施形態と同様または対応する構成には同一の符号を付し、その説明については適宜省略する。
【0027】
この第二の実施形態の多段構造のアクチュエータは、複数の駆動ユニット10A〜10Dの二つのボールねじ11A,11Bを、上下に並行して配置した点が上記第一実施形態と異なっている。
すなわち、図4に示すように、この第二の実施形態の多段構造のアクチュエータ1では、複数の駆動ユニット10A〜10Dは、本実施形態においては、二つのボールねじ11A,11Bとして、同じねじれ方向のねじ溝をもつボールねじを用い、これを上下に並列配置している。各駆動ユニット10A〜10Dは、2つのハウジング14,16を備え、モータハウジング14は、サーボモータ8、カップリング17、歯車機構19および支持軸受18を有する。そして、上下のボールねじ11A,11Bのいずれか(この例では上側のボールねじ11A)とモータ8の出力軸とをカップリング17を介して接続している。そして、二つのボールねじ11A,11B相互のねじ軸4は、歯車機構19を介して連結されており、この歯車機構19によって互いに逆方向に回転するようになっている。さらに、モータ8とは反対側の支持ハウジング16は、二つのボールねじ11A,11Bのねじ軸端を、上下二つの支持軸受18で回転自在にそれぞれ支持している。
【0028】
そして、上記モータハウジング14および支持ハウジング16は、各ハウジング14,16の下面が案内レール2に直接取り付けられている。案内レール2は、ベースBに複数配置した案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持され、上記第一実施形態同様に、駆動ユニット10が軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3に順次に受け渡されるようになっている。
【0029】
そして、この第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1においては、上述した駆動ユニット10A〜10Dを、図3に示すようにベースB上に並列に複数配置しており、また、同図に示すように、各駆動ユニット10A〜10Dは、隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結されている。
具体的には、図3での最下のユニットから順に、第一駆動ユニット10A、第二駆動ユニット10B、第三駆動ユニット10C、第四駆動ユニット10Dとすると、1段目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aは、その二つのボールねじ11A,11Bのうち下側のナット5がベースBに固定腕7によって固定されている。また、第一駆動ユニット10Aの上側のナット5は、第二駆動ユニット10Bの上側ナット5に連結腕6によって連結されている。さらに、第二駆動ユニット10Bの下側のナット5は、第三駆動ユニット10Cの下側のナット5に連結腕6によって接続され、以下同様に最終段目の第四駆動ユニット10Dまで隣り合う駆動ユニットのナット5相互が連結され、最終段目の第四駆動ユニット10Dの下側のナット5は、被駆動体Aに対して被駆動体連結腕12によって連結されるようになっている。
【0030】
このような構成によって、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cと、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dとを、互いに逆方向にモータ8を回転させることで、多段構造のアクチュエータ1全体を同一方向に移動させることができる。そのため、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結すれば、被駆動体Aをロングストロークにわたって搬送することができる。
【0031】
そして、この第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1においても、上記第一実施形態同様に、各駆動ユニット10A,10B,10C,10Dと一体に移動する案内レール2を各駆動ユニット10A〜10Dに取り付け、案内レール2を保持する案内部材3をベースBに各駆動ユニット10A〜10D毎に軸方向に複数配置し、案内レール2は案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されるとともに、各案内レール2が各駆動ユニット10A〜10Dの移動に伴って離間配置された案内部材3に順次に受け渡される構成としたので、長尺の案内レールを使用することなく被駆動体Aをロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めが可能である。
【0032】
また、この第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1のような構成であれば、二つのボールねじ11A,11Bを上下に並行して配置したことで、上記第一実施形態に比べて軸方向の長さをコンパクトにすることができる。
ここで、上記第一ないし第二実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、二つのボールねじ11A,11Bを1つのモータ8でねじ軸回転によって駆動し、全ての駆動ユニット10A〜10Dには案内レール2が付設されており、ベースBに対し軸方向に複数配置された案内部材3によって順次受け渡し可能に支持される例である。そのため、多段構造とした場合に、ストロークが長くなるにつれ、ベースBに配置される案内部材3がストロークに応じて多数必要となる。
【0033】
そこで、次に、第三実施形態として、ストロークが長くなった場合であっても、配置される案内部材の数を上記第一ないし第二実施形態に比べて少なくし得る多段構造のアクチュエータについて図5〜図9を適宜参照しつつ説明する。なお、図5は、本発明に係る多段構造のアクチュエータの第三実施形態の平面図であり、図6は図5の右側面図(X方向から見た図)、また、図7〜9は各駆動ユニットをそれぞれ説明する図である。
【0034】
この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、図5に示すように、駆動ユニット10A〜10DがベースB上に並列に複数配置されている点、および駆動ユニット10A〜10Dのナット5相互の連結構造については上記第二の実施形態同様に構成されている。これに対し、上記第二の実施形態に対し、各駆動ユニット10A〜10Dがユニットテーブル9を有し、上記モータハウジング14および支持ハウジング16は、各ハウジング14,16の下面が、板部材からなるユニットテーブル9に取り付けられている点が異なっている。また、この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、上記第二の実施形態に対し、案内ユニット20の付設構成が異なっており、隣り合う駆動ユニット相互間には、案内ユニット20が、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されている。
【0035】
詳しくは、1段目の第一駆動ユニット10Aは、図7に示すように、上記ユニットテーブル9の下面に案内レール2が配置され、この案内レール2がベースBに複数配置した案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されている。そして、第一駆動ユニット10Aが軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3が案内レール2を順次にベースB上で受け渡し、常に複数の案内部材3によって支持される。さらに、この第一駆動ユニット10Aのユニットテーブル9の側面9bには、隣り合う第二駆動ユニット10Bを案内するための案内部材3が軸方向に複数付設されている。
【0036】
また、最終段目の第四駆動ユニット10Dは、図8に示すように、上記ユニットテーブル9の下面に案内レール2が配置され、この案内レール2がベースBに複数配置した案内部材3によって軸方向にスライド移動可能に支持されている。そして、第四駆動ユニット10Dが軸方向に移動した際には、軸方向に複数配置した案内部材3が案内レール2を順次にベースB上で受け渡し、常に複数の案内部材3によって支持される。さらに、この第四駆動ユニット10Dのユニットテーブル9の側面9aには、隣り合う第三駆動ユニット10Cを案内するための案内レール2が付設されている。
【0037】
さらに、1段目と最終段目以外の他の駆動ユニットとなる、第二駆動ユニット10Bおよび第三駆動ユニット10Cは、図9に示すように、ユニットテーブル9の下面には案内レール2が配置されない。その代わり、ユニットテーブル9の一方の側面9aに案内レール2が付設され、他方の側面9bには軸方向に離間して複数の案内部材3が付設される。
そして、本実施形態では、図6に示すように、上記第一駆動ユニット10Aの側面9bに付設された複数の案内部材3は、第二駆動ユニット10Bの側面9aに付設された案内レール2を支持し、第二駆動ユニット10Bの側面9bに付設された複数の案内部材3は、第三駆動ユニット10Cの側面9aに付設された案内レール2を支持する。さらに、第三駆動ユニット10Cの側面9bに付設された複数の案内部材3は、第四駆動ユニット10Dの側面9aに付設された案内レール2を支持する。このように、この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1は、順次に隣り合う駆動ユニットを支持する構造となっている。
【0038】
この第三実施形態の多段構造のアクチュエータ1によれば、上記第二実施形態同様に、奇数番目の駆動ユニットである第一駆動ユニット10Aおよび第三駆動ユニット10Cと、偶数番目の駆動ユニットである第二駆動ユニット10Bおよび第四駆動ユニット10Dとを、互いに逆方向にモータ8を回転させることで、多段構造のアクチュエータ1全体として同一方向に移動する。これにより、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結すれば、被駆動体Aをロングストロークに亘ってベースBとの相対運動をさせることができる。
【0039】
また、この第三実施形態によれば、多段構造の両端に位置する1段目と最終段目の駆動ユニット10A,10Dは、これと一体に移動する案内レール2を駆動ユニット10A,10Dに取り付け、その案内レール2を支持する複数の案内部材3をベースBに軸方向に配置することで、上記第一ないし第二実施形態同様に、両端に位置する駆動ユニット10A,10Dは、その移動に伴い案内レール2が案内部材3に順次に受け渡されつつ支持することができる。
【0040】
そして、この第三実施形態によれば、隣り合う駆動ユニット10A〜10D相互間は、案内ユニット20を、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設しているので、隣り合う駆動ユニット同士で相互を支持することができる。そのため、上記第一ないし第二実施形態の多段構造のアクチュエータに比較して、多数の案内部材3を使用することなく、被駆動体Aをロングストロークに亘って搬送可能とするとともに、ロングストロークの位置決めが可能である。
【0041】
なお、本発明に係る多段構造のアクチュエータは、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記各実施形態では、最終段目の第四駆動ユニット10Dのナット5を被駆動体Aに連結可能とし、この被駆動体Aをロングストロークに亘ってベースBとの相対運動をさせる例を説明したが、これに限らず、例えば、被駆動体Aが複数存在する場合には、各駆動ユニット10A〜10Dや各連結腕6と被駆動体Aとを連結し、各駆動ユニット10A〜10Dを独立で制御することで、複数の被駆動体Aを独立して位置決めする構成としてもよい。
【0042】
また、例えば上記実施形態では、案内部材3としては、使用する案内レール2に応じて、転動体にボールやコロを用いた直動案内装置のスライダを用いた例で説明したが、これに限らず、本発明に係る多段構造のアクチュエータは、案内部材3として、例えば図10に示すように、複数の転がり軸受3fによって案内するフオロアタイプのリニアガイドを用いてもよい(例えば特開2003−329035号公報参照)。この種のフオロアタイプのリニアガイドであれば、案内レール2を支持していない状態であっても転動体が案内部材3内から脱落するおそれがない。さらに、案内レール2が自重によるたわみや振動などで本来の位置からずれて案内部材3に進入してきても、同じサイズの転動体としてボールやコロを用いた直動案内装置に比べて、転がり軸受3fのローラの径を大きくし得るので、ローラ径に対するズレ量の比がより小さくなり、ズレ量をより許容することができる。
【0043】
また、例えば上記第二実施形態では、各駆動ユニット10A〜10Dのボールねじ11A,11Bにおいて、同じねじれ方向のねじ溝をもつボールねじを用いた例で説明したが、これに限らず、互いに逆のねじれ方向のねじ溝をもつボールねじを配置した場合には、上記歯車機構19に替えて、各ねじ軸4にタイミングプーリを装着し、タイミングベルト等を介してボールねじが同一方向に回転するように構成してもよい。また、二つのボールねじ11A,11Bの配置についても、上下に限定するものではなく、例えば左右に配置してもよい。
【0044】
また、上記各実施形態では、予圧については特に言及していないが、案内レールと案内部材は予圧を持って隙間なく保持されていることが望ましい。案内レールと案内部材相互が隙間なく保持されることによって各駆動ユニット10A〜10Dの振動を抑えることができ、静音化が図れる。また、各駆動ユニット10A〜10Dの軸直角方向の剛性が上がるので、隣り合うナットからモーメント力が発生した場合においても軸方向に換算した際の位置決め精度を向上させることができる。
【0045】
さらに、各案内レール2は、対応する案内部材3側の転動体、あるいは転がり軸受と接触する接触面に、案内レール2が案内部材3に進入する際に徐々に荷重がかかるように自身を導く傾斜面を加工し、案内レール2が案内部材3に進入する際に徐々に予圧がかかるようにしてもよい。このような構成とすれば、案内レールが案内部材に受け渡される際に、その受け渡しをより円滑にすることができる。
【0046】
また、上記第一および第二実施形態では、案内レール2と各ハウジングとを直接連結した例で説明したが、これに限らず、例えば更に剛性を高めるために、第三実施形態に示したように、各ハウジング相互を一つの平板からなるユニットテーブル9で連結し、このユニットテーブル9を介して案内レール2を固定してもよい。
また、上記各実施形態では、案内部材3をベースB上に取り付けた例で説明したが、これに限らず、カムフォロア等の案内部材をベース自体に組み込んだ構造としてもよい。
【0047】
また、上記第三実施形態について、例えば、最終段目の第四駆動ユニット10Dを鉛直方向で支持する案内ユニット20(案内レール2および案内部材3)は、被駆動体Aを案内するために基台等に付設する不図示の案内機構と共通化してもよい。
また、上記第三実施形態について、各駆動ユニット10A〜10Dのユニットテーブル9の側面に配置される案内部材3を、図11に例示するように、左右端に配置される案内部材3を増設してダブル案内部材構造としてもよい。また、同図に示すように、その増設に対応させて案内レール2の全長を、軸方向に張り出すように延長してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る多段構造のアクチュエータの第一実施形態の平面図である。
【図2】図1の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、および右側面図(b)である。
【図3】本発明に係る多段構造のアクチュエータの第二実施形態の平面図である。
【図4】図3の多段構造のうちの一の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、および右側面図(b)である。
【図5】本発明に係る多段構造のアクチュエータの第三実施形態の平面図である。
【図6】図5の右側面図(X方向から見た図)である。
【図7】図5の多段構造のうちの1段目の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)である。
【図8】図5の多段構造のうちの最終段目の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)である。
【図9】図5の多段構造のうちの1段目と最終段目以外の他の駆動ユニットおよび案内ユニットの正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)である。
【図10】案内ユニットの変形例を説明する図であり、同図(a)は正面図、(b)は(a)でのA−A断面図である。
【図11】案内ユニットの変形例を説明する図であり、同図は図9に対応して、正面図(a)、右側面図(b)および背面図(c)を示している。
【符号の説明】
【0049】
1 多段構造のアクチュエータ
2 案内レール
3 案内部材
4 ねじ軸
5 ナット
6 連結腕
7 固定腕
8 サーボモータ(モータ)
9 ユニットテーブル
10A,10B,10C,10D 駆動ユニット
11A,11B ボールねじ
12 被駆動体連結腕
14 モータハウジング
15 連結ハウジング
16 支持ハウジング
17 カップリング
18 支持軸受
19 歯車機構
20 案内ユニット
A 被駆動体
B ベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、
各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間してベース上に配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、
前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっていることを特徴とする多段構造のアクチュエータ。
【請求項2】
複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、
各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間して配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、
前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結され、1段目と最終段目の駆動ユニットは、これに付設される案内レールに対応する案内部材が、当該1段目と最終段目の駆動ユニット毎にその軸方向に離間してベース上に複数配置されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっており、さらに、隣り合う駆動ユニット相互間には、前記案内ユニットが、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されていることを特徴とする多段構造のアクチュエータ。
【請求項3】
前記各駆動ユニットの二つのボールねじは、前記一つのモータによってねじ軸回転で駆動され、互いのねじ溝のねじれ方向が同じ場合には、ボールねじのナットを互いに逆方向に回転させ、互いのねじ溝のねじれ方向が逆の場合には、ボールねじのナットを互いに同方向に回転させてナット相互を逆方向に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の多段構造のアクチュエータ。
【請求項4】
前記各案内ユニットは、前記案内レールと前記案内部材との間に予圧が付与されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多段構造のアクチュエータ。
【請求項5】
前記各案内レールは、対応する案内部材と接触する面に、当該案内レールが案内部材に進入する際に徐々に荷重がかかるように自身を導く傾斜面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段構造のアクチュエータ。
【請求項1】
複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、
各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間してベース上に配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、
前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっていることを特徴とする多段構造のアクチュエータ。
【請求項2】
複数の駆動ユニットと、該複数の駆動ユニットを案内する複数の案内ユニットとを備える多段構造のアクチュエータであって、
各案内ユニットは、各駆動ユニットに付設されてこれと一体に移動する案内レールと、該案内レールをその軸方向にスライド移動可能に支持するように各駆動ユニット毎に前記軸方向に離間して配置される複数の案内部材とを有し、各駆動ユニットは、一つのモータと、該一つのモータによって同時に駆動される二つのボールねじとを有するとともに、前記二つのボールねじが、相互のナットが逆方向に移動されるように構成されており、
前記複数の駆動ユニットは、隣り合う駆動ユニットのナット相互が連結され、1段目と最終段目の駆動ユニットは、これに付設される案内レールに対応する案内部材が、当該1段目と最終段目の駆動ユニット毎にその軸方向に離間してベース上に複数配置されるとともに、各案内レールが各駆動ユニットの移動に伴って前記軸方向に離間して配置された案内部材に順次に受け渡されるようになっており、さらに、隣り合う駆動ユニット相互間には、前記案内ユニットが、隣り合う駆動ユニット同士によって互いをスライド移動可能に支持するように付設されていることを特徴とする多段構造のアクチュエータ。
【請求項3】
前記各駆動ユニットの二つのボールねじは、前記一つのモータによってねじ軸回転で駆動され、互いのねじ溝のねじれ方向が同じ場合には、ボールねじのナットを互いに逆方向に回転させ、互いのねじ溝のねじれ方向が逆の場合には、ボールねじのナットを互いに同方向に回転させてナット相互を逆方向に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の多段構造のアクチュエータ。
【請求項4】
前記各案内ユニットは、前記案内レールと前記案内部材との間に予圧が付与されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多段構造のアクチュエータ。
【請求項5】
前記各案内レールは、対応する案内部材と接触する面に、当該案内レールが案内部材に進入する際に徐々に荷重がかかるように自身を導く傾斜面を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の多段構造のアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−96318(P2010−96318A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269461(P2008−269461)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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