説明

封入物質の制御放出のための生分解性組成物

【課題】患者への投与後、生理活性物質の長期にわたる放出を可能にする医薬組成物の提供。
【解決手段】生理活性物質を、生分解性ポリマーおよび脂質を含むマトリックスに封入することにより得られる医薬組成物。この組成物からの生理活性物質の放出速度はポリマーと脂質の比率を変化させることにより制御される。この医薬組成物は水性懸濁液の状態で、または固形剤型で貯蔵し得る。生理活性物質としては、低分子、ペプチド、タンパク質、核酸およびワクチンが挙げられる。生分解性ポリマーとしては、ホモポリマー、またはランダムもしくはブロックコポリマーが挙げられる。脂質としては、リン脂質、コレステロールおよびグリセリドが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入された生理活性物質の制御放出をもたらすように設計された、脂質/ポリマー含有生分解性医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
送達システムは、改良された生物学的利用能と、長期にわたって得られる生理活性物質についての高い治療指数という利点をもたらす。薬剤送達システムの2つの主な種類は、生分解性のポリマーまたは脂質のいずれかから形成されるものである(Langer, R., Nature 392: 5-10, 1998)。ポリマー系薬剤送達システムは、注入、植込み、経皮パッチ、および吸入用のエアロゾルのための、ミクロスフェアとして開発されている (Dombら, Handbook of Biodegradable Polymers, Harwood Academic Publishers, Amsterdam, 1997; Putneyら, Nature Biotechnology 16: 153-157, 1998; Edwardsら, Science 276: 1868-1871, 1997)。脂質系薬剤送達システムは、単層、多重層(Gregoriadis, Liposome Technology, I, II, III巻, CRC Press, Boca Raton, Fl., 1993)および多重小胞リポソーム(Kimに対する米国特許第5,422,120号、Kimらに対する米国特許第5,723,147号、 Sankaramらに対する米国特許第5,767,627号、米国特許出願第08/305,158号、米国特許出願第08/723,583号、第08/925,532号、第08/792,566号、および第08/925,531号)として開発されている。
【0003】
生分解性ポリマー使用の限界の1つは、生分解性ポリマーから調製されたミクロスフェア等の医薬組成物は加水分解を受けやすいため無水条件下での保存が必要であることである。その結果、注入用のミクロスフェアの一般的な薬剤包装は、生分解性ポリマーと生理活性物質との無水製剤を固形剤型として封入した1つのバイアルと、再構成用水性媒質を封入した別のバイアルから成る(例えば、Lupron Depot, Physicians Desk Reference, pp. 2739-2746, Medical Economics Company, Inc., Montvale, NJ, 1997)。2つのバイアルの内容物は注入直前に混合する。
【0004】
ミクロスフェアは、単回乳化製法(Ticeらに対する米国特許第4,389,330号、Kitajimaらに対する米国特許第3,691,090号)、二回乳化製法(Edwardsら, Scence 276: 1868-1871, 1997)、逆相マイクロカプセル化製法(Mathiowitzら, Nature 386: 410-413, 1997)、または霧化-凍結製法(PutneyおよびBurke, Nature Biotechnology 16: 153-157, 1998)により調製される。単回乳化製法では、生分解性ポリマー含有揮発性有機溶媒相、ポリビニルアルコール等の乳化剤を必須含有する水溶液、および生理活性物質をホモジナイズして乳濁液を作製する。前記溶媒を蒸発させ、得られた固化ミクロスフェアを凍結乾燥させる。
【0005】
二回乳化製法では、生理活性物質および生分解性ポリマー含有揮発性有機溶媒相を含み得る水溶液をホモジナイズして乳濁液を作製する。該乳濁液をポリビニルアルコール等の乳化剤を含有する別の水溶液と混合する。前記溶媒を蒸発させ凍結乾燥させることによりミクロスフェアを作製する。
【0006】
逆相マイクロカプセル化製法では、溶媒(例えば、ジクロロメタン)中に希釈したポリマー溶液に薬剤を添加し、それを別の液体(例えば、石油エーテル)の入った攪拌されていない容器中へすばやく注ぎ込むことにより、ナノスフェアおよびミクロスフェアが自然発生的に形成される。霧化-凍結製法では、ミクロン粒子化した固体の生理活性物質を生分解性ポリマー含有溶媒相中に懸濁し、次いで超音波処理または空気内霧化を用いてそれを霧化する。これにより生成される小滴を、続いて液体窒素中で凍結させる。ポリマーと薬剤の両方が不溶性の別の溶媒を加えて、ミクロスフェアから前記溶媒を除去する。
【0007】
単回乳化製法または二回乳化製法により調製されたミクロスフェアはエアロゾル化することができる(Edwardsら, Science 276: 1868-1871, 1997)。溶媒相にジパルミトイルホスファチジルコリンを添加することにより、粒子サイズ、多孔度、およびエアロゾル化の効率を増大させ、質量密度を減少させる。しかしながら、大孔性の粒子の製剤化には依然としてポリビニルアルコール等の乳化剤が必要である。ステアリン酸スクロース、ステアリン酸マグネシウム、トリステアリン酸アルミニウム、ソルビタン脂肪エステル、およびポリオキシエチレン脂肪エステルを溶媒除去法において小滴安定化剤として使用して、アクリルポリマーからミクロスフェアを生成する(Yukselら, J. Microencapsulation 14: 725-733, 1997)。第2の水相におけるポリビニルアルコールに加えて、Poloxamer 188、またはPluronic F68を第1の乳濁液における非イオン性界面活性剤として使用し、二回乳化製法を用いてポリ(ラクチド)からミクロスフェアを生成する(Nihantら, Pharm. Res. 11: 1479-1484, 1994)。親水性の添加剤である、2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、メチルβ-シクロデキストリン、Pluronic F-127、L-酒石酸ジメチルエステル、および疎水性の添加剤であるビーズワックス(偶数炭素原子を有する長鎖酸でエステル化された、偶数炭素鎖を有する長鎖一価アルコールのエステルからなる)を使用して、ポリ(ラクチド-グリコリド)二重層フィルムを作製した(Songら, J. Controlled Rel. 45: 177-192, 1997)。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ポリマー成分と脂質成分の両方を含み、しかもその第2の水相に界面活性剤を含まない生分解性ミクロスフェアを製造することができるという発見に基づくものである。従来、第2の水相に導入されていた典型的な界面活性剤はポリビニルアルコールである。本発明の生分解性ミクロスフェアの製造はミクロスフェアの壁から揮発性有機溶媒を実質的または完全に除去することを含む。ミクロスフェアには生理活性物質を配合することができ、生理活性物質はin vitroおよびin vivoで放出される。放出速度は脂質/ポリマーの比を調整することで簡単に制御することができる。従来使用されているミクロスフェア組成物はポリマーのアイデンティティ(identity)の変更が必要であった。
【0009】
1つの態様においては、本発明は、有機溶媒に可溶性の少なくとも1種の生分解性ポリマーと、少なくとも1種の脂質とを含む生分解性ミクロスフェアを有する脂質/ポリマー含有医薬組成物を提供する。この組成物には、生分解性ミクロスフェアから放出可能な生理活性物質も含まれる。この組成物は、好ましくは揮発性有機溶媒を実質的に含まず、最も好ましくはポリビニルアルコールを実質的に含まない。この組成物は水性懸濁液の形態、または固形剤型、例えば、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、経皮パッチ、縫合糸、植込錠(implant)もしくは坐剤の形態であり得る。
【0010】
生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリペプチド、または遺伝子工学的に操作されたポリマーのようなホモポリマーであり得る。また、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-ラクチド)、ポリ(p-ジオキサノン-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-ラクチド-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-カプロラクトン)、ポリ(p-ジオキサノン-アルキレンカーボネート)、ポリ(p-ジオキサノン-アルキレンオキシド)、ポリ(p-ジオキサノン-カーボネート-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-カーボネート)、ポリ(カプロラクトン-ラクチド)、ポリ(カプロラクトン-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテル-エステル)、ポリ(エステル-アミド)、ポリ(エステル-ウレタン)、ポリリン酸エステル、ポリ無水物、ポリ(エステル-無水物)、ポリホスファゼン、ポリペプチド、および遺伝子工学的に操作されたコポリマーのようなコポリマー(ランダムまたはブロックコポリマー)であり得る。医薬組成物の脂質は、両性イオン性脂質、酸性脂質、カチオン性脂質、ステロール、または多くのリン脂質を含む多くの種類のトリグリセリドであり得る。
【0011】
生理活性物質は親水性であり得るが、その場合、組成物は好ましくはトリグリセリドをさらに含む。また、生理活性物質は疎水性であり得るが、その場合、組成物はトリグリセリドを実質的に含むことができない。また生理活性物質は両親媒性であり得る。生理活性物質は、一般的に、抗アンギナ薬(antianginas)、抗不整脈薬、抗喘息薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、血圧降下薬、駆虫剤、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、強心配糖体、エリスロポエチンなどのサイトカイン、除草剤、ホルモン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、神経伝達物質、核酸、タンパク質、放射線造影剤、放射性核種、鎮静薬、鎮痛薬、ステロイド、トランキライザー、ワクチン、昇圧薬、麻酔薬、ペプチドおよびそれらの組み合わせとして分類され得る。
【0012】
別の態様においては、本発明は、本発明の組成物中の脂質とポリマーの比率を変化させることにより生理活性物質の放出速度を変化させる方法を提供する。
【0013】
さらに別の態様においては、本発明は、a) 第1の水相と、揮発性有機相とを含む油中水型乳濁液を形成すること、b) 該乳濁液を第2の水相に分散して溶媒球状体を形成すること、ならびにc) 揮発性有機溶媒を除去して脂質/ポリマー含有医薬組成物を形成することを含む、本発明の生分解性脂質/ポリマー組成物の製造方法を提供する。薬学的に活性な物質が、医薬組成物を製造するために、油中水型乳濁液の製造工程に含まれ得る。有機溶媒は実質的に完全に除去されるのが好ましい。
【0014】
本発明のさらなる態様においては、上記方法により製造された医薬組成物が提供される。この方法が親水性の薬学的活性物質の使用を含む場合、該方法は油中水型乳濁液の製造工程にトリグリセリドをさらに含む。
【0015】
さらなる態様においては、本発明は、本発明の医薬組成物を用いて患者を治療する方法を提供する。
【0016】
本発明の1つの目的は、生理活性物質が内部に封入されている薬剤送達システムとしての新規医薬組成物を提供することであり、この組成物は長期にわたり該物質の放出を可能にする。別の目的は、組成物からの該物質の放出速度を制御する手段を提供することである。さらに別の目的は、組成物を固形剤型または半固形剤型のいずれかで保存する手段を提供することである。
【0017】
従来の生分解性ポリマーからのミクロスフェアの調製では、二回乳化プロセスの第2の水溶液でポリビニルアルコールを使用する必要がある。従来のミクロスフェアにおいては、ポリビニルアルコールのような乳化剤が二回乳化プロセスの第2の水相に含まれない場合、生理活性物質を封入することができない。本発明の組成物は、第2の水溶液でポリビニルアルコールを使用しない。また本発明の医薬組成物のための他のいずれの水溶液においてもポリビニルアルコールは使用されない。ポリビニルアルコールに加えて、本発明の組成物は、ステアリン酸スクロース、ステアリン酸マグネシウム、トリステアリン酸アルミニウム、ソルビタン脂肪エステル、ポリオキシエチレン脂肪エーテル、Poloxamer 188、Pluronic F68、2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、メチルβ-シクロデキストリン、Pluronic F-127、またはL-酒石酸ジメチルエステルも含まない。
【0018】
揮発性有機溶媒相は、脂質と生分解性ポリマーの混合物を含む。本発明の脂質/ポリマー含有医薬組成物では従来のポリマーミクロスフェアよりも生理活性物質がより高い収量(yield)且つより高い配合量(loading)で得られる。
【0019】
本発明の医薬組成物には様々な生理活性物質を封入することができる。有用な物質としては、低分子、ペプチド、タンパク質および核酸が挙げられる。種々のラクチド:グリコリド比率、および種々の分子量を有する様々な生分解性ポリマーを本発明の医薬組成物の調製に用いることができる。
【0020】
脂質組成物は、生理活性物質の収量および配合量を最適化するために変化させることができる。したがって、放出される生理活性物質の配合量、収量または放出速度に影響を及ぼすためにポリマーのアイデンティティを変化させる必要はない。疎水性生理活性物質では、医薬組成物がトリグリセリドを含まない場合に優れた収量および配合量が得られる。親水性生理活性物質では、医薬組成物がトリグリセリドを含む場合に優れた収量および配合量が得られる。
【0021】
本発明の医薬組成物は生理活性物質の生理的液体への持続的な放出をもたらす。封入された生理活性物質は、2つの異なるアッセイ条件下で持続的にヒトの血漿中に放出される。医薬組成物中の脂質とポリマーの比率を変化させることにより、生理活性物質の放出速度を制御することができる。放出速度を制御することで、生理活性物質の濃度を治療適量(therapeutic window)内、すなわち、有効であるために十分高いが有毒であるほど高くない濃度範囲内に一定に保つことができる。
【0022】
また本発明の医薬組成物は、in vivoでの持続的な生理活性物質の放出をもたらす。封入されていない形態、脂質のみの組成物における封入、ポリマーのみの組成物における封入、および本発明の脂質/ポリマー組成物における封入において、投与から様々な時間経過した後に測定した生理活性物質の血清濃度から、本発明の組成物の場合、その生理活性物質の血清濃度はより遅い時間にピークを迎え、他の3つの組成物の場合に観察されたものよりも濃度が高いということが分かる。また、それらの内因性血清成分(例えば、ホルモン、酵素、タンパク質、炭水化物など)の放出を阻害する封入生理活性物質は、阻害された成分の血清濃度の減少を、封入されていない生理活性物質について観察されたものよりも長く持続させる。
【0023】
従来の生分解性ポリマーから調製されたミクロスフェア組成物は、水性媒体中での保存には適していない。というのは、該ポリマーは水性条件下に曝されると急速に分解するからである。しかしながら、本発明の脂質/ポリマー含有組成物中のポリマーは、熱および酸によるストレスを加えた促進安定性試験において、および通常の保存条件下の両方で加水分解から防御される。
【0024】
本明細書において、「溶媒球状体」という用語は、有機溶媒の微細な球状液滴を意味し、その中には第1の水溶液の多数の小さい液滴が含まれる。溶媒球状体は第2の水溶液に懸濁され、完全に浸漬される。生分解性ミクロスフェアから放出可能、という用語は、ミクロスフェアの十分な生分解の際に生理活性物質(ミクロスフェア内に封入されているもの)がその生理学的効果を発揮することができる条件を意味する。この定義には、暗に、物質が放出されない場合、その効果が生理学的効果が観察できない程度まで減少するという認識がある。生理活性物質はミクロスフェアの内部のみならず、ミクロスフェアの壁(マトリックス)からも放出され得る。生理活性物質がマトリックスに結合または付着される場合、生分解性ミクロスフェアからの放出には、ミクロスフェアとマトリックスの物理的な分離が必要ない。本発明の組成物に関する、治療上有効な、という用語は、ミクロスフェア中の生理活性物質が障害の特定レベルの治療を得るのに十分な様式で放出されることを意味する。
【0025】
特に定義しない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は全て当業者により一般的に理解されるものと同じ意味である。本明細書に記載した方法および材料と同様または等価な方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。本明細書に挙げた刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は参照により組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が支配するものである。さらに、材料、方法および実施例は単に説明するためのものであり、限定を意図するものではない。 下記の詳細な説明および特許請求の範囲から、本発明のさらに別の特徴および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、塩酸中シタラビンから調製した各種脂質/ポリマー含有医薬組成物からの封入されたシタラビンのパーセンテージを、静的条件下、in vitroで時間に対してプロットしたものである。
【図2】図2は、水中シタラビンから調製した各種脂質/ポリマー含有医薬組成物からの封入されたシタラビンのパーセンテージを、静的条件下、in vitroで時間に対してプロットしたものである。
【図3】図3は、塩酸中シタラビンから調製した各種脂質/ポリマー含有医薬組成物からの封入されたシタラビンのパーセンテージを、動的条件下、in vitroで時間に対してプロットしたものである。
【図4】図4は、水中シタラビンから調製した各種脂質/ポリマー含有医薬組成物からの封入されたシタラビンのパーセンテージを、動的条件下、in vitroで時間に対してプロットしたものである。
【図5】図5は、非封入アミカシン、脂質のみの医薬組成物中に封入されたアミカシン、脂質:ポリマー比が1:1である脂質/ポリマー含有医薬組成物、またはポリマーのみの医薬組成物を経口投与した後、様々な時点でのアミカシンの血清濃度をプロットしたものである。
【図6】図6は、 (A)クロロホルム中にポリマーのみの組成物の溶液、(B)塩化ナトリウム中に懸濁したポリマーのみの組成物、(C)塩酸中に懸濁したポリマーのみの組成物、ならびに(D)塩酸中に懸濁し、熱ストレスを与えたポリマーのみの組成物、に対する一連のサイズ排除クロマトグラムである。
【図7】図7は、(A)塩化ナトリウム中に保存したもの、(B)塩酸中に保存したもの、(C)塩酸中に保存し熱ストレスを与えたもの、に対する、脂質:ポリマー重量比が1:1である脂質/ポリマー含有医薬組成物の懸濁液についての一連のサイズ排除クロマトグラムである。
【図8】図8は、(A) 新規調製された脂質:ポリマー重量比が1:1である脂質/ポリマー含有医薬組成物、および(B)同一のサンプルを冷蔵室で9ヶ月間保存したもの、の懸濁液についての一連のサイズ排除クロマトグラムである。
【図9】図9は、脂質:ポリマー重量比が1:1である脂質/ポリマー含有医薬組成物(△)、およびポリマーのみの医薬組成物(○)中の、PLGAの分子量の変化を時間に対してプロットしたものである。
【図10】図10は、各種組成物の脂質/ポリマーミクロスフェアに対する懸濁用媒体のオスモル濃度に対して平均粒子径の変化をプロットしたものである。
【図11】図11は、A)1.9:1の脂質/ポリマー調製物中のロイプロリド溶液、B)ロイプロリド単独、およびC)0.9%生理食塩水を皮下投与した後、さまざまな時間でのテストステロン血清濃度をプロットしたものである。
【図12】図12は、図11を拡大したプロットである。
【図13】図13は、A) 1:1の脂質/ポリマー調製物、B) 4:1の脂質/ポリマー調製物、C)エリスロポエチン単独、およびD) 1:1の脂質/ポリマーブランク、として500 IUのエリスロポエチンを腹腔内投与した後、さまざまな時間におけるヘマトクリットの増大をプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、in vitroおよびin vivoで持続した放出を提供する生理活性物質を負荷することができる脂質/ポリマー含有組成物を特徴とする。得られる医薬組成物は、一連の放出速度をもつように製剤化することができる。該医薬組成物は、様々な生理活性物質に対して優れた収率および負荷特性を有する。
【0028】
生分解性ポリマー
本発明の脂質/ポリマー含有組成物は、少なくとも1種の生分解性ポリマーを含有する。生分解性ポリマーは、該ポリマーが揮発性有機溶媒に可溶である限り、ホモポリマー、またはランダムもしくはブロックコポリマー、またはそれらのブレンドもしくは物理的混合物であってよい。特定の物質の光学活性が[L]-または[D]-で記されなければ、該物質はアキラルまたはラセミ混合物であると推定する。メソ化合物(光学活性が内部で相殺されている化合物)も本発明に有用であると予測される。
【0029】
生分解性ポリマーは、分解されて低分子量になることができるものであり、生体から除去されても除去されなくてもよい。生分解産物は、個々のモノマーユニット、モノマーユニットの群、個々のモノマーユニットより小さい分子体、またはこのような産物の組合わせであってよい。このようなポリマーはまた、生体によって代謝されうる。生分解性ポリマーは生分解性モノマーユニットから成ることができる。生分解性化合物は、生細胞もしくは生物、またはこれらの系の部分、またはこのような細胞、生物もしくは系に共通して見出される水を含む試薬による生化学的作用を受け低分子量産物に分解されうる化合物である。生物はこのようなプロセスにおいて能動的または受動的役割を果たすことができる。
【0030】
本発明に有用な生分解性ポリマー鎖は、好ましくは500〜5,000,000の範囲の分子量をもつ。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、またはランダムもしくはブロックコポリマーであってよい。コポリマーは、第2のコポリマーの任意の数のサブユニットが散在している、第1のコポリマーの任意の数のサブユニットを含有するランダムコポリマーであってよい。コポリマーはまた、第2のコポリマーのブロックが散在している、第1のコポリマーの複数ブロックを含有するブロックコポリマーであってもよい。ブロックコポリマーはまた、第1と第2のコポリマーが顕著に散在的となることなく、第2のコポリマーのブロックに結合した第1のコポリマーのブロックを含むこともできる。
【0031】
本発明に有用な生分解性ホモポリマーは、次の群から選択されるモノマーユニットから成ることができる:乳酸、グリコール酸、ラクチド(分子間でエステル化された二乳酸)およびグリコリド(分子間でエステル化された二グリコール酸)を含むα-ヒドロキシカルボン酸、β-メチル-β-プロピオラクトンを含むβ-ヒドロキシカルボン酸、γ-ヒドロキシカルボン酸、δ-ヒドロキシカルボン酸、およびε-ヒドロキシカプロン酸を含むε-ヒドロキシカルボン酸、などのヒドロキシカルボン酸;β-ラクトン、γ-ラクトン、バレロラクトンを含むδ-ラクトン、ε-カプロラクトンのようなε-ラクトン、およびベンジルマロラクトンのようなベンジルエステル保護ラクトン、などのラクトン;β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタムおよびε-ラクタム、などのラクタム;1,4-ジチアン-2,5-ジオンのようなチオラクトン;ジオキサノン;トリメチレンカーボネート、アルキル置換トリメチレンカーボネートおよびスピロ-ビス-ジメチレンカーボネート(2,4,7,9-テトラオキサ-スピロ[5.5]ウンデカン-3,8-ジオン)などの無官能基環状カーボネート;無水物;置換N-カルボキシ無水物;プロピレンフマレート;オルトエステル;リン酸エステル;ホスファゼン;アルキルシアノアクリレート;アミノ酸;ポリヒドロキシブチレート;および上記モノマーの置換変形物。
【0032】
このようなモノマーを使用して、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリペプチド、または遺伝子工学的に操作されたポリマーのようなホモポリマー、および上記のモノマー例から作ることができる他のホモポリマーが得られる。これらのホモポリマーの組合わせも、本発明の医薬組成物のミクロスフェアを調製するために使うことができる。
【0033】
生分解性コポリマーは、ポリ(ラクチド-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-ラクチド)、ポリ(p-ジオキサノン-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-ラクチド-グリコキド)、ポリ(p-ジオキサノン-カプロラクトン)、ポリ(p-ジオキサノン-アルキレンカーボネート)、ポリ(p-ジオキサノン-アルキレンオキシド)、ポリ(p-ジオキサノン-カーボネート-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-カーボネート)、ポリ(カプロラクトン-ラクチド)、ポリ(カプロラクトン-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテル-エステル)、ポリ(エステル-アミド)、ポリ(エステル-ウレタン)、ポリリン酸エステル、ポリ無水物、ポリ(エステル-無水物)、ポリホスファゼン、ポリペプチドまたは遺伝子工学的に操作されたポリマーから選択することができる。これらのコポリマーの組合わせも、本発明の医薬組成物のミクロスフェアを調製するために使うことができる。
【0034】
好ましい生分解性ポリマーはポリラクチド、およびポリ(ラクチド-グリコリド)である。ラクチドを含有するいくつかの実施形態においては、ポリマーは、重量で約50%を超えるラクチドが光学活性でありかつ50%未満が光学不活性(すなわちラセミ[D,L]-ラクチドおよびメソ[D、L]-ラクチド)であるようにラクチドを含む組成物の重合により調製する。他の実施形態においては、ラクチドモノマーの光学活性は[L]として規定され、かつラクチドモノマーは約90%以上が光学活性[L]-ラクチドである。さらに他の実施形態においては、ラクチドモノマーは約95%以上が光学活性[L]-ラクチドである。
【0035】
脂質
脂質/ポリマー含有組成物は、少なくとも1種の脂質を含む。脂質は天然起源でも合成起源でもよく、リン脂質、スフィンゴ脂質、スフィンゴリン脂質、ステロールおよびグリセリドを含む。本発明の組成物に使われる脂質は、一般的に、親水性ヘッド基および疎水性テール基をもつことを意味する両親媒性であり、膜形成能力を有しうる。リン脂質およびスフィンゴ脂質は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、酸性または両性イオン性(その等電点で正味の電荷をもたない)であってよく、ここで脂質の2つの炭化水素鎖は典型的には長さが12〜22個の炭素原子であって様々な不飽和度を有する。好ましいアニオン性リン脂質は、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールおよびカルジオリピンを含む。好ましい両性イオン性リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびスフィンゴミエリンである。好ましいカチオン性脂質は、ジアシルジメチルアンモニウムプロパン、アシルトリメチルアンモニウムプロパン、およびステアリルアミンである。好ましいステロールは、コレステロール、エルゴステロール、ナノステロール、またはこれらのエステルである。グリセリドは、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリオレインを含むトリグリセリドであってよく、そして該グリセリドの脂肪酸炭化水素鎖が典型的には炭素原子12〜22個の長さでありかつ様々な不飽和度を有する限り、様々な不飽和度を有することができる。これらの脂質の組合せもまた、本発明の医薬組成物のミクロスフェアを調製するために使うことができる。
【0036】
生理活性物質
生理活性物質は、天然、合成または遺伝子工学的に操作した化学的または生物学的化合物であって、生物の望ましくない症状の診断、予防、または治療を行うために生理学的プロセスを調節するのに有用であることが当業界で公知である化合物を意味する。生理活性物質には、抗アンギナ薬、抗不整脈薬、抗ぜん息薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗血圧降下薬、駆虫剤、抗腫瘍薬、抗癌薬、抗ウイルス薬、強心配糖体、除草剤、ホルモン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、神経伝達物質、核酸、タンパク質、放射線造影剤、放射性核種、鎮静薬、鎮痛薬、ステロイド、トランキライザー、ワクチン、昇圧薬、麻酔薬、ペプチドなどのような薬物を含む。
【0037】
特に興味深いのは、アミカシンを含む半合成アミノグリコシド抗生物質;抗糖尿病薬;インスリンのようなペプチド;パクリタキセルを含む抗癌薬;シタラビン、5-フルオロウラシル、ロイプロリド、およびフロクスウリジンを含む抗腫瘍薬;モルヒネおよびヒドロモルホンを含むアルカロイドオピエート鎮痛薬;ブピバカインを含む局所麻酔薬、デキサメタゾンを含む合成抗炎症性副腎皮質ステロイド;メトトレキセートを含む代謝拮抗薬;ブレオマイシンを含む糖ペプチド抗生物質;ビンカロイコブラスチンおよびビンクリスチンならびにビンブラスチンを含むスタスモキネシス腫瘍崩壊薬;エリスロポエチンのようなホルモン、血漿タンパク質、サイトカイン、成長因子、様々な生物からのDNAおよびRNA、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドである。細胞内媒質、細胞、または組織との局部相互作用によって、示された生理活性物質に転化するプロドラッグも、本発明に用いることができる。塩を形成する能力のある特定の生理活性物質の、製薬上許容される任意の塩も本発明に有用であると想定しており、ハロゲン化塩、リン酸塩、酢酸塩および他の塩を含む。
【0038】
生理活性物質は、医薬組成物中の該物質の量が生物の望ましくない症状の診断、予防、または治療を可能にするために十分である限り、単独にまたは組合わせて使うことができる。一般的に、用量は、年齢、症状、性、および患者の望ましくない症状の程度によって異なることとなり、当業者はそれを決定できる。ヒトに使用する際の適当な用量範囲は、体表面積1平方メートル当り生理活性物質を0.1〜6,000mgの範囲で含むものである。
【0039】
本発明の医薬組成物は、注射によりまたは時間をかけて徐々に注入することにより非経口投与することができる。該組成物は、静脈内、腹腔内、筋内、皮下、腔内、または経皮で投与することができる。他の投与法も当業者には公知であろう。皮下投与のようないくつかの適用においては、必要な用量はきわめて小量であるが、腹腔内投与のような他の適用では、必要な容量は非常に大量である。前記の用量範囲外の用量を与えてもよいが、この範囲は実際的に全ての生理活性物質についての使用の幅を包含する。本発明の医薬組成物はまた、経腸投与することもできる。
【0040】
二回乳化プロセス
二回乳化プロセスは、本発明の医薬組成物の半固形剤型を製造する3ステップのプロセスを含んでなる。第1ステップでは、第1の水相および揮発性有機溶媒相から油中水型乳濁液を作り、この乳濁液は生理活性物質を第1の水相または揮発性有機溶媒相のいずれかに含有し、揮発性有機溶媒相は少なくとも1種の生分解性ポリマーもしくはコポリマーおよび少なくとも1種の脂質を含有する。もし生理活性物質が親水性であれば、第1の水相中に存在し、もし生理活性物質が疎水性であれば、揮発性有機溶媒相中に存在する。両親媒性である生理活性物質は、第1の水相または揮発性有機溶媒のいずれかまたは両相に存在することができる。
【0041】
油中水型乳濁液は、揮発性有機溶媒相により形成された連続マトリックス中に分散している分離され孤立した水滴の存在によって特徴づけられる。エーテル、炭化水素、ハロゲン化炭化水素を揮発性有機溶媒として使うことができる。好ましい有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、およびこれらの組合わせである。第1の水相は、浸透圧スペーサー(osmotic spacer)、酸、塩基、バッファー、栄養分、補充物または類似化合物のような賦形剤を含有することができる。油中水型乳濁液は、超音波エネルギー、ノゾル噴霧、静的ミキサー、インペラーミキサーまたは振動型ミキサーの使用によるような機械的攪拌によって作ることができる。これらの相を多孔質パイプに強制通過させて均一なサイズの乳濁液粒子を生成させることによってこのような乳濁液を作ることができる。これらの方法により、溶媒球状体(solvent spherule)が形成される。
【0042】
第2ステップでは、第1の油中水型乳濁液から形成された溶媒球状体を、第1ステップに記載したのと類似したやり方で、第2の水相中に導入して混合する。第2の水相は、水であってよいし、または電解質、バッファー塩、またはその他当業界で公知の半固形剤型の賦形剤を含有してよく、好ましくはグルコースおよびリシンを含有する。
【0043】
第3ステップでは、揮発性有機溶媒は、一般的には、例えば減圧下で、または気流を球状体上に流すかもしくは通過させることにより蒸発させることによって除去する。溶媒を蒸発するために満足して使うことができる代表的ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、空気またはこれらの混合物を含む。溶媒が実質的にまたは完全に除去されると、脂質/ポリマー含有組成物が形成され、第1の水溶液はポリマーおよび脂質成分から形成された生分解性ミクロスフェア中に封入され、該ミクロスフェアは第2の水溶液中に懸濁される。
【0044】
もし所望であれば、第2の水溶液は、洗浄、遠心分離、ろ過により他の水溶液と交換でき、または凍結乾燥により除去して固形剤型を製造しうる。例えば凍結乾燥により得られた医薬組成物の固形剤型をさらに加工して、錠剤、カプセル、カシェ剤、パッチ、坐剤、縫合糸、植込錠(implant)または当業者に公知の他の固形剤型を製造しうる。
【0045】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、少なくとも1種の生分解性ポリマーもしくはコポリマー、少なくとも1種の脂質および少なくとも1種の生理活性物質を含んでなる。生分解性ポリマーは、ランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーの形をとることができ、様々なモノマーユニットから成ることができる。例えば、もし生分解性コポリマーが乳酸(またはラクチド)およびグリコール酸(またはグリコリド)から成る場合、ラクチド対グリコリドの比は約99:1〜約2:3、好ましくは約10:1〜約1:1の範囲であることができる。生分解性ポリマー(ホモポリマーもしくはコポリマーのいずれの形でも)および脂質は、約20:1〜約1:5、好ましくは約19:1〜約1:3の脂質対ポリマー比であることができる。
【0046】
生分解性ポリマーもしくはコポリマーおよび脂質は、親水性生理活性物質を封入するための多数の非同心区画を提供する多区画構造(multicompartmental structure)を形成し;生分解性ポリマーおよび脂質が区画の境界を形成する。境界は、疎水性または両親媒性生理活性物質を含有することができる。医薬組成物は、固形剤型または半固形剤型で保存することができる。用語、半固形剤型は、医薬組成物の水性懸濁液を意味する。半固形剤型は、水性媒質を医薬組成物の固形剤型に添加して作ることができるし、または、前記のように、直接二回乳化技術により作ることができる。好ましい水性媒質は水、塩化ナトリウム水溶液、製薬用賦形剤、およびpH範囲2〜10のバッファー溶液である。好ましい製薬用賦形剤は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、グルクロン酸塩、マニトール、ポリソルベート、カルボキシメチルセルロース、ゼラチンおよび乳酸塩である。
【0047】
用語、固形剤型は、非晶質粉末、錠剤、カプセル、エーロゾル、カシェ剤、経皮パッチ、坐剤、または植込錠を意味する。非晶質粉末は、医薬組成物の半固形剤型を凍結乾燥して作製することができる。錠剤、カプセル、エーロゾル、カシェ剤、パッチ、坐剤、または植込錠は、当業者に公知の技術により作製することができる。
【0048】
医薬組成物は、任意の所望の経路、例えば筋内、関節内、硬膜外、鞘内、腹腔内、皮下、静脈内、リンパ内、経口、粘膜下、経皮、直腸、膣、鼻腔内、眼内により、および、気管支上皮、胃腸上皮、尿生殖器上皮、および身体の様々な粘膜を含む各種上皮下に植込むことにより、生体に投与することができる。
【0049】
医薬組成物の特性決定
半固形懸濁液剤型の医薬組成物を比較する目的で、以下のパラメータを定義した。懸濁液中の生理活性物質の量は、以下に記載した適当なアッセイにより決定した。生理活性物質の収率は、次式により定義した。
【0050】
収率(%)=(回収量(mg)/仕込量(mg))×100
上式において、回収量は医薬組成物の生分解性ミクロスフェア中にあると決定された生理活性物質の量であり、仕込量は医薬組成物の調製に使われた生理活性物質の総量である。
【0051】
懸濁液をヘマトクリット毛細管内で遠心分離してペレット画分および上清画分を作る。ヘマトクリット測定の標準技術を使って、ペレットおよび懸濁液の相対容積は、それぞれペレット底部からペレット頂部までの距離、およびペレット底部から上清の上面までの距離により与えられる。ペレットの相対容積と懸濁液の相対容積との比は、ペレット分率として定義され、次式により得られる。
【0052】
ペレット分率=ペレット容積/懸濁液容積
非封入率は、封入されず懸濁媒質中において生分解性ミクロスフェアの外側に残る医薬組成物中の生理活性物質の比率として定義され、次式により与えられる。
【0053】
非封入率=上清中の量(mg)/懸濁液中の量(mg)
封入率は、1から非封入率を差引いた値である。負荷(loading)は、懸濁液のペレット画分中の生理活性物質濃度として定義され、次式により与えられる。
【0054】
負荷(mg/mL)=(封入率/ペレット分率)×懸濁液中の濃度(mg/mL)
本発明をさらに以下の実施例に記載するが、これは請求の範囲に記載した本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本発明の生分解性脂質/ポリマー含有医薬組成物の調製および物性を説明する。
【0056】
実施例1:医薬組成物の調製
表1に示した医薬組成物を二回乳化プロセスにより調製した。水相は、アミカシン(Bristol-Myers Squibb, Syracuse, NY)を表1に示す濃度かつpH 8で含有した。さらに、比較組成物として、水相に表1に示すように4%ポリビニルアルコール(Sigma Chemical Co.)を含有させた。
【0057】
溶媒相は、ポリマーであるポリ(DL-ラクチド-グリコリド)(PLGA)のみを250mg/mLの濃度で含有するか、またはPLGA、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、コレステロールおよびトリオレインがそれぞれ22.4mg/mL、10.4mg/mL、2.1mg/mL、7.7mg/mL、および2.2mg/mLの濃度の混合物を含有した。PLGAは、Sigma Chemical社(St. Louis, MO)から入手し、ラクチド:グリコリド比が50:50で、かつ分子量が40,000〜75,000であった。この物質(ラクチド:グリコリド比=1:1)は、指示した場合(実施例4)を除いて、全実験で使用した。DOPC、DPPG、およびトリオレインはAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL)、から入手し、コレステロールはSpectrum Chemical Manufacturing Corp.(Gardena, CA)から入手した。この溶媒相はポリマーのみ、または1:1の重量比で脂質とポリマーを有する溶媒相に対応する。水相の容積、対、揮発性有機溶媒相の容積の比を表1に与える。油中水型乳濁液は、ホモミキサー(Tokushu Kika Kogyo Co. Ltd.、大阪、日本)により9,600rpmの速度で20分間混合して調製した。第2の水相は、比較組成物としての4重量%ポリビニルアルコール(PVA)、水、または5重量%グルコースと40mMリシンとの混合物であった。球状体は、4,000rpmで1分間混合して作製した。懸濁媒質は、洗浄および600xgでの遠心分離を2回行って、0.9重量%塩化ナトリウムと交換した。
【0058】
医薬組成物中および医薬組成物の上清中のアミカシン濃度は、毛細管電気泳動(3D CE model 1600, Hewlett-Packard, Irvine, CA)により、溶融シリカカラム(内径50Fm,長さ50cm, Hewlett-Packard, Irvine, CA)を使い、そして泳動バッファーとして0.1Mリン酸塩、pH2.5(ペプチド分離バッファー、Sigma Chemical Co.)を使って定量した。生理活性物質の収率および薬物負荷を表1にまとめた。
【0059】
平均粒径は、レーザー散乱粒径分布分析計(Model LA-910, Horiba Instruments, Irvine, CA)で、長さ荷重分布基準および相対屈折率1.18〜1.00iを使って決定した。平均粒径は、第2の水相に4重量%ポリビニルアルコール(比較組成物)を用いて調製したポリマー医薬組成物については43.6 Fm、そして脂質:ポリマー比が1:1である表1の本発明の脂質/ポリマー含有医薬組成物については9.0 Fmであった。
【0060】
【表1】

表1の結果は、生理活性物質を含有するポリマーのみのミクロスフェアの調製にはポリビニルアルコールのような乳化剤の添加が必要であることを示す。これらはまた、該乳化剤の第2の水相への添加が、ポリマーのみのミクロスフェアへの生理活性物質の封入のための絶対要件であることも示す。本発明の医薬組成物(表1の最後の行)はこのような乳化剤をどの水相にも使わない。その代わり、封入は、揮発性有機溶媒相への脂質の添加により達成される。従って、本発明の脂質/ポリマー含有医薬組成物は、先行技術の組成物とは全く異なっている。
【0061】
さらに、表1は、第1の水相中の医薬活性成分濃度が4分の1と低いにも関わらず、本発明の医薬組成物を用いて高負荷が達成されることを実証する。
【0062】
実施例2:生理活性物質を含有する医薬組成物の調製
二回乳化プロセスを用いて医薬組成物を調製した。油中水(water-in-oil)型乳濁液を、表2に規定した濃度の生理活性物質および賦形剤を含有する水相の5mL、ならびに、脂質とポリマーを1:1の比で含有しかつ実施例1に記載のとおり調製した揮発性有機溶媒相の5mLから調製した。生理活性物質は、シタラビン(Pfanstiehl, Waukegan, IL)、ウシ亜鉛インスリン(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、ニシン精子DNA(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)、またはデキサメタゾンリン酸(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)であった。油中水(water-in-oil)型乳濁液を作製する混合速度および時間は、9,600rpmおよび20分間とした。第2水相は5%グルコースおよび40mMリシンを含有する溶液の30mLであった。球状体は4,000rpmで1分間混合して作製した。懸濁媒質は、洗浄および600xg での遠心分離を2回行って、0.9%wt塩化ナトリウムと交換した。
【0063】
医薬組成物および医薬組成物上清中のシタラビンの濃度は、アイソクラチック(isocratic)逆相HPLC(Hewlett-Packard, Wilmington, DE)により、C18カラム(Vydac, Hepena, CA)、移動相として10mMリン酸カリウム、pH2.8(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)、流速1mL/minおよび検出波長280nmを使って定量した。
【0064】
医薬組成物および医薬組成物上清中のインスリンの濃度は、アイソクラチック逆相HPLCにより、C18カラム、移動相として容積で50%アセトニトリル(Burdick & Jackson)、50%水および0.1%トリフルオロ酢酸(Pierce, Rockford, IL)の溶液、流速1mL/minならびに検出波長280nmを使って定量した。
【0065】
医薬組成物および医薬組成物上清中のニシン精子DNAの濃度は、分光光度計(Model U-2000, Hitachi, Danbury, CT)により、酸性イソプロパノールに溶解した医薬組成物の260nmでの吸収を測定し、既知濃度のニシン精子DNA標準溶液のそれと比較して定量した。
【0066】
医薬組成物および医薬組成物上清中のデキサメタゾンの濃度は、アイソクラチック逆相HPLCにより、C18カラム(5Fm, 4.6 x 250 nm, Vydac)、移動相として容積でメタノール60%および50mMリン酸カリウム40%の混合液、pH2.8、流速0.5mL/minならびに検出波長254nmを使って定量した。
【0067】
生理活性物質の収率、薬物負荷および平均粒径を表2に総括した。
【0068】
【表2】

実施例3:様々な脂質:ポリマー比をもつ医薬組成物の調製
次の改変を施して実施例2に記載のように医薬組成物を調製した。水相は、30mg/mLシタラビンおよび136mM塩酸、または20mg/mLウシ亜鉛インスリン、5%デキストロースおよび50mM塩酸を含有した。1:0、19:1、4:1、3:2、1:1または1:3の脂質:ポリマー比をもつ一連の揮発性有機溶媒相を、ジオレイルホスファチジルコリン、コレステロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、およびトリオレインをそれぞれ 20.8mg/mL、15.4mg/mL、4.2mg/mLおよび4.4mg/mLの濃度で含有するクロロホルム溶液と濃度44.8mg/mLのポリマーのクロロホルム溶液とを様々な比率で混合して調製した。表3において、第1水溶液は30mg/mLシタラビンと136mM塩酸との混合物であった。表4において、第1水溶液は20mg/mLインスリン、50mM塩酸および5wt%デキストロースの混合物であった。シタラビンおよびインスリンの濃度は実施例2に記載のアッセイにより定量した。
【0069】
シタラビンを含有する医薬組成物に対する収率、平均粒径および薬物負荷を表3に示し、インスリンを含有する医薬組成物に対する特性を表4に示す。
【0070】
【表3】

【表4】

表3および表4の結果が実証するように、本発明の脂質/ポリマー含有組成物を使用することによって、生理活性物質の高収率が一般的に達成される。平均粒径は、典型的には5〜25μmであり、通常10〜20μmである。
【0071】
実施例4:様々な脂質:ポリマー比をもち、かつ様々な分子量および様々なラクチド:グリコリドのポリマーをもつ医薬組成物の調製
医薬組成物は二回乳化プロセスを用いて調製した。油中水(water-in-oil)型乳濁液は、実施例3に提示したように、136mM塩酸中に30mg/mLの濃度で生理活性物質シタラビンを含有する水相およびジオレイルホスファチジルコリン、コレステロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、トリオレイン、およびポリ(ラクチド-グリコリド)ポリマー(Alkermes, Inc., Blue Ash, OH)を含有する揮発性有機溶媒から調製した。様々なラクチド:グリコリド比のポリマーをもつ医薬組成物および様々な脂質:ポリマー比に対する、生理活性物質の収率、平均粒径および薬物負荷を、表5、6および7にそれぞれ総括した。
【0072】
【表5】

【表6】

【表7】

表5、6、および7の結果は、本発明の医薬組成物が、ラクチド:グリコリド比、生分解性ポリマーの分子量、または脂質:ポリマー比に関わらず、ある量の脂質が組成物に存在する限り、一般的に高収率および均一な生理活性物質の負荷を示すことを実証する。本発明の医薬組成物は、5〜25μmの間の、そして通常は10〜20μmの間の顕著に類似した平均粒径を有する。
【0073】
実施例:5 トリグリセリドを伴うまたは伴わない、疎水性生理活性物質含有医薬組成物
2つの医薬組成物、1つはトリグリセリドを伴うものおよび他は伴わないものを、次の改変を施して実施例2に一般的に記載したように調製した。疎水性生理活性物質はパクリタキセルを使った。トリグリセリドを伴う組成物については、クロロホルム溶液はポリ(ラクチド-グリコリド)、DOPC、DPPG、コレステロール、およびトリオレイン(トリグリセリド)を実施例2に与えた濃度でおよびパクリタキセル(ICN Biochemicals, Aurora, OH)を5mg/mLの濃度で含有した。トリグリセリドを伴わない組成に対しては、クロロホルム溶液は、ポリ(ラクチド-グリコリド)、DOPC、 DPPGおよびコレステロールを実施例2に与えた濃度でおよびパクリタキセルを5mg/mLの濃度で含有した。両組成物に対する脂質:ポリマー比は1:1 であった。両組成物について、10%wtスクロース(Pfanstiehl, Waukegan, IL)を含有する水溶液の5mLを使って油中水(water-in-oil)型乳濁液を調製した。
【0074】
医薬組成物中のパクリタキセル濃度は、逆相HPLCにより、C18カラム(5Fm, 4.6 x 250 nm, 90 A Vydac)、水(Mallinckrodt, Paris, KY):アセトニトリル勾配、流速1mL/minの条件で、273nmを検出波長として使って定量した。両組成物に対する収率、粒径および薬物負荷を表8に示す。
【0075】
【表8】

この実施例は、トリグリセリドを組成物から省くと、疎水性生理活性物質の顕著に高い負荷が得られることを示す。
【0076】
実施例6: トリグリセリドを伴うまたは伴わない、親水性生理活性物質含有医薬組成物
2つの医薬組成物、トリグリセリドを伴うものおよび伴わないものを、次の改変を施して実施例2に一般的に記載したように調製した。親水性生理活性物質はアミカシンを使った。トリグリセリドを伴う組成物については、クロロホルム溶液はポリ(ラクチド-グリコリド)、DOPC、DPPG、コレステロール、およびトリオレイン(トリグリセリド)を実施例2に与えた濃度で含有した。トリグリセリドを伴わない組成物については、クロロホルム溶液は、ポリ(ラクチド-グリコリド)、DOPC、DPPGおよびコレステロールを実施例2に与えた濃度で含有した。両組成物に対する脂質:ポリマー比は1:1であった。両組成物について、80mg/mLアミカシンを含有する水溶液の5mL、pH8を使って、油中水乳濁液を調製した。両方の組成物に対する収率、粒径および薬物負荷(drug loading)を表9に示す。
【0077】
【表9】

この実施例は、トリグリセリドを組成物から省くと、親水性生理活性物質の負荷が起こらないことを示す。対照的に、組成物中にトリグリセリドが存在すると親水性生理活性物質の顕著な負荷が起こる。
【0078】
実施例7: 封入生理活性物質の医薬組成物からのin vitro持続放出
静的および動的条件下のヒト血漿中で、in vitro放出研究を実施した。In vitro放出研究のための医薬組成物の2セットを、次の改変を施して実施例2のように調製した。1つのセットは、136mM塩酸中に30mg/mLシタラビンを含有する水相から調製した。他のセットは、水中に75mg/mLシタラビンを含有する水相から調製した。各セットに対して、3つの組成物を実施例3に記載のように4:1、3:2および1:1の脂質:ポリマー比で調製した。全ての6つの医薬組成物について、シタラビンの濃度を10mg/mLに調節した。医薬組成物(1mL)を、O型ヒト血漿(24mL)(NABI Biomedical, Scottsdale, AZ)および1% wt.アジ化ナトリウム(150 FL)(Sigma Chemical Co., St Louis, MO)と混合した。
【0079】
静的条件下のin vitro放出研究に対しては、1.5mLのアリコートを3重でバイアル中に置き、14日までの様々な期間、37℃でインキュベートした。動的条件下のin vitro放出研究に対しては、バイアルを、16rpmで連続回転する回転子(Hematology/Chemistry Mixer, Model 346, Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)上に置いた。該プラットフォームを14日までの様々な期間、37℃でインキュベーター中に置いた。
【0080】
各時点において、0.9%塩化ナトリウムの10mLをアリコートに加え、生じた懸濁液を10分間、600xgで遠心分離した。上清を捨て、ペレットをアセトニトリル:イソプロピルアルコール:1N塩酸12:3:1の溶液中に溶解した。溶解ペレット中の生理活性物質の量をシタラビンのアッセイ(実施例2参照)で記載したように決定した。図1、2、3および4中の封入薬物の百分率は次式により定義される。
【0081】
封入された薬物(%)=(ペレット中の量(mg)/0時点でのペレット中の量(mg))×100
in vitro放出アッセイに対する、静的条件下において、136mM塩酸中の30mg/mLシタラビンを伴う脂質/ポリマー比4:1、3:2および1:1の脂質/ポリマー含有医薬組成物に対する血漿中のin vitro放出プロフィールを、図1に示す。静的条件下で得られた水中の75mg/mLシタラビンを含有する4:1、3:2および1:1の脂質/ポリマー含有医薬組成物に対する、対応する放出プロフィールを、図2に示す。動的条件下で測定した脂質/ポリマー含有医薬組成物に対する放出プロフィールを、図3(136mM塩酸中の30mg/mLシタラビン)および図4(水中の75mg/mLシタラビン)に示す。
【0082】
これらのデータは、生理学的媒質中に封入された生理活性物質の持続放出が、両組成物に対して様々なアッセイ条件のもとで得られることを示す。これらはまた、持続放出が、脂質:ポリマー比を変えることにより制御できることも示す。
【0083】
実施例8: 一回経口投与後の、封入生理活性物質の医薬組成物からのin vivo持続放出
脂質のみの医薬組成物および脂質:ポリマー比1:1をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を、以下の改変を施して実施例1のように調製した。該水溶液はアミカシン80mg/mLを含有し、pH8であった。重量で1:1の脂質対ポリマー比をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を調製するために、実施例2に記載のクロロホルム溶液を使った。脂質のみの医薬組成物に対しては、クロロホルム溶液は、DOPC、DPPG、コレステロール、およびトリオレインを実施例2に規定した濃度で含有し、ポリマーを含有しなかった。ポリマーのみおよび重量で1:1の脂質対ポリマー比をもつ1:1脂質/ポリマー含有医薬組成物の平均粒径は、それぞれ8.4および7.8Fmであった。
【0084】
ポリマーのみの医薬組成物の調製に対しては、250mg/mLの濃度でポリ(ラクチド−グリコリド)を含有するクロロホルム溶液の5mL、および320mg/mLアミカシンを含有する水溶液の0.5mL、pH8を使った。第2の乳濁液は、4%ポリビニルアルコール20mLを添加し、4000rpmで1分間混合して作製した。混合容器の内容物を、30mL 4%ポリビニルアルコールを含有する1リットルのエルレンマイヤーフラスコ中に注いだ。50psiにセットした窒素気流を20分間37℃でフラスコを通過させてフラッシュしてクロロホルムを蒸発させた。ポリマー組成物の平均粒径は42.1 Fmであった。
【0085】
アミカシンを封入した、脂質のみ、1:1脂質/ポリマーおよびポリマーのみの医薬組成物またはアミカシンを封入しない医薬組成物を、pH 8の溶液として300g雄性Harlan Sprague Dawley albinoラットに強制栄養により(by gavage)経口投与した。1群当りの動物数は6であった。用量は1ラット当り20mgで、容積は2mLであった。血清を静脈穿刺(伏在静脈)を介して非麻酔動物から、15、45、90分、3、8、24、および48時間に採取した。検体は分析まで-40℃で保存した。
【0086】
血清中のアミカシン濃度は、競合粒子濃度蛍光イムノアッセイを使って定量した。ポリスチレンビーズ(Idexx Research Product Division, Memphis, TN)を、最初にアミカシン抗体(The Binding Site, San Diego, CA)で被覆した。該ビーズを、蛍光標識アミカシン(The Binding Site)およびビーズ上の抗アミカシン抗体部位を競合するアミカシンを含有する血清の組み合わせを用いてインキュベートした。ビーズに結合した蛍光標識アミカシンの量を、血清のアミカシン濃度と反比例する蛍光濃度分析計(Idexx Research Product Division)により測定した。
【0087】
4つの処理群に対する経口投与後の様々な時点における血清中のアミカシン濃度(Fg/mL)を、図5に示した。この数字に示されるように、非封入アミカシン、脂質、およびポリマー医薬組成物に対するピーク循環レベルは45分に到達したが、1:1脂質/ポリマー含有医薬組成物に対するピークレベルは90分に延長された。この結果は、脂質/ポリマー含有医薬組成物の使用により、封入生理活性物質の放出時間がより長くなることを示す。さらに、循環中のアミカシンの濃度は、非封入アミカシン、脂質、およびポリマー医薬組成物に対してそれぞれ1.82”0.73、 1.25”0.32および0.87”0.13 Fg/mLであったが、1:1脂質/ポリマー含有医薬組成物に対しては、遥かに大きいピークレベルの2.77”0.39 Fg/mLを得た。この結果は、生理活性物質のバイオアベイラビリティが脂質/ポリマー含有医薬組成物の使用により増加したことを示す。
【0088】
実施例9:水媒質中の保存におけるポリマーの安定性
ポリマーのみまたは脂質/ポリマーを含有する組成中に存在するときの、熱および酸により加速した水環境への暴露での、ポリマー(ポリ(ラクチド−グリコリド))の分子量に対する影響を、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。重量で1:1の脂質:ポリマー比をもつ脂質/ポリマーおよび生理活性物質としてシタラビンを含有する医薬組成物を、実施例3に記載したように調製した。ペレット画分は0.2に調節した。懸濁媒質は0.9%塩化ナトリウムであった。
【0089】
ポリマーの平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、蒸発光散乱検出器(Richard Scientific, Laurel, MD)、2つの連続結合ゲルろ過カラム(Phenogel 103および104 A, 7.8 x 300mm, Phenomenex, Torrance, CA)、および移動相として流速1mL/minのクロロホルムを使って定量した。校正曲線は、分子量12600、20800、37400、53500、 79000、および95050のポリスチレン標準物(American Polyer Standards Corporation, Mentor, OH)の1 mg/mLクロロホルム溶液を使って作成した。平均分子量は、次の標準的手順に従って計算した:Standard test method for molecular weight averages and molecular weight distribution by liquid exclusion chromatography(GEL permeation chromatography - GPC)(液体排除クロマトグラフィー(ゲル浸透クロマトグラフィー-GPC)による分子量平均および分子量分布のための標準試験法)(American Society for Testing and materials. D3436-91. Pp.352-362. 1992);Standard test method for molecular weight averages and molecular weight distribution of polystyrene by high performance size exclusion chromatography(高性能サイズ排除クロマトグラフィーによるポリスチレンの分子量平均および分子量分布のための標準試験法) (American Society for Testing and materials. D5296-92. Pp.1-14. 1992)。
【0090】
ポリマーのみの対照組成として、クロロホルム中のポリ(ラクチド-グリコリド)2mg/mL溶液を調製した。水媒質への暴露の影響を測定するためならびに酸および熱ストレス研究のためのサンプルは、以下のように調製した。ガラスバイアル中に乾燥残渣を作るために、ポリマーの1mg/mL溶液を真空デシケーター中で乾燥した。通常の塩水(0.9%塩化ナトリウムの750 FL)をガラスバイアルに添加した。このサンプルを使って、ポリマー安定性に対する水媒質の暴露の影響を測定した。酸の影響を測定するために、ガラスバイアルで作製したポリマーの乾燥残渣の1mgを、1N塩酸の750 FL中に分散し、1時間インキュベートした。酸および熱の影響を定量するために、ガラスバイアルで作製した乾燥残渣の1mgを、1N塩酸の750 FL中に分散し、沸騰水中に1時間置いた。サンプルを上記のとおりインキュベートした後、ポリマーにクロロホルムの750 FLを添加して抽出した。クロロホルム層を真空デシケーター中で乾燥した。乾燥残渣をクロロホルム中に移してサイズ排除クロマトグラフィーのために 2mg/mLの濃度とした。図6に、クロロホルム中のポリマー(曲線A)、塩水中に懸濁したポリマー(曲線B)、1N塩酸中に懸濁したポリマーの懸濁液(曲線C)、およびさらに熱ストレスを受けた1N塩酸中のポリマーの懸濁液(曲線D)のサイズ排除クロマトグラムを示す。図6に示されるように、ポリマーの保持時間は、塩水を添加したときまたはポリマーが熱または酸の影響を受けたときに増加し、ポリマーのより小さい分子量断片への分解を示す。
【0091】
ポリマーが酸および熱ストレス条件下で本発明の脂質/ポリマー含有組成物中に存在するときのポリマーの分解を測定する目的で、重量で1:1の脂質対ポリマー比をもち、シタラビンを含有し、実施例2で記載したように調製され、0.2のペレット画分をもち、0.9%塩化ナトリウム中に懸濁された脂質/ポリマー含有医薬組成物10mLを、600 x gで遠心分離した。酸の影響を測定するために、上清(7.5mL)の殆どを廃棄し、1N塩酸の7.5mLで置き換え、1時間、常温でインキュベートした。酸および熱の影響を測定するために、1N塩酸の懸濁液を1時間、沸騰水浴中で加熱した。0.9%塩化ナトリウム中の懸濁液として保存した無ストレスのサンプル(曲線A)、酸のストレスを受けたサンプル(曲線B)、および酸と熱のストレスを受けたサンプル(曲線C)のサイズ排除クロマトグラムを図7に示す。図7に見られるように、ポリマーの保持時間は酸添加または熱によりほとんど影響を受けず、ポリマーは医薬組成物中の脂質の存在により加水分解に対して保護されることを示す。
【0092】
通常の保存条件下でのポリマー分解を測定する目的で、重量で1:1の脂質:ポリマー比および生理活性物質としてシタラビンをもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を、実施例2に記載したように調製した。該医薬組成物を、0.9%塩化ナトリウム中の懸濁液として冷蔵庫(2〜8℃)内で9ヶ月間保存した。新しく調製した脂質/ポリマー含有医薬組成物(曲線A)および9ヶ月経過組成物(曲線B)のサイズ排除クロマトグラフィーを図8に示す。図8に示すように、該ポリマーは通常の保存条件期間に顕著な加水分解を受けなかった。
【0093】
重量で1:1の脂質対ポリマー比をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物と脂質を含まないポリマーのみの製剤について、ポリマー分子量の変化を37℃でのインキュベーション時間の関数として比較する目的で、他の加速した安定性研究を実施した。脂質/ポリマー含有医薬組成物は、生理活性物質シタラビンを含有し、実施例3に記載のように調製した。ポリマーのみの製剤もシタラビンを含有し、第1水媒質が水中に150mg/mLシタラビンを含有することを除くと実施例8に記載のように調製した。37℃における様々なインキュベーション時間において、各ポリマーの平均分子量を前記のように計算した。
【0094】
図9にポリマーのみの医薬組成物を白丸としてまた本発明の1:1脂質/ポリマー含有医薬組成物を三角として示したこの研究の結果は、脂質/ポリマー含有医薬組成物のポリマー分解速度がポリマーのみの医薬組成物のそれより遅いことを示す。
【0095】
実施例10: 医薬組成物の浸透圧感度
ポリマーのみの医薬組成物および脂質-ポリマー比、9:1、1:1、または1:3をもつ脂質/ポリマー含有組成物を、実施例1および実施例8のように調製した。重量で9:1、1:1、または1:3の脂質対ポリマー比をもつ脂質/ポリマー含有組成物を調製するためのクロロホルム溶液は実施例2に記載したとおりであった。
【0096】
塩化ナトリウム(Fisher Scientific)を様々な量で水に添加し、次のオスモラリティ(osmolality):57、116、180、269、341、422 mOsm/kgをもつ溶液を得た。脂質/ポリマー比9:1、1:1、および1:3をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物またはポリマーのみの医薬組成物を塩化ナトリウム溶液のそれぞれに加えた。粒径を、レーザー散乱粒度分布分析計(Model LA-910, Horiba Instruments, Irvine, CA)を使い、長さ加重分布基準および相対屈折率1.18〜1.00iを用いて測定した。粒径をオスモラリティの関数として図10に示す。
【0097】
図10は、脂質/ポリマーミクロスフェア組成物のサイズが懸濁媒質のオスモラリティに依存することを示す。しかし、ポリマーのみのミクロスフェアのサイズはこれらの条件下で浸透圧ストレスの影響を受けない。
【0098】
実施例11: 皮下投与後の、封入された生理活性物質の医薬組成物からのin vivo持続放出
脂質:ポリマー比1.9:1をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を、次の改変を施して実施例1のように調製した。水溶液は15 mg/mLロイプロリドを含有した。重量で1.9:1の脂質対ポリマー比をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を調製するためのクロロホルム溶液は、実施例2に記載したとおりである。クロロホルム溶液は、ポリマーすなわちポリ(DL-ラクチド)(PLA)を37.22mg/mLの濃度で、DEPC、 DPPG、コレステロールおよびトリオレインをそれぞれ35.6mg/mL、6.225mg/mL、23.1mg/mL、6.5mg/mLの濃度で含有した。PLAは、Sigma Chemical社(St. Louis, MO)から入手し、分子量106,000であった。別のロイプロイドの溶液は水中に6.0mg/mLを含有した。DEPC、DPPG、およびトリオレインは、Avanti Polar Lipids(Alabaster, AL)、から入手し、コレステロールはSpectrum Chemical Manufacturing Corp.(Gardena, CA)から入手した。ロイプロイドはBachem(Torrance, CA)から入手した。水相容積と揮発性有機溶媒相容積との比は5mL対5mLであった。油中水(water-in-oil)乳濁液は、ホモミキサー(Tokushu Kika Kogyo Co. Ltd.、大阪、日本)により速度9000rpmで8分間混合して調製した。第2水相は、5%wtグルコースと40mMリシンの混合物であった。球状体(spherules)は、4,000rpmで1分間混合して作った。50psiにセットした窒素気流を20分間37℃で球状体懸濁液を通過してフラッシュし、クロロホルムを蒸発させた。懸濁媒質を0.9wt%塩化ナトリウムと、2回の洗浄および600xgの遠心分離により交換した。
【0099】
平均粒径は、レーザー散乱粒度分布分析計(Model LA-910, Horiba Instruments, Irvine, CA)で決定した。脂質/ポリマー医薬組成物の平均粒径は15.9Fmであった。
【0100】
医薬組成物および医薬組成物上清中のロイプロイドの濃度は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(Model 1100, Hewlett-Packard, Irvine, CA)により、C-18 逆相プライムスフェア(primesphere)カラム4.6 x 250 mm(Phenomenex, Torrance, CA)を使って定量した。移動相は、時点0で75%溶液A対25%溶液B、12minで100%溶液Bに増加する勾配であった。溶液Aは0.1%トリフルオロ酢酸、そして溶液Bは0.1%トリフルオロ酢酸であった。ピークは、280および550mmで観測された。
【0101】
1.9:1脂質/ポリマー医薬組成物、非封入ロイプロリド溶液および0.9%NaCl溶液を、400g雄性Harlan Sprague Dawley albinoラットの側方下位背部(lateral lower back)に皮下注射により投与した。1群当りの動物数は6であった。用量は1ラット当り3.6mgで容積は600FLであった。血清を静脈穿刺(伏在静脈)を介して非麻酔動物から、0、1.5時間、1、3、7、14、28、60、88、92、106日に採取した。非封入ロイプロイド群に対して採取した時点は、0、1.5時間、1、3、7、14日であった。血清サンプルは分析まで-40℃で保存した。
【0102】
血漿テストステロンレベルは、固相ラジオイムノアッセイ(RIA)キットを用いて定量した。Coat-A-Count全テストステロンキットは、 Diagnostic Products Corporation(Los Angeles, CA)から購入した。該アッセイは血清中のテストステロンの定量測定用に設計されている。該アッセイはポリプロピレンチューブ壁に固定されたテストステロン特異抗体に基づく。125I-標識テストステロンを、定めた時間、血漿サンプル中のテストステロンと抗体部位を競合させる。その後、チューブをデカントし、結合した抗体を遊離した抗体から分離する。動物血漿サンプルをガンマカウンター(Model 1175 Searle, Des Plaines, IL)で計数した。血漿テストステロンの濃度を校正曲線から決定した(対数テストステロン-対-対数結合百分率)。
【0103】
皮下投与後の様々な時点における、3つの処置群に対する血漿テストステロン濃度(Fg/dL)を図11に示す。3日〜106日のデータを図12に拡大目盛でプロットした。
【0104】
図11および図12(拡大垂直目盛)は、ロイプロリドを含有する脂質/ポリマーミクロスフェアの非経口投与後80〜90日までのロイプロリドの持続放出を示す。
【0105】
実施例12: 医薬組成物の調製
脂質:ポリマー比1:1.12をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を、次の改変を施して実施例1のように調製した。水溶液は80 mg/mLアミカシン含有し、pH 8であった。重量で1:1.12の脂質対ポリマー比をもつ脂質/ポリマー含有医薬組成物を調製するためのクロロホルム溶液は、実施例2に記載の通りである。クロロホルム溶液は、ポリマー、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)(PLC)を50mg/mLの濃度で、DOPC、DPPG、コレステロールおよびトリオレインをそれぞれ10.4mg/mL、2.1mg/mL、7.7mg/mL、2.2mg/mLの濃度で含有した。PLCは、Birmingham Polymers Inc.(Birmingham, AL)から入手し、ラクチド:カプロラクトン比は75:25であった。DOPC、DPPG、およびトリオレインはAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL)、から入手し、コレステロールはSpectrum Chemical Manufacturing Corp.(Gardena, CA)から入手した。水相容積と揮発性有機溶媒相との比は5mL対5mLであった。油中水乳濁液は、ホモミキサー(Tokushu Kika Kogyo Co. Ltd.、大阪、日本)を使い、速度9000rpmで10分間混合して調製した。第2水相は、5wt%グルコースおよび40mMリシンの混合物であった。球状体は、6,000rpmで1分間混合して作製した。50psiにセットした窒素気流を20分間37℃で球状体懸濁液を通過してフラッシュし、クロロホルムを蒸発させた。懸濁媒質は、2回の洗浄と600xg遠心分離によって0.9wt%塩化ナトリウムと交換した。
【0106】
粒径は、レーザー散乱粒度分布分析計(Model LA-910, Horiba Instruments, Irvine, CA)を使い、長さ加重分布基準および相対屈折率1.18〜1.00iを用いて測定した。脂質/ポリマー医薬組成物の平均粒径は8.23μmであった。容積加重平均粒子サイズは123.4μmであった。
【0107】
実施例13: 腹腔内投与後の、封入生理活性物質の医薬組成物からのin vivo持続放出
医薬組成物を、二回乳化プロセスを用いて調製した。油中水(water-in-oil)型乳濁液を、4パーセントのデキストロース(Fisher, Fair Lawn, NJ)を含有する 25mMアルギニン-グリシン-グリシン(Sigma, St. Louis, MO)バッファーpH 7.9の5mLならびにエリスロポエチンおよび2.5mg/mLヒト血清アルブミン(UC San Diego Medical Center, San Diego, CAより提供を受けた)から調製した。揮発性有機相は、1:1の比で脂質およびポリマーを含有し、エリスロポエチンを含むかもしくは含まず、または4:1 の脂質/ポリマー比でエリスロポエチンを含んだ。水非混和性(immiscible)溶媒相は、リン脂質、コレステロール、トリグリセリドおよび PLGA(ポリDL-ラクチド-コ−グリコリド)の混合物を含有した。1:1(脂質の質量:ポリマーの質量)製剤については、溶媒相は、クロロホルム (Spectrum, Gardena, CA)中に溶解された、10.4 mg/mL DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、2.1 mg/mL DPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ナトリウム塩)、2.2mg/mLトリオレイン、(以上全てAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL)から入手)、7.7 mg/mLコレステロール(Spectrum, Gardena, CA)、および22.4 mg/mL PLGA(Sigma, St. Louis, MO)を含有した。4:1製剤については、(脂質+ポリマー)の全濃度を一定に保ち、脂質対ポリマーの重量比を変えた。油中水(water-in- oil)型乳濁液をホモミキサー(Tokushu Kika Kogyo Co. Ltd.、大阪、日本)で作製するための混合速度と時間は、9,000rpm、8分間であった。第2水相は、4%グルコース(McGaw, Irvine, CA)および40mMリシン(Degussa, Courbevoie, France)を含有する溶液の20mLであった。第2水相を油中水(water-in-oil)懸濁液に添加し、4,000rpmで1分間混合した。有機溶媒は、窒素を50L/minで通過させながら37℃でゆっくりと振とうして除去した。懸濁媒質は、25mMアルギニン-グリシン-グリシンバッファー pH 7.9と2回の洗浄および600xgの遠心分離により交換した。
【0108】
平均粒径は、レーザー散乱粒度分布分析計(Model LA-910, Horiba Instruments, Irvine, CA)で決定した。平均粒径は、1:1および4:1脂質/ポリマー医薬組成物ならびに1:1脂質/ポリマーブランクに対して、それぞれ26.1μm、 23.1μm、24.5μmであった。
【0109】
医薬組成物中のエリスロポエチンの濃度は、ヒト・エリスロポエチン用の定量比色サンドイッチELISA(R&D Systems, Minneapolis, MN)により決定した。プレートは、EL312Eマイクロプレート上で、Bio-Kineticsリーダー(Bio-Tek Instruments, Winooski, VT)により検出波長450nmで読み取った。ブランクのヒト血清アルブミン(HSA)の濃度は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(Model 1100, Hewlett-Packard, Irvine, CA)によりC18タンパク質およびペプチドカラム4.6 X 250mm(Vydac, Hespena, CA)を使って決定した。移動相は、18分間で5%溶液Aから80%溶液Bへの勾配からなった。溶液Aは、Mallinckrodt(Paris, KY)から入手したHPLC水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)(Pierce, Rockford, IL)、そして溶液BはBurdick &Jackson(Muskegon, MI)から入手したメタノール中の0.1% TFAで、流速は1mL/分であった。ピークは、波長280nmで監視した。
【0110】
医薬組成物および非封入エリスロポエチンの濃度は、pH 7.9のアルギニン-グリシン-グリシンバッファーを用いて、エリスロポエチンの500 IUに調節した。ブランクは、HASタンパク質の0.4mg/mLを含有するように調節した。各医薬組成物を、28〜32グラム体重の5つの雌性CD1 /ICR Harlan Sprague Dwaleyマウスに腹腔内(IP)注射した。用量は1 mL全容積中に500 IUであった。血液は、2.5%ハロメタンおよび1L/min酸素で麻酔をかけた動物から眼窩洞(orbital sinus)を経由して採取した。ヘマトクリットは、0、1、3、6、10、13、17、21、24日にとった。血液は直接毛細管中に採取し、ヘマトクリット遠心分離で6分間回転した。
【0111】
図13の結果は、4:1脂質/ポリマー医薬組成物については13日まで、また1:1脂質/ポリマー医薬組成物については10日まで、ヘマトクリットの持続した影響を示す。
【0112】
遊離(非封入)エリスロポエチンの注射から得られるヘマトクリットの増加は、封入薬物によるほど顕著でない。注射した遊離(非封入)エリスロポエチンで得た影響は、6日までしか続かなかった。4:1脂質:ポリマー組成物は、非封入薬物と比較してヘマトクリットの15.6パーセント増加を示す。1:1医薬組成物は、非封入薬物と比較してヘマトクリットの7.8パーセント増加を示す。4:1脂質:ポリマー医薬組成物は、全体の中で最高のヘマトクリットを生じた。
【0113】
本発明を詳細な説明とともに記載したが、以上の記載は説明することを意図し、添付した請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定するものではない。他の様態、有利なもの、および改変は、以下の請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の生分解性ポリマーと少なくとも1種の脂質とを含むマトリックスを有する生分解性ミクロスフェア、ならびに生分解性ミクロスフェアから放出可能な生理活性物質を含有してなる脂質/ポリマー含有医薬組成物。
【請求項2】
ミクロスフェアが実質的に揮発性有機溶媒を含まない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ミクロスフェアが実質的にポリビニルアルコールを含まない、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
固形剤型である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
固形剤型が、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、経皮パッチ、縫合糸、植込錠(implant)、および坐剤からなる群より選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
水性懸濁液の形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の生分解性ポリマーがホモポリマーである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の生分解性ホモポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオルトエステル、ポリリン酸エステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリペプチド、および遺伝子工学的に操作されたポリマーからなる群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の生分解性ポリマーがランダムまたはブロックコポリマーである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の生分解性ランダムまたはブロックコポリマーが、ポリ(ラクチド-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-ラクチド)、ポリ(p-ジオキサノン-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-ラクチド-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-カプロラクトン)、ポリ(p-ジオキサノン-アルキレンカーボネート)、ポリ(p-ジオキサノン-アルキレンオキシド)、ポリ(p-ジオキサノン-カーボネート-グリコリド)、ポリ(p-ジオキサノン-カーボネート)、ポリ(カプロラクトン-ラクチド)、ポリ(カプロラクトン-グリコリド)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エーテル-エステル)、ポリ(エステル-アミド)、ポリ(エステル-ウレタン)、ポリリン酸エステル、ポリ無水物、ポリ(エステル-無水物)、ポリホスファゼン、ポリペプチドおよび遺伝子工学的に操作されたコポリマーからなる群より選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の脂質が両性イオン性脂質を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の脂質が酸性脂質を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の脂質がステロールを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の脂質がトリグリセリドを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
生理活性物質が親水性である請求項1に記載の医薬組成物であって、トリグリセリドをさらに含む前記医薬組成物。
【請求項16】
生理活性物質が疎水性である請求項1に記載の医薬組成物であって、トリグリセリドを含まない前記医薬組成物。
【請求項17】
生理活性物質が、抗アンギナ薬(antianginas)、抗不整脈薬、抗喘息薬、抗生物質、抗糖尿病薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、血圧降下薬、駆虫剤、抗腫瘍薬、抗ウイルス薬、強心配糖体、除草剤、ホルモン、免疫調節剤、モノクローナル抗体、神経伝達物質、核酸、タンパク質、放射線造影剤、放射性核種、鎮静薬、鎮痛薬、ステロイド、トランキライザー、ワクチン、昇圧薬、麻酔薬、ペプチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
患者に投与する際に請求項1に記載の医薬組成物中の脂質とポリマーの比率を変化させることにより生理活性物質の放出速度を制御する方法。
【請求項19】
第1の水相と、少なくとも1種の揮発性有機溶媒、少なくとも1種の生分解性ポリマーまたはコポリマーおよび少なくとも1種の脂質を含む揮発性有機溶媒相とから油中水型乳濁液を形成すること、油中水型乳濁液を第2の水相に分散して溶媒球状体を形成すること、ならびに溶媒球状体から揮発性有機溶媒を除去して第2の水相に懸濁された脂質/ポリマー含有組成物を形成することを含んでなる、生分解性脂質/ポリマー含有組成物の製造方法。
【請求項20】
(a) 少なくとも1種の親水性生理活性物質を含む第1の水相と、少なくとも1種の揮発性有機溶媒、少なくとも1種の生分解性ポリマーまたはコポリマーおよび少なくとも1種の脂質を含む揮発性有機溶媒相とから油中水型乳濁液を形成すること、
(b) 油中水型乳濁液を第2の水相に分散して溶媒球状体を形成すること、ならびに
(c) 溶媒球状体から揮発性有機溶媒を除去して第2の水相に懸濁された脂質/ポリマー含有医薬組成物を形成すること
を含んでなる、生分解性脂質/ポリマー含有医薬組成物を製造する方法であって、脂質とポリマーの比率が、生理活性物質のin vivoでの放出速度を調節するように選択される、前記方法。
【請求項21】
溶媒球状体から実質的に全ての有機溶媒を除去することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法により製造された医薬組成物。
【請求項23】
(a)第1の水相と、少なくとも1種の疎水性生理活性物質、少なくとも1種の揮発性有機溶媒、少なくとも1種の生分解性ポリマーまたはコポリマーおよび少なくとも1種の脂質を含む揮発性有機溶媒相とから油中水型乳濁液を形成すること、
(b) 油中水型乳濁液を第2の水相に分散して溶媒球状体を形成すること、ならびに
(c) 溶媒球状体から揮発性有機溶媒を除去して第2の水相に懸濁された脂質/ポリマー含有医薬組成物を形成すること
を含んでなる、生分解性脂質/ポリマー含有医薬組成物を製造する方法であって、脂質とポリマーの比率が、生理活性物質のin vivoでの放出速度を調節するように選択される、前記方法。
【請求項24】
溶媒球状体から実質的に全ての有機溶媒を除去することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項23に記載の方法により製造された脂質/ポリマー含有医薬組成物。
【請求項26】
生物の障害を治療する方法であって、障害を有する被験体に請求項1に記載の脂質/ポリマー含有医薬組成物を治療上有効な量投与することを含んでなり、該医薬組成物が該障害の治療に有効な生理活性物質を含むものである、前記方法。
【請求項27】
投与が非経口投与である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
投与が経腸投与である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
生理活性物質がホルモンである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ホルモンがインスリンまたはロイプロリドである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
生理活性物質がサイトカインである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
サイトカインがエリスロポエチンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
生理活性物質が抗生物質である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
抗生物質がアミカシンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
揮発性有機溶媒相が少なくとも1種のトリグリセリドをさらに含む、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−63596(P2011−63596A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−237053(P2010−237053)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2000−559796(P2000−559796)の分割
【原出願日】平成11年7月16日(1999.7.16)
【出願人】(500104532)パシラ ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】