局所的爪用製剤
還元剤、それに続いて酸化剤を爪に適用することによって、その浸透性が実質的に増加し、それによって爪を横切って薬物の浸透が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪への適用のための局所的製剤であって、薬物および浸透促進剤を含む製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
爪真菌症は、爪板または爪床の菌類・カビ類による感染の総称用語であって、爪の疾患の50%までの原因を占める。手の爪および足の爪の両方とも感染の可能性がある。ヨーロッパでは、現在、この疾患に人口の約5%が感染していると考えられており、そして常に流行している。爪真菌症は高齢者の間でより一般的に起こることなので、このような増加は主に高齢者のためである。他の寄与する要因としては、粗末なはきもの類および公共のレジャー施設の使用の増加が挙げられる。
【0003】
最も頻繁に爪真菌症を引き起こす原因となる病原体は、皮膚糸状菌であり、それは全ケースの90%より多くの原因となると考えられる。紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)(足の爪56%−手の爪36%)および毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)(足の爪19%−手の爪11%)が特に一般的である。イースト菌感染症はあまり一般的でないが、通常、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に関連する(足の爪10%−手の爪30%)。
【0004】
2番目に比較的一般的な爪の疾患は、乾癬である。乾癬は、皮膚の炎症性疾患として最もよく知られているが、皮膚乾癬にかかったほとんどの患者は爪乾癬にもかかる。患者が爪乾癬のみにかかることは珍しい。乾癬はヨーロッパおよび北アメリカで最も一般的であり、それらの地域では人口の約3%が感染している。
【0005】
爪の疾患が命にかかわる場合は滅多にないが、その疾患にかかっている人にとっては、それらは非常に痛く、また外観を損なう可能性がある。一般的な症状としては、しばしば黄色/緑色またはより濃い色への爪色の変化、および爪下での組織片の集積が挙げられ、これによって悪臭のある臭いが引き起こされる。その上、爪は厚くなり、そして剥がれやすくなる。かかる審美的徴候だけで、疾患にかかった人の生活の質に対して重大な影響を及ぼす可能性がある。これらの症状に加えて、この疾患は非常に痛くなり得る。厚みのある足の爪は、特に靴の中での不快感を引き起こし得、そして疾患にかかった人は、立っていることや歩くことさえもが不快となる場合がある。
【0006】
爪真菌症および他の爪の疾患の有効な治療は、主に角質、タンパク質の繊維群からなる爪板によって感染部位が事実上保護されているということによって深刻に妨げられている。角質繊維は、ジスルフィド結合が糊のような様式で作用し、そして爪板の完全性の主な要因となるシステインリッチな球形タンパク質と一緒に保持される。有効な治療は、いずれも硬質で剛性の爪板によって与えられる障害を克服することと、爪床に活性種を送達することが可能でなければならない。
【0007】
既知の治療方法は、3つの一般的な種類に分類される。第1の分類には、感染部位を暴露するために感染した爪の全部または一部を除去することが含まれる。除去は外科的に実行されても、または化学薬品によって実行されてもよい。化学薬品による除去は、短時間で密封包帯内で爪板に尿素を適用することを含み得る。尿素は、爪の内部でタンパク質を広げるように作用する。爪は軟質になり、そして爪床から取り外される。しかしながら、このような治療の外傷性および痛みを伴う性質は、評判が悪く、また最後の手段としてのみ使用されることを意味する。
【0008】
第2の一般的な治療方法は、適切な薬物の経口投与である。爪真菌症の治療のために、現在4つの主な経口治療が利用可能である。これらは、グリセオフルビン(グリソビン(Grisovin)(登録商標)、GSK)、ケトコナゾール(ニゾラル(Nizoral)(登録商標)、ヤンセン−シラグ(Janssen−Cilag))、イトラコナゾール(スポラノクス(Sporanox)(登録商標)、ヤンセン−シラグ(Janssen−Cilag))およびテルビナフィン(ラミシール(Lamisil)(登録商標)、ノバルティス(Novartis))である。乾癬に関して、メトトレキセート、エトレチナートおよびシクロスポリンのような経口薬剤が有効であり得る。
【0009】
グリセオフルビンは1950年代から入手可能であった。皮膚糸状菌に対するその静真菌活性のため、長い治療期間が必要とされる(足の爪感染に関して9〜12ヶ月)。治療速度は遅く、また再発率は高い。ケトコナゾールは、1980年代に爪真菌症の治療のために導入された最初のイミダゾールベースの薬物であった。しかしながら、その肝毒性のため、他の治療に好ましい反応を示さない手の爪の感染に対するその使用は、現在、規制されている。より最近の抗真菌性薬剤であるイトラコナゾールおよびテルビナフィンは爪真菌症の経口治療においてより有効であり、以前観測されたものより早い菌類治療速度および短い治療期間を伴う。
【0010】
第3の方法は、爪板への組成物の局所的適用を含む。現在市場に出ている爪真菌症の局所的治療には、アモロルフィン(Amorolfine)(ロセリル(Loceryl)(登録商標)、ガルデルマ(Galderma))およびシクロピロクス(ペンラク(Penlac)(登録商標)、デルミク(Dermik))が含まれる。本明細書で使用される場合、「局所的な」および「局所的に」という用語は、皮膚または爪のような表面への適用を示し、通常、経口摂取または注射による全身適用と対照的である。
【0011】
爪の疾患に関する局所的治療は、肝毒性のような全身薬物と同様の危険をともなわないため、また完全または部分的な爪除去を含む治療より痛みがなく、そして美観を損なわないため、原則として最も好ましい。しかしながら、有効性のために、活性種の有効濃度が爪板ならびに爪床自体のより深い層に到達することができるように、活性種が十分な量で爪板に浸透することが可能でなければならない。乏しい薬物浸透の結果、おそらく現在利用可能な局所的治療は比較的効果がなく、そして長い治療期間と遅い治療速度に関連する。
【0012】
皮膚の薄い角質層と比較すると、爪板は非常に厚い。これは、爪床への薬物送達に関しては非常に長い拡散経路が存在することを意味する。加えて、爪は類脂質バリアのように作用しないが、濃縮ヒドロゲルのように作用する。システインリッチのタンパク質のジスルフィド結合は、爪の完全性および構造に関して、そしてそのバリア特性に関しての主要な要因である。従って、爪の疾患に関する有効な局所的治療の開発は、局所的皮膚治療の開発よりも非常に大きい難題を示す。
【0013】
爪板中へ、および爪板を通しての薬物の拡散速度に影響する要因がいくつか存在する。これらの要因には、拡散種の大きさ、拡散種の親水性/疎水性および媒体の性質が含まれる。加えて、爪床の感染部位に到達するように薬物が拡散しなければならないバリアを有効に減少させることによって、浸透性が向上され得る。バリアは物理的にまたは化学的に減少されてよい。
【0014】
バリアの物理的な減少には爪の部分的または完全除去が含まれるか、または爪板の上部層の削り落としが含まれる。かかる手順は両方とも痛みを伴い、また美観を損なうため、望ましくない。
【0015】
より許容できるアプローチとしては、化学的促進剤の使用が挙げられる。これは、爪への適用時に、薬物浸透に対するバリアを減少させ、そして爪板中に、また爪板を通しての活性種の拡散速度を増加させるように相互作用し、そして爪の構造を変性する。尿素は爪浸透促進剤として一般的に使用され、化学的に爪板を除去する能力を有する。他のアプローチは、爪のジスルフィド結合に焦点を置き、これらの結合を分裂するものとしては、アセチルシステインおよびメルカプトエタノールが含まれる。
【0016】
現在、爪板のより低層および爪床が感染している疾患の治療で満足な結果をもたらす局所的治療は利用可能でない。
【0017】
米国特許第6,664,292A号明細書には、爪の病状の治療のための局所的組成物が開示される。この組成物は、低級アルコールと低級カルボン酸とからなる。
【0018】
米国特許第5,753,256A号明細書は、爪真菌症の治療のための石膏を開示する。この石膏は、活性化合物および浸透促進剤を含む。開示される浸透促進剤は、スルホキシド、乳酸、サリチル酸、プロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびドデシル硫酸ナトリウムである。
【0019】
米国特許出願公開第2003/0235541号明細書は、爪真菌症の局所的治療のための水性塩基性配合物を開示する。
【0020】
米国特許出願公開第2001/0049386号明細書は、尿素および抗真菌性組成物を含む組織軟化組成物を、1つまたは別々の組成物で、同時または不同時に爪の周囲の感染領域に投与する爪真菌症の治療方法を開示する。
【0021】
国際公開第99/40955号パンフレットには、爪真菌症の治療のための感圧接着剤マトリックスパッチが開示される。皮膚浸透促進剤も任意にパッチに含まれる。
【0022】
英国特許出願公開第2278056A号明細書には、真皮使用のための浸透促進剤としてチオグリコール酸の高級エステルおよびアミドが開示され、そして爪真菌症の治療のための適切な配合物が開示される。しかしながら、これらの配合物は、爪の周囲のみに適用が可能である。加えて、これらの治療では、治療は局所的に適用可能であるが、薬物が大動脈に入るように配合物が経皮的投与用であるため、薬物が全身に存在することが必要とされる。
【0023】
国際公開第99/49895号パンフレットは、チオグリコール酸が爪の角質を減少させることが可能であり、従って、爪を通して爪床までの薬物の拡散を改善するために使用可能であることを開示する。
【0024】
独国特許第1000567号明細書は、爪の角質を減少させるためにヨウ化ナトリウムと組み合わせてチオグリコール酸を使用することを開示するが、一方、欧州特許出願公開第0712633A1号明細書には、チオグリコール酸の皮膚浸透促進剤としての使用が単に開示されている。
【0025】
米国特許出願公開第2003/0007939号明細書は、皮膚、頭皮、髪および爪において浸透を向上するための過酸化水素および少なくとも1種の他の皮膚病学的薬剤の製薬組成物を開示する。還元剤の使用は記載されていない。
【0026】
欧州特許第0,425,507号明細書は、皮膚を含む上皮の異常状態または損傷を受けた状態を治療するための組成物を開示する。この組成物は、活性化タンパク質、過酸化水素を含む酸化剤、およびチオグリコール酸を含む還元剤を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従って、爪の疾患の治療のために有効な局所的に適用される配合物の必要が依然存在する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者らは、驚くべきことに、薬物浸透を向上するために、チオグリコール酸(TA)のような還元剤と、過酸化水素のような酸化剤とを順次、爪に適用することができることを発見した。通常の状況では、2つの薬剤の組み合わせによって極端な反応が一般的に導かれる。しかしながら、爪では、これらの薬剤を組み合わせることは安全と思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
従って、第1の態様において、本発明は、薬物によって治療可能な爪の疾患の治療用薬品の製造における還元剤および酸化剤のそれぞれの好ましくは液体の製剤の使用であって、前記製剤が別々に配置されて、還元剤、それに続く酸化剤の順番で患者の爪に連続投与され、前記薬物が一方または他方の製剤中に配置されるか、または任意に、薬物が還元剤もしくは酸化剤に対して追加的である第3の製剤中に配置される使用に関する。
【0030】
還元剤および/または酸化剤は、以下に検討されるように、適切な還元または酸化特性を有する抗真菌薬および抗乾癬薬のような既知の薬物から選択されてもよいが、余分の薬物が利用されることが一般的に好ましい。
【0031】
還元剤および酸化剤が十分に強力であり、2つの製剤の単純な組み合わせによって、実質的に放熱または爆発反応のような極端な反応が導かれることが好ましい。連続的な様式で、還元剤、それに続いて酸化剤が爪に適用される場合、驚くべきことに、即時の極端な反応の目に見える徴候がなく、かかる組み合わせを安全に投与することができることが確立された。特定の還元剤および酸化剤は非常に強力であるため、爪に安全に適用することができないことは認識され、また許容できない変色のような望ましくない反応を患者に引き起こすこともある。しかしながら、爪への適用に関して各薬剤が個々に許容できる場合であれば、2つの組み合わせが爪以外では極端な反応をもたらす場合でさえも、この組み合わせは許容できるものである。薬剤のチオグリコール酸および過酸化水素は、そのような組み合わせの例を提示する。上記の基準を適用することによって、他の薬剤/組み合わせは当業者によって容易に選択され得る。
【0032】
いずれの薬剤に関しても、適切な濃度は独立して選択され、そして一般的に1%w/vと50%w/vとの間であり、好ましい範囲は5%w/vと30%w/vとの間である。より好ましくは、各濃度は10%と25%との間、そして特に5%と15%との間の範囲から別々に選択される。
【0033】
好ましい実施形態において、還元剤および酸化剤の所望の強度は、それらの還元電位を参照することによって選択可能である。当該分野で周知であるように、特定の種の還元電位は、その種が電子を受け入れる能力を示し、それによって、その還元能力の示度が提供される。
【0034】
本発明による酸化剤および還元剤の還元電位は、当業者に既知であるいずれかの手順によって測定可能である。好ましい方法は、水中で、または水およびエタノールの混合物中で、銀/塩化銀電極を参照として、r.t.p.で、特定の薬剤の溶液の還元電位を測定し、そして還元標準に対して較正する方法である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によると、酸化剤の還元電位は、上記の手順に従って測定される場合、好ましくは−50mV未満、より好ましくは−100mV未満、そして最も好ましくは200mV未満である。還元剤の還元電位は、好ましくは+20mVより高く、より好ましくは+50mVより高く、そして最も好ましくは+75mVより高い。
【0036】
添付の実施例で実証されるように、いずれかの薬剤を含有する溶液の還元電位は、所望であれば、溶液中に存在する酸化剤または還元剤の濃度を変化させることによって、または溶液のpHを調節することによって調節されてよい。
【0037】
従って、好ましい実施形態において、還元剤は7と14との間のpHを有するアルカリ性製剤として調製される。より好ましくは、一般的に還元化合物の還元電位を最大にするため、pHは8と13との間のあり、9と12との間のpHが特に好ましい。
【0038】
逆に、酸化剤のpHは一般的により重要性が少ないが、酸化電位(−ve還元電位)を最大にする傾向があるため、pHが1と7との間であることは好ましく、2と5との間のpHがより好ましい。いずれにしても、皮膚での不注意による飛沫は、薬理学的および/または美容的に許容できない損傷を導くため、どちらの製剤もあまり酸性/腐食性ではないことが好ましい。
【0039】
しかしながら、pHに関して他の関連する考慮がなされない場合、上記の優先が一般的に適用されるように、例えば還元電位または反応速度を緩和することのような所望の効果を達成するため、いずれの配合物のpHも変更可能であることは認識される。
【0040】
一般に、還元および酸化化合物の配合物は、還元電位が上記範囲内にあるように、そして一般的に+veまたは−ve電位が適切に最大化されるように選択される。還元電位が濃度によって最適化されることは一般的に好ましいが、低い濃度を有する配合物が提供されてもよいことは認識されており、その場合、溶媒および/または共溶媒の蒸発によってその場でより高い濃度へと導かれる。
【0041】
薬剤の好ましい濃度は、添付の実施例で例示される技術に従って容易に確認される。例えば、チオグリコール酸の好ましい濃度範囲は、少なくとも0.1%、そして20%まで、およびそれ以上であり、尿素−H2O2は少なくとも5%、そして40%まで、およびそれ以上、H2O2は少なくとも20%、そして100%まで、およびそれ以上、ならびにDTTは少なくとも0.05%、そして20%まで、およびそれ以上である。製剤が爪に適用される場合、爪への適用時に薬剤の濃度が増加するため、エタノールまたは他の揮発性溶媒もしくは共溶媒と配合される製剤は、還元剤または酸化剤の濃度がより低い状態で調製されてもよい。
【0042】
いずれもの成分によって生じる浸透性の向上は十分に異なり、他と相加的であり得ると考えられる理由がないという点で、2つの成分の適用は相乗的であると思われることは特に驚くべきである。実際に、最初に酸化剤を適用することでは、より有効な2成分のものよりも高い爪浸透性のかなりの向上は一般的に導かれないため、このような作用様式は当該分野で示されていない。しかしながら、最初に還元剤を使用することは、両方の薬剤の効果を組み合わせた場合より効果がしばしば大きいような相乗作用を導くように見える。この効果は、常にではないが、爪(以下)による液体取り込みの増加の尺度に反映され得る。
【0043】
好ましい還元剤には、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸(TA)およびジチオトレイトール(DTT)、アスコルビン酸、ヒドロキノン、メルカプトエタノール、グルタチオン、L−システイン、タウリン、アミノメタンスルホン酸、システイン酸、システインスルフィン酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、ホモタウリン、ハイポタウリン、イセチオン酸、メルカプトエタンスルホン酸、N−メチルタウリン(MTAU)ならびにそれらの単純な誘導体が含まれる。
【0044】
「単純な誘導体」は、化合物の塩、エステルまたはアミドを意味する。チオグリコール酸の単純な誘導体が特に好ましい。いずれのさらなるアルキル成分も、好ましくは全部で1〜6個の炭素原子を有するが、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、そして最も好ましくは1、2または3個の炭素を有する低級アルキルである。
【0045】
還元剤は、好ましくは、チオグリコール酸またはその誘導体であり、そしてそのようなものとして還元剤は本明細書で一般的に指されるが、他に明白または明らかでない限り、このような記述はいずれも他の還元剤を含むことは理解される。
【0046】
酸化剤は、尿素、過酸化水素、過硫酸カリウム、チオウラシル、p−クマル酸(p−coumeric acid)、グリコール酸、シュウ酸、シネオール、ペルオキシドン、二酸化塩素、二クロム酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、臭素酸バリウム、塩素酸バリウム、過酸化バリウム、塩素酸カドミウム、塩素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸クロム、硝酸コバルト、酸化銀、過ヨウ素酸および二クロム酸ピリジンを含む適切ないずれかであってよい。過酸化水素が好ましく、そして過酸化水素および尿素の付加化合物がより好ましい。
【0047】
製剤は他の直後に投与されてもよいが、還元剤製剤、それに続いて酸化剤製剤の順序で製剤を適用し、そして酸化剤製剤を適用する前に短時間で最初の製剤を爪と反応させることが好ましい。適切な時間は10秒と10分との間、より好ましくは1分と5分との間である。このような短時間は許容できるが、適用の間に実質的な時間が経過してもよいことが分かっており、そして還元剤および酸化剤の適用間の好ましい時間は15時間と30時間との間であり、そしてより好ましくは20〜26時間であり、その後の適用の間も同様の時間である。このようなより長い時間が利用される場合、薬物が一方または両方の製剤に存在することが好ましく、または別々の配合物中であるが一方または両方の製剤と一緒に投与される。
【0048】
薬物は製剤の一方または両方に存在してもよく、あるいは酸化剤および還元剤の適用の前、間または後の投与用に別々に調製されてもよい。一実施形態において、薬物が適切な位置にあり、最終的に酸化剤と還元剤との間の相互作用が浸透性向上をもたらすように、還元剤が爪に適用され、続いて薬物、そして酸化剤が適用される。酸化剤および還元剤の一方または両方への長期暴露が望ましくない場合、薬物が別々の製剤中に存在することが一般的に好ましい。
【0049】
本発明の配合物は爪への適用のためであり、そして爪への適用のために適切ないかなる様式で配合されてもよい。
【0050】
製剤は好ましくは水性であり、任意にエタノールまたはアセトンのような共溶媒を含む。酸化剤または還元剤には共溶媒が必要とされ得ないが、薬物の可溶化のために必要とされてもよい。
【0051】
一般的に、本発明の爪用配合物は、爪への直接適用が意図されるクリーム、軟膏、ゲル、溶液、ローション、フォーム、ムース、スプレー、ペーストまたはラッカーとして提供されてもよい。しかしながら、本発明の配合物は、例えば、溶液または粉末またはプレミックスとして提供されてもよい。溶液は、部位をより正確に標的化するために、例えば、石膏のような包帯剤に適用され、次いで爪と関連されてもよい。あるいは包帯剤を爪に適用し、次いで溶液を包帯剤に適用してよい。この様式では、例えば、包帯剤を完全に爪表面に限定することが可能であり、または包帯剤は、包帯剤の構造またはバリア手段の導入のいずれかによって、溶液と爪以外の表面、または治療される部位との接触が抑制または防止されるような様式で構成され得る。適切なバリア手段は、特定の接着剤もしくは樹脂、または適切な治療を含んでよい。かかる包帯剤が使用される場合、可能性のある爆発反応の発生を避けるため、還元剤および酸化剤のそれぞれに対して別々の包帯剤を使用することが好ましい。
【0052】
包帯剤が提供される場合、薬物の溶液または他の製剤が吸収性包帯剤に適用されたら、望ましくない担体の蒸発を防止するために、包帯剤にさなる密封包帯を適用することも望ましい。
【0053】
経皮性パッチと同様の構造であるが、好ましくは貯蔵器パッチであるパッチは、例えば塗料またはラッカーとして他の適用後に1種の薬剤を提供するために使用されてもよい。同様に、粉末は、例えばラッカーが塗布されたか、または塗料が塗布された表面上に散布することによって適用されてよい。
【0054】
他の粉末およびプレミックスは、所望であれば、例えば爪への適用のための溶液または製剤にさらに仕上げられてもよい。
【0055】
本明細書において「爪」という用語は、いずれもの適切な爪表面を指すことは理解される。ヒトでは、これには事実上、手の爪と足の爪のみが含まれるが、いかなる爪表面も想定される。
【0056】
薬剤のための適切な担体には、一般的に、水、ならびに一価および多価アルコールを含む低級アルコールが含まれる。アセトンのような他の溶媒も利用されてもよく、そして一般的に溶媒が爪への適用に適切であるかどうかは当業者に容易に明白である。
【0057】
担体に加えて、他の媒体が例えば膨張性薬剤として使用されてもよい。配合物の嵩を形成するために水を利用してもよいが、プロピレングリコールは一般的に高レベルの爪の浸透性と関連し、そして一般的により好ましい膨張性薬剤であることが分かっている。
【0058】
製剤は単一水性製剤であっても、または例えば、濃厚剤、安定化促進剤、pH変更剤、臭気抑制剤および着色剤のような成分をさらに含有してもよい。このような疾患において一般的な悪臭のある爪の疾患を薬品によって治療することが意図される場合、または薬品自体の臭気を隠すことが望ましい場合、臭気抑制剤の使用は特に好ましい。同様に、疾患の治療によって爪の望ましくない変色がもたらされる場合、着色剤が含まれてよい。一実施形態において、その位置で乾燥するニスとして製剤は調製される。
【0059】
もう1つの実施形態において、還元剤および/または酸化剤および特にチオグリコール酸は、投与される薬物と複合化されてもよい。
【0060】
「薬剤」という用語は、爪への適用時に治療効果を及ぼし得る本発明の製剤のいずれもの活性成分を意味する。本発明の浸透促進剤に関連する場合のみ、治療効果は顕著であり得る。
【0061】
本発明の配合物で使用するための適切な薬物は、患者の爪と関連するいかなる疾患にも使用されてよいが、しばしば菌類・カビ類感染または乾癬に関連する疾患のいずれかの種類に分類される。薬物はいずれかの適切な形態であってもよく、そして固体、液体または気体で、爪に投与される製剤中に存在してよい。適切な気体としては、例えばNOが挙げられる。
【0062】
本発明の配合物に用いられる適切な薬物には、抗真菌性薬物:アモロルフィン、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、エコナゾール、シクロピロクス、オキシコナゾール、クロトリマゾール、テルビナフィン、ナフチフィン、アンフォテリシン、グリセオフルビン、ボリコナゾール、フルシトシン、ニスタチンならびにそれらの薬理学的に許容できる塩およびエステルが含まれる。テルビナフィンは、特に好ましい。
【0063】
乾癬に関連する使用に適切な薬物としては、コルチコステロイド、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、エトレチナート、シクロスポリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0064】
使用される薬物の量は本発明に対して重要ではなく、そして必要とされる全ては、薬物が、爪の疾患の治療または予防のために有効な量で投与されることができるということである。薬物の量は、患者の年齢、性別および/または体重次第であるが、一般的に、爪に適用するための原料製剤として提供され、そして薬物の濃度は一般的に、主な決定要因として治療される疾患次第である。
【0065】
薬物の量は、1回の治療後に疾患を解消するために十分であってもよいが、それは一般的に、意図された周期数に従って、薬物の量が段階的な治療のために調整されるように、治療が多くの適用のために続けられる場合である。
【0066】
周期的な治療では、感染した爪を周期的に還元剤および酸化剤で治療する。好ましい手法は、1日目に還元剤、次いで2日目の酸化剤で治療することであり、この時、薬物は好ましくは酸化剤と一緒に、または直後に投与され、次いで3日目にこのプロセスを繰り返し、再び還元剤の適用から始めることである。任意に、例えば、繰り返しの治療が4日、5日、6日または7日に再び始まるように、治療間に間隔が提供されてもよい。間隔は好ましい場合、より長くてもよいが、好ましくは1ヶ月以内、そして好ましくは2週間以内である。
【0067】
周期が、いずれの製剤の2回以上の適用を含んでもよいことは認識される。例えば、還元剤が、例えば2〜3日連続で毎日、または1日の間に数回適用され、そして酸化剤および薬物が、還元剤による最後の治療の翌日、または還元剤による最後の治療の直後であり得る最初の治療の次の日に適用される。酸化剤は、連続で毎日、または1日の間に数回適用されてよく、そして一般的に、薬物は、酸化剤によるそれぞれの治療と一緒に、または直後に適用されることが好ましい。
【0068】
本発明の製剤中の薬物の適切な濃度は、治療される疾患および使用される薬物のような要因次第であり、そしていかなる場合も当業者に容易に明白である。指針として、適切な濃度は、0.1%〜50%w/w、より好ましくは1%〜20%w/w、特に1%〜10%w/wの領域であってもよいが、これらの範囲の上下の濃度も本発明によって認識される。
【0069】
本発明の配合物は、他の薬物および/または浸透促進剤をさらに含んでもよい。さまざまな薬物の適切な例は、上記で提供される。さらなる浸透促進剤には、乳酸、DMSO、サリチル酸およびオレイン酸が含まれ、乳酸、サリチル酸およびオレイン酸は個々に好ましい。
【0070】
促進剤の濃度は、促進剤を含有しない同様の配合物より高い爪板への浸透を可能にするために有効であるいずれであってもよい。一般に、促進剤の量は約0.1%w/wと約25%w/wとの間の範囲であり、約1%と20%、そしてより好ましくは3%と15%w/wの間の量がしばしば良好な結果をもたらす。
【0071】
また、本発明は、治療を必要とする患者の爪の爪感染症の治療方法であって、前記爪への還元剤製剤の適用、それに続く酸化剤製剤の適用を含んでなり、前記爪の疾患は薬物によって治療可能であり、前記薬物は前記製剤の一方または第3の製剤中に配置される方法を提供する。
【0072】
上記方法が、好ましくは、使用に関して上記された特徴および/または請求項2〜43のいずれか一項に記載される特徴をさらに含むことは認識される。
【0073】
本発明は、爪感染症の治療に関して上記され、そして好ましくは請求項1〜43のいずれか一項に記載される製剤を含むキットをさらに提供する。
【0074】
ここで本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0075】
実施例1〜4:材料および方法:
実施例1〜4では、爪浸透性を試験するために2つのモデルを発展させた。モデル1は、国際公開第99/49895号パンフレットと同様の処方計画に従って、溶媒中に溶解された浸透促進剤で爪を処理し、そして爪の重量増加%を決定した。浸透促進剤はケラチン分解性であると考えられ、従って、爪の硫黄結合を壊し、それによって、爪が軟化し、そしてより多くの液体が吸収される。
【0076】
第2のモデルは、爪浸透性を実際に測定する。この新規モデルでは、放射性化合物、14C−マンニトールを使用すると、浸透促進剤の適用後、爪を通して薬剤の進行が生じた。新規拡散セルを使用し、マンニトール拡散を測定した。
【0077】
実施例1〜4では、以下に詳述される器具、材料および方法を使用する。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
浸透促進剤:
各浸透促進剤は異なる溶解性を示すため、以下の表2に従って、水またはエタノールと水との混合物のいずれかを溶媒として使用した。
【0081】
【表3】
【0082】
方法:
爪膨張の試験:
切り取られた爪の洗浄および調製:
爪切りを使用して、健康なヒト志願者から(同意を得て)長さ約2mmの爪を切り取った。ホワーリミキサー(WhirliMixer)(商標)(英国、フィソンズ(Fison’s、UK))を最大速度で1分間使用し、28mlのガラスバイアル瓶中でボルテックスすることによって、70%エタノール(v/v)を使用してこれらを洗浄した。次いで、切り取られた爪を水中で再び1分間、強力にボルテックスすることによってすすいだ。この手順を3回繰り返した。次いで、爪を開放性ペトリ皿に置き、そして24時間30+20℃に温度制御されたオーブン中に置いて乾燥させた。オーブン乾燥後、爪の重量を測定し、そして24ウェルの微生物学プレート(英国、コスター(登録商標)(Costar、UK))の個々のウェルに配置した。全ての実験で、切り取られた爪10組を使用した。
【0083】
切り取られた爪への浸透促進剤の適用:
微生物学プレートウェル中の洗浄済みの切り取られた爪を約20時間、1mlの浸透促進剤溶液に浸漬した。ティッシュタオルを使用して、それらを優しくパッティングすることによって乾燥させ、過剰量の溶液を全ての切り取られた爪から除去した。切り取られた爪の重量を測定し、そして重量を記録した。第2の浸透促進剤を使用した場合、第2の化合物で同一手順を繰り返し、そして第2の重量を記録した。溶媒単独の効果を推定するため、浸透促進剤を添加せずに単純に溶媒に浸漬して、同一の方法論を使用して1組の対照の爪を試験した。
【0084】
マンニトール爪浸透性の試験:
浸透促進剤の調製
単一の浸透促進剤を適切な溶媒中に調合し、そして14Cマンニトール(14Cマンニトールの10μlストック)でスパイクした。2種以上の浸透促進剤を爪に適用した場合、最後の浸透促進剤のみが爪適用の前に14Cマンニトールでスパイクされた。対照として、浸透促進剤を含まない14Cマンニトールを使用した。
【0085】
爪拡散セルの調製:
予め較正された爪拡散セルを全厚さのヒトの爪で組み立てた。20%エタノール/水混合物からなるレシーバー流体を、サイドアームのエッチングされたマークまでレシーバーウェル中に入れた。磁気フォロワーを挿入し、次いで、320℃に維持された水浴中でセルを磁気スターラーに配置した。セルを漏洩および気泡に関してチェックした。30分の平衡期間後、1ml試料をサンプリングサイドアームから採取し、そしてシンチレーションバイアル瓶中に置き、4mlのシンチレーションカクテルが続き、そしてデュアルモード設定(3H/14C)を使用して、シンチレーションカウンター上で試験した。これは、セルはいずれも残留放射能を含有せず、そしてこれらの読みを各セルのバックグラウンドとして取ることを確実にした。次いでセルに新しいレシーバー流体をエッチングされたマークまで補給し、そして32℃で予め平衡化した。
【0086】
3H水を使用する爪の規格化:
バックグラウンド読取りの後(上記項目に記載された)、予め較正されたギルソン(Gilson)ピペットを使用して、50μlの3H水(約18000dpm)を組み立てられた爪拡散セルの爪の上部に配置した。次いで、セルをパラフィンで直ちにふさいだ。20時間後、1mlシリンジを使用してレシーバー流体の1ml試料をサイドアームから取り出し、そしてシンチレーションバイアル瓶中に置き、4mlのシンチレーションカクテルが続き、そしてデュアルモード設定(3H/14C)を使用して、シンチレーションカウンター上で試験した。この値を使用して、各爪を規格化し、そして放射能の値があまりに高いと考えられる場合、漏洩のため、セルを不合格とした。セルのいずれかが漏洩していた場合、ディクソンの(Dixon's)Q−試験を使用して決定した。次いで、ペーパータオルを使用して3H水を乾燥させ、そしてセルに新しいレシーバー流体をエッチングされたマークまで補給し、そして32℃で予め平衡化した。
【0087】
単一の浸透促進剤を試験する場合、各浸透促進剤の50μlアリコート(上記の通り、14Cマンニトールで予めスパイクされた)を、予め較正されたギルソン(Gilson)を使用してピペットで採取し、全厚さのヒトの爪の表面に置いた。次いで、各セルをパラフィンでふさいだ。サンプリング時間点を、約20時間、44時間、68時間、92時間および116時間で取った。各時間点の後、1ml試料をサイドアームから取り出し、そしてシンチレーションバイアル瓶中に置き、4mlのシンチレーションカクテルが続き、そしてデュアルモード設定(3H/14C)を使用して、シンチレーションカウンター上で試験した。次いで、セルに新しいレシーバー流体をエッチングされたマークまで補給し、そして32℃で予め平衡化した。概説された手順を使用して、各浸透促進剤(および対照)を合計n=5〜6回試験した。
【0088】
2種以上の浸透促進剤を使用する場合、放射性マンニトールを含まない50μlの浸透促進剤を、予め較正されたギルソン(Gilson)を使用してピペットで採取し、全厚さのヒトの爪の表面に置き、次いで、各セルをパラフィンでふさいだ。20時間後、ペーパータオルを使用して予めの浸透促進剤を乾燥させ、そして爪の表面を脱イオン水(3×1ml)で洗浄した。次いで、14Cマンニトールで予めスパイクされた第2の浸透促進剤を適用し、そして上記の単一の浸透促進剤に適用された手順に従った。
【0089】
実施例1:単一の爪浸透促進剤の使用
爪膨張の試験:
図1は、切り取られた爪に水(対照)、システイン、チオグリコール酸アンモニウム(AmTA)、チオグリコール酸(TA)、グリコール酸(GA)、過酸化水素(H2O2)、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)および1,4−ジチオ−DL−トレイトール(DTT)を添加した時の20時間後の爪の重量変化を示す(平均±標準偏差、n=10)。値は、最初の爪重量のパーセントで表される。水および水中20%エタノールの両方を対照溶液として使用したが、2つの間に著しい差異はなかった(p>0.05、ANOVA)。従って、水対照のみを図1に示す。
【0090】
チオグリコール酸(TA)、グリコール酸(GA)、過酸化水素(H2O2)、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)、ジチオトレイトール(DTT)およびチオグリコール酸アンモニウム(AmTA)は、対照と比較して、20時間後に全て著しく(p<0.05、ANOVA)切り取られた爪の重量を増加させた。試験された7つの浸透促進剤のうちの6つによって引き起こされる爪の重量増加から、適用された流体のより多くを爪が吸収していることが推測される。また処理された爪の外観の物理的変化も注目に値する。TA、GA、H2O2およびAmTAで処理された爪は、対照よりも軟質であり、また色も明るかった。
【0091】
システインは著しく爪の重量を増加させなかった(p>0.05、ANOVA)。従って、システインで処理された爪への流体の浸透性は、向上しなかった。
【0092】
マンニトール爪浸透性の試験:
図2は、異なる単一の浸透促進剤を使用して、全厚さのヒトの爪を通しての14Cマンニトールの浸透性を示す(n=6±SD、DTT n=5±SD)。飽和TA(50%)は、これらの実験でマンニトールの最も良好な浸透促進剤であった。しかしながら、TAが5%の濃度まで減少する場合、その浸透促進効果はDTTの効果よりも低くなる。H2O2は、96時間後のマンニトール拡散に関して、5%TA(p<0.05、ANOVA)とほとんど異ならない。
【0093】
実施例2:2種の爪浸透促進剤の使用
爪膨張の試験:
単一の浸透促進剤の適用による爪の重量の最大増加は、5%TAに関しての71%であった(図1に示される)。しかしながら、2種の浸透促進剤を順番に添加することによって、図3に示されるように、150%までの爪の重量増加が導かれた。図3は、2回の別々の段階(>は、次に続くことを示す)で、両方の適用順序で2種の浸透促進剤で処理した場合の爪の重量増加パーセントを示す(平均±標準偏差、n=10)。
【0094】
TAと、次いでH2O2または尿素−H2O2の添加によって、TA単独と比較して、爪の重量が非常に増加した(p<0.05、ANOVA)。しかしながら、H2O2または尿素−H2O2をTAの前に適用した場合、TA単独と比較して、爪重量の著しい増加は見られなかった(p>0.05、ANOVA)。図3で詳述される2種の浸透促進剤の実験のそれぞれにおいて、同様の傾向が見られた。酸化剤(例えばH2O2または尿素−H2O2)の添加より前に還元剤(例えばTA、GA、DTT)を添加することによって、逆の順番、すなわち、酸化剤、次いで還元剤の順番での薬剤の適用と比較して、爪の重量増加は著しく向上した。TA、それに続いて尿素−H2O2の適用によって、重量の最大増加が得られたが、それに対して、尿素−H2O2、それに続いてDTTでは最小であった。
【0095】
実施例3:浸透促進剤濃度の効果
爪膨張の試験:
図4は、様々なTA濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す(平均±標準偏差、n=10)。TAで処理された爪の場合、浸透促進剤の濃度の増加によって、重量増加が導びかれた。最も著しい重量増加は、20%TAで処理された爪で見られた。
【0096】
図5は、様々な尿素−H2O2濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す。x軸で示されるパーセントは全H2O2濃度である(平均±標準偏差、n=10)。爪に適用された尿素−H2O2の濃度も重量増加に影響し、従って爪への浸透性に影響した。爪の重量増加に関して、20%尿素−H2O2の適用は、10%より著しく良好であった。しかしながら、20%と35%との間の増加濃度のH2O2で処理された爪は、重量増加に関して著しい差異を示さなかった(p>0.05、ANOVA)。
【0097】
図6は、様々なDTT濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す(平均±標準偏差、n=10)。1%DTTで処理された爪は、5%DTTで処理された爪と比較して、著しい重量増加を示した(p>0.05、ANOVA)が、5〜10%の間のさらなる濃度増加によって、著しい効果(p<0.05、ANOVA)は見られなかった。爪重量に対する最大効果は、20%のDTT濃度で観測される。これは10%の濃度で観測される効果のほぼ2倍の効果であった。
【0098】
実施例4:浸透促進剤に及ぼすpHの影響
爪膨張の試験:
図7は、TAの様々な塩での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す(全て5%濃度で)。バーの上の数字は、適用前の各溶液のpHを示す(平均±標準偏差、n=10)。浸透促進剤として利用されるチオグリコール酸塩型に関係なく、爪の重量増加は、対照よりも非常に大きかった(p>0.05、ANOVA)。チオグリコール酸カルシウムによって爪重量の最大増加が生じ、従って、最大量の液体の爪への浸透が促進された。塩の種類は、爪に適用される液体のpHに直接的に影響を有した。TAはpH2.12の溶液として適用されたが、それに対して、チオグリコール酸カルシウムは11.43のpHを有した。従って、爪による液体取り込みに関して全ての化合物が有効であったが、>7.1のpHは爪重量増加に関して有利と考えられる。
【0099】
実施例5〜10:材料および方法:
実施例5〜10では、下記に詳述される材料および方法を使用する。
【0100】
酸化還元測定:
イオン分析酸化還元メーター(英国、メトローム(Metrohm、UK))を使用し、室温で、既知の電位の安定した参照電極(Ag/AgCl)に対して、脱イオン水中の化合物の0.5M水性製剤の還元電位を測定した。
【0101】
テルビナフィン拡散の試験:
直径約3mmのヒトの爪試料(全厚さ)を特別に設計されたチャブター(ChubTur)(商標)拡散セルの2つの半分部の間の配置し、そして一緒に固定した。レセプターコンパートメントに、事前に超音波処理した適切な緩衝系を充填し、シンク状態を確実にし、そして32℃に維持された水浴で磁気スターラー上に取り付けられたパースペックスホルダーにセルを固定した。水中型磁気スターラーによって駆動される小型のPTFEコーティング磁気フォロワーによって、レセプターチャンバー内容物を連続的に煽動した。既知の量の配合物/薬物溶液を爪の表面に適用し(無限投与)、そして規則的な時間間隔で、緩衝液の試料をレセプターコンパートメントから採取し、新しいレセプター媒体で置換し、そしてHPLCを使用して薬物内容物を分析した。
【0102】
ターチャブ(TurChub)(登録商標)微生物学的試験:
スロープ培養液から無菌スワッブを使用して菌糸および胞子を優しく除去し、そしてそれらを寒天の表面に移動することによって、サボウラウド(Sabouraud)ブドウ糖寒天プレートに紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)を播種した。プレートを7日間25℃に温置した。プレートの表面から白色胞子をリンガーズ(Ringers)溶液(20ml)洗浄除去した。殺菌ガーゼ(スミス+ネフュー(Smith+Nephew)、プロパックス(Propax)、7.5cm×7.5cm、8プライのガーゼスワッブ、BP型13)を通して胞子懸濁液を濾過し、菌糸を除去した。胞子懸濁液の生存数を評価し、そして20mlの最終容積で胞子を適宜に希釈または濃縮することによって、約1×107cfu/mlに胞子数を調節した。
【0103】
最初に、志願者の足の爪から、最小3mmの長さまで発達した爪の末端を切り取った。全ての志願者に6ヶ月以内は足の爪にマニキュア液または磨き剤を使用しないように要求し、そして6ヶ月以内では爪にいかなる疾患の徴候も示されなかった。全ての志願者に、はさみまたは標準的な爪切りのいずれかを使用して爪末端部分を除去するように頼んだ。爪の殺菌除去またはクリーニングのような具体的な手順は要請されなかった。次いで、切り取られた爪を、供与体/供与あたり8mlのビジョウ(bijou)ボトルに配置する前に、適切な容器、例えばビニール袋、バイアル瓶、封筒等に配置し、そしていずれかの供給された詳細によって標識化される。必要とされるまで、試料を冷凍室に保存した。
【0104】
はさみを使用して、切り取られた爪を最小3mm×3mmの断片へと切断した。各爪に関して入手できる断片の数は、完全に最初の試料のサイズに依存するため、小さい足の爪は1つまたは2つのみの断片を生じ、それに対してより大きい足の爪は3つおよび5つの間の断片を生じる。切り取られた爪を水中70%エタノール溶液に浸漬し、そして1分間ボルテックス混合した。次いでエタノール溶液をデカンテーションし、そして新しい70%エタノール溶液で置き換え、そしてさらに1分間ボルテックス混合した。次いでエタノール溶液をデカンテーションし、そしてリンガーズ(Ringer’s)溶液で置き換え、1分間ボルテックス混合し、そしてデカンテーションし、そして新しいリンガーズ(Ringer’s)溶液で置き換えた。このようなリンガーズ(Ringer’s)による洗浄プロセスを全3回実行し、各段階で洗浄溶液を置き換えた。洗浄プロセスが完了したら、切り取られた爪を蓋のない殺菌ペトリ皿に置き、そして室温で30分間、層流キャビネット下で空気乾燥させた。切り取られた爪が乾燥したら、それらを新しい8mlのビジョウ(bijou)ボトル(供与体あたり、バッチあたり別々のボトル)に置いた。一対のカリパスを使用して、爪の厚さを測定した。
【0105】
次いで、切り取られた爪の末端(全厚さの爪)を拡散セルで20時間、浸透促進剤系で、チオグリコール酸で、続いて20時間、尿素H2O2で処理した。
【0106】
最初にターチャブ(TurChub)(登録商標)セル(下部および上部)をオートクレーブ中121℃で15時間殺菌した。爪ガスケットも100%エタノール中で殺菌し、そして層流キャビネット下で空気乾燥させ、その後、爪/膜部分を取り付けた。次いで、浸透促進剤で処理された爪およびガスケットをターチャブ(TurChub)(登録商標)セル背部の下半分上に充填した。次いで、予め決められた容積(各セルから算出された)の溶解SDA寒天(56℃に維持された)をセルの下部に充填した。寒天がセットされた後、固定容積(50μl)のリンガーズ(Ringers)溶液中の試験生体、紅色白癬菌(T.rubrum)を寒天の表面上に適用した。次いで、側面から側面へセルを穏やかに揺動することによって、生体懸濁液を寒天の表面上に均等に広げるようにした。シリンジおよびニードルを使用して、生体懸濁液からの過剰量の流体をセルから除去した。生体がセルに適用されたら、爪を取り付け、そしてセルの上部ロート部分を加え、そしてスプリングで位置に固定した。セルは、過剰量の流体(例えば、濃縮物から)が寒天を横切って汚染することなく、セルの底で蓄積し;次に、寒天から「逃げる」ことによる間違った結果を避ける様式でセルを配向するように設計される。
【0107】
約100μlの活性または配合物を、試験生体、紅色白癬菌(T.rubrum)に対して7日間適用した。配合物の有効性は、ターチャブ(TurChub)(商標)セルで紅色白癬菌(T.rubrum)の成長抑制領域を測定することによって決定した。
【0108】
実施例5:爪浸透促進剤の酸化還元電位の測定
ヒトの爪の膨張を向上することが示される薬剤の酸化還元電位を試験した。還元剤は−ve酸化還元電位を有すると予想され、一方、酸化剤は+ve酸化還元電位を有するであろう(選択的に還元電位として正負変換を表す場合、還元剤は+ve電位を有する)。表3および図8の結果(+SD、n=3)は、試験された様々な薬剤の酸化還元電位に関して明白な差異があることを示す。
【0109】
【表4】
【0110】
強還元性の化学薬剤にはチオグリコール酸塩が含まれ、チオグリコール酸カルシウムは、全ての化学薬品の中で最も低い酸化還元電位(−531.3mV)を有する。最も効果的な酸化剤は、最も高い酸化還元電位を有するものであり、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)、過酸化水素(H2O2)、グリコール酸、シュウ酸および過硫酸カリウムが挙げられる。
【0111】
この酸化還元データから、劇的に爪の膨張(実施例2)を向上する薬剤の組み合わせは、強酸化剤または還元剤のいずれかであることは明らかである。さらに、これらの薬剤の適用順序は重要であり、還元剤が最初に爪に適用された場合、実施例2で最も大きい爪の膨張が観測された。
【0112】
実施例6:酸化還元電位に及ぼす爪浸透促進化合物濃度の影響:
選択された薬剤の酸化還元電位の濃度の影響を調査した。これらには、チオグリコール酸、尿素−H2O2、H2O2およびDTTが含まれる。滴定結果を表4〜7に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
表4は、1〜20%の間のTA濃度で、溶液の測定された酸化還元電位に濃度の影響がないことを示す。これより低い濃度(0.001〜1%)では、濃度の低下とともに、酸化還元電位は着実に低下する。DTTの酸化還元電位を測定した時も同様の傾向が観察され、そして0.05%未満の濃度で、溶液の酸化還元電位が低下した(表5)。
【0115】
【表6】
【0116】
H2O2および尿素−H2O2の両方で同様の影響が見られた。後者の場合、5〜17.5%の間の高い濃度で、酸化還元電位での大きな差異は見られなかった(表6)。しかしながら、尿素−H2O2の濃度が5%未満まで低下すると、酸化還元電位、従って酸化力はより急速に低下した。溶液の濃度が低下すると、溶液のpHもより中性になった。H2O2では、酸化還元電位が低下する臨界濃度は20%であった(表7)。
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
実施例7:酸化還元電位に及ぼす爪浸透促進化合物pHの影響:
溶液のpHが浸透促進剤の酸化還元電位に対して影響を有するかどうか調査するため、2種の化合物:5%TA溶液および15%のH2O2含有量を有する尿素−H2O2のpH範囲を調査した。2〜11のpH範囲を使用してTAを試験した(NaOH溶液を使用してpHを調節した)。2〜10の間のpHで尿素−H2O2溶液を試験した(HClおよびNaOH溶液を使用してpHを調節した)。
【0120】
TAの酸化還元電位は、試験されたpH範囲にわたって、1桁近くの大きさで増加した(表8)。対照的に、尿素−H2O2複合体の酸化還元電位は、pH10に達するまで、着実に低下し、pH10で酸化還元電位の鋭い低下が見られる(表9)。
【0121】
【表9】
【0122】
【表10】
【0123】
実施例8:モデル製薬化合物の浸透促進
図9は、50:50エタノール/水(対照)、尿素−H2O2またはチオグリコール酸(TA)単独で、および2つの浸透促進剤の組み合わせによる一次処理の後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ図である。この結果は、代表的な薬物の拡散を増加させる2種の浸透促進剤系の能力を実証する。
【0124】
爪を20時間50:50エタノール/水(対照)溶液に浸漬し、そして薬物を適用した場合、214時間後、1cm2あたり44±13μgのみが爪に浸透した。酸化剤、尿素−過酸化水素の適用は、爪に浸透する薬物の量に著しい影響がなく(p>0.05、ANOVA)、1cm2あたり47±33μgがバリアを横切った。テルビナフィンの適用前にチオグリコール酸を爪に適用することによって、1cm2あたり861±135μgの薬剤が浸透するが、これは、テルビナフィンの適用前にチオグリコール酸および尿素−H2O2を連続して適用した場合よりも低かった。この場合、219時間後に1cm2あたり2308±1332μgが浸透した。
【0125】
実施例9:2種適用浸透促進剤系の効果に及ぼす適用時間の影響:
図10は、チオグリコール酸(TA)による一次処理、それに次いで異なる期間での尿素−H2O2での処理後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ図である。
【0126】
30分間または1時間のいずれかの浸透促進剤系の適用によって、両方の場合で、1cm2あたり10μg未満の薬剤が爪に浸透した。対照的に、20時間までの2種の浸透促進剤系の使用によって、315時間後、それぞれ1cm2あたり3329±1842μgまでヒトの爪に浸透するテルビナフィンの量が増加した。
【0127】
実施例10:市販の抗真菌性配合物の性能を向上させるための浸透促進剤系の使用:
微生物学的分析を使用して、市販の製薬ラッカー、ロセリル(Loceryl)(登録商標)からのアモロルフィン浸透に及ぼす2種の浸透促進剤系の影響を試験した。分析によって、爪真菌症の爪において見られる支配的な微生物、紅色白癬菌(T.rubrum)に対して、単独、またはチオグリコール酸、尿素−過酸化水素または両方のいずれかの一次処理と一緒での配合物の有効性を評価した。
【0128】
図11は、生体、紅色白癬菌(T.rubrum)を有するターチャブ(TurChub)(登録商標)試験セル系を使用して、様々な浸透促進系で一次処理された全厚さの切り取られた爪末端を適用し、次いで、100μlの標準ロセリル(Loceryl)ラッカーを各表面に適用し、そして7日間温置した後の抑制領域(ZOI)の平均の長さの比較である(n=4±SD)。
【0129】
図11は、アモロルフィンが単独で、または爪を単一の還元剤、チオグリコール酸で20時間一次処理した後に適用された場合、微生物の生長は防止されず、すなわち、抑制の検出可能な領域がなかったことを実証する。爪を一次処理するために酸化剤、尿素−過酸化水素が使用された場合、小さい領域の抑制が検出された。しかしながら、抗真菌性薬物の前に、酸化剤および還元剤が連続して爪に適用された場合、約2cmの抑制領域が観測された。これらの結果は、酸化剤および還元剤の両方の適用によって、市販品として入手可能な爪に適用される配合物を使用して達成される微生物学的死滅を著しく向上させるということを強調する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】切り取られた爪に水(対照)、システイン、チオグリコール酸アンモニウム(AmTA)、チオグリコール酸(TA)、グリコール酸(GA)、過酸化水素(H2O2)、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)および1,4−ジチオ−DL−トレイトール(DTT)を添加した時の20時間後の爪の重量変化を示すグラフ。
【図2】異なる単一の浸透促進剤を使用して、全厚さのヒトの爪を通しての14Cマンニトールの浸透性を示すグラフ。
【図3】2回の別々の段階(>は、次に続くことを示す)で、両方の適用順序で2種の浸透促進剤で処理した場合の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図4】様々なTA濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図5】様々な尿素−H2O2濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図6】様々なDTT濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図7】TAの様々な塩での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図8】0.5Mの浸透促進剤の酸化還元電位のグラフ。
【図9】50:50エタノール/水(対照)、尿素−H2O2またはチオグリコール酸(TA)単独で、および2つの浸透促進剤の組み合わせによる一次処理の後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ。
【図10】チオグリコール酸(TA)による一次処理、それに次いで異なる期間での尿素−H2O2での処理後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ。
【図11】生体、紅色白癬菌(T.rubrum)を有するターチャブ(TurChub)(登録商標)試験セル系を使用して、様々な浸透促進系で一次処理された全厚さの切り取られた爪末端を適用し、次いで、100μlの標準ロセリル(Loceryl)ラッカーを各表面に適用し、そして7日間温置した後の抑制領域(ZOI)の平均の長さの比較のグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪への適用のための局所的製剤であって、薬物および浸透促進剤を含む製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
爪真菌症は、爪板または爪床の菌類・カビ類による感染の総称用語であって、爪の疾患の50%までの原因を占める。手の爪および足の爪の両方とも感染の可能性がある。ヨーロッパでは、現在、この疾患に人口の約5%が感染していると考えられており、そして常に流行している。爪真菌症は高齢者の間でより一般的に起こることなので、このような増加は主に高齢者のためである。他の寄与する要因としては、粗末なはきもの類および公共のレジャー施設の使用の増加が挙げられる。
【0003】
最も頻繁に爪真菌症を引き起こす原因となる病原体は、皮膚糸状菌であり、それは全ケースの90%より多くの原因となると考えられる。紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)(足の爪56%−手の爪36%)および毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)(足の爪19%−手の爪11%)が特に一般的である。イースト菌感染症はあまり一般的でないが、通常、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に関連する(足の爪10%−手の爪30%)。
【0004】
2番目に比較的一般的な爪の疾患は、乾癬である。乾癬は、皮膚の炎症性疾患として最もよく知られているが、皮膚乾癬にかかったほとんどの患者は爪乾癬にもかかる。患者が爪乾癬のみにかかることは珍しい。乾癬はヨーロッパおよび北アメリカで最も一般的であり、それらの地域では人口の約3%が感染している。
【0005】
爪の疾患が命にかかわる場合は滅多にないが、その疾患にかかっている人にとっては、それらは非常に痛く、また外観を損なう可能性がある。一般的な症状としては、しばしば黄色/緑色またはより濃い色への爪色の変化、および爪下での組織片の集積が挙げられ、これによって悪臭のある臭いが引き起こされる。その上、爪は厚くなり、そして剥がれやすくなる。かかる審美的徴候だけで、疾患にかかった人の生活の質に対して重大な影響を及ぼす可能性がある。これらの症状に加えて、この疾患は非常に痛くなり得る。厚みのある足の爪は、特に靴の中での不快感を引き起こし得、そして疾患にかかった人は、立っていることや歩くことさえもが不快となる場合がある。
【0006】
爪真菌症および他の爪の疾患の有効な治療は、主に角質、タンパク質の繊維群からなる爪板によって感染部位が事実上保護されているということによって深刻に妨げられている。角質繊維は、ジスルフィド結合が糊のような様式で作用し、そして爪板の完全性の主な要因となるシステインリッチな球形タンパク質と一緒に保持される。有効な治療は、いずれも硬質で剛性の爪板によって与えられる障害を克服することと、爪床に活性種を送達することが可能でなければならない。
【0007】
既知の治療方法は、3つの一般的な種類に分類される。第1の分類には、感染部位を暴露するために感染した爪の全部または一部を除去することが含まれる。除去は外科的に実行されても、または化学薬品によって実行されてもよい。化学薬品による除去は、短時間で密封包帯内で爪板に尿素を適用することを含み得る。尿素は、爪の内部でタンパク質を広げるように作用する。爪は軟質になり、そして爪床から取り外される。しかしながら、このような治療の外傷性および痛みを伴う性質は、評判が悪く、また最後の手段としてのみ使用されることを意味する。
【0008】
第2の一般的な治療方法は、適切な薬物の経口投与である。爪真菌症の治療のために、現在4つの主な経口治療が利用可能である。これらは、グリセオフルビン(グリソビン(Grisovin)(登録商標)、GSK)、ケトコナゾール(ニゾラル(Nizoral)(登録商標)、ヤンセン−シラグ(Janssen−Cilag))、イトラコナゾール(スポラノクス(Sporanox)(登録商標)、ヤンセン−シラグ(Janssen−Cilag))およびテルビナフィン(ラミシール(Lamisil)(登録商標)、ノバルティス(Novartis))である。乾癬に関して、メトトレキセート、エトレチナートおよびシクロスポリンのような経口薬剤が有効であり得る。
【0009】
グリセオフルビンは1950年代から入手可能であった。皮膚糸状菌に対するその静真菌活性のため、長い治療期間が必要とされる(足の爪感染に関して9〜12ヶ月)。治療速度は遅く、また再発率は高い。ケトコナゾールは、1980年代に爪真菌症の治療のために導入された最初のイミダゾールベースの薬物であった。しかしながら、その肝毒性のため、他の治療に好ましい反応を示さない手の爪の感染に対するその使用は、現在、規制されている。より最近の抗真菌性薬剤であるイトラコナゾールおよびテルビナフィンは爪真菌症の経口治療においてより有効であり、以前観測されたものより早い菌類治療速度および短い治療期間を伴う。
【0010】
第3の方法は、爪板への組成物の局所的適用を含む。現在市場に出ている爪真菌症の局所的治療には、アモロルフィン(Amorolfine)(ロセリル(Loceryl)(登録商標)、ガルデルマ(Galderma))およびシクロピロクス(ペンラク(Penlac)(登録商標)、デルミク(Dermik))が含まれる。本明細書で使用される場合、「局所的な」および「局所的に」という用語は、皮膚または爪のような表面への適用を示し、通常、経口摂取または注射による全身適用と対照的である。
【0011】
爪の疾患に関する局所的治療は、肝毒性のような全身薬物と同様の危険をともなわないため、また完全または部分的な爪除去を含む治療より痛みがなく、そして美観を損なわないため、原則として最も好ましい。しかしながら、有効性のために、活性種の有効濃度が爪板ならびに爪床自体のより深い層に到達することができるように、活性種が十分な量で爪板に浸透することが可能でなければならない。乏しい薬物浸透の結果、おそらく現在利用可能な局所的治療は比較的効果がなく、そして長い治療期間と遅い治療速度に関連する。
【0012】
皮膚の薄い角質層と比較すると、爪板は非常に厚い。これは、爪床への薬物送達に関しては非常に長い拡散経路が存在することを意味する。加えて、爪は類脂質バリアのように作用しないが、濃縮ヒドロゲルのように作用する。システインリッチのタンパク質のジスルフィド結合は、爪の完全性および構造に関して、そしてそのバリア特性に関しての主要な要因である。従って、爪の疾患に関する有効な局所的治療の開発は、局所的皮膚治療の開発よりも非常に大きい難題を示す。
【0013】
爪板中へ、および爪板を通しての薬物の拡散速度に影響する要因がいくつか存在する。これらの要因には、拡散種の大きさ、拡散種の親水性/疎水性および媒体の性質が含まれる。加えて、爪床の感染部位に到達するように薬物が拡散しなければならないバリアを有効に減少させることによって、浸透性が向上され得る。バリアは物理的にまたは化学的に減少されてよい。
【0014】
バリアの物理的な減少には爪の部分的または完全除去が含まれるか、または爪板の上部層の削り落としが含まれる。かかる手順は両方とも痛みを伴い、また美観を損なうため、望ましくない。
【0015】
より許容できるアプローチとしては、化学的促進剤の使用が挙げられる。これは、爪への適用時に、薬物浸透に対するバリアを減少させ、そして爪板中に、また爪板を通しての活性種の拡散速度を増加させるように相互作用し、そして爪の構造を変性する。尿素は爪浸透促進剤として一般的に使用され、化学的に爪板を除去する能力を有する。他のアプローチは、爪のジスルフィド結合に焦点を置き、これらの結合を分裂するものとしては、アセチルシステインおよびメルカプトエタノールが含まれる。
【0016】
現在、爪板のより低層および爪床が感染している疾患の治療で満足な結果をもたらす局所的治療は利用可能でない。
【0017】
米国特許第6,664,292A号明細書には、爪の病状の治療のための局所的組成物が開示される。この組成物は、低級アルコールと低級カルボン酸とからなる。
【0018】
米国特許第5,753,256A号明細書は、爪真菌症の治療のための石膏を開示する。この石膏は、活性化合物および浸透促進剤を含む。開示される浸透促進剤は、スルホキシド、乳酸、サリチル酸、プロピレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびドデシル硫酸ナトリウムである。
【0019】
米国特許出願公開第2003/0235541号明細書は、爪真菌症の局所的治療のための水性塩基性配合物を開示する。
【0020】
米国特許出願公開第2001/0049386号明細書は、尿素および抗真菌性組成物を含む組織軟化組成物を、1つまたは別々の組成物で、同時または不同時に爪の周囲の感染領域に投与する爪真菌症の治療方法を開示する。
【0021】
国際公開第99/40955号パンフレットには、爪真菌症の治療のための感圧接着剤マトリックスパッチが開示される。皮膚浸透促進剤も任意にパッチに含まれる。
【0022】
英国特許出願公開第2278056A号明細書には、真皮使用のための浸透促進剤としてチオグリコール酸の高級エステルおよびアミドが開示され、そして爪真菌症の治療のための適切な配合物が開示される。しかしながら、これらの配合物は、爪の周囲のみに適用が可能である。加えて、これらの治療では、治療は局所的に適用可能であるが、薬物が大動脈に入るように配合物が経皮的投与用であるため、薬物が全身に存在することが必要とされる。
【0023】
国際公開第99/49895号パンフレットは、チオグリコール酸が爪の角質を減少させることが可能であり、従って、爪を通して爪床までの薬物の拡散を改善するために使用可能であることを開示する。
【0024】
独国特許第1000567号明細書は、爪の角質を減少させるためにヨウ化ナトリウムと組み合わせてチオグリコール酸を使用することを開示するが、一方、欧州特許出願公開第0712633A1号明細書には、チオグリコール酸の皮膚浸透促進剤としての使用が単に開示されている。
【0025】
米国特許出願公開第2003/0007939号明細書は、皮膚、頭皮、髪および爪において浸透を向上するための過酸化水素および少なくとも1種の他の皮膚病学的薬剤の製薬組成物を開示する。還元剤の使用は記載されていない。
【0026】
欧州特許第0,425,507号明細書は、皮膚を含む上皮の異常状態または損傷を受けた状態を治療するための組成物を開示する。この組成物は、活性化タンパク質、過酸化水素を含む酸化剤、およびチオグリコール酸を含む還元剤を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
従って、爪の疾患の治療のために有効な局所的に適用される配合物の必要が依然存在する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明者らは、驚くべきことに、薬物浸透を向上するために、チオグリコール酸(TA)のような還元剤と、過酸化水素のような酸化剤とを順次、爪に適用することができることを発見した。通常の状況では、2つの薬剤の組み合わせによって極端な反応が一般的に導かれる。しかしながら、爪では、これらの薬剤を組み合わせることは安全と思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
従って、第1の態様において、本発明は、薬物によって治療可能な爪の疾患の治療用薬品の製造における還元剤および酸化剤のそれぞれの好ましくは液体の製剤の使用であって、前記製剤が別々に配置されて、還元剤、それに続く酸化剤の順番で患者の爪に連続投与され、前記薬物が一方または他方の製剤中に配置されるか、または任意に、薬物が還元剤もしくは酸化剤に対して追加的である第3の製剤中に配置される使用に関する。
【0030】
還元剤および/または酸化剤は、以下に検討されるように、適切な還元または酸化特性を有する抗真菌薬および抗乾癬薬のような既知の薬物から選択されてもよいが、余分の薬物が利用されることが一般的に好ましい。
【0031】
還元剤および酸化剤が十分に強力であり、2つの製剤の単純な組み合わせによって、実質的に放熱または爆発反応のような極端な反応が導かれることが好ましい。連続的な様式で、還元剤、それに続いて酸化剤が爪に適用される場合、驚くべきことに、即時の極端な反応の目に見える徴候がなく、かかる組み合わせを安全に投与することができることが確立された。特定の還元剤および酸化剤は非常に強力であるため、爪に安全に適用することができないことは認識され、また許容できない変色のような望ましくない反応を患者に引き起こすこともある。しかしながら、爪への適用に関して各薬剤が個々に許容できる場合であれば、2つの組み合わせが爪以外では極端な反応をもたらす場合でさえも、この組み合わせは許容できるものである。薬剤のチオグリコール酸および過酸化水素は、そのような組み合わせの例を提示する。上記の基準を適用することによって、他の薬剤/組み合わせは当業者によって容易に選択され得る。
【0032】
いずれの薬剤に関しても、適切な濃度は独立して選択され、そして一般的に1%w/vと50%w/vとの間であり、好ましい範囲は5%w/vと30%w/vとの間である。より好ましくは、各濃度は10%と25%との間、そして特に5%と15%との間の範囲から別々に選択される。
【0033】
好ましい実施形態において、還元剤および酸化剤の所望の強度は、それらの還元電位を参照することによって選択可能である。当該分野で周知であるように、特定の種の還元電位は、その種が電子を受け入れる能力を示し、それによって、その還元能力の示度が提供される。
【0034】
本発明による酸化剤および還元剤の還元電位は、当業者に既知であるいずれかの手順によって測定可能である。好ましい方法は、水中で、または水およびエタノールの混合物中で、銀/塩化銀電極を参照として、r.t.p.で、特定の薬剤の溶液の還元電位を測定し、そして還元標準に対して較正する方法である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によると、酸化剤の還元電位は、上記の手順に従って測定される場合、好ましくは−50mV未満、より好ましくは−100mV未満、そして最も好ましくは200mV未満である。還元剤の還元電位は、好ましくは+20mVより高く、より好ましくは+50mVより高く、そして最も好ましくは+75mVより高い。
【0036】
添付の実施例で実証されるように、いずれかの薬剤を含有する溶液の還元電位は、所望であれば、溶液中に存在する酸化剤または還元剤の濃度を変化させることによって、または溶液のpHを調節することによって調節されてよい。
【0037】
従って、好ましい実施形態において、還元剤は7と14との間のpHを有するアルカリ性製剤として調製される。より好ましくは、一般的に還元化合物の還元電位を最大にするため、pHは8と13との間のあり、9と12との間のpHが特に好ましい。
【0038】
逆に、酸化剤のpHは一般的により重要性が少ないが、酸化電位(−ve還元電位)を最大にする傾向があるため、pHが1と7との間であることは好ましく、2と5との間のpHがより好ましい。いずれにしても、皮膚での不注意による飛沫は、薬理学的および/または美容的に許容できない損傷を導くため、どちらの製剤もあまり酸性/腐食性ではないことが好ましい。
【0039】
しかしながら、pHに関して他の関連する考慮がなされない場合、上記の優先が一般的に適用されるように、例えば還元電位または反応速度を緩和することのような所望の効果を達成するため、いずれの配合物のpHも変更可能であることは認識される。
【0040】
一般に、還元および酸化化合物の配合物は、還元電位が上記範囲内にあるように、そして一般的に+veまたは−ve電位が適切に最大化されるように選択される。還元電位が濃度によって最適化されることは一般的に好ましいが、低い濃度を有する配合物が提供されてもよいことは認識されており、その場合、溶媒および/または共溶媒の蒸発によってその場でより高い濃度へと導かれる。
【0041】
薬剤の好ましい濃度は、添付の実施例で例示される技術に従って容易に確認される。例えば、チオグリコール酸の好ましい濃度範囲は、少なくとも0.1%、そして20%まで、およびそれ以上であり、尿素−H2O2は少なくとも5%、そして40%まで、およびそれ以上、H2O2は少なくとも20%、そして100%まで、およびそれ以上、ならびにDTTは少なくとも0.05%、そして20%まで、およびそれ以上である。製剤が爪に適用される場合、爪への適用時に薬剤の濃度が増加するため、エタノールまたは他の揮発性溶媒もしくは共溶媒と配合される製剤は、還元剤または酸化剤の濃度がより低い状態で調製されてもよい。
【0042】
いずれもの成分によって生じる浸透性の向上は十分に異なり、他と相加的であり得ると考えられる理由がないという点で、2つの成分の適用は相乗的であると思われることは特に驚くべきである。実際に、最初に酸化剤を適用することでは、より有効な2成分のものよりも高い爪浸透性のかなりの向上は一般的に導かれないため、このような作用様式は当該分野で示されていない。しかしながら、最初に還元剤を使用することは、両方の薬剤の効果を組み合わせた場合より効果がしばしば大きいような相乗作用を導くように見える。この効果は、常にではないが、爪(以下)による液体取り込みの増加の尺度に反映され得る。
【0043】
好ましい還元剤には、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸(TA)およびジチオトレイトール(DTT)、アスコルビン酸、ヒドロキノン、メルカプトエタノール、グルタチオン、L−システイン、タウリン、アミノメタンスルホン酸、システイン酸、システインスルフィン酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、ホモタウリン、ハイポタウリン、イセチオン酸、メルカプトエタンスルホン酸、N−メチルタウリン(MTAU)ならびにそれらの単純な誘導体が含まれる。
【0044】
「単純な誘導体」は、化合物の塩、エステルまたはアミドを意味する。チオグリコール酸の単純な誘導体が特に好ましい。いずれのさらなるアルキル成分も、好ましくは全部で1〜6個の炭素原子を有するが、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有し、そして最も好ましくは1、2または3個の炭素を有する低級アルキルである。
【0045】
還元剤は、好ましくは、チオグリコール酸またはその誘導体であり、そしてそのようなものとして還元剤は本明細書で一般的に指されるが、他に明白または明らかでない限り、このような記述はいずれも他の還元剤を含むことは理解される。
【0046】
酸化剤は、尿素、過酸化水素、過硫酸カリウム、チオウラシル、p−クマル酸(p−coumeric acid)、グリコール酸、シュウ酸、シネオール、ペルオキシドン、二酸化塩素、二クロム酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、臭素酸バリウム、塩素酸バリウム、過酸化バリウム、塩素酸カドミウム、塩素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸クロム、硝酸コバルト、酸化銀、過ヨウ素酸および二クロム酸ピリジンを含む適切ないずれかであってよい。過酸化水素が好ましく、そして過酸化水素および尿素の付加化合物がより好ましい。
【0047】
製剤は他の直後に投与されてもよいが、還元剤製剤、それに続いて酸化剤製剤の順序で製剤を適用し、そして酸化剤製剤を適用する前に短時間で最初の製剤を爪と反応させることが好ましい。適切な時間は10秒と10分との間、より好ましくは1分と5分との間である。このような短時間は許容できるが、適用の間に実質的な時間が経過してもよいことが分かっており、そして還元剤および酸化剤の適用間の好ましい時間は15時間と30時間との間であり、そしてより好ましくは20〜26時間であり、その後の適用の間も同様の時間である。このようなより長い時間が利用される場合、薬物が一方または両方の製剤に存在することが好ましく、または別々の配合物中であるが一方または両方の製剤と一緒に投与される。
【0048】
薬物は製剤の一方または両方に存在してもよく、あるいは酸化剤および還元剤の適用の前、間または後の投与用に別々に調製されてもよい。一実施形態において、薬物が適切な位置にあり、最終的に酸化剤と還元剤との間の相互作用が浸透性向上をもたらすように、還元剤が爪に適用され、続いて薬物、そして酸化剤が適用される。酸化剤および還元剤の一方または両方への長期暴露が望ましくない場合、薬物が別々の製剤中に存在することが一般的に好ましい。
【0049】
本発明の配合物は爪への適用のためであり、そして爪への適用のために適切ないかなる様式で配合されてもよい。
【0050】
製剤は好ましくは水性であり、任意にエタノールまたはアセトンのような共溶媒を含む。酸化剤または還元剤には共溶媒が必要とされ得ないが、薬物の可溶化のために必要とされてもよい。
【0051】
一般的に、本発明の爪用配合物は、爪への直接適用が意図されるクリーム、軟膏、ゲル、溶液、ローション、フォーム、ムース、スプレー、ペーストまたはラッカーとして提供されてもよい。しかしながら、本発明の配合物は、例えば、溶液または粉末またはプレミックスとして提供されてもよい。溶液は、部位をより正確に標的化するために、例えば、石膏のような包帯剤に適用され、次いで爪と関連されてもよい。あるいは包帯剤を爪に適用し、次いで溶液を包帯剤に適用してよい。この様式では、例えば、包帯剤を完全に爪表面に限定することが可能であり、または包帯剤は、包帯剤の構造またはバリア手段の導入のいずれかによって、溶液と爪以外の表面、または治療される部位との接触が抑制または防止されるような様式で構成され得る。適切なバリア手段は、特定の接着剤もしくは樹脂、または適切な治療を含んでよい。かかる包帯剤が使用される場合、可能性のある爆発反応の発生を避けるため、還元剤および酸化剤のそれぞれに対して別々の包帯剤を使用することが好ましい。
【0052】
包帯剤が提供される場合、薬物の溶液または他の製剤が吸収性包帯剤に適用されたら、望ましくない担体の蒸発を防止するために、包帯剤にさなる密封包帯を適用することも望ましい。
【0053】
経皮性パッチと同様の構造であるが、好ましくは貯蔵器パッチであるパッチは、例えば塗料またはラッカーとして他の適用後に1種の薬剤を提供するために使用されてもよい。同様に、粉末は、例えばラッカーが塗布されたか、または塗料が塗布された表面上に散布することによって適用されてよい。
【0054】
他の粉末およびプレミックスは、所望であれば、例えば爪への適用のための溶液または製剤にさらに仕上げられてもよい。
【0055】
本明細書において「爪」という用語は、いずれもの適切な爪表面を指すことは理解される。ヒトでは、これには事実上、手の爪と足の爪のみが含まれるが、いかなる爪表面も想定される。
【0056】
薬剤のための適切な担体には、一般的に、水、ならびに一価および多価アルコールを含む低級アルコールが含まれる。アセトンのような他の溶媒も利用されてもよく、そして一般的に溶媒が爪への適用に適切であるかどうかは当業者に容易に明白である。
【0057】
担体に加えて、他の媒体が例えば膨張性薬剤として使用されてもよい。配合物の嵩を形成するために水を利用してもよいが、プロピレングリコールは一般的に高レベルの爪の浸透性と関連し、そして一般的により好ましい膨張性薬剤であることが分かっている。
【0058】
製剤は単一水性製剤であっても、または例えば、濃厚剤、安定化促進剤、pH変更剤、臭気抑制剤および着色剤のような成分をさらに含有してもよい。このような疾患において一般的な悪臭のある爪の疾患を薬品によって治療することが意図される場合、または薬品自体の臭気を隠すことが望ましい場合、臭気抑制剤の使用は特に好ましい。同様に、疾患の治療によって爪の望ましくない変色がもたらされる場合、着色剤が含まれてよい。一実施形態において、その位置で乾燥するニスとして製剤は調製される。
【0059】
もう1つの実施形態において、還元剤および/または酸化剤および特にチオグリコール酸は、投与される薬物と複合化されてもよい。
【0060】
「薬剤」という用語は、爪への適用時に治療効果を及ぼし得る本発明の製剤のいずれもの活性成分を意味する。本発明の浸透促進剤に関連する場合のみ、治療効果は顕著であり得る。
【0061】
本発明の配合物で使用するための適切な薬物は、患者の爪と関連するいかなる疾患にも使用されてよいが、しばしば菌類・カビ類感染または乾癬に関連する疾患のいずれかの種類に分類される。薬物はいずれかの適切な形態であってもよく、そして固体、液体または気体で、爪に投与される製剤中に存在してよい。適切な気体としては、例えばNOが挙げられる。
【0062】
本発明の配合物に用いられる適切な薬物には、抗真菌性薬物:アモロルフィン、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、エコナゾール、シクロピロクス、オキシコナゾール、クロトリマゾール、テルビナフィン、ナフチフィン、アンフォテリシン、グリセオフルビン、ボリコナゾール、フルシトシン、ニスタチンならびにそれらの薬理学的に許容できる塩およびエステルが含まれる。テルビナフィンは、特に好ましい。
【0063】
乾癬に関連する使用に適切な薬物としては、コルチコステロイド、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、エトレチナート、シクロスポリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体が挙げられる。
【0064】
使用される薬物の量は本発明に対して重要ではなく、そして必要とされる全ては、薬物が、爪の疾患の治療または予防のために有効な量で投与されることができるということである。薬物の量は、患者の年齢、性別および/または体重次第であるが、一般的に、爪に適用するための原料製剤として提供され、そして薬物の濃度は一般的に、主な決定要因として治療される疾患次第である。
【0065】
薬物の量は、1回の治療後に疾患を解消するために十分であってもよいが、それは一般的に、意図された周期数に従って、薬物の量が段階的な治療のために調整されるように、治療が多くの適用のために続けられる場合である。
【0066】
周期的な治療では、感染した爪を周期的に還元剤および酸化剤で治療する。好ましい手法は、1日目に還元剤、次いで2日目の酸化剤で治療することであり、この時、薬物は好ましくは酸化剤と一緒に、または直後に投与され、次いで3日目にこのプロセスを繰り返し、再び還元剤の適用から始めることである。任意に、例えば、繰り返しの治療が4日、5日、6日または7日に再び始まるように、治療間に間隔が提供されてもよい。間隔は好ましい場合、より長くてもよいが、好ましくは1ヶ月以内、そして好ましくは2週間以内である。
【0067】
周期が、いずれの製剤の2回以上の適用を含んでもよいことは認識される。例えば、還元剤が、例えば2〜3日連続で毎日、または1日の間に数回適用され、そして酸化剤および薬物が、還元剤による最後の治療の翌日、または還元剤による最後の治療の直後であり得る最初の治療の次の日に適用される。酸化剤は、連続で毎日、または1日の間に数回適用されてよく、そして一般的に、薬物は、酸化剤によるそれぞれの治療と一緒に、または直後に適用されることが好ましい。
【0068】
本発明の製剤中の薬物の適切な濃度は、治療される疾患および使用される薬物のような要因次第であり、そしていかなる場合も当業者に容易に明白である。指針として、適切な濃度は、0.1%〜50%w/w、より好ましくは1%〜20%w/w、特に1%〜10%w/wの領域であってもよいが、これらの範囲の上下の濃度も本発明によって認識される。
【0069】
本発明の配合物は、他の薬物および/または浸透促進剤をさらに含んでもよい。さまざまな薬物の適切な例は、上記で提供される。さらなる浸透促進剤には、乳酸、DMSO、サリチル酸およびオレイン酸が含まれ、乳酸、サリチル酸およびオレイン酸は個々に好ましい。
【0070】
促進剤の濃度は、促進剤を含有しない同様の配合物より高い爪板への浸透を可能にするために有効であるいずれであってもよい。一般に、促進剤の量は約0.1%w/wと約25%w/wとの間の範囲であり、約1%と20%、そしてより好ましくは3%と15%w/wの間の量がしばしば良好な結果をもたらす。
【0071】
また、本発明は、治療を必要とする患者の爪の爪感染症の治療方法であって、前記爪への還元剤製剤の適用、それに続く酸化剤製剤の適用を含んでなり、前記爪の疾患は薬物によって治療可能であり、前記薬物は前記製剤の一方または第3の製剤中に配置される方法を提供する。
【0072】
上記方法が、好ましくは、使用に関して上記された特徴および/または請求項2〜43のいずれか一項に記載される特徴をさらに含むことは認識される。
【0073】
本発明は、爪感染症の治療に関して上記され、そして好ましくは請求項1〜43のいずれか一項に記載される製剤を含むキットをさらに提供する。
【0074】
ここで本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例】
【0075】
実施例1〜4:材料および方法:
実施例1〜4では、爪浸透性を試験するために2つのモデルを発展させた。モデル1は、国際公開第99/49895号パンフレットと同様の処方計画に従って、溶媒中に溶解された浸透促進剤で爪を処理し、そして爪の重量増加%を決定した。浸透促進剤はケラチン分解性であると考えられ、従って、爪の硫黄結合を壊し、それによって、爪が軟化し、そしてより多くの液体が吸収される。
【0076】
第2のモデルは、爪浸透性を実際に測定する。この新規モデルでは、放射性化合物、14C−マンニトールを使用すると、浸透促進剤の適用後、爪を通して薬剤の進行が生じた。新規拡散セルを使用し、マンニトール拡散を測定した。
【0077】
実施例1〜4では、以下に詳述される器具、材料および方法を使用する。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
浸透促進剤:
各浸透促進剤は異なる溶解性を示すため、以下の表2に従って、水またはエタノールと水との混合物のいずれかを溶媒として使用した。
【0081】
【表3】
【0082】
方法:
爪膨張の試験:
切り取られた爪の洗浄および調製:
爪切りを使用して、健康なヒト志願者から(同意を得て)長さ約2mmの爪を切り取った。ホワーリミキサー(WhirliMixer)(商標)(英国、フィソンズ(Fison’s、UK))を最大速度で1分間使用し、28mlのガラスバイアル瓶中でボルテックスすることによって、70%エタノール(v/v)を使用してこれらを洗浄した。次いで、切り取られた爪を水中で再び1分間、強力にボルテックスすることによってすすいだ。この手順を3回繰り返した。次いで、爪を開放性ペトリ皿に置き、そして24時間30+20℃に温度制御されたオーブン中に置いて乾燥させた。オーブン乾燥後、爪の重量を測定し、そして24ウェルの微生物学プレート(英国、コスター(登録商標)(Costar、UK))の個々のウェルに配置した。全ての実験で、切り取られた爪10組を使用した。
【0083】
切り取られた爪への浸透促進剤の適用:
微生物学プレートウェル中の洗浄済みの切り取られた爪を約20時間、1mlの浸透促進剤溶液に浸漬した。ティッシュタオルを使用して、それらを優しくパッティングすることによって乾燥させ、過剰量の溶液を全ての切り取られた爪から除去した。切り取られた爪の重量を測定し、そして重量を記録した。第2の浸透促進剤を使用した場合、第2の化合物で同一手順を繰り返し、そして第2の重量を記録した。溶媒単独の効果を推定するため、浸透促進剤を添加せずに単純に溶媒に浸漬して、同一の方法論を使用して1組の対照の爪を試験した。
【0084】
マンニトール爪浸透性の試験:
浸透促進剤の調製
単一の浸透促進剤を適切な溶媒中に調合し、そして14Cマンニトール(14Cマンニトールの10μlストック)でスパイクした。2種以上の浸透促進剤を爪に適用した場合、最後の浸透促進剤のみが爪適用の前に14Cマンニトールでスパイクされた。対照として、浸透促進剤を含まない14Cマンニトールを使用した。
【0085】
爪拡散セルの調製:
予め較正された爪拡散セルを全厚さのヒトの爪で組み立てた。20%エタノール/水混合物からなるレシーバー流体を、サイドアームのエッチングされたマークまでレシーバーウェル中に入れた。磁気フォロワーを挿入し、次いで、320℃に維持された水浴中でセルを磁気スターラーに配置した。セルを漏洩および気泡に関してチェックした。30分の平衡期間後、1ml試料をサンプリングサイドアームから採取し、そしてシンチレーションバイアル瓶中に置き、4mlのシンチレーションカクテルが続き、そしてデュアルモード設定(3H/14C)を使用して、シンチレーションカウンター上で試験した。これは、セルはいずれも残留放射能を含有せず、そしてこれらの読みを各セルのバックグラウンドとして取ることを確実にした。次いでセルに新しいレシーバー流体をエッチングされたマークまで補給し、そして32℃で予め平衡化した。
【0086】
3H水を使用する爪の規格化:
バックグラウンド読取りの後(上記項目に記載された)、予め較正されたギルソン(Gilson)ピペットを使用して、50μlの3H水(約18000dpm)を組み立てられた爪拡散セルの爪の上部に配置した。次いで、セルをパラフィンで直ちにふさいだ。20時間後、1mlシリンジを使用してレシーバー流体の1ml試料をサイドアームから取り出し、そしてシンチレーションバイアル瓶中に置き、4mlのシンチレーションカクテルが続き、そしてデュアルモード設定(3H/14C)を使用して、シンチレーションカウンター上で試験した。この値を使用して、各爪を規格化し、そして放射能の値があまりに高いと考えられる場合、漏洩のため、セルを不合格とした。セルのいずれかが漏洩していた場合、ディクソンの(Dixon's)Q−試験を使用して決定した。次いで、ペーパータオルを使用して3H水を乾燥させ、そしてセルに新しいレシーバー流体をエッチングされたマークまで補給し、そして32℃で予め平衡化した。
【0087】
単一の浸透促進剤を試験する場合、各浸透促進剤の50μlアリコート(上記の通り、14Cマンニトールで予めスパイクされた)を、予め較正されたギルソン(Gilson)を使用してピペットで採取し、全厚さのヒトの爪の表面に置いた。次いで、各セルをパラフィンでふさいだ。サンプリング時間点を、約20時間、44時間、68時間、92時間および116時間で取った。各時間点の後、1ml試料をサイドアームから取り出し、そしてシンチレーションバイアル瓶中に置き、4mlのシンチレーションカクテルが続き、そしてデュアルモード設定(3H/14C)を使用して、シンチレーションカウンター上で試験した。次いで、セルに新しいレシーバー流体をエッチングされたマークまで補給し、そして32℃で予め平衡化した。概説された手順を使用して、各浸透促進剤(および対照)を合計n=5〜6回試験した。
【0088】
2種以上の浸透促進剤を使用する場合、放射性マンニトールを含まない50μlの浸透促進剤を、予め較正されたギルソン(Gilson)を使用してピペットで採取し、全厚さのヒトの爪の表面に置き、次いで、各セルをパラフィンでふさいだ。20時間後、ペーパータオルを使用して予めの浸透促進剤を乾燥させ、そして爪の表面を脱イオン水(3×1ml)で洗浄した。次いで、14Cマンニトールで予めスパイクされた第2の浸透促進剤を適用し、そして上記の単一の浸透促進剤に適用された手順に従った。
【0089】
実施例1:単一の爪浸透促進剤の使用
爪膨張の試験:
図1は、切り取られた爪に水(対照)、システイン、チオグリコール酸アンモニウム(AmTA)、チオグリコール酸(TA)、グリコール酸(GA)、過酸化水素(H2O2)、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)および1,4−ジチオ−DL−トレイトール(DTT)を添加した時の20時間後の爪の重量変化を示す(平均±標準偏差、n=10)。値は、最初の爪重量のパーセントで表される。水および水中20%エタノールの両方を対照溶液として使用したが、2つの間に著しい差異はなかった(p>0.05、ANOVA)。従って、水対照のみを図1に示す。
【0090】
チオグリコール酸(TA)、グリコール酸(GA)、過酸化水素(H2O2)、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)、ジチオトレイトール(DTT)およびチオグリコール酸アンモニウム(AmTA)は、対照と比較して、20時間後に全て著しく(p<0.05、ANOVA)切り取られた爪の重量を増加させた。試験された7つの浸透促進剤のうちの6つによって引き起こされる爪の重量増加から、適用された流体のより多くを爪が吸収していることが推測される。また処理された爪の外観の物理的変化も注目に値する。TA、GA、H2O2およびAmTAで処理された爪は、対照よりも軟質であり、また色も明るかった。
【0091】
システインは著しく爪の重量を増加させなかった(p>0.05、ANOVA)。従って、システインで処理された爪への流体の浸透性は、向上しなかった。
【0092】
マンニトール爪浸透性の試験:
図2は、異なる単一の浸透促進剤を使用して、全厚さのヒトの爪を通しての14Cマンニトールの浸透性を示す(n=6±SD、DTT n=5±SD)。飽和TA(50%)は、これらの実験でマンニトールの最も良好な浸透促進剤であった。しかしながら、TAが5%の濃度まで減少する場合、その浸透促進効果はDTTの効果よりも低くなる。H2O2は、96時間後のマンニトール拡散に関して、5%TA(p<0.05、ANOVA)とほとんど異ならない。
【0093】
実施例2:2種の爪浸透促進剤の使用
爪膨張の試験:
単一の浸透促進剤の適用による爪の重量の最大増加は、5%TAに関しての71%であった(図1に示される)。しかしながら、2種の浸透促進剤を順番に添加することによって、図3に示されるように、150%までの爪の重量増加が導かれた。図3は、2回の別々の段階(>は、次に続くことを示す)で、両方の適用順序で2種の浸透促進剤で処理した場合の爪の重量増加パーセントを示す(平均±標準偏差、n=10)。
【0094】
TAと、次いでH2O2または尿素−H2O2の添加によって、TA単独と比較して、爪の重量が非常に増加した(p<0.05、ANOVA)。しかしながら、H2O2または尿素−H2O2をTAの前に適用した場合、TA単独と比較して、爪重量の著しい増加は見られなかった(p>0.05、ANOVA)。図3で詳述される2種の浸透促進剤の実験のそれぞれにおいて、同様の傾向が見られた。酸化剤(例えばH2O2または尿素−H2O2)の添加より前に還元剤(例えばTA、GA、DTT)を添加することによって、逆の順番、すなわち、酸化剤、次いで還元剤の順番での薬剤の適用と比較して、爪の重量増加は著しく向上した。TA、それに続いて尿素−H2O2の適用によって、重量の最大増加が得られたが、それに対して、尿素−H2O2、それに続いてDTTでは最小であった。
【0095】
実施例3:浸透促進剤濃度の効果
爪膨張の試験:
図4は、様々なTA濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す(平均±標準偏差、n=10)。TAで処理された爪の場合、浸透促進剤の濃度の増加によって、重量増加が導びかれた。最も著しい重量増加は、20%TAで処理された爪で見られた。
【0096】
図5は、様々な尿素−H2O2濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す。x軸で示されるパーセントは全H2O2濃度である(平均±標準偏差、n=10)。爪に適用された尿素−H2O2の濃度も重量増加に影響し、従って爪への浸透性に影響した。爪の重量増加に関して、20%尿素−H2O2の適用は、10%より著しく良好であった。しかしながら、20%と35%との間の増加濃度のH2O2で処理された爪は、重量増加に関して著しい差異を示さなかった(p>0.05、ANOVA)。
【0097】
図6は、様々なDTT濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す(平均±標準偏差、n=10)。1%DTTで処理された爪は、5%DTTで処理された爪と比較して、著しい重量増加を示した(p>0.05、ANOVA)が、5〜10%の間のさらなる濃度増加によって、著しい効果(p<0.05、ANOVA)は見られなかった。爪重量に対する最大効果は、20%のDTT濃度で観測される。これは10%の濃度で観測される効果のほぼ2倍の効果であった。
【0098】
実施例4:浸透促進剤に及ぼすpHの影響
爪膨張の試験:
図7は、TAの様々な塩での20時間後の爪の重量増加パーセントを示す(全て5%濃度で)。バーの上の数字は、適用前の各溶液のpHを示す(平均±標準偏差、n=10)。浸透促進剤として利用されるチオグリコール酸塩型に関係なく、爪の重量増加は、対照よりも非常に大きかった(p>0.05、ANOVA)。チオグリコール酸カルシウムによって爪重量の最大増加が生じ、従って、最大量の液体の爪への浸透が促進された。塩の種類は、爪に適用される液体のpHに直接的に影響を有した。TAはpH2.12の溶液として適用されたが、それに対して、チオグリコール酸カルシウムは11.43のpHを有した。従って、爪による液体取り込みに関して全ての化合物が有効であったが、>7.1のpHは爪重量増加に関して有利と考えられる。
【0099】
実施例5〜10:材料および方法:
実施例5〜10では、下記に詳述される材料および方法を使用する。
【0100】
酸化還元測定:
イオン分析酸化還元メーター(英国、メトローム(Metrohm、UK))を使用し、室温で、既知の電位の安定した参照電極(Ag/AgCl)に対して、脱イオン水中の化合物の0.5M水性製剤の還元電位を測定した。
【0101】
テルビナフィン拡散の試験:
直径約3mmのヒトの爪試料(全厚さ)を特別に設計されたチャブター(ChubTur)(商標)拡散セルの2つの半分部の間の配置し、そして一緒に固定した。レセプターコンパートメントに、事前に超音波処理した適切な緩衝系を充填し、シンク状態を確実にし、そして32℃に維持された水浴で磁気スターラー上に取り付けられたパースペックスホルダーにセルを固定した。水中型磁気スターラーによって駆動される小型のPTFEコーティング磁気フォロワーによって、レセプターチャンバー内容物を連続的に煽動した。既知の量の配合物/薬物溶液を爪の表面に適用し(無限投与)、そして規則的な時間間隔で、緩衝液の試料をレセプターコンパートメントから採取し、新しいレセプター媒体で置換し、そしてHPLCを使用して薬物内容物を分析した。
【0102】
ターチャブ(TurChub)(登録商標)微生物学的試験:
スロープ培養液から無菌スワッブを使用して菌糸および胞子を優しく除去し、そしてそれらを寒天の表面に移動することによって、サボウラウド(Sabouraud)ブドウ糖寒天プレートに紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)を播種した。プレートを7日間25℃に温置した。プレートの表面から白色胞子をリンガーズ(Ringers)溶液(20ml)洗浄除去した。殺菌ガーゼ(スミス+ネフュー(Smith+Nephew)、プロパックス(Propax)、7.5cm×7.5cm、8プライのガーゼスワッブ、BP型13)を通して胞子懸濁液を濾過し、菌糸を除去した。胞子懸濁液の生存数を評価し、そして20mlの最終容積で胞子を適宜に希釈または濃縮することによって、約1×107cfu/mlに胞子数を調節した。
【0103】
最初に、志願者の足の爪から、最小3mmの長さまで発達した爪の末端を切り取った。全ての志願者に6ヶ月以内は足の爪にマニキュア液または磨き剤を使用しないように要求し、そして6ヶ月以内では爪にいかなる疾患の徴候も示されなかった。全ての志願者に、はさみまたは標準的な爪切りのいずれかを使用して爪末端部分を除去するように頼んだ。爪の殺菌除去またはクリーニングのような具体的な手順は要請されなかった。次いで、切り取られた爪を、供与体/供与あたり8mlのビジョウ(bijou)ボトルに配置する前に、適切な容器、例えばビニール袋、バイアル瓶、封筒等に配置し、そしていずれかの供給された詳細によって標識化される。必要とされるまで、試料を冷凍室に保存した。
【0104】
はさみを使用して、切り取られた爪を最小3mm×3mmの断片へと切断した。各爪に関して入手できる断片の数は、完全に最初の試料のサイズに依存するため、小さい足の爪は1つまたは2つのみの断片を生じ、それに対してより大きい足の爪は3つおよび5つの間の断片を生じる。切り取られた爪を水中70%エタノール溶液に浸漬し、そして1分間ボルテックス混合した。次いでエタノール溶液をデカンテーションし、そして新しい70%エタノール溶液で置き換え、そしてさらに1分間ボルテックス混合した。次いでエタノール溶液をデカンテーションし、そしてリンガーズ(Ringer’s)溶液で置き換え、1分間ボルテックス混合し、そしてデカンテーションし、そして新しいリンガーズ(Ringer’s)溶液で置き換えた。このようなリンガーズ(Ringer’s)による洗浄プロセスを全3回実行し、各段階で洗浄溶液を置き換えた。洗浄プロセスが完了したら、切り取られた爪を蓋のない殺菌ペトリ皿に置き、そして室温で30分間、層流キャビネット下で空気乾燥させた。切り取られた爪が乾燥したら、それらを新しい8mlのビジョウ(bijou)ボトル(供与体あたり、バッチあたり別々のボトル)に置いた。一対のカリパスを使用して、爪の厚さを測定した。
【0105】
次いで、切り取られた爪の末端(全厚さの爪)を拡散セルで20時間、浸透促進剤系で、チオグリコール酸で、続いて20時間、尿素H2O2で処理した。
【0106】
最初にターチャブ(TurChub)(登録商標)セル(下部および上部)をオートクレーブ中121℃で15時間殺菌した。爪ガスケットも100%エタノール中で殺菌し、そして層流キャビネット下で空気乾燥させ、その後、爪/膜部分を取り付けた。次いで、浸透促進剤で処理された爪およびガスケットをターチャブ(TurChub)(登録商標)セル背部の下半分上に充填した。次いで、予め決められた容積(各セルから算出された)の溶解SDA寒天(56℃に維持された)をセルの下部に充填した。寒天がセットされた後、固定容積(50μl)のリンガーズ(Ringers)溶液中の試験生体、紅色白癬菌(T.rubrum)を寒天の表面上に適用した。次いで、側面から側面へセルを穏やかに揺動することによって、生体懸濁液を寒天の表面上に均等に広げるようにした。シリンジおよびニードルを使用して、生体懸濁液からの過剰量の流体をセルから除去した。生体がセルに適用されたら、爪を取り付け、そしてセルの上部ロート部分を加え、そしてスプリングで位置に固定した。セルは、過剰量の流体(例えば、濃縮物から)が寒天を横切って汚染することなく、セルの底で蓄積し;次に、寒天から「逃げる」ことによる間違った結果を避ける様式でセルを配向するように設計される。
【0107】
約100μlの活性または配合物を、試験生体、紅色白癬菌(T.rubrum)に対して7日間適用した。配合物の有効性は、ターチャブ(TurChub)(商標)セルで紅色白癬菌(T.rubrum)の成長抑制領域を測定することによって決定した。
【0108】
実施例5:爪浸透促進剤の酸化還元電位の測定
ヒトの爪の膨張を向上することが示される薬剤の酸化還元電位を試験した。還元剤は−ve酸化還元電位を有すると予想され、一方、酸化剤は+ve酸化還元電位を有するであろう(選択的に還元電位として正負変換を表す場合、還元剤は+ve電位を有する)。表3および図8の結果(+SD、n=3)は、試験された様々な薬剤の酸化還元電位に関して明白な差異があることを示す。
【0109】
【表4】
【0110】
強還元性の化学薬剤にはチオグリコール酸塩が含まれ、チオグリコール酸カルシウムは、全ての化学薬品の中で最も低い酸化還元電位(−531.3mV)を有する。最も効果的な酸化剤は、最も高い酸化還元電位を有するものであり、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)、過酸化水素(H2O2)、グリコール酸、シュウ酸および過硫酸カリウムが挙げられる。
【0111】
この酸化還元データから、劇的に爪の膨張(実施例2)を向上する薬剤の組み合わせは、強酸化剤または還元剤のいずれかであることは明らかである。さらに、これらの薬剤の適用順序は重要であり、還元剤が最初に爪に適用された場合、実施例2で最も大きい爪の膨張が観測された。
【0112】
実施例6:酸化還元電位に及ぼす爪浸透促進化合物濃度の影響:
選択された薬剤の酸化還元電位の濃度の影響を調査した。これらには、チオグリコール酸、尿素−H2O2、H2O2およびDTTが含まれる。滴定結果を表4〜7に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
表4は、1〜20%の間のTA濃度で、溶液の測定された酸化還元電位に濃度の影響がないことを示す。これより低い濃度(0.001〜1%)では、濃度の低下とともに、酸化還元電位は着実に低下する。DTTの酸化還元電位を測定した時も同様の傾向が観察され、そして0.05%未満の濃度で、溶液の酸化還元電位が低下した(表5)。
【0115】
【表6】
【0116】
H2O2および尿素−H2O2の両方で同様の影響が見られた。後者の場合、5〜17.5%の間の高い濃度で、酸化還元電位での大きな差異は見られなかった(表6)。しかしながら、尿素−H2O2の濃度が5%未満まで低下すると、酸化還元電位、従って酸化力はより急速に低下した。溶液の濃度が低下すると、溶液のpHもより中性になった。H2O2では、酸化還元電位が低下する臨界濃度は20%であった(表7)。
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
実施例7:酸化還元電位に及ぼす爪浸透促進化合物pHの影響:
溶液のpHが浸透促進剤の酸化還元電位に対して影響を有するかどうか調査するため、2種の化合物:5%TA溶液および15%のH2O2含有量を有する尿素−H2O2のpH範囲を調査した。2〜11のpH範囲を使用してTAを試験した(NaOH溶液を使用してpHを調節した)。2〜10の間のpHで尿素−H2O2溶液を試験した(HClおよびNaOH溶液を使用してpHを調節した)。
【0120】
TAの酸化還元電位は、試験されたpH範囲にわたって、1桁近くの大きさで増加した(表8)。対照的に、尿素−H2O2複合体の酸化還元電位は、pH10に達するまで、着実に低下し、pH10で酸化還元電位の鋭い低下が見られる(表9)。
【0121】
【表9】
【0122】
【表10】
【0123】
実施例8:モデル製薬化合物の浸透促進
図9は、50:50エタノール/水(対照)、尿素−H2O2またはチオグリコール酸(TA)単独で、および2つの浸透促進剤の組み合わせによる一次処理の後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ図である。この結果は、代表的な薬物の拡散を増加させる2種の浸透促進剤系の能力を実証する。
【0124】
爪を20時間50:50エタノール/水(対照)溶液に浸漬し、そして薬物を適用した場合、214時間後、1cm2あたり44±13μgのみが爪に浸透した。酸化剤、尿素−過酸化水素の適用は、爪に浸透する薬物の量に著しい影響がなく(p>0.05、ANOVA)、1cm2あたり47±33μgがバリアを横切った。テルビナフィンの適用前にチオグリコール酸を爪に適用することによって、1cm2あたり861±135μgの薬剤が浸透するが、これは、テルビナフィンの適用前にチオグリコール酸および尿素−H2O2を連続して適用した場合よりも低かった。この場合、219時間後に1cm2あたり2308±1332μgが浸透した。
【0125】
実施例9:2種適用浸透促進剤系の効果に及ぼす適用時間の影響:
図10は、チオグリコール酸(TA)による一次処理、それに次いで異なる期間での尿素−H2O2での処理後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ図である。
【0126】
30分間または1時間のいずれかの浸透促進剤系の適用によって、両方の場合で、1cm2あたり10μg未満の薬剤が爪に浸透した。対照的に、20時間までの2種の浸透促進剤系の使用によって、315時間後、それぞれ1cm2あたり3329±1842μgまでヒトの爪に浸透するテルビナフィンの量が増加した。
【0127】
実施例10:市販の抗真菌性配合物の性能を向上させるための浸透促進剤系の使用:
微生物学的分析を使用して、市販の製薬ラッカー、ロセリル(Loceryl)(登録商標)からのアモロルフィン浸透に及ぼす2種の浸透促進剤系の影響を試験した。分析によって、爪真菌症の爪において見られる支配的な微生物、紅色白癬菌(T.rubrum)に対して、単独、またはチオグリコール酸、尿素−過酸化水素または両方のいずれかの一次処理と一緒での配合物の有効性を評価した。
【0128】
図11は、生体、紅色白癬菌(T.rubrum)を有するターチャブ(TurChub)(登録商標)試験セル系を使用して、様々な浸透促進系で一次処理された全厚さの切り取られた爪末端を適用し、次いで、100μlの標準ロセリル(Loceryl)ラッカーを各表面に適用し、そして7日間温置した後の抑制領域(ZOI)の平均の長さの比較である(n=4±SD)。
【0129】
図11は、アモロルフィンが単独で、または爪を単一の還元剤、チオグリコール酸で20時間一次処理した後に適用された場合、微生物の生長は防止されず、すなわち、抑制の検出可能な領域がなかったことを実証する。爪を一次処理するために酸化剤、尿素−過酸化水素が使用された場合、小さい領域の抑制が検出された。しかしながら、抗真菌性薬物の前に、酸化剤および還元剤が連続して爪に適用された場合、約2cmの抑制領域が観測された。これらの結果は、酸化剤および還元剤の両方の適用によって、市販品として入手可能な爪に適用される配合物を使用して達成される微生物学的死滅を著しく向上させるということを強調する。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】切り取られた爪に水(対照)、システイン、チオグリコール酸アンモニウム(AmTA)、チオグリコール酸(TA)、グリコール酸(GA)、過酸化水素(H2O2)、尿素−過酸化水素(尿素−H2O2)および1,4−ジチオ−DL−トレイトール(DTT)を添加した時の20時間後の爪の重量変化を示すグラフ。
【図2】異なる単一の浸透促進剤を使用して、全厚さのヒトの爪を通しての14Cマンニトールの浸透性を示すグラフ。
【図3】2回の別々の段階(>は、次に続くことを示す)で、両方の適用順序で2種の浸透促進剤で処理した場合の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図4】様々なTA濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図5】様々な尿素−H2O2濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図6】様々なDTT濃度での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図7】TAの様々な塩での20時間後の爪の重量増加パーセントを示すグラフ。
【図8】0.5Mの浸透促進剤の酸化還元電位のグラフ。
【図9】50:50エタノール/水(対照)、尿素−H2O2またはチオグリコール酸(TA)単独で、および2つの浸透促進剤の組み合わせによる一次処理の後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ。
【図10】チオグリコール酸(TA)による一次処理、それに次いで異なる期間での尿素−H2O2での処理後、ヒトの爪を通してのテルビナフィン拡散のグラフ。
【図11】生体、紅色白癬菌(T.rubrum)を有するターチャブ(TurChub)(登録商標)試験セル系を使用して、様々な浸透促進系で一次処理された全厚さの切り取られた爪末端を適用し、次いで、100μlの標準ロセリル(Loceryl)ラッカーを各表面に適用し、そして7日間温置した後の抑制領域(ZOI)の平均の長さの比較のグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物によって治療可能な爪の疾患の治療用薬品の製造における還元剤および酸化剤の各製剤の使用であって、前記製剤が別々に配置されて、還元剤、それに続く酸化剤の順番で患者の爪に連続投与され、前記薬物が一方または他方の製剤中に配置されるか、あるいは任意に薬物が還元剤または酸化剤に対して追加的である第3の製剤中に配置される使用。
【請求項2】
前記2つの製剤の単純な組み合わせによって、極端な反応が導かれ、そして各薬剤が個々に、爪への適用が薬理学的に許容できる請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸およびジチオトレイトール、アスコルビン酸、ヒドロキノン、メルカプトエタノール、グルタチオン、L−システイン、タウリン、アミノメタンスルホン酸、システイン酸、システインスルフィン酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、ホモタウリン、ハイポタウリン、イセチオン酸、メルカプトエタンスルホン酸、N−メチルタウリンならびにそれらの単純な誘導体からなる群から選択される請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記誘導体が塩である請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記還元剤がチオグリコール酸またはその誘導体である請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記酸化剤が、尿素、過酸化水素、過硫酸カリウム、チオウラシル、p−クマル酸、グリコール酸、シュウ酸、シネオール、ペルオキシドン、二酸化塩素、二クロム酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、臭素酸バリウム、塩素酸バリウム、過酸化バリウム、塩素酸カドミウム、塩素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸クロム、硝酸コバルト、酸化銀、過ヨウ素酸および二クロム酸ピリジンからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記酸化剤が過酸化水素である請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記酸化剤が過酸化水素と尿素との付加化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記薬物が一方または両方の製剤中に存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記薬物が第3の製剤中に存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記製剤が液体である請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記還元剤が、pHが7と14との間であるアルカリ性製剤として調製される請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
pHが8と13との間である請求項12に記載の使用。
【請求項14】
pHが9と12との間である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記酸化剤のpHが1と7との間である請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
pHが2と5との間である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記製剤が水性である請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
膨張性薬剤としてプロピレングリコールを含む請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
チオグリコール酸が薬物と複合化される請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記薬物が、アモロルフィン、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、エコナゾール、シクロピロクス、オキシコナゾール、クロトリマゾール、テルビナフィン、ナフチフィン、アンフォテリシン、グリセオフルビン、ボリコナゾール、フルシトシン、ニスタチンならびにそれらの薬理学的に許容できる塩およびエステルからなる抗真菌薬の群から選択される請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記薬物がテルビナフィンである請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記薬物がアモロルフィンである請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記薬物が、コルチコステロイド、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、エトレチナート、シクロスポリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体からなる抗乾癬薬の群から選択される請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
Ag/AgCl参照電極に対して測定した場合、脱イオン水中で0.5Mの酸化剤の還元電位が−50mV未満である請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
還元電位が−100mV未満である請求項24に記載の使用。
【請求項26】
還元電位が−200mV未満である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
Ag/AgCl参照電極に対して測定した場合、脱イオン水中で0.5Mの還元剤の還元電位が+20mVより高い請求項1〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
還元電位が+50mVより高い請求項27に記載の使用。
【請求項29】
還元電位が+75mVより高い請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記還元剤が前記薬物と複合化される請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記酸化剤が前記薬物と複合化される請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
少なくとも1種の製剤が、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、ローション、フォーム、ムース、スプレー、ペースト、包帯剤、粉末、プレミックス、非水性ラッカーおよび水性ラッカーからなる群から選択される請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記製剤が、それぞれ個々に、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、ローション、フォーム、ムース、スプレー、ペースト、包帯剤、粉末、プレミックス、非水性ラッカーおよび水性ラッカーからなる群から選択される請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
少なくとも1種の製剤が水ベースのゲルである請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
全ての製剤が水ベースのゲルである請求項34に記載の使用。
【請求項36】
少なくとも1種の製剤が水ベースのラッカーである請求項1〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
全ての製剤が水ベースのラッカーである請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記還元剤製剤が、前記酸化剤製剤より少なくとも10時間前に適用される請求項1〜37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記還元剤製剤が、前記酸化剤製剤より少なくとも15時間前に適用される請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記還元剤製剤が、前記酸化剤製剤より少なくとも20時間前に適用される請求項38に記載の使用。
【請求項41】
前記薬物製剤が、前記酸化剤製剤の適用後1時間以内に適用される請求項1〜40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記薬物が、前記酸化剤製剤の適用後20分以内に適用される請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記薬物が、前記酸化剤製剤の適用直後に適用される請求項41に記載の使用。
【請求項44】
治療を必要とする患者の爪の爪感染症の治療方法であって、前記爪への還元剤製剤の適用、それに続く酸化剤製剤の適用を含んでなり、前記爪の疾患は薬物によって治療可能であり、前記薬物は前記製剤の一方または第3の製剤中に配置される方法。
【請求項45】
請求項2〜43のいずれか一項に記載の特徴をさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の製剤を含むキット。
【請求項1】
薬物によって治療可能な爪の疾患の治療用薬品の製造における還元剤および酸化剤の各製剤の使用であって、前記製剤が別々に配置されて、還元剤、それに続く酸化剤の順番で患者の爪に連続投与され、前記薬物が一方または他方の製剤中に配置されるか、あるいは任意に薬物が還元剤または酸化剤に対して追加的である第3の製剤中に配置される使用。
【請求項2】
前記2つの製剤の単純な組み合わせによって、極端な反応が導かれ、そして各薬剤が個々に、爪への適用が薬理学的に許容できる請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記還元剤が、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸およびジチオトレイトール、アスコルビン酸、ヒドロキノン、メルカプトエタノール、グルタチオン、L−システイン、タウリン、アミノメタンスルホン酸、システイン酸、システインスルフィン酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、ホモタウリン、ハイポタウリン、イセチオン酸、メルカプトエタンスルホン酸、N−メチルタウリンならびにそれらの単純な誘導体からなる群から選択される請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記誘導体が塩である請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記還元剤がチオグリコール酸またはその誘導体である請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記酸化剤が、尿素、過酸化水素、過硫酸カリウム、チオウラシル、p−クマル酸、グリコール酸、シュウ酸、シネオール、ペルオキシドン、二酸化塩素、二クロム酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、臭素酸バリウム、塩素酸バリウム、過酸化バリウム、塩素酸カドミウム、塩素酸カルシウム、クロム酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、硝酸クロム、硝酸コバルト、酸化銀、過ヨウ素酸および二クロム酸ピリジンからなる群から選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記酸化剤が過酸化水素である請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記酸化剤が過酸化水素と尿素との付加化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記薬物が一方または両方の製剤中に存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記薬物が第3の製剤中に存在する請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記製剤が液体である請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記還元剤が、pHが7と14との間であるアルカリ性製剤として調製される請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
pHが8と13との間である請求項12に記載の使用。
【請求項14】
pHが9と12との間である請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記酸化剤のpHが1と7との間である請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
pHが2と5との間である請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記製剤が水性である請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
膨張性薬剤としてプロピレングリコールを含む請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
チオグリコール酸が薬物と複合化される請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記薬物が、アモロルフィン、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、エコナゾール、シクロピロクス、オキシコナゾール、クロトリマゾール、テルビナフィン、ナフチフィン、アンフォテリシン、グリセオフルビン、ボリコナゾール、フルシトシン、ニスタチンならびにそれらの薬理学的に許容できる塩およびエステルからなる抗真菌薬の群から選択される請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記薬物がテルビナフィンである請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記薬物がアモロルフィンである請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記薬物が、コルチコステロイド、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、エトレチナート、シクロスポリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体からなる抗乾癬薬の群から選択される請求項1〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
Ag/AgCl参照電極に対して測定した場合、脱イオン水中で0.5Mの酸化剤の還元電位が−50mV未満である請求項1〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
還元電位が−100mV未満である請求項24に記載の使用。
【請求項26】
還元電位が−200mV未満である請求項25に記載の使用。
【請求項27】
Ag/AgCl参照電極に対して測定した場合、脱イオン水中で0.5Mの還元剤の還元電位が+20mVより高い請求項1〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
還元電位が+50mVより高い請求項27に記載の使用。
【請求項29】
還元電位が+75mVより高い請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記還元剤が前記薬物と複合化される請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記酸化剤が前記薬物と複合化される請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
少なくとも1種の製剤が、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、ローション、フォーム、ムース、スプレー、ペースト、包帯剤、粉末、プレミックス、非水性ラッカーおよび水性ラッカーからなる群から選択される請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記製剤が、それぞれ個々に、クリーム、軟膏、ゲル、溶液、ローション、フォーム、ムース、スプレー、ペースト、包帯剤、粉末、プレミックス、非水性ラッカーおよび水性ラッカーからなる群から選択される請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
少なくとも1種の製剤が水ベースのゲルである請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
全ての製剤が水ベースのゲルである請求項34に記載の使用。
【請求項36】
少なくとも1種の製剤が水ベースのラッカーである請求項1〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
全ての製剤が水ベースのラッカーである請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記還元剤製剤が、前記酸化剤製剤より少なくとも10時間前に適用される請求項1〜37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記還元剤製剤が、前記酸化剤製剤より少なくとも15時間前に適用される請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記還元剤製剤が、前記酸化剤製剤より少なくとも20時間前に適用される請求項38に記載の使用。
【請求項41】
前記薬物製剤が、前記酸化剤製剤の適用後1時間以内に適用される請求項1〜40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記薬物が、前記酸化剤製剤の適用後20分以内に適用される請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記薬物が、前記酸化剤製剤の適用直後に適用される請求項41に記載の使用。
【請求項44】
治療を必要とする患者の爪の爪感染症の治療方法であって、前記爪への還元剤製剤の適用、それに続く酸化剤製剤の適用を含んでなり、前記爪の疾患は薬物によって治療可能であり、前記薬物は前記製剤の一方または第3の製剤中に配置される方法。
【請求項45】
請求項2〜43のいずれか一項に記載の特徴をさらに含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の製剤を含むキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−542349(P2008−542349A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514204(P2008−514204)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002064
【国際公開番号】WO2006/131721
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507398187)メドファーム リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002064
【国際公開番号】WO2006/131721
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507398187)メドファーム リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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