説明

定量ポンプ装置

【課題】流出側バルブの両側で圧力差が発生している場合でも、高い精度で定量吐出を行うことができる定量ポンプ装置を提供すること。
【解決手段】定量ポンプ装置1では、2台の往復ポンプ装置10A、10Bを用い、一方の往復ポンプ装置の吐出期間の始期および終期に対して他方の往復ポンプ装置の吐出期間の終期および始期を重畳させる。また、吸入動作の後、吐出期間の前に、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boの双方を閉にしてポンプ室内の容積を膨張あるいは収縮させて圧力差を解消する補正動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の往復ポンプ装置を備えた定量ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
定量ポンプ装置としては、往復ポンプ装置を利用したものがあるが、かかる往復ポンプでは、上死点あるいは下死点において、吐出量が必ず0になる点が存在するため、定量吐出の精度が低いという問題がある。そこで、2台の往復ポンプ装置を並列に接続し、一台の往復ポンプ装置が吐出を終了する際に他の往復ポンプ装置に吐出を開始させ、全体としての吐出流量が常に一定となるように構成したものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−207951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示の往復ポンプ装置のように2台の往復ポンプ装置を位相させた場合でも、ポンプ室内と共通吐出口側との間に圧力差があると、流出側バルブを開状態に切り換えた直後、ポンプ室から共通吐出口側への流体の流出、あるいは共通吐出口側からポンプ室への流体の流入が起こり、吐出量が変動するという問題点がある。なお、特許文献1に開示の定量ポンプ装置では、ポンプ室に流体を吸入した後、ポンプ室から気泡を放出するために流入側バルブを開状態にしてポンプ室内を収縮させているが、このような動作では、ポンプ室内と共通吐出口側との間に圧力差がある場合の単位時間当たりの吐出量のばらつきを防止することはできない。
【0004】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、流出側バルブの両側で圧力差が発生している場合でも、高い精度で定量吐出を行うことができる定量ポンプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では、流入側および流出側に流入側バルブおよび流出側バルブが各々接続された往復ポンプ装置を複数、備えるとともに、当該複数の往復ポンプ装置に対して前記流出側バルブを介して接続する共通吐出口を備えた定量ポンプ装置において、前記流入側バルブ、前記流出側バルブおよび前記往復ポンプ装置を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記複数の往復ポンプ装置毎にタイミングをずらして吐出期間と待機期間とを設定するとともに、当該吐出期間の始期および終期に対して他の往復ポンプ装置の前記吐出期間の終期および始期を重畳させ、前記待機期間においてポンプ室内への吸入動作を行った後、前記吐出期間の前に、前記流入側バルブおよび前記流出側バルブの双方を閉にしてポンプ室内の容積を膨張あるいは収縮させてポンプ室内の圧力と共通吐出口側との間の圧力差を解消する補正動作を行わせることを特徴とする。
【0006】
本発明では、複数台の往復ポンプ装置を用い、吐出期間の始期および終期に対して他の往復ポンプ装置の吐出期間の終期および始期を重畳させるため、往復ポンプ装置において上死点あるいは下死点で吐出量が0になる点が存在する場合でも、全体としての吐出流量が常に一定となる。また、吸入動作の後、吐出期間の前に、流入側バルブおよび流出側バルブの双方を閉にしてポンプ室内の容積を膨張あるいは収縮させて圧力差を解消する補正動作を行うため、流出側バルブを挟む両側に圧力差がある場合でも、高い精度で定量吐出を行うことができる。
【0007】
本発明においては、複数の往復ポンプ装置が各々、個別の流入側バルブを介して個別の吸入口に接続している構成であってもよいが、前記複数の往復ポンプ装置に対して前記流入側バルブを介して接続する共通吸入口を備えている構成を採用してもよい。
【0008】
本発明において、前記往復ポンプ装置は、駆動源がステッピングモータあるいはAC同期モータであることが好ましい。このようなモータでは、通電を停止したときでも、保持力によってロータの位置保持を行うことができる。従って、弁体の位置保持を行う場合でも、ソレノイドなどと違って常時通電が不要であるので、低消費電力化を図ることができる。また、前記往復ポンプ装置の駆動源がステッピングモータである場合、当該ステッピングモータの1ステップ分に対応するポンプ室の内容積の変化量がポンプ室全体の内容積に対して1/100以下であることが好ましい。このように構成すると、分解能の高い定量ポンプ装置を実現できる。
【0009】
本発明において、前記往復ポンプ装置のポンプ室内の圧力と前記共通吐出口側との間の圧力差を直接あるいは間接的に監視する監視装置を備え、前記制御部は、前記監視装置での監視結果に基づいて、ポンプ室内の圧力と前記共通吐出口側との間に圧力差があるときに前記補正動作を行わせる構成を採用することができる。
【0010】
本発明において、前記監視装置は、前記複数の往復ポンプ装置の各ポンプ室内の圧力を監視する複数の第1の圧力センサと、前記共通吐出口側の圧力を監視する第2の圧力センサとを備え、前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサでの検出結果とを比較して前記圧力差を監視する構成を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記監視装置は、前記複数の往復ポンプ装置の各ポンプ室内の圧力を監視する複数の圧力センサを備え、当該複数の往復ポンプ装置のうち、前記吸入動作を行った往復ポンプ装置のポンプ室に配置された圧力センサでの検出結果と、前記出力側バルブが開状態になっている往復ポンプ装置のポンプ室に配置された圧力センサでの検出結果とを比較して前記圧力差を監視する構成を採用することができる。
【0012】
かかる制御を実現可能な定量ポンプ装置は、流入側および流出側に流入側バルブおよび流出側バルブが各々接続された往復ポンプ装置を複数、備えるとともに、当該複数の往復ポンプ装置に対して前記流出側バルブを介して接続する共通吐出口を備え、さらに、前記複数の往復ポンプ装置の各ポンプ室内の圧力を監視する圧力センサを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記往復ポンプ装置の台数が2台である場合、前記制御装置は、前記吸入動作を行う際のポンプ室の膨張速度を前記吐出期間におけるポンプ室の収縮速度よりも高く設定すればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る定量ポンプ装置では、複数台の往復ポンプ装置を用い、吐出期間の始期および終期に対して他の往復ポンプ装置の吐出期間の終期および始期を重畳させるため、往復ポンプ装置において上死点あるいは下死点で吐出量が0になる点が存在する場合でも、全体としての吐出流量が常に一定となる。また、吸入動作の後、吐出期間の前に、流入側バルブおよび流出側バルブの双方を閉にしてポンプ室内の容積を膨張あるいは収縮させて圧力差を解消する補正動作を行うため、流入側バルブの流入側と、吐出側バルブの吐出側に圧力差がある場合、結果として流出側バルブを挟む両側に圧力差がある場合でも、高い精度で定量吐出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[実施の形態1]
(装置構成)
図1は、本発明を適用した定量ポンプ装置の基本構成を示す概念図である。図2は、本発明を適用した定量ポンプ装置の構成例を示す斜視図である。図3は、図2に示す定量ポンプ装置の本体部分の縦断面図である。
【0017】
図1に示すように、本形態の定量ポンプ装置1は、液体あるいは気体の定量吐出を行うポンプ装置であり、流入路12Ai、12Biおよび流出路12Ao、12Boに流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boが各々接続された2台の往復ポンプ装置10A、10Bを備えている。2台の往復ポンプ装置10A、10Bに対しては、流出側バルブ11Ao、11Boを介して接続する共通の流出路12oに共通吐出口13oが構成されている。また、本形態の定量ポンプ装置1では、2台の往復ポンプ装置10A、10Bに対して流入側バルブ11Ai、11Biを介して接続する共通の流入路12iに共通吸入口13iが構成されている。ここで、往復ポンプ装置10A、10Bは互いに同一の構成を有しているとともに、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boはいずれも同一の構成を有している。また、流入路12Ai、12Biは互いに同一の構成を有し、流出路12Ao、12Boは互いに同一の構成を有している。
【0018】
本形態の定量ポンプ装置1は、例えば、図2に示すように、複数枚のプレートを積層した直方体形状の本体部分2と、この本体部分2に対してコネクタやケーブルを介して接続された制御装置3(制御部)とを備えている。本体部分2は、底板75、ベース板76、流路構成板77、この流路構成板77の上面を覆うことにより流路の上面を塞ぐ上板78がこの順に積層され、上板78には、共通吐出口13oを構成するパイプ781、および共通吸入口13iを構成するパイプ782が連結されている。
【0019】
詳しくは後述するが、図3に示すように、往復ポンプ装置10A、10Bはいずれも、ポンプ室20に配置されたダイヤフラム弁170からなる弁体と、この弁体を駆動してポンプ室20の内容積を収縮、膨張させるステッピングモータ(駆動源)を備えた駆動装置105とを備えており、ステッピングモータが一方方向に回転したときにポンプ室20の内容積が拡大する方向にダイヤフラム弁170を駆動し、ステッピングモータが他方方向に回転したときにポンプ室20の内容積が収縮する方向にダイヤフラム弁170を駆動する。ここで、ステッピングモータの1ステップ分に対応するポンプ室20の内容積の変化量は、ポンプ室20全体の内容積に対して1/100以下である。
【0020】
また、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boは、各々が弁体(ダイヤフラム弁260)およびリニアアクチュエータ201を備えたアクティブバルブであり、各々が独立して開閉動作を行う。
【0021】
(動作)
図4は、本形態の定量ポンプ装置の動作を示すタイミングチャート図であり、かかる制御は、図2に示す制御装置3により行われる。
【0022】
図4(a)には、2台の往復ポンプ装置10A、10Bのうち、第1の往復ポンプ装置10Aにおいてステッピングモータによって弁体が駆動される様子を示してあり、波形が上向きの期間はポンプ室20が収縮して流体が吐出され、波形が下向きの期間はポンプ室20が膨張して液体が吸引される様子を示す。図4(b)、(c)には、第1の往復ポンプ装置10Aに対する流入側バルブ11Aiおよび流出側バルブ11Aoが駆動される様子を示してあり、波形が上向きの信号が入力されると、それ以降、波形が下向きの信号が入力されるまでバルブが開状態となり、波形が下向きの信号が入力されると、それ以降、波形が上向きの信号が入力されるまでバルブが閉状態となる。図4(d)には、第2の往復ポンプ装置10Bにおいてステッピングモータによって弁体が駆動される様子を示してあり、波形が上向きの期間はポンプ室20が収縮して液体が吐出され、波形が下向きの期間はポンプ室20が膨張して液体が吸引される様子を示す。図4(e)、(f)には、第2の往復ポンプ装置10Bに対する流入側バルブ11Biおよび流出側バルブ11Boが駆動される様子を示してあり、波形が上向きの信号が入力されると、それ以降、波形が下向きの信号が入力されるまでバルブが開状態となり、波形が下向きの信号が入力されると、それ以降、波形が上向きの信号が入力されるまでバルブが閉状態となる。図4(g)には、第1の往復ポンプ装置10Aおよび第2の往復ポンプ装置10Bから吐出される液体の吐出量(共通吐出口13oからの吐出量)を合成した結果を示し、図4(h)には、第1の往復ポンプ装置10Aおよび第2の往復ポンプ装置10Bに吸入される液体の吸入量を合成した結果(共通吸入口13iからの吸入量)を示してある。
【0023】
本形態においては、各時間毎の動作は後述するが、制御装置3は、まず、図4の上段に示すように、2台の往復ポンプ装置10A、10B毎にタイミングをずらして吐出期間T1A、T1Bと待機期間T2A、T2Bとを設定するとともに、一方の往復ポンプ装置(例えば、第1の往復ポンプ装置10A)の吐出期間(例えば、吐出期間T1A)の始期および終期に対して他方の往復ポンプ装置(例えば、第2の往復ポンプ装置10B)の吐出期間(例えば、吐出期間T1B)の終期および始期を重畳させる。
【0024】
また、制御装置3は、待機期間T2A、T2Bにおいてポンプ室20内への吸入動作を行った後、吐出期間T1A、T1Bの前に、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boの双方を閉にしてポンプ室20内の容積を収縮させて圧力差を解消する補正動作を行わせる。
【0025】
図4において、まず、時間t0までは、往復ポンプ装置10A、10Bは停止状態にあって、各ポンプ室20には液体(流体)を吸入し終えた状態にある。また、全てのバルブが閉状態にある。この状態で、図4(a)、(b)、(c)に示すように、時間t0において、第1の往復ポンプ装置10Aに対する流出側バルブ11Aoが開状態になった後、時間t1において、第1の往復ポンプ装置10Aで弁体がポンプ室20を収縮する方向に駆動される結果、液体の吐出が開始される。かかる吐出は、時間t8までの吐出期間T1Aにおいて継続され、その間、第1の往復ポンプ装置10Aは液体を定量吐出する。
【0026】
そして、時間t8において、第1の往復ポンプ装置10Aに対する流出側バルブ11Aoが閉状態になって液体の吐出が停止された後、かかる停止は、時間t13までの待機期間T2Aにおいて継続される。かかる待機期間T2Aにおいては、時間t9において第1の往復ポンプ装置10Aに対する流入側バルブ11Aiが開状態になった後、時間t10〜t11まで第1の往復ポンプ装置10Aで弁体がポンプ室20を膨張する方向に駆動されて液体の吸入動作が行われる。
【0027】
次に、時間t13において、再び、第1の往復ポンプ装置10Aに対する流出側バルブ11Aoが開状態になった後、時間t14において、再び、第1の往復ポンプ装置10Aで弁体がポンプ室20を収縮する方向に駆動されて液体の吐出が開始される。かかる吐出は、時間t22までの吐出期間T1Aにおいて継続され、その間、第1の往復ポンプ装置10Aは液体を定量吐出する。
【0028】
そして、時間t22において、第1の往復ポンプ装置10Aに対する流出側バルブ11Aoが閉状態になって液体の吐出が停止された後、かかる停止は、時間t27までの待機期間T2Aにおいて継続される。かかる待機期間T2Aにおいては、時間t23において第1の往復ポンプ装置10Aに対する流入側バルブ11Aiが開状態になった後、時間t24〜t25まで第1の往復ポンプ装置10Aで弁体がポンプ室20を膨張する方向に駆動されて液体の吸入動作が行われる。このような一連の動作は、その後、繰り返される。
【0029】
一方、図4(d)、(e)、(f)に示すように、第2の往復ポンプ装置10Bでも同様な動作が行われるが、そのタイミングがずれている。従って、時間t6において、第2の往復ポンプ装置10Bに対する流出側バルブ11Boが開状態になった後、時間t7において、第2の往復ポンプ装置10Bで弁体がポンプ室20を収縮する方向に駆動されて液体の吐出が開始される。かかる吐出は、時間t15までの吐出期間T1Bにおいて継続され、その間、第2の往復ポンプ装置10Bは液体を定量吐出する。次に、時間t15において、第2の往復ポンプ装置10Bに対する流出側バルブ11Boが閉状態になって液体の吐出が停止され、かかる停止は、時間t20までの待機期間T2Bにおいて継続される。かかる待機期間T2Bにおいては、時間t16において第2の往復ポンプ装置10Bに対する流入側バルブ11Biが開状態になった後、時間t17〜t18まで第2の往復ポンプ装置10Bで弁体がポンプ室20を膨張する方向に駆動されて液体の吸入動作が行われる。このような一連の動作は、その後、繰り返される。
【0030】
ここで、時間t7〜t8や時間t21〜t22のように、第1の往復ポンプ装置10Aの吐出期間T1Aの終期と、第2の往復ポンプ装置10Bの吐出期間T1Bの始期とは重畳し、時間t14〜t15のように、第2の往復ポンプ装置10Bの吐出期間T1Bの終期と、第1の往復ポンプ装置10Aの吐出期間T1Aの始期とは重畳している。このため、図4(h)に示すように、液体の吸入は断続的に行われるが、図4(g)に示すように、第1の往復ポンプ装置10Aおよび第2の往復ポンプ装置10Bから吐出される液体の吐出量(共通吐出口からの吐出量)を合成した吐出速度(単位時間当たりの吐出量)は、常に一定である。
【0031】
(圧力差に対する補正動作)
本形態の定量ポンプ装置1では、ポンプ室20内と共通吐出口13o側との間に圧力差があると、流出側バルブ11Ao、11Boを開状態に切り換えた直後、ポンプ室20から共通吐出口13o側への液体の流出、あるいは共通吐出口13o側からポンプ室20への液体の流入が起こり、吐出量が変動する。
【0032】
そこで、本形態では、定量ポンプ装置1の使用状況に基づいて、ポンプ室20内の圧力よりも共通吐出口13o側の圧力が高いとして、制御装置3は条件設定されている。すなわち、制御装置3は、予め設定された条件に従って、待機期間T2A、T2Bにおいて、ポンプ室20内への吸入動作を行った後、吐出期間T1A、T1Bの前に、期間t5〜t6、t12〜t13、t19〜t20では、流入側バルブ11Aiおよび流出側バルブ11Aoの双方(または流入側バルブ11Biおよび流出側バルブ11Boの双方)を閉にして第1の往復ポンプ装置10A(または第2の往復ポンプ装置10B)のポンプ室20内の容積を収縮する方向に弁体を駆動する補正動作を行わせる。例えば、待機期間T2Aにおいて、ポンプ室20内への吸入動作を行った後、吐出期間T1Aの前に、期間t5〜t6、t19〜t20では、第1の往復ポンプ装置10Aに対する流入側バルブ11Aiおよび流出側バルブ11Aoの双方を閉にして第1の往復ポンプ装置10Aのポンプ室20内の容積を収縮する方向に弁体を駆動し、ポンプ室20内の圧力を高め、共通吐出口13o側との圧力差を解消する。また、待機期間T2Bにおいて、ポンプ室20内への吸入動作を行った後、吐出期間T1Bの前に、期間t12〜t13では、第2の往復ポンプ装置10Bに対する流入側バルブ11Biおよび流出側バルブ11Boの双方を閉にして第2の往復ポンプ装置10Bのポンプ室20内の容積を収縮する方向に弁体を駆動し、ポンプ室20内の圧力を高め、共通吐出口13o側との圧力差を解消する。
【0033】
なお、本形態では、ポンプ室20内の圧力よりも共通吐出口13o側の圧力が高いとして、吐出前のポンプ室20内の圧力を高めたが、ポンプ室20内の圧力よりも共通吐出口13o側の圧力が低い場合には、図5に示すように、待機期間T2A、T2Bにおいて、ポンプ室20内への吸入動作を行った後、吐出期間T1A、T1Bの前に、期間t5〜t6、t12〜t13、t19〜t20では、流入側バルブおよび流出側バルブの双方を閉にしてポンプ室20内の容積を膨張する方向に弁体を駆動する補正動作を行えばよい。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の定量ポンプ装置1では、2台の往復ポンプ装置10A、10Bを用い、一方の往復ポンプ装置の吐出期間の始期および終期に対して他方の往復ポンプ装置の吐出期間の終期および始期を重畳させるため、往復ポンプ装置10A、10Bにおいて上死点あるいは下死点で吐出量が0になる点が存在する場合でも、全体としての吐出流量が常に一定となる。
【0035】
また、吸入動作の後、吐出期間T1A、T1Bの前に、流入側バルブおよび流出側バルブの双方を閉にしてポンプ室20内の容積を膨張あるいは収縮させて圧力差を解消する補正動作T3A、T3Bを行うため、流出側バルブ11Ao、11Boを挟む両側に圧力差がある場合でも、高い精度で定量吐出を行うことができる。それ故、弁体としてダイヤフラム弁を用いた場合には、ポンプ室20の内圧と大気圧との圧力差によってダイヤフラム弁に不要な変形が発生することがあるが、本形態では、かかる変形を補正して吸引および吐出を行うことができ、吸引量および吐出量の精度が高い。
【0036】
また、往復ポンプ装置10A、10Bでは、駆動装置105に用いたステッピングモータに供給する信号パターンにより動作を制御するため、カム機構によって往復ポンプ装置の動作を制御する構成と違って、ステッピングモータに供給する信号パターンを変えるだけで弁体(ダイヤフラム弁170)の移動速度を容易に変更できるので、単位時間当たりの吐出量が少ない条件から多い条件にまで安定して対応することができる。また、単位時間当たりの吐出量が多い条件の場合でも、ダイヤフラム弁170の往復回数が少なくて済むため、定量ポンプ装置1の寿命が長い。
【0037】
また、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boは、各々が独立して開閉動作を行うアクティブバルブであるため、流入側および流出側の双方が開状態になることを回避できる。従って、バルブ吸入口13i側が吐出口13o側よりも高圧であっても、順流が発生せず、定量ポンプ装置1は、常に定量吐出を行うことができる。また、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boの全てを開状態にして往復ポンプ装置10A、10Bを動作させれば、往復ポンプ装置10A、10B内から液体を抜くことができる。それ故、凍結防止などを容易に行うことができる。
【0038】
さらに、本形態の定量ポンプ装置1では、吸入側および吐出側が同一の構成であるので、吸入側と吐出側とを入れ換えて動作させることができる。従って、吐出側から吸入側に液体の回収を行うこともできる。
【0039】
さらにまた、往復ポンプ装置10A、10Bの駆動装置105には、駆動源としてステッピングモータが用いられ、このステッピングモータの1ステップ分に対応するポンプ室20の内容積の変化量がポンプ室20全体の内容積に対して1/100以下である。このため、本形態の定量ポンプ装置1は分解能が高い。また、ステッピングモータは、通電を停止したときでも、保持力によってロータの位置保持を行うことができる。従って、ダイヤフラム弁170の位置保持を行う場合でも、ソレノイドなどと違って常時通電が不要であるので、低消費電力化を図ることができる。このような観点からすれば、ステッピングモータに代えて、AC同期モータを用いてもよい。
【0040】
[実施の形態2]
実施の形態1では、予め、図4あるいは図5に示す補正動作を行うように設定したが、本形態では、往復ポンプ装置10A、10Bのポンプ室20内の圧力と共通吐出口13o側との間の圧力差を直接あるいは間接的に監視する監視装置を設け、制御装置3は、監視装置での監視結果に基づいて、ポンプ室20内の圧力と共通吐出口側との間に圧力差があるときに、図4あるいは図5を参照して説明した補正動作を行わせる。
【0041】
このような監視装置として、本形態では、図6に示すように、往復ポンプ装置10A、10Bの各ポンプ室20内の圧力を監視する第1の圧力センサ14A、14Bと、共通吐出口13o側の圧力を監視する第2の圧力センサ14oとを用いる。このように構成した監視装置では、例えば、ポンプ室20内への吸入動作を終えた後、第1の圧力センサ14A、14Bと第2の圧力センサ14oでの検出結果とを比較して圧力差を監視する。そして、制御装置3は、その監視結果に基づいて、補正動作を図4に示す条件、および図5に示す条件のいずれの条件で行うかを決定する。また、ポンプ室20内と共通吐出口側との間に圧力差がない場合には、補正動作を行わない。
【0042】
[実施の形態3]
実施の形態1では、予め、図4あるいは図5に示す補正動作を行うように設定したが、本形態では、実施の形態2と同様、往復ポンプ装置10A、10Bのポンプ室20内の圧力と共通吐出口13o側との間の圧力差を直接あるいは間接的に監視する監視装置を設け、制御装置3は、監視装置での監視結果に基づいて、ポンプ室20内の圧力と共通吐出口側との間に圧力差があるときに、図4あるいは図5を参照して説明した補正動作を行わせる。
【0043】
このような監視装置として、本形態では、図7に示すように、往復ポンプ装置10A、10Bの各ポンプ室20内の圧力を監視する圧力センサ14A、14Bを用いる。このように構成した監視装置では、例えば、時間t19において、ポンプ室20内への吸入動作を終えた往復ポンプ装置10Bのポンプ室20に配置された圧力センサ14Bでの検出結果と、往復ポンプ装置10Aのポンプ室20に配置された圧力センサ14Aでの検出結果とを比較してポンプ室20内と共通吐出口側との圧力差を監視する。時間t14において往復ポンプ装置10Aの圧力センサ14Aでの検出結果は、共通吐出口側の圧力と等しいからである。そして、制御装置3は、その監視結果に基づいて、時間t19〜t20で行う補正動作を図4に示す条件、および図5に示す条件のいずれの条件で行うかを決定する。また、ポンプ室20内と共通吐出口側との間に圧力差がない場合には、補正動作を行わない。
【0044】
(往復ポンプ装置の具体的構成例)
図3および図8を参照して、本形態の定量ポンプ装置に用いた往復ポンプ装置10A、10Bの具体的構成例を説明する。
【0045】
図8は、本発明を適用した定量ポンプ装置に用いた往復ポンプ装置を縦に分割した状態の分解斜視図である。図3および図8に示すように、本形態の定量ポンプ装置1の本体部分2は、底板75、ベース板76、流路構成板77、および上板78がこの順に積層された構造を有しており、ベース板76に形成された穴内に往復ポンプ装置10A、10Bが構成されている。本形態において、往復ポンプ装置10A、10Bは、ポンプ室20と、ポンプ室20の内容積を膨張収縮させて液体の吸入および吐出を行うダイヤフラム弁170(弁体)と、ダイヤフラム弁170を駆動する駆動装置105とを備えている。
【0046】
駆動装置105は、環状のステータ120と、このステータ120の内側に同軸状に配置された回転体103と、この回転体103の内側に同軸状に配置された移動体160と、回転体103の回転を移動体160を軸線方向に移動させる力に変換して移動体160に伝達する変換機構140とを備えている。ここで、駆動装置105は、ベース板76に形成された空間内において、地板79とベース板76との間に搭載された状態にある。
【0047】
駆動装置105において、ステータ120は、ボビン123に巻回されたコイル121、およびコイル121を覆うように配置された2枚のヨーク125からなるユニットが軸線方向に2段に積層された構造になっている。この状態で、上下2段のいずれのユニットにおいても、2枚のヨーク125の内周縁から軸線方向に突き出た極歯が周方向に交互に並んだ状態となり、ステッピングモータのステータとして機能する。
【0048】
回転体103は、上方に開口するカップ状部材130と、このカップ状部材130の円筒状の胴部131の外周面に固着された環状のロータマグネット150とを備えている。カップ状部材130の底壁133の中央には、軸線方向上側に凹む凹部135が形成され、地板79には、凹部135内に配置されたボール118を受ける軸受部751が形成されている。また、ベース板76の上端側の内面には環状段部766が形成されている一方、カップ状部材130の上端部分には、胴部131の上端部分と環状のフランジ部134とによって、ベース板76側の環状段部766に対向する環状段部が形成されており、これらの環状段部で区画形成された環状空間内には、環状のリテーナ181およびこのリテーナ181によって周方向に離間した位置に保持されたベアリングボール182からなる軸受180が配置されている。このようにして、回転体103は、軸線周りに回転可能な状態で本体部分2に支持された状態にある。
【0049】
回転体103において、ロータマグネット150の外周面は、ステータ120の内周面に沿って周方向に並ぶ極歯に対向している。ここで、ロータマグネット150の外周面では、S極とN極が周方向に交互に並んでおり、ステータ120とカップ状部材130とはステッピングモータを構成している。
【0050】
移動体160は、底壁161と、底壁161の中央から軸線方向に突き出た円筒部163と、この円筒部163の周りを囲むように円筒状に形成された胴部165とを備えており、胴部165の外周には雄ネジ167が形成されている。
【0051】
本形態では、回転体103の回転によって移動体160を軸線方向で往復移動させるための変換機構140を構成するにあたって、カップ状部材130の胴部131の内周面には、周方向に離間する4箇所に雌ネジ137を形成する一方、移動体160の胴部165の外周面には、カップ状部材130の雌ネジ137に係合して動力伝達機構141を構成する雄ネジ167が形成されている。従って、雄ネジ167と雌ネジ137とが噛み合うようにカップ状部材130の内側に移動体160を配置すれば、移動体160はカップ状部材130の内側に支持された状態となる。また、移動体160の底壁161には、周方向に6個の長穴169が貫通穴として形成されている一方、ベース板76からは6本の突起769が延びて、突起769の下端部が長穴169に嵌ることにより、供回り防止機構149が構成されている。すなわち、カップ状部材130が回転した際、移動体160は、突起769と長穴169からなる供回り防止機構149によって回転が阻止されているので、カップ状部材130の回転は、その雌ネジ137および移動体160の雄ネジ167からなる動力伝達機構141を介して移動体160に伝達される結果、移動体160は、回転体103の回転方向に応じて軸線方向の一方側および他方側に直線移動することになる。
【0052】
移動体160には、ダイヤフラム弁170が直接、連結されている。ダイヤフラム弁170は、底壁171と、底壁171の外周縁から軸線方向に立ち上がる円筒状の胴部173と、この胴部173の上端から外周側に広がるフランジ部175とを備えたカップ形状を有しており、底壁171の中央部分が、移動体160の円筒部163に被さった状態で、それらの上下方向から、止めネジ178とキャップ179とに固定されている。また、ダイヤフラム弁170のフランジ部175の外周縁は、液密性と位置決めとして機能する肉厚部になっており、この肉厚部は、流路構成板77の貫通穴21の周囲において、ベース板76と流路構成板77との間に固定されている。このようにして、ダイヤフラム170は、ポンプ室20の下面を規定し、かつ、ポンプ室20の周りにおいてベース板76と流路構成板77との間の液密を確保している。
【0053】
この状態で、ダイヤフラム弁170の胴部173は、断面U字状に折り返された状態にあり、折り返し部分172は、移動体160の位置によって形状が変化することになる。しかるに本形態では、移動体160の円筒部163の外周面からなる第1の壁面168と、ベース板76から延びた突起769の内周面からなる第2の壁面768との間に構成された環状空間内に、ダイヤフラム弁170の断面U字状の折り返し部分172を配置してある。従って、ダイヤフラム弁170はいずれの状態にあっても、折り返し部分172は、環状空間内に保持された状態のまま、第1の壁面168および第2の壁面768に沿って展開あるいは巻き上げるように変形する。
【0054】
また、カップ状部材130の底壁133には、周方向における270°の角度範囲にわたって1本の溝136が形成されている一方、移動体160の底面からは下方に向けて突起(図示せず)が形成されている。ここで、移動体160は、軸線回りに回転しないが、軸線方向に移動するのに対して、回転体103は、軸線回りに回転するが、軸線方向に移動しない。従って、突起と溝136は、回転体103および移動体160の停止位置を規定するストッパとして機能する。すなわち、溝136は、周方向において深さが変化しており、移動体160が軸線方向の下方に移動すると、突起が溝136内に嵌るとともに、回転体103の回転により溝136の端部が突起に当接する。その結果、回転体103の回転が阻止され、回転体103および移動体160の停止位置、すなわちダイヤフラム弁170の内容積の最大膨張位置が規定されることになる。
【0055】
このように構成した往復ポンプ装置10A、10Bにおいて、駆動装置105では、ステッピングモータが一方方向に回転したときにポンプ室20の内容積が拡大する方向にダイヤフラム弁170を駆動し、ステッピングモータが他方方向に回転したときにポンプ室20の内容積が縮小する方向にダイヤフラム弁170を駆動する。すなわち、ステータ120のコイル121に給電すると、カップ状部材130が回転し、その回転が変換機構140を介して移動体160に伝達される。従って、移動体160は軸線方向で往復直線運動を行う。その結果、ダイヤフラム弁170が移動体160の移動に合わせて変形し、ポンプ室20の内容積を膨張、収縮させるので、ポンプ室20では、流入路12Ai、12Biからの液体の流入と、流出路12Ao、12Boに向けての液体の流出が行われる。
【0056】
このように本形態の往復ポンプ装置10A、10Bでは、ステッピングモータ機構による回転体103の回転を、雄ネジ167および雌ネジ137からなる動力伝達機構141を利用した変換機構140を介して移動体160に伝達して、ダイヤフラム弁170が固定された移動体160を往復直線運動させる。このため、駆動装置105からダイヤフラム弁170まで、必要最小限の部材で動力を伝達するので、往復ポンプ装置10A、10Bの小型化、薄型化および低コスト化を図ることができる。また、動力伝達機構141における雄ネジ167および雌ネジ137のリード角を小さく、あるいは駆動側のステータの極歯を増加することで、移動体160の微小送りを行うことができる。従って、ポンプ室20の容積を厳密に制御できるので、高い精度で定量吐出を行うことができる。
【0057】
また、本形態ではダイヤフラム弁170を用いているが、このダイヤフラム弁170の折り返し部分172は、環状空間内に保持された状態のまま、第1の壁面168および第2の壁面768に沿って展開あるいは巻き上げるように変形し、無理な摺動が発生しない。従って、無駄な負荷が発生せず、かつ、ダイヤフラム弁170の寿命が長い。また、ダイヤフラム弁170は、ポンプ室20の液体から圧力を受けても、変形しない。それ故、本形態の往復ポンプ装置10A、10Bによれば、高い精度で定量吐出を行うことができ、かつ、信頼性も高い。
【0058】
さらに、回転体103は、本体部分2に対してベアリングボール182を介して軸線周りに回転可能に支持されているため、摺動ロスが小さく、かつ、回転体103は軸線方向に安定して保持されるので、軸線方向における推力が安定している。それ故、駆動装置105の小型化、耐久性の向上、吐出性能の向上を図ることができる。
【0059】
なお、上記形態では、変換機構140の動力伝達機構141としてネジを利用したが、カム溝を利用してもよい。さらに、上記形態では弁体として、カップ状のダイヤフラム弁を用いたが、その他の形状のダイヤフラム弁、あるいはOリングを備えたピストンを用いてもよい。
【0060】
[アクティブバルブの具体的構成例]
図3および図9を参照して、本形態の定量ポンプ装置において流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boとして用いたアクティブバルブの具体的構成例を説明する。図9は、本発明を適用した定量ポンプ装置1において、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boとして用いたアクティブバルブの縦断面を示す説明図である。
【0061】
図3および図9において、アクティブバルブは、駆動源となるステッピングモータ301と、流入口308aおよび流出口308bを備えている。ステッピングモータ301の回転軸301aには、例えば右ネジからなるリードスクリュー302が圧入固定されており、このリードスクリュー302は、ステッピングモータ301の回転方向と同方向に回転する。リードスクリュー302には、バルブ保持部材303の雌ネジ303aがネジ勘合されている。従って、ステッピングモータ301がリードスクリュー302側からみてCCWの方向(反時計回り)に回転すると、バルブ保持部材303はステッピングモータ301に近寄る一方で、ステッピングモータ301がリードスクリュー302側からみてCWの方向(時計回り)に回転すると、バルブ保持部材303はステッピングモータ301から遠ざかることになる。すなわち、リードスクリュー302の回転は、リードスクリュー302とバルブ保持部材303とが螺子結合によって係合し、かつ、バルブ保持部材303が回止めされているため、直動に変換される。
【0062】
バルブ保持部材303の外周側にはスプリング受部303bが同心状に設けられており、このスプリング受部303bとステッピングモータ301によって、スプリング304が保持されている。スプリング304は圧縮コイルバネからなり、バルブ保持部材303をステッピングモータ301から離反する方向に付勢している。なお、本実施形態では、圧縮コイルバネを採用したが、例えば「引っ張りコイルバネ」を採用することもできる。この場合、バルブ保持部材303のスプリング受け部303bの反対面に、引っ張りコイルバネを保持することができる。
【0063】
バルブ保持部材303の中央部には、凸形状のダイヤフラム保持部303cが設けられており、このダイヤフラム保持部303cは、ダイヤフラム弁260のアンダーカット部260aと勘合している。ここで、ダイヤフラム弁260は、外周部260bがベース板76と流路構成板77とに挟み込まれて固定され、かつ、外周側のビード260eも挟み込み固定されている。ビード260eは、流体がベース板76と流路構成板77との隙間から漏れ出るのを防ぎ、シール性の向上に貢献している。また、ダイヤフラム弁260の膜部260cは変形し易いため、応力が集中しないように円弧状に形成されている。なお、ダイヤフラム弁260は、アンダーカット部260aと反対側で流路構成板77と当接する部分にも同心状にビード部260dが形成されている。
【0064】
このように構成したパッシブバルブでは、スプリング304によって、バルブ保持部材303がステッピングモータ301から離反する方向に付勢されている。従って、バルブ保持部材303が直動動作しているときには、リードスクリュー302のネジ部におけるステッピングモータ301側の斜面とバルブ保持部材303の雌ネジ303aにおけるステッピングモータ301側と反対側の斜面とが接触した状態、すなわちリードスクリュー302とバルブ保持部材303とが係合した状態で保たれる。これに対して、穴277がダイヤフラム弁260によって閉鎖されているときには、スプリング304の付勢力と、ダイヤフラム弁260が流路構成板77から受ける反作用の力とが釣り合ってリードスクリュー202のネジ部におけるステッピングモータ301側と反対側の斜面と、バルブ保持部材303の雌ネジ303aにおけるステッピングモータ301側の斜面とが接触していない状態、すなわちリードスクリュー302とバルブ保持部材303とが遊びとの間で非係合となった状態で保たれ、ダイヤフラム弁260は、スプリング304によって穴277を閉鎖する方向に付勢される。従って、穴277を確実に閉鎖することができる。
【0065】
[アクティブバルブの別の具体的構成例]
図3および図10を参照して、本形態の定量ポンプ装置において流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boとして用いたアクティブバルブの別の具体的構成例を説明する。
【0066】
図9は、本発明を適用した定量ポンプ装置1において、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boとして用いたアクティブバルブの縦断面を斜め上方からみたときの説明図である。図3および図9に示すように、流入側バルブ11Ai、11Biおよび流出側バルブ11Ao、11Boとして用いたアクティブバルブは、ベース板76の穴765内にリニアアクチュエータ201を備えており、このリニアアクチュエータ201は、円筒状の固定体203と、この固定体203の内側に配置された略円柱状の可動体205とを有している。固定体203は、ボビン231に環状に巻回されたコイル233と、コイル233の外周面からコイル233の軸線方向の両側を回りこんで一方の先端部236aと他方の先端部236bがコイル233の内周側でスリット237を介して軸線方向で対向する固定体側ヨーク235を備えている。可動体205は、円板状の第1の可動体側ヨーク251と、この第1の可動体側ヨーク251に対して軸線方向の両側に積層された一対の磁石253a、253bとを有している。一対の磁石253a、253bとしては、Nd−Fe−B系やSm−Co系の希土類磁石、あるいは樹脂磁石を用いることがきる。また、可動体205において、一対の磁石253a、253bの各々には、第1の可動体側ヨーク251とは反対側の端面に第2の可動体側ヨーク255a、255bが積層されている。
【0067】
一対の磁石253a、253bは、いずれも軸線方向に着磁されており、第1の可動体側ヨーク251の方に同極を向けている。以下、本形態では、一対の磁石253a、253bは各々、第1の可動体側ヨーク251の方にN極を向け、軸線方向における外側にS極を向けているものとして説明するが、着磁方向についてはその逆であってもよい。
【0068】
ここで、第1の可動体側ヨーク251の外周面は、一対の磁石253a、253bの外周面から外周側に張り出している。また、第2の可動体側ヨーク255a、255bの外周面も、一対の磁石253a、253bの外周面から外周側に張り出している。
【0069】
なお、第1の可動体側ヨーク251の軸線方向における両端面には凹部が形成され、これらの凹部に対して一対の磁石253a、253bが各々嵌め込まれ、接着剤などで固定されている。なお、第1の可動体側ヨーク251、一対の磁石253a、253b、および第2の可動体側ヨーク255a、255bの固定については、接着、圧入、あるいはそれらを併用して一体化した構成を採用すればよい。
【0070】
また、固定体203の軸線方向における両側の開口部には軸受板271a、271b(軸受部材)が固定されており、第2の可動体側ヨーク255a、255bから軸線方向の両側に突き出た支軸257a、257bは、いずれも軸受板271a、271bの穴に摺動自在に挿入されている。このようにして、可動体205は、軸線方向に往復移動可能な状態で固定体203に支持されている。この状態で、可動体205は、外周面が固定体203の内周面に所定の隙間を介して対向し、かつ、固定体側ヨーク235の先端部236a、236b同士は、第1の可動体側ヨーク251の外周面とコイル233の内周面との隙間内で軸線方向に対向する状態にある。また、可動体205と固定体側ヨーク235との間には間隙が確保されている。なお、第2の可動体側ヨーク255a、255bと支軸257a、257bとの固定には、接着、圧入、あるいはそれらを併用して一体化した構成を採用すればよい。
【0071】
このように構成したリニアアクチュエータ201において、本形態では、一方の支軸257bの先端部には軸体259が連結され、この軸体259に対して、弁室270に配置されたダイヤフラム弁260の中央部分が接続されている。ダイヤフラム弁260の外周側には、液密性と位置決めとして機能する環状肉厚部261が形成されており、ダイヤフラム弁260において、この環状肉厚部261を含む外周側がベース板76と流路構成板77との間に挟まれて液密が確保されている。
【0072】
このように構成したリニアアクチュエータ201において、図面に向かって右側では向こう側から手前側に向かってコイル233に電流が流れ、図面に向かって左側では手前側から向こう側にコイル33に電流を流れる期間では、可動体205が、矢印Aで示すように、ローレンツ力により軸線方向において推力を受けて移動する。その結果、流路の途中部分を構成する穴277を塞ぎ、流路を遮断する。これに対して、コイル233への通電方向を反転させると、可動体205は、矢印Bで示すように、軸線方向に沿って下降し、流路の途中部分を構成する穴277を開放する。
【0073】
なお、本形態のリニアアクチュエータ201では、可動体205を磁力で推進するとともに、軸線方向の一方側において、軸受板271aと第2の可動体側ヨーク255aとの間に、付勢部材としての円錐台形状のコイルバネ291を配置してある。従って、可動体205が下降する際には、圧縮バネを変形させながら移動し、可動体205が上昇する際には、圧縮バネの形状復帰力が補助して、高速で移動する。
【0074】
なお、弁体については、ダイヤフラム弁260に限らず、ベローズ弁、その他の弁体を用いてもよい。また、支軸257a、257bと弁体については別体のものを結合させた構成であっても、支軸257a、257bと弁体が一体に形成されている構成であってもよい。
【0075】
以上説明したように、本形態では、可動体205において一対の磁石253a、253bは各々、同極を向けており、磁気的反発力が作用しているが、磁石253a、253bの間に第1の可動体側ヨーク251が配置されているため、一対の磁石253a、253bを同極を向けた状態で固定することができる。
【0076】
また、可動体205において一対の磁石253a、253bは各々、同極を第1の可動体側ヨーク251に向けているため、第1の可動体側ヨーク251からは、半径方向に強い磁束が発生する。従って、第1の可動体側ヨーク251とコイル233の周面同士を対向させておけば、可動体205に大きな推力を付与することができる。
【0077】
さらに、磁石253a、253bを軸線方向で着磁すればよいので、磁石253a、253bを半径方向に着磁する場合と違って、小型化した場合でも着磁が容易であり、量産に適している。
【0078】
しかも、本形態では、第1の可動体側ヨーク251の外周面が、一対の磁石253a、253bの外周面から外周側に張り出しているため、固定体側ヨーク235を設けた場合でも、可動体205に対して軸線方向と垂直方向に作用する磁気吸引力を小さくできる。同様に、第2の可動体側ヨーク255a、255bの外周面が、一対の磁石253a、253bの外周面から外周側に張り出しているため、固定体側ヨーク235を設けた場合でも、可動体205に対して軸線方向と垂直方向に作用する磁気吸引力を小さくできる。従って、組み立て作業を行いやすく、かつ、可動体205が傾きにくいという利点がある。
【0079】
また、本形態において、磁石253a、253bをコイル33の外周側に配置したため、コイル233よりも磁石253a、253bを外側に配置した場合と比較して、磁石253a、253bが小さくてよいので、アクティブバルブを安価に構成できる。また、コイル233を外側に配置したので、固定側ヨークのみで磁路を閉じることができる。
【0080】
さらに、固定体203において、軸線方向に開口する開口部には支軸257a、257bを軸線方向に移動可能に支持する軸受板271a、271bが保持されているため、軸受部材を別途、配置する必要がない。また、固定体203を基準に軸受板271a、271bを固定できるので、支軸257a、257bが傾かないという利点がある。
【0081】
[定量ポンプ装置の用途]
本発明を適用した定量ポンプ装置1は、例えば、各種の燃料電池の改質器に水を定量供給するのに用いられる。また、本発明を適用した定量ポンプ装置1は、ディーゼル機関の排気ガスから窒素酸化物を分解、除去するための改質器への尿素水溶液の定量供給、点滴液の送液用などに用いることもできる。特に吸入側と吐出側との間に圧力差が大きい技術分野において定量吐出を行うのに適している。
【0082】
[その他の実施の形態]
上記形態では、2台の往復ポンプ装置10A、10Bを用いたが、3台以上の往復ポンプ装置を用いた定量ポンプ装置に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1に係る定量ポンプ装置の基本構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す定量ポンプ装置の構成例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す定量ポンプ装置の本体部分の縦断面図である。
【図4】本発明を適用した定量ポンプ装置の動作を示すタイミングチャート図である。
【図5】本発明を適用した定量ポンプ装置の動作を示す別のタイミングチャート図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る定量ポンプ装置の基本構成を示す概念図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る定量ポンプ装置の基本構成を示す概念図である。
【図8】本発明を適用した定量ポンプ装置に用いた往復ポンプ装置を縦に分割した状態の分解斜視図である。
【図9】本発明を適用した定量ポンプ装置において、流入側バルブおよび流出側バルブとして用いたアクティブバルブの縦断面を示す説明図である。
【図10】本発明を適用した定量ポンプ装置において、流入側バルブおよび流出側バルブとして用いた別のアクティブバルブの縦断面を斜め上方からみたときの説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1・・定量ポンプ装置
10A、10B・・往復ポンプ装置
11Ai、11Bi・・流入側バルブ
11Ao、11Bo・・流出側バルブ
12Ai、12Bi、12i・・流入路
12Ao、12Bo、12o・・流出路
13o・・共通吐出口
13i・・共通吸入口
14A、14B、14o・・圧力センサ(監視装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側および流出側に流入側バルブおよび流出側バルブが各々接続された往復ポンプ装置を複数、備えるとともに、当該複数の往復ポンプ装置に対して前記流出側バルブを介して接続する共通吐出口を備えた定量ポンプ装置において、
前記流入側バルブ、前記流出側バルブおよび前記往復ポンプ装置を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記複数の往復ポンプ装置毎にタイミングをずらして吐出期間と待機期間とを設定するとともに、当該吐出期間の始期および終期に対して他の往復ポンプ装置の前記吐出期間の終期および始期を重畳させ、前記待機期間においてポンプ室内への吸入動作を行った後、前記吐出期間の前に、前記流入側バルブおよび前記流出側バルブの双方を閉にしてポンプ室内の容積を膨張あるいは収縮させてポンプ室内の圧力と共通吐出口側との間の圧力差を解消する補正動作を行わせることを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記複数の往復ポンプ装置に対して前記流入側バルブを介して接続する共通吸入口を備えていることを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記往復ポンプ装置は、駆動源がステッピングモータあるいはAC同期モータであることを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記往復ポンプ装置は、駆動源がステッピングモータであり、
当該ステッピングモータの1ステップ分に対応するポンプ室の内容積の変化量がポンプ室全体の内容積に対して1/100以下であることを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記往復ポンプ装置のポンプ室内の圧力と前記共通吐出口側との間の圧力差を直接あるいは間接的に監視する監視装置を備え、
前記制御部は、前記監視装置での監視結果に基づいて、ポンプ室内の圧力と前記共通吐出口側との間に圧力差があるときに前記補正動作を行わせることを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項6】
請求項5において、前記監視装置は、前記複数の往復ポンプ装置の各ポンプ室内の圧力を監視する複数の第1の圧力センサと、前記共通吐出口側の圧力を監視する第2の圧力センサとを備え、前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサでの検出結果とを比較して前記圧力差を監視することを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項7】
請求項5において、前記監視装置は、前記複数の往復ポンプ装置の各ポンプ室内の圧力を監視する複数の圧力センサを備え、当該複数の往復ポンプ装置のうち、前記吸入動作を行った往復ポンプ装置のポンプ室に配置された圧力センサでの検出結果と、前記出力側バルブが開状態になっている往復ポンプ装置のポンプ室に配置された圧力センサでの検出結果とを比較して前記圧力差を監視することを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかにおいて、前記往復ポンプ装置の台数は2台であり、
前記制御装置は、前記吸入動作を行う際のポンプ室の膨張速度を前記吐出期間におけるポンプ室の収縮速度よりも高く設定することを特徴とする定量ポンプ装置。
【請求項9】
流入側および流出側に流入側バルブおよび流出側バルブが各々接続された往復ポンプ装置を複数、備えるとともに、当該複数の往復ポンプ装置に対して前記流出側バルブを介して接続する共通吐出口を備えた定量ポンプ装置において、
さらに、前記複数の往復ポンプ装置の各ポンプ室内の圧力を監視する圧力センサを備えていることを特徴とする定量ポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−291857(P2007−291857A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117194(P2006−117194)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】