説明

導電性誘導剤を含む潤滑剤を備えるハイドロベアリングを有する流体動圧ディスクドライブスピンドルモータ

静止部材と、静止部材に対して回転可能な回転可能部材と、静止部材と回転可能部材とを相互に接続し、潤滑流体によって分けられる作動面を有するハイドロベアリングとを含み、潤滑流体は、少なくとも110の粘度指数を有する少なくとも1つの合成エステルベース流体と、10から5000ppmの少なくとも1つの導電性誘導剤と、潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの酸化防止剤と、潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含む、ディスクドライブスピンドルモータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本願は、2009年8月6日出願の「電荷移動能力を有する潤滑剤を備えるハイドロベアリングを有する流体動圧ディスクドライブスピンドルモータ」と題される米国仮特許出願番号第61/231,833号の優先権を主張し、この出願の開示が、ここに引用により援用される。
【0002】
概要
開示されるスピンドルモータは、中心軸と、静止部材と、静止部材に対して中心軸の周りで回転可能な回転可能部材と、静止部材と回転可能部材とを相互に接続し、潤滑流体によって分けられる作動面を有するハイドロベアリングとを含み、潤滑流体は、a)少なくとも110の粘度指数を有する少なくとも1つの合成エステルベース流体と、b)10から5000ppmの少なくとも1つの導電性誘導剤と、c)潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの酸化防止剤と、d)潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含有する。
【0003】
スピンドルモータは、静止部材と、静止部材に対して回転可能な回転可能部材と、静止部材と回転可能部材とを相互に接続し、潤滑流体によって分けられる作動面を有するハイドロベアリングとを含み、潤滑流体は、少なくとも110の粘度指数を有する合成エステルベース流体と、潤滑流体の全重量を基準として、10から5000重量ppmの1つ以上のアリールスルホン酸導電性誘導剤と、潤滑流体の全重量を基準として、0.1重量%から5重量%の少なくとも1つのフェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤、またはフェノール酸化防止剤およびアミン酸化防止剤と、潤滑流体の全重量を基準として、0.1重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含む。
【0004】
さらに開示されるのは、少なくとも110の粘度指数を有する合成エステルベース流体と、潤滑流体の全重量を基準として、50から1000重量ppmの1つ以上のアリールスルホン酸導電性誘導剤と、潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つのフェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤、またはフェノール酸化防止剤およびアミン酸化防止剤と、潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含む、潤滑流体である。
【0005】
これらおよびさまざまな他の特徴および利点は、次の詳細な説明を読むと明らかになるであろう
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
詳細な説明
以下の説明において、本願の一部を構成し、いくつかの特定の実施形態を例示的に示す、付随の図面一式を参照する。本開示の範囲または精神から逸脱することなく他の実施形態が企図され、行なわれ得ることが理解されるべきである。したがって、下記の詳細な説明は、限定的な意味で捉えられるべきではない。
【0007】
特に指定のない限り、明細書および請求項で使用される特徴の寸法、量、および物性を表わす数字のすべては、如何なる場合においても、「約」という用語により変更されることが理解されるべきである。したがって、反対の指定がない限り、上記明細書および添付の請求項に記載される数値パラメータは、ここに開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に依存して変わり得る概数である。
【0008】
端点による数値範囲の記載は、その範囲に包摂されるすべての数(たとえば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)およびその範囲内の任意の範囲を含む。
【0009】
本明細書および添付の請求項で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容がそれ以外を明確に定めない限り、複数形の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書および添付の請求項で使用される「または」という用語は、その内容がそれ以外を明確に定めない限り、一般的に、「および/または」を含む意味で使用される。
【0010】
「含む(Include)、」「含んでいる(including)、」または「備える(comprise)」もしくは「備えている(comprising)」などの類似の用語は、包含しているが限定されないこと、すなわち、含んでおり、排他的ではないことを意味する。
【0011】
ここに使用される「合成エステル」という表現は、潤滑剤のベース流体(当該技術分野において、機能的流体または作動流体とも呼ばれる)において使用されるのが好適な如何なるエステル化合物も指す。
【0012】
ここで用いられる「合成エステルベース流体」という表現は、潤滑流体を調製する際に使用される任意のおよびすべての合成エステルを総称的に指す。したがって、この表現は、潤滑流体の合成エステル成分が単一のエステルからなるか、または2つ以上の合成エステルの組合せからなるかに依存して、単一の合成エステル、または2つ以上の合成エステルの組合せを示し得る。
【0013】
ここで用いられる「粘度指数」または「VI」という表現は、アメリカ自動車技術者協会(SAE)により設定された温度に伴うベース流体の動粘度の変化を示す、人為的に作成された指数を指す。特に断りのない限り、基準用に選ばれる温度は、華氏(F)100度(40℃)および210°F(100℃)である。
【0014】
特に具体的に断りのない限り、「炭化水素」という表現は、直鎖または分岐鎖であってよく、さらに、1つ以上の環状基であるか、または1つ以上の環状基を含有してもよい、炭素および水素原子からなる部分を示す。一般的に、また、特に具体的に断りのない限り、炭化水素基は飽和であっても、部分的に不飽和であっても、または芳香族であってもよく、さらに、飽和であるか、部分的に不飽和であるか、または芳香族である副部分を含有してもよい。一般的に、また、特に具体的に断りのない限り、「アルキル」とも呼ばれる飽和直鎖炭化水素部分または副部分は、1から約20個の炭素原子を有することができる一方、「アルキル」とも呼ばれる飽和および分岐鎖炭化水素部分または副部分、「シクロアルキル(cyclically)」および「シクロアルケニル」ともそれぞれ呼ばれる飽和環状炭化水素部分もしくは副部分または部分的に不飽和の環状炭化水素部分もしくは副部分、および、「アルケニル」または「アルキニル」とも呼ばれる部分的に不飽和の直鎖もしくは分岐鎖炭化水素部分または副部分は、約3個から約20個の炭素原子を有することができる。一般的に、また特に具体的に断りのない限り、「アリール」とも呼ばれる芳香族炭化水素部分または副部分は、約6から約18個、すなわち、6、10、14または18個の炭素原子を有し得る。
【0015】
本開示は、付随の図面に関連する本開示のさまざまな実施形態の次の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】潤滑流体を有する流体動圧または流体静圧軸受スピンドルモータを備えるディスクドライブデータ記憶装置の上面図である。
【図2】流体動圧スピンドルモータの断面図である。
【図3】わかりやすさのために一部を除去した、図2の線3−3に沿う流体動圧スピンドルモータの概略断面図である。
【図4】比較用組成物および実施例1に開示されるような2つの組成物について、さまざまな温度での導電率を示すグラフである。
【図5】比較用組成物および実施例1に開示されるような組成物について、さまざまな温度での導電率を示すグラフである。
【図6】比較用組成物および実施例2に開示されるような組成物について、残留している油のパーセントを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図は必ずしも縮尺通りではない。図中で使用される同一の番号は同一の部品を指す。しかし、所与の図中の部品を指すための番号の使用は、同じ番号を付した別の図中の該部品を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0018】
開示される潤滑流体組成物を含む流体動圧軸受または流体静圧軸受スピンドルモータは、ディスクドライブ用に好適となり得る。図1は、典型的なディスクドライブ10の上面図である。ディスクドライブ10は、ハウジングベース12および上部カバー14を含む。ハウジングベース12は、上部カバー14と合体して封止した環境を作り、内部部品を封止した環境の外部からの要素による汚染から保護する。
【0019】
ディスクドライブ10はさらに、ディスククランプ18によってスピンドルモータ(図示せず)上に回転するように取付けたディスクパック16を含む。ディスクパック16は、中心軸の周りに共回転するように取付けられる複数の個々のディスクを含む。各ディスク面は、関連するヘッド20を有し、これは、ディスク面と交信するためにディスクドライブ10に取付けられる。図1に示す例では、ヘッド20がフレキシャー22によって支持され、フレキシャー22は、アクチュエータ本体26のヘッド取付けアーム24に装着される。図1に示すアクチュエータは、回転可動コイルアクチュエータとして知られる種類のものであり、全体的に28で示すボイスコイルモータ(VCM)を含む。ボイスコイルモータ28は、アクチュエータ本体26を、それに装着したヘッド20と共にピボット軸30の周りに回転させ、ヘッド20を弧状経路31に沿った所望のデータトラックの上に位置付ける。回転アクチュエータを図1に示したが、スピンドルモータは、リニアアクチュエータなど、他の種類のアクチュエータを有するディスクドライブにも有用である。
【0020】
図2は、動圧軸受スピンドルモータ32の断面図である。スピンドルモータ32は、静止部材34、ハブ36およびステータ38を含む。図2に示す実施形態において、静止部材は、ナット40および座金42を通してベース12に固定し装着した軸である。ハブ36は、軸34の周りで回転するように、動圧軸受37を通して軸34と相互接続されている。軸受37は、径方向作動面44および46、ならびに軸方向作動面48および50を含む。軸34は、潤滑流体60を供給し、流体を軸受の作動面に沿って循環させる助けをする流体口54、56および58を含む。潤滑流体60は、公知の方法によって軸34の内部と結合された流体源(図示せず)により、軸34へ供給される。
【0021】
スピンドルモータ32はさらに、動圧軸受37の軸方向作動面48および50を形成する、スラスト軸受45を含む。カウンタプレート62が作動面48を支えて、動圧軸受に軸方向安定性を与え、かつハブ36をスピンドルモータ32内に位置付ける。O−リング64がカウンタプレート62とハブ36との間に設けられ、動圧軸受を封止する。該シールは、動圧流体60がカウンタプレート62とハブ36との間からもれるのを防ぐ。
【0022】
ハブ36は、中心コア65およびディスクキャリア部材66を含み、ディスクキャリア部材66は、ディスクパック16(図1に示す)を軸34の周りで回転するように支持する。ディスクパック16は、ディスククランプ18(やはり図1に示す)によってディスクキャリア部材66上に保持される。永久磁石70が、スピンドルモータ32用のロータとして作用するハブ36の外径に装着される。コア65は、磁性材料で形成され、磁石70の背鉄として作用する。ロータ磁石70は、一体型の環状リングとして形成することができ、またはハブ36の周囲に離間した複数の個々の磁石で形成することができる。ロータ磁石70は、磁化されて1つ以上の磁極を形成する。
【0023】
ステータ38は、ベース12に装着され、ステータ積層体72およびステータ巻線74を含む。ステータ巻線74は、積層体72に装着されている。ステータ巻線74は、ロータ磁石70から径方向に離間して、ロータ磁石70およびハブ36が中心軸80の周りに回転できるようにする。ステータ38は、ボルト78を通してベースに固着した1つ以上のC形クランプ76のような公知の方法により、ベース12に取付けられている。
【0024】
ステータ巻線74に加えるコミュテーションパルスが回転磁界を発生し、それがロータ磁石70と交信して、ハブ36を軸受37の中心軸80の周りで回転させる。コミュテーションパルスは、タイミング調整され、分極選択した直流パルスであり、逐次に選択されるステータ巻線に向けられて、ロータ磁石を駆動し、その速度を制御する。
【0025】
図2に示す実施形態では、スピンドルモータ32は、ステータ38がハブ36の下方に軸方向位置を有する「ハブ下(below-hub)」型モータである。ステータ38は、ハブ36の外部にある径方向位置も有するため、ステータ巻線74が積層体72の内径面82(図3)に固着される。代替的な実施形態では、ステータが、ハブの下方に対して、ハブ内に位置する。ステータは、ハブの内部または外部のいずれかにある径方向位置を有し得る。さらに、スピンドルモータは図2に示すような固定された軸を有することもできるが、回転軸を有することもできる。回転軸スピンドルモータでは、軸受は、回転軸と、回転軸と同軸である外側静止スリーブとの間に位置する。
【0026】
図3は、分かりやすさのために一部を除去した、図2の線3−3に沿う動圧スピンドルモータ32の概略断面図である。ステータ38は、ロータ磁石70および中心コア65と同軸である、積層体72およびステータ巻線74を含む。ステータ巻線74は、積層体72の歯の周りに巻いた相巻線W1、V1、U1、W2、V2およびU2を含む。相巻線は、中心軸80と直角を成し、それと交差するコイル軸を有するコイルで形成されている。たとえば、相巻線W1は、中心軸80と直角を成すコイル軸83を有する。動圧軸受37の径方向作動面44および46は、軸34の外径面および中心コア65の内径面により形成される。径方向作動面44および46は、通常動作中に隙間cを維持する潤滑流体60によって分けられている。
【0027】
合成エステルベース流体
潤滑流体の文脈での好適な合成エステルベース流体は、原則的に、潤滑目的用の基油として好適なエステルすべてを含む。合成エステルベース流体は、単一の合成エステルまたは、同一もしくは異なる種類の2つ以上の合成エステルの組合せを含んでもよい。
【0028】
実施形態においては、好適な合成エステルベース流体は、モノアルコールとモノカルボン酸とのエステル;ジエステルおよびポリエステル、たとえば、ジオールまたはポリオールと同一または異なるモノカルボン酸とのエステルなど;同一または異なるモノアルコールと同一または異なる二塩基性または多塩基性カルボン酸とのジエステルおよびポリエステル;ならびに、同一または異なるジオールまたはポリオールと同一または異なる二塩基性または多塩基性カルボン酸とのポリエステルを含むことができる。
【0029】
実施形態においては、ベース流体は少なくとも110の粘度指数を示し得る。実施形態においては、高VIを有する合成エステルベース流体を利用することができる。たとえば、ジカルボン酸のジエステルおよびポリオールエステル(dieters of dicarboxylic acids and polyol esters)については、VIは典型的には、それぞれ約115または120から200までの範囲である。
【0030】
エステルが、モノアルコールに由来する1つ以上の部分を含む実施形態においては、モノアルコールは、[たとえば、式(C2n+1)OHの]飽和脂肪族アルコールであり得る。実施形態において、このようなアルコールは約3から約20個の炭素原子を有し得る。該アルコールの炭化水素部分は飽和であり得、直鎖または分枝鎖であってよい。アルコールは、1つ以上の飽和脂環式部分を形成するか、または含むことができる。模範的な飽和脂肪族アルコールは、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール(カプリルアルコール)、1−ノナノール(ペラルゴン酸アルコール)、1−デカノール(カプリン酸アルコール)、1−ウンデカノール、1−ドデカノール(1-dadecanol)(ラウリルアルコール)、1−トリデカノール、1−テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール(セチルアルコール)、1−ヘプタデカノールなどを含み、さらに、これらの分枝鎖異性体であって、水酸基が2位もしくは3位にあるもの、ならびに/または、炭化水素鎖が1もしくは2つのメチルおよび/もしくはエチル分枝を持つもの、を含むことができる。このような分枝鎖脂肪族アルコールの例示的な具体例は、末端にCH(CH部分を有するイソ型およびC−C(CH−C部分を含有するネオ型を含む。また、好適なモノアルコールとして、式R−O−(Z−O−)Hにより示すことができ、式中、
Rは、直鎖、分枝鎖または脂環式であり、脂環式セグメントまたは置換基を含んでもよい炭化水素を指し、
xは、たとえば、1から5の整数であり、
は、同一または異なるC−Cアルキレン基、たとえば、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、2,3−ブチレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレンなどを示す、
ポリオキシアルキレンエーテルなどもある。さらに、(Z−O)基は、1または2つの酸素および3、4、または5つの炭素環員子によって形成される、5員環または6員環を示してもよい。モノアルコールに由来する1を超える部分を含有するエステルの場合、それぞれのアルコール部分は、同一または異なってもよい。
【0031】
エステルが、ジオールおよびポリオールに由来する1つ以上の部分を含む場合、実施形態において、ジオールまたはポリオールが、特に、約3から約20個の炭素原子を有する、飽和脂肪族アルコール[たとえば、式(C2n−x)(C(=O)OH)2+xで表わされ、ジオールの場合、xは0、ポリオールの場合、xは≧1であり、たとえば、1、2または3など]である、合成エステルを利用できる。実施形態において、ジオールおよびポリオールの水酸基は、同じ炭素原子に結合していない。ジオールおよびポリオールは、直鎖または分枝鎖であってよく、1つ以上の飽和脂環式基を形成するか、または含んでもよい。飽和脂肪族ジオールの例示的な例は、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、1,7−ヘプチレングリコール、1,8−オクチレングリコール、1,9−ノニレングリコール、1,10−デシレングリコール、1,11−ウンデシレングリコール、1,12−ドデシレングリコール、1,13−トリデシレングリコール、1,14−テトラデシレングリコール、1,15−ペンタデシレングリコール、1,16−ヘキサデシレングリコール、1,17−ヘプタデシレングリコールなどを含み、さらに、これらの分枝鎖異性体であって、水酸基の一方もしくは両方がアルキレン鎖の非末端炭素原子に結合しているもの、ならびに/または、アルキレン鎖がアルキレン鎖に沿う任意の位置に結合している1もしくは2つのメチルおよび/もしくはエチル分枝を持つもの、を含むことができる。また、好適なジオールとして、式H−O−(Z−O−)H(式中、xは、たとえば1から5の整数であり、Zは、同一または異なるC−Cアルキレン基、たとえば、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、2,3−ブチレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレンなどを示す)で表わされるようなポリオキシアルキレングリコールなどもある。さらに、(Z−O)基は、1または2つの酸素および3、4または5つの炭素環員子によって形成される5員環または6員環を示してもよい。飽和脂肪族ポリオールの例示的な例は、たとえば、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールを含む。ジオールまたはポリオールに由来する1つより多い部分を含むエステルの場合、それぞれの部分は、同一または異なってもよい。
【0032】
エステルが、モノカルボン酸に由来する1つ以上の部分を含有する場合、実施形態は、モノカルボン酸が、特に、約3から約20個の炭素原子を有する酸である、[たとえば、式(C2+1c)C(=O)OHの]飽和脂肪酸である、好ましい合成エステルを利用できる。このような酸の炭化水素部分は、飽和であり得、直鎖または分枝鎖であってよく、1つ以上の飽和脂環式基を形成するか、または含んでもよい。飽和脂肪酸の代表例は、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸アルコール)、デカン酸(カプリン酸)、1−ウンデカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)およびエイコサン酸(アラキン酸)、さらに、これらの分枝鎖異性体であって、カルボキシル基が2位もしくは3位にあるもの、ならびに/または、炭化水素鎖部分が1もしくは2つのメチルおよび/もしくはエチル分枝を持つもの、を含む。このような分枝鎖脂肪族カルボン酸の例示的な代表例は、末端にCH(CH部分を有するイソ型およびC−C(CH−C部分を含むネオ型を含む。モノカルボン酸に由来する1つより多い部分を含むエステルの場合、それぞれの酸部分は、同一または異なってもよい。
【0033】
エステルが、ジカルボン酸またはポリカルボン酸に由来する1つ以上の部分を含有する場合、実施形態は、ジカルボン酸またはポリカルボン酸が、たとえば約3から約20個の炭素原子を有する、飽和脂肪酸[たとえば、式(C2n−x)(C(=O)OH)2+xで表わされ、ジカルボン酸の場合、xは0、ポリカルボン酸の場合、xは≧1であり、たとえば、1または2など]である、合成エステルを利用できる。ジカルボン酸およびポリカルボン酸は、直鎖または分枝鎖炭化水素部分を有してもよく、飽和脂環式部分を形成するか、または含んでもよい。飽和脂肪族ジカルボン酸の例示的な例は、1,3−プロパン二酸(マロン酸)、1,4−ブタン二酸(コハク酸)、1,5−ペンタン二酸(グルタル酸)、1,6−ヘキサン二酸(アジピン酸)、1,7−ヘプタン二酸(ピメリン酸)、1,8−オクタン二酸(スベリン酸)、1,9−ノナン二酸(アゼライン酸)、1,10−デカン二酸(1, 10-d canedioic acid)(セバシン酸)、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,15−ペンタデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,17−ヘプタデカン二酸など、さらに、これらの分枝鎖異性体であって、カルボキシル基の一方もしくは両方がアルキレン鎖の非末端炭素原子に結合しているもの、ならびに/または、アルキレン鎖がアルキレン鎖に沿う任意の位置に結合している1もしくは2つのメチルおよび/もしくはエチル分枝を持つもの、を含む。飽和脂肪族ポリカルボン酸の例示的な例は、たとえば、オキサマロン酸、カルバリル酸などを含む。ジカルボン酸またはポリカルボン酸に由来する1つより多い部分を含むエステルの場合、それぞれの部分は、同一または異なってもよい。
【0034】
実施形態において、合成エステルベース流体は、ジカルボン酸のジエステルおよびジオールのフルエステルの群から選択される少なくとも1つの合成エステルを含む。
【0035】
実施形態において、合成エステルベース流体は、式(I)
【0036】
【化1】

【0037】
(式中、RおよびRは同一または異なって、各々は、直鎖C−C17アルキル基を示し、これは随意に、その鎖の第二炭素に結合したC−Cアルキル分枝を持ち、Zは直鎖C−C10アルキレン基であり、これは随意に、その鎖の炭素に結合したC−Cアルキルを持つ)の1つ以上のエステルを含むことができる。
【0038】
実施形態において、式(I)のエステルは、分枝の炭素原子を一切含まずに、RおよびRの最長直鎖アルキル部分に存在する炭素原子をすべて、また、Zの直鎖アルキレン部分の炭素原子をすべて数えたとき、合計で約15から約35個、約15から約33個、約18から約30個、または約18から約28個の炭素原子を含むことができる。Z部分を視野に入れると、これは、式−(CH−CH(CH)−(CH−によって表わされる部分は5個の炭素原子を付与し、式−CH−CH(CHCH)−CH−によって表わされる部分は3個の炭素原子に相当することを意味する。したがって、ほんの一例であるが、RおよびRの各々がn−ヘプチル基であり、Zが1,5−ペンチレン基である化合物(I)は、その直鎖部分に合計で(7+7+5)、19個の炭素原子を含有し、RおよびRの各々が2−オクタニル基(すなわち、HC−(CH−CH(CH)−)であり、Zが3−メチル−1,5−ペンチレン基(すなわち、−(CH−CH(CH)−(CH−)である化合物(I)も、その直鎖部分に合計で(7+7+5)、19個の炭素原子を含有する。
【0039】
実施形態において、RおよびRの各々は、約6から約14個の炭素原子を有する直鎖炭化水素部分を含み、直鎖炭化水素部分は随意に、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピル分枝を持ち、該分枝は、R基またはR基の最長直鎖炭化水素が約14個の炭素原子を超えないように配置される。
【0040】
さらなる特定の実施形態においては、RおよびRの各々は、約6から約14個の炭素原子を有する直鎖炭化水素部分を含み、直鎖炭化水素部分は随意に、メチルまたはエチル分枝を持ち、該分枝は、RまたはRの最長直鎖炭化水素が約14個の炭素原子を超えないように配置される。
【0041】
実施形態において、R、RおよびZに存在する分枝すべての合計は、0、1または2である。この実施形態に従うと、Zが2つの分枝を有する部分を示すと、RおよびRの各々は直鎖炭化水素基を示す。それに応じて、Zが1つの分枝を有する部分を示すと、R−およびRの炭化水素の一方が1つの分枝を持ってもよく、またはRおよびRの各々が直鎖炭化水素基を示す。同様に、Zが分枝を有しない部分を示すと、RおよびRの炭化水素の一方が2つの分枝を持ってもよく、またはRおよびRの炭化水素の一方もしくは両方が1つの分枝を持ってもよく、またはRおよびRの各々が直鎖炭化水素基を示す。実施形態において、Z部分は0または1つの分枝を持つ。実施形態において、RおよびRの各々は、約6から約14個の炭素原子を有する直鎖炭化水素部分からなる。実施形態において、式(I)のエステルのRおよびRは同一であり得る。実施形態において、合成エステルベース流体は、RおよびRが互いから独立してn−C−C12アルキルであり、Zがネオペンチレン(−CH−C(CH−CH−)、1,5−ペンチレン(−(CH−)または3−メチル−1,5−ペンチレン(−(CH−CH(CH)−(CH−)である、式(I)の少なくとも1つのエステルを含む。実施形態において、合成エステルベース流体は、少なくとも2つの異なる合成エステルを含む。実施形態において、合成エステルベース流体は、少なくとも2つの異なる合成エステルを含み、合成エステルの少なくとも1つは式(I)のものである。実施形態において、合成エステルベース流体は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ヘキサノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ヘプタノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−オクタノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ノナノアート)、および3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−デアコナート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ウンデカノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ドデカン酸)、および3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−トリデカノアート)、ならびにその組合せを含む。
【0042】
実施形態において、合成エステルベース流体は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−ヘキサン酸および(arid)、n−ヘプタン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール(3-methyl-1,5-pentanedial)、n−ヘキサン酸およびn−オクタン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−ヘキサン酸およびn−ノナン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−ヘキサン酸およびn−デカン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−ヘプタン酸およびn−オクタン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−ヘプタン酸およびn−ノナン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−ヘプタン酸およびn−デカン酸から調製されるジエステルの混合物;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−オクタン酸およびn−ノナン酸から調製されるジエステルの混合物;ならびに3−メチル−1,5−ペンタンジオール、n−オクタン酸およびn−デカン酸から調製されるジエステルの混合物;またはこれらの合成エステル混合物の2つ以上の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの合成エステルを含む。
【0043】
実施形態において、合成エステルベース流体は、式(Ia)
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、RおよびRは同一または異なって、各々は、直鎖C−C17アルキル基を示し、これは随意に、その鎖の第二炭素に結合したC−Cアルキル分枝を持ち、Zは直鎖C−C10アルキレン基であり、これは随意に、その鎖の炭素に結合したC−Cアルキル分枝を持つ)の1つ以上のエステルを含むことができる。式Iaの化合物は、より具体的には、上述の式Iの化合物と同じ特徴を有することができる。
【0046】
実施形態において、合成エステルベース流体は、式(I)または(Ia)のエステル;上記のような直鎖C−C12ジカルボン酸の(直鎖または分枝鎖)C−C13アルコールとのエステル、たとえば、セバシン酸ジオクチル(たとえば、セバシン酸2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチルなど;上記のような直鎖C−C12モノカルボン酸のC−C13ジアルコール(直鎖または分枝鎖のいずれか)とのエステル(たとえば、3−メチル1,5−ペンタンジオールジヘキサノアートまたは3−メチル1,5−ペンタンジオールジノナノアート);トリメチロールプロパンのエステル;およびネオペンチルグリコールのエステルからなる群から選択される少なくとも1つの合成エステルを含む。
【0047】
導電性誘導剤
開示された潤滑組成物は、少なくとも1つの導電性誘導剤も含む。導電性誘導剤は、帯電防止剤とも呼ぶことができる。導電性誘導剤は、導電性誘導特性、帯電防止特性、またはその両方を有することができる。導電性誘導剤は、潤滑流体に導電性を誘導することができるか、または静電荷の蓄積を防止することができるすべての非金属性化合物を含むことができる。本明細書中で用いる非金属性とは、その微粒子性質により、スピンドルモータの正常な機能に干渉する可能性のある金属および金属粒子をすべて除外することを意図する。しかし、金属を、たとえばイオンの形態または錯体化された形態で含有する化合物は、非金属性として理解される。
【0048】
実施形態において、導電性誘導剤を含む潤滑流体は、導電性でありながら高温で分解しない潤滑流体を与えることができる。実施形態において、開示される潤滑流体は、50℃以上の温度に耐えることができる。実施形態において、開示される潤滑流体は、100℃以上の温度に耐えることができる。実施形態において、開示される潤滑流体は、120℃C以上の温度に耐えることができる。実施形態において、開示される潤滑流体は、150℃以上の温度に耐えることができる。このような潤滑流体は、高温で分解する可能性のある他の潤滑流体を上回る利点を有する。高温での潤滑流体の分解は、特定の添加剤を含まない潤滑流体と比べたときの、所与の温度で次第に蒸発する潤滑流体の蒸発速度または蒸発量の変化によって示すことができる。
【0049】
導電性誘導剤は、たとえば、以下に記載するような化合物および組成物を含むことができる。a.)メタクリル酸ラウリルおよびメチルビニルピリジンのコポリマー中のジアルキルサリチル酸クロムとジデシルスルホコハク酸カルシウムとの混合物が利用できる。具体例は、ASA−3(ロイヤル リューブリカンツ カンパニー(Royal Lubricants Company, Inc.)、ニュージャージー州、イーストハノーバー)を含む。このような混合物の主な解離成分はジアルキルサリチル酸クロムであり、これは、ジデシルスルホコハク酸カルシウムによって安定化させることができる。b.)N−タロウ−1,3−ジアミノプロパンおよびエピクロロヒドリン(3)のポリマー縮合体の(たとえば、芳香族溶媒中の)組成物。具体例は、Polyfloe 130を含む;c.)トルエン中の1−デセンポリスルホンおよび亜硝酸ジココジメチルアンモニウムの組成物;d.)サリチル酸アルキル、スルホン酸塩、スクシンイミドおよび他の極性添加剤のコロイド溶液;e.)オレイン酸マグネシウム、硝酸塩潤滑油のステアリン酸とのカルシウム塩、トルエン中のC17−C20合成脂肪酸のクロム塩の組成物、ステアリン酸クロム、クロム塩長鎖酸、オレイン酸クロム、リノール酸クロム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ジエチルアミン、2−メチルピリジン、ピリジン、3−メチルピリジン、2−アミノ−5−ニトロピリジン、および2,6−ジニトロ−3−クロロピリジン;f.)たとえば、Sigbol、ASP−1、またはKerostatとして商業的に入手することができる、ステアリルアントラニル酸;g.)長鎖有機酸または炭化水素の側鎖により可溶化させた導電性ポリアニリン誘導体;およびh.)金属イオンを含有するフラーレン(C60+nM、式中、nは0、1などであり、MはLaである)、または電子移動の可能な任意の金属イオン。
【0050】
実施形態において、導電性誘導剤は少なくとも1つのポリマー化合物を含むことができる。実施形態において、導電性誘導剤は、窒素(N)を含有する少なくとも1つのポリマー化合物を含むことができる。実施形態において、導電性誘導剤は少なくとも1つのポリアニリンを含むことができる。実施形態において、導電性誘導剤は、式I:
【0051】
【化3】

【0052】
(式中、0<x/y<1であり、R、R、およびRは各々独立して水素または炭化水素基である)によって表わされるポリマー単位を含有する、少なくとも1つのポリアニリンを含むことができる。さらに、Rは、1つ以上のハロゲン原子または、酸素もしくは硫黄を介してフェニル環に結合された炭化水素基を示し得、たとえば、アルコキシ、アルキルチオなどであり得、環状で、随意に芳香族基であり得る。
【0053】
式Iのポリマーを含有するポリアニリン中の炭化水素基の性質は、ポリマーの親油性が、潤滑流体と混合されるのに十分であるようなものとすることができる。実施形態において、ポリマーは潤滑流体に溶解できる。したがって、炭化水素置換基の各々は、具体的に以下のうち1つを表わしてもよい。a.)1つ以上のハロゲン、(たとえば、1つ以上のハロゲン、アルキル、(モノもしくはポリ)シクロアルキル、またはアリールによって)置換することができる(モノもしくはポリ)シクロアルキルまたはアリール基によって随意に置換することができる、直鎖または分枝鎖アルキル;b.)(モノもしくはポリ)シクロアルキル、すなわち、単環または多環であってよく、1つ以上のハロゲン、アルキル、(モノもしくはポリ)シクロアルキル、またはアリール基によって随意に置換することができるシクロアルキル。ここで、各アルキル基は、たとえば、1つ以上のハロゲン、シクロアルキル、またはアリール基によって置換されてもよく、環状基の各々は、たとえば、1つ以上のハロゲン、アルキル、(モノもしくはポリ)シクロアルキル、またはアリールによって置換されてもよい;c.)1つ以上のハロゲン、アルキル、(モノもしくはポリ)シクロアルキル、またはアリール基によって随意に置換される、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルなどの、単環または多環であってよい、アリール。ここで、各アルキル基は、1つ以上のハロゲン、(モノもしくはポリ)シクロアルキル、またはアリール基によって置換されてもよく、環状基の各々は、たとえば、1つ以上のハロゲン、アルキル、(モノもしくはポリ)シクロアルキル、およびアリールによって置換されてもよい。
【0054】
実施形態において、導電性誘導剤は、少なくとも1つのスルホン酸R−SOH、またはその塩を含むことができ、式中、Rは上に定義された通りである。好適なスルホン酸は、潤滑流体に導電性を伝えることができるか、または静電荷の蓄積を低減することができる、すべてのスルホン酸およびその塩を含むことができる。一般的に、炭化水素基は少なくとも6個、少なくとも8個、または少なくとも10個の炭素原子を有する。実施形態において、スルホン酸のRはアリール基であり得るか、または、少なくとも1つのアリール基を含むことができる。このようなアリール基は、6から14個の炭素原子を有し得る。たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニルなど。スルホン酸部分は、アリール炭素原子の1つに直接結合するか、メチレン(−CH−)ブリッジを介してアリール炭素に連結することができる。さらに、アリール基は、1から3つのハロゲンまたは炭化水素置換基を持っていてもよい。実施形態において、アリールスルホン酸はC−C20アルキル−C−C14アリールスルホン酸であり得、これは随意に、さらにハロゲンによって置換することができる。
【0055】
このようなアリールスルホン酸の例示的な具体例は、たとえば、フェニル環が随意に、1、2、もしくは3つの同一もしくは異なる直鎖もしくは分枝鎖C−C20アルキル基を持つフェニルスルホン酸、たとえば、直鎖もしくは分枝鎖ヘキシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ヘプチルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖オクチルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ノニルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖デシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ウンデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ドデシルフェニルスルホン酸(もしくはドデシルベンゼンスルホン酸);直鎖もしくは分枝鎖トリデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖テトラデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ペンタデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ヘキサデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ヘプタデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖オクタデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ノナデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖デカデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘキシルナフチルスルホン酸もしくはジヘキシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘプチルナフチルスルホン酸もしくはジヘプチルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノオクチルナフチルスルホン酸もしくはジオクチルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノノニルナフチルスルホン酸もしくはジノニルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノデシルナフチルスルホン酸もしくはジデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノウンデシルナフチルスルホン酸もしくはジウンデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノドデシルナフチルスルホン酸もしくはジドデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノトリデシルナフチルスルホン酸もしくはジトリデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノテトラデシルナフチルスルホン酸もしくはジテトラデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノペンタデシルナフチルスルホン酸もしくはジペンタデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘキサデシルナフチルスルホン酸もしくはジヘキサデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘプタデシルナフチルスルホン酸もしくはジヘプタデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノオクタデシルナフチルスルホン酸もしくはジオクタデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノノナデシルナフチルスルホン酸もしくはジノナデシルナフチルスルホン酸;または、直鎖もしくは分枝鎖モノデカデシルナフチルスルホン酸もしくはジデカデシルナフチルスルホン酸を含むことができる。
【0056】
導電性誘導剤の例示的な市販例は、STAT−SAFE(登録商標)2500(灯油、o−キシレン、ドデシルベンゼンスルホン酸、およびソルベントナフサの組合せ、イノスペック スペシャルティ ケミカルズ(Innospec Specialty Chemicals)、UK、チェシャー州より市販);EXPINN(登録商標)10(ヘプタンおよびドデシルベンゼンスルホン酸の組合せ、イノスペック スペシャルティ ケミカルズ、UK、チェシャー州より市販)、STADIS(登録商標)450(ジノニルナフチルスルホン酸(dinonyl napthyl sulfonic acid)、アソシエイテッド オクテル カンパニー リミテッド(The Associated Octel Company Limited)、UK、チェシャー州より市販);およびSTADIS(登録商標)425(アソシエイテッド オクテル カンパニー リミテッド、UK、チェシャー州より市販)を含む。
【0057】
潤滑流体は、単一の導電性誘導剤、または同一もしくは異なる種類の2つ以上の導電性誘導剤の組合せを含んでもよい。潤滑流体中の導電性誘導剤の濃度は、幅広く異なり得る。実施形態において、濃度は、潤滑流体の全体的な粘性に影響がないように比較的低く保たれる。実施形態において、潤滑流体中の導電性誘導剤の濃度は、10から5000ppm、100から5000ppm、50から1000ppm、または50から500ppmとなり得る。実施形態において、開示される潤滑流体は、50MΩ未満の抵抗を有し得る。たとえば、鉱物系炭化水素中の1000ppm(すなわち0.1%)のアリールスルホン酸は、好適な性能を与えることが分かっている。これは、潤滑剤中の強磁性粒子の濃度が4%までである典型的な強磁性流体潤滑剤よりも非常に低い濃度である。
【0058】
さらなる添加剤
潤滑流体は、有効量の1つ以上の添加剤、たとえば、酸化防止剤、防食剤、粘度指数調整剤、流動点降下剤、消泡剤、金属洗浄剤および導電性非金属性添加剤、を随意に含んでもよい。
【0059】
好適な酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、チオジプロピオン酸ジ(n−ドデシル)、チオジプロピオン酸ジ(n−オクタデシル)および類似のチオジプロピオン酸、フェノチアジンおよび類似の硫黄系化合物など、スピンドルモータの潤滑流体および/または作動面の酸化を抑制、防止または減少することのできる化合物すべてを含むことができる。
【0060】
実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つのアミン系酸化防止剤または2つ以上のアミン系酸化防止剤の組合せを含むことができる。如何なるアミン系酸化防止剤も利用することができる。実施形態において、アミン系酸化防止剤は、分子中に硫黄を含有せず、約6から60個、または約10から40個の炭素原子を有する化合物であり得る。実施形態において、アミン系酸化防止剤は、アリール基が同一または異なっており、各々が、ハロゲンおよびC−C12アルキル基からなる群から選択される1、2または3つの同一または異なる置換基を随意に持つ、C−C14アリールであり得る、ジアリールアミンからなる群から選択することができる。実施形態において、アミン系酸化防止剤は、アリール基が同一または異なっており、各々が、1、2または3つの同一または異なるC−C12アルキル置換基を随意に持つ、C−C14アリールであり得る、ジアリールアミンからなる群から選択することができる。
【0061】
例示的な例は、ジフェニルアミン、たとえば、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミンおよび類似のモノアルキルジフェニルアミン、特に、モノ(C−Cアルキル)ジフェニルアミン(すなわち、2つのベンゼン環のうち1つがアルキル基、特に、C−Cアルキル基でモノ置換されているジフェニルアミン、すなわち、モノアルキル置換ジフェニルアミン);p,p’−ジブチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジペンチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p、p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミンおよび類似のジ(アルキルフェニル)アミン、特に、p,p’−ジ(C−Cアルキルフェニル)アミン(すなわち、ベンゼン環の各々が、アルキル基、特に、C−Cアルキル基でモノ置換されており、2つのアルキル基が同一である、ジアルキル置換ジフェニルアミン);ベンゼン環のうち一方の上のアルキル基が、ベンゼン環のうち他方の上のアルキル基と異なる、ジ(モノC−Cアルキルフェニル)アミン;2つのベンゼン環の4つのアルキル基の少なくとも1つが、残りのアルキル基と異なる、ジ(ジ−C−Cアルキルフェニル)アミン;N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−2−ナフチルアミンなどのナフチルアミン;p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミンなどを含むことができる。実施形態において、p,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、およびN−フェニル−1−ナフチルアミンを利用することができる。
【0062】
実施形態において、潤滑流体は、少なくとも2つの異なる種類の酸化防止剤を含むことができる。実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つのアミン系酸化防止剤と、異なる種類の少なくとも1つのさらなる酸化防止剤とを含むことができる。実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つのアミン系酸化防止剤と、少なくとも1つのフェノール系酸化防止剤とを含むことができる。実施形態において、単一または2つ以上のフェノール系酸化防止剤を利用することができる。実施形態において、如何なるフェノール系酸化防止剤も利用することができる。実施形態において、フェノール系酸化防止剤は、分子中に硫黄原子を含有しない化合物であり得る。実施形態において、フェノール系酸化防止剤は、約6から100個の炭素原子、または約10から80個の炭素原子を有することができる。
【0063】
実施形態において、フェノール系酸化防止剤は、たとえば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]、および1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]から選択することができる。
【0064】
実施形態において、フェノール系酸化防止剤は、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、またはその組合せから選択することができる。
【0065】
潤滑流体が、1つ以上のフェノール系酸化防止剤と1つ以上のアミン系酸化防止剤との組合せを含む実施形態において、フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤との比は、広い範囲から好適に選択することができ、フェノール系酸化防止剤(PBA)とアミン系酸化防止剤(ABA)との重量比は、少なくとも約1(PBA)対0.05(ABA)、最大で1(PBA)対20(ABA)であり得る。実施形態において、この比は、少なくとも約1(PBA)対0.2(ABA)、最大で1(PBA)対5(ABA)であってよい。
【0066】
少なくとも1つのアミン系酸化防止剤および少なくとも1つのフェノール系酸化防止剤を含む酸化防止剤の組合せの例示的な実施形態は、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、および2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールからなる群から選択される1つ以上のメンバー、p,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミンおよびN−フェニル−1−ナフチルアミンからなる群から選択される1つ以上のメンバー、ならびにその組合せを含む。
【0067】
実施形態において、潤滑流体は、次の組合せの1つ以上を含むことができる。2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールおよびp,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールおよびp,p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールおよびN−フェニル−1−ナフチルアミン、−4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)およびp,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)およびp,p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;4,4’−メチレンビス(2−6−ジ−t−ブチルフェノール)およびN−フェニル−1−ナフチルアミン;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールおよびp,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールおよびp,p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;ならびに2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(2,6-di-t-hutyl-4-ethylphenol)およびN−フェニル−1−ナフチルアミン。
【0068】
実施形態において、潤滑流体は、次の組合せの1つ以上を含むことができる。4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)およびp,p’−ジオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)およびp,p’−ジノニル(直鎖および分枝鎖を含む)ジフェニルアミン;ならびに4,4’−メチレンビス(2−6−ジ−t−ブチルフェノール)およびN−フェニル−1−ナフチルアミン。
【0069】
潤滑流体中に存在する酸化防止剤の全量は、広く異なり得る。一般的に、酸化防止剤は、潤滑流体の構成物質の酸化による劣化を防止、抑制、または十分に阻止するために有効となり得る全量で使用される。有効量は、潤滑流体の全重量を基準として、0.01から5.0%、0.1%から5.0%、0.05から5%、または0.1から3%の範囲であってよい。酸化防止剤は、より多い量で加えられてもよい。しかしながら、一般的に、より多い量が潤滑流体のスピンドルモータへの適性(suitability of tile lubricating fluid for spindle motors)をさらに向上させることはないため、非経済的であり得る。酸化防止剤は、その量が、潤滑流体の構成物質の酸化による劣化を防止、抑制、または十分に阻止するために有効である限り、より少ない量で加えられてもよい。
【0070】
潤滑流体はまた随意に、耐摩耗特性、高圧金属接触特性および摩擦特性を向上させる添加剤、すなわち、耐摩耗添加剤を含むこともできる。この種の添加剤は、たとえば、ジアルキルジチオリン酸、アルキルおよびアリールジスルフィドならびにアルキルおよびアリールポリスルフィド、ジチオカルバミン酸、アルキルリン酸塩、モリブデン錯体、中性リン酸エステル、さらに、これらの添加剤の2つ以上の組合せを含むことができる。実施形態において、耐摩耗添加剤は、たとえば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、モリブデンジスルフィド、液体リン酸アミン、たとえば、リン酸C11−C14分枝鎖アルキル、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチルまたはリン酸ジクレジルなどのアシッドホスフェートのアミン塩、リン酸ジブチルまたはリン酸ジイソプロピルなどのアシッドホスフェートのアミン塩、および中性リン酸アリールエステルを含むことができる。例示的な液体リン酸アミンは、チバガイギー(Ciba Geigy)から商業的に入手可能である。
【0071】
好適な中性リン酸エステルは、トリエステルホスフェート(リン酸トリエステルとしても公知である)(O=)P(OR)(式中、置換基「R」は、同一または異なった炭化水素ラジカルを示す)をすべて含むことができる。一般的に、炭化水素ラジカルは、1から30個、または4から18個の炭素原子を有し、直鎖または分枝鎖アルキル、シクロアルキルおよびアリール部分であっても、それらを含有してもよい。さらに、炭化水素ラジカルは、1つ以上のハロゲン置換基を持ってよい。ハロゲン置換基が存在する場合、たとえば、フッ素、塩素、または臭素置換基であることができる。
【0072】
一般的に、置換基Rの各々は独立して、以下を示すことができる。a.)1つ以上のハロゲン、C−C10シクロアルキル、またはC−C14アリール基によって随意に置換することができる、直鎖または分枝鎖C−C18アルキル。ここで、環状基は、ハロゲン、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキルおよびC−C14アリールの群から選択される1から3つの置換基を持ってよい;b.)単環または多環であってよく、1つ以上のハロゲン、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキルおよびC−C14アリール基によって随意に置換することができる、C−C10シクロアルキル。ここで、各アルキル基は、1つ以上のハロゲン、C−C10シクロアルキル、またはC−C14アリール基によって置換されてもよく、環状基の各々は、ハロゲン、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキルおよびC−C14アリールの群から選択される1から3つの置換基を持ってよい;c.)1つ以上のハロゲン、C−C10アルキル、C−C10(ビ)シクロアルキル、またはC−C14アリール基によって随意に置換することができる、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルなどの、単環または多環であってよい、C−C14アリール。ここで、各アルキル基は、1つ以上のハロゲン、C−C10シクロアルキル、またはC−C14アリール基によって置換されてもよく、環状基の各々は、ハロゲン、C−C10アルキル、C−C10シクロアルキル、またはC−C14アリール基の群から選択される1から3つの置換基を持ってよい。
【0073】
リン酸トリエステルの例は、リン酸トリブチル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリペンチル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリヘキシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリヘプチル(tripheptyl phosphate)(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリオクチル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリノニル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリウンデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリドデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリトリデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリテトラデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリペンタデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリヘキサデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリヘプタデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、リン酸トリオクタデシル(直鎖および分枝鎖を含む)および、同一または異なるアルキル基を有する、類似のリン酸トリ(直鎖および分枝鎖C−C18アルキル);リン酸トリシクロプロピル、リン酸トリシクロブチル、リン酸トリシクロペンチル、リン酸トリシクロヘキシル、リン酸トリシクロヘプチル(tricoheptyl)、リン酸トリシクロオクチル、および類似のリン酸トリ(C−Cシクロアルキル)、ならびに、R基の1つまたは2つが、C−C18アルキルを示し、その他のR基が、C−Cシクロアルキルを示す、対応するリン酸;リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸キシレニルジフェニル、リン酸トリス(トリブロモフェニル)、リン酸トリス(ジブロモフェニル)、リン酸トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、リン酸トリ(ノニルフェニル)および類似のリン酸トリアリール、ならびに、R基の1または2つが、C−C18アルキルを示し、その他のR基がアリールを示す、対応するリン酸、さらに、第1のR基がC−C18アルキルを示し、第2のR基がC−Cシクロアルキルを示し、第3のR基がアリールを示す、対応するリン酸も含むことができる。
【0074】
実施形態において、中性リン酸エステルは、リン酸トリアリールであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、アリール基の各々が、ハロゲンおよびC−C12アルキル基から選択される1から3つの同一または異なる置換基を随意に持つ、リン酸トリC−C14アリールであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、アリール基の各々が、1から3つの同一または異なるC1−C12アルキル基を随意に持つ、リン酸トリC−C14アリールであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、アリール基の各々が、1から3つの同一または異なるC1−C8アルキル基を随意に持つ、リン酸トリC6−C10アリールであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、アリール基の各々が、少なくとも1つのC1−C8アルキル基を持つ、リン酸トリC6−C10アリールであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、フェニル環の各々が、ハロゲンおよびC1−C12アルキル基から選択される1から3つの同一または異なる置換基を随意に持つ、リン酸トリフェニルであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、フェニル環の各々が、1から3つの同一または異なるC1−C12アルキル基を随意に持つ、リン酸トリフェニルであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、フェニル環の各々が、1から3つの同一または異なるC1−C8アルキル基を随意に持つ、リン酸トリフェニルであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、フェニル環の各々が、少なくとも1つのC1−C8アルキル基を持つ、リン酸トリフェニルであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、フェニル環の各々が、少なくとも1つのC3−C6アルキル基を持つ、リン酸トリフェニルであり得る。実施形態において、中性リン酸エステルは、フェニル環の各々が、少なくとも1つの直鎖または分枝鎖ブチル基を持つ、リン酸トリフェニルであり得る。
【0075】
潤滑流体は、単一の中性リン酸エステル、または2つ以上の中性リン酸エステルの組合せを含んでもよい。さらに、潤滑流体は、単一の耐摩耗添加剤、または2つ以上の同様もしくは異なる種類の耐摩耗添加剤の組合せを含んでもよい。潤滑流体中に存在する耐摩耗添加剤の全量は、幅広く異なり得る。一般的に、耐摩耗添加剤は、作動面の、たとえば金属どうしの接触などの直接的な接触を防止するために有効な全量で使用することができる。有効量は、通常、潤滑流体の全重量を基準として、0.01から5重量%、0.05から5重量%、または0.1重量%から5重量%、または0.1から3重量%の範囲である。耐摩耗添加剤は、より多い量で加えられてもよい。しかしながら、一般的に、より多い量が潤滑流体のスピンドルモータへの適性をさらに向上させることはないため、非経済的であり得る。
【0076】
潤滑流体は、防食剤も随意に含んでもよい。好適な防食剤(金属洗剤剤、金属受動態化剤、防錆剤)は、スルホン酸塩、ヒドロカルビルアミン、カルボン酸誘導体、イミダゾリン、チア(ジア)ゾール、(ベンゾ)トリアゾールおよびリン酸アミンなど、スピンドルモータの作動面の腐食を抑制、防止または減少する化合物を含むことができる。
【0077】
実施形態において、潤滑流体は、少なくとも9個の炭素原子を有する炭化水素基を含む、少なくとも1つの天然もしくは合成スルファート、またはその塩を含むことができる。実施形態において、潤滑流体は、少なくとも9個の炭素原子を有する炭化水素基を含む、天然または合成スルファートの少なくとも1つの塩を含むことができる。
【0078】
実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つの石油スルホン酸Ca、過塩基化石油スルホン酸Ca、アルキルベンゼンスルホン酸Ca、過塩基化アルキルベンゼンスルホン酸Ca、アルキルベンゼンスルホン酸Ba、過塩基化アルキルベンゼンスルホン酸Ba、アルキルベンゼンスルホン酸Mg、過塩基化アルキルベンゼンスルホン酸Mg、アルキルベンゼンスルホン酸Na、過塩基化アルキルベンゼンスルホン酸Na、アルキルナフタレンスルホン酸Ca、過塩基化アルキルナフタレンスルホン酸Caまたは類似のスルホン酸金属;Caフェナート(phenate)、過塩基化Caフェナート、Baフェナート、過塩基化Baフェナートまたは類似の金属フェナート;サリチル酸Ca、過塩基化サリチル酸Caまたは類似のサリチル酸金属;ホスホン酸Ca、過塩基化ホスホン酸Ca、ホスホン酸Ba、過塩基化ホスホン酸Baまたは類似のホスホン酸金属;過塩基化カルボン酸Caなどを含むことができる。実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つの石油スルホン酸Ca、アルキルベンゼンスルホン酸Ca、アルキルベンゼンスルホン酸Ba、アルキルベンゼンスルホン酸Mg、アルキルベンゼンスルホン酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸Zn、アルキルナフタレンスルホン酸Caまたは類似のスルホン酸金属を含むことができる。
【0079】
実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つの炭化水素で置換されたアミン、たとえば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、各々が独立して1から20個の炭素原子を有する1、2または3つのアルキル置換基を有する、第一級、第二級または第三級アミン、フェニレンジアミン、シクロヘキシルアミン、モルホリン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどを含むことができる。実施形態において、潤滑流体は、炭化水素で置換されたアミンの少なくとも1つの塩を含むことができる。実施形態において、潤滑流体は、ロジンアミン、N−オレイルサルコシンおよび類似のアミンの少なくとも1つを含むことができる。
【0080】
実施形態において、潤滑流体は、少なくとも7個の炭素原子を有する炭化水素基を含む、少なくとも1つのカルボン酸またはカルボン酸塩を含むことができる。実施形態において、カルボン酸またはその塩は、10から22個の炭素原子、または14から18個の炭素原子を有する炭化水素基を含むことができる。具体例は、n−ドデカン酸、n−トリデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−ヘプタデカン酸、n−オクタデカン酸、n−ノナデカン酸、n−イコサン酸、n−ドコサン酸、オレイン酸などを含む。実施形態において、n−テトラデカン酸、n−ヘキサデカン酸およびn−オクタデカン酸を利用することができる。実施形態において、潤滑流体は、少なくとも1つのドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニル無水コハク酸、ドデセニルコハク酸アミドまたは類似のアルキルもしくはアルケニルコハク酸誘導体;モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸グリセリン、モノオレイン酸ペンタエリスリトールまたは類似の多価アルコールの部分エステルを含むことができる。
【0081】
実施形態において、カルボン酸誘導体は、没食子酸系化合物であり得る。没食子酸系化合物の例は、7から30個の炭素原子または8から20個の炭素原子を有するものを含む。具体例は、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル10、没食子酸プロピル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ブチル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ペンチル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ヘキシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ヘプチル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸オクチル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ノニル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸デシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ウンデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ドデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸トリデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸テトラデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ペンタデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ヘキサデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ヘプタデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸オクタデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ノナデシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸イコシル(直鎖および分枝鎖を含む)、没食子酸ドコシル(直鎖および分枝鎖を含む)および類似の没食子酸の直鎖および分枝鎖C−C22アルキルエステル;ならびに没食子酸シクロヘキシル、没食子酸シクロペンチルおよび類似の没食子酸のC−Cシクロアルキルエステルを含む。実施形態において、没食子酸(n−プロピル)、没食子酸(n−オクチル)、没食子酸(n−ドデシル)および類似の没食子酸の直鎖または分枝鎖C−C12アルキルエステルを利用することができる。
【0082】
実施形態において、潤滑流体は、防食剤として機能する少なくとも1つのイミダゾール、チア(ジア)ゾール系化合物または(ベンゾ)トリアゾール系化合物を含むことができる。本質的に、如何なる腐食を阻止するイミダゾール、チア(ジア)ゾール系化合物または(ベンゾ)トリアゾール系化合物も好適であり得る。実施形態において、防食剤は、分子中に硫黄を有さないトリアゾール系化合物であり得る。実施形態において、トリアゾール系化合物は、たとえば、6から60個の炭素原子または6から40個の炭素原子を有するベンゾトリアゾールであり得る。例示的な例は、ベンゾトリアゾール、5−メチル−1Hベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチル−5−メチルベンゾトリアゾール、2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’−5’’,6’’テトラヒドロフタリドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールなどを含む。実施形態において、潤滑流体は、ベンゾトリアゾールおよび/または5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールを含むことができる。
【0083】
一般的に、潤滑流体は、単一の防食剤または同一もしくは異なる種類の2つ以上の防食剤の組合せを含んでもよい。潤滑流体中に存在する防食剤の全量は、広く異なり得る。一般的に、防食剤は、作動面の腐食を防止、抑制、または十分に阻止するために有効となり得る量で使用することができる。有効量は、潤滑流体の全重量を基準として、0.01から5.0重量%、または0.05から5重量%、または0.1から3重量%の範囲であってよい。防食剤は、より多い量で加えられてもよい。しかしながら、一般的に、より多い量が潤滑流体のスピンドルモータへの適性をさらに向上させることはないため、非経済的であり得る。防食剤は、その量が、スピンドルモータの作動面の腐食を防止、抑制、または十分に阻止するために有効である限り、より少ない量で加えられてもよい。
【0084】
開示される潤滑流体はまた、1つ以上の粘度指数調整剤も随意に含むことができる。好適な粘度指数改善剤(粘性調整剤)は、たとえばポリマー化合物など、より高温で増加した粘度および、より低温で最小限の粘度寄与を与える化合物をすべて含むことができる。粘度指数改善剤の例は、ポリメタクリル酸アルキル、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−ジエンコポリマー、スチレン−無水マレイン酸エステルコポリマー、および類似のオレフィンコポリマーを含む。一般的に、潤滑流体は、単一の粘度指数改善剤または同一もしくは異なる種類の2つ以上の粘度指数改善剤の組合せを含んでもよい。
【0085】
潤滑流体中に存在する粘度指数改善剤の全量は、広く異なり得る。一般的に、粘度指数改善剤は、より高温で増加した粘度および、より低温で最小限の粘度寄与を与えるために有効となり得る量で使用することができる。有効量は、潤滑流体の全重量を基準として、0.01から5.0重量%、0.05から5重量%、または0.1から3重量%の範囲であってよい。粘度指数改善剤は、より多い量で加えられてもよい。しかしながら、一般的に、より多い量が潤滑流体のスピンドルモータへの適性をさらに向上させることはないため、非経済的であり得る。粘度指数改善剤は、その量が、より高温で増加した粘度および、より低温で最小限の粘度寄与を与えるために有効である限り、より少ない量で加えられてもよい。
【0086】
開示される潤滑流体はまた、流動点降下剤を随意に含むこともできる。好適な流動点降下剤(低温フロー改善剤、ワックス結晶調整剤)は、たとえば、ポリマー化合物など、潤滑流体の低温フロー特性を改善することのできる化合物をすべて含むことができる。好適な流動点降下剤の例は、塩化パラフィンとアルキルナフタレンとの縮合物、塩化パラフィンとフェノールとの縮合物、および、上述のように粘度指数改善剤としても作用し得る、ポリメタクリル酸アルキル、ポリアルキルスチレン、ポリブテンなどを含む。一般的に、潤滑流体は、単一の流動点降下剤または同一もしくは異なる種類の2つ以上の流動点降下剤の組合せを含んでもよい。
【0087】
潤滑流体中に存在する流動点降下剤の全量は、広く異なり得る。一般的に、流動点降下剤は、潤滑流体の低温フロー特性を改善するために有効となり得る量で使用することができる。有効量は、潤滑流体の全重量を基準として、0.01から5.0重量%、0.05から5重量%、または0.1から3重量%の範囲であってよい。流動点降下剤は、より多い量で加えられてもよい。しかしながら、一般的に、より多い量が潤滑流体のスピンドルモータへの適性をさらに向上させることはないため、非経済的であり得る。流動点降下剤は、その量が、必要な低温フロー特性を与えるために有効である限り、より少ない量で加えられてもよい。
【0088】
開示される潤滑流体はまた、消泡剤を随意に含むこともできる。好適な消泡剤は、潤滑流体の気泡形成の傾向を十分に抑制、防止または減少することのできる化合物すべてを含むことができる。好適な消泡剤の例は、ポリシロキサン、ペルフルオロポリエーテル、ポリアクリル酸および同様の有機ポリマーを含む。一般的に、潤滑流体は、単一の消泡剤、または同一もしくは異なる種類の2つ以上の消泡剤の組合せを含んでもよい。
【0089】
潤滑流体中に存在する消泡剤の全量は、広く異なり得る。一般的に、消泡剤は、潤滑流体の気泡形成の傾向を十分に抑制、防止または減少するために有効となり得る量で使用することができる。有効量は、潤滑流体の全重量を基準として、0.01から5重量%、0.05から5重量%、または0.1から3重量%の範囲であってよい。消泡剤は、より多い量で加えられてもよい。しかしながら、一般的に、より多い量が潤滑流体のスピンドルモータへの適性をさらに向上させることはないため、非経済的であり得る。消泡剤は、その量が、潤滑流体の気泡形成の傾向を十分に抑制、防止または減少するために有効である限り、より少ない量で加えられてもよい。
【0090】
一般的に、潤滑流体は、如何なる望ましい粘度も有することができる。実施形態において、潤滑流体は、0℃で15cpから80cpの粘度を有することができる。実施形態において、潤滑流体は、0℃で25cpから70cpの粘度を有することができる。実施形態において、潤滑流体は、0℃で25cpから60cpの粘度を有することができる。
【実施例】
【0091】
材料
材料は、以下の供給業者から入手し、特に記述のない限り、受け取ったまま使用した。3−メチル−1,5−ペンタンジオールを1部およびウンデカン酸を2部(シグマ アルドリッチ(Sigma Aldrich)、ミズーリ州、セントルイス)用いて、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ−n−ウンデカノアートを合成した。公知の手順を用いて混合物を洗浄し、精製した。3−メチル−1,5−ペンタンジオールを1部およびノナン酸を2部(シグマ アルドリッチ、ミズーリ州、セントルイス)用いて、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ−n−ノナノアートを合成した。公知の手順を用いて混合物を洗浄し、精製した。オクチル化/ブチル化ジフェニルアミンであるIRGANOX(登録商標)L57;コハク酸ハーフエステルであるIRGACOR(登録商標)L12;およびトルトリアゾール誘導体であるIRGAMET(登録商標)39を、チバ ホールディング、エー ジー(スイス、バーゼル)より入手した。Reofos−RDP(登録商標)として市販されている二リン酸テトラフェニルレゾルシノール(Tetraphenyl resoercinol diphosphate)を、ケムチュラ コーポレーション(Chemtura Corporation)(インディアナ州、ウェストラファイエット)より入手した。ブチル化リン酸トリアリール添加剤であるSYN−O−AD(登録商標)8478を、アイ シー エル インダストリアル プロダクツ(ICL Industrial Products)(ミズーリ州、セントルイス)より入手した。STAT−SAFE(登録商標)2500(灯油、o−キシレン、ドデシルベンゼンスルホン酸、およびソルベントナフサの組合せ)を、イノスペック スペシャルティ ケミカルズ、UK、チェシャー州より入手した。EXPINN(登録商標)10(ヘプタンおよびドデシルベンゼンスルホン酸の組合せ)を、イノスペック スペシャルティ ケミカルズ、UK、チェシャー州より入手した。
【0092】
比較用組成物1(CC1)は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ−n−ウンデカノアート(98.4重量%)、IRGANOX(登録商標)L57(1.0重量%)、SYN−O−AD(登録商標)8478(0.5重量%)、IRGACOR(登録商標)L12(0.05重量%)、およびIRGAMET(登録商標)39(0.05重量%)を含んでいた。組成物1(C1)および組成物2(C2)は、CC1の成分およびSTAT−SAFE(登録商標)2500を100ppm(C1)、STAT−SAFE(登録商標)2500を300ppm(C2)含んでいた。
【0093】
比較用組成物2(CC2)は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ−n−ノナノアート(98.4重量%)、IRGANOX(登録商標)L57(1.0重量%)、Reofos−RDP(登録商標)(0.5重量%)、IRGACOR(登録商標)L12(0.05重量%)、およびIRGAMET(登録商標)39(0.05重量%)を含んでいた。組成物3(C3)、組成物4(C4)、および組成物5(C5)は、CC2の成分およびSTAT−SAFE(登録商標)2500を100ppm(C3)、STAT−SAFE(登録商標)2500を500ppm(C4)、およびEXPINN(登録商標)10を500ppm含んでいた。
【実施例1】
【0094】
CC1、C1、C2、CC2、C3、C4、およびC5のサンプルの導電率を、30℃から100℃の範囲の温度で測定した。図4は、CC1、C1、およびC2についての導電率対温度を示し、図5は、CC2、C3、C4、およびC5についての導電率対温度を示す。
【実施例2】
【0095】
CC1およびC2の蒸発を、150℃で0時間から95時間モニタした。残留油のパーセントを時間の関数として、図6に報告する。図6に見られるように、開示される導電性誘導剤を含む潤滑油C2は、導電性誘導剤を含まない同じ油と比較して、認め得る程の蒸発速度の差を示さない。
【0096】
このように、導電性誘導剤を含む潤滑剤を備えるハイドロベアリングを有する流体動圧ディスクドライブスピンドルモータの実施形態が開示される。本開示は、開示される実施形態以外により実施できることを、当業者は認めるであろう。開示される実施形態は限定ではなく例示の目的で提示され、本開示は下記の請求項によってのみ限定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部材と、
前記静止部材に対して回転可能な回転可能部材と、
前記静止部材と前記回転可能部材とを相互に接続し、潤滑流体によって分けられる作動面を有するハイドロベアリングとを備え、前記潤滑流体は、
a) 少なくとも110の粘度指数を有する合成エステルベース流体と、
b) 前記潤滑流体の全重量を基準として、10から5000重量ppmの少なくとも1つの導電性誘導剤と、
c) 前記潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの酸化防止剤と、
d) 前記潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含む、スピンドルモータ。
【請求項2】
前記合成エステルベース流体は、
式I
【化1】

(式中、RおよびRは同一または異なって、各々は、直鎖C−C17アルキル基を示し、これは随意に、その鎖の第二炭素に結合したC−Cアルキルを持ち、Zは直鎖C−C10アルキレン基であり、これは随意に、その鎖の炭素に結合したC−Cアルキルを持つ)の化合物;
式Ia
【化2】

(式中、RおよびRは同一または異なって、各々は、直鎖C−C17アルキル基を示し、これは随意に、その鎖の第二炭素に結合したC−Cアルキルを持ち、Zは直鎖C−C10アルキレン基であり、これは随意に、その鎖の炭素に結合したC−Cアルキルを持つ)の化合物;または
その組合せを含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの導電性誘導剤は、
a.) メタクリル酸ラウリルおよびメチルビニルピリジンのコポリマー中のジアルキルサリチル酸クロムとジデシルスルホコハク酸カルシウムとの混合物;
b.) N−タロウ−1,3−ジアミノプロパンおよびエピクロロヒドリン(3)のポリマー縮合体の(たとえば、芳香族溶媒中の)組成物;
c.) トルエン中の1−デセンポリスルホンおよび亜硝酸ジココジメチルアンモニウムの組成物;
d.) サリチル酸アルキル、スルホン酸塩、スクシンイミドおよび他の極性添加剤のコロイド溶液;
e.) オレイン酸マグネシウム、硝酸塩潤滑油のステアリン酸とのカルシウム塩、トルエン中のC17−C20合成脂肪酸のクロム塩の組成物、ステアリン酸クロム、クロム塩長鎖酸、オレイン酸クロム、リノール酸クロム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ジエチルアミン、2−メチルピリジン、ピリジン、3−メチルピリジン、2−アミノ−5−ニトロピリジン、および2,6−ジニトロ−3−クロロピリジン;
f.) ステアリルアントラニル酸;
g.) 長鎖有機酸または炭化水素の側鎖により可溶化させた導電性ポリアニリン誘導体;
h.) 金属イオンを含有するフラーレン;および
i.) 金属イオンから選択される、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項4】
前記導電性誘導剤はポリマー化合物を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項5】
前記ポリマー化合物はポリアニリンを含む、請求項4に記載のスピンドルモータ。
【請求項6】
前記ポリマー化合物は、式I:
【化3】

(式中、0<x/y<1であり、RおよびRは各々独立して水素または炭化水素基であり、Rは水素、炭化水素基、ハロゲン原子、または、酸素もしくは硫黄を介してフェニル環に結合された炭化水素基である)によって示される、請求項5に記載のスピンドルモータ。
【請求項7】
前記導電性誘導剤は、R−SOH(式中、Rは水素または炭化水素基である)を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項8】
前記導電性誘導剤は、フェニル環が随意に、1、2もしくは3つの同一もしくは異なる直鎖もしくは分枝鎖C−C20アルキル基を持つフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ヘプチルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖オクチルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ノニルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖デシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ウンデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ドデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖トリデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖テトラデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ペンタデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ヘキサデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ヘプタデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖オクタデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖ノナデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖デカデシルフェニルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘキシルナフチルスルホン酸またはジヘキシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘプチルナフチルスルホン酸またはジヘプチルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノオクチルナフチルスルホン酸またはジオクチルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノノニルナフチルスルホン酸またはジノニルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノデシルナフチルスルホン酸またはジデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノウンデシルナフチルスルホン酸またはジウンデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノドデシルナフチルスルホン酸またはジドデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノトリデシルナフチルスルホン酸またはジトリデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノテトラデシルナフチルスルホン酸またはジテトラデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノペンタデシルナフチルスルホン酸またはジペンタデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘキサデシルナフチルスルホン酸またはジヘキサデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノヘプタデシルナフチルスルホン酸またはジヘプタデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノオクタデシルナフチルスルホン酸またはジオクタデシルナフチルスルホン酸;直鎖もしくは分枝鎖モノノナデシルナフチルスルホン酸またはジノナデシルナフチルスルホン酸;および直鎖もしくは分枝鎖モノデカデシルナフチルスルホン酸またはジデカデシルナフチルスルホン酸からなる群から選択される、請求項7に記載のスピンドルモータ。
【請求項9】
前記潤滑流体は、0℃で15cpから80cpの粘度を有する、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項10】
前記潤滑流体は、少なくとも1つのアミン系酸化防止剤を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項11】
前記潤滑流体は、少なくとも1つのアミン系酸化防止剤および少なくとも1つのフェノール系酸化防止剤を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項12】
前記潤滑流体は、前記合成エステルベース流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの粘度指数調整剤を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項13】
前記潤滑流体は、前記合成エステルベース流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの流動点降下剤を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項14】
前記潤滑流体は、前記合成エステルベース流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの消泡剤を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項15】
前記潤滑流体はさらに、ポリアルファオレフィンベース流体を含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項16】
前記合成エステルベース流体は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ヘキサノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ヘプタノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−オクタノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ノナノアート)、および3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−デカノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ウンデカノアート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−ドデカン酸)、および3−メチル−1,5−ペンタンジオール ジ(n−トリデカノアート)、またはその組合せを含む、請求項1に記載のスピンドルモータ。
【請求項17】
静止部材と、
前記静止部材に対して回転可能な回転可能部材と、
前記静止部材と前記回転可能部材とを相互に接続し、潤滑流体によって分けられる作動面を有するハイドロベアリングとを備え、前記潤滑流体は、
a) 少なくとも110の粘度指数を有する合成エステルベース流体と、
b) 前記潤滑流体の全重量を基準として、10から5000重量ppmの1つ以上のアリールスルホン酸導電性誘導剤と、
c) 前記潤滑流体の全重量を基準として、0.1重量%から5重量%の少なくとも1つのフェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤、またはフェノール酸化防止剤およびアミン酸化防止剤と、
d) 前記潤滑流体の全重量を基準として、0.1重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含む、スピンドルモータ。
【請求項18】
前記潤滑流体は、前記少なくとも1つのアリールスルホン酸を50から1000ppm含む、請求項17に記載のスピンドルモータ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの導電性誘導剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸を含む、請求項17に記載のスピンドルモータ。
【請求項20】
a) 少なくとも110の粘度指数を有する合成エステルベース流体と、
b) 前記潤滑流体の全重量を基準として、50から1000重量ppmの1つ以上のアリールスルホン酸導電性誘導剤と、
c) 前記潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つのフェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤、またはフェノール酸化防止剤およびアミン酸化防止剤と、
d) 前記潤滑流体の全重量を基準として、0.01重量%から5重量%の少なくとも1つの耐摩耗添加剤とを含む、潤滑流体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−501135(P2013−501135A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523979(P2012−523979)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/044737
【国際公開番号】WO2011/017629
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】