説明

封止樹脂組成物、封止樹脂組成物で封止された電子部品装置及び半導体素子のリペア方法

【課題】 狭ギャップへの充填性及び接続信頼性と、封止樹脂硬化後の半導体素子の取り外しならびに配線基板上に残る封止樹脂残渣の除去を両立することにある。
【解決手段】 配線基板上に形成された接続用電極部と配線基板上に搭載された半導体素子との接続部に生じる空隙部分を封止するための封止樹脂組成物であって、封止樹脂組成物中に多層構造となる粒子を含み、多層構造となる粒子の少なくとも1層以上はシロキサン骨格を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化させた後に封止された半導体素子を除去することができ、かつ配線基板上に残された封止樹脂残さを除去することが可能な封止樹脂組成物、封止樹脂組成物で封止された電子部品装置及び半導体素子のリペア方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の急速な発達に伴い、半導体素子にはこれまで以上に高機能化が求められるようになった。半導体素子の多機能化に伴い半導体素子の入出力端子数は増加し、また半導体素子を高速動作させるための配線長は短縮化が求められている。こうした要求を実現するために開発された接続工法としてフリップチップ接続(図1参照)がある。
【0003】
図1に示すように、半導体素子1は、ビルドアップ配線基板6上にソルダーレジスト5を介して搭載されている。半導体素子1とビルドアップ配線基板6とは、接続用パッド3とはんだ4を介して電気的に接続されている。このような構成の下、ビルドアップ配線基板6上に形成された接続用電極パッド3(接続用電極部)とビルトアップ配線基板6上に搭載された半導体素子1との接続部に生じる空隙部分を封止樹脂2で封止する。フリップチップ接続は、半導体素子の配線面にエリア上に接続パッドを設けることができるため多ピン化に適している。
【0004】
また、ワイヤボンディング(図2参照)やテープオートメイティッドボンディング(図3参照)の様な他の半導体素子接続工法と比較し、引き出し線を必要としないため配線長の短縮化が可能である。一般に、フリップチップ接続される高機能半導体素子の多くは高付加価値のものが多い。また、これらの半導体素子をうける微細配線基板は高多層なものが必要となるため非常に高価であり、実装歩留まりを向上させるための要求は非常に強いものがある。
【0005】
以上のように、高付加価値の電子機器に用いられる半導体素子の実装には、フリップチップ接続を使用したものが増加している。一方、フリップチップ接続される半導体素子の多くは、半導体素子−配線基板間の熱膨張差を緩和するため、接続部に封止樹脂とよばれる液状の封止剤を注入し硬化させることにより接続信頼性を確保する必要がある。封止に用いる材料には、封止状態で、耐落下衝撃性、耐熱衝撃性、耐振動性、耐埃性、耐水性を向上させるためにセラミック、金属材料、樹脂材料等様々な材料が考案されており、非常に高い気密性を持っている。セラミック、金属材料を用いた封止は信頼性が高いもののコスト高であり、樹脂材料を用いた封止に比べて作業性に劣るため、現在では樹脂封止が一般的となっている。
【0006】
樹脂封止に用いられる材料にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等があるが、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、接着性、コスト等の面で優れているエポキシ樹脂が広く使用されている。エポキシ樹脂を含む多くの封止樹脂はその接着強度の高さのため、高い実装信頼性が確保できる反面、一度熱処理を施して樹脂を硬化させてしまうと、その高い樹脂強度、接着強度のため除去することが非常に困難となってしまう。従って、半導体素子あるいは配線基板の不良発生時に不良部品を交換することが非常に困難となり、実装コストが高くなるという問題がある。特に、ハイエンドサーバー、ハイエンドコンピュータ等、高付加価値な装置については、1枚の微細配線基板上に搭載される半導体素子が数十個に及ぶこともあり、1個の半導体素子の不良によりその他の良品部品全てが廃棄となってしまうことは非常に多くのコスト損失を招くことになる。
【0007】
樹脂を用いた封止には大きくわけてグロブトップタイプ(図4参照)、モールドタイプ(図5参照)アンダーフィルタイプ(図6参照)の3種類の形態がある。グロブトップタイプ及びモールドタイプは主にワイヤーボンディング接続の際に用いられる封止形態であり、図4及び図5に示すように、半導体素子1自体を封止樹脂2で取り囲んだ状態で硬化させる形態である。
【0008】
アンダーフィルタイプとは、主にフリップチップ接続の際に用いられる封止形態であり、図6に示すように、半導体素子1と配線基板6との接続部分にのみ封止樹脂2を流し込み、流し込んだ封止樹脂2を硬化させる形態である。近年の半導体素子の狭ピッチ化に伴い、半導体素子−配線基板間のギャップは非常に狭くなっており、封止剤に対しより一層の充填性が要求されている。
【0009】
半導体素子を実装する基板には、主にセラミックを用いたものと有機材料を用いたものの2種類がある。高密度実装に用いられる配線基板の多くは、狭ピッチ化に優れ、軽量、低コストであることから有機配線基板を用いたものが多い。高密度配線基板の多くは、図7に示すようにビルドアップと呼ばれる積層構造をとっている。ビルドアップ配線基板は、コア層10とビルドアップ層9の2つの部分からなっている。コア層10は配線基板の反りを低減して実装歩留まりを向上させる構造上の支持体としての役割と、電源層などの配線密度の低い層を受け持つことで高密度配線層を低い密度で使用して配線密度のバランスをとる役割とを有している。
【0010】
狭ピッチの配線を描くことの出来る点で有利な有機基板材料には、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、フッ素を含むポリマー、ポリエステル、フェノール樹脂、フルオレン樹脂、ベンゾシクロブテン、シリコ−ン系ポリマー等様々な材料があるが、コスト、低熱膨張、低誘電損失、耐熱性等の面に優れるエポキシ樹脂が一般に用いられている。
【0011】
また、配線基板の最外層には、はんだ流れ防止目的のソルダーレジストが塗布されている。このソルダーレジストの多くも基板材料や封止樹脂と同様にエポキシ樹脂であり、現在の有機配線基板の多くはエポキシ樹脂により形成されていると言える。
【0012】
次に、リペアを可能にする封止樹脂の従来技術について述べる。リペアを可能にする封止樹脂の多くは、熱可塑性の成分を添加し高温下にさらすことで樹脂の密着強度あるいは樹脂強度を低下させ、半導体素子を取り外す工程と、基板上に残された残さ樹脂を高温下における可塑性を利用することにより除去する工程を含むコンセプトが提案されている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0013】
しかし、一般的な熱可塑性成分の添加に関しては、増粘やチキソ性発現による狭ギャップへの充填性の悪化、線膨張係数の増大による接続信頼性低下、耐マイグレーション性の低下等の性能劣化を招く場合が多く、充填性、接続信頼性及びリペア性を両立することは困難である。
【0014】
その他の方法として、有機溶剤を用い、封止樹脂を膨潤させることで封止樹脂と配線基板の間の密着強度及び樹脂強度を低下させ、半導体素子の取り外し、残渣樹脂の除去を行う方法が考案されている(特許文献2、特許文献4及び特許文献5参照)。しかし、現在用いられている封止樹脂および配線基板の多くは共にエポキシ樹脂であるため、樹脂残さ除去用の溶剤が封止樹脂のみでなく配線基板も膨潤させ、ビルドアップ基板の層間剥離を起こす恐れがある。さらに、配線基板表面の状態が樹脂残さ除去用の溶剤により変化し、配線基板を再利用する際に封止樹脂の再充填性を悪化させる恐れがある。以上のように溶剤を用いた場合に、配線基板に影響を与えずに封止樹脂のみを選択的に除去することは一般的には困難である。
【0015】
上記のような懸念から不良発生時に備えて、実装形体自体を再利用可能な構造とする方法も提案されている。この例として、半導体素子実装時にインターポーザ構造を取り、不良発生時にははんだリフローによってインターポーザごと取り外してしまう方法(特許文献6参照)が考案されている。
【0016】
しかし、インターポーザを用いた実装方法は、配線長が長くなるため一般的には信号の高速伝搬に不利であり、また、インピーダンス整合をとるのが困難であるという欠点がある。また、インタポーザ構造をとることで実装面積及び実装高さが増大し、小型化及び高密度化との両立ができないという欠点がある。以上のように、インターポーザ構造をとることによる半導体素子のリペアは根本的な問題解決の手段としては不十分である。
【0017】
溶剤を必要としない封止樹脂除去方法として、樹脂残さに電磁波を照射することにより樹脂残さを除去する方法(特許文献7参照)、レーザ光が透過する配線基板を実装時に用い、半導体素子の実装されている裏面からレーザ光を照射し、封止樹脂の密着力を弱める方法(特許文献8参照)等が考案されている。
【0018】
しかし、現在用いられている封止樹脂および配線基板の多くは共にエポキシ樹脂であるため、封止樹脂のみを選択的に加工することは難しい。また、封止樹脂除去を可能にする程度のレーザ強度でレーザ照射を行うと、配線基板の損傷および配線基板表面状態の変化により配線基板再利用時の封止樹脂再充填性を悪化させる恐れがある。また、現在使用されている配線基板の多くはレーザ透過性を持っておらず、上記特許文献8の方法による問題解決は困難である。以上のように、非接触のエネルギーを用いた方法による封止樹脂のみの選択的加工は困難である。
【0019】
【特許文献1】特開2000−323193号公報
【特許文献2】特開平11−274376号公報
【特許文献3】特開平9−221650号公報等
【特許文献4】特開平10−67916号公報
【特許文献5】特開平7−102225号公報
【特許文献6】特開平4−124845号公報
【特許文献7】特開平6−77264号公報
【特許文献8】特開平4−257240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上述べたように、従来技術には配線基板に損傷を与えることなく半導体素子ならびに封止樹脂を選択的に除去し、充填性、接続信頼性及びリペア性のいずれをも両立する材料および方法に関する開示は見られない。
【0021】
一般に、リペア性を持たせた封止樹脂材料は、熱可塑性成分を添加することにより、高温下での可塑性、溶剤膨潤性を高める設計のものが多かった。これら熱可塑性成分の多くは、封止樹脂に必要な狭ギャップへの充填性及び接続信頼性を低下させるものが多く、リペア性、充填性及び信頼性を両立させることは困難であった。
【0022】
そこで、本発明は上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、狭ギャップへの充填性及び接続信頼性と、封止樹脂硬化後の半導体素子(LSI)の取り外しならびに配線基板上に残る封止樹脂残渣の除去を両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、配線基板上に形成された接続用電極部と配線基板上に搭載された半導体素子との接続部に生じる空隙部分を封止するための封止樹脂組成物であって、前記封止樹脂組成物中に多層構造となる粒子を含み、多層構造となる粒子の少なくとも1層以上はシロキサン骨格を有することを特徴とする。
【0024】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂組成物の弾性を低下させる。
【0025】
また、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、多層構造となる粒子の最外殻であるシエル部と、多層構造となる粒子に包含されるコア部とから成り、コア部がシエル部よりも硬度が低いことが好ましい。
【0026】
好ましくは、前記コア部及びシエル部が、シシロキサン骨格で形成されている。また、前記コア部がシリコーンゴムであり、前記シエル部がシリコーンレジンであることが好ましい。前記コア部のガラス転移温度が、前記シエル部分のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。
【0027】
好ましくは、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子を添加する封止樹脂組成物のガラス転移温度が、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子よりも高く、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子のシエル部よりも低い。前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子を含む封止樹脂組成物のガラス転移温度は、例えば80℃以上である。
【0028】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、例えば、球状である。
【0029】
好ましくは、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の表面に対して、界面活性剤による表面処理が行われている。
【0030】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の平均粒径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは5〜15μmである。
【0031】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の添加量は、好ましくは1〜30Vol%、より好ましくは15〜25Vol%である。
【0032】
好ましくは、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子を添加した封止樹脂組成物が、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子未添加の封止樹脂組成物と比較し、ガラス転移温度点以下の温度領域で線膨張係数が低い。
【0033】
好ましくは、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子が、母材封止樹脂と相溶性を持たない。前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子が、封止樹脂硬化後に溶融しないことが好ましい。
【0034】
また、前記封止樹脂組成物が、平均粒径10μm以下の球状の無機充填剤を含むことが好ましい。前記無機充填剤は、例えば、球状シリカである。
【0035】
また、本発明では、配線基板上に搭載された複数の半導体素子の少なくとも一つを取外し可能にした半導体素子のリペア方法であって、配線基板上に形成された接続用電極部と上記半導体素子との接続部に生じる空隙部分を封止するための封止樹脂組成物としてシロキサン骨格を持つ多層の粒子を含む組成物を用いることにより、封止樹脂硬化後の半導体素子の取外し及び配線基板上に残る封止樹脂残渣の除去を行うことを特徴とする。
【0036】
前記シロキサン骨格を持つ多層の粒子は、多層構造となる粒子の最外殻であるシエル部と、多層構造となる粒子に包含されるコア部とから成り、コア部がシエル部よりも硬度が低いことが好ましい。
【0037】
リペアを必要とする温度域においては前記シエル部分が軟化すると共に前記コア部分の弾性が低下し、これにより半導体素子の取外し及び配線基板上の樹脂残渣除去が促進される。前記リペアを必要とする温度域は、例えば、180℃以上の温度域である。
【0038】
このように、本発明は、狭ギャップへの充填性、リペア時の低弾性及び半導体素子動作温度領域における接続信頼性の両立を実現することで、従来不可能であった封止樹脂硬化後の半導体素子交換を可能とし、実装コストの低減及び環境負荷低減を実現するものである。コアシエル構造を有する特殊な粒子を封止樹脂に添加することにより、以上の性能を両立することが可能となり本発明に至った。
【0039】
今回検討にもちいた粒子は、コアシエル構造を有する多層のシロキサン骨格をもつ。シロキサン骨格とはSiとOを共有結合でつないだ繰り返し構造を持ち、コアはビニル基含有のメチルポリシロキサンとメチルハイドロジエンポリシロキサンの付加重合物で形成され、シエルはシロキサン結合が三次元網目状に架橋した構造を持つポリメチルシルセスキオキサンから形成される。
【0040】
本封止樹脂に用いられるシロキサン骨格を有する粒子は多層構造を形成している。以下に本発明に用いられる多層シロキサン骨格の例として、コア部とシエル部の2層構造の場合の例を示す。本発明において述べるシエル部とは、多層構造となる粒子の最外殻であり、またコア部とは多層構造となる粒子に包含される部分を示す。コアに用いるシリコーンは硬度を低く設計しており弾性が低い。また、最表層を示すシエルに用いる材料はコアと比較して硬度が高く弾性が高い構造となっている。
【0041】
一般に、フリップチップ接続される半導体素子に封止樹脂を用いる際には、半導体素子を含むボード全体を加温し、封止樹脂の粘度を下げた状態で狭ギャップへの充填を行うことが多い。これは封止樹脂の粘度を下げることで、半導体素子及び配線基板への濡れ性を高め、ボイドのない充填を短時間で完了し、接続信頼性を高めるために行われる。
【0042】
本発明に用いられるシエルに用いる硬度の高いシロキサン骨格は封止樹脂の充填温度と比較して熱軟化点が高く、充填の際に封止樹脂と反応することがないため、高温で生産性高く充填作業を行うことができる。一方で、一般の熱可塑剤を添加した場合には、熱をかけることで熱可塑剤が軟化、変形し、熱可塑剤どうしでの二次凝集、封止樹脂基材との反応、封止樹脂基材への相溶等することで増粘あるいはチキソ性を発現することが多い。従って、一般的な熱可塑剤を添加した材料においては、生産性高く狭ギャップにボイドレス充填を達成することは困難である。
【0043】
本発明に用いられるシロキサン骨格ならびに多層シリコーン粒子は、一般の熱可塑剤粒子添加の場合と比較し、封止樹脂の線膨張係数増大を抑える働きを有している。特に添加粒子のガラス転移温度点以下の領域において、従来熱可塑粒子添加の場合と比較して線膨張の増大を抑える効果が顕著であり、多層ビルドアップ配線基板と半導体素子を繋ぐはんだ接続部に生じる熱応力を緩和することで高い接続信頼性を保持することができる。
【0044】
一方、本発明に用いられる多層シロキサン骨格は、コア部分の硬度が低く、シエル部分の硬度が高い構造を取っている。
【0045】
半導体素子(LSI)の実動作温度である105℃以下においてはシエル部が線膨張を押さえることでSiO2等の無機フィラーのように線膨張の増大を抑え、リペアを必要とする温度域である180℃以上の温度域においてはシエル部が軟化し、コア部分の低硬度層の特性である低弾性が発現し、半導体素子の取り外しならびに配線基板上の樹脂残渣除去を容易にする。
【0046】
本発明に用いられる多層シロキサン骨格を有する封止樹脂材料は、半導体素子の実装プロセスにおいて用いられる有機酸、アミン、アミド、またそれらの塩、無機酸、無機塩、無機ガス等に対し、高い耐溶剤性を有する。そのため複数の半導体素子の一部をリペアする際に付着するフラックス等の有機酸、あるいは半導体素子を交換した後の洗浄に用いられる有機溶剤等、実装プロセスで受ける負荷に対し、他の半導体素子の信頼性に影響を及ぼすことがない。以上のように構造、硬度、軟化点等を制御したシロキサン骨格を有する特殊な粒子を添加することで、充填性、リペア性及び接続信頼性を両立する。
【発明の効果】
【0047】
現在基板材料に用いられている材料の大半はエポキシ樹脂である。また半導体素子と配線基板との間を封止する樹脂は、一般にエポキシ樹脂を用いたものが多い。以上のような材料を用いていることから、半導体素子あるいは配線基板側に不良が生じた場合に、例え半導体素子を熱等により除去することができたとしても、配線基板上に残る封止樹脂残さを除去しようとした際には、配線基板にダメージを与えてしまうことが多かった。
【0048】
そこで、本発明では、シロキサン骨格を持つ多層の粒子を用いることにより、従来不可能であった狭ギャップへの充填性及び接続信頼性と、封止樹脂硬化後の半導体素子の取外しならびに配線基板上に残る封止樹脂残渣の除去を両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の一実施形態としての電子部品装置の例として、複数の半導体素子(LSI)を積層したLSIパッケージを1枚のビルドアップ配線基板に半田接続し、フリップチップ実装したモジュールの例を示す。ビルドアップ配線基板とLSIパッケージの間のはんだ接続部分に本発明の封止樹脂を充填し、封止するものとする。LSIパッケージはCSP、BGA、ベアチップ等、いずれの形態でも良く特に限定されるものではない。
【0050】
半導体素子(LSI)とビルドアップ配線基板の間の電気接続を取る材料は半田材料のみに限るものではなく、導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。例えば,導電粒子を分散させた導電性樹脂接続あるいは金―半田等異種材料の接続を用いても良い。
【0051】
ビルドアップ配線基板の表面を覆っているソルダーレジスト、コア材等の配線基板を構成している有機ならびに無機材料については、金属配線、接続パッド等に対し、腐食性等の悪影響を及ぼさない材料を選択する必要がある。また、半導体素子のリペア工程に耐える耐熱性を有する事が望ましい。例えば、一般的に使用される鉛フリーはんだのリフロー温度250℃のプロセスにおいて、配線基板、半導体素子、電子部品等に対して悪影響を及ぼさないものが望ましい。
【0052】
多層シロキサン骨格を添加する封止樹脂の基材となる材料には、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、フルオレン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、シリコーン樹脂等様々な材料があるが、特に限定されるものではなく、これらを1種あるいは2種以上組み合わせて用いることもできる。粘度、コスト、耐熱性等の面に優れるエポキシ樹脂が一般に用いられるが、25℃の室温において液状である樹脂が望ましい。
【0053】
本発明に係る封止樹脂に添加するシロキサン骨格を有する多層粒子は、コア部分の硬度がシエル部分の硬度よりも低くなるように設計している。例えば、2層の粒子を用いる場合、好適なコア部の硬度は75未満であり(JISA)、シエル部の硬度は75以上であるが、より好適にはコア部の硬度を40以下に設定することが望ましい。コア部の硬度を小さく設計した場合、低弾性化の効果が大きくなりリペア性を高めることができる。
【0054】
本発明の封止樹脂に添加するシロキサン骨格を有する多層粒子は、コア部の体積比率がシエル部分の体積比率よりも高い構造となっている。具体的には、コア部の体積比率がシエル部の体積比率の1.5倍以上、より好ましくは2倍以上大きい場合に、低弾性化効果と線膨張を抑える効果がより強く現れる。
【0055】
本発明に係る封止樹脂に添加するシロキサン骨格を有する多層粒子は、シエル部のガラス転移温度がコア部のガラス転移温度よりも高い構造となっている。具体例の一つとして、コア部のガラス転移温度が80℃、封止樹脂母材が110℃、シエル部のガラス転移温度が260℃の構成で用いた場合、封止樹脂充填時の増粘がなく、また180℃を超えるリペア温度域において配線基板に損傷を与えることなく封止樹脂のクリーニングができた。
【0056】
現行の半導体素子の動作温度105℃を想定した場合の信頼性への影響、リペア時の作業性から、コア部のガラス転移温度は100℃未満かつシエル部のガラス転移温度が125℃以上であることが望ましい。コア部分のガラス転移温度点がこれ以上に高い場合にはリペア性が損なわれる傾向が強く、またシエル部分のこれ以上のガラス転移温度低下は半導体素子の熱サイクル試験に用いられる温度上限を下回るからである。こうした設計により、リペア性と信頼性の両立が実現できる。
【0057】
本発明に係る封止樹脂に加えるシロキサン骨格を有する多層粒子は球状であることが望ましく、添加量としては1〜30vol%程度が望ましい。より好ましくは、15〜25Vol%程度の添加が望ましい。球状以外の粒子添加は増粘等傾向が強く、またこれ以上の添加は粘度増加、チキソ性発現による充填性の悪化が見られる場合が多いため、半導体素子と配線基板の間の狭ギャップに対する充填性を損なうことになる。
【0058】
本発明に係る封止樹脂に添加されるシロキサン骨格を有する多層粒子の平均粒子径は、充填される半導体素子―配線基板間ギャップの1/10以下のサイズのものが好適であり、平均粒径が0.1〜30μm程度の範囲にあることが望ましい。また、シリコーン粒子の粒径、硬度等のパラメータにより低線膨張化に与える効果は異なる。例えば、同種のシリコーン原料を用いてシロキサン骨格を有する多層粒子を形成し、平均粒径0.5μmの粒度分布を有する粒子、平均粒径3μmの粒度分布を有する粒子、平均粒径5μmの粒度分布を有する粒子を封止樹脂に添加した場合の線膨張係数に与える影響においては、粒子径5μmのものに、より強く線膨張係数の増大を抑える効果が見られた。
【0059】
また、これらの無機添加剤の表面には封止樹脂との濡れ性を改善し、充填性を高めるためにカップリング剤を用いても良い。カップリング剤はシラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミネート系、クロメート系、ボレート系、スタネート系、イソシアネート系等といった共有結合性タイプのものや、β―ジケトンカプラーのように配位結合性のものなど各種用いることが出来る。
【0060】
本発明に係る封止樹脂に添加される無機フィラーには、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニウム、酸化チタン等様々な材料が用いられるが、コスト、真球度、低線膨張化等のメリットが最も顕著なシリカを用いることが多い。添加するシリカの平均粒子径は充填される半導体素子―配線基板間ギャップの1/10以下のサイズのものが好適であり、平均粒径が0.1〜30μm程度の範囲にあることが望ましい。また、これらの無機添加剤の表面には封止樹脂との濡れ性を改善し、充填性を高めるためにカップリング剤を用いても良い。カップリング剤はシラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコアルミネート系、クロメート系、ボレート系、スタネート系、イソシアネート系等といった共有結合性タイプのものや、β―ジケトンカプラーのように配位結合性のものなど各種用いることが出来る。
【0061】
次に、本発明に係る封止樹脂を用いて封止された電子部品装置をリペアする際のプロセス例について述べる。前記電子部品装置を接続材料の溶融温度付近まで加熱し、接続部が溶融した状態で電子部品装置を除去する。配線基板上に残る封止樹脂残さについては、封止樹脂のガラス転移温度付近の温度下にて、実装プロセス中で用いる洗浄溶剤等を用いながら膨潤させることにより、配線基板と封止樹脂残さの間の界面剥離を起こし、綿棒等の配線基板に傷をつけることなくクリーニングすることができる。多層ビルドアップ配線基板、リペアを行った不良半導体素子を除くその他の良品半導体素子は再生することができるため、実装コストの低減と同時に、排気資源削減による環境負荷低減を実現することができる。
【0062】
以下、本発明の作用について説明する。
【0063】
現在、配線基板材料に用いられている材料の大半はエポキシ樹脂である。この材料をビルドアップした高密度配線基板の内層には銅箔、ポリイミド、ガラスクロス等の材料が用いられている。しかし、最上層には、はんだ流れ防止目的のソルダーレジスト層が存在しており、このソルダーレジスト層は配線基板と同様にエポキシ樹脂であるものが多い。また半導体素子と配線基板との間を封止する樹脂は、一般にエポキシ樹脂を用いたものが多い。以上のような材料を用いていることから、半導体素子あるいは配線基板側に不良が生じた場合に、例え、半導体素子を熱等により除去することができたとしても、配線基板上に残る封止樹脂残さを除去しようとした際には、配線基板にダメージを与えてしまうことが多かった。そこで、本発明においては、シリコーン骨格を持つ多層の粒子を用いることにより、従来不可能であった狭ギャップへの充填性、接続信頼性と、封止樹脂硬化後の半導体素子の取り外しならびに配線基板上に残る封止樹脂残渣の除去を両立することのできる材料を提供することができる。
【0064】
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の表中に記載する有機粒子とは本発明のシロキサン骨格を有する粒子等、有機材料からなる粒子であり、無機粒子とはSiO2等の無機材料からなる粒子を示す。
【実施例1】
【0065】
エポキシ樹脂母材に対し、異なる種別の粒子を添加した封止樹脂組成物を試作した。本発明の多層シロキサン骨格を有する粒子を添加した組成A、ポリブタジエン系粒子を添加した組成B、アクリル系粒子を添加した組成C、前記の有機粒子未添加の組成Dを下記表に示す割合で混合し、その線膨張係数、弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
本発明の多層シリコーン骨格を有する粒子を添加した組成Aは、組成B,組成Cと比較し、多量の有機フィラー添加にもかかわらず、線膨張係数を増加させることがない。また、同量の無機フィラーを添加した組成Dと比較し、リペア時に必要となる弾性率を低くすることができた。耐ヒートサイクル性確保に必要な低線膨張係数と、リペア時に必要な低弾性の両方を両立させることができた。なお、表1に示す線膨張係数のデータはn3以上の繰り返し測定を行い、平均した値を記載した。
【表1】

【0067】
エポキシ樹脂母材に対し、本発明のシリコーンフィラーを下記表2に示す割合で添加し、粘弾性測定を実施した。その結果、シリコーンフィラーの添加はガラス転移温度の大幅な低下を生じさせることなく、封止樹脂の弾性率を低下させることができた。
【表2】

【0068】
本発明の同一組成からなるシリコーンフィラーを作製し、分級処理を施すことで、同一素材でありかつ平均粒径の異なるシリコーン粒子を2種準備した(表3参照)。得られた粒子を同一のエポキシ母材に添加し、線膨張係数測定を実施した。その結果、平均粒径5μmの粒子に平均粒径3μmの粒子と比較して線膨張係数増大を抑える効果が認められた。この際、シエル部の膜厚はいずれの粒径の粒子についても0.5μmとし、コア部の直径が異なる構造をとっており、コア部の体積比率がシエル部の体積比率より高い場合に線膨張係数をより低く抑える効果が認められた。
【表3】

【0069】
エポキシ樹脂母剤に対し、本発明のシリコーンフィラー及び二酸化ケイ素を混合する際、表面処理を施した組成Hと、予めシリコーンフィラー及び二酸化ケイ素に表面処理を施したものを混合した組成Iを試作し、粘度と浸透性を測定した結果を表4に示す。その結果、表面処理を施すことにより、大幅に粘度を低下させ浸透性を向上することが出来た。
【表4】

【0070】
エポキシ母剤に対し異なる種別の粒子を添加した封止樹脂組成物を試作した。本発明の多層シリコーン骨格を有する粒子を添加した組成A、多層構造を持たないシリコーンゴム粒子を添加した組成J、アクリル系粒子を添加した組成Cを下記に示す割合で混合し、その粘度、チクソトロピー指数、浸透性を測定した結果を、表5に示す。結果、多重シリコーン骨格を有する粒子を用いることにより、低粘度、低チクソトロピー指数で、浸透性を向上することが出来た。
【表5】

【0071】
以下に、複数の半導体素子を1枚のビルドアップ配線基板上に半田接続し封止したが、一部の半導体素子に不良が発生し、配線基板を傷めずに半導体素子、封止樹脂組成物を配線基板から除去する場合の実施例を示す。ビルドアップ配線基板とLSIパッケージの間のはんだ接続部分に本発明の封止樹脂組成物を充填し、封止するものとする。なお、以下の説明に用いる封止樹脂組成物の例を表6に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【表6】

【0072】
プリコート半田が形成されたビルドアップ配線基板上に、フラックスを均一に薄く塗布した。半導体素子をフリップチップマウンタにて位置あわせし、搭載した後ピーク温度250℃のリフロー炉にて半田リフローを行い、ビルドアップ配線基板と半導体素子を接続することができた。以上の搭載を複数行い、1枚のビルドアップ配線基板上に4パッケージの半導体素子を搭載した。
【0073】
得られた半導体素子搭載済みのビルドアップ配線基板をアルコール中で揺動し、半導体素子とビルドアップ配線基板間の狭ギャップに残るフラックス残さを洗浄した。洗浄を行ったギャップは約250μmであった。得られた洗浄済みパッケージを125℃のオーブン中で2時間ベーキングし、フラックス洗浄に用いたアルコールを乾燥させた。
【0074】
得られた乾燥済みパッケージをホットプレート上で加温し、ビルドアップ配線基板の表面温度が80℃であることを確認した後、樹脂塗布装置を用いて半導体素子の側面より封止樹脂組成物を供給した。この際、封止樹脂組成物は毛細管現象により半導体素子の下面を流動し、約250μmのギャップに充填することができた。以上の充填作業を繰り返し行い、1枚のビルドアップ配線基板上の複数の半導体素子を封止した。
【0075】
封止完了後、得られた封止状態を観察するため、超音波探傷装置を用いて半導体素子下面の充填状態を観察し、評価に用いたパッケージ全てがボイドなく充填完了していることを確認した。
【0076】
ところが、得られた半導体素子の電気検査を行ったところ、一部の半導体素子に導通不良が確認された。そこでその導通不良が検出された半導体素子のみを除去し、新たな良品半導体素子を再搭載することにした。
【0077】
ホットプレート上にビルドアップ配線基板を設置し、半田リフロー温度になるまで半導体素子を加熱した。所望の温度に達した半導体素子の外周部に竹ベラをいれ、支点となる部分にアルミナ板を置き、てこの原理を用いて半導体素子をビルドアップ配線基板上より引き剥がした。封止樹脂残渣の一部は半導体素子側に付着し、また一部はビルドアップ配線基板側に付着した。ビルドアップ配線基板側に付着した封止樹脂組成物の残渣を除去するため、およそ半田溶融温度に加熱されたビルドアップ配線基板上の封止樹脂組成物残渣を綿棒を用いて除去した。封止樹脂組成物残渣と配線基板表面のソルダーレジストの界面付近で封止樹脂組成物残渣が剥離し、クリーニングすることができた。溶融した半田材料とともに封止樹脂組成物残渣を除去することができた。
【0078】
ビルドアップ配線基板上の半導体素子を除去した箇所に対し、プリコート半田を再印刷し、プリコート半田形成した。その後、初回の半導体素子搭載時と同様の工程を経ることで良品パッケージを作成することができた。
【0079】
以上のようにして、封止なし、封止あり(リペアなし)、封止あり(リペアあり)の3種のパッケージを、それぞれ10セットずつ作製した。得られたパッケージを−25℃〜125℃の温度条件(各槽10分保持、中間保持なし)の温度サイクル試験槽に投入し、電気抵抗をモニターした結果、封止なしの水準は50〜400サイクルでパッケージ全数に高抵抗化不良が検出されたのに対し、封止ありのサンプル20パッケージについては、半導体素子をリペアし、再搭載したパッケージについても1500サイクルを超える耐熱サイクル信頼性を確認することができた(表7参照)。
【表7】

【0080】
信頼性試験完了後のPKGを断面観察し、半田接続部周辺の封止樹脂の充填状態を観察した。その結果、シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂硬化後においても球形を維持していることが確認できた。シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂の硬化温度において溶融せず、また、封止樹脂の母剤となるエポキシ樹脂と相溶していないことを確認した。
【0081】
その他の半導体素子実装形態として、図8に示すように、1枚のビルドアップ配線基板の両面に、複数の半導体素子が積層されたパッケージ11を実装封止し、積層された半導体素子の一部に不良が確認され、半導体素子の交換が必要になった場合の実施例を示す。ここで、ビルドアップ配線基板は、一対のビルドアップ層9とコア層10とから成る。
【0082】
複数の半導体素子を積層したパッケージ11を実装したビルドアップ配線基板を充填用冶具上におき、冶具とともにホットプレート上で加温した。ビルドアップ配線基板の表面温度が80℃であることを確認した後、樹脂塗布装置を用いて半導体素子の側面より封止樹脂組成物を供給した。この際、封止樹脂組成物は毛細管現象により半導体素子の下面を流動し、約250μmのギャップに充填することができた。以上の充填作業を繰り返し行い、1枚のビルドアップ配線基板上の半導体素子を全て封止した。
【0083】
ところが、得られた半導体素子の電気検査を行ったところ、積層された半導体素子の上段の一部に導通不良が確認された。そこで、その導通不良が検出された半導体素子のみを除去し、新たな良品半導体素子を再搭載することにした。
【0084】
ヒートガンを用いて、不良が確認された半導体素子を半導体素子側から半田リフロー温度になるまで加熱した。所望の温度に達した半導体素子の外周部より竹ベラをいれ、ビルドアップ配線基板を固定した上でスライドさせることで、不良が確認された半導体素子をビルドアップ配線基板上より引き剥がした。封止樹脂残渣の一部は半導体素子側に付着し、また一部は下段の半導体素子に付着した。
【0085】
下段の半導体素子に付着した封止樹脂組成物の残渣を除去するため、およそ半田溶融温度に加熱された下段半導体素子上の封止樹脂組成物残渣を綿棒を用いて除去した。封止樹脂組成物残渣と下段半導体素子の界面付近で封止樹脂組成物残渣が剥離し、クリーニングすることができた。溶融した半田材料とともに封止樹脂組成物残渣を除去することができた。
【0086】
信頼性試験完了後のPKGを断面観察し、半田接続部周辺の封止樹脂の充填状態を観察した。その結果、シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂硬化後においても球形を維持していることが確認できた。シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂の硬化温度において溶融せず、また封止樹脂の母剤となるエポキシ樹脂と相溶していないことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】半導体素子をビルドアップ配線基板上にフリップチップ接続し、封止樹脂を充填したパッケージの断面を示す模式図である。
【図2】半導体素子を配線基板上にワイヤボンディング接続し、封止樹脂を充填したパッケージの断面を示す模式図である。
【図3】半導体素子を配線基板上にテープオートメイティッドボンディング接続し、封止樹脂を充填したパッケージの断面を示す模式図である。
【図4】半導体素子を配線基板上にワイヤボンディング接続し、グロブトップ封止したパッケージの断面を示す模式図である。
【図5】半導体素子を配線基板上にテープオートメイティッドボンディング接続し、モールド封止したパッケージの断面を示す模式図である。
【図6】半導体素子を配線基板上にフリップチップ接続し、アンダーフィル封止したパッケージの断面を示す模式図である。
【図7】半導体素子をビルドアップ配線基板上にフリップチップ接続し、封止樹脂を充填したパッケージの断面を示す模式図である。
【図8】ビルドアップ配線基板の両面に、複数の半導体素子が積層されたパッケージを実装封止したパッケージの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体素子
2 封止樹脂
3 接続用電極パッド
4 はんだ
5 ソルダーレジスト
6 ビルドアップ配線基板
7 ワイヤ線
8 引き出し線
9 ビルドアップ層
10 コア層
11 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板上に形成された接続用電極部と配線基板上に搭載された半導体素子との接続部に生じる空隙部分を封止するための封止樹脂組成物であって、
前記封止樹脂組成物中に多層構造となる粒子を含み、多層構造となる粒子の少なくとも1層以上はシロキサン骨格を有することを特徴とする封止樹脂組成物。
【請求項2】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、封止樹脂組成物の弾性を低下させることを特徴とする請求項1に記載の封止樹脂組成物。
【請求項3】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子は、多層構造となる粒子の最外殻であるシエル部と、多層構造となる粒子に包含されるコア部とから成り、コア部がシエル部よりも硬度が低いことを特徴とする請求項2に記載の封止樹脂組成物。
【請求項4】
前記コア部及びシエル部が、シロキサン骨格で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の封止樹脂組成物。
【請求項5】
前記コア部がシリコーンゴムであり、前記シエル部がシリコーンレジンであることを特徴とする請求項2に記載の封止樹脂組成物。
【請求項6】
前記コア部のガラス転移温度が、前記シエル部分のガラス転移温度よりも低いことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項7】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子を添加する封止樹脂組成物のガラス転移温度が、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子よりも高く、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子のシエル部よりも低いことを特徴とする請求項6に記載の封止樹脂組成物。
【請求項8】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子を含む封止樹脂組成物のガラス転移温度が、80℃以上であることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項9】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子が、球状であることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項10】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の表面に対して、界面活性剤による表面処理が行われていることを特徴とする請求項2〜9のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項11】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の平均粒径が、1〜30μmであることを特徴とする請求項2〜10のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項12】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の平均粒径が、5〜15μmであることを特徴とする請求項11に記載の封止樹脂組成物。
【請求項13】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の添加量が、1〜30Vol%であることを特徴とする請求項2〜12のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項14】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子の添加量が、15〜25Vol%であることを特徴とする請求項13に記載の封止樹脂組成物。
【請求項15】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子を添加した封止樹脂組成物が、前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子未添加の封止樹脂組成物と比較し、ガラス転移温度点以下の温度領域で線膨張係数が低いことを特徴とする請求項2〜14のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項16】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子が、母材封止樹脂と相溶性を持たないことを特徴とする請求項2〜15のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項17】
前記シロキサン骨格を少なくとも1層以上有する多層構造となる粒子が、封止樹脂硬化後に溶融しないことを特徴とする請求項2〜16のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項18】
前記封止樹脂組成物が、平均粒径10μm以下の球状の無機充填剤を含むことを特徴とする請求項2〜17のいずれかに記載の封止樹脂組成物。
【請求項19】
前記無機充填剤は球状シリカであることを特徴とする請求項18に記載の封止樹脂組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の封止樹脂組成物を含む電子部品装置。
【請求項21】
配線基板に形成された接続用電極部と配線基板上に搭載され、複数の半導体素子を積層した際に生じる接続部の空隙部分の少なくとも1つ以上を請求項1〜19のいずれかに記載の封止樹脂組成物で封止することを特徴とする電子部品装置。
【請求項22】
配線基板の両面に形成された接続用電極部と配線基板上に両面に搭載された半導体素子の接続部に生じる空隙部分の少なくとも1つ以上の空隙を請求項1〜19のいずれかに記載の封止樹脂組成物で封止することを特徴とする電子部品装置。
【請求項23】
配線基板の両面に形成された接続用電極部と配線基板上に搭載され、複数の半導体素子を積層した際に生じる接続部の少なくとも1つ以上の空隙部分を請求項1〜19のいずれかに記載の封止樹脂組成物で封止することを特徴とする電子部品装置。
【請求項24】
配線基板上に搭載された複数の半導体素子の少なくとも一つを取外し可能にした半導体素子のリペア方法であって、
配線基板上に形成された接続用電極部と上記半導体素子との接続部に生じる空隙部分を封止するための封止樹脂組成物としてシロキサン骨格を持つ多層の粒子を含む組成物を用いることにより、封止樹脂硬化後の半導体素子の取外し及び配線基板上に残る封止樹脂残渣の除去を行うことを特徴とする半導体素子のリペア方法。
【請求項25】
前記シロキサン骨格を持つ多層の粒子は、多層構造となる粒子の最外殻であるシエル部と、多層構造となる粒子に包含されるコア部とから成り、コア部がシエル部よりも硬度が低いことを特徴とする請求項24に記載の半導体素子のリペア方法。
【請求項26】
リペアを必要とする温度域においては前記シエル部分が軟化すると共に前記コア部分の弾性が低下し、これにより半導体素子の取外し及び配線基板上の樹脂残渣除去が促進されることを特徴とする請求項25に記載の半導体素子のリペア方法。
【請求項27】
前記リペアを必要とする温度域は、180℃以上の温度域であることを特徴とする請求項26に記載の半導体素子のリペア方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−257295(P2006−257295A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77742(P2005−77742)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】