説明

封止用樹脂組成物および半導体封止装置

【課題】リードフレームとの密着性に優れ、流動性、成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性に優れ、長期間に渡って信頼性を確保することのできる封止用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)ポリカルボジイミド化合物、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイル、(E)無機質充填剤、および(F)硬化促進剤を必須成分として含有する封止用樹脂組成物であって、前記封止用樹脂組成物全体に対して前記(C)ポリカルボジイミド化合物を0.01重量%以上3重量%以下、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルを0.01重量%以上2重量%以下含有することを特徴とする封止用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物および半導体封止装置に係り、特に密着性、流動性、成形性、半田耐熱性、耐湿性に優れる封止用樹脂組成物、およびこれを用いた半導体封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などを機械的、化学的作用から保護するために、封止用樹脂組成物が開発されている。近年、ICは高集積化に伴う大型化、多極化が進む一方で、パッケージの外径寸法は小型化している。このため、市場に大きなニーズのある表面実装対応デバイス用には高い半田耐熱性が要求される。
【0003】
半田耐熱性について重要なことは、パッケージ内部の各種の部材に対する密着力と、樹脂組成物自体の強度の向上である。そこで、封止用樹脂組成物については、高密着化、高強度化のために無機質充填剤の高充填化、密着性付与剤の添加等が行われている。
【0004】
しかし、このような場合、成形時に不具合が発生しやすくなる。例えば、外部巣、内部巣の増加、ボンディングワイヤの変形、薄型パッケージにおける充填性不足が挙げられる。また、半導体組立工程削減のため、事前にメッキを施したフレームを用いてモールドする手法が採られているが、従来の密着性付与剤ではリードフレームヘの接着力が不足する事態が生じる。
【0005】
このような課題を解決するために、例えば特定の密着性付与剤と、エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルとを含有させることで、実装時の半田耐熱性を維持しつつ、流動性、成形性も良好で、リードフレームに対する接着力も良好なものとすることが知られているが(例えば、特許文献1参照)、Niメッキフレームとの密着性が低く、用いる触媒による密着性の依存性も強く、改善の余地が多い。
【特許文献1】特開2002−249548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
封止用樹脂組成物については、これまで以上にリードフレームとの密着性、流動性、成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性等の向上が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであって、リードフレームとの密着性に優れ、流動性、成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性に優れ、長期間に渡って信頼性を確保することのできる封止用樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明はこのような封止用樹脂組成物を用いた長期間に渡って信頼性を確保することのできる半導体封止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリカルボジイミド化合物とエポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルとを所定量含有させることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)ポリカルボジイミド化合物、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイル、(E)無機質充填剤、および(F)硬化促進剤を必須成分として含有する封止用樹脂組成物であって、前記封止用樹脂組成物全体に対して前記(C)ポリカルボジイミド化合物を0.01重量%以上3重量%以下、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルを0.01重量%以上2重量%以下含有することを特徴とする。
【0011】
前記(D)変性シリコーンオイルは、例えば下記(1)〜(4)の一般式で示されるエポキシ変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のエポキシ変性シリコーンオイルを含むことが好ましい。
【0012】
【化1】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、mは0または1以上の整数、nは1以上の整数を表す。)
【0013】
【化2】

(但し、式中、R、Rはそれぞれ任意の2価の炭化水素基、pは0または1以上の整数を表す。)
【0014】
【化3】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、Rは任意の1価の炭化水素基、qは0または1以上の整数を表す。)
【0015】
【化4】

(但し、式中、R、Rはそれぞれ任意の2価の炭化水素基、rは0または1以上の整数を表す。)
【0016】
また、 前記(D)変性シリコーンオイルは、例えば下記(5)〜(7)の一般式で示されるアミノ変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のアミノ変性シリコーンオイルを含むことが好ましい。
【0017】
【化5】

(但し、式中、sは0または1以上の整数を表す。)
【0018】
【化6】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、tは0または1以上の整数、uは1以上の整数を表す。)
【0019】
【化7】

(但し、式中、R、R10はそれぞれ任意の2価の炭化水素基、vは0または1以上の整数、wは1以上の整数をそれぞれ表す。)
【0020】
また、本発明の半導体封止装置は、封止用樹脂組成物の硬化物によって半導体チップが封止されてなる半導体封止装置であって、前記封止用樹脂組成物が上記した本発明の封止用樹脂組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、特にポリカルボジイミド化合物と、エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルとを含有することで、リードフレームとの密着性に優れ、流動性、成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性にも優れ、長期間に渡って信頼性を確保することのできる封止用樹脂組成物を提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、このような封止用樹脂組成物を用いて半導体チップを封止することで、長期間に渡って信頼性を確保することのできる半導体封止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)ポリカルボジイミド化合物、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイル、(E)無機質充填剤、および(F)硬化促進剤を必須成分として含有する封止用樹脂組成物であって、封止用樹脂組成物全体に対して(C)ポリカルボジイミド化合物を0.01重量%以上3重量%以下、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルを0.01重量%以上2重量%以下含有することを特徴とする。
【0024】
(A)成分のエポキシ樹脂は、その分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物であり、分子構造および分子量等は特に制限されるものではなく、一般に封止用材料として使用されるものを広く使用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えばノボラック系エポキシ樹脂、ビフェニル系エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
(B)成分のフェノール樹脂は、(A)成分のエポキシ樹脂と反応し得るフェノール性水酸基を2個以上有する化合物であり、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として用いられているものであれば、特に制限なく使用することができる。このようなフェノール樹脂としては、例えばアラルキル型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(B)成分のフェノール樹脂の含有量は、(A)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基数に対する(B)成分のフェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比(フェノール性水酸基数/エポキシ基数)が0.5以上1.5以下の範囲となるようにすることが好ましい。上記比が0.5未満では硬化反応が十分に起こりにくくなるおそれがあり、上記比が1.5を超えると、硬化物の特性、特に耐湿性が十分でなくなるおそれがある。
【0027】
(C)成分のポリカルボジイミド化合物は、(D)成分の変性シリコーンオイルと併せて、リードフレームとの密着性や、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性を向上させるために用いられる。ポリカルボジイミド化合物は、分子中に2個以上のカルボジイミド結合を有するものであり、例えば下記式に示すような少なくとも1種の繰り返し単位を有する単独重合体または共重合体が包含される。ここで、下記式中のzは、密着性、耐熱性の向上、反応適合性の観点から、3以上200以下であることが好ましい。
【0028】
−(N=C=N−R)
(但し、式中、Rはイソシアネート残基を示し、zは1以上の整数を示す。)
【0029】
ポリカルボジイミド化合物を得るための方法としては特に限定されるものではないが、例えば有機ポリイソシアネートを、そのイソシアネート基を脱炭酸させつつ縮合させる方法により得ることができ、この脱炭酸縮合反応に用いられるイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが好ましく、例えばフェニレン−1,3−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート等を例示することができ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、有機ポリイソシアネートのカルボジイミド化反応に用いるカルボジイミド重合化剤としては、例えば1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−フェニル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−ホスホレン−1−オキシド、1−エチル−2−ホスホレン−1−スルフィド、1,3−ジメチル−2−ホスホレン−1−スルフィド等のホスホレン化合物;ペンタカルボニル鉄、ノナカルボニル鉄、ヘキサカルボニルタンブステン等の金属カルボニル錯体;鉄、アルミニウム、クロム、ジルコニウム等のアセチルアセトナイト錯体;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等の燐酸エステル等を挙げることができる。
【0031】
なお、ポリカルボジイミド化合物としては、市販されているものを好適に使用することができ、例えば日清紡社製の商品名V−01,V−03,V−05,V−07,V−09等を好適に使用することができる。
【0032】
このようなポリカルボジイミド化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリカルボジイミド化合物の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.01重量%以上3重量%以下である。ポリカルボジイミド化合物の含有量が0.01重量%未満であると密着性を向上させる効果が十分でない。一方、ポリカルボジイミド化合物の含有量が3重量%を超えると、リードフレームとの密着性には優れるものの、その他の特性、例えば流動性、成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性等が低下する。ポリカルボジイミド化合物のより好ましい含有量は封止用樹脂組成物全体に対して0.1重量%以上2重量%以下、さらに好ましい含有量は0.1重量%以上1重量%以下である。
【0033】
(D)成分の変性シリコーンオイルは、(C)成分のポリカルボジイミド化合物と併せて、半導体封止装置におけるリードフレームとの密着性や、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性を向上させるために用いられる。変性シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイルまたはアミノ変性シリコーンオイルが挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。エポキシ変性シリコーンオイルは、例えばグリシジルタイプ、脂環式タイプのエポキシ基をもつものである。また、アミノ変性シリコーンオイルは、例えばアミノプロピル基またはN−(2−アミノエチル)アミノプロピル基をもつものである。
【0034】
エポキシ変性シリコーンオイルとしては、例えば下記(1)〜(4)の一般式で示されるエポキシ変性シリコーンオイルを用いることができ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
【化8】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、mは0または1以上の整数、nは1以上の整数を表す。)
【0036】
なお、一般式(1)中のm、nは、それぞれ1≦m≦10、1≦n≦10であることが好ましい。また、Rは、炭素数1〜10の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0037】
【化9】

(但し、式中、R、Rはそれぞれ任意の2価の炭化水素基、pは0または1以上の整数を表す。)
【0038】
なお、一般式(2)中のpは、1≦p≦10であることが好ましい。また、R、Rは、それぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0039】
【化10】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、Rは任意の1価の炭化水素基、qは0または1以上の整数を表す。)
【0040】
なお、一般式(3)中のqは、1≦q≦10であることが好ましい。また、Rは炭素数1〜10の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基であることが好ましく、Rは炭素数1〜10の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基であることが好ましい。
【0041】
【化11】

(但し、式中、R、Rはそれぞれ任意の2価の炭化水素基、rは0または1以上の整数を表す。)
【0042】
なお、一般式(4)中のrは、1≦r≦10であることが好ましい。また、R、Rは、それぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0043】
また、アミノ変性の変性シリコーンオイルとしては、例えば下記(5)〜(7)の一般式で示されるアミノ変性シリコーンオイルを用いることができ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
【化12】

(但し、式中、sは0または1以上の整数を表す。)
【0045】
なお、一般式(5)中のsは、1≦s≦10であることが好ましい。
【0046】
【化13】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、tは0または1以上の整数、uは1以上の整数を表す。)
【0047】
なお、一般式(6)中のt、uは、それぞれ1≦t≦10、1≦u≦10であることが好ましい。また、Rは、炭素数1〜10の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0048】
【化14】

(但し、式中、R、R10はそれぞれ任意の2価の炭化水素基、vは0または1以上の整数、wは1以上の整数を表す。)
【0049】
なお、一般式(7)中のv、wは、それぞれ1≦v≦10、1≦w≦10であることが好ましい。また、R、R10は、それぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換の2価の炭化水素基であることが好ましい。
【0050】
変性シリコーンオイルの含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.01重量%以上2重量%以下である。変性シリコーンオイルの含有量が0.01重量%未満であると密着性を向上させる効果が十分でない。一方、変性シリコーンオイルの含有量が2重量%を超えると、リードフレームとの密着性には優れるものの、その他の特性、例えば流動性・成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性等が低下する。変性シリコーンオイルのより好ましい含有量は封止用樹脂組成物全体に対して0.1重量%以上1重量%以下、さらに好ましい含有量は0.1重量%以上0.5重量%以下である。
【0051】
(E)成分の無機質充填剤としては、一般的な封止用樹脂組成物に使用されている無機質充填剤を広く使用することができるが、これらの中でも不純物濃度が低く、平均粒径30μm以下のシリカ粉末を好適に使用することができる。平均粒径が30μmを超えると耐湿性および成形性が劣り好ましくない。無機質充填剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して25重量%以上95重量%以下とすることが好ましい。無機質充填剤の含有量が25重量%未満では、封止用樹脂組成物の吸湿率が大きくなり、半田浸漬後の耐湿性が十分でないおそれがある。また、無機質充填剤の含有量が95重量%を超えると、極端に流動性が低下し、成形性に劣るおそれがある。
【0052】
(F)成分の硬化促進剤としては、DBU系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、その他の硬化促進剤を広く使用することができ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.01重量%以上5重量%以下とすることが望ましい。硬化促進剤の含有量が0.01重量%未満では、封止用樹脂組成物のゲルタイムが長くなり、硬化特性も十分でないおそれがある。また、硬化促進剤の含有量が5重量%を超えると、封止用樹脂組成物の流動性が極端に低下して成形性に劣ると共に、電気特性や耐湿性にも劣るものとなり好ましくない。
【0053】
本発明の封止用樹脂組成物は、上記した(A)成分のエポキシ樹脂、(B)成分のフェノール樹脂、(C)成分のポリカルボジイミド化合物、(D)成分のエポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイル、(E)成分の無機質充填剤、および(F)成分の硬化促進剤を必須成分として含有する他、必要に応じて、かつ本発明の目的に反しない限度において、例えば天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン類等の離型剤、三酸化アンチモン等の難撚剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シランカップリング剤、ゴム系やシリコーン系の低応力付与剤等を適宜、含有させることができる。
【0054】
本発明の封止用樹脂組成物を成形材料として調製する場合の一般的な方法としては、上記した(A)成分のエポキシ樹脂、(B)成分のフェノール樹脂、(C)成分のポリカルボジイミド化合物、(D)成分のエポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイル、(E)成分の無機質充填剤、および(F)成分の硬化促進剤、また必要に応じてその他の成分を所定の含有割合となるように配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、さらに熱ロールによる溶融混合処理またはニーダ等による混練処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕する方法が挙げられる。このようにして得られる成形材料は、半導体装置をはじめとする各種の電子部品あるいは電気部品の被覆、絶縁等に適用することで、優れた特性と信頼性とを付与することができる。
【0055】
本発明の半導体封止装置は、上記した封止用樹脂組成物を用いて半導体チップを封止することにより容易に製造することができる。封止を行う半導体チップとしては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等が挙げられ、特に限定されるものではない。封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形が挙げられるが、射出成形、圧縮成形、注型等による封止も可能である。
【0056】
封止用樹脂組成物は封止の際に加熱して硬化させることで、最終的にこの硬化物によって封止された半導体封止装置を得ることができる。加熱による硬化は、150℃以上で行うことが好ましい。また、チップを搭載する基板としては、セラミックス、プラスティック、ポリイミドフィルム、リードフレーム等が挙げられるが、必ずしもこれらのものに限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を参照して具体的に説明する。
なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1〜4、比較例1〜6)
下記表1に示すように、各成分を所定の割合で配合、混合し、実施例および比較例の封止用樹脂組成物としての成形材料を製造した。ここで、比較例1、2はそれぞれポリカルボジイミド化合物あるいは変性シリコーンオイルを含まないもの、比較例3、4はそれぞれポリカルボジイミド化合物あるいは変性シリコーンオイルの含有量が過度に多いもの、比較例5はポリカルボジイミド化合物、変性シリコーンオイルの両者を含まないもの、比較例6はポリカルボジイミド化合物を含まず、変性シリコーンオイルと密着付与剤とを含むものである。なお、表1中、各成分の配合割合は重量%で示した。
【0059】
このようにして製造された実施例および比較例の成形材料について、下記に示す試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0060】
(スパイラルフロー)
実施例および比較例の成形材料について、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。
【0061】
(ゲルタイム)
実施例および比較例の成形材料について、175℃に保たれた熱盤上に一定量を直径4〜5cmの円状に広げて一定速度で練り合わせ、成形材料がゲル化するまでの時間を計測した。
【0062】
(接着強度)
成形材料を用いて180℃、1分間の条件でトランスファー成形によって接着面積4mmの成形品を作製し、175℃で8時間の後硬化を行った後、剪断接着力を求めた。
【0063】
(耐リフロー性)
成形材料を用いて180℃、1分間の条件で10mm×10mmの評価用素子を封止し、175℃で8時間アフターキュアを行って評価用パッケージとした。次いで、この評価用パッケージ16個を85℃、相対湿度70%の雰囲気中に168時間放置して吸湿処理を行った後、最高温度260℃のIRリフロー炉に3回通した。この時点で評価用パッケージにおけるクラック発生数を調べた。さらに、このIRリフロー後の評価用パッケージをプレッシャークッカー装置内で127℃の飽和水蒸気雰囲気中に100〜1000時間放置して不良発生数を調べた。結果は、両者を合わせて不良数とし、試料数に対する割合で示した。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、ポリカルボジイミド化合物と変性シリコーンオイルとを所定の範囲内で含有する実施例の封止用樹脂組成物は、Niをはじめとするリードフレームとの密着性に優れ、流動性、成形性、実装時の半田耐熱性、実装後の耐湿性にも優れ、長期間に渡って信頼性を確保できることがわかる。一方、これらの少なくとも一方を含有せず、また含有するとしても含有量が過度に多い比較例の封止用樹脂組成物は、全体的にリードフレームとの密着性が低下する傾向にあり、その他の特性、例えば半田耐熱性、耐湿性等についても低下する傾向にあることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)ポリカルボジイミド化合物、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイル、(E)無機質充填剤、および(F)硬化促進剤を必須成分として含有する封止用樹脂組成物であって、
前記封止用樹脂組成物全体に対して前記(C)ポリカルボジイミド化合物を0.01重量%以上3重量%以下、(D)エポキシ変性またはアミノ変性の変性シリコーンオイルを0.01重量%以上2重量%以下含有することを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)変性シリコーンオイルは、下記(1)〜(4)の一般式で示されるエポキシ変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のエポキシ変性シリコーンオイルを含むことを特徴とする請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【化1】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、mは0または1以上の整数、nは1以上の整数を表す。)
【化2】

(但し、式中、R、Rはそれぞれ任意の2価の炭化水素基、pは0または1以上の整数を表す。)
【化3】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、Rは任意の1価の炭化水素基、qは0または1以上の整数を表す。)
【化4】

(但し、式中、R、Rはそれぞれ任意の2価の炭化水素基、rは0または1以上の整数を表す。)
【請求項3】
前記(D)変性シリコーンオイルは、下記(5)〜(7)の一般式で示されるアミノ変性シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のアミノ変性シリコーンオイルを含むことを特徴とする請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【化5】

(但し、式中、sは0または1以上の整数を表す。)
【化6】

(但し、式中、Rは任意の2価の炭化水素基、tは0または1以上の整数、uは1以上の整数をそれぞれ表す。)
【化7】

(但し、式中、R、R10はそれぞれ任意の2価の炭化水素基、vは0または1以上の整数、wは1以上の整数を表す。)
【請求項4】
封止用樹脂組成物の硬化物によって半導体チップが封止されてなる半導体封止装置であって、
前記封止用樹脂組成物が請求項1乃至3のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物であることを特徴とする半導体封止装置。

【公開番号】特開2010−144121(P2010−144121A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325411(P2008−325411)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】