説明

家畜における慢性腎不全及びその他の病気の治療:組成物及び方法

本発明は、概して、家畜における加齢疾病の管理に関する。特には、本発明は、進行性腎疾病(例えば慢性腎不全)及びそれに付随する余病を治療するための、併用療法を対象とする。組成物の形態において、本発明は、リン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含む組成物を提供する。上記他の薬理活性成分は、降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、貧血治療剤、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の分野]
本発明は、概して、家畜における加齢疾病の管理に関する。特には、本発明は、進行性腎疾病(例えば慢性腎不全)及びそれに付随する余病を治療するための、併用療法を対象とする。
【0002】
[本発明の背景]
慢性腎不全(CRI: Chronic Renal Insufficiency)とも呼ばれる、慢性腎不全(CRF: Chronic Renal Failure)は、長期間持続する原発性の腎不全として定義される。この病気は、腎臓における不可逆性の構造的な病変を特徴としている。また、この病気は、少なくとも犬又は猫の臨床例において、進行性であり、かつ最終的には死に至るものであると考えられている。したがって、その治療法は、臨床的兆候を改善すること、及び疾病の進行を緩和することを目的とする。高リン血症は、腎臓がもはや血液からリン酸塩を除去し得ないような腎機能の低下に関係する。
【0003】
犬及び猫の両方における、進行の原因病理論をめぐる議論は未だにある。それでもやはり、腎機能障害の臨床的兆候が許容される糸球体ろ過量レベルの緩徐な進行であれば、動物は維持されるであろう。
【0004】
腎機能喪失に関連した全身性異常及び代謝異常は、ほぼ全ての体組織に影響を及ぼし、かつ、高リン血症;上皮小体機能亢進症;異常βリポ蛋白血症;全身性高血圧;代謝性アシドーシス;高窒素血症;ホルモン生産不全(赤血球の生産を誘発するエリスロポエチン;及び疾病の末期における、体液平行及び電解質平行の重度の障害を含む)を含む。
【0005】
腎性二次性上皮小体機能亢進症(RHPTH)は、慢性腎不全の主な合併症である。腎性二次性上皮小体機能亢進症は、上皮小体ホルモン(PHT)の内因性レベルが増加することを特徴とする。糸球体ろ過量率が減少する時、進行性慢性腎不全と共に高リン血症が起こる。これは、血中のイオン化カルシウム濃度の低下を引き起こす。腎臓におけるカルシトリオールの生成もまた減少する。カルシトリオールは血中のイオン化カルシウム濃度の恒常性に関与するため、減少したイオン化カルシウム及びカルシトリオールは、RHPTHの臨床症状を発症させる、血清PTHの増加を引き起こす。これらは嘔吐、脱水症、煩渇多飲、及び、例えば幼犬に特に共通する顔の腫脹などの骨増殖性(hyperosteortic)の骨病変を含む。
【0006】
全ての腎疾患は本質的に進行性であり、かつ自己永続的であるという仮説は、腎機能が低下するときには必ず起こる、腎臓の構造及び機能における適応変化に着目している。腎疾患に対する糸球体の適応は、それぞれ糸球体過剰ろ過、糸球体性高血圧、及び糸球体肥大と呼ばれる、ろ過速度、毛細管圧、及び毛細管のサイズそれぞれの増加を含む。動物において、例えば食餌性リン酸塩過剰摂取、全身性高血圧、高脂質血症、アシドーシス、及び上皮小体機能亢進症などの腎外の変化は、腎疾患と共に起こり、かつ腎疾患の進行の一因となる。腎疾患を患ったコンパニオン・アニマル(ペット)の管理における重要性は、早期から末期までの腎不全進行の一因となるこれら変化の過程を特定し、理解し、かつ制御することに移行している。
【0007】
このような進行性腎疾患は、しばしば家畜の年齢と関連する。例えば、5歳以上の犬の70%、及び10歳以上の猫の30%は、慢性腎不全の初期の兆候を示す。付随する問題又は病状は、さらなる老化と共に発生する。
【0008】
したがって、家畜における進行性腎疾患を処置できる治療が、当該技術分野において必要とされている。さらに、このような加齢疾病の発病を遅らせる、又は防止さえでき、そして生活の質を実質的に向上できる治療が、当該技術分野において必要とされている。それらは本発明の目的である。
【0009】
[本発明の要約]
本発明は、概して、家畜における加齢疾病の管理に関する。特に本発明は、進行性腎疾患(例えば慢性腎不全)及びそれに付随する余病を治療するための、併用療法を対象とする。
【0010】
組成物の一形態において、本発明は、リン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含む組成物を提供する。他の薬理活性成分は、降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、貧血治療剤、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれる。
【0011】
キットの一形態において、本発明は、家畜における加齢疾病の管理(例えば慢性腎不全の治療)のためのキットを提供する。上記キットは:組成物を含む容器であって、上記組成物はリン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含み、かつ上記他の薬理活性成分は降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、貧血治療剤、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれてなる容器;及び、上記組成物はどのように家畜に投与されるべきかに関する取扱説明書を含む。
【0012】
方法の一形態において、本発明は、家畜における加齢疾病の管理(例えば慢性腎不全の治療)の方法を提供する。上記方法は、組成物を家畜に投与するための各工程を含み、ここで、上記組成物はリン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含み、かつ上記他の薬理活性成分は降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、貧血治療剤、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれる。
【0013】
[図の簡単な説明]
図1は、実施例1に従って作られた化合物のX線回折走査を、基準ゲージと比較して示す図である。
【0014】
図2は、実施例2に従って作られた化合物のX線回折走査を、基準ゲージと比較して示す図である。
【0015】
[本発明の詳細な説明]
本発明は、概して、家畜における加齢疾病の管理に関する。特に本発明は、進行性腎疾患(例えば慢性腎不全)及びそれに付随する余病を治療するための、併用療法を対象とする。
【0016】
本発明に係る組成物は、概して、リン酸結合剤、及び少なくとも1つの他の薬理活性成分を含む。希土類化合物、親水性アニオン交換樹脂、カルシウム塩、及びアルミニウム塩は、リン酸結合性化合物の代表的な種類である。
【0017】
上記化合物が希土類化合物である場合は、それは一般に、ランタンカルボナート、ランタンカルボナートヒドロキシド、又はランタンオキシカルボナートである。ランタンカルボナートの構造は、La(CO・xHOであり、式中、1≦x≦8である。好ましいランタンカルボナートの構造は、3≦x≦6であるLa(CO・xHOであり、さらに好ましくは3.5≦x≦5であり、また最も好ましくは3.8≦x≦4,5である。このような化合物は、U.S. Pat. No. 5,968,976に論じられており、本明細書中において参考として援用される。
【0018】
ランタンオキシカルボナートは、水和物又は無水であってもよい。一般的なランタンオキシカルボナート水和物は、LaO(CO・xHOであり、式中、1≦x≦3であり;一般的な無水ランタンオキシカルボナートは、LaCOである。このような化合物は、U.S. Pat. Appl. 2004161474に論じられており、本明細書中において参考として援用される。
【0019】
ランタンカルボナートヒドロキシドは、水和物又は無水であってもよい。一般的な無水ランタンカルボナートヒドロキシドは、LaCOOHである。
【0020】
猫及び犬の胃の生理的pH、すなわちpH約3.0において、ランタンオキシカルボナート及びランタンカルボナートヒドロキシドは、ランタン化合物1グラム当たり、少なくとも300mgのリン酸塩とのリン酸塩結合能力を示す。最も望ましくは、ランタンオキシカルボナートは、ランタン化合物1g当たり少なくとも400mgのPOとのリン酸塩結合能力を示す。猫又は犬の上部小腸の生理的pH、すなわちpH約8.0において、ランタンオキシカルボナートはなお、ランタン化合物1g当たり、約20mgのリン酸と結合する。
【0021】
本発明に係る組成物に含まれる親水性アニオン交換樹脂は、一般に、脂肪族アミンポリマーである。“アミン”基は、第一級、第二級、又は第三級のアミン、第四級のアンモニウム塩、アミジン、グアニジン、ヒドラジン、又はそれらの組み合わせの形を取り得る。上記アミンは、上記ポリマーの直鎖構造内(例えば、ポリエチレンイミン、又は、ジエチレントリアミンなどのポリアミノアルカンとエピクロルヒドリンなどの架橋剤との縮合ポリマーの中など)、又は、上記ポリマー骨格(例えばポリアリルアミン、ポリビニルアミン、又はポリ(アミノエチル)アクリレートなど)から吊り下がった官能基として、存在し得る。このような化合物は、U.S. Pat. No. 6,858,203にて論じられており、本明細書中において参考として援用される。
【0022】
一形態において、上記ポリマーは、式:
−[CHCH(CHNR)]
を有する繰り返し単位、又はそのコポリマーを特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、各Rは独立的にH、又は、低アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有する)、アルキルアミノ(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有する)、若しくはアリール(例えばフェニル)基などの、置換された又は無置換のアルキルを示す。
【0023】
第二の形態において、上記ポリマーは、式:
−[CHCH(CHNRX)]
を有する繰り返し単位、又はそのコポリマーを特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、各Rは独立的にH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール(例えばフェニル)基を示し、かつ、Xは交換性負電荷対イオンを示す。
【0024】
本発明の第二の形態に係るコポリマーの一例は、式:
−[CHCH(CHNRX)]
を有する第一の繰り返し単位を特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、各Rは独立的にH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール基(例えばフェニル)を示し、かつ、Xは交換性負電荷対イオンを示す。さらには、式:
−[CHCH(CHNR)]
を有する第二の繰り返し単位を特徴とする。なお、各nは独立的に一つの整数を示し、各Rは独立的にH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール基(例えばフェニル)を示す。
【0025】
第四の形態において、上記ポリマーは、式:
−[N(R)CHCH
を有する繰り返し単位、又は、そのコポリマーを特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、RはH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール基(例えばフェニル)を示す。
【0026】
本発明の第二の形態に係るコポリマーの一例は、式:
−[N(R)CHCH
を有する第一の繰り返し単位を特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、RはH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール基(例えばフェニル)を示す。さらには、式:
−[N(X)(H)(R)CHCH
を有する第二の繰り返し単位を特徴とする。なお、式中、各nは独立的に一つの整数を示し、RはH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール基(例えばフェニル)を示す。
【0027】
第五の形態において、上記ポリマーは式:
−[N(X)(R)(R)CHCH
を有する繰り返し単位、又は、そのコポリマーを特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、RおよびRはそれぞれ独立的にH、又は、置換された若しくは無置換である、アルキル基(例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、及びアルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、若しくはアリール基(例えばフェニル)を示し、かつ、Xは交換性負電荷対イオンを示す。
【0028】
本発明の第五の形態に係る一つの好ましいポリマーにおいて、R基の少なくとも1つは水素原子である。
【0029】
第六の形態において、上記ポリマーは、式:
−[CH(NR)CH
を有する繰り返し単位、又は、そのコポリマーを特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、RおよびRはそれぞれ独立的に、H、置換された若しくは無置換である、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、又は6〜12個の原子を含むアリール基(例えばフェニル)を示す。
【0030】
第七の形態において、上記ポリマーは、式:
−[CH(NRX)CH
を有する繰り返し単位、又は、そのコポリマーを特徴とする。なお、式中、nは一つの整数を示し、R、R及びRはそれぞれ独立的にH、置換された若しくは無置換である、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、アルキルアミノ基(エチルアミノ等、例えば包含的に1〜5個の炭素原子を有す)、又は6〜12個の原子を含むアリール基(例えばフェニル)を示し、また、各Xは交換性負電荷対イオンを示す。
【0031】
いずれの場合にも、R基は、1つ又は1つ以上の置換基を持ち得る。適切な置換基は、例えば第四級アンモニウムなどの治療(therapeutic)陰性基、又は、例えば第一級および第二級であるアルキル若しくはアリールアミンなどのアミン基を含む。他の適切な置換基の例は、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキサミド、スルホンアミド、ハロゲン、アルキル、アリール、ヒドラジン、グアニジン、尿素、及びカルボン酸エステルを含む。
【0032】
上記ポリマーは、架橋していることが好ましく、場合によっては、重合の間又は後、反応混合物に架橋剤を加えることによって架橋する。適切な架橋剤の例としては、ジアクリラート及びジメタクリラート(例えば、エチレングリコールジアクリラート、プロピレングリコールジアクリラート、ブチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート、ブチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジメタクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート)、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、トルエンジイソシアナート、エチレンビスメタクリルアミド、エチリデンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジメタクリラート、ビスフェノールAジアクリラート、1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシナート、アクリロイルクロリド、又はピロメリット酸ニ無水物などがある。
【0033】
架橋剤の量は、架橋結合およびモノマーの結合重量に基づき、概して約0.5〜75重量%であり、好ましくは約1〜25重量%である。他の実施形態では、架橋剤はポリマーの約2〜20重量%である。
【0034】
上記ポリマーは重合の後に架橋する場合もある。このように架橋させる方法の1つとして、例えばエピクロルヒドリン、スクシニルジクロリド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ピロメリット酸ニ無水物、トルエンジイソシアナート、及びエチレンジアミンなどの二官能性架橋剤を、上記ポリマーと反応させる方法を含む。一般的な例には、エピクロルヒドリンとのポリ(エチレンイミン)の反応がある。この例において、エピクロルヒドリン(1〜100部)は、ポリエチレンイミン(100部)を含む溶液に加えられ、かつ反応を促進するために加熱される。既に重合された物質に架橋を誘起する他の方法は、これに限定されないが、電離放射線照射、紫外線照射、電子ビーム照射、ラジカルへの暴露、及び熱分解を含む。
【0035】
好ましい架橋剤の例は、エピクロルヒドリン、1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−ジクロロプロパン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、スクシニルジクロリド、ジメチルスクシナート、トルエンジイソシアナート、アクリロイルクロリド、及びピロメリット酸ニ無水物を含む。
【0036】
上記リン酸結合性化合物がカルシウム塩である場合、それは一般に、酢酸カルシウム又は炭酸カルシウムである。上記化合物がアルミニウム塩である場合、それは一般に水酸化アルミニウムである。
【0037】
本発明に係る組成物におけるリン酸結合剤と併用される他の薬理活性成分は、概して、以下の群:降圧剤(例えばアンジオテンシン変換(ACE)阻害薬、ベータ遮断薬、及びカルシウムチャンネル遮断薬);カルシトリオール、及びビタミンD類似体;腸内で脂質の吸収を阻害する、タンパク質及び脂質抑制剤;カリウム塩;エポジェン(登録商標)などの貧血治療剤;アルカリ化剤;及び異なる種類のリン酸結合剤(例えば、ランタンに基づく結合剤はアルミニウムに基づく結合剤と併用され得る)から選ばれる。
【0038】
上記薬理活性成分がACE阻害剤である場合、それは一般に、エナラプリル又はベナゼプリル(フォルテコール(FORTEKOR)(登録商標))である;一般的なベータ遮断薬は、アテノロール及びプロプラノロールを含む;及び、カルシウムチャンネル遮断薬にはアムロジピンが最適である。
【0039】
本発明に係る併用組成物は、リン酸結合剤の物理的及び化学的な性質を有効とする。リン酸結合剤がランタンオキシカルボナートである場合、例えば、リン酸結合剤は以下の性質を持つ:高温で安定である;非常に大きい表面積を有する;白い粉状であり、粒状であってもよい;pH2.0以上で水媒体にやや溶けにくい;及び、食物に直接添加し得、それ故、タブレットのような剤形を必要としない。
【0040】
リン酸結合剤及び他の薬理活性成分は、任意の適切な方法において併用されてもよい。しかしながら、一般に上記薬理活性成分は、リン酸結合剤内に吸収される、又は取り込まれる。
【0041】
リン酸結合剤、特にはランタンオキシカルボナート又はランタンカルボナートヒドロキシドの化学的及び物理的な性質は、さらに、併用生成物の剤形および安定性に役立つ。例えば、薬理活性成分(例えば降圧剤)は、結合後、若干の分解を受ける、またはリン酸結合剤内取り込まれる。一般に、薬理活性成分は、1ヶ月の間に少なくとも10%未満の分解を受ける。多くの場合、薬理活性成分は、1ヶ月の間に5%ないし2.5%未満の分解を受ける。場合によっては、薬理活性成分は、1ヶ月の間に1.5%ないし1%未満の分解を受ける。
【0042】
本発明にかかるキットは、概して、結合性ランタン化合物、並びに他の薬理活性化合物を含む組成物の入った容器(例えば袋、瓶、缶など)、及び、上記組成物はどのように家畜に投与されるべきかに関する取扱説明書を含む。上記取扱説明書には、概して、与えるべき組成物の量及び投与計画などの情報が含まれる。
【0043】
本発明に係る方法は、概して、以下の工程:本発明に係る組成物を家畜に投与する工程を含む。
【0044】
本発明に係る組成物及び方法は、家畜における加齢疾病(例えば慢性腎不全)を管理する。例となる家畜には、犬、猫、馬、ウサギ、牛、ヤギ、及び豚が含まれる。本発明は、特に、犬、猫、及び馬の治療を対象としている。
【0045】
さらに、場合によっては、上記組成物及び方法は、家畜における加齢疾病(例えば慢性腎不全)の発病を遅らせる。例えば、比較対照実験において、本発明に係る組成物及び方法は、多くの場合、慢性腎不全などの加齢疾病の発病に関して有益である、対照との相違点を、統計的に有意に提供する。場合によっては、慢性腎不全などの加齢疾病は、対照より少なくとも1,2,又は3ヶ月遅らせられ得る。
【0046】
上述のように、本発明に係る組成物及び方法は、加齢疾病の発病を改善する、又は遅らせる。さらに、リン酸結合剤及び他の薬理活性化合物の併用は、相乗効果を発揮する。上記組成物及び方法は、言い換えると、リン酸結合剤に化合物を添加することから当業者が予測する以上である、有益な効果(例えば慢性腎不全の改善、又は疾病の進行の遅延)を提供する。
【0047】
上記相乗効果は、概して、期待される相加効果より少なくとも2.5%大きく達成される。上記相乗効果は、多くの場合、少なくとも5%ないし7.5%大きく達成される。場合によっては、上記効果は、期待される相加効果より10%ないし15%大きい。
【0048】
ランタンオキシカルボナートがリン酸結合剤として投与される場合、単回投与で家畜に投与される併用組成物におけるリン酸結合剤の量は、概して、1.0〜100mg/体重kgの範囲に及ぶ。多くの場合、上記量は、30.0〜80mg/体重kgに及ぶ。場合によっては、投与されるランタンオキシカルボナートの量は40.0〜75.0mg/体重kgに及ぶこともある。
【0049】
[実施例]
(実施例1)
LaCl(ランタンクロリド)をLaとして29.2重量%の濃度で含み、容積が334.75mlの水溶性HCl溶液を、4Lのビーカーに加え、かき混ぜながら80℃にまで加熱した。LaCl溶液の始めのpHは2.2であった。加熱したビーカーの中に、63.59gのカルボナートナトリウム(NaCO)を含む265mlの水溶液を、小型ポンプを用いて2時間一定の流速で量り入れた。フィルターを取り付けたビュヒナーろ過装置を用いて、ろ液から白い粉末状の生成物を分離した。ろ過ケーキを2Lの蒸留水に溶かしてフィルター処理を行い、反応中に形成されたNaClを洗い流すことを4回行った。洗浄したろ過ケーキを、105℃の対流式オーブン内に2時間、又は、安定した重量が観察されるまで置いた。上記生成物は、ランタンカルボナートヒドロキシド:LaCOOHから成る。図1は、標準試料と比較して、上記化合物のX線回折走査を示す図である。
【0050】
上記ランタン化合物におけるリン酸塩に対しての反応性を決定するために、以下の試験を行った。13.75g/lの無水NaHPO、及び8.5g/lのHClを含む原液を準備した。上記原液を、濃HClの添加によってpH3に調整した。100mlの上記原液を、攪拌棒と共にビーカーに入れた。上記溶液に、上述のように作成したランタンオキシカルボナート水和物の粉末を加えた。ランタンオキシカルボナート水和物の粉末の量は、懸濁液中のLaの量がリン酸塩と完全に反応するために必要とする化学量論的な量の3倍になるようにした。上記懸濁液の試料を、時間の間隔を置いてフィルターに通過させ、液体から全固体を分離した。上記液体試料には、リンに対する分析を行った。
【0051】
(実施例2)
LaCl(ランタンクロリド)をLaとして29.2重量%の濃度で含み、容積が334.75mlの水溶性HCl溶液を、4Lのビーカーに加え、かき混ぜながら80℃にまで加熱した。LaCl溶液の始めのpHは2.2であった。加熱したビーカーの中に、63.59gのカルボナートナトリウム(NaCO)を含む265mlの水溶液を、小型ポンプを用いて2時間一定の流速で量り入れた。フィルターを取り付けたビュヒナーろ過装置を用いて、ろ液から白い粉末状の生成物を分離した。ろ過ケーキを2Lの蒸留水に溶かしてフィルター処理を行い、反応中に形成されたNaClを洗い流すことを4回行った。洗浄したろ過ケーキを、安定した重量が観察されるまで、105℃の対流式オーブン内に2時間置いた。最後に、ランタンオキシカルボナートを、アルミナトレイに乗せて、マッフル炉に入れた。炉の温度を500℃にまで上げて、その温度を3時間保持した。終局産物は、無水ランタンオキシカルボナート:LaCOであると測定された。図2は、基準ゲージと比較して、上記化合物のX線回折走査を示す図である。
【0052】
上記工程を3回繰り返した。ある場合において、白い粉末の表面積は、26.95m/gmと測定された。顕微鏡写真は、この化合物の構造が、約100nmサイズの、等次元状又は略円形である微粒子であることを示す。X線回折パターンは、上記生成物がLaCOと記される無水ランタンオキシカルボナートであることを示した。
【0053】
上記ランタン化合物の、リン酸塩に対する反応性を測定するために、以下の試験を行った。13.75g/lの無水NaHPOと、8.5g/lのHClとを含む原液を準備した。濃HClを添加することによって、上記原液をpH3に調整した。100ml量の上記原液を、攪拌棒と共にビーカーに入れた。上記溶液に、上述のように作成した無水ランタンオキシカルボナートを加えた。無水ランタンオキシカルボナートの量は、懸濁液中のLaの量がリン酸塩と完全に反応するために必要とする化学量論的な量の3倍になるようにした。上記懸濁液の試料を、間隔を置いてフィルターに通過させ、液体から全固体を分離した。
【0054】
(実施例3)
酢酸ランタンとして100g/lのLaを含む溶液を、250℃の出口温度を有する吹き付け式乾燥器の中に入れる。吹き付け乾燥工程による中間生成物はバッグフィルターによって回収される。この中間生成物は、4時間600℃で焼成される。上記生成物のX線回折は、上記生成物が無水ランタンオキシカルボナートから成ることを示した。この化合物の化学式は、(LaCO)と記される。
【0055】
上記ランタン化合物の、リン酸塩に対する反応性を測定するために、以下の試験を行った。13.75g/lの無水NaHPOと、8.5g/lのHClとを含む原液を準備した。濃HClを添加することによって、上記原液をpH3に調整した。100ml量の上記原液を、攪拌棒と共にビーカーに入れた。上記溶液に、上述のように作成した粉末状のLaCOを加えた。ランタンオキシカルボナートの量は、懸濁液中のLaの量がリン酸塩と完全に反応するために必要とする化学量論的な量の3倍になるようにした。上記懸濁液の試料を、間隔を置いてフィルターに通過させ、液体から全固体を分離した。上記液体試料には、リンに対する分析を行った。
【0056】
(実施例4)
LaCl(ランタンクロリド)をLaとして29.2重量%の濃度で含み、容積が334.75mlの水溶性HCl溶液を、4Lのビーカーに加え、かき混ぜながら80℃にまで加熱した。LaCl溶液の始めのpHは2.2であった。加熱したビーカーの中に、63.59gのカルボナートナトリウム(NaCO)を含む265mlの水溶液を、小型ポンプを用いて2時間一定の流速で量り入れた。フィルターを取り付けたビュヒナーろ過装置を用いて、ろ液から白い粉末状の生成物を分離した。ろ過ケーキを2Lの蒸留水に溶かしてフィルター処理を行い、反応中に形成されたNaClを洗い流すことを4回行った。洗浄したろ過ケーキを、105℃の対流式オーブン内に2時間、又は、安定した重量が観察されるまで置いた。上記生成物のX線回折パターンは、上記生成物がランタンカルボナートヒドロキシド:LaCOOHから成ることを示した。上記生成物の表面積はBET法によって測定された。
【0057】
(実施例5)
・ラットにおける生体内検査
6グループの成体であるSD(Sprague-Dawley)ラットに、2週間の期間に2段階のステップで、5/6の腎臓摘出を受けさせ、その後、無作為治療を行うより前に、さらに2週間、回復させた。賦形剤(0.5%w/vカルボキシメチルセルロース)、又は賦形剤中に懸濁されたランタンオキシカルボナートを、1日1回、14日間、経口洗浄によって上記グループに受けさせた(10ml/kg/日)。投与量は、ランタン元素134g/kg/日である。毎日、暗期(給餌期)の直前に投与を実行した。尿サンプル(24時間)を、手術の前、治療開始の前、及び治療期間に週2回、採取した。量及びリン濃度を測定した。
【0058】
給餌:順化及び手術の期間、テクラド社(Teklad)製のリン酸塩の十分な食餌(0.5%Ca,0.3%P;Teklad No. TD85343)を動物に自由摂食で与えた。治療期間の開始時、動物は、前週に賦形剤を処理した動物の平均食餌消費量に基づいた、ペアフィード(pair-fed)とした。
【0059】
5/6の腎臓摘出:順化の一週間後、全動物は5/6腎臓摘出手術を受けた。手術は2段階のステップで行われた。最初に、左腎動脈の2つの下流分枝を結紮した。一週間後、右の腎臓摘出を行った。各手術前、ケタミン/キシラジン混合物(100mg/mlのケタジェクト(Ketaject)及び20mg/mlのキラジェクト(Kylaject))を10ml/kgで投与する、腹膜内への注射によって動物に麻酔した。各手術後、術後の痛みを軽減するために、0.25mg/kgのブプレノルフィンを投与した。手術後、動物を2週間安定にして、治療を開始した。
【0060】
ランタンオキシカルボナート又はランタンカルボナートヒドロキシドの(0回より多い)投与後、非投与のラットと比べて、食餌療法のリン結合の指標である、リン排泄の減少を示す結果となった。
【0061】
(実施例6)
・犬における検査
1日に(6時間をおいて)2回、2250mgのランタン元素を投与する交差試験において、ランタンカルボナートLaCO3OH(化合物A)又はLa2O2CO3(化合物B)を、6例の成体であるビーグル犬に経口投与した。投与は、動物に餌を供給した30分後に行った。交差治療群の間には、少なくとも14日間の休薬を行った。投与前、及び投与の1.5,3,6,7.5,9,12,24,36,48,60,及び72時間後に、血漿を採取して、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS:inductively-coupled plasma mass spectrometry)を用いてランタンの分析を行った。投与前、及び投与の24時間後に、カーテル法によって尿を採集し、クレアチン及びリン酸塩の濃度を測定した。検査より、リン酸塩の結合の指標となる、尿のリン酸塩排出の減少という結果が導かれた。
【0062】
(実施例7)
・食味検査
ランタンオキシカルボナートをウェット状及びドライ状のドッグフードに混合し、9例の異なる犬に、約40ポンド以上供与した。各犬は混合物を食べたが、2例が食べる前に数時間ためらった。食後数時間に、吐き気、嘔吐、鼓腸、又は放屁の兆候を示す犬はいなかった。
【0063】
ランタンオキシカルボナートをキャットフードに混合し、共に老齢であり、かつ1例は過重量である、2例の猫に供与した。第1の猫は混合餌を食べた。過重量の猫である第2の猫は、混合物を食べなかった。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1に従って作られた化合物のX線回折走査を示す図である。
【図2】実施例2に従って作られた化合物のX線回折走査を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含む一つの組成物であって、上記他の薬理活性成分は、降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、貧血治療剤、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれることを特徴とする組成物。
【請求項2】
上記リン酸結合剤は、希土類化合物、親水性アニオン交換樹脂、カルシウム塩、及びアルミニウム塩からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記他の薬理活性成分は降圧剤であり、かつ上記降圧剤は、アンジオテンシン変換阻害薬、ベータ遮断薬、及びカルシウムチャンネル遮断薬からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記リン酸結合剤は希土類化合物であり、かつ上記希土類化合物はランタンオキシカルボナート又はランタンカルボナートであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
上記リン酸結合剤は親水性アニオン交換樹脂であり、かつ上記樹脂は脂肪族アミンポリマーであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
上記リン酸結合剤はカルシウム塩であり、かつ上記カルシウム塩は酢酸カルシウム、又は炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
上記リン酸結合剤はアルミニウム塩であり、かつ上記アルミニウム塩は水酸化アルミニウムであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
上記化合物はアンジオテンシン変換阻害薬であり、かつ上記化合物はエナラプリル又はベナゼプリルであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
上記化合物はベータ遮断薬であり、かつ上記ベータ遮断薬はアテノロール、又はプロプラノロールであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
上記化合物はカルシウムチャンネル遮断薬であり、かつ上記カルシウムチャンネル遮断薬はアムロジピンであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
上記化合物はエポジェン(登録商標)などの貧血治療剤であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
家畜における加齢疾病の管理のためのキットであって:
a)組成物を含む容器であって、上記組成物はリン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含み、かつ上記他の薬理活性成分は降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、貧血治療剤、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれてなる容器;及び、
b)上記組成物はどのように家畜に投与されるべきかに関する取扱説明書、
を含むことを特徴とするキット。
【請求項13】
上記リン酸結合剤は希土類化合物であることを特徴とする請求項12に記載のキット。
【請求項14】
上記他の薬理活性成分は降圧剤であり、かつ上記降圧剤はアンジオテンシン変換阻害薬、ベータ遮断薬、及びカルシウムチャンネル遮断薬からなる群より選ばれることを特徴とする請求項13に記載のキット。
【請求項15】
上記希土類化合物はランタンオキシカルボナートであることを特徴とする請求項14に記載のキット。
【請求項16】
上記他の薬理活性成分はエナラプリル、ベナゼプリル、アテノロール、プロプラノロール、及びアムロジピンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項15に記載のキット。
【請求項17】
家畜における加齢疾病の管理方法であって、上記方法は組成物を家畜に投与するための各工程を含み、かつ上記組成物はリン酸結合剤及び他の薬理活性成分を含み、かつ上記他の薬理活性成分は降圧剤、カルシトリオール、ビタミンD類似体、脂質抑制剤、カリウム塩、及びアルカリ化剤からなる群より選ばれることを特徴とする方法。
【請求項18】
上記リン酸結合剤は、希土類化合物であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記他の薬理活性成分は降圧剤であり、かつ上記降圧剤はアンジオテンシン変換阻害薬、ベータ遮断薬、及びカルシウムチャンネル遮断薬からなる群より選ばれることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記希土類化合物はランタンオキシカルボナートであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記希土類化合物はランタンオキシカルボナートであることを特徴とする請求項20に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−504779(P2009−504779A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527184(P2008−527184)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/032415
【国際公開番号】WO2007/022445
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(501495330)アルテアナノ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】