説明

射出成形方法及び装置

【課題】適切な型締め荷重で基板をクランプすることにより、基板にダメージを与えずにモールド成形する。
【解決手段】成形型100と型締め機構110と射出機構120とを有し、成形型の分割面間に、電子部品7を搭載した基板10を挿入し、成形型を閉じて型締めした際の型締め荷重F0により基板10をクランプし、成形型100の分割面間に形成されたキャビティ17に成形用樹脂2を射出することにより、基板10に搭載された電子部品7を樹脂モールドする装置であり、型締め荷重測定器13と、成形型を型締めしてキャビティ内に成形用樹脂を射出した際の成形型に作用する射出圧力に応じた型締め荷重F0と反対向きの射出荷重F2を測定する射出荷重測定器5と、型締め荷重測定器13の測定データと射出荷重測定器5の測定データとに基づいて型締め荷重F0を許容範囲に制御する制御手段と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に搭載された電子部品を樹脂モールドするための射出成形方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドテープやフィルム等の薄物基板上に搭載された電子部品を熱硬化樹脂でモールドする場合、一般的には、成形型の分割面間に、電子部品を搭載した基板を挿入し、成形型を閉じて型締めした際の型締め荷重により基板をクランプし、クランプした状態で基板上の電子部品を含むように成形型の分割面間に形成されたキャビティに成形用樹脂を射出して樹脂を硬化させることにより、基板に搭載された電子部品を封止している。
【0003】
その際、樹脂内の気泡を抜くために、成形用樹脂に対して所定の射出圧力(10〜15MPa)を付加しているのであるが、射出荷重(射出圧力×キャビティの投影面積)が型締め荷重を超えると金型が開いてしまい、樹脂漏れによるバリなどが発生するおそれがある。
【0004】
そこで、金型が開かないように射出荷重を超える大きめの型締め荷重を加えて型締めしているが、ポリイミドテープやフィルム等の薄物基板をクランプする場合、必要以上の型締め荷重でクランプしてしまうと、基板に傷がついたり基板が切れてしまったりして、品質上の問題を生じることがあるため、型締め荷重の調整が難しかった。
【0005】
一方、特許文献1や特許文献2に、射出成形時に成形材料の射出圧力を検出し、射出荷重を超える型締め荷重で成形型を型締めすることにより、型分割面からの成形材料の漏れを抑止する技術が記載されている。例えば、特許文献1に記載の技術では、射出成形材料の圧力を、射出ノズルに設けられた圧力センサで検出するようにしている。また、特許文献2に記載の技術では、射出成形材料に圧力を付与する射出シリンダの油圧を圧力センサで検出し、そのデータを射出圧力として利用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−287252号公報
【特許文献2】特開2005−231176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術のように、射出成形材料の圧力を圧力センサで直接測ると、成形材料の温度ばらつきによる圧力センサの膨張・収縮や樹脂の粘度差などに起因する測定誤差により、測定値が不安定になり、精度の良い測定ができない可能性がある。また、特許文献2に記載の技術のように、射出シリンダの油圧を測定する方法は、応答性が悪い上に、射出圧力を付与する入力側の圧力を測定するものであるから、実際に成形型に負荷される荷重を測定するのとは異なり、精度の良い測定ができない可能性がある。
【0008】
型締め荷重が射出荷重より下まわって成形型が開くことがないようにするには、射出荷重を超えるように型締め荷重を単純に増大させるだけでよいので、細かい測定や制御は要らないが、型締め荷重により薄物基板をクランプするような場合は、弱すぎずしかも強すぎない適正な型締め荷重で基板をクランプしなくてはならず、射出圧力に応じて成形型に作用する実荷重を精度良く把握する必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮し、適切な型締め荷重で基板をクランプすることにより、基板にダメージを与えずにモールド成形することのできる射出成形方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の射出成形方法は、成形型の分割面間に、電子部品を搭載した基板を挿入し、前記成形型を閉じて型締めした際の型締め荷重により前記基板をクランプし、クランプした状態で当該基板上の電子部品を含むように前記成形型の分割面間に形成されたキャビティに成形用樹脂を射出することにより、前記基板に搭載された電子部品を樹脂モールドする射出成形方法であって、前記成形型を型締めして前記キャビティ内に成形用樹脂を射出した際の当該成形型に作用する射出圧力に応じた前記型締め荷重と反対向きの射出荷重を荷重測定器により測定し、その測定した射出荷重に応じて前記型締め荷重を許容範囲内に制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の射出成形装置は、成形型と、当該成形型を型締めする型締め機構と、前記成形型のキャビティに成形用樹脂を射出する射出機構と、を有し、前記成形型の分割面間に、電子部品を搭載した基板を挿入し、前記成形型を閉じて型締めした際の型締め荷重により前記基板をクランプし、クランプした状態で当該基板上の電子部品を含むように前記成形型の分割面間に形成されたキャビティに成形用樹脂を射出することにより、前記基板に搭載された電子部品を樹脂モールドする射出成形装置であって、前記型締め荷重を測定する型締め荷重測定手段と、前記成形型を型締めして前記キャビティ内に成形用樹脂を射出した際の当該成形型に作用する射出圧力に応じた前記型締め荷重と反対向きの射出荷重を測定する射出荷重測定手段と、前記型締め荷重測定手段の測定データと前記射出荷重測定手段の測定データとに基づいて前記型締め荷重を許容範囲に制御する制御手段と、具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の射出成形方法及び装置によれば、成形型に作用する型締め荷重と反対向きの射出荷重を直接測定して、その射出荷重に応じて型締め荷重を許容範囲内に制御するので、樹脂の特性によるばらつきに影響を受けずに、実際に成形型に負荷されている射出荷重に基づいて高精度に型締め荷重を制御することができる。従って、必要最小限の型締め荷重で基板をクランプすることができ、基板のクランプによるダメージを減らして、品質向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の射出成形装置の概略構成図である。
【図2】同射出成形装置を用いて樹脂モールドする際の工程説明図で、成形型の分割面間に、電子部品が搭載された基板をセットした状態を示す図である。
【図3】図2の次の工程として、型締めを行っている状態を示す図である。
【図4】図3の次の工程として、成形用樹脂の射出を行っている状態を示す図である。
【図5】型締め荷重と射出荷重の時間変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、実施形態の射出成形装置は立型のもので、成形型100と、型締め機構110と、射出機構120と、制御手段(図示略)と、からなる。
【0015】
この射出成形装置は、成形型100の分割面間に、電子部品7を搭載した基板10を挿入し、成形型100を閉じて型締めした際の型締め荷重F0により基板10をクランプし、クランプした状態で基板10上の電子部品7を含むように成形型100の分割面間に形成されたキャビティ17に成形用樹脂2を射出することにより、基板10に搭載された電子部品7を樹脂モールドするものである。
【0016】
成形型100は、固定金型である上型9と、可動金型である下型11とからなり、上型9と下型11は上下に対向している。成形型100の分割面とは、上下に対向した上型9の下面と下型11の上面のことである。下型11の上面には凹所11aが形成され、その凹所11aに、電子部品7が搭載された基板10がセットされる。また、上型9の下面には、下型11の凹所11aにセットされた基板10の上面に押圧して基板10をクランプする枠状のクランプ凸部9aが設けられている。電子部品7を搭載した基板10を下型11の上面にセットして、上型9と下型11を閉じた場合、クランプ凸部9aの内側に樹脂を注入するキャビティ17が形成され、そのキャビティ17内に電子部品7が含まれるように構成されている。
【0017】
型締め機構110は、上端の固定プレート1と、その下側の可動プレート12と、その更に下側のベースプレート16と、を有しており、上型9は固定プレート1の下面に固定され、下型11は可動プレート12の上面に固定されている。固定プレート1とベースプレート16は、4本のガイドポスト18で互いに連結されており、可動プレート12は、ガイドポスト18に沿って上下方向に移動するようになっている。可動プレート12に下側には、可動プレート12を上下動させることで成形型100に型締め荷重を加える型締め駆動源15と、型締め荷重F0を測定する型締め荷重測定器(型締め荷重測定手段)13とが設けられている。
【0018】
また、射出機構120は、プランジャ式のもので、成形型100のキャビティ17内に加熱溶融した成形用樹脂(エポキシ樹脂など)2をプランジャ6で流し込むための射出駆動源3を有すると共に、プランジャ(機構部品)6によって成形用樹脂を成形型100内に圧入した際にプランジャ6に加わる射出荷重F2を測定する射出荷重測定器(射出荷重測定手段)5を有する。この射出荷重測定器5が測定する射出荷重F2は、成形型100に対し型締め荷重F0と反対向きの荷重F1となって作用する。制御手段は、型締め荷重測定器13の測定データと射出荷重測定器5の測定データとに基づいて型締め荷重F0を許容範囲に制御する機能を持つ。
【0019】
次に射出成形方法の一例を説明する。
基板10に搭載された電子部品7を樹脂モールドする場合は、まず、図2に示すように、型締め機構14により可動プレート12を下降させている状態で、下型11の凹所11a内に、ポリイミドテープやフィルム等で構成された薄物の基板10を供給する。基板10上には、予め、ベアチップやWLCSP等の電子部品(デバイス)7が搭載されている。
【0020】
基板10の供給が完了したら、型締め機構14により可動プレート12を上昇させて成形型100を閉じ、型締めした際の型締め荷重F0により下型11と上型9とで基板10をクランプする。このときの型締め荷重F0は、型締め荷重測定器13で測定・制御する。型締め荷重は、クランプする基板10の材質によって異なるが、フィルムやテープのように柔らかいものほど低く設定し、硬いものであれば、硬いほど高く設定する。例えば、金属では、圧力換算すると100〜350Mpa程度に設定する。
【0021】
型締めが完了したら、図示していない加熱部で例えば175〜180℃の温度に加熱された上型9と下型11の間のキャビティ17に成形用樹脂2を射出する。キャビティ17が満杯になると、射出荷重測定器5で荷重増加が測定されるので、所定の荷重(圧力換算で10〜15Mpa程度)になるまで加圧する。このときの型締め荷重をF0、射出荷重をF2とすると、可動プレート12には、成形型100を閉じようとする型締め荷重F0と、成形型100を開かそうとする射出荷重F2が作用する。この段階で、成形型100を閉じさせるのに必要な最低限の型締め荷重F0を達成できていないと、射出荷重F2に負けて成形型100が開いてしまい、樹脂漏れやバリ発生の原因となる。
【0022】
そこで、制御手段は、図5に示すように、射出荷重測定器5で測定した射出荷重F2を初期の型締め荷重F0に加算し、F0+F2を新たなF0として更新設定することで、成形型100が開くことを防止するような型締め荷重制御を行う。そして、更新した新たな型締め荷重F0による型締めを樹脂が硬化するまで維持し続け、80秒〜120秒程度の硬化時間が経過した後、射出荷重F2を抜くと共に型締め荷重F0の抜き操作を行う。この操作が終了したら、下型11を下降させ、モールド済みの基板10を取り出して成形を完了する。
【0023】
以上のように、成形型100に作用する型締め荷重F0と反対向きの射出荷重F2を直接測定して、その射出荷重F2に応じて型締め荷重F0を許容範囲内に制御するので、成形用樹脂2の特性によるばらつきに影響を受けずに、実際に成形型100に負荷されている射出荷重F2に基づいて高精度に型締め荷重F0を制御することができる。従って、必要最小限の型締め荷重F0で基板10をクランプすることができ、基板10のクランプによるダメージを減らして、品質向上を図ることができる。
【0024】
特に、本実施形態の射出成形装置では、射出荷重測定手段として、射出機構120の機構部品(プランジャ6)に作用する荷重を直接測定する荷重測定器5が設けられているので、高精度に実際の射出荷重F2を測定することができ、基板10をクランプするための高精度の型締め荷重F0の制御が可能となる。
【0025】
なお、上記実施形態では、基板10の上面側に搭載した電子部品7をモールドする場合を示したが、下面側に搭載した電子部品をモールドすることも可能である。また、基板10の両面の電子部品をモールドする場合にも、本発明は適用することができるし、モールド形状についても限定されない。
【0026】
また、上記実施形態では、成形用樹脂の射出方向を下向きに設定しているが、射出方向は型締め方向に対してどの方向としてもよい。
【符号の説明】
【0027】
2 成形用樹脂
5 射出荷重測定器(射出荷重測定手段)
6 プランジャ(機構部品)
7 電子部品
10 基板
13 型締め荷重測定器(型締め荷重測定手段)
17 キャビティ
100 成形型
110 型締め機構
120 射出機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型の分割面間に、電子部品を搭載した基板を挿入し、前記成形型を閉じて型締めした際の型締め荷重により前記基板をクランプし、クランプした状態で当該基板上の電子部品を含むように前記成形型の分割面間に形成されたキャビティに成形用樹脂を射出することにより、前記基板に搭載された電子部品を樹脂モールドする射出成形方法であって、
前記成形型を型締めして前記キャビティ内に成形用樹脂を射出した際の当該成形型に作用する射出圧力に応じた前記型締め荷重と反対向きの射出荷重を荷重測定器により測定し、その測定した射出荷重に応じて前記型締め荷重を許容範囲内に制御することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
成形型と、当該成形型を型締めする型締め機構と、前記成形型のキャビティに成形用樹脂を射出する射出機構と、を有し、前記成形型の分割面間に、電子部品を搭載した基板を挿入し、前記成形型を閉じて型締めした際の型締め荷重により前記基板をクランプし、クランプした状態で当該基板上の電子部品を含むように前記成形型の分割面間に形成されたキャビティに成形用樹脂を射出することにより、前記基板に搭載された電子部品を樹脂モールドする射出成形装置であって、
前記型締め荷重を測定する型締め荷重測定手段と、
前記成形型を型締めして前記キャビティ内に成形用樹脂を射出した際の当該成形型に作用する射出圧力に応じた前記型締め荷重と反対向きの射出荷重を測定する射出荷重測定手段と、
前記型締め荷重測定手段の測定データと前記射出荷重測定手段の測定データとに基づいて前記型締め荷重を許容範囲に制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とする射出成形装置。
【請求項3】
前記射出荷重測定手段として、前記射出機構の機構部品に作用する荷重を直接測定する荷重測定器が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66492(P2012−66492A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213359(P2010−213359)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】