説明

密封容器入り中間水分食品の水分調整方法

【課題】密封して夏期常温保存等の高温での長期保存や加熱加圧殺菌したときに生じる容器内の結露由来の水分や、中間水分食品中の水分による中間水分食品表面のべたつき、それに伴う食感劣化を改善し、食品原料の種類や大きさに拘わらず、容器から出してそのままつまみ食べしても手指が汚れたりべたつかず、連食性、携帯性に優れると共に、食品原料の素材の持ち味を生かすことができる密封容器入り中間水分食品の水分調整方法を提供する。
【解決手段】水分活性0.7〜0.99、水分含量20〜60重量%の中間水分食品を、下記容器(A)に収容密封することを特徴とする密封容器入り中間水分食品の水分調整方法により達成する。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間水分食品を容器に密封後、高温保存や加熱加圧殺菌したときに生じる容器内の結露、中間水分食品表面のべたつきや食感を改善し、中間水分食品を容器から出してそのままつまみ食べしても手指が汚れたりべたつかず、連食性、携帯性に優れ、更には優れた食感を保持する密封容器入り中間水分食品の水分調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密封容器から取り出してそのままつまみ食べする中間水分食品としては、例えば、原料である天津栗の皮付き生栗を、水飴と共に石焼き釜で加熱し、冷却して鬼皮、渋皮を剥いて、急速冷凍し、その後蒸煮して放冷したものを耐熱性包装袋に入れて内部に窒素ガスを充填して密封し、加熱殺菌した袋入り皮むき天津甘栗が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このようにして得られる袋入り皮むき天津甘栗は、栗表面に残留する水分によって、つまみ食べすると、徐々に手がべたついてくるという欠点がある。また、高温での長期保存で生じる結露や、加熱加圧殺菌において栗内部から蒸散した水分が、殺菌後の冷却時に栗内部に吸収しきれず、結露が生じ、水分が包装袋内に貯留し、つまみ食べする際に、袋内に手を入れるとその水分で手がべたついたり、袋を傾けたときにその水分がこぼれるという欠点があった。
【0003】
そこで、剥き栗を加熱加圧殺菌する際に、剥き栗表面に、誘導蛋白質もしくは繊維状蛋白質や、水分や、水溶性多糖類を施与することで問題を解決することが知られている(例えば、特許文献2〜4参照。)。
しかしながら、これらの方法は、調理栗には適するものの、中間水分食品の種類によっては効果がない場合がある。また、これらの方法では、水分を用いるので、剥皮した栗表面を焼成するタイプの焼栗の場合、焼きたての歯入りの良いホックリとした食感が失われて蒸した栗のような食感になる傾向があり、食感の点で改善の余地があった。
【0004】
また、栗以外の中間水分食品のべたつき防止方法としては、例えば、最長粒径が15.5mm以下の青大豆を用い、好適には塩化ナトリウムを用いて調理青大豆のべたつきを防止する方法が知られている(例えば、特許文献5参照。)。
しかしながら、この方法は、特定の大きさの青大豆には適するものの、商品設計上、塩味を付与できない中間水分食品には適さないという問題点を有するものである。
【0005】
また、糖度20〜30°かつ水分35〜45重量%に調整した密封殺菌された密封容器入り調理粒小豆とすることが知られている(例えば、特許文献6参照。)。
しかしながら、この方法は、糖度と水分を特定範囲に設定する必要があり、商品設計上、糖分を付与できない中間水分食品には適さないという問題点を有するものである。
【0006】
更には、果物などの高水分食品を、予め乾燥してから、特定の水分活性と水分含量に調整する方法が知られている(例えば、特許文献7参照。)。
しかしながら、この方法は、100℃以下の低温加熱殺菌以外の加熱殺菌を施した場合や高温保存した場合には、容器中に結露が生じ、その結露由来の水分で食品がべたついたり、表面がふやけて所望の食感が得られないという問題点があった。また、乾燥食品を密封容器に充填する際に、不活性ガス置換を行ったとしても、残留する少量の酸素によって食品の品質劣化のおそれがあり、品質劣化防止の点で改良の余地があった。
【0007】
以上のように、従来の中間水分食品の水分調整方法は、用いる食品原料や加熱殺菌方法
が限定されたり、糖分、塩分、蛋白質が必要であるという制約があり、汎用性の点で改良の余地があった。
【0008】
また、外層部に酸素バリア層、内層部に酸素吸収層を有する包装容器としては、酸素吸収剤・潮解性物質共存含有層と、該共存含有層に対して成形された包材の外側に外部からの酸素の浸入を阻止する酸素バリヤー層が形成されている乾燥食品用包材が知られている(例えば、特許文献8参照。)。
上記特許文献には、乾燥食品の酸化防止効果について記載されているものの、密封容器入り中間水分食品あるいはその加熱加圧殺菌物の表面のべたつき防止などの水分調整については一片の記載も示唆もない。
【0009】
更に、少なくとも1層の酸素バリヤ層とクッション層をドライラミネーションして形成した外面層の片面に、オレフイン系樹脂に酸素吸収剤を配合した酸素吸収層、ヒートシール性層を共押出しまたはサンドイッチラミネーションして形成した内面層を配設した積層フィルムで形成したレトルト用パウチが知られている(例えば、特許文献9参照。)。
上記容器は、従来、保存性(レトルト粥等の高水分食品の食味低下防止、風味劣化防止など)の目的で使用されているが、中間水分食品の水分調整方法に用いられることは何ら開示も示唆もなされていない。
【0010】
【特許文献1】実登3051612号公報
【特許文献2】特開2000−125800号公報
【特許文献3】特開2001−204381号公報
【特許文献4】特開2003−203号公報
【特許文献5】特開2004−159516号公報
【特許文献6】特開2002−306103号公報
【特許文献7】特開2004−313109号公報
【特許文献8】特許第3783115号公報
【特許文献9】特開2003−118778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、密封して夏期常温保存等の高温での長期保存や加熱加圧殺菌したときに生じる容器内の結露由来の水分や、中間水分食品中の水分による中間水分食品表面のべたつき、それに伴う食感劣化を改善し、食品原料の種類や大きさに拘わらず、容器から出してそのままつまみ食べしても手指が汚れたりべたつかず、連食性、携帯性に優れると共に、食品原料の素材の持ち味を生かすことができる密封容器入り中間水分食品の水分調整方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水分活性0.7〜0.99、水分含量20〜60重量%の中間水分食品を、下記容器(A)に収容密封することを特徴とする密封容器入り中間水分食品の水分調整方法により上記目的を達成する。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【0013】
好ましくは、上記水分調整方法において、更に収容密封後、加熱加圧殺菌する。
【0014】
すなわち、本発明者らは、保存条件や加熱加圧殺菌等によって結露が生じたり、食品が保持する余剰の水分で食品表面がふやける等の問題が深刻化する水分活性0.7〜0.9
9、水分含量20〜60重量%の中間水分食品において、食品原料を問わず、汎用的に、べたつき防止と所期の食感や風味を保持できる水分調整方法について検討を行った。
その結果、食品の包装容器に着目し、種々検討を続けたところ、酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器を用いると、中間水分食品が保持する水分もしくは包装容器内に貯留している水分が減少して中間水分食品表面がべたつかず、特に加熱加圧殺菌をしたときに生じる結露由来の水分も減少するため、これら水分に因る中間水分食品表面のふやけたような食感をも防止することができることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の密封容器入り中間水分食品の水分調整方法によれば、容器の酸素バリア層と酸素吸収層により、容器内で中間水分食品の酸素吸収量が低減すると共に、容器内の酸素を吸収する際に、食品が従来保持している水分や、高温長期保存、加圧加熱殺菌により食品から蒸散して結露した水分を吸収するため、長期保存中食品表面のべたつきを抑制でき、手でつまんで喫食しても、手指が汚れたりべたつくことがなく、連食性に優れる。
また、水分によって中間水分食品表面がふやけることがないので、例えば、中間水分食品として剥き焼栗を用いた場合には、従来の調理栗のように蒸し栗様の風味とならず、焼栗本来の香ばしさを有する、歯入りの良いホックリとした食感が得られるというように、製造直後の本来のおいしさを生かした中間水分食品が得られる。
更には、酸素吸収層により、水分が吸収されるため、容器内に水分が貯留することがなく、携帯性に優れるものである。
また、本発明の密封容器入り中間水分食品の水分調整方法は、食品原料の種類や形状を問わず、糖質、塩分、蛋白質などによる水分調整をする必要がないので、食品の素材を生かした風味設計をすることができる汎用性に優れた水分調整方法である。
更に、本発明によれば、長期保存による変色や風味劣化も防止することができ、優れた外観及び風味の食品を得ることができる。特に、変色が目立ちやすい、剥皮後に焼成するタイプの焼栗であっても、長期保存中の変色を確実に防止することができ、外観に優れた密封容器入り焼栗が得られる。
更に、本発明によれば、特殊な製造工程や製造装置が不要で、従来の製造設備を用いての量産化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を詳しく説明する。
まず、本発明における「水分調整」とは、中間水分食品表面に残る水分を減少する、あるいは30℃以上2週間程度の高温長期間保存や加熱加圧殺菌によって生じる結露を防止する、のいずれかを意味するものであって、ひいては、中間食品内の余剰水分や容器内に貯留した水分によって、中間水分食品表面がふやけて食感が劣化することを防止するものである。
【0017】
本発明の中間水分食品は、水分活性0.7〜0.99、水分含量20〜60重量%に調整された食品である。
上記水分活性及び水分含量の調整方法は、特に限定するものではなく、適宜の工程で調整すればよい。例えば、上記水分活性、水分含量を上回っている場合には、焼成工程において調整するか、別途乾燥工程を設ける等すればよい。逆に、下回っている場合には、水分施与等を行えばよい。特に、水分活性の調整をする際には、上記乾燥工程の他、糖濃度や塩分濃度を高めて自由水含量を減少させる等を行えばよい。
上記水分活性測定方法は、(株)芝浦電子製作所製「水分活性計WA−360」で、25℃にて測定した値である。また、水分含量は、(株)ケット科学研究所製「赤外線水分計FD−240」で、110℃Auto30sec.の条件で測定した値である。
【0018】
また、本発明の中間水分食品は、必要に応じて、適宜調理、切断、剥皮、皮遊離等されていてもよく、具体的には、皮付き生栗を焼成した後剥皮した剥き甘栗や、皮付き生栗を剥皮した後焼成した焼栗や、最長粒径15.5mm以下の生青大豆を選別した後調味料を浸透させた調理青大豆や、生小豆を水に浸漬したまま煮熟することにより膨張させた後糖類等の調味料を浸透させた調理粒小豆や、生のいも類を適宜切断して焼成した後乾燥した焼き芋などが挙げられる。この中でも、水分によってダメージを受けやすい、表面を焼成した焼栗や焼き芋などは、本発明の効果を顕著に得られる点で好適に用いられる。
【0019】
上記食品の原料としては、例えば、栗やナッツなどの種実類、豆類、野菜類(とうもろこし、いも類等)、果実類等が挙げられる。
【0020】
例えば、中間水分食品の原料として栗を使用する場合、その原料となる皮付き生栗は、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよいが、例えば、中国栗(天津栗、丹東栗等)、日本栗(丹沢栗・利平栗・筑波栗・銀寄栗・国見栗・岸見栗等)、ヨーロッパ栗、アメリカ栗、朝鮮栗、オーストラリア栗等が挙げられる。
この中でも特に、皮付き生栗を剥皮してから焼くタイプの焼栗を調製する場合には、日本栗系統の、比較的大粒で、渋皮が栗の実に密着して加熱しても遊離しにくい栗品種である日本栗、丹東栗等を用いることが、焼いた風味と歯入りの良いホックリとした感じが生かされ、蒸し栗様風味とならない点で好適である。
【0021】
また、上記生栗は、鬼皮、渋皮を剥皮した後の栗果肉中の総フェノール量が1〜25mg%、あるいは糖度8〜23°に調整されていることが、変色防止の点で好適である。
このような条件は、例えば0〜10℃の範囲で4〜6ヶ月間、好適には通気性の良い包装体に収容して保管することにより得られる。通気性のよい包装体としては、例えば、綿、麻、不織布等が挙げられる。
【0022】
また、中間水分食品の原料としてナッツを使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的には、アーモンド、カシューナッツ、ぎんなん、くるみ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、マカデミアナッツ、落花生、ペカンナッツ等が挙げられる。
【0023】
上記栗、ナッツ以外の種実類を中間水分食品の原料として使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的な種実としては、あさ、えごま、かぼちゃ、かや、けし、ココナッツ、ごま、しい、すいか、とち、はす、ひし、ひまわり、ブラジルナッツ、まつ等が挙げられる。
【0024】
次に、中間水分食品の原料として豆類を使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的には、大豆、小豆、ささげ、いんげんまめ、えんどう、そらまめ等が挙げられる。上記大豆としては、黄大豆、緑大豆、黒大豆、青大豆等が挙げられる。
【0025】
次に、中間水分食品の原料としてとうもろこしを使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的な品種としては、例えば、硬粒種、馬歯種、爆粒種、甘味種、軟粒種、糯種、有桴種等が挙げられ、この中でも甘味種と呼ばれる品種(スーパースイートコーン、ハニーバンタム、シルバーコーン、バイカラー種(ピーターコーン等)等)が適し、中でもスーパースイートコーンのような種皮が薄く離水しやすく、加工し難いものは、本発明に好適に用いられる。
【0026】
次に、中間水分食品の原料としていも類を使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的な品種としては、さつまいも、ジャガイモ、さとえいも科(えびいも、八つ頭、セレベス、ハスイモ等)、やまのいも科(長芋、むかご、大和いも、いちょういも等)、クワイ、キクイモ、キャッサバ、タロイモ等が挙げられる。
【0027】
上記とうもろこし、いも類以外の野菜類を中間水分食品の原料として使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的な野菜としては、トマト、人参、かぼちゃ、たけのこ、にんにく、なす、ごぼう等が挙げられる。
【0028】
次に、中間水分食品の原料として果実類を使用する場合、特に品種や大きさを限定するものではなく、一般に用いられているものから適宜選択して用いればよい。具体的な果実としては、プルーン、杏、梅、なつめ、すもも、枇杷、アセロラ、リンゴ、パイナップル、苺、デーツ、オレンジ、柿、バナナ、山査子、ぶどう、マンゴ、なつめ、いちじく、桑の実、パパイヤ、ピーチ、梨、ブルーベリー、クランベリー、チェリー、グアバ等が挙げられる。
【0029】
また、上記原料に調味する場合には、適宜調味料等を用いればよい。
上記調味料としては、例えば、食塩及び醤油等の塩味系調味料、乳製品、油脂、酸味料、糖類等が挙げられ、食品原料に合わせて単独もしくは複数組合せて用いればよい。
上記食塩としては、海水由来塩(赤穂塩、海洋深層水塩等)、岩塩、塩湖由来塩、天日焼塩、天火焼塩等が挙げられる。
上記醤油としては、溜まり醤油、濃口醤油、淡口醤油、再仕込み醤油、白醤油の他、濃縮物、合わせ醤油等が挙げられる。
上記糖類としては、ブドウ糖等の単糖類、砂糖等の少糖類、トレハロース等の非還元性糖類、ソルビトール等の糖アルコール、還元水あめ、オリゴ糖等が挙げられる。
【0030】
本発明に係る中間水分食品を収容するための容器(A)は、酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器であるが、この容器について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態では、具体的に、中間水分食品として焼栗を収容した容器を挙げて説明する。
図1は、本発明に係る容器の一例を示す斜視図である。また、図2は、その正面縦中央端面図とその部分拡大図である。
【0031】
容器1は、焼栗10(図1にのみ図示)を収容するためのスタンディングパウチである。図2に示すように、この容器1の上方はヒートシール部2であり、この部分2を開口させて、収容部3に充填された焼栗10を取出すようになっている。
上記容器1は、4層構造となっており、外側から順に、12μmのポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層(符号4)、15μmのナイロン層(符号5)、7μmのアルミ箔層(符号6)、85μmの酸素吸収剤含有ポリプロピレン層(符号7)が接着剤(図示せず)を介して接合されて多層構造を形成している。なお、上記4層構造のうち、アルミ箔層6が酸素バリア層であり、酸素吸収剤含有ポリプロピレン層7が酸素吸収層となっている。
上述の通り、各層の厚みはそれぞれ異なるものであるが、図2においては、便宜上、厚みを均一に示している。
【0032】
このような多層構造とすることにより、容器1の外からの酸素を遮断すると共に、容器1内に残存する酸素を吸収するため、容器1の収容部3において、収容物である焼栗10の酸素吸収量を低減させることができ、焼栗10の品質劣化を防止し得るのである。特に
、容器1内の残存酸素を酸素吸収層である酸素吸収剤含有プロピレン層7が吸収する際に、収容部3中の焼栗の表面に残留する水分、もしくは高温で長期保存した場合や加圧加熱殺菌によって生じた結露由来の水分をも吸収するため、焼栗10表面がべたつかず、また、焼栗10表面がふやけて食感が軟らかくなることを防止するのである。
すなわち、本発明に係る容器は、酸素バリア層が酸素吸収層よりも容器外側に形成されるように設計することが、外からの酸素の遮断と収容部内の残存酸素の吸収を行い、水分の調整を行う点で重要である。
そして、上記のように水分の調整ができるため、水分が長期間に亘り容器内に貯留することがなく、また、酸素吸収層である酸素吸収剤プロピレン層7に吸収される前の容器内に水分が貯留している状態であっても、上記のような多層構造とすることによって、水分が容器外にこぼれ出ることがないため、携帯性に優れるものである。
【0033】
なお、上記ポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層4は、熱可塑性であれば、その原料は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びこれらの混合物等であってもよい。
【0034】
上記ナイロン層5は、落下の衝撃を吸収したり、柔軟性を付与したり、金属箔の腐食を防止するものであって、後述するアルミ箔層6と隣接して設けられることにより、上記作用を好適に発揮するように設計されている。
上記ナイロン層5は、落下の衝撃を吸収したり、柔軟性を付与したり、金属箔の腐食を防止する作用を有する素材であれば、例えばポリエステル等の延伸性を有する素材であってもよい。
【0035】
上記酸素バリア層であるアルミ箔層6は、外層を通過してくる酸素を遮断し、容器内に侵入することを防止するものである。
本発明に係る酸素バリア層としては、アルミ箔層に限定されず、例えば、エチレン含有量が20ないし60モル%、特に25ないし50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物であってもよい。
【0036】
上記酸素吸収層である酸素吸収剤含有ポリプロピレン層7は、容器内の酸素を主に吸収するものであるが、上記アルミ箔層6を通過してきた酸素も吸収する。
酸素吸収剤としては、従来この種の用途に使用されている酸素吸収剤は全て使用可能であるが、一般的には還元性でしかも実質上水に不溶なものが好ましく、例えば還元性鉄、還元性亜鉛、還元性錫粉等の還元性を有する金属粉や、酸化第一鉄、四三酸化鉄等の金属低位酸化物や、炭化鉄、ケイ素鉄、鉄カルボニル、水酸化鉄等の還元性金属化合物等を単数もしくは複数組合わせたものが挙げられ、これ等は必要に応じてアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、第三リン酸塩、第二リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物等と組み合わせて使用することができる。
【0037】
更に、本発明に係る容器は、上記実施形態のスタンディングパウチに限定されるものではなく、密封し得れば例えば袋、箱、缶等の容器であればよい。また、容器の形状も特に限定するものではなく、カップ型、パウチ型等適宜設定すればよい。特に、より携帯性に優れた製品とするには、スタンディングパウチや、更にはパウチの開封部にジッパーなどの再封止可能な手段が設けられている容器とすることが好適である。
また、各層の厚みも上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
更に、上記実施形態のスタンディングパウチは4層構造であったが、酸素バリア層が酸素吸収層よりも容器外側に形成されるように設計されていれば、積層数は特に限定するものではない。また、上記実施形態において、ナイロン層5とアルミ箔層6とを入れ替えたり等、本発明の範囲内で、積層順を設定すればよい。
また、上記実施形態では、収容物として焼栗を挙げて説明したが、決して焼栗に限定されるものではなく、上述の中間水分食品であればよい。
【0038】
本発明に係る容器としては、上記実施形態の他に、特開2003-118778号公報記載のレトルト用パウチや、特開2000−7047号公報記載の包装材料を用いた容器や、特開平11−314305号公報記載の食品用包装材を用いた容器等が挙げられる。
また、具体的な商品名としては、例えば、東洋製罐(株)製の「オキシガードパウチ」(「オキシガード」は登録商標)等が挙げられる。
【0039】
次に、本発明の密封容器入り中間水分食品の一例として密封容器入り焼栗は、例えば次のようにして製造される。
まず、好ましくは上記の総フェノール量、あるいは糖度に調整した皮付き生栗を、水洗し、浮き栗(腐った栗や虫喰い栗)や異物を除いた後、剥皮する。
剥皮方法は、手で包丁などによって剥皮する方法や、公知の剥皮装置等が挙げられる。
剥皮は、鬼皮と渋皮を取り除いて栗果肉のみを取り出すようにすれば良いが、渋皮を完全に栗果肉から切除するように栗果肉表層部を削るように渋皮を剥くことが、焼栗の変色防止の点で好ましい。
このようにして得られる剥き栗は、黄色味を帯びた白色の色調を呈している。
【0040】
次いで、上記剥き栗を焼成する。
焼成方法は、特に限定するものではなく、従来用いられている焼成方法を適宜用いればよいが、特に、栗をオーブンのような乾熱加熱、もしくは熱風ローストのような流体加熱する方法が、表面に高温短時間で程よい焦げ色をつけ、また香ばしい風味を付与し、栗果肉内部まで加熱できる点で好適である。
上記流体加熱とは、流体(好ましくは空気などの気体)が加熱された状態で流動しているか、もしくは流体と熱源とが共存した状態で、流体が流動し、栗を熱交換しながら加熱するものである。中でも、流体が加熱された状態で流動する熱風通気処理が好ましい。
具体的には、ジェットゾーンシステム(連続式)、ジェットロースト(バッチ式)(共に、荒川製作所製)などの熱風乾燥やコーヒー豆の焙煎などに用いられる、熱風が滞留する装置を用いると好適である。
また、焼成条件は、例えば、オーブン加熱の場合、170〜230℃10〜30分程度である。このようにして焼成した栗果肉は、全体に淡い黄色を呈し、表面に狐色の焦げ目がつき、生栗で糖度12〜13°程度であったものが糖度16°程度となっており、香ばしく、そのままでも食することができる。
なお、上記の例では、栗果肉内部にまで火を通すことを前提とした条件を記したが、後述する加熱殺菌として加熱加圧殺菌を施す場合は、焼成温度を低くするか、焼成時間を短くして、加熱加圧殺菌時に栗果肉内部にまで熱を通すようにしてもよい。
【0041】
本発明の中間水分食品とするには、上記焼成工程で、水分活性、水分含量を調整することが好適である。
【0042】
次に、焼成した剥き栗を容器に収容し、密封する。
容器は、上述の酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器を用いる。
なお、好適には、不活性ガスによる酸素置換してから密封することが、変色防止の点で好適である。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0043】
次いで、上記容器内に収容密封された焼成剥き栗を、加熱殺菌することにより、密封容器入り焼栗が得られる。
殺菌方法は、長期保存と品質保持の観点から、加熱加圧殺菌(レトルト殺菌)を施すこ
とが望ましい。
レトルト殺菌条件としては、例えば、115〜125℃、1.7〜2.5Kg/cmで20〜60分とすることが、栗の形状を維持しながら殺菌できるという点で望ましい。
本発明の水分調整方法においては、加熱殺菌工程を必須としないが、該加熱殺菌の中でも特に加熱加圧殺菌をした場合には、殺菌後の冷却時に容器内に結露が多く生じ、該結露がべたつきの原因となるという問題点を有するもので、このような問題点も本発明で解決し得る点で、上記工程が本発明でも好適に採用される。
【0044】
また、皮付き生栗を焼いてから剥皮するタイプの密封容器入り剥き甘栗は、例えば次のようにして得られる。
まず、好ましくは上記の総フェノール量、あるいは糖度に調整した皮付き生栗を水洗し、浮き栗(腐った栗や虫喰い栗)や異物を除いた後、焼成し、剥皮して剥き栗を得る。
焼成方法は、上述の剥き栗を焼成する方法と同様である。焼成条件は、装置仕様、処理量によって適宜設定すればよく、熱風の温度は、栗の表面温度が100〜110℃程度になるように、110〜140℃とすることが望ましい。例えば、ジェットゾーンシステム(連続式)の場合、120〜125℃の熱風で栗の表面が108〜109℃となるようにするのが、栗の皮を栗果肉から良好に遊離させ、かつ、栗の形状を保持し得る点で好適である。また、ジェットゾーンSR−BIII(バッチ式)(荒川製作所製)の場合には、130〜140℃の熱風で、栗の表面105〜110℃程度にすることが好適である。また、風速は、120〜130℃、10〜20分間加熱する場合、40〜60m/sが好ましい。
このようにして得られた栗は、この後、人手もしくは機械によって簡単に渋皮ごと剥離することができる。
【0045】
次いで、剥き栗を、上述した酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器に収容し、密封した後、加熱殺菌することにより、密封容器入り剥き甘栗が得られる。
殺菌方法は、上述の焼栗を加熱殺菌する方法と同様である。
【0046】
上記のようにして得られた焼栗及び剥き甘栗は、水分活性0.7〜0.99、水分含量20〜60重量%に設定されている。
そして、6ヶ月以上もの長期保存後であっても、そのままつまんで食しても、手が汚れたりべたつかず、連食性に優れている。また、栗表面のべたつきや栗同士の付着がなく、風味外観が良好である。特に、焼栗においては、焼成直後の淡い黄色の好ましい焼き色を保持し、水分による栗表面のふやけがなく、香ばしい風味と焼いた栗特有の歯入りの良いホックリとした食感を有するものである。
【0047】
本発明の密封容器入り焼栗や密封容器入り剥き甘栗は、上述のようにそのまま食してもよいが、あるいは、栗ご飯、栗きんとんなど、各種栗調理食品の原料としても用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づき例示する。
【0049】
<実施例1>
中国丹東省産の皮付きの生栗を、水洗して、浮き栗や夾雑物、異物(小石や砂、金属、毛髪、糸くず、虫など)を除去した後、包丁で鬼皮、渋皮を完全に除去した。このときの栗果肉の糖度は12°、色調は黄色味を帯びた白色であった。
次いで、オーブンで170℃20分焼成し、表面に焦げ目をつけると共に、栗果肉内部まで熱を通した。このときの糖度は16°、色調は淡い黄色であった。
その後、この焼栗を、図1及び2で示した、外側から順に、12μmのポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層(符号4)、15μmのナイロン層(符号5)、7μmのアルミ箔層(符号6)、85μmの酸素吸収剤含有ポリプロピレン層(符号7)が接着剤(図示せず)を介して接合されたスタンディングパウチ(東洋製罐(株)製「オキシガードパウチ」(「オキシガード」は登録商標))に、6個充填し、窒素ガスの封入によって残存酸素率2.0%未満とした後、ヒートシールによって密封後、121℃で30分間、熱水レトルトにて加熱加圧殺菌処理し、密封容器入り焼栗(水分活性0.95、水分含量55±5重量%)を得た。
【0050】
<比較例1>
焼栗を収容する容器として、ポリプロピレン及びアルミ箔の混合層から構成されるレトルトパウチを用いる他は、実施例1と同様にして密封容器入り焼栗(水分活性0.95、水分含量55±5重量%)を得た。
【0051】
<実施例2>
中国河北省産の天津栗を、水洗して、浮き栗や夾雑物、異物(小石や砂、金属、毛髪、糸くず、虫など)を除去した後、流動層式ドライヤーオーブン(荒川製作所、ジェットゾーンシステム)を用いて、120℃の熱風(風速52m/秒)にて15分間加熱し(栗表面温度109℃)、渋皮、鬼皮を遊離させ、更に亀裂を生じさせ、自然冷却後、手で渋皮、鬼皮を同時に剥離し、剥き甘栗を得た。
次に、この剥き栗を、実施例1と同様に、東洋製罐(株)製「オキシガードパウチ」(「オキシガード」は登録商標)に6個充填し、窒素ガスの封入によって残存酸素率2.0%未満とした後、ヒートシールによって密封して、121℃で30分間、熱水レトルトにて加熱加圧殺菌処理し、密封容器入り剥き甘栗(水分活性0.95、水分50±5重量%)を得た。
【0052】
上記のようにして得られた密封容器入り焼栗及び剥き甘栗を、製造直後を基準とし、常温(25℃)3ヶ月保存後と、常温(25℃)6ヶ月保存後のそれぞれの色調変化、風味、食感及び手でつまんだ際のべたつきを、専門パネラー10名にて官能比較した。その結果を、表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
上記の結果から、実施例品は、製造直後の風味が6ヶ月保存後もほぼ保持されていた。食感に関しては、容器内に結露が生じたり、栗表面に水分が残留しておらず、経時に伴い、歯入りの良いホックリとした表面の食感が顕著に感じられるように良好な食感に変化していた。更に、実施例品は、変色も殆ど生じず、手でつまんで6粒食しても指がべたつかず、連食性に優れるものであった。
これに対し、比較例品は、6ヶ月もの長期間保存すると、色調が製造直後の淡い黄色からくすんだ黄褐色に明らかに変化した。また、経時に伴い、蒸し栗のような食感、風味となり、歯入りの良いホックリとした食感が感じられず、好ましくなかった。更に、容器内に水分が残り、栗表面にも水分があり、6粒食べると手指がべたついていた。
【0055】
次に、上記のようにして得られた実施例1及び比較例1品に対し、夏期常温保存を想定した40℃1週間の保存条件を課した後、風味及び外観評価を行った結果、実施例1品の方は、風味、外観共に変化が殆どなかったのに対し、比較例1品は、蒸し栗のような風味となり、色調も黄褐色へと変化した。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る容器の一例を示す斜視図
【図2】図1に示す容器の正面縦中央端面図とその部分拡大図
【符号の説明】
【0057】
1 容器
2 ヒートシール部
3 収容部
4 ポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層
5 ナイロン層
6 アルミ箔層
7 酸素吸収剤含有ポリプロピレン層
10 焼栗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分活性0.7〜0.99、水分含量20〜60重量%の中間水分食品を、下記容器(A)に収容密封することを特徴とする密封容器入り中間水分食品の水分調整方法。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【請求項2】
更に収容密封後、加熱加圧殺菌する請求項1記載の密封容器入り中間水分食品の水分調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−73021(P2008−73021A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258973(P2006−258973)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(393029974)クラシエフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】