説明

学習用教材および教材情報出力装置

【課題】 言語の発音を正確かつ簡単に理解できるようにする。
【解決手段】 学習用教材1は、所定の言語の原文を表示する原文表示部11と、原文表示部11により表示された原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜を表示する楽譜表示部12とを備える。基準となる五線は表示されず、相対的な音高差を認識し易くするための水平線が必要に応じて付加される。原文に対応した他の言語による訳文を表示する訳文表示部13と、他の言語における表音文字を用いて、楽譜に対応した発音の読みを表示する発音表示部14とをさらに設けることができる。本発明は、言語を学習するための教材に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は学習用教材および教材情報出力装置に関し、特に、学習者が言語の発音をより正確かつ効率よく理解できるようにする学習用教材および教材情報出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の語学学習用教材では、学習言語の発音を表記する場合に発音記号(もしくは音声記号)が用いられる。特に、あらゆる言語の発音を包括的に表記することが可能な統一記号である国際音声記号(IPA:International Phonetic Alphabet)が用いられることがある。
【0003】
また、特別な記号を用いずに、理解が容易である母国語での表音文字(例えば、学習者の母国語が日本語の場合には平仮名もしくは片仮名)によって、学習言語の発音を表記することも多い。
【0004】
さらに、例えば、特許文献1には、英単語において、強勢アクセントを持つ音節の活字を大きく太字にし、視覚的に目立つようにすることで、学習者がアクセントの位置を視覚的に理解し、正確に記憶することができるようにする英単語学習教材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−005625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、国際音声記号などの発音記号により発音が表記される教材を使用するには、発音記号そのものについても学習する必要がある。そのため初学者にとっては、発音記号により発音を覚えることが難しい。
【0007】
また、表音文字による発音の表記や、教材の活字を強調表示することで強勢アクセントの位置を提示する方法では、言語の発音におけるイントネーションやリズムといった重要な要素の情報を与えることができない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、発音記号を理解できない初学者であっても、言語の発音をより正確かつ効率よく理解できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、所定の言語の原文を表示する原文表示部と、前記原文表示部により表示された前記原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜を表示する楽譜表示部とを備える学習用教材である。
【0010】
前記音楽記号のうちの音符により前記発音の相対的な長さと高さを表し、休符記号により前記発音の切れ目を表し、強弱記号により前記発音の強弱を表すことができる。
【0011】
前記音楽記号のうちの連桁により、前記発音の一体的に発音される部分を表すことができる。
【0012】
前記音楽記号のうちのスラーまたはタイにより、前記発音の連結して発音される部分を表すことができる。
【0013】
前記原文表示部により表示された前記原文に対応した他の言語による訳文を表示する訳文表示部と、前記他の言語における表音文字を用いて、前記楽譜表示部により表示された前記楽譜に対応した前記発音の読みを表示する発音表示部とをさらに備えることができる。
【0014】
本発明の他の側面は、所定の言語の原文を取得する原文取得手段と、前記原文取得手段により取得された前記原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜の楽譜情報を取得する楽譜取得手段と、前記楽譜取得手段により取得された前記楽譜情報と、前記原文取得手段により取得された前記原文とを蓄積する蓄積手段と、前記蓄積手段に蓄積された前記楽譜情報から生成した楽譜と前記原文との対応を関連づけた教材情報を出力する出力手段と を備える教材情報出力装置である。
【0015】
前記出力手段は、前記音楽記号のうちの音符により前記発音の相対的な長さと高さを表し、休符記号により前記発音の切れ目を表し、強弱記号により前記発音の強弱を表した前記楽譜を生成し、前記楽譜と前記原文との対応を関連づけた教材情報を出力することができる。
【0016】
前記出力手段は、前記音楽記号のうちの連桁により前記発音の一体的に発音される部分を表した前記楽譜を生成することができる。
【0017】
前記原文取得手段により取得された前記原文に対応した他の言語による訳文を取得する訳文取得手段と、前記他の言語における表音文字を用いて、前記楽譜取得手段により取得された前記楽譜情報に対応した前記発音の読みを取得する発音取得手段とをさらに備え、前記蓄積手段は、前記訳文取得手段により取得された前記訳文と、前記発音取得手段により取得された前記発音の読みとをさらに蓄積し、前記出力手段は、前記蓄積手段に蓄積された前記楽譜情報から生成した前記楽譜、前記原文、前記訳文、および前記発音の読みの対応を関連づけた教材情報を出力することができる。
【0018】
前記所定の言語の前記発音の音声データを取得する音声取得手段と、前記音声取得手段により取得された前記音声データを、前記楽譜情報に変換する楽譜化手段とをさらに備え、前記楽譜取得手段は、前記楽譜化手段により変換された前記楽譜情報を取得することができる。
【0019】
前記音声取得手段により取得された前記音声データから、前記所定の言語の前記原文を認識する音声認識手段をさらに備え、前記原文取得手段は、前記音声認識手段により認識された前記原文を取得することができる。
【0020】
本発明の一側面の学習用教材においては、所定の言語の原文が表示されるとともに、表示された原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜が表示される。
【0021】
本発明の一側面の教材情報出力装置においては、所定の言語の原文が取得され、取得された原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜の楽譜情報が取得される。取得された楽譜情報と原文とが蓄積され、蓄積された楽譜情報から生成した楽譜と原文との対応を関連づけた教材情報が出力される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の一側面によれば、学習者が言語の発音をより正確かつ効率よく理解できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の学習用教材の第1の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】本発明の学習用教材の第2の実施の形態の構成を示す図である。
【図3】本発明の学習用教材の第3の実施の形態の構成を示す図である。
【図4】本発明の学習用教材の第4の実施の形態の構成を示す図である。
【図5】本発明の教材情報出力装置の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の教材情報出力装置の第1の実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の教材情報出力装置の第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の教材情報出力装置の第2の実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【図9】絶対的に音高を表した楽譜を示す図である。
【図10】本発明の教材情報出力装置の第3の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の教材情報出力装置の第3の実施の形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明を適用した学習用教材の第1の実施の形態の構成を示す図である。本実施の形態は、日本語を母国語とする学習者が、英語を学習する教材を例示する。この学習用教材1は、原文表示部11、楽譜表示部12、訳文表示部13、および発音表示部14から構成される。
【0026】
原文表示部11は、学習者の学習対象とする言語がセンテンス(文)やフレーズ(成句)などを1つの単位として表示する。図1の例では、英語のセンテンス「What did you make?」が表示されている。
【0027】
楽譜表示部12は、原文表示部11のセンテンスをネイティブスピーカが発音した場合の音節を音楽記号で表示する。すなわち、イントネーション(すなわち、相対的な音の高さの変動)、リズム(すなわち、音の時間的な緩急)、およびアーティキュレーション(すなわち、音や音のつながりにおける強弱や表情)などの発音の特徴が、ひとまとまりとして認識される音を単位として音楽記号を対応付けることにより表現される。音楽記号としては、例えば、音符、休符、アクセント記号、テヌート記号、スタッカート記号、スラー記号、タイ記号、および等間隔の水平線などを用いることができる。
【0028】
楽譜表示部12が表示する楽譜は五線記譜法に準じた形式で表示され、音符の縦方向の位置により発音における音の高低(すなわち、音高)が示され、音符と休符の配列により発音のリズムが示される。楽譜の表示において4分音符の1拍の長さ(すなわち、テンポ)としては任意の長さを採用することができる。例えば、英語の発音の場合であれば、1分間に4分音符を80乃至120拍程度打つテンポを採用することができる。
【0029】
発音の音高情報は、五線譜上において正確に表現することはできない。何故なら五線譜上では、12平均律における1オクターブの12分の1の半音を最小単位とする表現しかできないが、人が言語を話すときの音高差を表現するには、半音よりさらに細かい単位が必要になるからである。
【0030】
そこで本実施の形態では、音高差は相対的に表示される。例えば、音高を「low」、「medium」、「high」、「very high」の4つのレベルとする場合、音符をこの4つのレベルのいずれかの位置に配置することで、音高が表現される。この場合、音高差が相対的な量で表現されるため、楽譜表示部12に表示される楽譜に、等間隔の水平線を併せて表示する必要はない。
【0031】
しかし、各音符のレベルの差を学習者が容易に認識できるようにするため、等間隔の水平線を併せて表示することもできる。図1の実施の形態では3本の水平線が表示されている。ただし、この水平線は絶対的な音高の基準となる五線譜の五線ではない。例えば図1の実施の形態において、第5番目の音符が一番上の水平線と2番目の水平線の間に配置され、第6番目の音符が第2番目の水平線上に配置されているが、これは、第6番目の音符に対応する音声が第5番目の音符に対応する音高より全音の分だけ低いことを意味するものではない。単に第6番目の音高は第5番目の音高より相対的に低いことを意味しているに過ぎない。もちろん第5番目と第6番目の音符に対応する音高の絶対的高さ、すなわち周波数が特定されるものでもない。
【0032】
楽譜表示部12は、音楽記号によりさまざまなアーティキュレーションを視覚的に表示する。例えば、その音を強く発音するときのアクセント記号、音の高さを保って発音するときのテヌート記号、音を切り離して発音するときのスタッカート記号、および音を結び付けて滑らかに発音するときのスラー記号やタイ記号などを併せて表示することもできる。また、8分音符より細かい音価の音符をつなげて表示する連桁によって、発音のまとまりを表現することもできる。
【0033】
図1の例では、原文表示部11に表示されているセンテンス「What did you make?」の発音が、16分音符、16分休符、8分音符、16分音符、16分音符、8分音符、および16分音符により表現されている。第1番目の16分音符から第4番目の16分音符は連桁とされ、第3番目と第4番目の16分音符はタイ記号で連結されている。第5番目の8分音符と第6番目の16分音符は連桁とされている。楽譜には水平線が表示されている。すなわち、第1番目の16分音符が最も高い音であり、第2番目の8分音符の音高はそれより低く、第3番目と第4番目の16分音符の音高は第2番目の8分音符の音高より低い。第5番目の8分音符と第6番目の16分音符の音高は、第1番目の16分音符より低く、第2番目の8分音符より高い。第5番目の8分音符の音高は、第6番目の16分音符より高い。第1番目の16分音符と第5番目の8分音符にアクセント記号が付されている。
【0034】
すなわちこの例では、「What」、「did you」、「make?」の各フレーズの発音の相対的な高さが音符の縦方向の位置により表現され、発音の相対的な長さが音符の種類により表現される。「What」は16分音符により、「did you」は8分音符と2つの16分音符により、そして「make?」は8分音符と16分音符により、それぞれ表されているので、それぞれの音の高さは各音符の縦方向の位置に対応する。この例の場合、3本の水平線が付加されているので、各音符の相対的な高さが判り易くなっている。
【0035】
音の長さは各音符の種類により表されている。この例では、発音が8分音符と16分音符で表現されている。「di(d)」や「ma」に8分音符を対応付け、「What」、「(di)d you」、および「(ma)ke」に16分音符を対応付けることにより、前者の音の方が後者の音より相対的に長いことが表現されている。「What」と「did you」の間の音の切れ目の長さは、休符記号である16分休符により表されている。
【0036】
連桁は、その部分が一体的に発音される部分であることを表す。図1の例では、第1番目の16分音符から第4番目の16分音符が対応付けられている「What did you」の部分と、第5番目の8分音符と第6番目の16分音符が対応付けられている「make」の部分が、それぞれ連桁とされ、一体的または連続的に発音される部分であることが表されている。すなわち、このセンテンスは、大きく分けると、「What did you」の部分と「make」の部分という、2つの部分に分けて発音されるべきことが表現されている。
【0037】
純粋に音楽的に表示するだけの場合には、例えば、「What did you」の部分の先頭の16分音符は連桁とせず、単独の音符として表現することが可能である。しかし、そのようにすると、「What did you」の部分を一体的に、すなわち、「What」の部分を「did you」の部分と一体的に発音すべきことが表現できない。そこで、一体的に発音される部分は連桁で表現される。
【0038】
さらに細かくは、「What did you」のうちの、2つの16分音符で表される「(di)d you」の部分が連桁とされ、一体的に発音される部分であることが表されている。同様に、8分音符で表示される「di(d)」の部分と、2つの16分音符で表示される「you」の部分が連桁とされ、一体的に発音される部分であることが表されている。
【0039】
また、8分音符と16分音符で表される「make」のうちの「ma」と「ke」の部分も連桁とされ、一体的に発音される部分であることが表されている。
【0040】
さらに「did 」のうちの最後の「d」と「you」の発音は、一音節となるように連結して発音すべきことが、タイの記号により表されている。純粋に音楽的に表示するだけの場合には、第3番目と第4番目の2つの16分音符を1個の8分音符により表すことも可能である。しかし、そのようにすると、発音には、「d」と「you」の2つの音節があることが理解しにくくなる。そこで本実施の形態においては、音節の数に対応する数の音符が表示され、それらにタイ記号(音高が異なる場合にはスラー記号)が付加される。これにより、「ディド」のうちの「ド」の部分と、次の「ユー」の部分は、2音節としてではなく、「ドゥユー」のように1音節となるように連結して発音すべきことが、すなわち実質的に音節数が減少するように発音すべきことが表現される。
【0041】
また「What」と「make?」の「ma」の部分が強く発音されることが、強弱記号であるアクセント記号により示されている。
【0042】
楽譜表示部12の楽譜と原文表示部11の綴りとの関連を学習者が容易に理解できるように、楽譜表示部12の楽譜は原文表示部11の対応する単語の下側または上側に表示される。
【0043】
訳文表示部13は、原文表示部11に対応した別の言語による訳文を表示する。図1の例では、学習者の母国語が日本語の場合であって、日本語による訳文「何を作ったの?」が表示されている。この例では、訳文表示部13の訳文は、原文表示部11の原文に対応したものであることが判るように、原文表示部11の右側に表示されている。訳文表示部13の表示位置は、原文表示部11との対応が学習者にとって容易に理解できる範囲であれば任意である。
【0044】
発音表示部14は、原文表示部11の原文の発音の読みを、学習者が理解できる表音文字により表示する。図1の例では、日本語の表音文字の1つである片仮名により、発音の読み「ワッ ディドゥユー メイク?」が表示されている。また、発音表示部14は、それぞれの音が楽譜表示部12の音符に対応するように表示され、音符との関連を学習者が容易に理解できるように、楽譜表示部12の上側または下側に隣接して表示される。
【0045】
学習用教材1を用いて学習する場合、学習者は、原文表示部11に表示された英語のセンテンスについて、訳文表示部13に表示された訳文により意味を学習し、発音表示部14に表示された発音の読みにより発音を学習する。また、学習用教材1には、原文表示部11の原文のネイティブスピーカによる発音が記録されたコンパクトディスクが付属しており、学習者はその再生音を聞きながら楽譜表示部12に表示された楽譜を見ることによりイントネーション、リズム、およびアーティキュレーションといった発音の仕方を学習する。
【0046】
図2は、本発明を適用した学習用教材の第2の実施の形態の構成を示す図である。本実施の形態は、日本語を母国語とする学習者が、英語を学習する教材を例示する。この学習用教材3は、原文表示部31,41、楽譜表示部32,42、訳文表示部33,43、発音表示部34,44、顔イラスト表示部35,45、およびイラスト表示部50から構成される。
【0047】
原文表示部31,41は、それぞれ図1における原文表示部11に対応したものであり、図2の例では、学習対象のセンテンス「What color do you like?」、および「Pink.」をそれぞれ表示している。
【0048】
楽譜表示部32,42は、図1における楽譜表示部12に対応したものである。
【0049】
図2の例では、楽譜表示部32は、16分音符、16分休符、16分音符、16分音符、16分音符、16分音符、16分音符、16分音符、および16分音符により表現されている。第1番目から第3番目の16分音符、第4番目と第5番目の16分音符、および第6番目から第8番目の16分音符はそれぞれ連桁とされている。この例では、楽譜には水平線が表示されていない。第1番目の16分音符より第2番目の16分音符の音高の方が高く、第3番目の16分音符は第2番目の16分音符の音高よりも低く、第1番目の16分音符の音高よりも高い。第4番目の16分音符の音高は第1番目の16分音符よりも低く、第5番目の16分音符の音高は第4番目の16分音符よりも低い。第6番目の16分音符の音高は第5番目の16分音符よりも高く、第3番目の16分音符と同程度である。第7番目の16分音符の音高は第6番目の16分音符よりも低く、第8番目の16分音符は第7番目の16分音符よりも低い。
【0050】
図2の例では、「What color」、「do you」、「like?」の各フレーズの発音の相対的な高さが音符の縦方向の位置により表現され、発音の相対的な長さが音符の種類により表現される。この例では、「What color」、「do you」、「like?」の全てが、16分音符により表されている。それぞれの音の高さは各音符の縦方向の位置により表されている。この例の場合、水平線が付加されていないが、各音符の縦方向の位置は、相対的な高さが判る位置に配置されている。
【0051】
「What」、「color」、「do you」、「like?」発音は、それぞれ1個の16分音符、2個の16分音符、2個の16分音符、および3個の16分音符で表現されている。これにより、それぞれの発音の長さが同じであることが表現されている。「What」と「color」の間の音の切れ目の長さは、休符記号である16分休符により表されている。
【0052】
第1番目乃至第3番目の16分音符で表される「What color」の部分、第4番目と第5番目の16分音符で表される「do you」の部分、および第6番目乃至第8番目の16分音符で表される「like?」の部分が、それぞれ連桁とされている。従って、「What color」、「do you」、および「like?」の各部分が、それぞれ一体的に発音される。
【0053】
楽譜表示部42は、8分音符と16分音符により表現されており、第1番目の8分音符と第2番目の16分音符は連桁とされている。楽譜には水平線が表示されていない。第1番目の8分音符より第2番目の16分音符の音高の方が低い。また、第1番目の8分音符にアクセント記号が付されている。
【0054】
「Pink.」の部分は、8分音符と16分音符により表されている。それぞれの音の高さは各音符の縦方向の位置により表されている。この例の場合、水平線が付加されていないが、各音符の縦方向の位置は、相対的な高さが判る位置に配置されている。
【0055】
「Pin」の部分に8分音符を対応付け、「k」の部分に16分音符を対応付けることにより、前者の音の方が後者の音より長いことが表現されている。また「Pin」の部分が強く発音されることが、強弱記号であるアクセント記号により示されている。
【0056】
「Pin」の部分の8分音符と、「k」の部分の16分音符を連桁とすることで、「Pink」は一体的に発音されるべきことが表現されている。
【0057】
訳文表示部33,43は、図1における訳文表示部13に対応したものである。図2の例では、訳文表示部33には訳文「何色が好きかな?」、訳文表示部43には訳文「ピンク。」がそれぞれ表示されている。
【0058】
発音表示部34,44は、図1における発音表示部14に対応したものである。図2の例では、発音表示部34には発音の読み「ワッ カラー ドゥ ユー ライク?」、発音表示部44には発音の読み「ピンク。」がそれぞれ表示されている。
【0059】
顔イラスト表示部35,45は、発話者を識別するために発話者がイラストで表示される。図2の例では、顔イラスト表示部35には保育士の顔のイラスト、顔イラスト表示部45には園児の顔のイラストがそれぞれ原文表示部31,41の原文に付して表示されている。これにより、原文表示部31のセンテンス「What color do you like?」は保育士が、原文表示部41のセンテンス「Pink.」は園児が、それぞれ発話するものであることが示されている。
【0060】
イラスト表示部50は、会話の状況をイラストにより表示する。図2の例では、イラスト表示部50には、保育士が色の一覧表の紙を手にし、「What color do you like?」と問いかけ、園児が保育士の持っている紙の中からピンクを指して、「Pink.」と答える様子を表すイラストが表示されている。
【0061】
学習用教材3を用いて学習する場合、学習者は、原文表示部31,41に表示された会話について、顔イラスト表示部35,45、およびイラスト表示部50に表示されたイラストにより会話の状況を理解し、訳文表示部33,43に表示された訳文により意味を学習する。また、学習者は発音表示部34,44に表示された発音の読みと、付属するコンパクトディスクからの再生音により発音を学習し、楽譜表示部32,42に表示された楽譜によりイントネーション、リズム、およびアーティキュレーションといった会話における発音の仕方を学習する。
【0062】
図3は、本発明を適用した学習用教材の第3の実施の形態の構成を示す図である。本実施の形態は、日本語を母国語とする学習者が、英語を学習する教材を例示する。この学習用教材6は、原文表示部61と楽譜表示部62から構成される。
【0063】
学習用教材6は、例えば、英語の発音の仕方を学習するものである。原文表示部61は、図1における原文表示部11に対応したものであり、図3の例では、学習対象のセンテンス「Good morning.」が表示されている。
【0064】
楽譜表示部62は、図1における楽譜表示部12に対応したものである。図3の例では、楽譜表示部62は、16分音符、16分休符、8分音符、付点8分音符により表現されている。第2番目の8分音符と第3番目の付点8分音符は連桁とされている。楽譜には水平線が表示されていない。第1番目の16分音符より第2番目の8分音符の音高の方が高く、第3番目の付点8分音符の音高は第2番目の8分音符よりも低く、第1番目の16分音符よりも高い。
【0065】
つまり、「Good」、「morning」の各フレーズの発音の相対的な高さが音符の縦方向の位置により表現され、発音の相対的な長さが音符の種類により表現される。図3の例では、「Good」が16分音符により表され、「morning」が2つの8分音符により表されている。2つの8分音符のうちの最後の8分音符には、付点が付されているので、最初の8分音符の1.5倍の長さであることが表されている。勿論この長さも相対的であり、正確に1.5倍の長さである必要はない。「Good」と「morning」の間の音の切れ目の長さは、休符記号である16分休符により表されている。
【0066】
「morning」を表現する2つの8分音符は連桁とされ、一体的に発音すべきことが表現されている。
【0067】
この例の場合、水平線が付加されていないが、各音符の縦方向の位置は、相対的な高さが判る位置に配置されている。
【0068】
学習用教材6を用いて学習する場合、学習者は、原文表示部61に表示された原文についてのイントネーション、リズム、およびアーティキュレーションといった発音の仕方を、楽譜表示部62に表示された楽譜とコンパクトディスクからの再生音により学習する。
【0069】
図4は、本発明を適用した学習用教材の第4の実施の形態の構成を示す図である。本実施の形態は、日本語を母国語とする学習者が、中国語を学習する教材を例示する。この学習用教材7は、原文表示部71、楽譜表示部72、訳文表示部73、および発音表示部74から構成される。
【0070】
原文表示部71は、図1における原文表示部11に対応したものであり、図4の例では、学習対象のセンテンス「早上好。」が表示されている。
【0071】
楽譜表示部72は、図1における楽譜表示部12に対応したものである。図4の例では、楽譜表示部72は、3つの8分音符により表現されている。楽譜には水平線が表示されている。第1番目の8分音符の音高に対して、第2番目の8分音符は高く、第3番目の8分音符は低い。
【0072】
図4の例では、「早」、「上」、「好。」の全てが、8分音符により表されている。それぞれの発音の高さは各音符の縦方向の位置により表されている。この例の場合、4本の水平線が付加されているので、各音符の相対的な高さが判り易くなっている。
【0073】
また、「早」、「上」、「好。」発音が、それぞれ8分音符で表現されているので、それぞれの発音の長さは同じである。
【0074】
訳文表示部73は、図1における訳文表示部13に対応したものである。図4の例では、訳文表示部73には訳文「おはよう。」が表示されている。
【0075】
発音表示部74は、図1における発音表示部14に対応したものである。図4の例では、発音表示部74には発音の読み「ザオ シャン ハオ。」が表示されている。
【0076】
学習用教材7を用いて学習する場合、学習者は、原文表示部71に表示された中国語のセンテンスについて、訳文表示部73に表示された訳文により意味を学習し、発音表示部74に表示された発音の読みにより発音を学習し、楽譜表示部72に表示された楽譜によりイントネーション、リズム、およびアーティキュレーションといった発音の仕方を学習する。この場合にも、付属するコンパクトディスクの再生音が利用される。
【0077】
以上の実施の形態は、英語、および中国語を学習の対象としたが、本発明の学習用教材は、音声を伴う言語であれば任意の言語に適用可能である。
【0078】
発音を学習する際に、楽譜による視覚的な情報のほかに、楽譜の発音を音声データとして収録したコンパクトディスク、メモリなどを用いて、聴覚による学習を併せて行うことにより、当該発音を視覚と聴覚の両面で学習することができ、言語の習得において相乗的な効率化が期待できる。
【0079】
図5は、本発明を適用した教材情報出力装置の第1の実施の形態の構成を示す図である。本実施の形態の教材情報出力装置100は、音声取得部101、楽譜化部102、楽譜取得部103、音声認識部104、原文取得部105、訳文取得部106、発音取得部107、蓄積部108、および出力部109から構成される。
【0080】
音声取得部101は、学習対象のセンテンスやフレーズを1つの単位として、学習対象の言語(例えば、英語)のネイティブスピーカなどが発音した音声データを取得し、取得した音声データを楽譜化部102および音声認識部104に供給する。
【0081】
楽譜化部102は、音声取得部101により取得した音声データから、発音のイントネーション、リズム、およびアーティキュレーションを、音楽記号として符号化した楽譜情報に変換し、変換された楽譜情報を楽譜取得部103に供給する。楽譜化部102が符号化する楽譜情報は、図1における楽譜表示部12が表示する楽譜に対応したものである。楽譜取得部103は、楽譜化部102により変換された楽譜情報を取得し、取得した楽譜情報を蓄積部108に供給する。
【0082】
音声認識部104は、音声取得部101により取得された音声データから、発音された音声を認識して対応する文字データに変換し、変換した文字データを原文取得部105に供給する。原文取得部105は、音声認識部104により変換された文字データを原文として取得し、取得した原文の文字データを蓄積部108に供給する。
【0083】
訳文取得部106は、原文取得部105により取得された原文に対応した訳文(例えば、日本語)の文字データとして取得し、取得した訳文の文字データを蓄積部108に供給する。発音取得部107は、楽譜取得部103により取得された楽譜情報に対応した発音の読みを、訳文に対応する言語(例えば、日本語)における表音文字(例えば、片仮名)の文字データとして取得し、取得した発音の読みの文字データを蓄積部108に供給する。
【0084】
蓄積部108は、楽譜取得部103により取得された楽譜情報、原文取得部105により取得された原文の文字データ、訳文取得部106により取得された訳文の文字データ、および音声取得部107により取得された発音の読みの文字データを蓄積し、出力部109に供給する。
【0085】
出力部109は、蓄積部108により蓄積された楽譜情報から楽譜を生成する。そして、生成した楽譜、蓄積部108により蓄積された原文、訳文、および発音の読みの4つの文字データを関連づけた教材情報を出力する。
【0086】
次に、図6のフローチャートを参照して、図5の教材情報出力装置100による教材情報出力処理について説明する。
【0087】
ステップS121において、音声取得部101が原文(この実施の形態の場合、英語)の発音についての音声データを取得する。ステップS121の処理では、教材情報として出力したい英文のセンテンスやフレーズをネイティブスピーカが発話することで、音声取得部101が音声データを取得する。
【0088】
ステップS122において、楽譜化部102はステップS121の処理により取得された音声データを楽譜情報に変換する。
【0089】
楽譜情報は、発音のイントネーション、リズム、アーティキュレーションを音楽記号により符号化したものであり、そのうち発音のイントネーションは楽譜化部102により、例えば次のように楽譜情報に変換される。すなわち、音声取得部101により取得した音声データは、フーリエ変換により時間周波数情報に変換され、時間周波数情報における各音の周波数をもとに音符の音高に変換される。楽譜化部102が楽譜上の音高とそれに対応する周波数範囲との関係を定義した変換テーブルが記録されたメモリを持つことで、音声データにおける各音の周波数を、楽譜上の音高情報へ変換することができる。
【0090】
発音のリズムは楽譜化部102により例えば次のように楽譜情報に変換される。すなわち、音声取得部101により取得された音声データの振幅のピーク位置や持続時間などの時間振幅情報は、音符や休符の種類と時間位置に変換される。楽譜化部102が時間振幅情報と楽譜情報との関係を定義した変換テーブルが記録されたメモリを持つことで、音声データの振幅のピーク位置を楽譜上における音符の時間位置に変換し、振幅の持続時間を音符の種類に変換することができる。また、所定のテンポに合わせて発音された音声データを利用することができれば、より正確なリズムの楽譜情報に変換することができる。
【0091】
発音のアーティキュレーションは楽譜化部102により例えば次のように楽譜情報に変換される。すなわち、音声取得部101により取得された音声データの時間振幅が第1の閾値と比較され、第1の閾値以上の振幅ピークを持つ音には、アクセント記号が付加される。
【0092】
所定の音を示す周波数の持続時間が第2の閾値と比較され、第2の閾値以上の持続時間を持つ音には、テヌート記号が付加される。また、音の周波数の持続時間が、第2の閾値よりも小さい第3の閾値以下の持続時間であれば、音を切り離して発音するときのスタッカート記号が付加される。
【0093】
隣接する複数音が発音される間、振幅が第4の閾値以下とならない場合、その複数音が同じ音高のときはタイ記号、異なる音高のときはスラー記号が付加される。例えば、図1の実施の形態において、楽譜表示部12の第3番目と第4番目の音符は、それぞれ発音表示部14の「ドゥ」、「ユー」の音に対応している。この2音は途切れず滑らかに発音されているため、「ドゥ」の振幅ピークと「ユー」の振幅ピークとの間であっても振幅は第4の閾値以下とならない。すなわち、「ドゥ」の発音が終わり、「ユー」の発音が始まるまでの間の振幅が第4の閾値以下に下がらないため、第3番目と第4番目の音符にはタイ記号が付加されている。
【0094】
第4の閾値よりも小さい第5の閾値を想定し、連続する複数音が発音される間、振幅が第5の閾値以下とならず、その複数音の音価が8分音符より細かい場合には、それらの音符は連桁とされ、ひとまとまりの発音として表現される。
【0095】
以上のように、楽譜化部102は、音声データの時間振幅情報と時間周波数情報をもとに、音声データを楽譜情報に変換する。なお、音声データを楽譜情報に変換する方法は、上述したものに限定されるものではなく、任意のアルゴリズムを用いることや、複数のアルゴリズムを組み合わせて用いることもできる。
【0096】
楽譜情報の情報形式は、既に規格化されている電子楽器デジタルインタフェース(MIDI:Musical Instrument Digital Interface)などのデータフォーマットに従ったものでもよいし、独自の情報形式を用いてもよい。また、楽譜情報は必要に応じて編集が可能な形式であってもよい。
【0097】
ステップS123において、楽譜取得部103はステップS122の処理で変換された楽譜情報を取得する。ステップS124において、音声認識部104はステップS121の処理で取得した音声データを音声認識し、文字データに変換する。この音声認識部104の音声認識アルゴリズムには、例えば、隠れマルコフモデル(HMM:Hidden Markov Model)など任意のアルゴリズムを採用することができる。ステップS125において、原文取得部105はステップS124の処理で認識された文字データを取得する。
【0098】
ステップS126において、訳文取得部106は外部から入力された訳文についての文字データを取得する。ステップS127において、発音取得部107は外部から入力された発音の読みについての文字データを取得する。ステップS126,S127の処理では、操作者がキーボードやマウスを操作することで入力した文字データが取得されたり、記憶媒体に既に記憶されている文字データが取得される。
【0099】
ステップS128において、蓄積部108は楽譜取得部103、原文取得部105、訳文取得部106、発音取得部107が取得したデータを蓄積する。すなわち、蓄積部108はステップS123の処理で取得した楽譜情報のデータ、ステップS125の処理で取得した原文の文字データ、ステップS126の処理で取得した訳文の文字データ、およびステップS127の処理で取得した発音の読みの文字データの4つを蓄積する。
【0100】
ステップS129において、出力部109はステップS128の処理で蓄積したデータから教材情報が出力される。ステップS129の処理では、蓄積部108により蓄積された楽譜情報から楽譜を生成する。そして、生成した楽譜、蓄積部108により蓄積された原文、訳文、および発音の読みの4つの要素が関連づけられて教材情報として出力される。例えば、図1の原文表示部11、楽譜表示部12、訳文表示部13、発音表示部14に、原文の文字データ、楽譜情報、訳文の文字データ、発音の読みの文字データをそれぞれ対応させた教材情報が出力される。また、出力部109は、操作者からの指示に基づいて、楽譜上で音高差を示す等間隔の水平線を表示する。出力の具体的な形態は、LCD等の表示部への表示や、紙等への印刷である。これにより、例えば図1の示されているような学習用教材1が生成される。
【0101】
以上の教材情報出力処理により、教材情報出力装置100は発音の音声データから楽譜情報と原文を自動認識するので、言語の意味と発音を学習するための教材情報を効率よく出力することができる。
【0102】
図7は、本発明を適用した教材情報出力装置の第2の実施の形態の構成を示す図である。この教材情報出力装置200は、楽譜取得部201、原文取得部202、訳文取得部203、発音取得部204、蓄積部205、および出力部206から構成される。
【0103】
図7の装置は、上述した図5の装置における、音声取得部101、楽譜化部102、および音声認識部104に相当する構成を持たず、原文の発音の楽譜情報および原文の文字データを直接取得するものである。すなわち、楽譜取得部201は、原文の発音の楽譜情報を取得し、蓄積部205に蓄積させる。原文取得部202は、発音に対応した原文の文字データを取得し、蓄積部205に蓄積させる。
【0104】
訳文取得部203、発音取得部204、蓄積部205、および出力部206は、図4における訳文取得部106、発音取得部107、蓄積部108、および出力部109にそれぞれ対応したものであり、その説明は適宜省略する。
【0105】
次に、図8のフローチャートを参照して、教材情報出力装置200の処理について説明する。
【0106】
ステップS221において、楽譜取得部201は原文(例えば、英語)の発音についての楽譜情報を取得する。ここでは、例えば、絶対音感を持つ楽譜作成者が、ネイティブスピーカの発音する英語のセンテンスを聞き、そのイントネーション、リズム、アーティキュレーションを把握する。そして、楽譜作成者は、把握した発音の情報を楽譜作成者自身で楽譜取得部201に入力する。楽譜取得部201は楽譜作成者が、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置を操作することで入力した楽譜情報を取得する。もちろん、絶対音感を持つ楽譜作成者が作成した楽譜に基づく楽譜情報を、ほかの操作者が入力することもできる。
【0107】
楽譜作成者は楽譜情報を譜面として楽譜取得部201に入力することができる。人間の音声における音高は連続的なものである一方、譜面における音高の表記は、半音を最小単位とした不連続なものである。また、絶対音感を持つ楽譜作成者は、12平均律において半音の100分の1(すなわち、1セント)程度の音高を識別する能力を有している。したがって、絶対音感を持つ楽譜作成者は、音声データの発音における音高を楽譜の表記よりも細かい単位で把握する。
【0108】
楽譜作成者は、発音の各音を絶対的な音高として把握することもできるし、発音の第1音目を絶対的な音高として把握し、続く第n音目の音高は第n−1番目の音高を基準とした相対的な音高として把握してもよい。いずれの場合においても、楽譜作成者は、把握した発音の音高情報を譜面として入力する際には、セント単位で把握した音高を半音単位または全音単位の音高に切り捨て、あるいは切り上げを行い、半音単位または全音単位の音高として五線譜上に入力する。
【0109】
発音のリズムやアーティキュレーションについても、楽譜作成者がネイティブスピーカの発音から把握した内容を譜面として楽譜取得部201に入力する。発音の把握は、楽譜作成者の主観に頼ったものであり、楽譜作成者が異なると同じ発音であっても異なる譜面情報が入力される場合がある。しかしここでは、発音を譜面という視覚的に理解でき、発音のイメージをつかみやすい情報に変換することが最も重要であり、譜面情報における細部の正確性は大きな問題とはならない。
【0110】
図9は、絶対音感を有する楽譜作成者がネイティブスピーカの発話「What color do you like?」を聞いて、それを五線譜上に表現した例を示している。この状態では、切り捨て、または切り上げの処理が行われているものの、音高が絶対的に表されている。しかし言語はその性質上、絶対的に音高がネイティブスピーカの音高と一致していなくてはならないというものではない。そこで本実施の形態においては、図2の楽譜表示部32に表示されているように、音部記号(例えば、ト音記号)が省略されて、相対的な音高が入力される。変化記号(例えば、シャープやフラット)による半音の上げ下げも、その厳密さは必要ないので省略される。
【0111】
ステップS222において、原文取得部202はネイティブスピーカの発音に対応した原文についての文字データを取得する。ステップS223において、訳文取得部203は原文取得部202により取得された原文に対応した訳文についての文字データを取得する。ステップS224において、発音取得部204は楽譜取得部201により取得された楽譜情報に対応した発音の読みについての文字データを取得する。ステップS221乃至S224の処理では、ユーザがキーボードやマウスなどの入力装置を操作することで入力した楽譜情報および文字データを取得する。
【0112】
ステップS225において、蓄積部205は楽譜取得部201、原文取得部202、訳文取得部203、および発音取得部204が取得したデータを蓄積する。すなわち、蓄積部205はステップS221の処理で取得した楽譜情報のデータ、ステップS222の処理で取得した原文の文字データ、ステップS223の処理で取得した訳文の文字データ、およびステップS224の処理で取得した発音の読みの文字データの4つを蓄積する。
【0113】
ステップS226において、出力部206はステップS225の処理で蓄積したデータから教材情報を出力する。ステップS226の処理では、蓄積部205により蓄積された楽譜情報から楽譜が生成される。そして、生成された楽譜、蓄積部205により蓄積された原文、訳文、および発音の読みの4つの要素が関連づけられて教材情報として出力される。例えば、図1の原文表示部11、楽譜表示部12、訳文表示部13、発音表示部14に、原文の文字データ、楽譜情報、訳文の文字データ、発音の読みの文字データをそれぞれ対応させた教材情報が出力される。また、出力部206は、相対的な音高差を示す等間隔の水平線を必要に応じて生成することもできる。これにより、例えば図1に示されるような学習用教材1が生成される。
【0114】
以上の教材情報出力処理により、教材情報出力装置200は発音についての楽譜情報を絶対音感を有する楽譜作成者の入力から直接取得するので、発音における繊細な表現を楽譜情報へ反映した教材情報を出力することができる。
【0115】
図10は、本発明を適用した教材情報出力装置の第3の実施の形態の構成を示す図である。この教材情報出力装置300は、音声取得部301、楽譜化部302、楽譜取得部303、音声認識部304、原文取得部305、蓄積部306、および出力部307から構成される。
【0116】
図10の装置は、上述した図5の装置における、訳文取得部106と発音取得部107に相当する構成を持たず、学習する言語の原文とその発音を示す楽譜のみを教材情報として出力するものである。
【0117】
すなわち、蓄積部306は、楽譜取得部303により取得された楽譜情報、および原文取得部305により取得された原文についての文字データを蓄積する。出力部307は、蓄積部306に蓄積された楽譜情報から五線譜による楽譜を生成する。そして、生成された楽譜と蓄積部306に蓄積された原文の2つの要素を関連づけた教材情報が出力される。
【0118】
音声取得部301、楽譜化部302、楽譜取得部303、音声認識部304、および原文取得部305は、図5における音声取得部101、楽譜化部102、楽譜取得部103、音声認識部104、および原文取得部105にそれぞれ対応したものであり、繰り返しになるので、その説明は適宜省略する。
【0119】
次に、図11のフローチャートを参照して、教材情報出力装置300の処理について説明する。
【0120】
ステップS321において、音声取得部301は原文の発音についての音声データを取得する。ステップS321の処理では、例えばネイティブスピーカの原文の音声データが取得される。ステップS322において、楽譜化部302はステップS321の処理で取得した音声データを楽譜情報に変換する。ステップS322の処理は、図6のステップS122の処理と同様の処理である。
【0121】
ステップS323において、楽譜取得部303はステップS322の処理で変換された楽譜情報を取得する。ステップS324において、音声認識部304はステップS321の処理で取得された音声データを音声認識し、文字データに変換する。ステップS325において、原文取得部305はステップS324の処理で変換された原文についての文字データを取得する。ステップS323乃至S325の処理は、図6におけるステップS123乃至S125の処理と同様の処理である。
【0122】
ステップS326において、蓄積部306は楽譜取得部303、および原文取得部305が取得したデータを蓄積する。すなわち、蓄積部306はステップS323の処理で取得され楽譜情報のデータ、およびステップS325の処理で取得された原文の文字データの2つを蓄積する。
【0123】
ステップS327において、出力部307はステップ326の処理で蓄積したデータから教材情報を出力する。ステップS327の処理では、蓄積部306により蓄積された楽譜情報から楽譜が生成される。そして、生成された楽譜、および蓄積部306により蓄積された原文の2つの要素を関連づけた教材情報が出力される。このとき相対的な音高差を示す等間隔の水平線が必要に応じて付加される。これにより、例えば、図3に示されるような原文表示部61と楽譜表示部62に、原文の文字データと楽譜情報をそれぞれ対応させた教材情報が出力される。
【0124】
以上の教材情報出力処理により、教材情報出力装置300は発音の音声データから、教材情報に必要な楽譜情報と原文の両方を自動認識するので、言語の発音を学習するための教材情報を効率よく出力することができる。
【0125】
なお、本明細書において、各ステップは、記載された順序に従って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【0126】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0127】
11 原文表示部,12 楽譜表示部,13 訳文表示部,14 発音表示部,31 原文表示部,32 楽譜表示部,33 訳文表示部,34 発音表示部,41 原文表示部,42 楽譜表示部,43 訳文表示部,44 発音表示部,61 原文表示部,62 楽譜表示部,71 原文表示部,72 楽譜表示部,73 訳文表示部,74 発音表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の言語の原文を表示する原文表示部と、
前記原文表示部により表示された前記原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜を表示する楽譜表示部と
を備える学習用教材。
【請求項2】
前記音楽記号のうちの音符により前記発音の相対的な長さと高さを表し、休符記号により前記発音の切れ目を表し、強弱記号により前記発音の強弱を表す
請求項1に記載の学習用教材。
【請求項3】
前記音楽記号のうちの連桁により、前記発音の一体的に発音される部分を表す
請求項2に記載の学習用教材。
【請求項4】
前記音楽記号のうちのスラーまたはタイにより、前記発音の連結して発音される部分を表す
請求項3に記載の学習用教材。
【請求項5】
前記原文表示部により表示された前記原文に対応した他の言語による訳文を表示する訳文表示部と、
前記他の言語における表音文字を用いて、前記楽譜表示部により表示された前記楽譜に対応した前記発音の読みを表示する発音表示部と
をさらに備える請求項4に記載の学習用教材。
【請求項6】
所定の言語の原文を取得する原文取得手段と、
前記原文取得手段により取得された前記原文に対応した発音を音楽記号で示した楽譜の楽譜情報を取得する楽譜取得手段と、
前記楽譜取得手段により取得された前記楽譜情報と、前記原文取得手段により取得された前記原文とを蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積された前記楽譜情報から生成した楽譜と前記原文との対応を関連づけた教材情報を出力する出力手段と
を備える教材情報出力装置。
【請求項7】
前記出力手段は、前記音楽記号のうちの音符により前記発音の相対的な長さと高さを表し、休符記号により前記発音の切れ目を表し、強弱記号により前記発音の強弱を表した前記楽譜を生成し、前記楽譜と前記原文との対応を関連づけた教材情報を出力する
請求項6に記載の教材情報出力装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記音楽記号のうちの連桁により前記発音の一体的に発音される部分を表した前記楽譜を生成する
請求項7に記載の教材情報出力装置。
【請求項9】
前記原文取得手段により取得された前記原文に対応した他の言語による訳文を取得する訳文取得手段と、
前記他の言語における表音文字を用いて、前記楽譜取得手段により取得された前記楽譜情報に対応した前記発音の読みを取得する発音取得手段と
をさらに備え、
前記蓄積手段は、前記訳文取得手段により取得された前記訳文と、前記発音取得手段により取得された前記発音の読みとをさらに蓄積し、
前記出力手段は、前記蓄積手段に蓄積された前記楽譜情報から生成した前記楽譜、前記原文、前記訳文、および前記発音の読みの対応を関連づけた教材情報を出力する
請求項8に記載の教材情報出力装置。
【請求項10】
前記所定の言語の前記発音の音声データを取得する音声取得手段と、
前記音声取得手段により取得された前記音声データを、前記楽譜情報に変換する楽譜化手段と
をさらに備え、
前記楽譜取得手段は、前記楽譜化手段により変換された前記楽譜情報を取得する
請求項8に記載の教材情報出力装置。
【請求項11】
前記音声取得手段により取得された前記音声データから、前記所定の言語の前記原文を認識する音声認識手段
をさらに備え、
前記原文取得手段は、前記音声認識手段により認識された前記原文を取得する
請求項10に記載の教材情報出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−13915(P2012−13915A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149801(P2010−149801)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(510182124)合同会社 ハミングリッシュ アカデミー (1)
【Fターム(参考)】