説明

射出成形機及び射出成形機用制御回路

【課題】射出時におけるスクリュの加減速指令に対する応答性が良好で、高品質の薄物又は精密品を歩留まり良く成形可能な射出成形機及び射出成形機用制御回路を提供する。
【解決手段】射出制御用サーボアンプ26を介して射出用電動サーボモータ4を駆動する射出モータ駆動回路を備えた射出成形機において、前記射出制御用サーボアンプ26に、コントローラ11から出力される射出位置指令パターンxij0にスクリュ1の位置を追随させる射出速度指令vijと、コントローラ11から出力される加速度指令パターンaij0に所要の定数を乗算して得られるトルク加算値taを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機及び射出成形機用制御回路に係り、特に、射出用モータとして電動サーボモータを用いたインラインスクリュ式射出成形機における、射出用電動サーボモータの加減速制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュを回転駆動する計量用電動サーボモータと、該スクリュを前後進駆動する射出用電動サーボモータとを備え、スクリュを回転駆動しながら後退駆動することによって樹脂材料の溶融と計量とを行い、計量完了後、回転を止めた状態で、スクリュを急速に前進駆動することによって、加熱シリンダ内の溶融樹脂を金型内に射出・充填するインラインスクリュ式の射出成形機が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図5に、従来知られているこの種の射出成形機用の制御回路を示す。この図において、符号1はスクリュ、符号2は計量用(可塑化用)電動サーボモータ、符号3は計量用電動サーボモータ2の回転位置を検出する計量モータ用エンコーダ、符号4は射出用電動サーボモータ、符号5は射出用電動サーボモータ4の回転位置を検出する射出モータ用エンコーダ、符号6は射出用電動サーボモータ4の回転力を直進力に変換してスクリュ1に伝達する、ねじ軸6aとこれに螺合されたナット体6bとからなるボールねじ機構、符号7はスクリュ1に作用する射出圧及び背圧を測定するロードセルである。
【0004】
図示しない加熱シリンダ内でスクリュ1を回転駆動すると、図示しないホッパから加熱シリンダ内に、スクリュ1の回転量に応じた原料樹脂が順次供給される。加熱シリンダ内に供給された原料樹脂は、スクリュ1の回転に伴う剪断力や摩擦力を受けて混練・可塑化されながら、スクリュ1の送り作用により、順次スクリュの先端側(図の左側)に移送され、加熱シリンダの先端側に蓄積される。溶融樹脂の計量は、加熱シリンダの先端側への溶融樹脂の蓄積に伴って、射出用電動サーボモータ4を逆転してスクリュ1を後退させ、スクリュ1が予め定められた計量完了位置に至ったときに終了する。計量完了後、射出用電動サーボモータ4を急速に逆転し、スクリュ1を図の左方向に急速に前進させる。これにより、加熱シリンダ内に蓄えられた溶融樹脂は、ノズルを介して図示しない金型内に射出される。
【0005】
図5において、符号xij0はスクリュ1の前進位置を表す射出位置指令パターン信号、符号vij0はスクリュ1の前進速度を表す射出速度指令パターン信号、符号vcg0は計量用電動サーボモータ2の回転速度を設定する計量モータ回転速度設定パターン信号であり、これらの信号は、上位のコントローラ11から供給される。該コントローラ11には、計量用電動サーボモータ2及び射出用電動サーボモータ4の制御条件を含む射出成形機の運転条件を入力する入力手段12と、これらの運転条件及び射出成形機の運転状況等を表示する表示手段13が付設されている。
【0006】
射出位置指令パターン信号xij0と、射出制御用サーボアンプ26から出力されるスクリュ位置信号xijmは、スクリュ位置信号xijmをフィードバック信号として、加算器21において偏差e1がとられ、この偏差e1をもとに射出用電動サーボモータ4をフィードバック制御する。なお、スクリュ位置信号xijmは、射出用電動サーボモータ4の基準位置からの回転量により求められる。
【0007】
射出位置指令用のPID制御器22は、偏差e1をもとにスクリュ位置の操作量u1を算出し、速度演算器23は、操作量u1をもとに射出速度指令v1を演算する。また、加算器24は、射出速度指令パターン信号vij0を増幅器25で定数を乗算することにより得られる射出速度加算値信号vffをフィードフォワード信号として、射出速度指令v1に加算し、射出用電動サーボモータ4に与える射出速度指令vijを得る。射出制御用サーボアンプ26は、得られた射出速度指令vijにしたがって射出用電動サーボモータ4の回転を制御する。なお、射出用電動サーボモータ4の回転位置は、射出制御用サーボアンプ26を介して加算器21に供給される。
【0008】
図6に、射出位置指令パターン信号xij0、射出速度指令パターン信号vij0、射出速度指令v1、及び射出速度指令vijを示す。
【0009】
計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0は、計量制御用サーボアンプ27に供給され、計量制御用サーボアンプ27は、計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0にしたがって、計量用電動サーボモータ2の回転を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−345337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、薄物や精密品の射出成形においては、樹脂が溶融している間に金型内への溶融樹脂の充填を完了する必要があるので、通常の射出成形よりも、スクリュ1を前進駆動する際の加減速指令に対するスクリュ1の応答性を高めることが求められる。
【0012】
しかしながら、射出制御用サーボアンプ26は、その構造上、瞬発的なトルク(電流)を出すことができないので、図5に示した制御回路では、立上り及び立下りの傾斜が急峻な射出速度指令vijを与えても、スクリュ1の加減速に後れが生じ、成形品の更なる薄型化及び精密化を図ることが難しいという問題がある。
【0013】
なお、射出制御用サーボアンプ26で射出速度指令vijを微分し、この微分値をフィードフォワード信号として射出速度指令vijに加算すれば、スクリュ1の駆動後れを解消又は緩和することができるが、微分値はノイズの影響を受けやすいため、製品にばらつきが生じやすく、実用上好ましい手段であるとは言い難い。
【0014】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、射出時におけるスクリュの加減速指令に対する応答性が良好で、高品質の薄物又は精密品を歩留まり良く成形可能な射出成形機及び射出成形機用制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記の課題を解決するため、射出成形機に関しては、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュと、該スクリュを回転駆動する計量用電動サーボモータと、前記スクリュを前後進駆動する射出用電動サーボモータと、前記射出用電動サーボモータの駆動を制御する射出制御用サーボアンプを含み、上位のコントローラから出力される位置指令パターンに前記スクリュの位置が追随するように前記射出用電動サーボモータを駆動する射出モータ駆動回路と、前記計量用電動サーボモータの駆動を制御する計量制御用サーボアンプを含み、前記コントローラから出力される回転速度設定パターンに前記スクリュの回転速度が追随するように前記計量用電動サーボモータを駆動する計量モータ駆動回路を備えた射出成形機において、前記コントローラから出力される射出加速度指令パターンに所要の定数を乗算して得られるトルク加算値を、前記射出モータ駆動回路に備えられた射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算回路を備えるという構成にした。
【0016】
また、射出成形機用制御回路に関しては、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュを回転駆動する計量用電動サーボモータと、前記スクリュを前後進駆動する射出用電動サーボモータと、前記射出用電動サーボモータの駆動を制御する射出制御用サーボアンプを含み、上位のコントローラから出力される位置指令パターンに前記スクリュの位置が追随するように前記射出用電動サーボモータを駆動する射出モータ駆動回路と、前記計量用電動サーボモータの駆動を制御する計量制御用サーボアンプを含み、前記コントローラから出力される回転速度設定パターンに前記スクリュの回転速度が追随するように前記計量用電動サーボモータを駆動する計量モータ駆動回路を備えた射出成形機用制御回路において、 前記コントローラから出力される加速度指令パターンに所要の定数を乗算して得られるトルク加算値を、前記射出モータ駆動回路に備えられた射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算回路を備えるという構成にした。
【0017】
コントローラから出力される射出加速度指令パターンに所要の定数を乗算すると、トルク加算値が得られる。このトルク加算値を射出制御用サーボアンプに供給すると、コントローラから出力される射出位置指令パターンにスクリュ位置を追随すべく射出制御用サーボアンプから出力されるトルク(電流)に、トルク加算値に応じたトルク(電流)を重畳させることができるので、射出時におけるスクリュの加減速指令に対する応答性を良好なものにすることができ、高精度の薄型品又は精密品の成形を行うことができる。
【0018】
また本発明は、前記構成の射出成形機において、前記トルク加算回路に1次遅れ要素を備え、前記射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算値を、前記1次遅れ要素に予め設定された時定数及びゲイン定数に応じて微調整するという構成にした。
【0019】
かかる構成によると、射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算値を、1次遅れ要素によって微調整できるので、より精密な加減速指令の生成が可能になり、より精密な薄型品又は精密品の成形が可能になる。
【0020】
また本発明は、前記構成の射出成形機において、前記コントローラに、前記所要の定数の入力手段と表示手段を備えるという構成にした。
【0021】
かかる構成によると、入力手段を操作することにより、射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算値を任意に設定することができるので、広汎な成形条件を自在に作り出すことができ、良品を高歩留まりで成形することができる。また、表示手段を備えるので、入力したトルク加算値をオペレータが随時確認することができ、射出成形機の操作性を高めることができる。
【0022】
また本発明は、前記構成の射出成形機において、前記コントローラに、前記1次遅れ要素に設定する時定数及びゲイン定数の入力手段と表示手段を備えるという構成にした。
【0023】
かかる構成によると、入力手段を操作することにより、1次遅れ要素に設定する時定数及びゲイン定数、ひいては、射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算値を任意に設定することができるので、広汎な成形条件を自在に作り出すことができ、良品を高歩留まりで成形することができる。また、表示手段を備えるので、入力した時定数及びゲイン定数をオペレータが随時確認することができ、射出成形機の操作性を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、射出用電動サーボモータの加減速制御系に、コントローラから出力される射出加速度指令パターンに所要の定数を乗算することにより得られるトルク加算値を射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算回路を備え、コントローラから出力される射出位置指令パターンにスクリュ位置を追随すべく射出制御用サーボアンプから出力されるトルクと、トルク加算回路から射出制御用サーボアンプに供給されるトルク加算値の合計で射出用電動サーボモータを駆動するようにしたので、射出時におけるスクリュの加減速指令に対する応答性を良好なものにすることができ、高精度の薄型品又は精密品の成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る射出成形機の制御回路を示す図である。
【図2】実施形態に係る射出成形機の射出装置を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る射出成形機の各種制御量の変動を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る射出成形機の制御回路を示す図である。
【図5】従来例に係る射出成形機の制御回路を示す図である。
【図6】従来例に係る射出成形機の各種制御量の変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る射出成形機の実施形態を、図1〜図4を参照しながら説明する。
【0027】
本実施形態に係る射出成形機も、機構上の構成については、図5に示した従来の射出成形機と同じであり、図1に示すように、スクリュ1と、計量用電動サーボモータ2と、計量用電動サーボモータ2の回転位置を検出する計量モータ用エンコーダ3と、射出用電動サーボモータ4と、射出用電動サーボモータ4の回転位置を検出する射出モータ用エンコーダ5と、射出用電動サーボモータ4の回転力を直進力に変換してスクリュ1に伝達するボールねじ機構6と、スクリュ1に作用する射出圧及び背圧を測定するロードセル7とを備えている。ボールねじ機構6は、ねじ軸6aと、これに螺合されたナット体6bとからなる。なお、計量モータ用エンコーダ3及び射出モータ用エンコーダ5としては、回転位置の絶対値を出力するアブソリュートタイプのエンコーダが用いられる。
【0028】
図2に示すように、図示しない射出ユニットベース盤上には、所要の間隔を隔てて、ヘッドストック41と保持プレート42とが対向に配設されており、これらの各部材41,42は、複数本のタイバー43を介して一体に連結されている。スクリュ1は、ヘッドストック41に開設されたスクリュ貫通孔41aに貫通され、その基端側に計量用電動サーボモータ2が連結される。また、スクリュ1の先端側は、ヘッドストック41に固定された加熱シリンダ44内に回転可能かつ前後進可能に収納される。加熱シリンダ44には、原料樹脂供給穴44aが開設されており、該原料樹脂供給穴44aを通して、ホッパ45内に蓄えられた粒状の原料樹脂を加熱シリンダ44内に導入するようになっている。射出用電動サーボモータ4は、保持プレート42に取り付けられており、ボールねじ機構6を介して、スクリュ1及び計量用電動サーボモータ2を一体的に前後進する。
【0029】
本実施形態に係る射出成形機も、図5に示した従来の射出成形機と同様に、計量用電動サーボモータ2によりスクリュ1を回転駆動しつつ、射出用電動サーボモータ4によりスクリュ1を後退することによって、溶融樹脂の計量を行う。また、計量完了後、射出用電動サーボモータ4を急速に逆転し、スクリュ1を急速に前進させることによって、計量された溶融樹脂を金型内に射出する。
【0030】
以下、第1実施形態に係る射出成形機の制御回路を、図1を用いて説明する。図5との対比から明らかなように、本例の制御回路は、図5に示した従来の制御回路に、上位のコントローラ11から供給される射出加速度指令パターン信号aij0に基づいて算出されるトルク加算値taを、射出制御用サーボアンプ26に与えるトルク加算回路を備えたことを特徴とする。
【0031】
即ち、図1において、符号aij0はスクリュ1の前進加速度を表す射出加速度指令パターン信号であり、図5を用いて説明した射出位置指令パターン信号xij0、射出速度指令パターン信号vij0及び計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0と同様に、上位のコントローラ11から供給される。
【0032】
射出位置指令パターン信号xij0と、射出制御用サーボアンプ26から出力されるスクリュ位置信号xijmは、スクリュ位置信号xijmをフィードバック信号として、加算器21において偏差e1がとられ、この偏差e1をもとに射出用電動サーボモータ4をフィードバック制御する。スクリュ位置信号xijmは、射出用電動サーボモータ4の基準位置からの回転量により求められる。
【0033】
位置指令用のPID制御器22は、偏差e1をもとにスクリュ位置の操作量u1を算出し、速度演算器23は、操作量u1をもとに射出速度指令v1を演算する。また、加算器24は、射出速度指令パターン信号vij0を増幅器25で定数を乗算することにより得られる射出速度加算値vffをフィードフォワード信号として射出速度指令v1に加算し、射出用電動サーボモータ4に与える射出速度指令vijを得る。なお、射出用電動サーボモータ4の回転位置は、射出制御用サーボアンプ26を介して加算器21に供給される。
【0034】
加速度指令パターン信号aij0は、増幅器28で定数を乗算することにより、トルク加算値taとなり、射出制御用サーボアンプ26に供給される。射出制御用サーボアンプ26は、射出速度指令vij及びトルク加算値taの合計で射出用電動サーボモータ4の回転を制御する。増幅器28の定数は、入力手段12を操作することによって適宜の値に設定することができる。よって、広汎な成形条件を自在に作り出すことができ、良品を高歩留まりで成形することができる。また、表示手段を備えるので、入力したトルク加算値をオペレータが随時確認することができ、射出成形機の操作性を高めることができる。
【0035】
計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0は、計量制御用サーボアンプ27に供給され、計量制御用サーボアンプ27は、計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0にしたがって、計量用電動サーボモータ2の回転を制御する。
【0036】
図3に、射出位置指令パターン信号xij0、射出速度指令パターン信号vij0、射出速度指令v1、射出速度指令vij、射出加速度指令パターン信号aij0、及びトルク加算値taを示す。
【0037】
このように、本例の制御回路は、速度指令vij及びトルク加算値taの合計で射出用電動サーボモータ4の回転を制御するので、射出時におけるスクリュ1の加減速指令に対するレスポンスを良好なものにすることができ、高精度の薄型品又は精密品を成形することができる。
【0038】
次に、第2実施形態に係る射出成形機の制御回路を、図4を用いて説明する。本例の制御回路は、図1との対比から明らかなように、図1に示した制御回路に、射出速度加算値vff及びトルク加算値taの微調整を行う一次遅れ要素31,32を追加したこと、及び、射出工程(1次射出工程)の終了後に行われる保圧工程を考慮した射出用電動サーボモータ4の制御回路を追加したことを特徴とする。なお、保圧工程とは、射出用電動サーボモータ4を、圧力フィードバック制御で駆動制御し、設定された保圧力をスクリュ1を介して金型内の樹脂に付加する操作である。
【0039】
図4において、符号bp0は保圧・背圧設定パターン信号であり、図5を用いて説明した射出位置指令パターン信号xij0、射出速度指令パターン信号vij0、計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0、及び、図1を用いて説明した射出加速度指令パターン信号aij0と同様に、上位のコントローラ11から供給される。
【0040】
射出位置指令パターン信号xij0と、射出制御用サーボアンプ26から出力されるスクリュ位置信号xijmは、スクリュ位置信号xijmをフィードバック信号として、加算器21において偏差e1がとられ、この偏差e1をもとに射出用電動サーボモータ4をフィードバック制御する。スクリュ位置信号xijmは、射出用電動サーボモータ4の基準位置からの回転量により求められる。
【0041】
位置指令用のPID制御器22は、偏差e1をもとにスクリュ位置の操作量u1を算出し、速度演算器23は、操作量u1をもとに射出速度指令v1を演算する。また、加算器24は、射出速度指令パターン信号vij0を増幅器25で定数を乗算し、その出力信号を一次遅れ要素31にて所定量だけ遅延することにより得られる射出速度加算値vffを、フィードフォワード信号として射出速度指令v1に加算し、前進速度制御値v3を得る。最小値選択器33は、後述する背圧時速度指令計算値v2と前記前進速度制御値v3のいずれか小さい方の値を選択し、選択した値を射出速度指令vijとして出力する。一次遅れ要素31の時定数及びゲイン定数は、入力手段12を操作することによって任意の値に設定することができ、その入力値は、表示装置13に表示させることができる。よって、広汎な成形条件を自在に作り出すことができ、良品を高歩留まりで成形することができると共に、入力した時定数及びゲイン定数をオペレータが随時確認することができるので、射出成形機の操作性を高めることができる。
【0042】
背圧時速度指令計算値v2を算出する回路で、加算器34は、保圧・背圧設定パターン信号bp0と、ロードセル7が計測した背圧との偏差e2をとる。背圧設定用のPID制御器35は、加算器34において求められた偏差e2をもとに、操作量u2を算出する。速度演算器36は、操作量u2をもとに背圧時速度指令計算値v2を演算し、演算結果を最小値選択器33に供給する。これにより、背圧時速度指令値計算値v2が過大となり、スクリュ1の前進位置をオーバーする場合においても、前進位置指令xijにより設定された位置以上となることを阻止することができる。
【0043】
加速度指令パターン信号aij0は、増幅器28で定数を乗算し、その出力信号を一次遅れ要素32にて所定量だけ遅延することにより、トルク加算値taとなり、射出制御用サーボアンプ26に供給される。射出制御用サーボアンプ26は、射出速度指令vij及びトルク加算値taの合計で射出用電動サーボモータ4の回転を制御する。一次遅れ要素32の時定数及びゲイン定数も、入力手段12を操作することによって任意の値に設定することができ、その入力値は、表示装置13に表示させることができる。
【0044】
計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0は、計量制御用サーボアンプ27に供給され、計量制御用サーボアンプ27は、計量モータ回転速度設定パターン信号vcg0にしたがって計量モータ2を駆動制御する。
【0045】
本実施形態によると、トルク加算回路に1次遅れ要素31,32を備え、射出制御用サーボアンプ26に供給するトルク加算値taを、1次遅れ要素31,32に予め設定された時定数及びゲイン定数に応じて微調整するので、より精密な加減速指令vij及びトルク加算値taの生成が可能になり、より精密な薄型品又は精密品の成形が可能になる。また、背圧時速度指令計算値v2を考慮して射出速度指令vijを生成するので、スクリュ1の加速制御のみならず、減速制御についても応答性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、射出成形機におけるスクリュの加減速制御に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 スクリュ
2 計量用電動サーボモータ
3 計量モータ用エンコーダ
4 射出用電動サーボモータ
5 射出モータ用エンコーダ
6 ボールねじ機構
6a ねじ軸
6b ナット体
7 ロードセル
11 コントローラ
12 入力手段
13 表示手段
21,24,34 加算器
22,35 PID制御器
23,36 速度演算器
25 増幅器
26 射出制御用サーボアンプ
27 計量制御用サーボアンプ
31,32 一次遅れ要素
33 最小値選択器
41 ヘッドストック
41a スクリュ貫通孔
42 保持プレート
43 タイバー
44 加熱シリンダ
44a 原料樹脂供給穴
45 ホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュと、該スクリュを回転駆動する計量用電動サーボモータと、前記スクリュを前後進駆動する射出用電動サーボモータと、前記射出用電動サーボモータの駆動を制御する射出制御用サーボアンプを含み、上位のコントローラから出力される位置指令パターンに前記スクリュの位置が追随するように前記射出用電動サーボモータを駆動する射出モータ駆動回路と、前記計量用電動サーボモータの駆動を制御する計量制御用サーボアンプを含み、前記コントローラから出力される回転速度設定パターンに前記スクリュの回転速度が追随するように前記計量用電動サーボモータを駆動する計量モータ駆動回路を備えた射出成形機において、
前記コントローラから出力される加速度指令パターンに所要の定数を乗算して得られるトルク加算値を、前記射出モータ駆動回路に備えられた射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算回路を備えたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記トルク加算回路に1次遅れ要素を備え、前記射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算値を、前記1次遅れ要素に予め設定された時定数及びゲイン定数に応じて微調整することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記コントローラに、前記所要の定数の入力手段と表示手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記コントローラに、前記1次遅れ要素に設定する時定数及びゲイン定数の入力手段と表示手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリュを回転駆動する計量用電動サーボモータと、前記スクリュを前後進駆動する射出用電動サーボモータと、前記射出用電動サーボモータの駆動を制御する射出制御用サーボアンプを含み、上位のコントローラから出力される位置指令パターンに前記スクリュの位置が追随するように前記射出用電動サーボモータを駆動する射出モータ駆動回路と、前記計量用電動サーボモータの駆動を制御する計量制御用サーボアンプを含み、前記コントローラから出力される回転速度設定パターンに前記スクリュの回転速度が追随するように前記計量用電動サーボモータを駆動する計量モータ駆動回路を備えた射出成形機用制御回路において、
前記コントローラから出力される加速度指令パターンに所要の定数を乗算して得られるトルク加算値を、前記射出モータ駆動回路に備えられた射出制御用サーボアンプに供給するトルク加算回路を備えたことを特徴とする射出成形機用制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11723(P2012−11723A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152128(P2010−152128)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】