説明

容器群積付け装置及び積付け方法

【課題】簡易な装置構成で多様な形状、素材、剛性及び重量の容器を損傷させずに、又、多様な配列の容器群の寸法差異や整列状態の乱れ、あるいは容器の欠落に影響を受けないでパレット上に容器群を安定して段積みできる積付け装置及び方法を提供する。
【解決手段】容器群積付け装置1は、幅広い種類の容器に対応可能な吸引ヘッド2、その移動手段及び負圧供給手段4を具備する保持搬送装置10を備えており、保持搬送装置10の吸引ヘッド2を移動手段で移動させて一連の段積み操作を行う。即ち多列ステージ22に整列された容器群を吸引ヘッド2で吸引保持した後、セパレートシート供給装置23で供給されたセパレートシート上に移動する。そこで、吸引ヘッド2に吸引保持された容器群の下側にセパレートシートを更に吸引保持した後、パレット20上に搬送し、両者を一体でパレット20に積む。この操作を繰り返して段積みを完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を整列させた容器群をパレット上に段積みするための装置及び方法に関する。特に、容器群、セパレートシート及びトップフレームを負圧で吸引保持してパレット上に段積み可能な容器群積付け装置及び容器群積付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器群をパレット上に段積みする装置としてのパレタイザにおいて、特にびん、缶、及び紙製又は合成樹脂製の包装材等の比較的小さな容器を整列してパッレト上に順次、段積みする装置は「バルクパレタイザ」と呼ばれ、ケースを段積みする「ケースパレタイザ」とは区別されることがある。
【0003】
例えば特許文献1(特開2003−89421号)は、整列された容器群を四方ガイド等の機械的手段で拘束して容器群をパレット上に移送し段積みを行うバルクパレタイザを開示する。かかるバルクパレタイザによれば、パレット上にセパレートシート(段積みする容器を安定且つ衛生的に保持するためのシート)と容器群とを交互に段積みすると共に、最上段にトップフレームを配置した多段積みを実現することができる(同特許文献1の図8参照)。
【0004】
しかしながら、従来のバルクパレタイザは、対象物品(容器)の形状や寸法により上記機械的手段の構造や取付け位置の調整を必要としたため、製造時及び品種変更時の調整に手間を要した。また、対象物品の形状や整列状態が変動すると、円滑に容器を保持して搬送できないことがあった。特に一部容器が欠落すると容器群全体が落下する可能性もあった。更に、段積み副資材としてのセパレートシートやトップフレームを保持・搬送することが出来ないため、これらを別途パレット上に移動させるための専用の装置を必要とした。
【0005】
これに対し、セパレートシートとその上に載せられた容器群とを一括して吸引保持し、これらをパレット上に一括移送する手段が提案されている。例えば特許文献2(特開2004−203621号)は、一段分の容器群及びその容器群を載せたセパレートシートを上部より覆って真空力でセパレートシートを吸引する吸引室装置を備えた吸引式容器群搬送装置を開示する。この装置によれば、一段分の容器群及びその容器群を載せたセパレートシートが一体に保持されて搬送される。
【0006】
特許文献2の吸引式容器群搬送装置によれば、容器群とその容器群の底部に敷設されたセパレートシートとを一度に搬送することができる。しかしながら、この吸引式容器群搬送装置を適用して容器群とセパレートシートを段積みするパレタイズを行う場合には、予め別個の手段によって容器群の下にセパレートシートを敷設する工程が必要となる。このため、搬送工程が複雑となり搬送所要時間が長くなる恐れがあった。また、セパレートシートの外周からの空気漏れを防止するために、より正確なシート位置決めを要し、装置構成も運転操作も複雑であった。更に、この吸引式容器群搬送装置では、段積み副資材としてのトップフレームを保持搬送することができないため、トップフレームをパレット上に移動させるための専用の装置を必要とした。
【0007】
特許文献3(米国特許第3,307,819号)には、複数の吸引孔を有する真空ホルダによって、柔軟な薄膜フィルムを吸引して保持する装置が開示されている。特許文献3の真空ホルダは、柔軟な薄膜フィルムによって覆われていない吸引孔が存在した場合であっても、真空ホルダの真空度を低下させることなく、フィルムを保持することができる。但し、そのために特許文献3の真空ホルダは、全ての吸引孔に真空度の低下を防止するバルブ手段を装着することが必要で複雑な構造となっている。
【0008】
特許文献4(特開平03−102014号)には、負圧ソースと、これに接続された吸引ヘッドを備えた個別物体の運搬装置が開示されている。吸引ヘッドの下方には、多数の吸引孔を有する境界壁が設けられており、運搬の対象となるコップ、缶等は、負圧ソースが提供する負圧によって、吸引ヘッドの境界板に吸着されて運搬される。特許文献4の運搬装置は、吸引ヘッドの全ての吸引孔と負圧装置とを連通する細い流通ダクトが設けられていることを特徴としている。この流通ダクトは、運搬対象物に当接せず開放されている吸引孔によって、吸引室内の負圧低下を防止するために、その圧力抵抗が高くなるように構成されている。
【0009】
特許文献3及び特許文献4の装置は、柔軟な薄膜フィルムやコップ、缶等を吸引ヘッドに吸着させて搬送する装置を開示している。これらの装置は、吸引を行う真空ホルダ或いは吸引ヘッドの吸引口の一部が開放されている場合でも、負圧が維持されて、容器等を搬送することが可能となっている。しかしながら、これらの装置は、吸引口の一部が開放されていても負圧低下を防止するために、特殊なバルブ手段或いは流通ダクトが必要となっている。このため、装置全体の構成が複雑となっていた。また、これらのバルブ手段或いは流通ダクトの構成を、搬送する容器等によって最適化する必要があり、搬送する容器等に対する装置の汎用性が低かった。
【0010】
【特許文献1】特開2003−89421号公報
【特許文献2】特開2004−203621号公報
【特許文献3】米国特許第3,307,819号公報
【特許文献4】特開平03−102014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、必ずしも強固ではない取扱い対象物としての容器に塑性変形や破損を起こさせることがなく、容器の形状や材質の変化、或いは不規則な容器の配置にも対応可能であって、充分な吸引力によって安定して保持及び搬送を行ってパレット上に段積みすることが可能な容器群積付け装置及び容器群積付け方法を提供するためになされたものである。また、取扱い対象である容器の品種切り替え等の条件変更に対し、比較的短時間で簡便に対応可能とすることを目的としている。
【0012】
更に本発明は、種々の容器群、セパレートシート及びトップフレームをそれぞれ単独で保持して搬送する他、容器群とセパレートシートとを組合せた状態、及びセパレートシートとトップフレームとを組合せた状態での搬送等が可能であり、簡易な装置構成でもって、パレット上に迅速且つ効率的に容器群、セパレートシート及びトップフレームを積付け可能な容器群積付け装置及び容器群積付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、複数の容器からなる容器群をパレット上に段積みするための容器群積付け装置であって、
複数の容器の供給を受けて容器群を整列状態で待機させる多列ステージと、
容器群の各積付け段の間に挿入配置される段積み副資材としてのセパレートシートを供給するセパレートシート供給装置と、
段積みされた容器群の最上段に配置される段積み副資材としてのトップフレームを供給するトップフレーム供給装置と、
搬送対象物を搬送可能に保持するための保持搬送装置とを備え、
前記保持搬送装置は、
吸引室の下面側に複数の吸引孔を有する物品吸着面が設けられ、その物品吸着面を搬送対象物に当接させて当該搬送対象物を吸引保持するための吸引ヘッド、
前記吸引ヘッドを水平方向及び垂直方向に移動させる移動手段、並びに、
前記吸引ヘッドの吸引室に連結された負圧供給手段を具備しており、
前記保持搬送装置の負圧供給手段は、
前記吸引ヘッドがその物品吸着面に前記容器を当接させ前記複数の吸引孔を介して前記容器を吸引保持する際に、前記物品吸着面の全面と対向するように前記容器が配置されておりほぼ全ての吸引孔から外気を直接吸引しない状態において、前記容器をほとんど塑性変形させることなく吸引保持することができ、且つ前記物品吸着面に前記容器が対向しない領域があることで前記容器に当接していない吸引孔から外気を直接吸入する状態において、前記容器の吸引保持を維持できるような負圧又は空気流をもたらす吸込み側静圧対風量の吸込み特性を有しており、
前記保持搬送装置によって、搬送対象物としての容器群、セパレートシート及びトップフレームをパレット上に所定の順序で段積み可能であることを特徴とする容器群積付け装置である。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載の容器群積付け装置において、前記負圧供給手段が、送風機の吸引側を利用して構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の容器群積付け装置において、
前記負圧供給手段により前記吸引ヘッドの物品吸着面の吸引孔にもたらされる負圧が、次の二つの条件:
(1)前記物品吸着面の複数の吸引孔の全てに容器を当接させて、これら全ての吸引孔から外気を直接吸入しない状態において前記負圧が10KPa以下になること、及び
(2)前記物品吸着面の複数の吸引孔の半数に容器を当接させて、残り半数の吸引孔から外気を直接吸入する状態において前記負圧が0.5KPa以上になること、
を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0016】
発明者らの種々の検討の結果、負圧供給手段により吸引ヘッドの物品吸着面の吸引孔に提供される負圧が10KPaを超えた場合には、変形容易な素材でできた容器を吸着して保持する際に、塑性変形を起こしてしまう可能性が非常に高くなることが確認された。また、負圧が0.5KPa未満の場合には、通常の小型軽量の容器にあっては、これを吸着して保持搬送する際に脱落する恐れが高まり、安定した保持が困難であることが確認された。以上のことから、本発明においては、負圧供給手段が0.5KPa以上10KPa以下の負圧を提供することが最も好ましいことが確認されている。
【0017】
請求項4の発明は、複数の容器からなる容器群をパレット上に段積みする容器群積付け方法であって、
吸引室の下面側に複数の吸引孔を有する物品吸着面が設けられ、その物品吸着面を搬送対象物に当接させて当該搬送対象物を吸引保持するための吸引ヘッド、前記吸引ヘッドを水平方向及び垂直方向に移動させる移動手段、並びに、前記吸引ヘッドの吸引室に連結された負圧供給手段を具備してなる、搬送対象物を搬送可能に保持するための保持搬送装置であり、その保持搬送装置の前記負圧供給手段は、
前記吸引ヘッドがその物品吸着面に前記容器を当接させ前記複数の吸引孔を介して前記容器を吸引保持する際に、前記物品吸着面の全面と対向するように前記容器が配置されておりほぼ全ての吸引孔から外気を直接吸引しない状態において、前記容器をほとんど塑性変形させることなく吸引保持することができ、且つ前記物品吸着面に前記容器が対向しない領域があることで前記容器に当接していない吸引孔から外気を直接吸入する状態において、前記容器の吸引保持を維持できるような負圧又は空気流をもたらす吸込み側静圧対風量の吸込み特性を有してなる、保持搬送装置を用いて、
多列ステージ上に整列された容器群、並びに、段積み副資材としてのセパレートシート及びトップフレームについて前記吸引ヘッドによる吸引保持及び搬送を行うことにより、前記容器群、セパレートシート及びトップフレームをパレット上に所定の順序で段積みすることを特徴とする容器群積付け方法である。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4に記載の容器群積付け方法において、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、セパレートシート供給装置で供給されたセパレートシートを吸引保持してパレット上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該セパレートシートを前記パレット上に載置する工程、及び、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、多列ステージに整列された容器群を吸引保持して前記パレット上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該容器群を既に前記パレット上に載置された前記セパレートシート上に載置する工程、を繰り返して所定の段数まで前記セパレートシート及び前記容器群を段積みすることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項4に記載の容器群積付け方法において、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、多列ステージに整列された容器群を吸引保持する工程、
前記容器群を吸引保持した前記吸引ヘッドをセパレートシート供給装置で供給されたセパレートシート上に移動させ、そこで当該吸引ヘッドに吸引保持された前記容器群の下側に前記セパレートシートを更に吸引保持する工程、及び、
前記容器群及び前記セパレートシートを一体的に吸引保持した前記吸引ヘッドをパレット上に移動させ、そこで負圧を解除又は低下させることにより、前記容器群及び前記セパレートシートを一緒に当該パレット上に載置する工程、を繰り返して所定の段数まで前記セパレートシート及び前記容器群を段積みすることを特徴とする。
【0020】
尚、請求項6の方法では、容器群を吸引保持した状態の吸引ヘッドをセパレートシート上に移動させ、そこで当該吸引ヘッドに吸引保持された容器群の下側にセパレートシートを当接させることにより、隣り合う複数の容器、吸引ヘッドの物品吸着面及びセパレートシートによって区画される隙間空間にも負圧が及ぶ。従って上述のように、吸引ヘッドに吸引保持されている容器群の下側にセパレートシートを更に吸引保持できる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の容器群積付け方法において、所定の段数まで前記容器群を段積みした後、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、セパレートシート供給装置で供給されたセパレートシートを吸引保持して最上段の容器群の上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該セパレートシートを前記最上段の容器群上に載置する工程、及び、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、トップフレーム供給装置で供給されたトップフレームを吸引保持して前記最上段のセパレートシートの上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該トップフレームを前記最上段のセパレートシート上に載置する工程、を経て段積みを最終的に完了することを特徴とする。
【0022】
請求項8の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の容器群積付け方法において、所定の段数まで前記容器群を段積みした後、
セパレートシート供給装置で供給されたセパレートシートの上にトップフレーム供給装置でトップフレームを積み重ね、当該セパレートシート上のトップフレームの上面に前記保持搬送装置の吸引ヘッドを当接させて前記トップフレーム及びその下側のセパレートシートを同時に当該吸引ヘッドで吸引保持する工程、及び、
前記トップフレーム及び前記セパレートシートを一体的に吸引保持した前記吸引ヘッドを最上段の容器群の上に移動させ、そこで負圧を解除又は低下させることにより、前記トップフレーム及び前記セパレートシートを一緒に前記最上段の容器群上に載置する工程、を経て段積みを最終的に完了することを特徴とする。
【0023】
尚、請求項8の方法では、セパレートシートの上にトップフレームを積み重ねた後、当該セパレートシート上のトップフレームの上面に吸引ヘッドを当接させることにより、セパレートシート、トップフレーム及び吸引ヘッドの物品吸着面によって区画される空間に負圧が及ぶ。従って上述のように、トップフレーム及びその下側のセパレートシートを同時に吸引ヘッドで吸引保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の容器群積付け装置によれば、容器群を構成する個々の容器を負圧によって塑性変形(又は損傷)させることなく、パレット上に段積みすることができる。このため、様々な形状、寸法、材質及び剛性の容器の段積みに対応することができる。また、容器群の整列形態の変更にも最小の設定変更で柔軟に対応することができ、操作が容易である。また、容器群の整列の乱れや部分的な欠落にも不具合なく対応して段積みを実施することができ、運転の安定性に優れている。更に、容器群のみならず、セパレートシートやトップフレームも同じ保持搬送装置の吸引ヘッドを用いて保持搬送することができるため、容器群積付け装置の構造の複雑化を回避できると共に、積付け作業の単純化及び効率化を図ることができる。
【0025】
請求項1の容器群積付け装置によれば、吸引ヘッドに負圧をもたらす負圧供給手段の静圧対風量の特性が適正化されていることにより、吸引ヘッドの物品吸着面に搬送対象の容器を当接させて吸引保持する際に、物品吸着面の全面に前記容器が対向するように配置されてほぼ全数の吸引孔から外気を直接吸引しない状態であっても、容器を塑性変形させることなく吸引保持することができる。同時に、物品吸着面に容器が対向していない領域があることで、前記容器に当接していない吸引孔から外気を直接吸引して吸引ヘッドの負圧が低下した状態であっても容器の吸引保持を維持することができる。
【0026】
このように、物品吸着面と容器との間から空気を吸引しても安定して容器を吸引保持できる効果があることから、特許文献4に示されるパッド32の如き柔らかく変形して容器との間から空気の流入を阻止する部材の如き特別な構成を必要としない。また、物品吸着面が金属・合成樹脂等剛体で良いので保守が少なくて清潔で破損したパッドが容器内に混入したりしない。そして、特許文献3の特殊バルブや特許文献4のホース等のように複雑で保守を要する部品が少ないので、安価で故障の少ない装置を提供することができる。このように本発明の装置によれば、対象とする容器の様々な条件の変動に対応して、当該容器を塑性変形又は損傷することなく安定して吸引保持できる効果がある。
【0027】
請求項2に記載したように、負圧供給手段として送風機の吸引側を用いることで、上記のような吸込み側静圧対風量の吸込み特性を比較的安価に実現することができる。特に、送風機の吸引側を利用することで、広い風量領域にわたって低い負圧特性を備えた負圧供給手段を実現できるため、物品吸着面の全面に対向するように容器が配置されてほぼ全数の吸引孔から外気を直接吸引しない状態で吸引ヘッドの負圧が高い状態になっても、前記容器をほとんど塑性変形させることなく吸引保持することができる。また、前記物品吸着面に容器が当接していない領域が広く前記容器に当接していない多くの吸引孔から外気を直接吸引して送風機吸引ヘッドの負圧が低下した状態でも、負圧供給手段としての送風機の吸引側が大きな風量で吸引孔から外気を吸引できるため負圧低下が軽度で、前記容器を確実に吸引保持することができる。
【0028】
請求項3に記載の二つの条件を同時に満たすように負圧及び風量を前記容器の形状や重量等の物性に応じて設定することで、吸引ヘッドの物品吸着面の吸引孔の全てに容器が当接して全ての吸引孔から外気を直接吸入しない状況で容器を保持して搬送する場合において、この搬送対象物が比較的変形容易な素材でできた容器であっても、物品吸着面への吸引保持時に当該容器に塑性変形をほとんど生じさせない。同時に、容器が当接せず、容器によって塞がれていない吸引孔が外気を直接吸入するという状況下においても、吸引ヘッドの物品吸着面に容器を搬送時も脱落しないように安定的に吸引保持することができる。このように請求項3の発明は、二つの背反的事項を両立させることができる。
【0029】
請求項4の容器群積付け方法によれば、容器群を構成する個々の容器を負圧によって塑性変形(又は損傷)させることなく、パレット上に段積みすることができる。このため、様々な形状、寸法、材質及び剛性の容器の段積みに対応することができる。また、容器群の整列形態の変更にも最小の設定変更で柔軟に対応することができ、操作が容易である。また、容器群の整列の乱れや部分的な欠落にも不具合なく対応して段積みを実施することができ、運転の安定性に優れている。更に、容器群のみならず、セパレートシートやトップフレームも同じ保持搬送装置の吸引ヘッドを用いて保持搬送することができるため、積付け作業の単純化及び効率化を図ることができる。
【0030】
請求項5の容器群積付け方法は、セパレートシートと容器群とを別個にそして交互にパレット上に搬送し載置するという段積み手順に関する。この方法によれば、セパレートシートと容器群とをそれぞれ別個に吸引ヘッドで保持してパレット上に搬送し載置するため、それぞれの動作を確実に実施して容器群積付け装置の運転を安定させる効果がある。
【0031】
請求項6の容器群積付け方法は、セパレートシートと容器群とを一緒にパレット上に搬送し載置するという段積み手順に関する。この方法によれば、予めセパレートシートを容器群の下に吸引保持した後に一括してパレット上に載置するため、作業工程が単純化されて高効率で段積みを行うことができる。また、セパレートシート及び容器群の相対位置、並びに両者のパレットに対する積付け位置精度が向上するため、段積みしたパレット上の容器の荷姿が改善されて搬送中の荷崩れが少なくなり、又、デパレタイザによる荷おろし作業を安定して実施することが可能になる。
【0032】
請求項7の容器群積付け方法は、セパレートシートとトップフレームとを別個にパレット上に搬送し載置するという段積み手順に関する。この方法によれば、セパレートシートとトップフレームを別個に保持してパレット上に載置するため、それぞれの動作を確実に実施して容器群積付け装置の運転を安定させる効果がある。
【0033】
請求項8の容器群積付け方法は、セパレートシートとトップフレームとを一緒にパレット上に搬送し載置するという段積み手順に関する。この方法によれば、セパレートシートとトップフレームを一括してパレット上に載置するため、作業工程が単純化されて高効率で段積みを行うことができる。また、セパレートシート及びトップフレームの相対位置、並びに両者のパレットに対する積付け位置の精度が向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の容器群積付け装置(パレタイザ)の一実施形態、並びに、その装置を使った容器群積付け方法の第1及び第2実施例について説明する。
【0035】
本発明の容器群積付け装置1の一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、容器群積付け装置1が容器群として規則正しく配列された複数の缶11と、その下面に当接しているセパレートシート12とを吸引保持して搬送し段積みしている状態を示す側面図である。この容器群積付け装置1は保持搬送装置10を備えている。保持搬送装置10は、吸引ヘッド2と、その吸引ヘッド2を移動させる移動手段としてのロボット3と、負圧供給手段4とを備えている。吸引ヘッド2の内側に設けられている吸引室9と負圧供給手段4とは、吸気ダクト5によって連通している。尚、移動手段としてのロボット3は、吸引ヘッド2を水平方向及び垂直方向に移動させることができるのみならず、吸引ヘッド2の平面方向角度についても制御可能である。
【0036】
負圧供給手段4は、送風機4a、吸気ダクト5、吸気分配室15、分配ダクト5cからなり、吸引室9に接続されている。また、吸気ダクト5は固定された固定ダクト5aと可撓吸気ダクト5bから構成されている。可撓吸気ダクト5bは可撓性を備えており、ロボット3に支持されて移動する吸引ヘッド2の一部である吸気分配室15の移動に併せて、その先端部が移動することができる。
【0037】
保持搬送装置10の吸引ヘッド2の上面図を図2に示す。吸引ヘッド2の上面には4カ所で吸気口6が開口しており、それぞれが分配ダクト5cに接続されている。本実施形態における吸気ダクト5の直径は300mmであり、吸気口6から負圧供給手段4までの距離が10mとなっている。吸引ヘッド2は、その中央の取り付け部30を介して前記ロボット3に支持されている。
【0038】
保持搬送装置10の吸引ヘッド2の下面図を図3に示す。吸引ヘッド2の下面側には、ヘッド枠2aが設けられており、このヘッド枠に、直径7mmの円形の吸引孔8がピッチ20mmで開口している物品吸着面7が固定されている。物品吸着面7の吸引孔8の開口面積の総和(A)に対する物品吸着面(B)の比率(A/B)を開口率とすると、本実施形態の物品吸着面7の開口率は10%となっている。図3には、物品吸着面7が平面的に隙間無く千鳥状に多列配置された複数の缶11を吸着保持する状態を、円形の線で重ねて示している。なお、吸引ヘッド2の物品吸着面7に吸引保持して搬送する対象物(即ち保持搬送装置10の搬送対象物)は容器としての缶11に限定されず、搬送対象物にはセパレートシートやトップフレームも含まれる。
【0039】
図1において保持搬送装置10の負圧供給手段4は、送風機(ブロアー)4aである。吸気ダクト5は、この送風機4aの吸引側に接続されている。負圧供給手段4を構成する送風機4aの風量と静圧との関係(Q−H特性)の一例を図4に示す。この送風機4aは、風量30m/minで稼働させた場合に吸引側は4kPaの負の静圧を供する。このとき、負圧供給手段4は、この送風機4a、吸気ダクト5等の関連装置、及び吸引ヘッド2の組合せによって、吸引ヘッド2の物品吸着面7の吸引孔8に、3.5kPaの負圧をもたらすことができる。又、負圧供給手段4を風量50m/minで稼働させた場合には、負圧供給手段4は2kPaの静圧を供することができる。この場合、吸引ヘッド2の物品吸着面7の吸引孔8には、1.8kPa負圧がもたらされる。これらの送風機4aを1個又は複数個用いることにより、保持搬送装置10は、必要とされる負圧特性に応じた負圧を発生させることができる。
【0040】
なお、図4に比較例として、従来型の保持搬送装置において吸引ヘッド2への負圧供給手段として用いられていた真空ポンプの特性を一点鎖線で示す。図4からわかるように、真空ポンプは比較的少ない風量範囲で非常に高い吸引負圧を発生するという特性(風量変化に対する圧力変化が急峻な特性)を有する。かかる特性によれば、吸引ヘッドにおける吸引孔の大部分が取扱い対象の容器によって閉塞された状態(つまり、外気を直接吸入する吸引孔がほとんどない状態)では非常に強力に容器を吸引保持することができる。その反面、容器によって塞がれていないために外気を直接吸入する吸引孔の数が増えると、吸引負圧が急激に低下して容器の安定的な吸引保持が難しくなるという弱点を露呈する。このような特性の真空ポンプを使用する限り、変形し易い素材でできた容器を塑性変形させずに吸引保持するための負圧の制御が極めて難しく、又、一部の容器が欠落した場合等に安定的な吸引保持が困難となり、容器の塑性変形防止と安定的吸引保持との両立を図ることは実際上不可能と言っても過言ではない。
【0041】
これに対し、本実施形態では、図4に示すように風量変化に対して圧力変化が比較的緩やかな特性を有する送風機の吸引側を負圧供給手段4に採用している。このため、物品吸着面7に設けられた複数の吸引孔8の大部分、或いは全部が容器で塞がれても負圧が増大して取扱い対象の容器を塑性変形させる事態にならず、また、複数の吸引孔8の一部分、或いは半数に容器が当接しない状態でも負圧が低下して取扱い対象の容器の吸引保持が困難になる事態にはならず、取扱い対象の容器を安定的に吸引保持するのに適した圧力及び風量の範囲を比較的広く確保することができる。このため、一度に吸引保持すべき容器の数量が変化しても、何ら追加的な対策を施すことなく、そのままの装置で対応することができる。つまり、本実施形態の容器群積付け装置1によれば、取扱い対象の容器の形状や数量が変化した場合でも、変形し易い素材でできた容器の変形防止と安定的吸引保持との両立を容易に図ることができる。その意味で本実施形態の保持搬送装置10は、それが組み込まれた容器群積付け装置1の汎用性を高めることに大きく貢献することができる。
【0042】
本実施形態における保持搬送装置10が、紙製の、直径80mm、内容量600,000mm、重量30gの上面が開口した缶11を176個保持する場合、並びに、176個の缶11とその下面に当接するように配置されたセパレートシート12の組合せ物品を保持して搬送する場合を例として、保持搬送装置10の吸引孔8付近の負圧と空気流の関係を例に挙げて、保持搬送装置10の特性を説明する。缶11は、上面が開放されており、側面と下面によって内側に閉じた空間13が形成された円筒形の形状を有している。
【0043】
保持搬送装置10が、図5の平面図に示すように互いに等間隔で接するように多列で密集配列(千鳥配列)された缶11を176個同時に保持搬送する場合について説明する。このとき、隣り合う3つの缶11の間には垂直方向の隙間14が存在している。缶11の断面積に対して、その周囲の隙間の水平方向の面積比は22%となる。このように密集配列された複数の缶11は、176個が一度に吸引ヘッド2によってその上面が吸引されて保持される。このとき吸引ヘッド2の物品吸着面7は、1個の缶11につき12個〜17個の吸引孔8が当接する。送風機4aを2台使用して風量が80m/minとした場合、吸引ヘッド2の物品吸着面7の吸引孔8のうち、缶11と当接する吸引孔8には2.5kPaの負圧がもたらされて、缶11を安定して保持する。一方で、隙間14の上に位置する吸引孔8は、缶11が吸引ヘッド2に吸着保持されている場合でも、外気に開放された状態となっており、外気を直接吸入している。しかしこの吸引孔8に発生する空気流は、缶11の保持に必要な負圧が維持される程度の流量であるために、缶11は安定して保持される。又、缶11が塑性変形する静圧は3kPa以上であるため、缶11が吸引ヘッド2に由来する負圧によって塑性変形する恐れはなく、缶11は好適な状態で保持される。
【0044】
次に176個の缶11とその下面に当接するように配置されたセパレートシート12の組合せ物品を保持して搬送する場合について説明する。2台の送風機を利用した負圧供給手段4の風量が80m/minである場合、吸引ヘッド2の物品吸着面7の吸引孔8のうち、缶11と当接する吸引孔8には、2.5kPaの負圧がもたらされて、缶11を安定して保持する。一方で隙間14は、その下面に当接するセパレートシート12と物品吸着面7とによって閉じた空間となるために、隙間14には、同様に略2.5kPaの負圧がもたらされて、セパレートシート12を安定して保持することができる。このように、保持搬送装置10は、負圧供給手段4によって供給される負圧が適正化されていることによって、その吸引ヘッド2の物品吸着面7の吸引孔8の一部が缶11に当接することなく外気を直接吸入する状態であっても、缶11を好適に保持して搬送することが可能である。又、負圧供給手段4の風量を変更することなく、セパレートシート12とその上に位置する176個の缶11とを組み合わせてなる組合せ物品を同様に好適に保持して搬送することが可能である。
【0045】
(第1実施例)上記容器群積付け装置1を使用してパレット20上に複数の缶11とセパレートシート12を段積みする方法の第1実施例について、図6〜図10を用いて説明する。図6に示すように、保持搬送装置10は、缶11が供給される多列ステージ22と、パレット20の搬送コンベア25と、セパレートシート供給装置23と、トップフレーム供給装置28の間に設置されている。
【0046】
本実施例では、多列ステージ22は幅広のコンベアチエンで構成され、上流側コンベア22aと下流側コンベア22bに分割され個別に駆動されている。そして、上流側コンベア22aのさらに上流側で図示省略の公知の容器整列装置であらかじめ千鳥配列に整列された缶11が一段に段積みする個数(176個)を一群として、前後に間隔を空けて上流側コンベア22aに順次供給される。そして下流側コンベア22b上に載置された缶11が保持搬送装置10により吸引保持されて持ち上げられ、下流側コンベア22b上が空になると上流コンベア22a上の缶11の一群が下流側コンベア22b上に順次移送される。なお、多列ステージ22の別例としては、多列ステージ22が幅広の平板で構成されて、一段に段積みされる個数(176個)の缶11が順次、両側のガイドバーの間で押板等に押されて多列ステージ22上に供給される構成でも良い。
【0047】
図7に示すように、ロボット3は、吸引ヘッド2を多列ステージ22の配列された複数の缶11の上端面まで移動させ、吸引ヘッド2の物品吸着面7を当接させる。これにより、缶11の内部が負圧となって、複数の缶11は吸引ヘッド2に吸引保持される。以下に於いては、これを第1の吸引保持工程と称する。
【0048】
複数の缶11を吸引保持した状態の吸引ヘッド2は、ロボット3によってセパレートシート供給装置23の上に移動される。このとき、セパレートシート供給装置23上には、図示省略の公知の手段でセパレートシートマガジンから取り出されたセパレートシート12が1枚供給されている。保持搬送装置10により吸引保持された缶11の下端面が、セパレートシート供給装置23上に用意されているセパレートシート12に当接されることで、密集配列された缶11、吸引ヘッド2の物品吸着面7及びセパレートシート12によって区画される缶11の隙間14の空間にも、缶11の内部と同程度の負圧が及ぼされることになる。この結果、図8に示すように、吸引ヘッド2に吸引保持されている缶11の列の下面側にセパレートシート(図8に符号12aで示す)が一体に吸引保持される。以下に於いては、これを第2の吸引保持工程と称する。
【0049】
ロボット3は、密集配列された複数の缶11とセパレートシート12を吸引保持した状態の吸引ヘッド2を、缶11及びセパレートシート12がパレット20の平面上の位置及び角度、並びにその時点における高さに対応するよう移動させる。即ち、ロボット3は平面上において、缶11及びセパレートシート12をパレット位置に適正に合致するように位置と角度を合致させ、また、積付けの進展に伴い順次変動する積付け高さに追従しながら、缶11及びセパレートシート12をそのときの最上段の缶11の上に接近させて開放する。このように、ロボット3は適正な位置で負圧を解除することにより、密集配列された状態の缶11とセパレートシート12をパレット20上の所定位置に正確に載置する。以下に於いては、これを吸引解除工程と称する。
【0050】
ここで、できるかぎり速やかに負圧を解除するために、吸気ダクト5の吸気ヘッド2側にシャッター27を設け(図1参照)、このシャッター27を開放することにより外気を導入するとともに、吸気ダクト5の負圧供給手段4側にダンパ26を設け(図1及び図6参照)、ダンパ26を開放して、負圧供給手段4の吸気を遮断することが可能である。その場合、シャッター27とダンパ26との作用により、負圧は速やかに解除されて缶11とセパレートシート12は迅速に吸引ヘッド2の吸引保持から開放されてパレット上に配置される。
【0051】
缶11に対する第1の吸引保持工程と、缶11及びセパレートシート12に対する第2の吸引保持工程と、吸引解除工程を1サイクルとした操作を複数回実行することにより、パレット20上に密集配列された缶11とセパレートシート12とを交互に段積みすることが可能となる。図9に、第1の吸引保持工程と、第2の吸引保持工程と、吸引解除工程とを4サイクル実行した結果、缶11とセパレートシート12が交互に4段積み重ねられている様子を示す。
【0052】
図6において、所定の段数の段積みが完了したことが図示省略のセンサーで検出されると、トップフレーム供給装置28は、矢印Bの如くセパレートシート供給位置23に供給されているセパレートシート12の上に、トップフレーム24を積み重ねる。このトップフレーム24は、平面の一部を窓抜きしたような枠形状をなしており、トップフレーム24の内側にはトップフレーム空間24aが存在する。なお、トップフレーム供給装置28の具体的な構造の記載を省略したが、例えば複数のバキュームカップを備えたトップフレーム保持板を上下及び平面状上で移動させてトップフレーム24を吸着して供給する等、公知の装置が利用できる。
【0053】
ロボット3は、セパレートシート12の上に配置されているトップフレーム24の上面に吸引ヘッド2の物品吸着面7を当接させ、物品吸着面7により閉じられたトップフレーム空間24aを負圧とすることで、セパレートシート12とトップフレーム24とを一体に吸引ヘッド2に吸引保持する。そして、図10に示すように、トップフレーム24およびセパレートシート12を吸引保持した状態で、吸引ヘッド2を段積みされた缶11の最上段に移動させた後、負圧を解除することにより、パレット20上に積み上げられた缶11の上に、トップフレーム24とセパレートシート12とを重ねるように配置して、段積みを完了する。所定の段数の缶11を搭載したパレット20は、搬送コンベア25によって次の工程に搬送され、又、次の積付け用パレットが供給される。なお、このとき、吸引ヘッド2の物品吸着面7の負圧が高くなり、セパレートシート12を塑性変形させる可能性がある場合、2台の送風機の一台を停止してこれを防止しながら、1台の送風機の吸気を利用してパレートシート12とトップフレーム24の吸引保持及び搬送を実施する。
【0054】
(第2実施例)上記容器群積付け装置1を使用してパレット20上に複数の缶11とセパレートシート12を段積みする方法の第2実施例(第1実施例とは異なる積付け方法)について、以下に説明する。
【0055】
本実施例における容器群の積付け方法では、最初に保持搬送装置10の吸引ヘッド2によって、セパレートシート供給装置23で供給されたセパレートシート12を吸引保持してパレット20上に搬送する。そこで吸引ヘッド2の負圧を解除又は低下させることにより、セパレートシート12をパレット20の上に載置する。次に、吸引ヘッド2によって多列ステージ22に整列された複数の缶11を吸引保持してパレット20上に搬送し、そこで負圧を解除又は低下させることにより、缶11を既に載置されているセパレートシート12上に載置する。容器群積付け装置1はこのセパレートシート12の載置と缶11の載置とを繰り返して、所定の段数までセパレートシート12及び缶11を段積みする。
【0056】
所定の段数まで缶11を段積みした後、吸引ヘッド2によって、セパレートシート供給装置23で供給されたセパレートシート12を吸引保持して最上段の缶11の上に搬送し、そこで負圧を解除又は低下させることにより、セパレートシート12を最上段の缶11の上に載置する。そして最後に、吸引ヘッド2によって、トップフレーム供給装置28で供給されたトップフレーム24を吸引保持して最上段のセパレートシート12の上に搬送し、そこで負圧を解除又は低下させることで、トップフレーム24を最上段のセパレートシート12上に載置する。以上により、段積みが完了する。
【0057】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、円筒の容器を密集させずに所定の間隔を保って配列した場合には、円筒の容器の断面積に対する周囲の隙間の水平方向の面積比はより大きくなる。このような場合であっても、本発明の容器群積付け装置1は、その容器の断面積に対する隙間の面積比が50%以下であり、吸引ヘッド2の吸引孔8の半数に容器が当接している場合には、容器の搬送が可能である。
【0058】
また、上記実施例では、本発明の容器群積付け装置1の保持搬送装置10が円筒状の紙製の缶11を搬送する場合について詳細な説明を行ったが、合成樹脂製のより柔軟な素材からなる容器群、金属製のより重量のある容器群、或いは通気性のある素材からなる容器群であっても、その負圧供給手段4の風量及び負圧の条件を調整、あるいは設計条件を変更することにより、それら容器群を塑性変形させることなく好適に搬送することが可能である。容器の形状は、横断面四角形状であっても、より複雑な形状であっても搬送が可能である。容器に準ずる包装物についても、本発明の容器群積付け装置を適用して段積みすることが可能である。
【0059】
なお、前記説明では、保持搬送装置10の移動手段としてロボット3を利用し、パレットが低い位置に固定された状態で段積みを実施する例に関して説明したが、このようなロボット3に代えて、従来からパレタイザに広く利用されている門型構成でパレットを上下しながらパレット上に容器群を段積みする装置、例えば特開2001−122220(図13)に示される装置を移動手段として採用することにより、保持搬送装置10を構成してもよい。
【0060】
更に、上記実施例では、保持搬送装置10の送風機4aを床上に設置した例を示したが、ロボット3に支持されて移動する吸引ヘッド2に送風機4aを固定して用いることにより、吸気ダクト5の構成を簡略化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態である容器群積付け装置1の側面図である。
【図2】保持搬送装置10の吸引ヘッド2の上面図である。
【図3】保持搬送装置10の吸引ヘッド2の下面図である。
【図4】負圧供給手段4である送風機の風量と吸引側の静圧との関係の一例を示す図である。
【図5】保持搬送装置10に吸引保持されるために多列で密集配列された缶11の状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態である容器群積付け装置1のレイアウト図である。
【図7】保持搬送装置10を使用して行われる第1の吸引保持工程を示す図である。
【図8】保持搬送装置10を使用して行われる第2の吸引保持工程を示す図である。
【図9】保持搬送工程で段積みされた缶11とセパレートシート12の側面図である。
【図10】トップフレーム24およびセパレートシート12を吸引保持した保持搬送装置10の側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 容器群積付け装置
2 吸引ヘッド
3 ロボット(移動手段)
4 負圧供給手段
4a 送風機
5 吸気ダクト
5a 可撓吸気ダクト
5b 固定ダクト
5c 分配ダクト
6 吸気口
7 物品吸着面
8 吸引孔
9 吸引室
10 保持搬送装置
11 缶(容器)
12 セパレートシート
13 缶内側の空間
14 隙間
15 吸気分配室
20 パレット
22 多列ステージ
23 セパレートシート供給装置
24 トップフレーム
25 搬送コンベア
26 ダンパ
27 シャッター
28 トップフレーム供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容器からなる容器群をパレット上に段積みするための容器群積付け装置であって、
複数の容器の供給を受けて容器群を整列状態で待機させる多列ステージと、
容器群の各積付け段の間に挿入配置される段積み副資材としてのセパレートシートを供給するセパレートシート供給装置と、
段積みされた容器群の最上段に配置される段積み副資材としてのトップフレームを供給するトップフレーム供給装置と、
搬送対象物を搬送可能に保持するための保持搬送装置とを備え、
前記保持搬送装置は、
吸引室の下面側に複数の吸引孔を有する物品吸着面が設けられ、その物品吸着面を搬送対象物に当接させて当該搬送対象物を吸引保持するための吸引ヘッド、
前記吸引ヘッドを水平方向及び垂直方向に移動させる移動手段、並びに、
前記吸引ヘッドの吸引室に連結された負圧供給手段を具備しており、
前記保持搬送装置の負圧供給手段は、
前記吸引ヘッドがその物品吸着面に前記容器を当接させ前記複数の吸引孔を介して前記容器を吸引保持する際に、前記物品吸着面の全面と対向するように前記容器が配置されておりほぼ全ての吸引孔から外気を直接吸引しない状態において、前記容器をほとんど塑性変形させることなく吸引保持することができ、且つ前記物品吸着面に前記容器が対向しない領域があることで前記容器に当接していない吸引孔から外気を直接吸入する状態において、前記容器の吸引保持を維持できるような負圧又は空気流をもたらす吸込み側静圧対風量の吸込み特性を有しており、
前記保持搬送装置によって、搬送対象物としての容器群、セパレートシート及びトップフレームをパレット上に所定の順序で段積み可能であることを特徴とする容器群積付け装置。
【請求項2】
前記負圧供給手段が、送風機の吸引側を利用して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の容器群積付け装置。
【請求項3】
前記負圧供給手段により前記吸引ヘッドの物品吸着面の吸引孔にもたらされる負圧が、次の二つの条件:
(1)前記物品吸着面の複数の吸引孔の全てに容器を当接させて、これら全ての吸引孔から外気を直接吸入しない状態において前記負圧が10KPa以下になること、及び
(2)前記物品吸着面の複数の吸引孔の半数に容器を当接させて、残り半数の吸引孔から外気を直接吸入する状態において前記負圧が0.5KPa以上になること、
を満たすように設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器群積付け装置。
【請求項4】
複数の容器からなる容器群をパレット上に段積みする容器群積付け方法であって、
吸引室の下面側に複数の吸引孔を有する物品吸着面が設けられ、その物品吸着面を搬送対象物に当接させて当該搬送対象物を吸引保持するための吸引ヘッド、前記吸引ヘッドを水平方向及び垂直方向に移動させる移動手段、並びに、前記吸引ヘッドの吸引室に連結された負圧供給手段を具備してなる、搬送対象物を搬送可能に保持するための保持搬送装置であり、その保持搬送装置の前記負圧供給手段は、
前記吸引ヘッドがその物品吸着面に前記容器を当接させ前記複数の吸引孔を介して前記容器を吸引保持する際に、前記物品吸着面の全面と対向するように前記容器が配置されておりほぼ全ての吸引孔から外気を直接吸引しない状態において、前記容器をほとんど塑性変形させることなく吸引保持することができ、且つ前記物品吸着面に前記容器が対向しない領域があることで前記容器に当接していない吸引孔から外気を直接吸入する状態において、前記容器の吸引保持を維持できるような負圧又は空気流をもたらす吸込み側静圧対風量の吸込み特性を有してなる、保持搬送装置を用いて、
多列ステージ上に整列された容器群、並びに、段積み副資材としてのセパレートシート及びトップフレームについて前記吸引ヘッドによる吸引保持及び搬送を行うことにより、前記容器群、セパレートシート及びトップフレームをパレット上に所定の順序で段積みすることを特徴とする容器群積付け方法。
【請求項5】
請求項4に記載の容器群積付け方法において、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、セパレートシート供給装置で供給されたセパレートシートを吸引保持してパレット上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該セパレートシートを前記パレット上に載置する工程、及び、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、多列ステージに整列された容器群を吸引保持して前記パレット上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該容器群を既に前記パレット上に載置された前記セパレートシート上に載置する工程、
を繰り返して所定の段数まで前記セパレートシート及び前記容器群を段積みすることを特徴とする容器群積付け方法。
【請求項6】
請求項4に記載の容器群積付け方法において、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、多列ステージに整列された容器群を吸引保持する工程、
前記容器群を吸引保持した前記吸引ヘッドをセパレートシート供給装置で供給されたセパレートシート上に移動させ、そこで当該吸引ヘッドに吸引保持された前記容器群の下側に前記セパレートシートを更に吸引保持する工程、及び、
前記容器群及び前記セパレートシートを一体的に吸引保持した前記吸引ヘッドをパレット上に移動させ、そこで負圧を解除又は低下させることにより、前記容器群及び前記セパレートシートを一緒に当該パレット上に載置する工程、
を繰り返して所定の段数まで前記セパレートシート及び前記容器群を段積みすることを特徴とする容器群積付け方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の容器群積付け方法において、
所定の段数まで前記容器群を段積みした後、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、セパレートシート供給装置で供給されたセパレートシートを吸引保持して最上段の容器群の上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該セパレートシートを前記最上段の容器群上に載置する工程、及び、
前記保持搬送装置の吸引ヘッドによって、トップフレーム供給装置で供給されたトップフレームを吸引保持して前記最上段のセパレートシートの上に搬送しそこで負圧を解除又は低下させることにより、当該トップフレームを前記最上段のセパレートシート上に載置する工程、
を経て段積みを最終的に完了することを特徴とする容器群積付け方法。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の容器群積付け方法において、
所定の段数まで前記容器群を段積みした後、
セパレートシート供給装置で供給されたセパレートシートの上にトップフレーム供給装置でトップフレームを積み重ね、当該セパレートシート上のトップフレームの上面に前記保持搬送装置の吸引ヘッドを当接させて前記トップフレーム及びその下側のセパレートシートを同時に当該吸引ヘッドで吸引保持する工程、及び、
前記トップフレーム及び前記セパレートシートを一体的に吸引保持した前記吸引ヘッドを最上段の容器群の上に移動させ、そこで負圧を解除又は低下させることにより、前記トップフレーム及び前記セパレートシートを一緒に前記最上段の容器群上に載置する工程、
を経て段積みを最終的に完了することを特徴とする容器群積付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−18390(P2010−18390A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180516(P2008−180516)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【上記1名の代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
【Fターム(参考)】