説明

射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法

【課題】固定側金型意匠面に鏡面磨きを施すなど、表面粗さが非常に細かく設定された金型を用いて行なう射出成形において、成形品が固定側金型に張り付くことがなく離型性に優れている。
【解決手段】#8000番以上に鏡面仕上げされた鏡面コアを有する固定側金型3と、固定側金型3とパーティング面3aに対向して配置され、キャビティ4bとスライドコア4cとを有する可動側金型4とを備え、キャビティ4bは本体キャビティ部4dと、ツバ部形成キャビティ部4eとを有し、スライドコア4cにはツバ部2aに係止部2bを形成するための掘り込み4fが形成されており、型開が進むにつれてスライドコア4cを移動させて、スライドコア4cによる係止部2bの係合を解除するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体を成形するための射出成形用金型と熱可塑性樹脂成形体の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用灯具や施設照明などの照明部材(以下、単に照明部品という。)としては、樹脂成形体の表面にアルミニウムや銀などの金属膜が形成された反射鏡が使用されている。これらの反射鏡の製造においては、従来、金属膜形成面を平滑にして金属膜の密着性を高めるために樹脂成形品に下塗りが施されていたが、下塗りを施してから金属膜を形成するまでに埃や塵などの異物が付着して不良品が発生する場合があり、近年これらの不良品を低減することに対する要求が高まっている。
【0003】
そこで、下塗りを施すことなく、直接に金属、酸化物、窒化物から選択される膜を樹脂成形品に形成する工法の検討が進められているが、このように下塗りを施さない場合は、金属等の膜を成形した際に、樹脂成形品の表面凹凸が表面外観として現われるため、この樹脂成形品の表面凹凸を極力防止する必要がある。特にポリエステル樹脂のように金型表面の粗さの転写が良い樹脂組成物を用いて射出成形を行なう際には、用いる金型の表面粗さを非常に細かくする必要がある。
【0004】
しかしながら、金型の表面を磨き、表面粗さを非常に細かくした金型は、樹脂との密着性が高まり、成形品が離型し難くなる。特に、固定側金型のコア部を非常に細かく磨く場合には、コア部に射出成形品が張り付きをおこし、製品が取り出せないという問題があった。離型性の向上方法として、金型表面処理を行なう技術(特許文献1)が提示されているが、表面処理した場合には表面状態が変化する可能性がある。また、このような技術でも、深絞り形状を有する形状では離型性が不十分であるという課題があった。
【0005】
また離型剤を用いて離型性を向上させる方法も知られているが、離型剤を用いた場合には、金属膜の密着性が低下するという課題があった。
【特許文献1】特開2002−225088
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の問題を改善することを目的としてなされたものであって、固定側金型意匠面に鏡面磨きを施すなど、表面粗さが非常に細かく設定された金型を用いて行なう射出成形において、成形品が固定側金型のコアに張り付くことがない離型性に優れた射出成形用金型と熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、樹脂成形体を成形するための射出成形用金型であって、#8000番以上に鏡面仕上げされた鏡面コアを有する固定側金型と前記固定側金型とパーティング面に対向して配置され、キャビティとスライドコアとを有する可動側金型と、を備え、前記スライドコアには前記樹脂成形体に係止部を形成するための掘り込みが形成されており、型開が進むにつれて前記スライドコアを移動させて、前記スライドコアによる係止部の係合を解除するように構成されていることを特徴とする射出成形用金型である。
【0008】
また、本発明の第2は、上記に記載の射出成形用金型を用いて熱可塑性樹脂組成物を射出成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂成形体を成形するための射出成形において、成形品が固定側金型への張り付きを起こすことなく、良好な射出成形をおこなえる射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。図1は本発明の実施の形態に係る射出成形用金型1(図2)によって成形される樹脂成形体2の構成を示す説明図であり、(a)は、樹脂成形体2の平面図、(b)は、樹脂成形体2の断面図をそれぞれ示している。
【0011】
図1を参照して、図示の本発明の実施の形態に係る射出成形用金型1(図2)は、熱可塑性樹脂組成物を射出形成して樹脂成形体2を成形するための金型である。
【0012】
図1に示す樹脂成形体2は、熱可塑性樹脂組成物として熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する樹脂組成物を射出成形用金型1を用いて射出成形したものであり、金型からの抜き勾配を有するように深絞り形状に形成されている。
【0013】
この樹脂成形体2は、樹脂成形体2本体の外縁部に形成されるツバ状のツバ部2aを備えており、このツバ部2aは、樹脂成形体2本体の外縁部において後述する固定側金型3と可動側金型4のパーティング面3a、4a(図4)に概略平行に形成されている。そして、このツバ部2aに、鉤状に形成されている係止部2bを備えており、この係止部2bは、詳細は後述するが、可動側金型4のスライドコア4cによって係合されるようになっている。
【0014】
次に、図2を参照して、射出成形用金型1の構成を詳述する。図2は本発明の実施の形態に係る射出成形用金型1の概略の構成を示す断面図であり、図3は、スライドコア4cが、樹脂成形体2の係止部2bに係合した状態で、可動側金型4が固定側金型3から退避した状態を示す断面図である。また、図4は、可動側金型4がさらに固定側金型3から退避し、スライドコア4cが樹脂成形体2の係止部2bの係合を解除した状態を示す断面図である。
【0015】
図2〜図4を参照して、図示の本発明の実施の形態に係る射出成形用金型1は、上述の熱可塑性樹脂組成物を射出形成して樹脂成形体2(図1)を成形するための金型であって、固定側金型3と、可動側金型4とを備えている。
【0016】
上記固定側金型3は、図4に示すように、高光沢意匠面として研磨材を用いて鏡面仕上げが施された鏡面コア3bを有する。鏡面コア3bに使用される最終研磨は#8000番以上であり、好ましくは、#10000番以上である。また、さらに好ましくは#14000番以上の研磨が望ましい。研磨の程度が#8000番以下では、金型の加工目や研磨時の磨き目など、表面凹凸が残り、樹脂成形体2に金属膜を形成した際の表面光沢が不十分になる。
【0017】
上記可動側金型4は、固定側金型3とパーティング面3aに対向して配置された金型であり、固定側金型3に接合されて樹脂成形体2を射出成形することができる接合姿勢(図2)と、固定側金型3から退避して樹脂成形体2本体を可動側金型4本体から分離することができる分離姿勢(図4)との間で姿勢変更可能に構成されている。
【0018】
この可動側金型4は、固定側金型3とパーティング面3aに対向して配置されたキャビティ4bとスライドコア4cとを有している。
【0019】
キャビティ4bは、樹脂成形体2本体を形成するための本体キャビティ部4dと、ツバ部2aを形成するために本体キャビティ部4dの周囲に設けられるツバ部形成キャビティ部4eとを有している。そして、本体キャビティ部4dと固定側金型3の鏡面コア3bとは、前記鏡面コア及び前記キャビティが、深絞り形状の成形体を成形するような形状に形成されている。
【0020】
また、ツバ部形成キャビティ部4eは、樹脂成形体2本体の外縁部において固定側金型3と可動側金型4のパーティング面3a、4a(図4)に概略平行なツバ状のツバ部2aを形成するように構成されている。
【0021】
スライドコア4cは、ツバ部2aに係止部2bを形成するための掘り込み4f(図4)が形成された部材であり、このスライドコア4cは、また、スライド機構5により、可動側金型4に接合されて係止部2bの樹脂成形体2中心と反対側の面を成形可能な接合姿勢と、係止部2bから退避して樹脂成形体2を可動側金型4から分離可能な退避姿勢との間で姿勢変更可能に構成されている。
【0022】
すなわち、固定側金型3には、可動側金型4の接離方向に、金型の外側方向に傾く傾斜ピン3cが立設されており、また、スライドコア4cには型締時に傾斜ピン3cと嵌合する開口孔4gが設けられており、型開時に開口孔4gの表面と傾斜ピン3cとが摺動することにより、スライドコア4cが金型の外側方向に移動するように上記スライド機構5が構成されている。
【0023】
そして、この可動側金型4は、型開が進むにつれてスライドコア4cを移動させて、スライドコア4cによる係止部2bの係合を解除することができるように構成されている。
【0024】
なお、これら固定側金型3、可動側金型4、およびスライドコア4cの製作に用いられる鋼材は特に制約はなく、例えば、SUS420J2等のステンレス鋼、SKD11等の合金工具鋼、SKH151等のハイス鋼、S55C、SMS440等の構造用炭素鋼、アルミ合金、ベリリウム鋼等の非鉄金属が上げられる。固定側金型3は、鏡面仕上げを施すため、できれば組織目が細かいプリハードン鋼が好ましい。
【0025】
また、スライドコア4cは、油圧または空気圧により駆動されるスライド機構により可動側金型4に接合される接合姿勢と、金型の外側方向に移動して可動側金型4から分離される退避姿勢との間で姿勢を変更することができるように構成されてもよい。
【0026】
なお、本実施形態に係る射出成形用金型1における係止部は、樹脂成形体に設けられたツバ部に設けられているが、ツバ部を有しない樹脂成形体本体に直接係止部を設けてもよい。
【0027】
そして、本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、以下のとおりである。
【0028】
本発明の実施の形態に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、上記射出成形用金型1を搭載した射出成形機を用いて熱可塑性ポリエステル樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物を射出成形するものである。
【0029】
具体的には、上記射出成形用金型1を搭載した射出成形機において、射出成形機のシリンダーにおいて、予め設定した容積の溶融樹脂が計量される。
【0030】
そして、射出成形用金型1が型締めされた状態、すなわち、図2に示す状態で、可動側金型4が接合姿勢になった状態で溶融樹脂が射出される。射出により射出成形用金型1に流入した溶融樹脂は、所定の時間金型内で冷却されて固化して樹脂成形体2が形成される。そして、冷却工程の後、図3に示すように、スライドコア4cが、樹脂成形体2の係止部2bに係合した状態で、型開きして、可動側金型4が固定側金型3から退避し、樹脂成形体2本体が固定側金型3から分離される。そして、可動側金型4が固定側金型3から退避するに伴い、スライドコア4cが樹脂成形体2の係止部2bの係合を解除し、可動側金型4から樹脂成形体2が分離される。このとき、型開きの初期においては、スライドコア4cにより樹脂成形体が係止部2bにより係止されているために、型開力により、鏡面コア3bから樹脂成形体が、可動側金型4側に引っ張られて、鏡面コアから離される。このような、型開力を用いることにより、椀状、または、箱状等の深絞り形状の樹脂成形体で、その椀または箱の内部を細かく磨かれた高い鏡面を有する鏡面コアで形成する場合においても、鏡面コアに密着した離型性の悪い樹脂成形体を容易に離型することができる。そして、樹脂成形体2は、可動側金型4のキャビティ4b及びツバ部形成キャビティ4bに設けられた図略のエジェクタピン等により突き出されて、可動側金型4からも離型される。
【0031】
上記のような製造方法によれば、従来、射出成形機では得られなかった深絞り形状の内面が高い鏡面コアで形成されたような樹脂成形体を得ることができる。
【0032】
ここで、本発明に用いられる樹脂は特に制限されず、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、芳香族ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂など従来公知の樹脂が用いられ得る。中でも表面転写性及び耐熱性の観点から、熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0033】
熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等、またはこれらの共重合ポリエステルを挙げることができる。それらは単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0034】
そして、上記ポリエステル樹脂の中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート樹脂、または、これらの樹脂とビスフェノールAのポリエチレンオキサイド付加化合物またはポリテトラメチレングリコールとの共重合体が、取扱性、剛性、結晶性、耐熱性および表面性の点から好ましい。なお、ポリエステル樹脂の耐熱性または弾性率を著しく低下させない程度の少量であるならば、ポリアルキレンイソフタレート、ポリアルキレンナフタレートなどを混合して用いても差し支えない。
【0035】
また、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、成形工程における成形流動性および最終製品の諸物性を考慮して選択され、低すぎても高すぎても好ましくなく適した分子量を設定する必要がある。すなわち、熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒を用い25℃にて測定した対数粘度が、0.3〜2.0dl/gが好ましく、0.35〜1.9dl/gがより好ましく、0.4〜1.8dl/gが更に好ましい。熱可塑性ポリエステル樹脂の対数粘度が0.3dl/g未満である場合には、得られる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の機械的特性が低い場合があり、2.0dl/gを超える場合には成形時の流動性が劣る等の加工性に問題が生じる場合がある。
【0036】
また、本発明で用いる熱可塑性ポリエステル樹脂は、耐熱性や寸法精度や薄膜との密着性を高める目的から、無機化合物を加えることができる。
【0037】
また、本発明で用いられる無機化合物は特に限定されないが、例えば、膨潤性雲母、非膨潤性雲母、スメクタイト、タルク、カオリン等のケイ酸塩、リン酸ジルコニウム等のリン酸塩、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、タングステン酸ナトリウム等のタングステン酸塩、ウラン酸ナトリウム等のウラン酸塩、バナジン酸カリウム等のバナジン酸塩、モリブデン酸マグネシウム等のモリブデン酸塩、ニオブ酸カリウム等のニオブ酸塩、黒鉛層状化合物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化ケイ素や酸化チタン、アルミナ等の酸化物、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩化合物、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩化合物の他、硫化亜鉛、リン酸カルシウムがあげられるが、これらに限定されない。これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0038】
また、本発明で用いられる無機化合物の好ましい構造は、耐熱性を高め、光沢外観を損なわずに成形収縮率を低減する観点から、アスペクト比が大きく、また、樹脂中に均一に微分散するものである。上記の観点から、膨潤性雲母、非膨潤性雲母、タルク、カオリン、スメクタイトなどの層状ケイ酸塩が好ましく用いられる。
【0039】
また、上記無機化合物は、樹脂中に均一に微分散させるために、表面処理することができる。表面処理の方法としては特に限定されないが、シラン系化合物、チタン系化合物、アルミナ系化合物、ポリエーテル系化合物、アミン系化合物などが用いられ得る。入手の容易さ、取り扱い性、ポリエステル樹脂への熱劣化の影響の観点から、シラン系化合物、ポリエーテル系化合物が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、具体的な実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。本実施形態では、図1に示した筒形状の製品について成形時の固定側金型3への張り付き状態を観察した。固定側金型3の意匠面部を入れ子方式とし、入れ子は、大同特殊鋼製NAK80を用い製作し、筒形状の内面に#14000番研磨仕上げを施した。最大抜き勾配は、3°、または5°に設定した。
【0041】
使用した熱可塑性樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(KOLON社製、KP210)に、製造例1で得られた膨潤性雲母を3wt%または5wt%溶融混練して得られたものである。成形は、日本製鋼所社製(J150E−P)を使用し、シリンダー温度をノズル側から250℃、255℃、240℃、230℃、220℃に設定し、金型温度70℃にて成形し、固定側金型3からの離型性を確認した。
(製造例1)
湿式混合機を用い、純水100重量部に対し、コープケミカル社製のソマシフME100、10部を混合した。ついで、東邦化学社製のビスオール、1.6部を添加して更に15〜30分間混合を続けることによって処理した。その後、乾燥して粉体化した。
【0042】
(実施例1〜2)
抜き勾配3°に設定した筒状形状の固定側根元に爪つきリブを有するツバ部2aを設置した樹脂成形体2の場合、固定側金型3に張り付くことなく、固定側金型3から離型した。
【0043】
(実施例3〜4)
抜き勾配5°に設定した筒状形状の固定側根元に爪つきリブを有するツバ部2aを設置した樹脂成形体2の場合、固定側金型3に張り付くことなく、固定側金型3から離型した。
【0044】
(比較例1〜2)
図5は、筒型形状の固定側根元にツバ部22aのみを設置した比較のための樹脂成形体22の構成を示す説明図であり、(a)は、比較のための樹脂成形体22の平面図、(b)は、比較のための樹脂成形体22の側面図をそれぞれ示している。
【0045】
抜き勾配3°に設定した筒型形状の固定側根元にツバ部22aのみを設置した樹脂成形体22の場合、固定側金型3への張り付きが生じ、固定側金型3から離型できなかった。
【0046】
(比較例3〜4)
抜き勾配5°に設定した筒型形状の固定側根元にツバ部22aのみを設置した樹脂成形体22の場合、固定側金型3への張り付きが生じ、固定側金型3から離型できなかった。
【0047】
表1は、以上の結果をまとめたものであり、この表1から、スライドコア4cを備えた本発明にかかる射出成形用金型1は、樹脂成形体2の固定側金型3からの離型性が顕著に良好であることがわかる。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、表面平滑性が非常に高い鏡面コアを固定側金型に有する射出成形用金型で、内面の表面平滑性が高い深絞り形状の樹脂成形体2を成形する際、固定側金型に張り付いて固定残りすることがない、離型性に優れた射出成形を行なうことができる。
【0050】
このように、本発明の射出成形用金型は、表面平滑性が非常によく、光沢に優れる樹脂成形体2が得られる金型であるので、内面の表面平滑性が高い深絞り形状の樹脂成形体が得られるために、金型転写性が要求される自動車内装部材、電気製品のハウジング部材、各種化粧版はもとより、耐熱と外観が必要とされる自動車や二輪車などの照明灯具や施設照明などの部品を成形する射出成形用金型に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係る射出成形用金型によって成形される樹脂成形体の構成を示す説明図であり、(a)は、樹脂成形体の平面図、(b)は、樹脂成形体の側面図をそれぞれ示している。
【図2】本発明の実施の形態に係る射出成形用金型の概略の構成を示す側面図である。
【図3】スライドコアが、樹脂成形体の係止部に係合した状態で、可動側金型が固定側金型から退避した状態を示す側面図である。
【図4】可動側金型がさらに固定側金型から退避し、スライドコアが樹脂成形体の係止部の係合を解除した状態を示す側面図である。
【図5】筒型形状の固定側根元にツバ部のみを設置した比較のための樹脂成形体の構成を示す説明図であり、(a)は、比較のための樹脂成形体の平面図、(b)は、比較のための樹脂成形体の側面図をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0052】
1 射出成形用金型
2 樹脂成形体
2a ツバ部
2b 係止部
3 固定側金型
3a、4a パーティング面
3b 鏡面コア
3c 傾斜ピン
4 可動側金型
4b キャビティ
4c スライドコア
4d 本体キャビティ部
4e ツバ部形成キャビティ部
4f 掘り込み
4g 開口孔
5 スライド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体を成形するための射出成形用金型であって、
#8000番以上に鏡面仕上げされた鏡面コアを有する固定側金型と
前記固定側金型とパーティング面に対向して配置され、キャビティとスライドコアとを有する可動側金型と、
を備え、
前記スライドコアには前記樹脂成形体に係止部を形成するための掘り込みが形成されており、
型開が進むにつれて前記スライドコアを移動させて、前記スライドコアによる係止部の係合を解除するように構成されていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記鏡面コア及び前記キャビティが、深絞り形状の成形体を成形するような形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記係止部が鉤状に形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記固定側金型のパーティング面には、可動側金型の接離方向に、金型の外側方向に傾く傾斜ピンが立設されており、
前記スライドコアは型締時に前記傾斜ピンと嵌合する開口孔を有し、
型開時に前記開口孔表面と傾斜ピンとが摺動することによりスライドコアが金型の外側方向に移動するようなスライド機構を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記スライドコアが油圧又は空気圧により金型の外側方向に移動するようなスライド機構を備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の射出成形用金型を用いて熱可塑性樹脂組成物を射出成形することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物が熱可塑性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−126446(P2008−126446A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311881(P2006−311881)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】