説明

容器

【課題】ヘイズ、ガスバリア性が従来品と同等の機能を有し、かつスジの発生が抑制され、鮮明性に優れた容器を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなる。
【化1】


[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱可塑性樹脂製の延伸ブロー成形品はその強靭性、剛性、透明性、軽量性等より、容器として広い分野で使用されている。かかる容器は、一般にプリフォームと言われる予備成形体を延伸ブロー成形することにより得られる。
【0003】
該容器は、加飾の目的で商品名、模様等を印刷したフィルムで被覆して使用されており、フィルムで容器を被覆するにあたっては、成形容器をシュリンクフィルムで覆い、熱によってフィルムを容器に密着させた場合、フィルムにしわが発生し、容器との間に隙間が発生するという問題点があった。
【0004】
これに対して、プリフォームを延伸ブロー成形する際に、熱可塑性樹脂製の容器本体の少なくとも胴部外表面の一部を、プリフォームの延伸ブロー時に、フィルムとプリフォームとを同時に延伸することにより、熱可塑性樹脂容器を延伸フィルムで被覆した容器を形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
そして同文献には、被覆する延伸フィルムに、ガスバリア性樹脂であるエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOH樹脂と称する)を用いることで、容器にガスバリア性を付与する事が記載されている。
【特許文献1】特開2006−240629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術においてEVOH樹脂層を有するフィルムを用いた場合、延伸後のヘイズは良好であるが、EVOH樹脂層に細かな延伸ムラやスジが発生してしまい、容器の鮮明性には改善の余地が残るものであった。
これは、EVOH樹脂層が外側に位置するために赤外線ヒーターなどの熱を受けやすく、プリフォームを加熱するに従って、通常のEVOH樹脂は結晶化度が高くなるためであると予想され、EVOH樹脂層の結晶状態が乱れることによってスジが発生すると推定される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討の結果、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、EVOH樹脂層を少なくとも1層有するフィルムを被覆密着するにあたり、EVOH樹脂に代えて、下記1,2−ジオール構造単位を有する変性EVOH樹脂を用いることにより、延伸後のヘイズおよびガスバリア性を従来EVOH樹脂と同等レベルで維持し、なおかつ均一に延伸され、スジの発生が抑制されることにより鮮明性に優れた容器を提供することが可能になることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなる容器に存する。
【化1】

[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなる場合、ヘイズおよびガスバリア性が従来品と同等の機能を有し、かつスジの発生が抑制され、鮮明性に優れた延伸フィルム被覆容器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明は、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなる容器に存する。
【化2】

[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【0010】
(中空ボトルの説明)
本発明における中空ボトルは、一般的な公知の方法で製造され、通常、プリフォームを延伸ブロー成形することにより得られる。プリフォームとは、延伸ブロー成形における空気の吹込みを行う前の中空管状の予備成形体を意味する。例えば具体的には胴部と口部を有する有底の成形物であり、代表的には試験管型のものである。かかるプリフォームの胴部の厚みは通常1〜5mmである。
【0011】
上記熱可塑性樹脂としては、中空ボトルとして使用される公知のものでよい。例えば具体的には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂;直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、環状ポリオレフィン、またはこれらポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性等したもの等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/12、ナイロン6/66、MXD6ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素系樹脂;ポリスチレン、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、芳香族または脂肪族ポリケトン、更にこれらを還元して得られるポリアルコール類、ポリカーボネート、更にはエチレン含有量等が異なる他のEVOH樹脂等が挙げられるが、熱可塑性樹脂容器の物性(特に強度)等の実用性の点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素系樹脂が好ましく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルである。
【0012】
なお、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とするものであり、必要に応じて、少量の(例えば30モル%以下、望ましくは10モル%以下にて)共重合可能な酸成分および/またはグリコール成分を共重合させたものでもよい。
【0013】
共重合成分として具体的には、酸成分としては、イソフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸等の脂肪族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸およびこれらのエステル形成性誘導体の他、テレフタル酸ジメチル、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができる。ガスバリア性の点から好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸ジメチルであり、特に好ましくはイソフタル酸である。
【0014】
また、グリコール成分としては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールの他、グリセリン、1,3−プロパンジオール、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。耐熱性の点から好ましくはトリメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオールであり、特に好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
かかる酸成分およびグリコール成分は、一方のみを共重合しても両方を共重合してもよい。
【0015】
(フィルムについて)
本発明では、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなることが特徴である。
【化3】

[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【0016】
上記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂について説明する。
上記構造単位(1)のEVOH樹脂中の含有量は通常0.1〜30モル%、好ましくは0.2〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%である。かかる含有量が少なすぎると結晶化度の低下が不十分となり本発明の効果が十分に発現しない傾向があり、多すぎると高湿度条件下でのガスバリア性能が低下する傾向にある。
【0017】
また、かかる構造単位の含有量を調整するために、構造単位(1)の含有量が異なる少なくとも2種のEVOH樹脂(B)をブレンドして調整することも可能であり、そのうちの少なくとも1種が構造単位(1)を含有しないEVOH樹脂であっても構わない。
このようにして側鎖1,2−ジオール結合量が調整されたEVOH樹脂に関しては、側鎖1,2−ジオール結合量は重量平均で算出しても差し支えなく、正確には1H−NMRの測定結果より、側鎖1,2−ジオール結合量を算出することができる。
【0018】
EVOH樹脂成分のエチレン含有量は、通常20〜60モル%、好ましくは20〜50モル%、特に好ましくは25〜48モル%である。エチレン含有量が低すぎると成形性が低下する傾向があり、高すぎるとガスバリア性が低下する傾向がある。
【0019】
さらに、EVOH樹脂成分のケン化度は滴定法(JIS K6726)で測定した値で通常85〜100モル%、好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは98〜100%である。ケン化度が低すぎると容器のガスバリア性が低下する傾向がある。
【0020】
EVOH樹脂成分のメルトフローレートは210℃、荷重2160gで測定した値で通常0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜40g/10分である。かかる値が低すぎると溶融粘度が高く溶融成形が困難となり、高すぎるとガスバリア性や機械強度が低下する傾向がある。
【0021】
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位における有機基としては、特に限定されず、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0022】
1〜R3は通常炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の飽和炭化水素基または水素原子が好ましい。R4〜R5は炭素数1〜30、特には炭素数1〜15、さらには炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基または水素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。殊には、R1〜R6がすべて水素で、Xが単結合であるものが好ましい。
【0023】
また、一般式(1)で表わされる構造単位中のXは、得られるEVOH樹脂の分子構造の緻密性が優れる点から、代表的には単結合である。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば結合鎖であってもよい。かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、−O−、−(CH2O)m−、−(OCH2m−、−(CH2O)mCH2−等のエーテル結合部位を含む構造、−CO−、−COCO−、−CO(CH2mCO−、−CO(C64)CO−等のカルボニル基を含む構造、−S−、−CS−、−SO−、−SO2−等の硫黄原子を含む構造、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む構造、−HPO4−等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造、−Si(OR)2−、−OSi(OR)2−、−OSi(OR)2O−等の珪素原子を含む構造、−Ti(OR)2−、−OTi(OR)2−、−OTi(OR)2O−等のチタン原子を含む構造、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1〜30、好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10である。)。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点で−CH2OCH2−、および炭素数1〜10の炭化水素鎖が好ましく、さらには炭素数1〜6の炭化水素鎖、特には炭素数1であることが好ましい。
【0024】
本発明における最も好ましいEVOH樹脂の構造は、構造単位(1)におけるR1、およびR2〜R4がすべて水素原子であり、Xが単結合であるものである。すなわち、下記構造式(1a)で示される構造単位を含むものが好ましい。
【化4】

そして、EVOH樹脂の最も好ましい構成は、上記構造単位(1a)が0.5〜5モル%、エチレン含有量が25〜48モル%、およびビニルアルコール由来の構造単位、および残部が酢酸ビニル由来のビニルアセトキシ構造単位からなり、ケン化度が98〜100モル%、MFRが2〜40g/10分であるものである。
【0025】
本発明で用いられるEVOH樹脂の製造方法については特に限定されないが、最も好ましい構造である構造単位(1a)を含有するEVOH樹脂を例とすると、[1]コモノマーとして3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーと共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化する方法、あるいは、[2]コモノマーとしてビニルエチレンカーボネート等を用いてこれらとビニルエステル系モノマーと共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化、脱炭酸する方法、あるいは、[3]コモノマーとして2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等を用い、これらとビニルエステル系モノマーと共重合して共重合体を得、次いでケン化、脱アセタール化する方法等が挙げられる。
【0026】
なかでも、重合が良好に進行し、1,2−ジオール構造単位をEVOH中に均一に導入しやすいという製造時の利点や、得られたEVOHを溶融成形する際の問題点が少ない点、さらには最終的なフィルムの特性から、製造方法[1]の方法を採用することが好ましく、特に好ましくは、共重合反応性に優れる点で3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとビニルエステル系モノマーを共重合して得られた共重合体をケン化する方法である。さらには3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることが好ましい。また、これらの前記モノマーの混合物を用いてもよい。
【0027】
なお、ビニルエステル系モノマーとして酢酸ビニルを用い、これと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各モノマーの反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701、であり、これは後述のビニルエチレンカーボネートの場合の、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4、と比較して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが酢酸ビニルとの共重合反応性に優れることを示すものである。
【0028】
また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)であり、ビニルエチレンカーボネートの場合の、Cx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランの場合のCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較して、重合の阻害要因となって重合度が上がりにくくなったり、重合速度低下の原因となることがないことを示すものである。
【0029】
また、かかる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは、その共重合体をケン化する際に発生する副生物が主構造単位である酢酸ビニル構造単位に由来するものと同一であり、その後処理に特別な装置や工程を設ける必要がない点も、工業的に大きな利点である。また、少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
【0030】
なお、3,4−ジオール−1−ブテンは、イーストマンケミカル社から、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。また、1,4―ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを利用することも出来る。
【0031】
上記[2]および[3]の製法により製造された1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂は、ケン化度が低い場合や、脱炭酸が不充分な場合には、側鎖にカーボネート環およびジオキソラン環が残存し、得られるEVOH樹脂の構造が緻密性に欠けガスバリア性に劣る場合があるためこれに留意して使用する必要がある。
【0032】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3〜20、好ましくは炭素数4〜10、特に好ましくは炭素数4〜7の脂肪族ビニルエステルである。経済的な点から、特に好ましくは酢酸ビニルが用いられる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
【0033】
なお、共重合する際の上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位モノマーの重量割合は、前述した所望の導入量に合わせて決定すればよい。また、場合によっては、共重合時に本発明の効果を阻害しない範囲(例えば50モル%以下)にて共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合してもよい。
【0034】
また、重合終了時にはラジカル重合において用いられる公知の重合禁止剤を反応系内に添加することが好ましく、かかる重合禁止剤としては、例えばm−ジニトロベンゼン、アスコルビン酸、ソルビン酸、ベンゾキノン、α−メチルスチレンの二量体、p−メトキシフェノール等が挙げられる。
【0035】
このようにして得られた共重合体は、次いでケン化され、固液分離して得られた樹脂を乾燥することにより、上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂が得られる。
従って、本発明におけるEVOH樹脂は、部分的に未ケン化のコモノマー由来の構造をとりうる。
それ以外の部分は、ビニルアルコール構造単位および、残存したビニルエステル由来のアシルオキシ基含有構造単位(および少量の共重合可能なエチレン性不飽和単量体構造単位)である。
【0036】
なお、本発明におけるケン化度とは、滴定法(JIS K6726)で測定した値であり、ビニルエステル系モノマーのエステル部分と、前記1,2−ジオール構造単位に対応するコモノマーのアシルオキシ部やカーボネート部、アセタール部の総量の水酸基への変化率(モル%)を意味している。
【0037】
また、本発明で使用されるEVOH樹脂は、構造単位(1)を含有するEVOH樹脂と、これと異なる他のEVOH樹脂のブレンド物であってもよく、他のEVOH樹脂としては、構造単位が異なるもの、エチレン含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレートが異なるものなどを挙げることができる。
【0038】
(フィルムの製造方法)
本発明では、熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなるものであり、かかるフィルムは上記構造単位(1)を含有するEVOH樹脂層のみで用いることも可能だが、さらに強度を上げたり他の機能を付与したりするため、通常は他の熱可塑性樹脂と積層した多層フィルムを用いる。
【0039】
かかる熱可塑性樹脂は、例えば具体的には、前述した熱可塑性樹脂と同様の樹脂が用いられるが、積層フィルムの物性(特に延伸性や透明性)等の実用性の点から、好ましくはポリエステル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド系樹脂である。特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリプロピレン系樹脂である。
【0040】
本発明に用いる熱可塑性樹脂、EVOH樹脂には、本発明の趣旨を阻害しない範囲において、可塑剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、無機フィラー、酸素吸収剤などの添加剤を配合したり、他樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂など)をブレンドすることも可能である。特にゲル発生防止剤として、ハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩を添加することもできる。
【0041】
特に、容器の外部からの酸素遮断性や内部の残存酸素除去性が向上させる場合には酸素吸収剤を配合することが好ましい。酸素吸収剤としては、無機系酸素吸収剤(例えば、還元鉄粉類やこれに吸水性物質や電解質等を加えたもの、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等)、有機系酸素吸収剤(例えば、アスコルビン酸およびその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノール−アルデヒド樹脂等の多価フェノール類)、含窒素化合物と遷移金属との配位結合体(例えば、ビス−サリチルアルデヒド−イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト−シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン−コバルト錯体等)、高分子系酸素吸収剤(例えば、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質との反応物、トリフェニルメチル化合物)、窒素含有樹脂と遷移金属との配位結合体(例えば、MXDナイロンとコバルトの組み合わせ)、三級水素含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例えば、ポリプロピレンとコバルトの組み合わせ)、炭素−炭素二重結合含有樹脂と遷移金属とのブレンド物(例えば、ポリブタジエンとコバルトの組み合わせ)、光酸化崩壊性樹脂(例えば、ポリケトン)、アントラキノン重合体(例えば、ポリビニルアントラキノン)、等や、さらにこれらにベンゾフェノン等の光開始剤や酸化防止剤などの過酸化物捕捉剤を添加したものなどを挙げることができる。
【0042】
上記構造単位(1)を含有するEVOH樹脂を他の熱可塑性樹脂と積層するときの積層方法は公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物のフィルム、シート等に他の基材を溶融押出ラミネートする方法、逆に他の基材に該樹脂を溶融押出ラミネートする方法、該樹脂と他の基材とを共押出する方法、該樹脂(層)と他の基材(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、他の基材上に該樹脂の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等が挙げられる。
これらの中でも、コストや環境の観点から考慮して共押出する方法が好ましい。
【0043】
多層フィルムの層構成は、上記EVOH樹脂層をa(a1、a2、・・・)、熱可塑性樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、a/b、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等任意の組み合わせが可能である。また、該積層体を製造する過程で発生する端部や不良品当等を再溶融成形して得られる、該EVOH樹脂と熱可塑性樹脂の混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。
【0044】
なお、上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂層を設けることができ、かかる接着性樹脂としては、公知ものを使用すればよい。かかる接着性樹脂はbの樹脂の種類によって異なるため、適宜選択すればよいが、代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を挙げることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等であり、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物が好ましい。またこれらの接着性樹脂には、EVOH組成物や他のEVOH、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレンゴム等のゴム・エラストマー成分、さらにはb層の樹脂等をブレンドすることも可能である。特に、接着性樹脂の母体のポリオレフィン系樹脂と異なるポリオレフィン系樹脂をブレンドすることにより、接着性が向上することがあり有用である。
また、中空ボトルとの接触面に接着層を設け、フィルムと中空ボトルを接着してもよい。
【0045】
得られた多層フィルムの熱可塑性樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、熱可塑性樹脂層は通常5〜5000μm、好ましくは20〜1000μm、接着性樹脂層は1〜500μm、好ましくは5〜100μm程度の範囲から選択される。
また、EVOH樹脂層の厚みは要求されるガスバリア性などによって異なるが、通常は1〜500μmであり、好ましくは2.5〜200μm、特に好ましくは5〜100μmであり、かかる厚みが薄すぎると十分なガスバリア性が得られない傾向があり、逆に厚すぎるとフィルムの柔軟性が不足する傾向にある。
また、EVOH樹脂層と熱可塑性樹脂層の厚み構成は、多層フィルム中の同じ樹脂層を全て足し合わせた状態では熱可塑性樹脂層のほうが厚く、熱可塑性樹脂層/EVOH樹脂層の厚み比としては通常1〜100であり、好ましくは1〜20である。
また、EVOH樹脂層と接着性樹脂層の厚み構成は、EVOH樹脂層/接着性樹脂層の厚み比としては通常0.1〜100であり、好ましくは0.5〜20である。
【0046】
(容器の製造方法)
本発明の容器は、代表的な延伸ブロー成形法で成形すればよい。
例えば具体的には、まず上記熱可塑性樹脂を用い、胴部と口部を有する有底の成形物であるプリフォームを製造する。プリフォームを成形する方法としては、一般に押出成形、射出成形が適用されるが、生産効率の面から射出成形が好適な方法として挙げられる。
【0047】
次いで、かかるプリフォームを延伸ブロー成形するが、予めかかるプリフォームの表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂層を少なくとも1層含有するフィルムを設置する。
このとき、未延伸フィルムの形状は、プリフォームを被覆できる形状であればよい。例えば具体的には、平面状、筒状、袋状、チューブ状等がある。
【0048】
プリフォームにフィルムを被覆する方法としては、特に限定はないが、平面状のフィルムをプリフォームの胴部周囲に沿って筒状に巻き付けて被覆する方法、平面状フィルムをプリフォーム底部の上から凹状に被せてから胴部方向に巻きつける方法、プリフォーム胴部外径より大きい内径を有する筒状、袋状、チューブ状のフィルムをプリフォーム胴部に通して装着する方法などが挙げられる。
【0049】
また、容器本体のガスバリア性を十分発現するためにはプリフォーム底部についても完全にフィルムで被覆して、口部を除く容器全体を隙間なくフィルムで被覆した状態にすることが好ましい。そのような状態にするために、例えば筒状に装着したフィルムの底部分を、ヒートシールなどでフィルムを閉じて容器全体を完全被覆する方法が挙げられる。
フィルムを完全被覆した場合には、プリフォーム/フィルム間に溜まった空気が原因で延伸ブロー時にフィルムが破裂することがあるので、破裂を防ぐために底部に脱気口(例えば直径1〜3mm)を1箇所以上設けることが好ましい。
【0050】
このように、フィルムで被覆されたプリフォームを直接そのまま、あるいは再加熱してブロー金型内で一定温度に保ちながら機械的に延伸し、同時あるいは逐次に加圧空気を吹き込んで、円周方向に膨らませることにより、フィルムとプリフォームが同時に延伸され、本発明の延伸フィルム被覆容器が得られる。
【0051】
一般に、射出成形されたプリフォームをすぐに温かい状態のまま再加熱工程に送りブロー成形するホットパリソン法、射出成形されたプリフォームを室温状態で一定時間保管してから再加熱工程に送りブロー成形するコールドパリソン法があり、本願発明では目的に応じて両者共に採用されうる。
一般的にはコールドパリソン法の方が生産性に優れ、フィルム被覆プロセスが実施しやすい点で好ましい。
【0052】
プリフォームを再加熱するには、赤外線ヒーターやブロックヒーターなどの発熱体を用いて行うことができる。加熱されたプリフォームの温度は通常70〜140℃、さらには80〜130℃、特には85〜110℃が好ましく、かかる温度が低すぎると、延伸の均一性が不充分となり得られる多層容器の形状や厚みが不均一となることがあり、逆に高すぎると、プリフォームに用いた熱可塑性樹脂層の結晶化が促進され、得られる延伸フィルム被覆容器が白化することがあり好ましくない。
【0053】
次いで、再加熱されたプリフォームは二軸延伸されて目的とするブロー成形容器が得られるのである。一般的には、縦方向に通常1〜7倍程度、プラグやロッド等により機械的に延伸されてから、圧空力により横方向に通常1〜7倍程度延伸されて、目的とするブロー成形容器が得られるのである。かかる縦方向の延伸と横方向の延伸は、同時に行うこともできるし逐次に行うこともできる。また、縦方向の延伸時に圧空力を併用することも可能である。また、耐熱性が要求される容器を作製する場合には、二軸延伸時に発生した内部応力による熱収縮が問題となるため、一般に熱収縮を抑制する目的で二軸延伸工程の後にブロー金型内で熱固定処理(ヒートセット)が施される。
【0054】
この際、容器を被覆している延伸フィルムの延伸倍率は面積比として通常1.1〜50倍、好ましくは1.5〜30倍、特に好ましくは2〜15倍である。かかる延伸倍率が低すぎると、容器/フィルム間の密着性が不足する、あるいは延伸配向によるガスバリア改善作用が十分に発現しない傾向があり、かかる延伸倍率が高すぎると、延伸ブロー時に被覆フィルムの破断やEVOH層が層切れを発生して十分なガスバリア性が得られない恐れがある。
【0055】
延伸された多層フィルムの熱可塑性樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、熱可塑性樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性などにより一概に言えないが、熱可塑性樹脂層は通常1〜200μm、好ましくは2〜100μm、接着性樹脂層は0.1〜30μm、好ましくは0.2〜15μmである。
また、EVOH樹脂層の厚みは、通常は0.1〜30μmであり、好ましくは0.5〜20μm、特に好ましくは1〜10μmであり、かかる厚みが薄すぎると十分なガスバリア性が得られない傾向があり、逆に厚すぎるとフィルムの柔軟性が不足する傾向にある
また、EVOH樹脂層と熱可塑性樹脂層の厚み構成は、多層フィルム中の同じ樹脂層を全て足し合わせた状態では熱可塑性樹脂層のほうが厚く、熱可塑性樹脂層/EVOH樹脂層の厚み比としては通常1〜100であり、好ましくは1〜20である。
また、EVOH樹脂層と接着性樹脂層の厚み構成は、EVOH樹脂層/接着性樹脂層の厚み比としては通常0.1〜100であり、好ましくは0.5〜20である。
【0056】
また、延伸後の中空ボトルの厚みは、通常10〜3000μm、好ましくは100〜1000μmである。
中空ボトルの容積は通常50mL〜3Lであり、好ましくは100mL〜2Lである。
【0057】
本発明の容器において中空ボトルとフィルムは密着した状態であり、フィルムはボトルから剥離する事が可能であるが、必要に応じて、フィルムの接触面に接着層を設ける等して接着したり、延伸条件を調整してボトルとフィルムを融着したりしてもよい。
【0058】
なお、本発明は上記した実施例、あるいは例に限定されるものではなく、容器はプリフォーム(予備成形体)を使った延伸ブロー成形するものであればよい。たとえば具体的には、カップ状容器等の他の成形品にも一般的に適用することができる。また、容器本体とフィルム層の組み合わせは、プリフォームの成形時におけるフィルムのインモールド成形性、延伸ブロー成形時におけるフィルムの延伸性等を考えて、あるいは予め試験して、用途に合わせて様々な組み合わせ態様で使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の容器は、医薬品用容器、試薬・農薬用容器、飲料用容器、食品用容器、トイレタリー用容器、化粧品用容器などに有用であるが、延伸後のヘイズおよびガスバリア性を従来EVOHと同等で維持して、なおかつEVOH層が均一に延伸されて延伸ムラ、スジの発生が抑制されることにより、鮮明性に優れた容器が得られるため、医薬品用容器、飲料用容器、食品用容器、化粧品用容器など容器の鮮明性が重要とされる分野に特に有用である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0061】
実施例1
(1)フィルムの作製
実施例1
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂として変性EVOH樹脂[エチレン含有量38モル%、ケン化度99.6モル%、構造単位(1a)含有量1.5モル%、MFR4.0g/10分(210℃、2160g)]、熱可塑性樹脂として1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂(イーストマンケミカル社製『Embrace21214』)、接着性樹脂としてポリオレフィン系接着性樹脂(三井化学社製『アドマーSF731』)を用い、3種5層フィードブロックダイを備えた3種5層多層キャストフィルム成形装置に供給して、以下の条件で熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/変性EVOH層/接着性樹脂層(同左)/熱可塑性樹脂層(同左)の層構成(厚み80/20/40/20/80μm)の多層フィルムを共押出によって得た。
【0062】
押出温度:
熱可塑性樹脂 220℃(Φ40mm単軸押出機)
接着性樹脂 220℃(Φ32mm単軸押出機)
変性EVOH樹脂 220℃(Φ40mm単軸押出機)
ダイ温度:220℃
冷却ロール温度:45℃
【0063】
(2)プリフォームの作製
熱可塑性樹脂として、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂(ベルポリエステルプロダクツ社製『Bellpet IFG8L』)を用い、以下の条件で口部内径21.8mm、胴部内径17.8mm、胴部外径25mm、全長93mm(うち、口部長さ22mm、胴部長さ71mm)、胴部厚み3.6mmのプリフォームを射出成形した。
【0064】
装置:シングルノズル多層射出成形機(日精樹脂工業社製「FSD80S12ASE」)
第一射出機:
ストローク距離 50mm
バレル温度 250℃
ノズル温度 240℃
ヘッド温度 240℃
マニホールド温度 240℃
プリフォーム金型温度 25℃
射出時間 13秒
冷却時間 18秒
【0065】
(3)延伸ブロー
(2)で得られたプリフォームの外表面を、(1)で作製したフィルムで覆った。
かかるフィルム被覆プリフォームを、以下の条件で延伸し、角型、縦60mm、横60mm、全長210mm(うち、口部長さ22mm、胴部長さ188mm)の延伸フィルム被覆容器を作成した。
【0066】
装置:リニア方式ブロー成形機(フロンティア社製「EFB1000」)
プリフォーム実温度 88℃
金型冷却温度 18℃
1次圧(ブロー空気圧力) 0.6MPa
1次ブロー時間 0.25秒
2次圧(保持圧力) 3.8MPa
2次ブロー時間 1.0秒
排気時間 1.0秒
【0067】
得られた容器の延伸倍率は6.8倍(面積比)であり、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂胴部の厚みは285μmであった。
容器を被覆している延伸フィルムの延伸倍率は6.8倍(面積比)であり、胴部の延伸フィルム厚みは熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/変性EVOH層/接着性樹脂層(同左)/熱可塑性樹脂層(同左)=10/2.5/5/2.5/10μmであった。
【0068】
得られた延伸フィルム被覆容器を以下の条件で評価した。結果を表1に示す。
<鮮明性>
下記の条件で角型ボトル胴部を切り出し、オーバーヘッドプロジェクターを用いてホワイトボードにボトル胴部の影を投影、投影された像に写った幅1mm以上のスジの本数を目視にて判定した。
測定箇所:角型ボトル胴部[高さ方向5cm(底面から高さ9〜14cmの位置)、幅方向4.5cm]
投影サイズ:面積倍率16倍[高さ方向20cm、幅方向18cm]
測定条件:プロジェクター−ホワイトボード距離 17.5cm
<(参考)酸素透過量測定>
下記の条件で得られたボトルの酸素透過量を測定した。
装置:OXTRAN 10/50
測定条件:温度 23℃
湿度 内側=100%RH
外側=50%RH
<(参考)ヘイズ評価(JIS−K7105準拠)>
下記の条件で角型ボトル胴部を切り出し、ヘイズメーターにて下記の条件でヘイズを測定した。
装置:ヘイズメーターNDH−2000[日本電飾製]
測定箇所:角型ボトル胴部[高さ方向5cm(底面から高さ9〜14cmの位置)、幅方向4.5cm]
【0069】
比較例1
上記一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するEVOH樹脂に代えて、未変性EVOH樹脂[エチレン含有量44モル%、ケン化度99.6モル%、MFR3.4g/10分(210℃、2160g)]を用いた以外は実施例1と同様にして延伸フィルム被覆容器を作成し、同様の評価を行なった。
得られた容器の延伸倍率は6.8倍(面積比)であり、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂胴部の厚みは285μmであった。
容器を被覆している延伸フィルムの延伸倍率は6.8倍(面積比)であり、胴部の延伸フィルム厚みは熱可塑性樹脂層/接着性樹脂層/未変性EVOH層/接着性樹脂層(同左)/熱可塑性樹脂層(同左)=10/2.5/5/2.5/10μmであった。
【0070】
結果を表1に示す。
[表1]

通常のEVOH樹脂を用いて得られた比較例1の延伸フィルム被覆ボトルと、側鎖に1,2−ジオール結合を有する変性EVOH樹脂を用いた本願発明の延伸フィルム被覆ボトルを比較した場合、ボトルの鮮明性を表わすスジの数においては、比較例1では8本も発生しているのに対して、本願発明は0本と全く発生しなかったという顕著な効果が得られた。
【0071】
ここで、鮮明性におけるスジとは、樹脂が波うっている様子を意味し、上記のようにオーバーヘッドプロジェクターで拡大することによって、より鮮明に比較することができる。ヘイズ、酸素透過量は同程度の数値を示すにもかかわらず(参考値参照)、上記スジの数において上記のような差が表れることを意味する。
また、本願発明におけるヘイズ値および酸素透過量は比較例1と同等に良好な値を示した。
【0072】
一般に、EVOH樹脂はエチレン含有量が高いほど延伸性が良好となる傾向があるため、エチレン含有量が異なるEVOH樹脂を比較した場合、エチレン含有量が高いほうが、鮮明性が良好となる(スジ数が少ない)結果が得られるはずであるところ、かかる一般的傾向に反して、上記実施例では、エチレン含有量が44モル%と高い比較例1よりも、エチレン含有量が38モル%と少ない本願発明の方が、鮮明性が良好な結果となった。
従って、エチレン含有量が同じ場合においても、本願発明のほうが、より鮮明性が良好となることは自明であり、本願発明の優位性は明らかである。
【0073】
ゆえに、本願発明によって得られる延伸フィルム被覆容器は、ガスバリア性、ヘイズが従来品と同等の機能を有し、かつスジの発生が抑制され、鮮明性に優れることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる中空ボトルの外層表面に、下記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが被覆密着してなる容器。
【化1】

[一般式(1)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示し、Xは単結合または結合鎖を示し、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子または有機基を示す。]
【請求項2】
前記中空ボトルが、熱可塑性樹脂を延伸ブロー成形することにより得られたものであることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
上記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが、延伸フィルムであることを特徴とする請求項1または2記載の容器。
【請求項4】
中空ボトルの熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩素系樹脂から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の容器。
【請求項5】
上記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムが、他の熱可塑性樹脂との積層フィルムであることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の容器。
【請求項6】
容器が、熱可塑性樹脂を延伸ブロー成形する際に、プリフォームの外側に、上記の一般式(1)で表される1,2−ジオール構造単位を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を少なくとも1層有するフィルムを設け、同時にブロー延伸することにより得られたものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の容器。

【公開番号】特開2009−241979(P2009−241979A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93398(P2008−93398)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】