説明

室温において加硫してエラストマーになることができるオルガノポリシロキサン組成物及び新規のオルガノポリシロキサン重縮合触媒

本発明は、室温において加硫してエラストマーになることができるオルガノポリシロキサン組成物であって、重縮合によって架橋し、アルキルスズをベースとする触媒を含有しない前記組成物、並びに新規のオルガノポリシロキサン重縮合触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温において加硫してエラストマーになることができるオルガノポリシロキサン組成物であって、重縮合によって架橋し、毒性の問題を示すアルキルスズをベースとする触媒を含有しない前記組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、シリコーンの化学における新規の重縮合触媒、及びオルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としてのその使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
重縮合によって架橋するエラストマー配合物は一般的に、ヒドロキシル末端基を有するシリコーンオイル(一般的にはポリジメチルシロキサン)(随意にアルコキシ末端基を持つようにシランで前もって官能化されたもの)、架橋剤、重縮合触媒、慣用的にスズ塩又はチタン酸アルキル、補強用フィラー及び他の随意としての添加剤、例えば増量用フィラー、粘着促進剤、着色剤、殺生物剤等を含む。
【0004】
これらの室温加硫性(RTV)オルガノポリシロキサン組成物はよく知られており、1構成型(1成分型、1液型とも称される)組成物(RTV−2)と2構成型(2成分型、2液型とも称される)組成物(RTV−1)との2つのグループに分類される。
【0005】
架橋の際に、水(RTV−1組成物の場合には大気中の湿分によって提供され、RTV−2組成物の場合には組成物の一部に導入される)が重縮合反応を可能にし、これがエラストマー性(弾性)網状構造の形成をもたらす。
【0006】
一般的に、1構成型(RTV−1)組成物は空気からの湿分に曝されたときに架橋し、即ちそれらは閉じられた環境中では架橋しない。例えば、シーラント又は常温硬化性接着剤として用いられる1構成型シリコーン組成物は、アセトキシシラン、ケチミノキシシラン、アルコキシシラン等のタイプの反応性官能基の加水分解及び続いての生成したシラノール基と他の残留反応性官能基との間の縮合反応というメカニズムに従う。この加水分解は一般的に、大気に曝された表面から材料中に広がる水蒸気によって実施される。一般的に、重縮合反応の反応速度は極めて遅い。従って、これらの反応は好適な触媒によって触媒される。用いられる触媒としては、大抵の場合、スズベース触媒(スズを基剤/主体とする触媒)、チタンベース触媒、アミンベース触媒又はこれらの触媒の組合せ物が用いられる。スズベース触媒(特に仏国特許第2557582号明細書を参照されたい)及びチタンベース触媒(特に仏国特許第2786497号明細書を参照されたい)は、非常に効果的な触媒である。
【0007】
2構成型組成物に関しては、これらは2つの構成品の形で販売されて貯蔵される。その第1の構成品はベースポリマー材料を含有し、第2の構成品は触媒を含有する。これら2つの構成品は使用時に混合され、この混合物が架橋して比較的硬いエラストマーの形になる。これらの2構成型組成物はよく知られており、特にWalter Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、第2版、第395〜398頁に記載されている。これらの組成物は、本質的に次の4種の成分を含む。
・反応性α,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマー、
・架橋剤、一般的にケイ酸塩又はポリケイ酸塩、
・スズ触媒、及び
・水。
【0008】
通常、縮合触媒は有機スズ化合物をベースとするものである。実際、多くのスズベース触媒がすでにこれらのRTV−2組成物用の架橋用触媒として提唱されている。最も広く用いられている化合物は、アルキルスズカルボキシレート、例えばトリブチルスズモノオレエート、又はジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート若しくはジメチルスズジラウレートである(Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年)、第2版、第337頁、Academic Press社、又は欧州特許公開第147323号若しくは同第235049号公報を参照されたい)。
【0009】
しかしながら、アルキルスズベース触媒は、非常に有効であり、通常は無色であり、液状であり、シリコーンオイル中に可溶であるものの、毒性があるという欠点を有する(生殖毒性物質CMR2)。
【0010】
チタンベース触媒もRTV−1組成物中に広く用いられているが、しかしスズベース触媒より反応速度が遅いという大きな欠点を有する。さらに、これらの触媒は、ゲル化の問題のせいで、RTV−2組成物用中には用いることができない。
【0011】
亜鉛、ジルコニウム又はアルミニウムをベースとする触媒のような他の触媒も時として挙げられるが、しかしこれらは効果が平凡なので工業的にはあまり開発されていない。
【0012】
また、随意に金属アルコラート(成分(E))、特にセリウムアルコラートの存在下でアルコキシシランから形成されるコーティングも、国際公開WO2006/041445号の第36頁第18〜35行に記載されている。アルコキシシランは反応性が高く、触媒を存在させなくても架橋できることがよく知られている。第29頁第17行には、これらの金属アルコラートは随意にアルコキシシラン用の触媒として用いられるとはっきり示されている。この文献は、オルガノポリシロキサンを含む架橋性組成物を記載したものではない。
【0013】
持続性のある開発のためには、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の無毒性の触媒を開発することが必要だと思われる。
【0014】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応の触媒についての別の重要な局面は、ポットライフ(可使時間)、即ち組成物が混合後に硬化することなく使用可能な時間である。この時間は、使用を可能にするのに充分長くなくてはならないが、しかし遅くとも製造の数分乃至数時間後には取扱い可能な成形物品を得るのに充分短くなくてはならない。従って、この触媒は、触媒された混合物のポットライフと成形物品が取扱い可能な時間(この時間は例えば成形やシールの製造等のような目指す用途に依存する)との間の良好な折衷点を得ることを可能にするものでなければならない。さらに、この触媒は、触媒された混合物に、貯蔵時間に応じて変化することのない展延時間を付与しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】仏国特許第2557582号明細書
【特許文献2】仏国特許第2786497号明細書
【特許文献3】欧州特許公開第147323号公報
【特許文献4】欧州特許公開第235049号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/041445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の主な目的は、1構成型エラストマー組成物の架橋及び2構成型エラストマー組成物の架橋の両方において用いることができる触媒を見出すことにある。
【0017】
本発明の別の主な目的は、1構成型及び2構成型の2つのタイプのエラストマー組成物の貯蔵、加工及び架橋の制約を同時に満たし続ける触媒系を提供することにある。
【0018】
本発明の別の主な目的は、1構成型及び2構成型の2つのタイプのエラストマー組成物の貯蔵、加工及び架橋の制約を同時に満たし続ける触媒系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
ここに、
・重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、
・触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒と
を含み、
前記シリコーンベースBが、
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC;
・随意としての少なくとも1種の架橋剤D;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;並びに
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF:
を含み、そして
前記重縮合触媒が次式(1):
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(ここで、
r1≧1、r2≧0且つx≧0であり;
記号Mはセリウム、ビスマス及びモリブデンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はアルコラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号Yは中性リガンドを表わし、x≧2の時には記号Yは同一であっても異なっていてもよい)
の金属錯体又は塩Aである
ことを特徴とするオルガノポリシロキサン組成物が見出され、これが本発明の主題を構成する。
【0020】
「式(1)の金属錯体又は塩A」の定義には、該金属錯体又は塩Aの任意のオリゴマー形態又は類似体が包含されるものとする。
【0021】
本発明者らは、全く驚くべきことに、そして予期しなかったことに、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の優れた触媒を得るためには、ある種の金属の金属錯体であって、その少なくとも1つのリガンドがアルコラートアニオンであるものを用いるのがよいということを見出した。
【0022】
本発明者らはまた、アルコラートリガンドを有するある種の金属錯体はオルガノポリシロキサンの重縮合反応において凡庸な活性を示すだけであり、又は架橋作用を持たないというような従来の技術上の偏見を克服した(仏国特許第1423477号、第2頁)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
リガンドの定義は、Didier Astrucによる著書「Chimie Organometallique」(Organometallic Chemistry)、2000年、EDP Sciences社、特に第1章「Les complexes monometalliques」(Single Metal Complexes)、第31頁以降に記載されている。
【0024】
中性リガンドYの性状はそれほど重要ではなく、当業者は当該金属に適した任意のタイプの中性リガンドを用いるであろう。
【0025】
本発明に従う触媒は、固体状であっても液状であってもよい。この触媒は、単独で加えることもでき、また、好適な溶剤中で加えることもできる。溶剤中にある場合には、シリコーンオイルを加え、次いでこの溶剤を蒸発させることによって触媒をシリコーン媒体中に移すことができる。得られた混合物は、触媒ベースとしての働きをする。
【0026】
1つの好ましい実施態様に従えば、本発明に従う重縮合触媒は、次の式(1')の金属錯体又は塩Aである。
[M(L1r1(L2r2] (1')
(ここで、
r1≧1且つr2≧0であり;
記号Mはセリウム、ビスマス及びモリブデンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はアルコラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0027】
別の好ましい実施態様に従えば、本発明に従う重縮合触媒は、下記の式(2)〜(4)の錯体より成る群から選択される金属錯体又は塩Aである。
(2):[Ce(L1)r3(L2)r4];ここで、r3≧1且つr4≧0であり且つr3+r4=3である;
(3):[Mo(L1)r5(L2)r6];ここで、r5≧1且つr6≧0であり且つr5+r6=6である;
(4):[Bi(L1)r7(L2)r8];ここで、r7≧1且つr8≧0であり且つr7+r8=3である。
(ここで、
記号L1はアルコラートアニオンであるリガンドを表わし、リガンドL1の数≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、リガンドL2の数≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【0028】
本発明を実施するためには、本発明に従う重縮合触媒として、次の錯体(5)〜(14)より成る群から選択される金属錯体又は塩Aを用いるのが好ましい。
(5):[Ce(OiPr)4]:ここで、(OiPr)=イソプロピラートアニオンである;
(7):[Mo(O2)(2,3−ブタンジオラート)2];
(8):[Mo(O2)(エチレングリコラート)2];
(9):[Mo(O2)(1,2−プロパンジオラート)2];
(10):[Mo(O2)(ピナンジオラート)2];
(11):[Mo(O2)(1,3−プロパンジオラート)];
(12):[Mo(O2)(メソ−2,3−ブタンジオラート)2];
(13):[Mo(O2)(1,2−オクタンジオラート)2];及び
(14):[ビ(モノアリルエチレングリコラート)3]。
【0029】
本発明の創意のある特徴の少なくとも一部は、重縮合触媒として用いられる金属錯体又は塩Aの画定された組合せの適切且つ有利な選択によるものであることに留意されたい。
【0030】
本発明の1つの好ましい実施態様に従えば、記号L1は、次のアルコールから誘導されるアルコラートアニオンより成る群から選択されるアルコラートアニオンであるリガンドを表わす:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール、シクロヘキサノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ジオール類、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ピナンジオール、1,3−プロパンジオール及び1,2−オクタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール並びに2,3−ブタンジオール等。
【0031】
本発明に従う金属錯体Aの構成成分の性状をもう少し詳しく説明するために、L2が次のアニオンより成る群から選択されることができるアニオン性リガンドであることを明確にするのが重要である:フルオロ(F-)、クロロ(Cl-)、トリヨード(1-)(I3-、ジフルオロクロラト(1-)[ClF2-、ヘキサフルオロヨーダト(1-)[IF6-、オキソクロラト(1-)(ClO)-、ジオキソクロラト(1-)(ClO2-、トリオキソクロラト(1-)(ClO3-、テトラオキソクロラト(1-)(ClO4-、ヒドロキソ(OH)-、メルカプト(SH)-、セラニド(SeH)-、ハイパーオキソ(O2-、オゾニド(O3-、ヒドロキソ(OH-)、ヒドロジスルフィド(HS2-、メトキソ(CH3O)-、エトキソ(C25O)-、プロポキシド(C37O)-、メチルチオ(CH3S)-、エタンチオラト(C25S)-、2−クロロエタノラト(C24ClO)-、フェノキシド(C65O)-、フェニルチオ(C65S)-、4−ニトロフェノラト[C64(NO2)O]-、ホルマト(HCO2-、アセタート(CH3CO2-、プロピオナート(CH3CH2CO2-、ニトリド(N3-、シアノ(CN)-、 シアナト(NCO)-、チオシアナト(NCS)-、セレノシアナト(NCSe)-、アミド(NH2-、ホスフィノ(PH2-、クロロアザニド(ClHN)-、ジクロロアザニド(Cl2N)-、[メタンアミナート(1-)](CH3NH)-、ジアゼニド(HN=N)-、ジアザニド(H2N-NH)-、ジホスフェニド(HP=P)-、ホスホニト(H2PO)-、ホスフィナト(H2PO2-、カルボキシラト、エノラト、アミド、アルキラト及びアリーラト。
【0032】
1つの特に好ましい実施態様に従えば、L2は次のアニオンより成る群から選択されるアニオン性リガンドである:アセテート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、ジエチルアセテート、ベンゾエート、2−エチルヘキサノエート、ステアレート、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、t−ペントキシド、8−ヒドロキシキノリネート、ナフテネート、トロポロネート及びオキシドO2-アニオン。
【0033】
中性リガンドYの性状はそれほど重要ではなく、当業者は当該金属に適した任意のタイプの中性リガンドを用いるであろう。
【0034】
本発明の別の主題は、前記の本発明に従う金属錯体又は塩Aをオルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒として使用することから成る。
【0035】
本発明の別の主題は、式(5)〜(14)の錯体より成る群から選択される化合物を前記重縮合用の触媒として使用することから成る:
(5):[Ce(OiPr)4]:ここで、(OiPr)=イソプロピラートアニオンである;
(7):[Mo(O2)(2,3−ブタンジオラート)2];
(8):[Mo(O2)(エチレングリコラート)2];
(9):[Mo(O2)(1,2−プロパンジオラート)2];
(10):[Mo(OH)(ピナンジオラート)2];
(11):[Mo(O2)(1,3−プロパンジオラート)2];
(12):[Mo(O2)(メソ−2,3−ブタンジオラート)2];
(13):[Mo(O2)(1,2−オクタンジオラート)2];及び
(14):[Bi(モノアリルエチレングリコラート)3]。
【0036】
別の局面に従えば、本発明の主題はまた、次式の新規の化合物にもある:
(10):[Mo(O2)(ピナンジオラート)2];及び
(14):[Bi(モノアリルエチレングリコラート)3]。
【0037】
本発明に従う重縮合触媒(金属錯体又は塩A)の量は、1構成型調製であるか2構成型調製であるかに拘らず、総重量の0.1〜10重量%の範囲、好ましくは0.5〜5重量%の範囲とする。
【0038】
シリコーンベースBの説明:
【0039】
本発明において用いられる、重縮合反応によって架橋して硬化するシリコーンベースは、よく知られている。これらのベースは、特に多くの特許文献に詳細に記載されており、商品として入手できる。
【0040】
これらのシリコーンベースは、1構成型ベース、即ち単一の包装体の形で包装され、湿分の不在下において貯蔵安定性であり、湿分、特に周囲空気によって提供される湿分の存在下で架橋できるベース又は使用の際に該ベース内で発生する水によって架橋できるベースであることができる。
【0041】
1構成型ベースの他に、2構成型ベース、即ち2つの包装体の形で包装され、本発明に従う触媒を加えたらすぐに硬化するベースを用いることができる。これらは、触媒を加えた後に、2つの別個の部分として包装され、その内の一方の部分は例えば本発明に従う触媒のみ又は架橋剤との混合物を含有することができる。
【0042】
本発明に従う組成物を製造するために用いられるシリコーンベースBは、次のものを含むことができる:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC;
・随意としての少なくとも1種の架橋剤D;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;並びに
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF。
【0043】
ポリオルガノシロキサンオイルCは、25℃において50〜5000000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンポリマーであるのが好ましく、架橋剤Dは、ケイ素原子に結合した加水分解性基を1分子当たり2個以上有する有機ケイ素化合物であるのが好ましい。ポリオルガノシロキサンオイルCはまた、ヒドロキシル官能基を有する前駆体と加水分解性基を有する架橋用シランとの縮合によって得られる加水分解性基で末端を官能化されたものであることもできる。
【0044】
架橋剤(D)としては、
・次の一般式のシラン:
1k Si(OR2)(4-k)
(ここで、記号R2は同一であっても異なっていてもよく、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくは2−エチルヘキシル基、C3〜C6オキシアルキレン基を表わし、記号R1は直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素系基、単環式若しくは多環式の飽和若しくは不飽和炭素環式基及び/又は単環式若しくは多環式の芳香族炭素環式基を表わし、kは0、1又は2である);並びに
・このシランの部分加水分解生成物:
を挙げることができる。
【0045】
3〜C6アルコキシアルキレン基の例としては、次の基を挙げることができる:
CH3OCH2CH2
CH3OCH2CH(CH3)−
CH3OCH(CH3)CH2
25OCH2CH2CH2−。
【0046】
記号R1はC1〜C10炭化水素系基であり、以下のものを包含する:
・C1〜C10アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチル又はデシル基;
・ビニル及びアリル基;並びに
・C5〜C8シクロアルキル基、例えばフェニル、トリル及びキシリル基。
【0047】
架橋剤Dは、シリコーン市場において入手できる製品である;さらに、室温硬化性組成物中にそれらを使用することは周知である;特に、仏国特許第1126411号明細書、仏国特許第1179969号明細書、仏国特許第1189216号明細書、仏国特許第1198749号明細書、仏国特許第1248826号明細書、仏国特許第1314649号明細書、仏国特許第1423477号明細書、仏国特許第1432799号明細書及び仏国特許第2067636号明細書に記載されている。
【0048】
架橋剤Dの中では、より特定的には、有機基が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるアルキルトリアルコキシシラン、ケイ酸アルキル及びポリケイ酸アルキルが好ましい。
【0049】
架橋剤Dの別の例としては、より特定的には、次のシランを挙げることができる:
・プロピルトリメトキシシラン;
・メチルトリメトキシシラン;
・エチルトリメトキシシラン;
・ビニルトリエトキシシラン;
・メチルトリエトキシシラン;
・ビニルトリエトキシシラン;
・プロピルトリエトキシシラン;
・テトラエトキシシラン;
・テトラプロポキシシラン;
・1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン;
・1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン;及び
・テトライソプロポキシシラン、又は
CH3Si(OCH3)3;C2H5Si(OC2H5)3;C2H5Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OCH3)3;CH2=CHSi(OCH2CH2OCH3)3
C6H5Si(OCH3)3;[CH3][OCH(CH3)CH2OCH3]Si[OCH3]2
Si(OCH3)4;Si(OC2H5)4;Si(OCH2CH2CH3)4;Si(OCH2CH2CH2CH3)4
Si(OC2H4OCH3)4;CH3Si(OC2H4OCH3)3;CICH2Si(OC2H5)3
【0050】
架橋剤Dの別の例としては、ポリケイ酸エチル又はポリケイ酸n−プロピルを挙げることができる。
【0051】
一般的に、重縮合によって架橋エラストマーになることができるポリオルガノシロキサンC100重量部当たり0.1〜60重量部の架橋剤Dが用いられる。
【0052】
本発明に従う組成物はまた、少なくとも1種の粘着促進剤E、例えば次の(1)及び(2)の両方を有する有機ケイ素化合物等を含むことができる。
(1)ケイ素原子に結合した1個以上の加水分解性基;及び
(2)窒素原子を含む基又は(メタ)アクリレート、エポキシ及びアルケニル基から選択される基で置換された1個以上の有機基、より一層好ましくは次の化合物より成る群から選択される有機基(単独のもの又は混合物として):
ビニルトリメトキシシラン(VTMO);
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO);
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO);
[H2N(CH2)3]Si(OCH2CH2CH3)3
[H2N(CH2)3]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)3]Si(OC2H5)3
[H2N(CH2)4]Si(OCH3)3
[H2NCH2CH(CH3)CH2CH2]SiCH3(OCH3)2
[H2NCH2]Si(OCH3)3
[n-C4H9-HN-CH2]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH2CH2OCH3)3
[CH3NH(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
[H(NHCH2CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3
【化1】

又はこのような有機基を20%超の含有率で含有するポリオルガノシロキサンオリゴマー。
【0053】
1構成型及び2構成型ベースについて、無機フィラーFとして、平均粒径0.1μm未満の非常に微細に粉砕された物質が用いられる。これらのフィラーは、ヒュームドシリカ及び沈降シリカを包含する;それらのBET比表面積は一般的に40m2/g超である。これらのフィラーはまた、もっと粗大な平均粒径0.1μm超の物質の形にあってもよい。かかるフィラーの例としては、石英粉末、ケイ藻土シリカ、炭酸カルシウム、焼成クレー、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム又はマグネシウムの酸化物、様々な形のアルミナ(水和又は非水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウム及びガラスミクロビーズを挙げることができる;それらの比表面積は一般的に30m2/gである。
【0054】
これらのフィラーは、様々な有機ケイ素化合物で処理することによって表面変性されたものであってよい。これらの有機ケイ素化合物は、この目的で慣用的に用いられているものであり、オルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザン又はジオルガノシクロポリシラザンであることができる(仏国特許第1126884号明細書、仏国特許第1136885号明細書及び仏国特許第1236505号明細書、並びに英国特許第1024234号明細書)。処理されたフィラーは、大抵の場合、それらの重量の3〜30%の有機ケイ素化合物を含有することができる。該フィラーは、様々な粒子寸法のいくつかのタイプのフィラーの混合物から成ることができる;従って、例えばこれらは、BET比表面積が40m2/g超の微粉砕シリカ30〜70%と、BET比表面積が30m2/g未満の粗粉砕シリカ70〜30%とから成ることができる。
【0055】
フィラーを導入する目的は、本発明に従う組成物を硬化させることによって得られるエラストマーに良好な機械的特性及びレオロジー特性を与えることである。
【0056】
これらのフィラーと組み合わせて、無機及び/又は有機顔料や、エラストマーの耐熱性改善剤(希土類元素の塩及び酸化物、例えば酸化セリウム及び水酸化セリウム等)並びに耐火性改善剤を用いることもできる。例えば、国際出願WO98/29488号に記載された酸化物の混合物を用いることができる。耐火性改善剤の中では、ハロゲン化有機誘導体、有機リン誘導体、白金誘導体、例えばクロロ白金酸(そのアルカノール若しくはエーテルとの反応生成物)又は塩化白金(II)−オレフィン錯体を挙げることができる。これらの含量及び改善剤は、合計で最大でもフィラーの20重量%を占める。
【0057】
他の慣用的な補助剤及び添加剤を本発明に従う組成物中に加えることができる。これらは組成物が用いられる用途に応じて選択される。
【0058】
本発明に従う組成物を製造するために用いられるシリコーンベースは、次のものを含むことができる:
・100部の重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC;
・0〜20部の架橋剤D;
・0〜20部の粘着促進剤E;及び
・0050部のフィラーF。
【0059】
主な成分に加えて、本発明に従う組成物の物理的特徴に対して及び/又はこれらの組成物を硬化させることによって得られるエラストマーの機械的特徴に対して作用させることを意図して、非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーGを導入することができる。
【0060】
これらの非反応性線状ポリオルガノシロキサンポリマーGはよく知られている;これらはより特定的には:本質的にジオルガノシロキシ単位から成り且つ少なくとも1%のモノオルガノシロキシ及び/又はシロキシ単位を有し、25℃において少なくとも10mPa・sの粘度を有するα,ω−ビス(トリオルガノシロキシ)ジオルガノポリシロキサンポリマーであって、ケイ素原子に結合した有機基がメチル、ビニル及びフェニル基から選択され、これらの有機基の内の少なくとも60%がメチル基であり、ビニルは最大でも10%であるものを含む。これらのポリマーの粘度は、25℃において数千万mPa・sに達することもできる;従ってこれらは流体乃至粘性外観を持つオイル及び軟質乃至硬質ゴムを包含する。これらは、より特定的には仏国特許第978058号明細書、仏国特許第1025150号明細書、仏国特許第1108764号明細書及び仏国特許第1370884号明細書に記載された通常の技術に従って調製される。25℃において10mPa・s〜1000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ジメチルポリシロキサンオイルを用いるのが好ましい。これらのポリマーは、可塑剤としての働きをし、重縮合によって架橋し得るポリオルガノシロキサンオイルC100部当たり最大70部、好ましくは5〜20部の割合で導入することができる。
【0061】
本発明に従う組成物は、有利には、少なくとも1種のシリコーン樹脂Hをさらに含むことができる。これらのシリコーン樹脂は、よく知られていて商品として入手できる分岐鎖状オルガノポリシロキサンポリマーである。これらは、式R'''3SiO12(M単位)、R'''2SiO2/2(D単位)、R'''SiO3/2(T単位)及びSiO4/2(Q単位)のものから選択される少なくとも2個の異なる単位を1分子当たりに有する。R'''基は同一であっても異なっていてもよく、直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル基又はビニル、フェニル若しくは3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。好ましくは、アルキル基は1〜6個の炭素原子を有する(境界を含む)。より特定的には、アルキル基Rとしては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル及びn−ヘキシル基を挙げることができる。これらの樹脂は好ましくはヒドロキシル化されたものであり、この場合には5〜500ミリ当量/100gヒドロキシル基重量含有率を有する。
【0062】
樹脂の例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂及びMDT樹脂を挙げることができる。
【0063】
本発明に従う組成物を製造するためには、1構成型組成物の場合には、湿分のない環境中で熱を加えて又は熱を加えることなく、様々な基本成分(随意にこれら成分に前記補助剤及び添加剤を添加したもの)を緊密に混合することが可能な装置を用いることが必要である。これらすべての成分は、任意の導入順序で装置中に装填することができる。例えば、最初にオルガノポリシロキサンオイルC及びフィラーFを混合し、次いで得られたペーストに架橋剤D、化合物E及び本発明に従う触媒を加えることができる。また、オイルC、架橋剤D、化合物E及びフィラーFを混合し、次いで本発明に従う触媒を加えることも可能である。これらの操作の間に、混合物を、大気圧下で又は揮発性物質の除去を促進するために減圧下で50〜180℃の範囲内の温度に加熱してもよい。
【0064】
本発明に従う1構成型組成物は、そのままで即ち希釈しないで又は希釈剤中の分散体の形で用いられ、水の不在下において貯蔵安定性であり、水の存在下では(分散体の場合には溶剤が除去された後に)低温において硬化してエラストマーになる。
【0065】
湿り気のある雰囲気中で固体基材上に組成物をそのままで塗布した後に、エラストマーへの硬化プロセスが起こるのが観察され、これは塗布した物質の外側から内側に向けて起こる。最初に表面においてスキン(膜)を形成し、次いで深部において架橋し続ける。スキンが完全に形成して表面が非粘着性の感触になるためには、数分の時間が必要である;この時間は、組成物を取り巻く雰囲気の相対湿度及び組成物の架橋しやすさに依存する。
【0066】
さらに、塗布層の深部硬化は、成形されたエラストマーの離型及び取扱いを可能にするのに充分なものでなければならず、より長い時間を必要とする。実際、この時間は非粘着性の感触の形成について上に挙げたファクターに依存するだけではなくて、塗布層の厚さにも依存し、この厚さは一般的に0.5mm〜数cmの範囲である。1構成型組成物は、多くの用途、例えば建築産業における接合、様々な材料の組立て(金属、プラスチック、天然及び合成ゴム、木材、板、陶器、煉瓦、セラミック、ガラス、石材、コンクリート、石工事部材)、導電体の絶縁、電子回路のポッティング、又は合成樹脂若しくはフォーム製物品を製造するために用いられる成形型の製造に、用いることができる。
【0067】
本発明に従う2構成型組成物の製造もまた、好適な装置中で様々な成分を混合することによって実施される。均質組成物を得るためには、最初にポリマーAをフィラーCとを混合するのが好ましい;オイルによるフィラーの湿潤を完全なものにするために、この混合物全体を80℃超の温度に少なくとも30分間加熱してもよい。得られた混合物を好ましくは80℃以下の温度(例えば室温)にした後に、他の成分即ち架橋剤、触媒並びに随意としての各種添加剤及び補助剤、さらには水を添加することができる。
【0068】
本発明に従う組成物は、多くの用途、例えば建築産業及び輸送産業(例えば自動車産業、航空宇宙産業、鉄道業、海運業及び航空産業)における接合及び/又は連結、様々な材料(金属、プラスチック、天然及び合成ゴム、木材、板、ポリカーボネート、陶器、煉瓦、セラミック、ガラス、石材、コンクリート及び石工事部材)の組立て、導電体の絶縁、電子回路のポッティング、並びに合成樹脂又はフォーム製物品を製造するために用いられる成形型の製造に、用いることができる。
【0069】
かくして、本発明の別の主題は、上で規定した本発明に従うオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる2構成型系であって、前記組成物を形成するために混合することが予定される2つの別個の部分P1及びP2の形にあること、並びにこれらの部分の内の1つが、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての上で規定した本発明に従う金属錯体又は塩Aと架橋剤Dとを含み、もう一方の部分が上記の種を含まず、次のもの:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC100重量部当たりに;
・0.001〜10重量部の水:
を含むことを特徴とする、前記2構成型系から成る。
【0070】
本発明の別の主題はまた、湿分の不在下において貯蔵安定性であり、水の存在下で架橋してエラストマーになる1構成型ポリオルガノシロキサン組成物であって、
・少なくとも1種の、アルコキシ、オキシム、アシル及び/又はエノキシタイプ(好ましくはアルコキシタイプ)の官能化された末端を有する架橋性線状ポリオルガノポリシロキサン;
・フィラー;並びに
・上で規定した本発明に従う金属錯体Aである重縮合反応触媒:
を含むことを特徴とする前記1構成型ポリオルガノシロキサン組成物からも成る。
【0071】
1構成型ベースは、例えば欧州特許公開第141685号公報、欧州特許公開第147323号公報、欧州特許公開第102268号公報、欧州特許公開第21859号公報、仏国特許第2121289号明細書及び仏国特許第2121631号明細書に詳細に記載されているので、これらを参考文献とする。
【0072】
これらの1構成型ベースに、粘着促進剤E、例えばアミノ、ウレイド、イソシアネート、エポキシ、アルケニル、イソシアヌレート、ヒダントイル、グアニジノ及びメルカプトエステル基より成る群から選択される基で置換された有機基と、ケイ素原子に結合した加水分解性基、一般的にアルコキシ基とを同時に有する有機ケイ素化合物から選択される粘着促進剤Eを加えることができる。斯かる粘着促進剤Eの例は、米国特許第3517001号明細書、米国特許第4115356号明細書、米国特許第4180642号明細書、米国特許第4273698号明細書、米国特許第4356116号明細書並びに欧州特許公開第31996号公報及び欧州特許公開第74001号公報に記載されている。
【0073】
2構成型ベースは、例えば欧州特許公開第118325号公報、欧州特許公開第117772号公報、欧州特許公開第10478号公報、欧州特許公開第50358号公報、欧州特許公開第184966、米国特許第3801572号明細書及び米国特許第3888815号明細書に詳細に記載されているので、これらを参考文献とする。
【0074】
本発明の別の主題は、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒として上で規定した本発明に従う金属錯体又は塩Aを使用することから成る。
【0075】
本発明の最後の主題は、上で規定した本発明に従う2構成型系の架橋及び硬化、又は上で規定した本発明に従う組成物の架橋及び硬化によって得られるエラストマーから成る。
【0076】
本発明の他の利点及び特徴は、以下に単に例示として与えた非限定的実施例を読めば、より一層明らかになるだろう。
【実施例】
【0077】
例1:触媒の合成
【0078】
触媒(10)の合成:[Mo(O2)(ピナンジオラート)2
【0079】
20ミリリットルのシクロヘキサン中に4ミリモルのモリブデンアセチルアセトナート(1.2g)を含有させた懸濁液に、16ミリモルのピナンジオール(2.72g)を添加し、次いでこの混合物を加熱還流した。1時間30分後に、この媒体は透明なオレンジ色になり、次いで明黄色固体を形成した。1時間30分後に、この混合物を濃縮し、得られた固体をシクロヘキサン中で再結晶して、モリブデンピナンジオラートの明黄色固体1.5gが、二水和二量体[MoOH(ピナンジオラート)2]2Oの形で得られた[751nmにおける特徴的なIRバンド(Sheldon, Recl. Trav. Chim. Pays Bas, 92, 253 (1973)に従う)に基づく]。
【0080】
Mo計算値20.97%、実測値(ICP)16.0%(生成物はピナンジオールを含有する)
【0081】
触媒(14):[Bi(モノアリルエチレングリコラート)3]の合成
【0082】
50ミリリットルの無水THF中に48ミリモルの水素化ナトリウム(前もってペンタンで洗浄した60%のもの2g)を含有させた懸濁液に、48ミリモルのエチレングリコールモノアリルエーテル(5.31g)を15分かけて添加した。得られた溶液を、同じ溶媒100ミリリットル中に16ミリモルの三塩化ビスマス(5.04g)を含有させた溶液に10分かけて添加した。室温において4時間撹拌した後に、均質な茶色の溶液を蒸発乾固させた。茶色の固体をヘキサンで取り出し、この混合物をセライトを用いて濾過した。溶媒を蒸発させた後に、茶色の固体が得られた(5.2g)。
【0083】
Bi計算値40.78%、実測値(ICP)32.5%(単離された生成物は、エチレングリコールモノアリルエーテルを含有する)
IR:2844、1347、1066、993、918。
【0084】
例2:初期試験
【0085】
新規の分子の触媒活性を示すために、2つの簡単なテストを展開した:
【0086】
2つの試験において、次の手順に従った:
・電磁式撹拌棒を備えた開放型円筒状小型容器中に、官能化又は非官能化オイル、次いで触媒、次いで架橋剤(RTV2組成物の場合)、次いで随意としての水を順次入れ、撹拌を300rpmに設定した。撹拌が止まる時間{ほぼ1000cP(又はmPa・s)の粘度に相当する}、次いでオイルがもはや流動性ではなくなる時間、非粘着性スキン形成時間時間及びコア架橋時間を測定した。新規の触媒の活性を、最速のジアルキルスズタイプ触媒の1つであるテトラブチルジスタノキサンジラウレート(Tegokat 225)の活性と比較した(スズ当量で1.24ミリモル)。
【0087】
RTV2試験:
【0088】
試験すべき種を、短鎖α,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサンオイル(OH含量に関して1/2当量、粘度100mPa・s、48V100オイル)と接触させ、次いで架橋剤と接触させ、ケイ酸エチル(1当量/OH)又は同じ容量の「改良型」ケイ酸エチル、即ちエトキシポリシロキサンの混合物(この場合には1当量/OHを超える)を添加した。
【0089】
以下の実施例で用いた量は、特に言わない限り、次の通りだった:
・0.553ミリモルOH/gの48V100オイル(粘度:100cP又はmPa・s)4.48g
・試験すべき種1.24ミリモル(1.2当量/OH)
・ケイ酸エチル(1当量/OH)0.52g、90マイクロリットルの水の存在下若しくは不在下(2当量/OH)、又はケイ酸エチルと同容量の「改良型」ケイ酸塩(=0.82g)。
【0090】
RTV1試験:
【0091】
前に用いたものと同じオイルを前もってビニルトリメトキシシラン(VTMO)で官能化した;試験すべき種を前と同じ条件下でこのオイルと接触させ、次いで2当量の水を添加した(2当量/初期OH)。
【0092】
以下の実施例で用いた量は、特に言わない限り、次の通りだった:
・VTMO官能化48V100オイル4.77g;
・試験すべき種1.24ミリモル(1/2当量/OH);
・90マイクロリットルの水(撹拌=t0の1分後に添加)。
【0093】
RTV1試験の結果を下記の表Iに与える:
【表1】

【0094】
RTV2試験(ケイ酸エチル架橋剤)の結果を下記の表IIに与える:
【表2】

【0095】
RTV2試験(「改良型シリケート」架橋剤)の結果を下記の表IIIに与える:
【表3】

【0096】
例3:RTV1及びRTV2組成物についてのペースト試験:
【0097】
次いで、所定触媒については、「ペースト」と称されるより類似した系においても試験した。
【0098】
RTV1組成物において、用いたペーストは次のように調製した:0.066%のOHを含有する粘度20000cPのα,ω−ジヒドロキシル化オイル3464gとビニルトリメトキシシラン120gとの混合物に、撹拌しながら、メタノール中の水酸化リチウムの2重量%溶液16gを加え、次いで5分後にAE55ヒュームドシリカ400gを加えた。この混合物を真空下で揮発分除去し、次いで湿分のない環境中に貯蔵した。
【0099】
各試験について、試験した触媒をこのペースト50gと混合し、次いで触媒能力を3つの方法で評価した:
・2mmのフィルム上でのスキン形成時間(SFT)(表面架橋が観察されるまでの時間);
・48時間における粘着性感触の継続性;
・制御された条件下(23℃、相対湿度50%)における厚さ6mmの帯状物(cordon)の硬度(Shore A硬度)の経時変化(2日、3日、7日及び14日)。また、室温において7日間、次いで100℃において7日間硬度測定を実施することによって、高温安定性も評価した。
【0100】
注意:Shore A硬度は、厚さ6mmの帯状物に対して測定した。結果の表中の記号「>」は帯状物の上の方の部分について測定した硬度値に相当し、記号「<」は帯状物の下の方の部分(上の方の部分より周囲空気に曝されない部分)について測定した硬度値に相当する。
【0101】
本発明に従う様々な触媒を試験した。比較として、上記のように、次のものも試験した:
・スズベース触媒:ジブチルスズジラウレート(DBTDL)。
【0102】
結果を下記の表IIIに与える。
【表4】

【0103】
RTV2組成物においては、粘性ジヒドロキシル化オイル(48V14000)と改良型シリケート架橋剤(オイル22.5g当たり1g)との混合物に触媒を加えて混合したものに対して直接試験を行った。最初に可使時間を測定し(混合物の粘度が使用できないものになるまでの時間)、次いで別の混合物を用いて厚さ6mmのスラグ(pion)を流延して経時的に硬度を測定した。
【0104】
注意:Shore A硬度は、厚さ6mmのスラグに対して測定した。結果の表中の記号「>」はスラグの上の方の部分について測定した硬度値に相当し、記号「<」はスラグの下の方の部分(上の方の部分より周囲空気に曝されない部分)について測定した硬度値に相当する。
【0105】
比較として、上記のように、次のものも試験した:
・スズベース触媒:ジメチルスズジネオデカノエート(UL28)。
【0106】
結果を下記の表IVに与える。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒とを含み、
前記シリコーンベースBが、
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができる少なくとも1種のポリオルガノシロキサンオイルC;
・随意としての少なくとも1種の架橋剤D;
・随意としての少なくとも1種の粘着促進剤E;並びに
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機及び/又は非ケイ質無機フィラーF:
を含み、そして
前記重縮合触媒が次式(1):
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(ここで、
r1≧1、r2≧0且つx≧0であり;
記号Mはセリウム、ビスマス及びモリブデンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はアルコラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号Yは中性リガンドを表わし、x≧2の時には記号Yは同一であっても異なっていてもよい)
の金属錯体又は塩Aである
ことを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記重縮合触媒が次の式(1')の金属錯体又は塩Aであることを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
[M(L1r1(L2r2] (1')
(ここで、
r1≧1且つr2≧0であり;
記号Mはセリウム、ビスマス及びモリブデンより成る群から選択される金属を表わし;
記号L1はアルコラートアニオンであるリガンドを表わし、r1≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、r2≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項3】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒とを含み、前記触媒が下記の式(2)〜(4)の錯体より成る群から選択される金属錯体又は塩Aであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
(2):[Ce(L1)r3(L2)r4](ここで、r3≧1且つr4≧0であり且つr3+r4=3である);
(3):[Mo(L1)r5(L2)r6](ここで、r5≧1且つr6≧0であり且つr5+r6=6である);
(4):[Bi(L1)r7(L2)r8](ここで、r7≧1且つr8≧0であり且つr7+r8=3である)
(ここで、
記号L1はアルコラートアニオンであるリガンドを表わし、リガンドL1の数≧2の時には記号L1は同一であっても異なっていてもよく;そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表わし、リガンドL2の数≧2の時には記号L2は同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
前記記号L1が次のアルコール:メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘプタノール、シクロヘキサノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ジオール類、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ピナンジオール、1,3−プロパンジオール及び1,2−オクタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール並びにエチレングリコール:から誘導されるアルコラートアニオンより成る群から選択されるアルコラートアニオンであるリガンドを表わすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒として有効量の少なくとも1種の重縮合触媒とを含み、前記触媒が、下記の錯体(5)〜(14)より成る群から選択される金属錯体又は塩Aであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
(5):[Ce(OiPr)4](ここで、(OiPr)=イソプロピラートアニオンである);
(7):[Mo(O2)(2,3−ブタンジオラート)2];
(8):[Mo(O2)(エチレングリコラート)2];
(9):[Mo(O2)(1,2−プロパンジオラート)2];
(10):[Mo(OH)(ピナンジオラート)2];
(11):[Mo(O2)(1,3−プロパンジオラート)2];
(12):[Mo(O2)(メソ−2,3−ブタンジオラート)2];
(13):[Mo(O2)(1,2−オクタンジオラート)2];及び
(14):[Bi(モノアリルエチレングリコラート)3]。
【請求項6】
2が次のアニオン:フルオロ(F-)、クロロ(Cl-)、トリヨード(1-)(I3-、ジフルオロクロラト(1-)[ClF2-、ヘキサフルオロヨーダト(1-)[IF6-、オキソクロラト(1-)(ClO)-、ジオキソクロラト(1-)(ClO2-、トリオキソクロラト(1-)(ClO3-、テトラオキソクロラト(1-)(ClO4-、ヒドロキソ(OH)-、メルカプト(SH)-、セラニド(SeH)-、ハイパーオキソ(O2-、オゾニド(O3-、ヒドロキソ(OH-)、ヒドロジスルフィド(HS2-、メトキソ(CH3O)-、エトキソ(C25O)-、プロポキシド(C37O)-、メチルチオ(CH3S)-、エタンチオラト(C25S)-、2−クロロエタノラト(C24ClO)-、フェノキシド(C65O)-、フェニルチオ(C65S)-、4−ニトロフェノラト[C64(NO2)O]-、ホルマト(HCO2-、アセタート(CH3CO2-、プロピオナート(CH3CH2CO2-、ニトリド(N3-、シアノ(CN)-、シアナト(NCO)-、チオシアナト(NCS)-、セレノシアナト(NCSe)-、アミド(NH2-、ホスフィノ(PH2-、クロロアザニド(ClHN)-、ジクロロアザニド(Cl2N)-、[メタンアミナート(1-)](CH3NH)-、ジアゼニド(HN=N)-、ジアザニド(H2N-NH)-、ジホスフェニド(HP=P)-、ホスホニト(H2PO)-、ホスフィナト(H2PO2-、カルボキシラト、エノラト、アミド類、アルキラト及びアリーラト:より成る群から選択されるアニオン性リガンドであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
2が次のアニオン:アセテート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、ジエチルアセテート、ベンゾエート、2−エチルヘキサノエート、ステアレート、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、t−ペントキシド、8−ヒドロキシキノリネート、ナフテネート、トロポロネート及びオキシドO2-アニオン:より成る群から選択されるアニオン性リガンドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる2構成型系であって、
前記組成物を形成するために混合することが予定される2つの別個の部分P1及びP2の形にあること、並びにこれらの部分の内の一方が、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての請求項1〜7のいずれかに記載の金属錯体又は塩Aと架橋剤Dとを含み、もう一方の部分が上記の種を含まずに次のもの:
・重縮合によって架橋してエラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC100重量部当たりに;
・0.001〜10重量部の水:
を含むことを特徴とする、前記2構成型系。
【請求項9】
湿分の不在下において貯蔵安定性であり、水の存在下で架橋してエラストマーになる1構成型オルガノポリシロキサン組成物であって、
・少なくとも1種の、アルコキシ、オキシム、アシル及び/又はエノキシタイプ(好ましくはアルコキシタイプ)の官能化された末端を有する架橋性線状ポリオルガノポリシロキサン;
・フィラー;並びに
・請求項1〜7のいずれかに記載の金属錯体Aである重縮合反応触媒:
を含むことを特徴とする、前記1構成型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の2構成型系又は請求項1〜7及び9のいずれかに記載の組成物を架橋させて硬化させることによって得られるエラストマー。
【請求項11】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての、請求項1〜7のいずれかに記載の金属錯体又は塩Aの使用。
【請求項12】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての、下記の式(5)〜(14)の化合物の使用。
(5):[Ce(OiPr)4](ここで、(OiPr)=イソプロピラートアニオンである);
(7):[Mo(O2)(2,3−ブタンジオラート)2];
(8):[Mo(O2)(エチレングリコラート)2];
(9):[Mo(O2)(1,2−プロパンジオラート)2];
(10):[Mo(OH)(ピナンジオラート)2];
(11):[Mo(O2)(1,3−プロパンジオラート)2];
(12):[Mo(O2)(メソ−2,3−ブタンジオラート)2];
(13):[Mo(O2)(1,2−オクタンジオラート)2];及び
(14):[Bi(モノアリルエチレングリコラート)3]。
【請求項13】
次式:
(10):[Mo(OH)(ピナンジオラート)2];又は
(14):[Bi(モノアリルエチレングリコラート)3]:
の化合物。

【公表番号】特表2011−509317(P2011−509317A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538838(P2010−538838)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001771
【国際公開番号】WO2009/106721
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】