射出成形方法及び射出成形装置
【課題】圧力センサの位置を厳密に選定する必要なく従来の金型の構成を殆ど変えることなく、再現性、安定性の高い射出成形方法と装置を提供する。
【解決手段】射出装置1が金型2、3内に溶融樹脂を射出する前に金型の温度を加熱昇温し、キャビティ4近傍の温度センサ28により測定された金型の温度が加熱目標温度に達した時点または加熱開始からのタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、一方、金型の加熱途中または加熱終了後に射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、圧力センサ17により測定した金型内の圧力が入力装置により設定された型内圧力値となるように射出圧力を制御し、充填中または充填後に金型の温度を降温し、キャビティ近傍に備えた温度センサにより測定された金型の温度が、冷却目標温度に達した時点または金型を冷却開始からのタイマーがタイムアップした時点で冷却を終了する。
【解決手段】射出装置1が金型2、3内に溶融樹脂を射出する前に金型の温度を加熱昇温し、キャビティ4近傍の温度センサ28により測定された金型の温度が加熱目標温度に達した時点または加熱開始からのタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、一方、金型の加熱途中または加熱終了後に射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、圧力センサ17により測定した金型内の圧力が入力装置により設定された型内圧力値となるように射出圧力を制御し、充填中または充填後に金型の温度を降温し、キャビティ近傍に備えた温度センサにより測定された金型の温度が、冷却目標温度に達した時点または金型を冷却開始からのタイマーがタイムアップした時点で冷却を終了する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の射出プランジャまたはスクリュの前進により金型のキャビティに溶融樹脂を射出成形するときの型内圧制御に関し、特に成形樹脂射出前に金型を加熱することにより金型内部における樹脂の流動を良好にして型内圧制御を容易にする成形方法と、この成形方法を用いることができる射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す従来例の射出成形方法は、射出成形機を用いて射出成形を行う場合、速度波形パターンに基づいた定常充填工程に間は、型内圧の変化量と射出圧力の変化量との比が所定範囲から逸脱して基準変動速度比を下回った際に、また、圧力波形パターンに基づいた型内圧制御工程の間は、型内圧が所定の型内圧下限値を下回った際に、それぞれ、型内圧センサの検出異常とみなして射出ユニットを停止させる。この射出成形方法を用いれば、型内圧の異常な上昇を簡易な構成方法で確実に防止可能であり、かつ、金型破損等のトラブルを未然に回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4127339号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された従来例の型内圧波形制御は、高速射出充填時のバリ防止、重量安定化を目的として使用されるが、通常、金型温度は冷却に十分なだけ低い温度(例えば、熱変形温度より低い温度)に設定されているため、射出充填中に樹脂の温度が下がる。結晶性樹脂での成形の場合は冷却により結晶化温度付近では結晶化により樹脂の粘度が急激に上昇する。また非晶性で且つ粘度が1×103Pa・S以上である高粘度な樹脂成形の場合は流動により圧力損失が大きい。このような樹脂を成形する場合で、成形品形状に局部的に薄肉部が在る場合は、その薄肉部分の固化が他の部分の固化より進み、樹脂流動が減少するなどして、流動圧損が大きくなるなどにより、金型内部の圧力分布が不均一になり成形品の厚さの変動や表面にフローマーク、凹凸、ウェルド等の欠陥を生じる虞がある。そのため、再現性の高い、安定した制御が可能な圧力センサの領域は非常に狭い。よって圧力センサの適正な位置を見つけるための長い時間や多大な労力を要するという問題点がある。
【0005】
本発明は、圧力波形パターンに基づいた型内圧制御による射出成形方法において、圧力センサの位置を厳密に選定する必要なく従来の金型の構成を殆ど変えることなく、再現性、安定性の高い射出成形方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点に対し、本発明は以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段の射出成形方法は、金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達した時点、または金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により設定された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達した時点、または金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする。
【0007】
第1の手段の射出成形方法により、樹脂の射出充填時の金型温度を高温に保つことにより、薄肉部でも樹脂の粘度上昇、および冷却固化を遅らせることができ、充填圧力伝搬を良好に保つことが出来るので、型内圧分布を単純一様にすることが可能となる。また、充填中の樹脂の固化速度が遅くなるので、万一、圧縮性流体である溶融樹脂に圧力伝播の遅れが生じて、型内圧フィードバック制御のための圧力検知が遅れても、圧力フィードバック補正制御指令は、樹脂の固化が進行する前に出すことができる。
【0008】
(2)第2の手段の射出成形方法は、上記(1)の射出成形方法において、前記金型が、樹脂流動圧が低下するような薄肉部を有する金型であることを特徴とする。
【0009】
(3)第3の手段の射出成形方法は、上記(2)の射出成形方法において、充填中または充填完了まで、少なくとも前記薄肉部の温度を、樹脂の流動開始温度以上に維持することを特徴とする。
【0010】
(4)第4の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(3)のいずれか一つの射出成形方法において、前記射出プランジャまたはスクリュの前進が電動モータを駆動源とする射出装置であることを特徴とする。
【0011】
(5)第5の手段の射出成形方法は、上記(4)の射出成形方法において、前記電動モータの減速時に発生する回生電力を前記金型加熱冷却装置に供給することを特徴とする。
【0012】
(6)第6の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(5)のいずれか一つの射出成形方法において、前記型内圧センサにより測定された型内圧プロファイルと前記キャビティ近傍に備えた温度センサにより測定された金型の温度プロファイルを表示装置に同一の画面で表示して、樹脂の射出充填により高温の樹脂が金型内に流入して金型温度が上昇するタイミングと温度上昇量を、型内圧力の変化と比較することにより、成形条件の妥当性を評価することを特徴とする。
特に前記比較のために、測定した前記型内圧プロファイルと、前記金型の温度プロファイルは、共有した時間軸を横軸とし、且つそれぞれの値を縦軸とした同一グラフ上に重ね書きすることが好ましい。
【0013】
(7)第7の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(6)のいずれか一つの射出成形方法において、前記樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする。
結晶性樹脂は冷却固化時に結晶化温度付近で急激に粘度上昇が発生し、流動状態を維持できなくなり、急激に圧力伝搬性が悪くなる。この為、金型の温度を結晶化温度よりも十分高温である流動開始温度以上にすることで、樹脂を流動状態に保つことができ、圧力伝搬を良好に保つことにより、型内の圧力分布を単純一様にできるので、冷却時の制御目標温度値の選定が容易となる利点がある。
【0014】
(8)第8の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(6)のいずれか一つの射出成形方法において、前記樹脂粘度が1×103Pa・S以上である高粘度の非晶性樹脂であることを特徴とする。
粘度が1×103Pa・S以上である高粘度の非晶性樹脂は、結晶性樹脂のように温度によって急激な粘度の変化はないが、高粘度であるので流動時に薄肉部などでは急激な圧力損失を発生し、圧力伝搬性が悪くなる。この為、金型の温度を樹脂が十分な流動状態が得られる流動開始温度以上にすることで、樹脂を流動状態に保つことができ、圧力伝搬を良好に保つことにより、型内の圧力分布を単純一様にできるので、冷却時の制御目標温度値の選定が容易となる利点がある。
【0015】
(9)第9の手段の射出成形方法は、金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達し、かつ、金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達し、かつ、金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする。
【0016】
(10)第10の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(9)のいずれか一つの射出成形方法において、前記冷却媒体供給の開始のタイミングが、前記加熱媒体の供給終了時点または加熱媒体供給終了と同時にスタートするタイマーのカウントアップ時点と、射出プランジャまたはスクリュが所定の位置に到達した時点と、キャビティの所定位置の圧力が予め定めた所定の圧力値に達した時点の、少なくとも1つを選択して、前記冷却媒体供給の開始のタイミングとすることを特徴とする。
【0017】
(11)第11の手段の射出成形装置は、金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機であって、更に、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置と、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御する制御装置をも備え、上記(1)〜(10)のいずれか一つの射出成形方法を実施する制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜請求項3、請求項9〜10、請求項11に係わる発明は、上記第1〜第3、第10の手段の成形方法、第11の手段の成形装置であり、成形品の肉厚分布にかかわらず、充填中の金型内樹脂を溶融状態に保てるので、冷却によるスキン層(成形品表層の固化層)の成長により有効樹脂流路が狭くなることが無くなり、型内の樹脂圧力分布が単純になり、かつ、再現性の高い圧力分布が得られるため、適正な型内圧センサ位置の範囲が広くなるので、型内圧センサの取付け位置の決定が容易となる。特に流動圧力損失が大きくなる薄肉部を局部的に有する金型において有効である。また金型の温度センサを複数設けた場合は、温度が所定の温度に達していない箇所の有無など型内の温度ムラの有無を確認でき、樹脂流動の圧力損失に影響を与える箇所の温度が低い場合は、当該箇所を選定、かつ基準にして金型の加熱工程を制御することが出来る。
【0019】
請求項4及び請求項5に係わる発明は、上記第4及び第5の手段の成形方法であり、射出動作(射出スクリュの前進動作)の減速時、あるいは可塑化動作(射出スクリュの回転動作)の減速時に回生電力が発生するが、型内圧波形制御により型内樹脂流動状態の高い再現性が得られるので、ショット毎の回生電力のバラツキを抑制することができる。この回生電力をエネルギー消費の大きい加熱冷却媒体供給装置の使用電力に供給することによって、成形のために消費されるエネルギーを安定して低減させることができる。
【0020】
請求項6に係わる発明は、上記第6の手段の発明であり、型内圧と金型温度が同じ成形工程の時系列で表示されるので、型内圧波形制御のための設定値と、加熱冷却制御の温度設定値、及び射出工程(射出速度または射出圧力)や金型の加熱工程と冷却工程の切り換えタイミングの選定の妥当性評価に有効であり、更に、外乱に強く、かつ、金型加熱エネルギー及び圧力充填エネルギーを低減できる設定値と、型内圧センサ位置を決定することが容易である。
【0021】
請求項7及び8に係わる発明は、上記第7及び第8の手段の成形方法であり、温度低下によって樹脂の結晶化が起こり、圧力の伝搬性が急激に低下する結晶性樹脂、および流動圧力損失の大きい高粘度の非晶性樹脂に有効である。更に、充填中又は充填後に金型を強制的に冷却することにより、ハイサイクルな成形工程が可能である。また、型内圧制御により樹脂の固化前に樹脂圧を切換え、型内の樹脂にその圧力を充分に伝播させることが可能であり、型内圧のフィードバック制御がやり易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる油圧射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図である。
【図2】図1の金型加熱冷却制御回路に備えられた金型温度と型内圧制御装置の制御要素を示すブロック図である。
【図3】図1の金型加熱冷却回路を用いた第1の実施の形態の成形手順を示す工程図である。
【図4】図1の金型加熱冷却回路を用いた第2の実施の形態の成形手順を示す工程図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる電動射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図である。
【図6】図1の金型加熱冷却回路を用いた第3の実施の形態の成形手順を示す工程図である。
【図7】図2の制御要素を示すブロック図に備えられた表示装置に1サイクルの金型温度と射出時の型内圧とを同じ時系列で表示した一例である。
【図8】従来の金型による型内圧力分布を示した模式図である。
【図9】図8におけるA部の詳細を示した模式図である。
【図10】本発明による型内圧力分布を示した模式図である。
【図11】図10におけるB部の詳細を示した模式図である。
【図12】従来の金型において異なる箇所に配置された各型内圧センサが検知した型内圧プロファイルを示した模式図である。
【図13】本発明において異なる箇所に配置された各型内圧センサが検知した型内圧プロファイルを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
金型の加熱冷却制御が可能な射出成形機を使用して、金型の加熱と冷却を行いながら射出充填後の保圧工程において型内圧が略一定になるように制御しながら成形する加熱冷却媒体回路の温度制御方法と、型内圧制御方法とを併用するときの温度制御方法を3形態説明する。この実施の形態で図示した金型は、型開閉と型締等の図は省き、射出ユニットと加熱媒体回路の構成と作用方法について図示説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる油圧射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図、図2は図1の金型加熱冷却制御回路に備えられた金型温度と型内圧制御装置の制御要素を示すブロック図、図3は図1の金型加熱冷却回路を用いた第1の実施の形態の成形手順を示す工程図、図5は本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる電動射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図である。
【0025】
図1において、射出成形装置1は、所望の形状の成形品を得るための可動金型2及び固定金型3を備える。可動金型2は、型締装置の可動盤(図示せず)に固定されており、固定金型3は、型締装置の固定盤(図示せず)に固定されている。この射出成形装置1を用いて樹脂製品を製造する際には、図示しない型締シリンダを作動させ、可動盤2と固定盤3を型締めする。これにより、可動金型2と固定金型3とでキャビティ4が形成される。
【0026】
図1に示すように、固定金型3には、いわゆる、インラインスクリュ形式の射出ユニット5に含まれる射出シリンダ(加熱シリンダ)6が接続されている。可動金型2と固定金型3とで形成されるキャビティ4内には、射出ユニット5からゲートGを介して溶融樹脂を射出注入することができる。射出シリンダ6は、ユニット本体7から延出されており、その内部には、射出スクリュ8が配されている。射出スクリュ8には、連結軸9が接続されており、この連結軸9は、ユニット本体7の側方(図中右側)に配置されたスクリュ回転モータ10の回転軸に接続されている。スクリュ回転モータ10は、ユニット本体7に対してスライド自在に取り付けられている。
【0027】
また連結軸9には、ピストン11が固定されており、このピストン11は、シリンダ7a内に位置する。シリンダ7aには、供給側と戻り側がそれぞれ油圧配管12を介してサーボバルブ14、油圧ポンプ15に接続されている。これにより、油圧ポンプ15からサーボバルブ14、油圧配管12を介してシリンダ7aに作動油を供給すれば、ピストン11を介して射出スクリュ8を前進又は後退させることができる。このように、ピストン11とシリンダ7aとは、射出用油圧シリンダとして機能する。サーボバルブ14と油圧ポンプ15との間には、リリーフ弁16が配されている。
【0028】
油圧配管12には、射出用油圧力を検出する圧力センサ17が備えられている。この圧力センサ17で検出された油圧力は射出シリンダ6における射出圧力Phに比例するものである。また、射出ユニット5には、射出スクリュ8の移動量を検出するスクリュ移動量センサ18が設けられている。スクリュ移動量センサ18は、連結軸9に固定された被検出体を介して、射出スクリュ8の原点位置からの移動量を電気的、磁気的又は光学的に検出するものである。
【0029】
更に、可動金型2にはゲートG近傍におけるキャビティ4内の溶融樹脂の型内圧PMを検出する型内圧センサ19が設けられている。即ち、可動金型2には片端がキャビティ4に連通する流路2bが形成され、型内圧センサ19はゲートGの近傍から流路2bに流入する溶融樹脂の圧力を型内圧PMとして検出する。また、可動金型2にはキャビティ4の壁の温度Tを検出する型内樹脂温度センサ28が設けられている。2a、3aはパイプマニホールドを示す。
【0030】
上述した射出ユニット5の制御は、制御装置20によって行われる。制御装置20は、図2に示すように、入力装置26、出力装置27、型内圧波形パターン記憶手段22、設定圧力、設定温度などの基準データ記憶手段23、各タイマーt1〜t4、CPU21を含み、CPU21は制御・演算処理のためのプログラムと、制御・演算の際の各種データを記憶する記憶回路を有している。CPU21は、射出ユニット5のスクリュ回転モータ10及びサーボバルブ14と、それぞれ、電力ライン、信号ラインを介して接続されており、所定のプログラムに従って、両者を制御する。同様に、このCPU21には、圧力センサ17、スクリュ移動量センサ18、型内圧センサ19及び型内樹脂温度センサ28がそれぞれ信号ラインを介して接続されている。各センサ17〜19、28はそれぞれ、検出値を示す信号をCPU21に与える。
【0031】
次に、図1中の金型加熱冷却制御回路の模式図により、可動金型2と固定金型3の加熱手段と冷却手段の構成について説明する。前記金型2,3を加熱する手段として、水蒸気発生器(水蒸気発生手段)31を用い、前記金型2、3を冷却する手段として、冷却装置(冷却水発生手段)41を用いた構成とした。
【0032】
水蒸気発生器31は、貯水タンク36に貯留している加熱用水を高圧ポンプ32で吸い上げて水蒸気発生器31の本体の圧力容器内に押し込み、加熱用水を加熱し水蒸気を発生させる構成である。貯水タンク36は加熱用水供給兼回収タンクである。29は液面レベル計で、液面が設定高さ範囲を超えて低下したとき、水源に接続する図示せぬ切換弁を開いて水を補給する。また本実施の形態では加熱用水蒸気を貯水タンク36に回収する例を示したが、水蒸気は回収せずに大気に解放しても良い。
【0033】
図1では、水蒸気発生器31は、加熱用媒体との熱交換により水蒸気を発生させる装置で示したが、一般的には水蒸気発生器31は、ボイラーを用いる場合が多い。水蒸気発生器31で発生した水蒸気を送出配管35に繋がった切換弁45を切換えて水蒸気を前記金型2、3に放出する。T1は水蒸気の温度検出センサである。温度検出センサT1で検出された水蒸気温度は、制御装置20において、制御装置20にメモリーされた水蒸気設定温度と比較し、切換弁46を開閉して加熱媒体をヒーター31aに通し設定温度になるように制御している。
【0034】
また、図1では、水蒸気発生器31のヒータ−31aは、電気抵抗ヒーター、高周波の電流による誘導加熱ヒータ−、不活性ガスの断熱圧縮を利用したヒートポンプ等の加熱手段でもよい。
【0035】
冷却装置41は、冷却水タンク43に貯留している冷却水をポンプ42で吸い上げて冷却装置41へ押し込む。冷却水の温度は、金型のキャビティ4内に充填された成形品温度が成形品の材料の固化温度以下になるような低温とする。冷却水配管39に切換弁49と温度検出センサT2を設置する。冷媒配管48に設置された切換弁47を開閉して冷却媒体を冷却装置41に通し冷却水が設定温度になるように制御される。また本実施の形態では所定温度に調整した冷却水の冷却装置を冷却水の供給側に設けているが、代わりにクーリングタワーなどの冷却装置を冷却水の回収側に設け、冷却水を所定温度に調整せずに用いても支障ない。34,37は排出管、51,52は切換弁を夫々示す。
【0036】
制御装置20には、水蒸気を切換えて、金型を急速に加熱するように制御する加熱媒体の供給を停止するタイミングを設定するタイマー1(t1)、冷却水の供給を停止するタイミングを設定するタイマー2(t2)、加熱媒体供給停止から冷却媒体供給開始を遅延させるタイマー3(t3)、冷却媒体供給停止から加熱媒体供給開始を遅延させるタイマー4(t4)を備えている。
【0037】
続いて、図5により、上記の成形方法を実施できる電動射出ユニットを備えた射出成形装置120を説明する。この射出成形装置120は射出ユニット30以外は図1の射出成形装置1と殆ど同じ構成である。従って、同じ構成部分については、追加説明を要するものを除いて説明を省略する。
【0038】
射出成形装置120の射出ユニット30は、上述の射出成形装置1の射出シリンダ6と同じ構成の射出シリンダに一体の両側に直角に延びた一対のアーム57a、57aを備えた射出シリンダ57と、射出スクリュ部が上述の射出成形装置1の連結軸9と同じ形状でピストン11を有せず、回転駆動モータ60と直結する射出スクリュ58と、回転駆動モータ60のハウジング両側に延びたアームに対称にボールねじナット63,63を固定している移動アーム部材62と、射出シリンダ57のアーム57a、57aに取付けられた一対のモータ61,61に直結し、ボールねじナット63,63に螺合するボールねじ軸59、59とにより構成されている。
【0039】
図示しないヒーターにより射出シリンダ57を加熱し、回転駆動モータ60を回転駆動することにより射出シリンダ57内に送り込まれた樹脂材料を可塑化溶融し、モータ61,61を回転して溶融樹脂を金型のキャビティ4へ送り出す手順は、射出充填に油のシリンダ7aと油圧のピストン11の代わりに、電動のモータ61、61を使用したこと以外は、上述の射出成形装置1の場合と同じである。
【0040】
この射出ユニット30は、溶融樹脂の射出充填時の射出スクリュ58の前進後の電動モータ61の減速時に発生する回生電力を、蓄電装置70、電気加熱手段38からなる金型加熱用の電力回路64へ制御装置40より回流回路65を介し、或いは、蓄電装置56、電気加熱手段55からなる冷却装置41を駆動する電力回路66へ回流回路54を介して回生することができる。(例えば、特公昭64−4896号公報)
【0041】
射出成形装置1を使用して樹脂製品を製造する射出成形方法について、図3の成形手順(s1〜s14)を示す工程図に従って説明する。先ず、図示しない型締装置を作動させて可動金型2と固定金型3を型締めし、キャビティ4を形成する。また、射出シリンダ6内に所定の樹脂材料を供給する。
【0042】
s1:加熱媒体供給バルブである切換弁45を開いて水蒸気を金型2,3へ送る。
s2:金型を加熱する。
s3:金型温度TMと金型の高温側の設定温度(設定金型上限温度)TSを比較しTM<TSのときは金型の加熱を続け、TM=TSになったら次工程s4へ進む。(金型の高温側設定温度TSは、金型キャビティ内に充填された樹脂が溶融状態を保持できる温度である。)
s4:加熱媒体供給バルブである切換弁45を閉じ、熱媒体の供給を止める。
【0043】
s5:シリンダ7aに作動油を送って、射出スクリュ8を前進させて溶融樹脂を金型キャビティ4に、主に射出工程を速度制御にて制御しながら射出充填する。
s6:作動油の油圧を上昇させて型内圧制御工程に移行する。
s7:型内圧(キャビティ内の樹脂圧)PMと設定型内圧PSを比較し、PM<PSのときは作動油の圧力を上昇させ、PM=PSとなった瞬間から、射出速度制御から射出圧力制御に切り換えて、所定の型内圧プロファイルに沿うように射出圧力を制御しつつ射出を行い、次工程s8へ進む。
s8:溶融樹脂充填。
s9:作動油圧保持のまま溶融樹脂充填完了。
【0044】
s10:冷却媒体供給バルブである切換弁49を開いて金型内のパイプマニホールド2a、3aの熱媒体を冷却媒体に置き換える。
s11:金型温度TMと金型の低温側設定温度(設定金型下限温度)TCを比較しTM>TCのときは金型の冷却を続け、TM=TCになったら次工程s12へ進む。(金型の低温側設定温度TCは、金型キャビティ内に充填された樹脂が固化する温度である。)
s12:冷却媒体供給バルブである切換弁49を閉じて冷却媒体の供給を止める。
s13:放冷する。
s14:成形品が取出し可能な温度まで冷えたとき、型を開いて成形品を取出す。
【0045】
制御装置20のCPU21には表示装置50が備えられている。図7は成形1サイクルの金型温度と、射出時の射出圧と型内圧とを同じ時系列で表示した一例である。図7の上段に成形工程を示し、その下側に成形工程のタイミングに合わせて射出圧力Ph(射出油圧)、型内圧PM、スクリュ位置を表示し、その下段に金型の温度TMを表示している。
【0046】
図の射出圧力Ph(射出油圧)と型内圧PMの線図において、樹脂の射出が開始してt0時間後に定常充填工程Kaが始まり、射出スクリュ8は一定速度で定常充填工程Kaを経過し、型内圧制御工程K2へ移行後、型内圧制御工程K2を終了する。
【0047】
金型温度TMが所定冷却下限温度である設定金型下限温度TCに到達した時点で、金型の熱媒体と冷却媒体の入れ替えが開始され、金型温度が設定金型上限温度TSに達したことを確認したとき、次の成形サイクルの射出が開始される。次の成形サイクルの射出開始は、金型温度が設定金型上限温度TSに達する前でもタイマーなどにより任意のタイミングで行っても良い。
【0048】
前記のように金型温度と射出圧力を連携して制御することにより得られる効果を図8〜図13を用いて説明する。図8と図9に従来成形におけるキャビティ段付き部の流動、圧力状態を示す。図12に従来成形における型内圧のプロファイルを示す。実線は低圧射出時の型内圧のプロファイルであり、二点破線は高圧射出時の型内圧のプロファイルである。図10と図11に本発明におけるキャビティ段付き部の流動、圧力状態を示す。図13に本発明における型内圧のプロファイルを示す。実線は低圧射出時の型内圧のプロファイルであり、二点破線は高圧射出時の型内圧のプロファイルである。
【0049】
図8及び図9では金型温度が通常、熱変形温度以下の樹脂固化温度であるため、充填中にスキン層が発生し、樹脂の流動可能領域が狭くなり、特に薄肉部では大きな圧力損失が発生し、局部的に樹脂圧が低い領域が発生してしまう。これに対し、例えば型内圧センサ19aが検知する型内圧値は、他部に設けられた型内圧センサ、例えばゲート直近に設けられた型内圧センサ19bや、ゲートから離れた部分に設けられた型内圧センサ19cが検知する型内圧変化度合いに対し、極端に小さな型内圧値の変化しか発生しない。
【0050】
このため、図12に示すように型内圧センサ19aが検知した型内圧値によって、射出圧力を制御すると、目標型内圧値を大きく変化させても、型内圧センサ19aのような型内圧力値が小さく樹脂の充填量が小さい箇所に発生する圧力値は期待ほど大きくは変化せず、充填不良、充填不足が発生してしまう。また充填不良、充填不足が無く、成形不良が発生しない型内圧センサ位置を見出すのは多数回にわたる試行錯誤が必要となり、作業効率が悪い。
【0051】
図10及び図11は本発明により射出充填中の金型の温度が樹脂の流動開始温度以上に保たれている為、スキン層が発生せず樹脂の流動可能領域が金型のキャビティ幅全域をとなり、樹脂の流動圧力損失を最小限となり型内圧力の差を緩やかにすることが出来る。よって薄肉部の型内圧センサ19cが検知する型内圧値は、他部の型内圧センサ19b、19cが検知する型内圧値との差が小さくなる。
【0052】
このため図13に示すように型内圧センサ19bが検知する型内圧値によって射出圧力を制御し、目標型内圧値を変化させれば、型内圧センサ19aが設けられた薄肉の部分でも、期待通りの型内圧変化を得ることが出来ることから、充填不良、充填不足が無く、成形不良が発生しない型内圧センサ位置を見出すことが容易になる。また、どの位置に型内圧センサを備えても、制御性が高い適正な型内圧値の選定が容易にできるので、型内圧センサの設置位置の選定も短時間で行うことができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として、図1の射出成形装置1、又は、図5の射出成形装置120を用いた成形手順を示す工程図(図4)により説明する。この第2の実施の形態の成形方法が上述の第1の実施の形態の成形方法と異なる点は、工程s3の金型温度の比較制御工程をタイマー1(t1)の工程s15に、同様に、金型冷却時の工程s11の金型温度の比較制御工程をタイマー2(t2)の工程s16に置き換えたことであり、その他の工程と順序に変わりは無い。
【0054】
射出成形装置1を使用して第2の実施の形態の樹脂製品を製造する射出成形方法について、図4の成形手順(s1〜s16)を示す工程図に従って説明する。先ず、図示しない型締装置を作動させて可動金型2と固定金型3を型締めし、キャビティ4を形成する。また、射出シリンダ6内に所定の樹脂材料を供給する。
【0055】
s1:加熱媒体供給バルブである切換弁45を開いて水蒸気を金型2,3へ送る。
s2:金型を加熱する。
s15:タイマー1(t1)のカウントアップ
s4:加熱媒体供給バルブである切換弁45を閉じ、熱媒体の供給を止める。
【0056】
s5:シリンダ7aに作動油を送って、射出スクリュ8を前進させて溶融樹脂を金型キャビティ4に射出充填する。
s6:作動油の油圧を上昇させて型内圧保持制御工程に移行する。
s7:型内圧(キャビティ内の樹脂圧)PMと設定型内圧PSを比較し、PM<PSのときは作動油の圧力を上昇させ、PM=PSのときは作動油圧を保持し、次工程s8へ進む。
s8:溶融樹脂充填。
s9:作動油圧保持のまま溶融樹脂充填完了。
【0057】
s10:冷却媒体供給バルブである切換弁49を開いて金型内のパイプマニホールド2a、3aの熱媒体を冷却媒体に置き換える。
s16:タイマー2(t2)のカウントアップ
s12:冷却媒体供給バルブである切換弁49を閉じて冷却媒体の供給を止める。
s13:放冷する。
s14:成形品が取出し可能な温度まで冷えたとき、型を開いて成形品を取出す。
【0058】
型内圧制御工程K2が開始した時点でカウント開始し始めたタイマー2(t2)がカウントアップした時点で、金型の熱媒体と冷却媒体の入れ替えが開始され、金型温度が上昇を始めた時点K3においてタイマー1(t1)がカウント開始する。t1がカウントアップした時点で、次の成形サイクルの射出が開始される。
【0059】
タイマー1(t1)、タイマー2(t2)は、いずれも、始点と時間の調整が可能であり、金型の昇温、降温のオーバーシュートを考慮して早め、遅めにセットを調整して、最適な始点のタイミングとタイムアップ時点を決めることができる。
【0060】
金型の加熱時間、或いは、冷却の時間は、熱媒体又は、冷却媒体の温度と供給速度が同じであれば、各成形サイクル毎に殆ど変わることは無いので、多少の余裕をとってタイマー1(t1)又は、タイマー2(t2)の時間を設定して置けば、加熱媒体又は、冷却媒体の切換を行っても成形条件から外れることはない。
【0061】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態として、図1の射出成形装置1、又は、図5の射出成形装置120を用いた成形手順を示す工程図(図6)により説明する。この第3の実施の形態の成形方法が上述の第1の実施の形態の成形方法と異なる点は、工程s4の熱媒体供給バルブ閉と、工程s10の冷却媒体供給バルブ開との間にs17のタイマー3(t3)の工程を挿入し、また、工程s12の冷却媒体供給停止と、工程s1の加熱媒体供給開始との間にs18のタイマー4(t4)の工程を挿入したことであり、その他の工程と順序に変わりは無い。
【0062】
射出成形装置1を使用して樹脂製品を製造する射出成形方法について、図6の成形手順(s1〜s14)を示す工程図に従って説明する。先ず、図示しない型締装置を作動させて可動金型2と固定金型3を型締めし、キャビティ4を形成する。また、射出シリンダ6内に所定の樹脂材料を供給する。
【0063】
s1:加熱媒体供給バルブである切換弁45を開いて水蒸気を金型2,3へ送る。
s2:金型を加熱する。
s3:金型温度TMと金型の高温側設定温度(設定金型上限温度)TSを比較しTM<TSのときは金型の加熱を続け、TM=TSになったら次工程s4へ進む。(金型の高温側設定温度TSは、金型キャビティ内に充填された樹脂が溶融状態を保持できる温度である。)
s4:加熱媒体供給バルブである切換弁45を閉じ、熱媒体の供給を止める。
s17:タイマー3(t3)カウントスタート。タイマー3(t3)カウントアップにより工程s10:冷却媒体供給開始に移行する。
【0064】
s5:シリンダ7aに作動油を送って、射出スクリュ8を前進させて溶融樹脂を金型キャビティ4に射出充填する。
s6:作動油の油圧を上昇させて型内圧保持制御工程に移行する。
s7:型内圧(キャビティ内の樹脂圧)PMと設定型内圧PSを比較し、PM<PSのときは作動油の圧力を上昇させ、PM=PSのときは作動油圧を保持し、次工程s8へ進む。
s8:溶融樹脂充填。
s9:作動油圧保持のまま溶融樹脂充填完了。
【0065】
s10:冷却媒体供給バルブである切換弁49を開いて金型内のパイプマニホールド2a、3aの熱媒体を冷却媒体に置き換える。
s18:タイマー4(t4)カウント開始。タイマー4(t4)カウントアップにて、工程s1の加熱媒体供給開始に移行する。
s11:金型温度TMと金型の低温側設定温度(設定金型下限温度)TCを比較しTM>TCのときは金型の冷却を続け、TM=TCになったら次工程s12へ進む。(金型の低温側設定温度TCは、金型キャビティ内に充填された樹脂が固化する温度である。)
s12:冷却媒体供給バルブである切換弁49を閉じて冷却媒体の供給を止める。
s13:放冷する。
s14:成形品が取出し可能な温度まで冷えたとき、型を開いて成形品を取出す。
【0066】
金型温度TMが所定の低温側設定温度(設定金型下限温度)TCに到達した時点、又は、型内圧制御工程K2が開始した時点でカウント開始し始めたタイマーt4がカウントアップした時点で、冷却から加熱に切り換え、次サイクルのタイマーt1がカウント開始する。
【0067】
成形作業の初期においての温度比較制御が不安定なときは、加熱媒体と冷却媒体の切換えタイミングを温度とタイマーの2つの条件が成立したタイミングとしても良い。
【0068】
前記実施の形態における加熱媒体と冷却媒体の切換えタイミングを適正に選定する為に、表示装置50に表示された温度と型内圧のグラフでビジュアルに確認することにより、工程の切り換えタイミングの選定をイメージし易くなり、適正な加熱媒体と冷却媒体の切換えタイミングの選定が容易になる。
【0069】
また前記実施の形態1〜3では、冷却開始のタイミングを充填完了時またはタイマーのカウントアップとしているが、キャビティの所定位置の圧力が予め定めた所定の圧力値に達した時点で冷却を開始しても良い。当該キャビティの所定位置を高外観、高転写性が必要な箇所に選定すれば、射出工程中に高外観、高転写性が必要な箇所の圧力が、転写に有効な圧力値に達したことを確認して冷却を開始できるので、確実な転写性を得ることが出来る上、成形サイクルの短縮に有効である。
【0070】
更には、冷却開始は射出スクリュ8または58が予め設定された所定の位置に達した時点で冷却開始としても良い。型内圧PMが設定型内圧PSに到達後は、射出工程は圧力制御にて行う為、予め設定された設定型内圧PSが充填に不十分であった場合、射出スクリュ8または58はキャビティ4を充満させる前に前進が出来なくなり停止してしまう。この状態で、制御装置20、40が充填完了を判断し冷却を開始させた場合、充填不足のままキャビティ4内の樹脂が固化してしまい成形不良が発生する。この場合に対して、射出スクリュ8または58が予め設定されたキャビティ4内が樹脂で十分充満可能なスクリュ位置まで達していることが冷却開始の必要条件であれば、充填不足のままキャビティ4内の樹脂が固化してしまい成形不良の発生を防止できる。
【0071】
また冷却開始は、前記加熱媒体供給終了と同時または加熱熱媒体供給終了とともにスタートするタイマーのカウントアップ時点と、前記キャビティ4の所定位置の圧力の予め定めた所定の圧力値への到達と、射出スクリュ8または58が予め設定された所定の位置に達した時点の、少なくとも1つを選択して、前記冷却媒体供給の開始のタイミングとしても良い。タイマーとキャビティ内圧力とスクリュ位置のいずれか1つ乃至2つ、あるいは全ての条件を選定できることから、成形条件の設定幅を大きくでき成形性を向上できる。当該条件の選定要領としては、選定した条件が全て満足すること、選定した条件の内1つが成立することなど種々の方法が可能である。
【0072】
本発明の射出成形サイクル中における温度制御については、金型加熱回路の各部の構成、成形手順については、上記したものに何ら限定する意図は無く、適宜に変更されることを許容する。これ以外にも本発明の意図を逸脱しない限り、上記実施の形態に挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1、120 射出成形装置
2 可動金型
3 固定金型
4 キャビティ
5、30 射出ユニット
6、57 射出シリンダ
8、58 射出スクリュ
10 スクリュ回転モータ
60 回転駆動モータ
14 サーボバルブ
17 圧力センサ
20、40 制御装置
21 CPU
31 水蒸気発生装置
41 冷却装置
50 表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の射出プランジャまたはスクリュの前進により金型のキャビティに溶融樹脂を射出成形するときの型内圧制御に関し、特に成形樹脂射出前に金型を加熱することにより金型内部における樹脂の流動を良好にして型内圧制御を容易にする成形方法と、この成形方法を用いることができる射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示す従来例の射出成形方法は、射出成形機を用いて射出成形を行う場合、速度波形パターンに基づいた定常充填工程に間は、型内圧の変化量と射出圧力の変化量との比が所定範囲から逸脱して基準変動速度比を下回った際に、また、圧力波形パターンに基づいた型内圧制御工程の間は、型内圧が所定の型内圧下限値を下回った際に、それぞれ、型内圧センサの検出異常とみなして射出ユニットを停止させる。この射出成形方法を用いれば、型内圧の異常な上昇を簡易な構成方法で確実に防止可能であり、かつ、金型破損等のトラブルを未然に回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4127339号公報(図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された従来例の型内圧波形制御は、高速射出充填時のバリ防止、重量安定化を目的として使用されるが、通常、金型温度は冷却に十分なだけ低い温度(例えば、熱変形温度より低い温度)に設定されているため、射出充填中に樹脂の温度が下がる。結晶性樹脂での成形の場合は冷却により結晶化温度付近では結晶化により樹脂の粘度が急激に上昇する。また非晶性で且つ粘度が1×103Pa・S以上である高粘度な樹脂成形の場合は流動により圧力損失が大きい。このような樹脂を成形する場合で、成形品形状に局部的に薄肉部が在る場合は、その薄肉部分の固化が他の部分の固化より進み、樹脂流動が減少するなどして、流動圧損が大きくなるなどにより、金型内部の圧力分布が不均一になり成形品の厚さの変動や表面にフローマーク、凹凸、ウェルド等の欠陥を生じる虞がある。そのため、再現性の高い、安定した制御が可能な圧力センサの領域は非常に狭い。よって圧力センサの適正な位置を見つけるための長い時間や多大な労力を要するという問題点がある。
【0005】
本発明は、圧力波形パターンに基づいた型内圧制御による射出成形方法において、圧力センサの位置を厳密に選定する必要なく従来の金型の構成を殆ど変えることなく、再現性、安定性の高い射出成形方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点に対し、本発明は以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段の射出成形方法は、金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達した時点、または金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により設定された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達した時点、または金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする。
【0007】
第1の手段の射出成形方法により、樹脂の射出充填時の金型温度を高温に保つことにより、薄肉部でも樹脂の粘度上昇、および冷却固化を遅らせることができ、充填圧力伝搬を良好に保つことが出来るので、型内圧分布を単純一様にすることが可能となる。また、充填中の樹脂の固化速度が遅くなるので、万一、圧縮性流体である溶融樹脂に圧力伝播の遅れが生じて、型内圧フィードバック制御のための圧力検知が遅れても、圧力フィードバック補正制御指令は、樹脂の固化が進行する前に出すことができる。
【0008】
(2)第2の手段の射出成形方法は、上記(1)の射出成形方法において、前記金型が、樹脂流動圧が低下するような薄肉部を有する金型であることを特徴とする。
【0009】
(3)第3の手段の射出成形方法は、上記(2)の射出成形方法において、充填中または充填完了まで、少なくとも前記薄肉部の温度を、樹脂の流動開始温度以上に維持することを特徴とする。
【0010】
(4)第4の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(3)のいずれか一つの射出成形方法において、前記射出プランジャまたはスクリュの前進が電動モータを駆動源とする射出装置であることを特徴とする。
【0011】
(5)第5の手段の射出成形方法は、上記(4)の射出成形方法において、前記電動モータの減速時に発生する回生電力を前記金型加熱冷却装置に供給することを特徴とする。
【0012】
(6)第6の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(5)のいずれか一つの射出成形方法において、前記型内圧センサにより測定された型内圧プロファイルと前記キャビティ近傍に備えた温度センサにより測定された金型の温度プロファイルを表示装置に同一の画面で表示して、樹脂の射出充填により高温の樹脂が金型内に流入して金型温度が上昇するタイミングと温度上昇量を、型内圧力の変化と比較することにより、成形条件の妥当性を評価することを特徴とする。
特に前記比較のために、測定した前記型内圧プロファイルと、前記金型の温度プロファイルは、共有した時間軸を横軸とし、且つそれぞれの値を縦軸とした同一グラフ上に重ね書きすることが好ましい。
【0013】
(7)第7の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(6)のいずれか一つの射出成形方法において、前記樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする。
結晶性樹脂は冷却固化時に結晶化温度付近で急激に粘度上昇が発生し、流動状態を維持できなくなり、急激に圧力伝搬性が悪くなる。この為、金型の温度を結晶化温度よりも十分高温である流動開始温度以上にすることで、樹脂を流動状態に保つことができ、圧力伝搬を良好に保つことにより、型内の圧力分布を単純一様にできるので、冷却時の制御目標温度値の選定が容易となる利点がある。
【0014】
(8)第8の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(6)のいずれか一つの射出成形方法において、前記樹脂粘度が1×103Pa・S以上である高粘度の非晶性樹脂であることを特徴とする。
粘度が1×103Pa・S以上である高粘度の非晶性樹脂は、結晶性樹脂のように温度によって急激な粘度の変化はないが、高粘度であるので流動時に薄肉部などでは急激な圧力損失を発生し、圧力伝搬性が悪くなる。この為、金型の温度を樹脂が十分な流動状態が得られる流動開始温度以上にすることで、樹脂を流動状態に保つことができ、圧力伝搬を良好に保つことにより、型内の圧力分布を単純一様にできるので、冷却時の制御目標温度値の選定が容易となる利点がある。
【0015】
(9)第9の手段の射出成形方法は、金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達し、かつ、金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達し、かつ、金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする。
【0016】
(10)第10の手段の射出成形方法は、上記(1)〜(9)のいずれか一つの射出成形方法において、前記冷却媒体供給の開始のタイミングが、前記加熱媒体の供給終了時点または加熱媒体供給終了と同時にスタートするタイマーのカウントアップ時点と、射出プランジャまたはスクリュが所定の位置に到達した時点と、キャビティの所定位置の圧力が予め定めた所定の圧力値に達した時点の、少なくとも1つを選択して、前記冷却媒体供給の開始のタイミングとすることを特徴とする。
【0017】
(11)第11の手段の射出成形装置は、金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機であって、更に、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置と、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御する制御装置をも備え、上記(1)〜(10)のいずれか一つの射出成形方法を実施する制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜請求項3、請求項9〜10、請求項11に係わる発明は、上記第1〜第3、第10の手段の成形方法、第11の手段の成形装置であり、成形品の肉厚分布にかかわらず、充填中の金型内樹脂を溶融状態に保てるので、冷却によるスキン層(成形品表層の固化層)の成長により有効樹脂流路が狭くなることが無くなり、型内の樹脂圧力分布が単純になり、かつ、再現性の高い圧力分布が得られるため、適正な型内圧センサ位置の範囲が広くなるので、型内圧センサの取付け位置の決定が容易となる。特に流動圧力損失が大きくなる薄肉部を局部的に有する金型において有効である。また金型の温度センサを複数設けた場合は、温度が所定の温度に達していない箇所の有無など型内の温度ムラの有無を確認でき、樹脂流動の圧力損失に影響を与える箇所の温度が低い場合は、当該箇所を選定、かつ基準にして金型の加熱工程を制御することが出来る。
【0019】
請求項4及び請求項5に係わる発明は、上記第4及び第5の手段の成形方法であり、射出動作(射出スクリュの前進動作)の減速時、あるいは可塑化動作(射出スクリュの回転動作)の減速時に回生電力が発生するが、型内圧波形制御により型内樹脂流動状態の高い再現性が得られるので、ショット毎の回生電力のバラツキを抑制することができる。この回生電力をエネルギー消費の大きい加熱冷却媒体供給装置の使用電力に供給することによって、成形のために消費されるエネルギーを安定して低減させることができる。
【0020】
請求項6に係わる発明は、上記第6の手段の発明であり、型内圧と金型温度が同じ成形工程の時系列で表示されるので、型内圧波形制御のための設定値と、加熱冷却制御の温度設定値、及び射出工程(射出速度または射出圧力)や金型の加熱工程と冷却工程の切り換えタイミングの選定の妥当性評価に有効であり、更に、外乱に強く、かつ、金型加熱エネルギー及び圧力充填エネルギーを低減できる設定値と、型内圧センサ位置を決定することが容易である。
【0021】
請求項7及び8に係わる発明は、上記第7及び第8の手段の成形方法であり、温度低下によって樹脂の結晶化が起こり、圧力の伝搬性が急激に低下する結晶性樹脂、および流動圧力損失の大きい高粘度の非晶性樹脂に有効である。更に、充填中又は充填後に金型を強制的に冷却することにより、ハイサイクルな成形工程が可能である。また、型内圧制御により樹脂の固化前に樹脂圧を切換え、型内の樹脂にその圧力を充分に伝播させることが可能であり、型内圧のフィードバック制御がやり易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる油圧射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図である。
【図2】図1の金型加熱冷却制御回路に備えられた金型温度と型内圧制御装置の制御要素を示すブロック図である。
【図3】図1の金型加熱冷却回路を用いた第1の実施の形態の成形手順を示す工程図である。
【図4】図1の金型加熱冷却回路を用いた第2の実施の形態の成形手順を示す工程図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる電動射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図である。
【図6】図1の金型加熱冷却回路を用いた第3の実施の形態の成形手順を示す工程図である。
【図7】図2の制御要素を示すブロック図に備えられた表示装置に1サイクルの金型温度と射出時の型内圧とを同じ時系列で表示した一例である。
【図8】従来の金型による型内圧力分布を示した模式図である。
【図9】図8におけるA部の詳細を示した模式図である。
【図10】本発明による型内圧力分布を示した模式図である。
【図11】図10におけるB部の詳細を示した模式図である。
【図12】従来の金型において異なる箇所に配置された各型内圧センサが検知した型内圧プロファイルを示した模式図である。
【図13】本発明において異なる箇所に配置された各型内圧センサが検知した型内圧プロファイルを示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
金型の加熱冷却制御が可能な射出成形機を使用して、金型の加熱と冷却を行いながら射出充填後の保圧工程において型内圧が略一定になるように制御しながら成形する加熱冷却媒体回路の温度制御方法と、型内圧制御方法とを併用するときの温度制御方法を3形態説明する。この実施の形態で図示した金型は、型開閉と型締等の図は省き、射出ユニットと加熱媒体回路の構成と作用方法について図示説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる油圧射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図、図2は図1の金型加熱冷却制御回路に備えられた金型温度と型内圧制御装置の制御要素を示すブロック図、図3は図1の金型加熱冷却回路を用いた第1の実施の形態の成形手順を示す工程図、図5は本発明の実施の形態に係わる成形方法を実施できる電動射出ユニットを備えた射出成形装置と金型加熱冷却制御回路の模式図である。
【0025】
図1において、射出成形装置1は、所望の形状の成形品を得るための可動金型2及び固定金型3を備える。可動金型2は、型締装置の可動盤(図示せず)に固定されており、固定金型3は、型締装置の固定盤(図示せず)に固定されている。この射出成形装置1を用いて樹脂製品を製造する際には、図示しない型締シリンダを作動させ、可動盤2と固定盤3を型締めする。これにより、可動金型2と固定金型3とでキャビティ4が形成される。
【0026】
図1に示すように、固定金型3には、いわゆる、インラインスクリュ形式の射出ユニット5に含まれる射出シリンダ(加熱シリンダ)6が接続されている。可動金型2と固定金型3とで形成されるキャビティ4内には、射出ユニット5からゲートGを介して溶融樹脂を射出注入することができる。射出シリンダ6は、ユニット本体7から延出されており、その内部には、射出スクリュ8が配されている。射出スクリュ8には、連結軸9が接続されており、この連結軸9は、ユニット本体7の側方(図中右側)に配置されたスクリュ回転モータ10の回転軸に接続されている。スクリュ回転モータ10は、ユニット本体7に対してスライド自在に取り付けられている。
【0027】
また連結軸9には、ピストン11が固定されており、このピストン11は、シリンダ7a内に位置する。シリンダ7aには、供給側と戻り側がそれぞれ油圧配管12を介してサーボバルブ14、油圧ポンプ15に接続されている。これにより、油圧ポンプ15からサーボバルブ14、油圧配管12を介してシリンダ7aに作動油を供給すれば、ピストン11を介して射出スクリュ8を前進又は後退させることができる。このように、ピストン11とシリンダ7aとは、射出用油圧シリンダとして機能する。サーボバルブ14と油圧ポンプ15との間には、リリーフ弁16が配されている。
【0028】
油圧配管12には、射出用油圧力を検出する圧力センサ17が備えられている。この圧力センサ17で検出された油圧力は射出シリンダ6における射出圧力Phに比例するものである。また、射出ユニット5には、射出スクリュ8の移動量を検出するスクリュ移動量センサ18が設けられている。スクリュ移動量センサ18は、連結軸9に固定された被検出体を介して、射出スクリュ8の原点位置からの移動量を電気的、磁気的又は光学的に検出するものである。
【0029】
更に、可動金型2にはゲートG近傍におけるキャビティ4内の溶融樹脂の型内圧PMを検出する型内圧センサ19が設けられている。即ち、可動金型2には片端がキャビティ4に連通する流路2bが形成され、型内圧センサ19はゲートGの近傍から流路2bに流入する溶融樹脂の圧力を型内圧PMとして検出する。また、可動金型2にはキャビティ4の壁の温度Tを検出する型内樹脂温度センサ28が設けられている。2a、3aはパイプマニホールドを示す。
【0030】
上述した射出ユニット5の制御は、制御装置20によって行われる。制御装置20は、図2に示すように、入力装置26、出力装置27、型内圧波形パターン記憶手段22、設定圧力、設定温度などの基準データ記憶手段23、各タイマーt1〜t4、CPU21を含み、CPU21は制御・演算処理のためのプログラムと、制御・演算の際の各種データを記憶する記憶回路を有している。CPU21は、射出ユニット5のスクリュ回転モータ10及びサーボバルブ14と、それぞれ、電力ライン、信号ラインを介して接続されており、所定のプログラムに従って、両者を制御する。同様に、このCPU21には、圧力センサ17、スクリュ移動量センサ18、型内圧センサ19及び型内樹脂温度センサ28がそれぞれ信号ラインを介して接続されている。各センサ17〜19、28はそれぞれ、検出値を示す信号をCPU21に与える。
【0031】
次に、図1中の金型加熱冷却制御回路の模式図により、可動金型2と固定金型3の加熱手段と冷却手段の構成について説明する。前記金型2,3を加熱する手段として、水蒸気発生器(水蒸気発生手段)31を用い、前記金型2、3を冷却する手段として、冷却装置(冷却水発生手段)41を用いた構成とした。
【0032】
水蒸気発生器31は、貯水タンク36に貯留している加熱用水を高圧ポンプ32で吸い上げて水蒸気発生器31の本体の圧力容器内に押し込み、加熱用水を加熱し水蒸気を発生させる構成である。貯水タンク36は加熱用水供給兼回収タンクである。29は液面レベル計で、液面が設定高さ範囲を超えて低下したとき、水源に接続する図示せぬ切換弁を開いて水を補給する。また本実施の形態では加熱用水蒸気を貯水タンク36に回収する例を示したが、水蒸気は回収せずに大気に解放しても良い。
【0033】
図1では、水蒸気発生器31は、加熱用媒体との熱交換により水蒸気を発生させる装置で示したが、一般的には水蒸気発生器31は、ボイラーを用いる場合が多い。水蒸気発生器31で発生した水蒸気を送出配管35に繋がった切換弁45を切換えて水蒸気を前記金型2、3に放出する。T1は水蒸気の温度検出センサである。温度検出センサT1で検出された水蒸気温度は、制御装置20において、制御装置20にメモリーされた水蒸気設定温度と比較し、切換弁46を開閉して加熱媒体をヒーター31aに通し設定温度になるように制御している。
【0034】
また、図1では、水蒸気発生器31のヒータ−31aは、電気抵抗ヒーター、高周波の電流による誘導加熱ヒータ−、不活性ガスの断熱圧縮を利用したヒートポンプ等の加熱手段でもよい。
【0035】
冷却装置41は、冷却水タンク43に貯留している冷却水をポンプ42で吸い上げて冷却装置41へ押し込む。冷却水の温度は、金型のキャビティ4内に充填された成形品温度が成形品の材料の固化温度以下になるような低温とする。冷却水配管39に切換弁49と温度検出センサT2を設置する。冷媒配管48に設置された切換弁47を開閉して冷却媒体を冷却装置41に通し冷却水が設定温度になるように制御される。また本実施の形態では所定温度に調整した冷却水の冷却装置を冷却水の供給側に設けているが、代わりにクーリングタワーなどの冷却装置を冷却水の回収側に設け、冷却水を所定温度に調整せずに用いても支障ない。34,37は排出管、51,52は切換弁を夫々示す。
【0036】
制御装置20には、水蒸気を切換えて、金型を急速に加熱するように制御する加熱媒体の供給を停止するタイミングを設定するタイマー1(t1)、冷却水の供給を停止するタイミングを設定するタイマー2(t2)、加熱媒体供給停止から冷却媒体供給開始を遅延させるタイマー3(t3)、冷却媒体供給停止から加熱媒体供給開始を遅延させるタイマー4(t4)を備えている。
【0037】
続いて、図5により、上記の成形方法を実施できる電動射出ユニットを備えた射出成形装置120を説明する。この射出成形装置120は射出ユニット30以外は図1の射出成形装置1と殆ど同じ構成である。従って、同じ構成部分については、追加説明を要するものを除いて説明を省略する。
【0038】
射出成形装置120の射出ユニット30は、上述の射出成形装置1の射出シリンダ6と同じ構成の射出シリンダに一体の両側に直角に延びた一対のアーム57a、57aを備えた射出シリンダ57と、射出スクリュ部が上述の射出成形装置1の連結軸9と同じ形状でピストン11を有せず、回転駆動モータ60と直結する射出スクリュ58と、回転駆動モータ60のハウジング両側に延びたアームに対称にボールねじナット63,63を固定している移動アーム部材62と、射出シリンダ57のアーム57a、57aに取付けられた一対のモータ61,61に直結し、ボールねじナット63,63に螺合するボールねじ軸59、59とにより構成されている。
【0039】
図示しないヒーターにより射出シリンダ57を加熱し、回転駆動モータ60を回転駆動することにより射出シリンダ57内に送り込まれた樹脂材料を可塑化溶融し、モータ61,61を回転して溶融樹脂を金型のキャビティ4へ送り出す手順は、射出充填に油のシリンダ7aと油圧のピストン11の代わりに、電動のモータ61、61を使用したこと以外は、上述の射出成形装置1の場合と同じである。
【0040】
この射出ユニット30は、溶融樹脂の射出充填時の射出スクリュ58の前進後の電動モータ61の減速時に発生する回生電力を、蓄電装置70、電気加熱手段38からなる金型加熱用の電力回路64へ制御装置40より回流回路65を介し、或いは、蓄電装置56、電気加熱手段55からなる冷却装置41を駆動する電力回路66へ回流回路54を介して回生することができる。(例えば、特公昭64−4896号公報)
【0041】
射出成形装置1を使用して樹脂製品を製造する射出成形方法について、図3の成形手順(s1〜s14)を示す工程図に従って説明する。先ず、図示しない型締装置を作動させて可動金型2と固定金型3を型締めし、キャビティ4を形成する。また、射出シリンダ6内に所定の樹脂材料を供給する。
【0042】
s1:加熱媒体供給バルブである切換弁45を開いて水蒸気を金型2,3へ送る。
s2:金型を加熱する。
s3:金型温度TMと金型の高温側の設定温度(設定金型上限温度)TSを比較しTM<TSのときは金型の加熱を続け、TM=TSになったら次工程s4へ進む。(金型の高温側設定温度TSは、金型キャビティ内に充填された樹脂が溶融状態を保持できる温度である。)
s4:加熱媒体供給バルブである切換弁45を閉じ、熱媒体の供給を止める。
【0043】
s5:シリンダ7aに作動油を送って、射出スクリュ8を前進させて溶融樹脂を金型キャビティ4に、主に射出工程を速度制御にて制御しながら射出充填する。
s6:作動油の油圧を上昇させて型内圧制御工程に移行する。
s7:型内圧(キャビティ内の樹脂圧)PMと設定型内圧PSを比較し、PM<PSのときは作動油の圧力を上昇させ、PM=PSとなった瞬間から、射出速度制御から射出圧力制御に切り換えて、所定の型内圧プロファイルに沿うように射出圧力を制御しつつ射出を行い、次工程s8へ進む。
s8:溶融樹脂充填。
s9:作動油圧保持のまま溶融樹脂充填完了。
【0044】
s10:冷却媒体供給バルブである切換弁49を開いて金型内のパイプマニホールド2a、3aの熱媒体を冷却媒体に置き換える。
s11:金型温度TMと金型の低温側設定温度(設定金型下限温度)TCを比較しTM>TCのときは金型の冷却を続け、TM=TCになったら次工程s12へ進む。(金型の低温側設定温度TCは、金型キャビティ内に充填された樹脂が固化する温度である。)
s12:冷却媒体供給バルブである切換弁49を閉じて冷却媒体の供給を止める。
s13:放冷する。
s14:成形品が取出し可能な温度まで冷えたとき、型を開いて成形品を取出す。
【0045】
制御装置20のCPU21には表示装置50が備えられている。図7は成形1サイクルの金型温度と、射出時の射出圧と型内圧とを同じ時系列で表示した一例である。図7の上段に成形工程を示し、その下側に成形工程のタイミングに合わせて射出圧力Ph(射出油圧)、型内圧PM、スクリュ位置を表示し、その下段に金型の温度TMを表示している。
【0046】
図の射出圧力Ph(射出油圧)と型内圧PMの線図において、樹脂の射出が開始してt0時間後に定常充填工程Kaが始まり、射出スクリュ8は一定速度で定常充填工程Kaを経過し、型内圧制御工程K2へ移行後、型内圧制御工程K2を終了する。
【0047】
金型温度TMが所定冷却下限温度である設定金型下限温度TCに到達した時点で、金型の熱媒体と冷却媒体の入れ替えが開始され、金型温度が設定金型上限温度TSに達したことを確認したとき、次の成形サイクルの射出が開始される。次の成形サイクルの射出開始は、金型温度が設定金型上限温度TSに達する前でもタイマーなどにより任意のタイミングで行っても良い。
【0048】
前記のように金型温度と射出圧力を連携して制御することにより得られる効果を図8〜図13を用いて説明する。図8と図9に従来成形におけるキャビティ段付き部の流動、圧力状態を示す。図12に従来成形における型内圧のプロファイルを示す。実線は低圧射出時の型内圧のプロファイルであり、二点破線は高圧射出時の型内圧のプロファイルである。図10と図11に本発明におけるキャビティ段付き部の流動、圧力状態を示す。図13に本発明における型内圧のプロファイルを示す。実線は低圧射出時の型内圧のプロファイルであり、二点破線は高圧射出時の型内圧のプロファイルである。
【0049】
図8及び図9では金型温度が通常、熱変形温度以下の樹脂固化温度であるため、充填中にスキン層が発生し、樹脂の流動可能領域が狭くなり、特に薄肉部では大きな圧力損失が発生し、局部的に樹脂圧が低い領域が発生してしまう。これに対し、例えば型内圧センサ19aが検知する型内圧値は、他部に設けられた型内圧センサ、例えばゲート直近に設けられた型内圧センサ19bや、ゲートから離れた部分に設けられた型内圧センサ19cが検知する型内圧変化度合いに対し、極端に小さな型内圧値の変化しか発生しない。
【0050】
このため、図12に示すように型内圧センサ19aが検知した型内圧値によって、射出圧力を制御すると、目標型内圧値を大きく変化させても、型内圧センサ19aのような型内圧力値が小さく樹脂の充填量が小さい箇所に発生する圧力値は期待ほど大きくは変化せず、充填不良、充填不足が発生してしまう。また充填不良、充填不足が無く、成形不良が発生しない型内圧センサ位置を見出すのは多数回にわたる試行錯誤が必要となり、作業効率が悪い。
【0051】
図10及び図11は本発明により射出充填中の金型の温度が樹脂の流動開始温度以上に保たれている為、スキン層が発生せず樹脂の流動可能領域が金型のキャビティ幅全域をとなり、樹脂の流動圧力損失を最小限となり型内圧力の差を緩やかにすることが出来る。よって薄肉部の型内圧センサ19cが検知する型内圧値は、他部の型内圧センサ19b、19cが検知する型内圧値との差が小さくなる。
【0052】
このため図13に示すように型内圧センサ19bが検知する型内圧値によって射出圧力を制御し、目標型内圧値を変化させれば、型内圧センサ19aが設けられた薄肉の部分でも、期待通りの型内圧変化を得ることが出来ることから、充填不良、充填不足が無く、成形不良が発生しない型内圧センサ位置を見出すことが容易になる。また、どの位置に型内圧センサを備えても、制御性が高い適正な型内圧値の選定が容易にできるので、型内圧センサの設置位置の選定も短時間で行うことができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態として、図1の射出成形装置1、又は、図5の射出成形装置120を用いた成形手順を示す工程図(図4)により説明する。この第2の実施の形態の成形方法が上述の第1の実施の形態の成形方法と異なる点は、工程s3の金型温度の比較制御工程をタイマー1(t1)の工程s15に、同様に、金型冷却時の工程s11の金型温度の比較制御工程をタイマー2(t2)の工程s16に置き換えたことであり、その他の工程と順序に変わりは無い。
【0054】
射出成形装置1を使用して第2の実施の形態の樹脂製品を製造する射出成形方法について、図4の成形手順(s1〜s16)を示す工程図に従って説明する。先ず、図示しない型締装置を作動させて可動金型2と固定金型3を型締めし、キャビティ4を形成する。また、射出シリンダ6内に所定の樹脂材料を供給する。
【0055】
s1:加熱媒体供給バルブである切換弁45を開いて水蒸気を金型2,3へ送る。
s2:金型を加熱する。
s15:タイマー1(t1)のカウントアップ
s4:加熱媒体供給バルブである切換弁45を閉じ、熱媒体の供給を止める。
【0056】
s5:シリンダ7aに作動油を送って、射出スクリュ8を前進させて溶融樹脂を金型キャビティ4に射出充填する。
s6:作動油の油圧を上昇させて型内圧保持制御工程に移行する。
s7:型内圧(キャビティ内の樹脂圧)PMと設定型内圧PSを比較し、PM<PSのときは作動油の圧力を上昇させ、PM=PSのときは作動油圧を保持し、次工程s8へ進む。
s8:溶融樹脂充填。
s9:作動油圧保持のまま溶融樹脂充填完了。
【0057】
s10:冷却媒体供給バルブである切換弁49を開いて金型内のパイプマニホールド2a、3aの熱媒体を冷却媒体に置き換える。
s16:タイマー2(t2)のカウントアップ
s12:冷却媒体供給バルブである切換弁49を閉じて冷却媒体の供給を止める。
s13:放冷する。
s14:成形品が取出し可能な温度まで冷えたとき、型を開いて成形品を取出す。
【0058】
型内圧制御工程K2が開始した時点でカウント開始し始めたタイマー2(t2)がカウントアップした時点で、金型の熱媒体と冷却媒体の入れ替えが開始され、金型温度が上昇を始めた時点K3においてタイマー1(t1)がカウント開始する。t1がカウントアップした時点で、次の成形サイクルの射出が開始される。
【0059】
タイマー1(t1)、タイマー2(t2)は、いずれも、始点と時間の調整が可能であり、金型の昇温、降温のオーバーシュートを考慮して早め、遅めにセットを調整して、最適な始点のタイミングとタイムアップ時点を決めることができる。
【0060】
金型の加熱時間、或いは、冷却の時間は、熱媒体又は、冷却媒体の温度と供給速度が同じであれば、各成形サイクル毎に殆ど変わることは無いので、多少の余裕をとってタイマー1(t1)又は、タイマー2(t2)の時間を設定して置けば、加熱媒体又は、冷却媒体の切換を行っても成形条件から外れることはない。
【0061】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態として、図1の射出成形装置1、又は、図5の射出成形装置120を用いた成形手順を示す工程図(図6)により説明する。この第3の実施の形態の成形方法が上述の第1の実施の形態の成形方法と異なる点は、工程s4の熱媒体供給バルブ閉と、工程s10の冷却媒体供給バルブ開との間にs17のタイマー3(t3)の工程を挿入し、また、工程s12の冷却媒体供給停止と、工程s1の加熱媒体供給開始との間にs18のタイマー4(t4)の工程を挿入したことであり、その他の工程と順序に変わりは無い。
【0062】
射出成形装置1を使用して樹脂製品を製造する射出成形方法について、図6の成形手順(s1〜s14)を示す工程図に従って説明する。先ず、図示しない型締装置を作動させて可動金型2と固定金型3を型締めし、キャビティ4を形成する。また、射出シリンダ6内に所定の樹脂材料を供給する。
【0063】
s1:加熱媒体供給バルブである切換弁45を開いて水蒸気を金型2,3へ送る。
s2:金型を加熱する。
s3:金型温度TMと金型の高温側設定温度(設定金型上限温度)TSを比較しTM<TSのときは金型の加熱を続け、TM=TSになったら次工程s4へ進む。(金型の高温側設定温度TSは、金型キャビティ内に充填された樹脂が溶融状態を保持できる温度である。)
s4:加熱媒体供給バルブである切換弁45を閉じ、熱媒体の供給を止める。
s17:タイマー3(t3)カウントスタート。タイマー3(t3)カウントアップにより工程s10:冷却媒体供給開始に移行する。
【0064】
s5:シリンダ7aに作動油を送って、射出スクリュ8を前進させて溶融樹脂を金型キャビティ4に射出充填する。
s6:作動油の油圧を上昇させて型内圧保持制御工程に移行する。
s7:型内圧(キャビティ内の樹脂圧)PMと設定型内圧PSを比較し、PM<PSのときは作動油の圧力を上昇させ、PM=PSのときは作動油圧を保持し、次工程s8へ進む。
s8:溶融樹脂充填。
s9:作動油圧保持のまま溶融樹脂充填完了。
【0065】
s10:冷却媒体供給バルブである切換弁49を開いて金型内のパイプマニホールド2a、3aの熱媒体を冷却媒体に置き換える。
s18:タイマー4(t4)カウント開始。タイマー4(t4)カウントアップにて、工程s1の加熱媒体供給開始に移行する。
s11:金型温度TMと金型の低温側設定温度(設定金型下限温度)TCを比較しTM>TCのときは金型の冷却を続け、TM=TCになったら次工程s12へ進む。(金型の低温側設定温度TCは、金型キャビティ内に充填された樹脂が固化する温度である。)
s12:冷却媒体供給バルブである切換弁49を閉じて冷却媒体の供給を止める。
s13:放冷する。
s14:成形品が取出し可能な温度まで冷えたとき、型を開いて成形品を取出す。
【0066】
金型温度TMが所定の低温側設定温度(設定金型下限温度)TCに到達した時点、又は、型内圧制御工程K2が開始した時点でカウント開始し始めたタイマーt4がカウントアップした時点で、冷却から加熱に切り換え、次サイクルのタイマーt1がカウント開始する。
【0067】
成形作業の初期においての温度比較制御が不安定なときは、加熱媒体と冷却媒体の切換えタイミングを温度とタイマーの2つの条件が成立したタイミングとしても良い。
【0068】
前記実施の形態における加熱媒体と冷却媒体の切換えタイミングを適正に選定する為に、表示装置50に表示された温度と型内圧のグラフでビジュアルに確認することにより、工程の切り換えタイミングの選定をイメージし易くなり、適正な加熱媒体と冷却媒体の切換えタイミングの選定が容易になる。
【0069】
また前記実施の形態1〜3では、冷却開始のタイミングを充填完了時またはタイマーのカウントアップとしているが、キャビティの所定位置の圧力が予め定めた所定の圧力値に達した時点で冷却を開始しても良い。当該キャビティの所定位置を高外観、高転写性が必要な箇所に選定すれば、射出工程中に高外観、高転写性が必要な箇所の圧力が、転写に有効な圧力値に達したことを確認して冷却を開始できるので、確実な転写性を得ることが出来る上、成形サイクルの短縮に有効である。
【0070】
更には、冷却開始は射出スクリュ8または58が予め設定された所定の位置に達した時点で冷却開始としても良い。型内圧PMが設定型内圧PSに到達後は、射出工程は圧力制御にて行う為、予め設定された設定型内圧PSが充填に不十分であった場合、射出スクリュ8または58はキャビティ4を充満させる前に前進が出来なくなり停止してしまう。この状態で、制御装置20、40が充填完了を判断し冷却を開始させた場合、充填不足のままキャビティ4内の樹脂が固化してしまい成形不良が発生する。この場合に対して、射出スクリュ8または58が予め設定されたキャビティ4内が樹脂で十分充満可能なスクリュ位置まで達していることが冷却開始の必要条件であれば、充填不足のままキャビティ4内の樹脂が固化してしまい成形不良の発生を防止できる。
【0071】
また冷却開始は、前記加熱媒体供給終了と同時または加熱熱媒体供給終了とともにスタートするタイマーのカウントアップ時点と、前記キャビティ4の所定位置の圧力の予め定めた所定の圧力値への到達と、射出スクリュ8または58が予め設定された所定の位置に達した時点の、少なくとも1つを選択して、前記冷却媒体供給の開始のタイミングとしても良い。タイマーとキャビティ内圧力とスクリュ位置のいずれか1つ乃至2つ、あるいは全ての条件を選定できることから、成形条件の設定幅を大きくでき成形性を向上できる。当該条件の選定要領としては、選定した条件が全て満足すること、選定した条件の内1つが成立することなど種々の方法が可能である。
【0072】
本発明の射出成形サイクル中における温度制御については、金型加熱回路の各部の構成、成形手順については、上記したものに何ら限定する意図は無く、適宜に変更されることを許容する。これ以外にも本発明の意図を逸脱しない限り、上記実施の形態に挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1、120 射出成形装置
2 可動金型
3 固定金型
4 キャビティ
5、30 射出ユニット
6、57 射出シリンダ
8、58 射出スクリュ
10 スクリュ回転モータ
60 回転駆動モータ
14 サーボバルブ
17 圧力センサ
20、40 制御装置
21 CPU
31 水蒸気発生装置
41 冷却装置
50 表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、
金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、
前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達した時点、または金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、
一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により設定された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達した時点、または金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載する射出成形方法において、
前記金型が、樹脂流動圧が低下するような薄肉部を有する金型であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載する射出成形方法において、
充填工程の充填中または充填完了まで、少なくとも前記薄肉部の温度を、樹脂の流動開始温度以上に維持することを特徴とする射出成形方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記射出プランジャまたはスクリュの前進が電動モータを駆動源とする射出装置であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
請求項4に記載する射出成形方法において、
前記電動モータの減速時に発生する回生電力を前記金型加熱冷却装置に供給することを特徴とする射出成形方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記型内圧センサにより測定された型内圧プロファイルと前記キャビティ近傍に備えた温度センサにより測定された金型の温度プロファイルを表示装置に同一の画面で表示して成形条件の妥当性を評価することを特徴とする射出成形方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記樹脂が高粘度の非晶性樹脂であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項9】
金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、
金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、
前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達し、かつ、金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、
一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達し、かつ、金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする射出成形方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記冷却媒体供給の開始のタイミングを、前記加熱媒体の供給終了時点または加熱媒体供給終了と同時にスタートするタイマーのカウントアップ時点と、射出プランジャまたはスクリュが所定の位置に到達した時点と、キャビティの所定位置の圧力が予め定めた所定の圧力値に達した時点の、少なくとも1つを選択して、前記冷却媒体供給の開始のタイミングとすることを特徴とする射出成形方法。
【請求項11】
金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形装置であって、更に、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置と、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御する制御装置をも備え、
請求項1〜10のいずれか1項に記載する射出成形方法を実施する制御装置を備えたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項1】
金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、
金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、
前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達した時点、または金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、
一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により設定された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達した時点、または金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載する射出成形方法において、
前記金型が、樹脂流動圧が低下するような薄肉部を有する金型であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載する射出成形方法において、
充填工程の充填中または充填完了まで、少なくとも前記薄肉部の温度を、樹脂の流動開始温度以上に維持することを特徴とする射出成形方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記射出プランジャまたはスクリュの前進が電動モータを駆動源とする射出装置であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
請求項4に記載する射出成形方法において、
前記電動モータの減速時に発生する回生電力を前記金型加熱冷却装置に供給することを特徴とする射出成形方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記型内圧センサにより測定された型内圧プロファイルと前記キャビティ近傍に備えた温度センサにより測定された金型の温度プロファイルを表示装置に同一の画面で表示して成形条件の妥当性を評価することを特徴とする射出成形方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記樹脂が高粘度の非晶性樹脂であることを特徴とする射出成形方法。
【請求項9】
金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な少なくとも1つの型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形機と、
金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置とを備え、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御しながら前記射出成形機を操作して成形品を製造する射出成形方法において、
前記射出装置が金型内に溶融樹脂を射出する前に、加熱媒体の供給を開始することにより金型の温度を加熱昇温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の加熱目標温度に達し、かつ、金型を加熱開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で加熱媒体の供給を終了し、
一方、前記金型の加熱途中または加熱終了後に前記射出装置が金型内への溶融樹脂の充填を開始し、該充填工程において、前記圧力センサにより測定した金型内の圧力が、前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの射出圧力を制御し、該充填工程の充填中または充填後に、冷却媒体の供給を開始することにより金型の温度を降温し、前記キャビティ近傍に備えた前記温度センサにより測定された金型の温度が、所定の冷却目標温度に達し、かつ、金型を冷却開始からスタートするタイマーがタイムアップした時点で冷却媒体の供給を終了することを特徴とする射出成形方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載する射出成形方法において、
前記冷却媒体供給の開始のタイミングを、前記加熱媒体の供給終了時点または加熱媒体供給終了と同時にスタートするタイマーのカウントアップ時点と、射出プランジャまたはスクリュが所定の位置に到達した時点と、キャビティの所定位置の圧力が予め定めた所定の圧力値に達した時点の、少なくとも1つを選択して、前記冷却媒体供給の開始のタイミングとすることを特徴とする射出成形方法。
【請求項11】
金型キャビティ内の樹脂圧力を測定可能な型内圧センサと、キャビティ近傍の温度を測定可能な温度センサを少なくとも1つ備えた金型と、前記金型内に射出プランジャまたはスクリュの前進により溶融樹脂を充填する射出装置と、所定のキャビティ内の型内圧力値を入力可能な入力装置と、前記圧力センサにより測定された圧力値が前記入力装置により入力された型内圧力値となるように、前記射出プランジャまたはスクリュの前進圧力である射出圧力を制御する射出圧力制御装置とを備えた射出成形装置であって、更に、金型を加熱するための加熱媒体と金型を冷却するための冷却媒体をそれぞれ供給することが可能な金型加熱冷却装置と、加熱媒体と冷却媒体を切換えるバルブを備え加熱媒体と冷却媒体を前記バルブにより切換えて共通の流路に供給し金型の温度を制御する制御装置をも備え、
請求項1〜10のいずれか1項に記載する射出成形方法を実施する制御装置を備えたことを特徴とする射出成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−89484(P2010−89484A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99202(P2009−99202)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【分割の表示】特願2008−262573(P2008−262573)の分割
【原出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(505139458)三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【分割の表示】特願2008−262573(P2008−262573)の分割
【原出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(505139458)三菱重工プラスチックテクノロジー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】
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