屈折率分布型レンズを有する結像光学系および光学機器
【課題】ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正しつつ、コマ収差、非点収差および像面湾曲も十分に補正する。
【解決手段】結像光学系は、開口絞りAPと、該開口絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群G1と、開口絞りよりも像側に配置された後側レンズ群G2とを有し、前側レンズ群および後側レンズ群はそれぞれ、光軸からの距離に応じて屈折率が変化する屈折率分布型レンズGR1,GR2を含む。前側および後側レンズ群の屈折率分布型レンズのうち一方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が減少する屈折率分布を有し、他方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が増加する屈折率分布を有する。
【解決手段】結像光学系は、開口絞りAPと、該開口絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群G1と、開口絞りよりも像側に配置された後側レンズ群G2とを有し、前側レンズ群および後側レンズ群はそれぞれ、光軸からの距離に応じて屈折率が変化する屈折率分布型レンズGR1,GR2を含む。前側および後側レンズ群の屈折率分布型レンズのうち一方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が減少する屈折率分布を有し、他方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が増加する屈折率分布を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率分布型レンズを用いた結像光学系に関し、カメラや交換レンズ等の光学機器に用いられる光学系として好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率分布型レンズには、光軸からの距離(半径)に応じて屈折率が変化する、いわゆるラディアル型の屈折率分布型レンズがある。このラディアル型の屈折率分布型レンズは、波長ごとの屈折率分布を適切に与えることで色収差の補正効果を持つので、撮影光学系等の結像光学系に用いられることが多い。
【0003】
特許文献1には、ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いて、レンズ枚数を削減した撮影光学系が開示されている。この撮影光学系は、特に、g線とd線との間の色収差を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−097913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラディアル型の屈折率分布型レンズでは、これに入射した光線群が屈折率の傾斜の中を通過する際に該光線群間に光路差が生じるので、これがパワーとして現れる。しかしながら、ラディアル型の屈折率分布型レンズは入射角依存性が高く、光軸から等距離の位置に入射した光線同士であっても、該光軸に対して入射角が傾いていれば、該光軸を挟んだ上下で非対称な結像性能が生じ、コマ収差、非点収差および像面湾曲が発生する。
【0006】
特に撮影光学系のような広画角な光学系に、ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いた場合においては、該屈折率分布型レンズの光軸に対して光線が大きく傾いて入射するため、コマ収差、非点収差および像面湾曲が大きく発生する。
【0007】
図3には、一般的なラディアル型の屈折率分布型レンズGR1にその光軸に対して傾いて入射した光線にコマ収差が発生している様子を示している。屈折率分布型レンズGR1には、光軸から周辺に向かって(光軸からの距離が増加するにしたがって)屈折率が減少するように屈折率分布が与えられている。
【0008】
屈折率分布を有するレンズGR1の内部では、光線は徐々に屈折率が高い方に向きを変られる。すなわち、図3中では、光線はレンズGR1の光軸に近づく方向へと向きを変えられる。この際、レンズGR1の光軸よりも上側に入射した上光線と下側に入射した下光線とでは、屈折率分布から受ける影響が異なる。
【0009】
図3に示す光学系では、平行光線が光軸の下側から上側に向かって斜めに入射している。屈折率が低くなる方向に進む上光線は、屈折率分布の影響による向きの変化量が小さく、主光線の結像位置より奥側で結像する。一方、屈折率が高くなる方向へ進む下光線は、屈折率分布の影響による向きの変化量が大きく、主光線の結像位置より手前側で結像する。このようにして、ラディアル型の屈折率分布型レンズにその光軸に対して傾いて入射した光線にコマ収差が発生する。
【0010】
本発明は、ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正しつつ、コマ収差、非点収差および像面湾曲も十分に補正された結像光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面としての結像光学系は、開口絞りと、該開口絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群と、開口絞りよりも像側に配置された後側レンズ群とを有し、前側レンズ群および後側レンズ群はそれぞれ、光軸からの距離に応じて屈折率が変化する屈折率分布型レンズを含む。そして、前側および後側レンズ群の屈折率分布型レンズのうち一方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が減少する屈折率分布を有し、他方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が増加する屈折率分布を有することを特徴とする。
【0012】
なお、上記結像光学系を有する光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正することができるとともに、屈折率分布型レンズで発生し得るコマ収差、非点収差および像面湾曲が十分に補正され、良好な結像性能を有した結像光学系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1であるズームレンズの光学配置図。
【図2】実施例1における屈折率分布型レンズの屈折率分布を示す図。
【図3】一般的なラディアル型の屈折率分布型レンズの結像状態を示す図。
【図4】実施例1のズームレンズの縦収差図。
【図5】実施例1のズームレンズの横収差図。
【図6】本発明の実施例2であるズームレンズの光学配置図。
【図7】実施例2における屈折率分布型レンズの屈折率分布を示す図。
【図8】実施例2のズームレンズの縦収差図。
【図9】実施例2のズームレンズの横収差図。
【図10】本発明の実施例3であるズームレンズの光学配置図。
【図11】実施例3における屈折率分布型レンズの屈折率分布を示す図。
【図12】実施例3のズームレンズの縦収差図。
【図13】実施例3のズームレンズの横収差図。
【図14】各実施例のズームレンズを用いたカメラの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(A)には、本発明の実施例1である結像光学系であり、その焦点距離が可変であるズームレンズの広角端での光学配置を示している。また、図1(B)には、該ズームレンズの望遠端での光学配置を示している。また、表1には、本実施例に対応する具体的な数値例(数値例1)を示している。E-XXは、「×10−XX」を示す。
【0017】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPと、該開口絞りAPよりも物体側(図の左側)に配置された1つのレンズ群である第1レンズ群(前側レンズ群)G1とを有する。また、本実施例のズームレンズは、開口絞りAPよりも像側(図の右側)に配置された複数のレンズ群である第2レンズ群(後側レンズ群)G2および第3レンズ群G3を有する。
【0018】
物体側の各画角から入射した光線(光束)は、負の光学パワーを有する第1レンズ群G1を通過して開口絞りAPに入射し、その光束幅が制限される。そして、それぞれ正の光学パワーを有する第2レンズ群G2および第3レンズ群G3を通過して、CCDセンサ等の撮像素子の撮像面IMG上に結像する。
【0019】
第1レンズ群G1は、開口絞りAPよりも物体側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズGR1の1枚で構成されている。負メニスカスレンズGR1は、ラディアル型の屈折率分布型レンズであり、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が増加し、かつ光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が減少するラディアル型屈折率分布を有する。第1レンズ群G1により、負の方向に発生した色収差を補正している。
【0020】
第2レンズ群G1は、開口絞りAPよりも像側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。第2レンズ群G2は、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズGR2の1枚で構成されている。正メニスカスレンズGR2は、ラディアル型の屈折率分布型レンズであり、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が減少し、かつ光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が増加するラディアル型屈折率分布を有する。第2レンズ群G2により、正の方向に発生した色収差を補正している。
【0021】
図2(A)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGR1の屈折率分布を、図2(B)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGR2の屈折率分布をそれぞれ示す。横軸は光軸からの距離(半径方向)であり、縦軸はC線、d線およびF線に対する屈折率である。
【0022】
第3レンズ群G3は、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3の1枚で構成されている。
【0023】
第1〜第3レンズ群G1〜G3間の間隔を可変とすることで、ズーム比1.5倍のズームレンズ(数値例1)が構成されている。なお、望遠端での第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭くなっている。
【0024】
本実施例および後述する他の実施例において、ラディアル型屈折率分布を形成する際には、(1)式に示す様な冪級数展開式で与えるものとする。冪級数展開式の次数は特に限定する必要がないが、ここでは便宜上8次までとする。
【0025】
【数1】
【0026】
ただし、N00,λは波長λにおける光軸上での屈折率であり、N10,λ,N20,λ,N30,λ,N40,λは波長λにおける冪級数係数である。rは半径方向における光軸からの距離である。
【0027】
光軸上の屈折率N00,λや冪級数係数N10,λ,N20,λ,N30,λ,N40,λは波長ごとに異なる値とすることが可能であり、以下のように、C線、d線、F線に対してそれぞれ屈折率分布NC(r),Nd(r),NF(r)を与えている。
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、屈折率分布型レンズは、色消しの条件として、(3)式を満足する必要がある。
【0030】
【数3】
【0031】
ただし、φSは屈折率分布型レンズの表面形状による屈折パワー、νdは光軸上でのd線に対するアッベ数、φNは屈折率分布によるパワーである。また、ν10は屈折率分布のアッベ数である。屈折率分布によるパワーφNは、次の(4)式で表現される。
【0032】
【数4】
【0033】
ただし、dは屈折率分布型レンズの厚みである。
【0034】
また、屈折率分布のアッベ数ν10は、次の(5)式で表現される。
【0035】
【数5】
【0036】
(4)式と(5)式より、(3)式の色消し条件の屈折率分布の項φN/ν10は、次の(6)式で表現できる。
【0037】
【数6】
【0038】
すなわち、これはF線の屈折率分布によるパワーとC線の屈折率分布によるパワーの差である。
【0039】
このように、色消し条件の屈折率分布の項φN/ν10は、屈折率分布型レンズの表面形状による屈折パワーφSが正であるか負であるかにかかわらず、屈折率分布によるパワーφNとは無関係にN10,F−N10,Cの値で決まる。このため、屈折率分布型レンズは、各レンズ群の色収差を良好に補正可能な機能を有しながら、屈折率分布を自由に設定できる。
【0040】
本実施例では、開口絞りAPの直前に負のパワーを有する第1レンズ群G1を配置し、開口絞りAPの直後に正のパワーを有する第2レンズ群G2を配置した。さらに、開口絞りAPを挟んで、屈折率が半径方向にて互いに逆向きに変化する2つのラディアル型の屈折率分布型レンズGR1,GR2を配置した。これにより、一方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差、非点収差および像面湾曲を、他一方の屈折率分布型レンズでキャンセルすることができる。したがって、屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正しつつ、屈折率分布型レンズにて発生するコマ収差、非点収差および像面湾曲も十分に補正したズームレンズを実現できる。
【0041】
図3にはラディアル型の屈折率分布型レンズにその光軸に対して傾いて入射した光線に屈折率分布の影響によるコマ収差が発生する様子を示した。しかし、本実施例では、開口絞りの前後のレンズ群に、屈折率が半径方向において互いに逆向きに変化するラディアル型の屈折率分布型レンズを配置している。これにより、一方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差を、他方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差によってキャンセルすることができる。
【0042】
すなわち、上光線と下光線がそれぞれ光軸を挟んで反対側に位置するように、開口絞りAPの前後のレンズ群にラディアル型の屈折率分布型レンズを含ませることで、コマ収差を効率良く補正することができる。これにより、ズームレンズ全系でコマ収差を良好に補正できる。
【0043】
図4(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での縦収差を示し、図4(B)には同ズームレンズの望遠端での縦収差を示す。これらの図に示すように、本実施例のズームレンズは、軸上色収差を良好に補正し、かつ非点収差も良好に補正している。
【0044】
また、図5(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での横収差を示し、図5(B)には同ズームレンズの望遠端での横収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、各像高において、倍率色収差を良好に補正し、かつ各波長のコマ収差および像面湾曲を良好に補正している。
【0045】
【表1】
【実施例2】
【0046】
図6(A)には、本発明の実施例2である結像光学系であり、その焦点距離が可変であるズームレンズの広角端での光学配置を示している。また、表2には、本実施例に対応する具体的な数値例(数値例2)を示している。
【0047】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPと、該開口絞りAPよりも物体側(図の左側)に配置された複数のレンズ群である第1レンズ群G1および第2レンズ群(前側レンズ群)G2とを有する。また、本実施例のズームレンズは、開口絞りAPよりも像側(図の右側)に配置された複数のレンズ群である第3レンズ群G3、第4レンズ群(後側レンズ群)G4および第5レンズ群G5を有する。
【0048】
第1レンズ群G1は、3枚のレンズにより構成され、群全体として正の光学パワーを有する。第2レンズ群G2は、3枚のレンズにより構成され、群全体として負の光学パワーを有する。第2レンズ群G2は、開口絞りAPよりも物体側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。
【0049】
第3レンズ群G3は、3枚のレンズにより構成され、群全体として正の光学パワーを有する。第3レンズ群G3は、開口絞りAPよりも像側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。
【0050】
第4レンズ群G4と第5レンズ群G5はそれぞれ1枚のレンズにより構成され、群全体として正の光学パワーを有する。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に配置された開口絞りAPは、変倍に際して第3レンズ群G3とともに移動する。
【0051】
本実施例では、開口絞りAPの直前に配置された第2レンズ群G2を構成する3枚のレンズのうち1枚をラディアル型の屈折率分布型レンズGL1としている。また、開口絞りAPの直後に配置された第3レンズ群G3を構成する3枚のレンズのうち1枚をラディアル型の屈折率分布型レンズGL2としている。
【0052】
第1〜第5レンズ群G1〜G5間の間隔を変化させることにより、焦点距離f=4.0〜80mmの広角・高倍率(20倍)のズームレンズ(数値例2)を構成している。なお、望遠端での第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭くなっている。
【0053】
図7(A)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGL1の屈折率分布を、図7(B)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGL2の屈折率分布をそれぞれ示す。横軸は光軸からの距離(半径方向)であり、縦軸はC線、d線およびF線に対する屈折率である。
【0054】
図7(A)に示すように、屈折率分布型レンズGL1は、光軸から周辺部へ向かうにつれて(光軸からの距離が増加するにしたがって)屈折率が減少するラディアル型屈折率分布を有する。一方、屈折率分布型レンズGL2は、光軸から周辺部へ向かうにつれて屈折率が増加するラディアル型屈折率分布を有する。
【0055】
このように、屈折率分布型レンズGL1と屈折率分布型レンズGL2はそれぞれ、開口絞りAPの前後のレンズ群に含まれ、屈折率が半径方向にて互いに逆向きに変化している。これにより、一方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差を、他方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差によってキャンセルすることができる。特に、望遠端においては、2つの屈折率分布型レンズGL1,GL2の位置を広角端に比べて物体側に移動させており、屈折率分布の敏感度が上がっている。このため、該2つの屈折率分布型レンズGL1,GL2を開口絞りAPに近接させて、コマ収差を補正し易くしている。
【0056】
また、屈折率分布型レンズGL1は、前述したように光軸から周辺部へ向かうにつれて屈折率が減少し、さらに屈折率の波長分散も減少する屈折率分布を有する。つまり、光軸から周辺部への屈折率の変化量を、C線に対する変化量よりもF線に対する変化量を大きくしている。
【0057】
一方、屈折率分布型レンズGL2は、前述したように光軸から周辺部へ向かうにつれて屈折率が増加し、さらに屈折率の波長分散も増加する屈折率分布を有する。つまり、光軸から周辺部への屈折率の変化量を、C線に対する変化量よりもF線に対する変化量を大きくしている。
【0058】
このように、開口絞りAPを挟んだ2つの屈折率分布型レンズのうち一方における光軸から周辺部にかけての屈折率の変化量がC線よりもF線の方が大きい場合に、他方も同様に光軸から周辺部にかけての屈折率の変化量がC線よりもF線の方が大きくしている。これにより、色の像面湾曲を補正し易くすることができる。そして、この結果、屈折率分布の影響で発生したコマ収差を補正できるだけでなく、色の像面湾曲も良好に補正することができるので、高度な色収差補正が可能となる。
【0059】
図8(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での縦収差を示し、図8(B)には同ズームレンズの望遠端での縦収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、広角端および望遠端において軸上色収差を良好に補正しつつ、非点収差も良好に補正している。また、図9(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での横収差を示し、図9(B)には同ズームレンズの望遠端での横収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、広角端および望遠端において倍率色収差を良好に補正しつつ、各波長におけるコマ収差ならびに像面湾曲を良好に補正している。
【0060】
なお、本実施例では、望遠端において、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3を物体側に大きく移動させてズーム比を大きくしているため、これらのレンズ群G1〜G3の敏感度が高くなっている。そして、前述したように、望遠端での第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭くなっている。そして、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3にはラディアル型の屈折率分布型レンズが用いられているため、各波長のパワー差が拡大されて結像性能に影響を与える。
【0061】
そこで、望遠端においては、ラディアル型の屈折率分布型レンズを含む第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔を広角端から望遠端のうちで最も狭くし、かつ第2レンズ群G2と第3レンズ群G3に逆向きの屈折率分布と屈折率の波長分散分布とを与えている。これにより、収差のキャンセル関係を形成し易くすることができ、各波長のコマ収差や像面湾曲を補正し易くしている。
【0062】
表2に示す数値例2において、面番号6,7,15,20は非球面であり、以下の(7)式で表現される形状を有する。
【0063】
【数7】
【0064】
ただし、Rは曲率半径であり、Kはコーニック定数である。A,B,C,Dはそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。
【0065】
【表2】
【実施例3】
【0066】
図10(A)には、本発明の実施例3である結像光学系であり、その焦点距離が可変であるズームレンズの広角端での光学配置を示している。また、表3には、本実施例に対応する具体的な数値例(数値例3)を示している。
【0067】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPと、該開口絞りAPよりも物体側(図の左側)に配置された1つのレンズ群である第1レンズ群(前側レンズ群)G1とを有する。第1レンズ群G1は、物体順から順に、第1レンズL1と第2レンズL2とを有する。また、本実施例のズームレンズは、開口絞りAPよりも像側(図の右側)に配置された複数のレンズ群である第2レンズ群(後側レンズ群)G2および第3レンズ群G3を有する。第2レンズ群G2は、物体順から順に、第3レンズL3と第4レンズL4とを有する。第3レンズ群G3は、第5レンズL5により構成されている。2は赤外線カットフィルタおよびローパスフィルタ等の光学フィルタであり、3はCMOSセンサやCCDセンサ等の撮像素子である。
【0068】
第1レンズL1は、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、その入射面は球面として形成され、射出面は非球面として形成されている。第2レンズL2は、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであり、その入射面と射出面はともに球面として形成されている。第1レンズL1と第2レンズL2とで構成される第1レンズ群G1は、群全体として負の光学パワーを有する。
【0069】
第3レンズL3は、両凸レンズであり、その入射面は非球面として、射出面は球面として形成されている。第4レンズL4は、両凹レンズであり、その入射面および射出面はともに球面として形成されている。第3レンズL3と第4レンズL4とで構成される第2レンズ群G2は、群全体として正の光学パワーを有する。
【0070】
第5レンズL5は、両凸レンズであり、その入射面および射出面はともに球面として形成されている。第5レンズL5により構成される第3レンズ群G3は、群全体として正の光学パワーを有する。
【0071】
以上の構成により、画角2ω=83.4deg(35mmフィルム換算で焦点距離24mm相当)の広画角で、ズーム比2倍のズームレンズ(数値例3)を構成している。
【0072】
本実施例は、第1レンズ群G1に含まれる第2レンズL2と、第2レンズ群G2に含まれる第4レンズL4をそれぞれラディアル型の屈折率分布型レンズとしている。具体的には、第2レンズL2は、母材に光学樹脂であるPMMA(Nd=1.492,νd=57.2)を用い、これに混合するナノ粒子に金属酸化物であるチタニアTiO2(Nd=2.761,νd=9.5)を用いている。すなわち、母材よりも低いアッベ数のナノ粒子を母材中に混合させたナノコンポジット材料により形成されている。
【0073】
光軸上では、母材のPMMAにチタニアのナノ粒子を約14%(η=0.14)混合させ、光軸から離れるにしたがってチタニアのナノ粒子の濃度を徐々に低下させ、周辺部ではチタニアのナノ粒子の濃度を約3%(η=0.03)まで低下させている。つまり、ナノ粒子の濃度は光軸上よりも周辺部が低くなっている。
【0074】
また、第4レンズL4は、光軸上では母材(Nd=1.847,νd=23.8)そのものである。ただし、光軸から離れるに従ってナノ粒子(Nd=2.219,νd=20.0)の濃度を徐々に上昇させ、周辺部ではナノ粒子の濃度を約10%(η=0.10)まで上昇させている。つまり、ナノ粒子の濃度は光軸上よりも周辺部を高くしている。これにより、第2レンズL2の半径方向にナノ粒子の濃度勾配を形成し、ラディアル型屈折率分布を与えている。
【0075】
図11(A)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズL2の屈折率分布を、図11(B)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズL4の屈折率分布をそれぞれ示す。横軸は光軸からの距離(半径方向)であり、縦軸はC線、d線、F線およびg線に対する屈折率である。
【0076】
図11(A)に示すC線、d線、F線およびg線に対する屈折率分布は、いずれも光軸上にて最も屈折率が高く、光軸から離れるにしたがって屈折率が減少する分布である。一方、図11(B)に示すC線、d線、F線およびg線に対する屈折率分布は、いずれも光軸上にて最も屈折率が低く、光軸から離れるにしたがって屈折率が増加する分布である。
【0077】
表3には、第2レンズL2と第4レンズL4の屈折率分布係数を示している。屈折率分布の表現式として、(1)式に示した冪級数展開式のうち0次と2次の項のみを使用している。したがって、本実施例での屈折率分布は、光軸からの距離rに対する2次関数で表現されている。
【0078】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPの直前と直後のレンズ群G1,G2のそれぞれにラディアル型の屈折率分布型レンズL2,L4を配置し、これら2つの屈折率分布型レンズのうち一方が光軸から離れるにしたがって屈折率が減少する屈折率分布を有する。また、他方が光軸から離れるにしたがって屈折率が増加する屈折率分布を有する。これにより、色収差を良好に補正しつつ、コマ収差や像面湾曲を補正することができる。
【0079】
さらに、開口絞りAPの直前のレンズ群G1に含まれる屈折率分布型レンズL2は、光軸から離れるに従って屈折率の波長分散が減少する屈折率分布を有する。一方、開口絞りAPの直後のレンズ群G2に含まれる屈折率分布型レンズL4は、光軸から離れるにしたがって屈折率の波長分散が増加する屈折率分布を有する。これにより、各波長におけるコマ収差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0080】
図12(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での縦収差を示し、図12(B)には同ズームレンズの望遠端での縦収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、軸上色収差や非点収差を良好に補正している。また、図13(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での横収差を示し、図13(B)には同ズームレンズの望遠端での横収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、広角端および望遠端において倍率色収差を良好に補正しつつ、各波長におけるコマ収差ならびに像面湾曲を良好に補正している。
【0081】
【表3】
【0082】
なお、以上説明した各実施例(収差図)では、C線、d線、F線における色収差を補正する場合について説明したが、g線や赤外線等の他のスペクトル線の色収差の補正も行うことができる。
【0083】
また、各実施例では、焦点距離が可変であるズームレンズについて説明したが、本発明は、焦点距離が固定の単焦点レンズも実施例に含む。
【実施例4】
【0084】
図14には、上記実施例1〜3にて説明したズームレンズを撮影光学系として用いたデジタルスチルカメラ(光学機器)を示している。20はカメラ本体、21は撮影光学系(実施例1〜3のズームレンズ)、22はカメラ本体20に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)である。
【0085】
23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリ、24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。
【0086】
このように実施例1〜3のズームレンズを光学機器に適用することにより、高い光学性能を有する光学機器を実現することができる。光学機器には、デジタルスチルカメラだけでなく、ビデオカメラや交換レンズ等の様々な光学機器が含まれる。
【0087】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
屈折率分布型レンズを用いた色収差の補正と、屈折率分布型レンズにより発生するコマ収差、非点収差および像面湾曲の補正とを両立できる撮影光学系等に好適な結像光学系を提供できる。
【符号の説明】
【0089】
GR1,GR2,GL1,GL2 屈折率分布型レンズ
AP 開口絞り
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率分布型レンズを用いた結像光学系に関し、カメラや交換レンズ等の光学機器に用いられる光学系として好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率分布型レンズには、光軸からの距離(半径)に応じて屈折率が変化する、いわゆるラディアル型の屈折率分布型レンズがある。このラディアル型の屈折率分布型レンズは、波長ごとの屈折率分布を適切に与えることで色収差の補正効果を持つので、撮影光学系等の結像光学系に用いられることが多い。
【0003】
特許文献1には、ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いて、レンズ枚数を削減した撮影光学系が開示されている。この撮影光学系は、特に、g線とd線との間の色収差を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−097913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラディアル型の屈折率分布型レンズでは、これに入射した光線群が屈折率の傾斜の中を通過する際に該光線群間に光路差が生じるので、これがパワーとして現れる。しかしながら、ラディアル型の屈折率分布型レンズは入射角依存性が高く、光軸から等距離の位置に入射した光線同士であっても、該光軸に対して入射角が傾いていれば、該光軸を挟んだ上下で非対称な結像性能が生じ、コマ収差、非点収差および像面湾曲が発生する。
【0006】
特に撮影光学系のような広画角な光学系に、ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いた場合においては、該屈折率分布型レンズの光軸に対して光線が大きく傾いて入射するため、コマ収差、非点収差および像面湾曲が大きく発生する。
【0007】
図3には、一般的なラディアル型の屈折率分布型レンズGR1にその光軸に対して傾いて入射した光線にコマ収差が発生している様子を示している。屈折率分布型レンズGR1には、光軸から周辺に向かって(光軸からの距離が増加するにしたがって)屈折率が減少するように屈折率分布が与えられている。
【0008】
屈折率分布を有するレンズGR1の内部では、光線は徐々に屈折率が高い方に向きを変られる。すなわち、図3中では、光線はレンズGR1の光軸に近づく方向へと向きを変えられる。この際、レンズGR1の光軸よりも上側に入射した上光線と下側に入射した下光線とでは、屈折率分布から受ける影響が異なる。
【0009】
図3に示す光学系では、平行光線が光軸の下側から上側に向かって斜めに入射している。屈折率が低くなる方向に進む上光線は、屈折率分布の影響による向きの変化量が小さく、主光線の結像位置より奥側で結像する。一方、屈折率が高くなる方向へ進む下光線は、屈折率分布の影響による向きの変化量が大きく、主光線の結像位置より手前側で結像する。このようにして、ラディアル型の屈折率分布型レンズにその光軸に対して傾いて入射した光線にコマ収差が発生する。
【0010】
本発明は、ラディアル型の屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正しつつ、コマ収差、非点収差および像面湾曲も十分に補正された結像光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面としての結像光学系は、開口絞りと、該開口絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群と、開口絞りよりも像側に配置された後側レンズ群とを有し、前側レンズ群および後側レンズ群はそれぞれ、光軸からの距離に応じて屈折率が変化する屈折率分布型レンズを含む。そして、前側および後側レンズ群の屈折率分布型レンズのうち一方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が減少する屈折率分布を有し、他方は、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が増加する屈折率分布を有することを特徴とする。
【0012】
なお、上記結像光学系を有する光学機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正することができるとともに、屈折率分布型レンズで発生し得るコマ収差、非点収差および像面湾曲が十分に補正され、良好な結像性能を有した結像光学系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1であるズームレンズの光学配置図。
【図2】実施例1における屈折率分布型レンズの屈折率分布を示す図。
【図3】一般的なラディアル型の屈折率分布型レンズの結像状態を示す図。
【図4】実施例1のズームレンズの縦収差図。
【図5】実施例1のズームレンズの横収差図。
【図6】本発明の実施例2であるズームレンズの光学配置図。
【図7】実施例2における屈折率分布型レンズの屈折率分布を示す図。
【図8】実施例2のズームレンズの縦収差図。
【図9】実施例2のズームレンズの横収差図。
【図10】本発明の実施例3であるズームレンズの光学配置図。
【図11】実施例3における屈折率分布型レンズの屈折率分布を示す図。
【図12】実施例3のズームレンズの縦収差図。
【図13】実施例3のズームレンズの横収差図。
【図14】各実施例のズームレンズを用いたカメラの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(A)には、本発明の実施例1である結像光学系であり、その焦点距離が可変であるズームレンズの広角端での光学配置を示している。また、図1(B)には、該ズームレンズの望遠端での光学配置を示している。また、表1には、本実施例に対応する具体的な数値例(数値例1)を示している。E-XXは、「×10−XX」を示す。
【0017】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPと、該開口絞りAPよりも物体側(図の左側)に配置された1つのレンズ群である第1レンズ群(前側レンズ群)G1とを有する。また、本実施例のズームレンズは、開口絞りAPよりも像側(図の右側)に配置された複数のレンズ群である第2レンズ群(後側レンズ群)G2および第3レンズ群G3を有する。
【0018】
物体側の各画角から入射した光線(光束)は、負の光学パワーを有する第1レンズ群G1を通過して開口絞りAPに入射し、その光束幅が制限される。そして、それぞれ正の光学パワーを有する第2レンズ群G2および第3レンズ群G3を通過して、CCDセンサ等の撮像素子の撮像面IMG上に結像する。
【0019】
第1レンズ群G1は、開口絞りAPよりも物体側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズGR1の1枚で構成されている。負メニスカスレンズGR1は、ラディアル型の屈折率分布型レンズであり、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が増加し、かつ光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が減少するラディアル型屈折率分布を有する。第1レンズ群G1により、負の方向に発生した色収差を補正している。
【0020】
第2レンズ群G1は、開口絞りAPよりも像側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。第2レンズ群G2は、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズGR2の1枚で構成されている。正メニスカスレンズGR2は、ラディアル型の屈折率分布型レンズであり、光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率が減少し、かつ光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が増加するラディアル型屈折率分布を有する。第2レンズ群G2により、正の方向に発生した色収差を補正している。
【0021】
図2(A)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGR1の屈折率分布を、図2(B)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGR2の屈折率分布をそれぞれ示す。横軸は光軸からの距離(半径方向)であり、縦軸はC線、d線およびF線に対する屈折率である。
【0022】
第3レンズ群G3は、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3の1枚で構成されている。
【0023】
第1〜第3レンズ群G1〜G3間の間隔を可変とすることで、ズーム比1.5倍のズームレンズ(数値例1)が構成されている。なお、望遠端での第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭くなっている。
【0024】
本実施例および後述する他の実施例において、ラディアル型屈折率分布を形成する際には、(1)式に示す様な冪級数展開式で与えるものとする。冪級数展開式の次数は特に限定する必要がないが、ここでは便宜上8次までとする。
【0025】
【数1】
【0026】
ただし、N00,λは波長λにおける光軸上での屈折率であり、N10,λ,N20,λ,N30,λ,N40,λは波長λにおける冪級数係数である。rは半径方向における光軸からの距離である。
【0027】
光軸上の屈折率N00,λや冪級数係数N10,λ,N20,λ,N30,λ,N40,λは波長ごとに異なる値とすることが可能であり、以下のように、C線、d線、F線に対してそれぞれ屈折率分布NC(r),Nd(r),NF(r)を与えている。
【0028】
【数2】
【0029】
ここで、屈折率分布型レンズは、色消しの条件として、(3)式を満足する必要がある。
【0030】
【数3】
【0031】
ただし、φSは屈折率分布型レンズの表面形状による屈折パワー、νdは光軸上でのd線に対するアッベ数、φNは屈折率分布によるパワーである。また、ν10は屈折率分布のアッベ数である。屈折率分布によるパワーφNは、次の(4)式で表現される。
【0032】
【数4】
【0033】
ただし、dは屈折率分布型レンズの厚みである。
【0034】
また、屈折率分布のアッベ数ν10は、次の(5)式で表現される。
【0035】
【数5】
【0036】
(4)式と(5)式より、(3)式の色消し条件の屈折率分布の項φN/ν10は、次の(6)式で表現できる。
【0037】
【数6】
【0038】
すなわち、これはF線の屈折率分布によるパワーとC線の屈折率分布によるパワーの差である。
【0039】
このように、色消し条件の屈折率分布の項φN/ν10は、屈折率分布型レンズの表面形状による屈折パワーφSが正であるか負であるかにかかわらず、屈折率分布によるパワーφNとは無関係にN10,F−N10,Cの値で決まる。このため、屈折率分布型レンズは、各レンズ群の色収差を良好に補正可能な機能を有しながら、屈折率分布を自由に設定できる。
【0040】
本実施例では、開口絞りAPの直前に負のパワーを有する第1レンズ群G1を配置し、開口絞りAPの直後に正のパワーを有する第2レンズ群G2を配置した。さらに、開口絞りAPを挟んで、屈折率が半径方向にて互いに逆向きに変化する2つのラディアル型の屈折率分布型レンズGR1,GR2を配置した。これにより、一方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差、非点収差および像面湾曲を、他一方の屈折率分布型レンズでキャンセルすることができる。したがって、屈折率分布型レンズを用いて色収差を良好に補正しつつ、屈折率分布型レンズにて発生するコマ収差、非点収差および像面湾曲も十分に補正したズームレンズを実現できる。
【0041】
図3にはラディアル型の屈折率分布型レンズにその光軸に対して傾いて入射した光線に屈折率分布の影響によるコマ収差が発生する様子を示した。しかし、本実施例では、開口絞りの前後のレンズ群に、屈折率が半径方向において互いに逆向きに変化するラディアル型の屈折率分布型レンズを配置している。これにより、一方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差を、他方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差によってキャンセルすることができる。
【0042】
すなわち、上光線と下光線がそれぞれ光軸を挟んで反対側に位置するように、開口絞りAPの前後のレンズ群にラディアル型の屈折率分布型レンズを含ませることで、コマ収差を効率良く補正することができる。これにより、ズームレンズ全系でコマ収差を良好に補正できる。
【0043】
図4(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での縦収差を示し、図4(B)には同ズームレンズの望遠端での縦収差を示す。これらの図に示すように、本実施例のズームレンズは、軸上色収差を良好に補正し、かつ非点収差も良好に補正している。
【0044】
また、図5(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での横収差を示し、図5(B)には同ズームレンズの望遠端での横収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、各像高において、倍率色収差を良好に補正し、かつ各波長のコマ収差および像面湾曲を良好に補正している。
【0045】
【表1】
【実施例2】
【0046】
図6(A)には、本発明の実施例2である結像光学系であり、その焦点距離が可変であるズームレンズの広角端での光学配置を示している。また、表2には、本実施例に対応する具体的な数値例(数値例2)を示している。
【0047】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPと、該開口絞りAPよりも物体側(図の左側)に配置された複数のレンズ群である第1レンズ群G1および第2レンズ群(前側レンズ群)G2とを有する。また、本実施例のズームレンズは、開口絞りAPよりも像側(図の右側)に配置された複数のレンズ群である第3レンズ群G3、第4レンズ群(後側レンズ群)G4および第5レンズ群G5を有する。
【0048】
第1レンズ群G1は、3枚のレンズにより構成され、群全体として正の光学パワーを有する。第2レンズ群G2は、3枚のレンズにより構成され、群全体として負の光学パワーを有する。第2レンズ群G2は、開口絞りAPよりも物体側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。
【0049】
第3レンズ群G3は、3枚のレンズにより構成され、群全体として正の光学パワーを有する。第3レンズ群G3は、開口絞りAPよりも像側に配置されたレンズ群のうち最も開口絞りAPに近いレンズ群である。
【0050】
第4レンズ群G4と第5レンズ群G5はそれぞれ1枚のレンズにより構成され、群全体として正の光学パワーを有する。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に配置された開口絞りAPは、変倍に際して第3レンズ群G3とともに移動する。
【0051】
本実施例では、開口絞りAPの直前に配置された第2レンズ群G2を構成する3枚のレンズのうち1枚をラディアル型の屈折率分布型レンズGL1としている。また、開口絞りAPの直後に配置された第3レンズ群G3を構成する3枚のレンズのうち1枚をラディアル型の屈折率分布型レンズGL2としている。
【0052】
第1〜第5レンズ群G1〜G5間の間隔を変化させることにより、焦点距離f=4.0〜80mmの広角・高倍率(20倍)のズームレンズ(数値例2)を構成している。なお、望遠端での第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭くなっている。
【0053】
図7(A)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGL1の屈折率分布を、図7(B)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズGL2の屈折率分布をそれぞれ示す。横軸は光軸からの距離(半径方向)であり、縦軸はC線、d線およびF線に対する屈折率である。
【0054】
図7(A)に示すように、屈折率分布型レンズGL1は、光軸から周辺部へ向かうにつれて(光軸からの距離が増加するにしたがって)屈折率が減少するラディアル型屈折率分布を有する。一方、屈折率分布型レンズGL2は、光軸から周辺部へ向かうにつれて屈折率が増加するラディアル型屈折率分布を有する。
【0055】
このように、屈折率分布型レンズGL1と屈折率分布型レンズGL2はそれぞれ、開口絞りAPの前後のレンズ群に含まれ、屈折率が半径方向にて互いに逆向きに変化している。これにより、一方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差を、他方の屈折率分布型レンズで発生したコマ収差によってキャンセルすることができる。特に、望遠端においては、2つの屈折率分布型レンズGL1,GL2の位置を広角端に比べて物体側に移動させており、屈折率分布の敏感度が上がっている。このため、該2つの屈折率分布型レンズGL1,GL2を開口絞りAPに近接させて、コマ収差を補正し易くしている。
【0056】
また、屈折率分布型レンズGL1は、前述したように光軸から周辺部へ向かうにつれて屈折率が減少し、さらに屈折率の波長分散も減少する屈折率分布を有する。つまり、光軸から周辺部への屈折率の変化量を、C線に対する変化量よりもF線に対する変化量を大きくしている。
【0057】
一方、屈折率分布型レンズGL2は、前述したように光軸から周辺部へ向かうにつれて屈折率が増加し、さらに屈折率の波長分散も増加する屈折率分布を有する。つまり、光軸から周辺部への屈折率の変化量を、C線に対する変化量よりもF線に対する変化量を大きくしている。
【0058】
このように、開口絞りAPを挟んだ2つの屈折率分布型レンズのうち一方における光軸から周辺部にかけての屈折率の変化量がC線よりもF線の方が大きい場合に、他方も同様に光軸から周辺部にかけての屈折率の変化量がC線よりもF線の方が大きくしている。これにより、色の像面湾曲を補正し易くすることができる。そして、この結果、屈折率分布の影響で発生したコマ収差を補正できるだけでなく、色の像面湾曲も良好に補正することができるので、高度な色収差補正が可能となる。
【0059】
図8(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での縦収差を示し、図8(B)には同ズームレンズの望遠端での縦収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、広角端および望遠端において軸上色収差を良好に補正しつつ、非点収差も良好に補正している。また、図9(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での横収差を示し、図9(B)には同ズームレンズの望遠端での横収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、広角端および望遠端において倍率色収差を良好に補正しつつ、各波長におけるコマ収差ならびに像面湾曲を良好に補正している。
【0060】
なお、本実施例では、望遠端において、第1レンズ群G1から第3レンズ群G3を物体側に大きく移動させてズーム比を大きくしているため、これらのレンズ群G1〜G3の敏感度が高くなっている。そして、前述したように、望遠端での第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭くなっている。そして、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3にはラディアル型の屈折率分布型レンズが用いられているため、各波長のパワー差が拡大されて結像性能に影響を与える。
【0061】
そこで、望遠端においては、ラディアル型の屈折率分布型レンズを含む第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の間隔を広角端から望遠端のうちで最も狭くし、かつ第2レンズ群G2と第3レンズ群G3に逆向きの屈折率分布と屈折率の波長分散分布とを与えている。これにより、収差のキャンセル関係を形成し易くすることができ、各波長のコマ収差や像面湾曲を補正し易くしている。
【0062】
表2に示す数値例2において、面番号6,7,15,20は非球面であり、以下の(7)式で表現される形状を有する。
【0063】
【数7】
【0064】
ただし、Rは曲率半径であり、Kはコーニック定数である。A,B,C,Dはそれぞれ4次、6次、8次、10次の非球面係数である。
【0065】
【表2】
【実施例3】
【0066】
図10(A)には、本発明の実施例3である結像光学系であり、その焦点距離が可変であるズームレンズの広角端での光学配置を示している。また、表3には、本実施例に対応する具体的な数値例(数値例3)を示している。
【0067】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPと、該開口絞りAPよりも物体側(図の左側)に配置された1つのレンズ群である第1レンズ群(前側レンズ群)G1とを有する。第1レンズ群G1は、物体順から順に、第1レンズL1と第2レンズL2とを有する。また、本実施例のズームレンズは、開口絞りAPよりも像側(図の右側)に配置された複数のレンズ群である第2レンズ群(後側レンズ群)G2および第3レンズ群G3を有する。第2レンズ群G2は、物体順から順に、第3レンズL3と第4レンズL4とを有する。第3レンズ群G3は、第5レンズL5により構成されている。2は赤外線カットフィルタおよびローパスフィルタ等の光学フィルタであり、3はCMOSセンサやCCDセンサ等の撮像素子である。
【0068】
第1レンズL1は、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズであり、その入射面は球面として形成され、射出面は非球面として形成されている。第2レンズL2は、像側に凹面を向けたメニスカスレンズであり、その入射面と射出面はともに球面として形成されている。第1レンズL1と第2レンズL2とで構成される第1レンズ群G1は、群全体として負の光学パワーを有する。
【0069】
第3レンズL3は、両凸レンズであり、その入射面は非球面として、射出面は球面として形成されている。第4レンズL4は、両凹レンズであり、その入射面および射出面はともに球面として形成されている。第3レンズL3と第4レンズL4とで構成される第2レンズ群G2は、群全体として正の光学パワーを有する。
【0070】
第5レンズL5は、両凸レンズであり、その入射面および射出面はともに球面として形成されている。第5レンズL5により構成される第3レンズ群G3は、群全体として正の光学パワーを有する。
【0071】
以上の構成により、画角2ω=83.4deg(35mmフィルム換算で焦点距離24mm相当)の広画角で、ズーム比2倍のズームレンズ(数値例3)を構成している。
【0072】
本実施例は、第1レンズ群G1に含まれる第2レンズL2と、第2レンズ群G2に含まれる第4レンズL4をそれぞれラディアル型の屈折率分布型レンズとしている。具体的には、第2レンズL2は、母材に光学樹脂であるPMMA(Nd=1.492,νd=57.2)を用い、これに混合するナノ粒子に金属酸化物であるチタニアTiO2(Nd=2.761,νd=9.5)を用いている。すなわち、母材よりも低いアッベ数のナノ粒子を母材中に混合させたナノコンポジット材料により形成されている。
【0073】
光軸上では、母材のPMMAにチタニアのナノ粒子を約14%(η=0.14)混合させ、光軸から離れるにしたがってチタニアのナノ粒子の濃度を徐々に低下させ、周辺部ではチタニアのナノ粒子の濃度を約3%(η=0.03)まで低下させている。つまり、ナノ粒子の濃度は光軸上よりも周辺部が低くなっている。
【0074】
また、第4レンズL4は、光軸上では母材(Nd=1.847,νd=23.8)そのものである。ただし、光軸から離れるに従ってナノ粒子(Nd=2.219,νd=20.0)の濃度を徐々に上昇させ、周辺部ではナノ粒子の濃度を約10%(η=0.10)まで上昇させている。つまり、ナノ粒子の濃度は光軸上よりも周辺部を高くしている。これにより、第2レンズL2の半径方向にナノ粒子の濃度勾配を形成し、ラディアル型屈折率分布を与えている。
【0075】
図11(A)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズL2の屈折率分布を、図11(B)には、本実施例におけるラディアル型の屈折率分布型レンズL4の屈折率分布をそれぞれ示す。横軸は光軸からの距離(半径方向)であり、縦軸はC線、d線、F線およびg線に対する屈折率である。
【0076】
図11(A)に示すC線、d線、F線およびg線に対する屈折率分布は、いずれも光軸上にて最も屈折率が高く、光軸から離れるにしたがって屈折率が減少する分布である。一方、図11(B)に示すC線、d線、F線およびg線に対する屈折率分布は、いずれも光軸上にて最も屈折率が低く、光軸から離れるにしたがって屈折率が増加する分布である。
【0077】
表3には、第2レンズL2と第4レンズL4の屈折率分布係数を示している。屈折率分布の表現式として、(1)式に示した冪級数展開式のうち0次と2次の項のみを使用している。したがって、本実施例での屈折率分布は、光軸からの距離rに対する2次関数で表現されている。
【0078】
本実施例のズームレンズは、開口絞りAPの直前と直後のレンズ群G1,G2のそれぞれにラディアル型の屈折率分布型レンズL2,L4を配置し、これら2つの屈折率分布型レンズのうち一方が光軸から離れるにしたがって屈折率が減少する屈折率分布を有する。また、他方が光軸から離れるにしたがって屈折率が増加する屈折率分布を有する。これにより、色収差を良好に補正しつつ、コマ収差や像面湾曲を補正することができる。
【0079】
さらに、開口絞りAPの直前のレンズ群G1に含まれる屈折率分布型レンズL2は、光軸から離れるに従って屈折率の波長分散が減少する屈折率分布を有する。一方、開口絞りAPの直後のレンズ群G2に含まれる屈折率分布型レンズL4は、光軸から離れるにしたがって屈折率の波長分散が増加する屈折率分布を有する。これにより、各波長におけるコマ収差や像面湾曲を良好に補正することができる。
【0080】
図12(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での縦収差を示し、図12(B)には同ズームレンズの望遠端での縦収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、軸上色収差や非点収差を良好に補正している。また、図13(A)には、本実施例のズームレンズの広角端での横収差を示し、図13(B)には同ズームレンズの望遠端での横収差を示す。これらの図から分かるように、本実施例のズームレンズは、広角端および望遠端において倍率色収差を良好に補正しつつ、各波長におけるコマ収差ならびに像面湾曲を良好に補正している。
【0081】
【表3】
【0082】
なお、以上説明した各実施例(収差図)では、C線、d線、F線における色収差を補正する場合について説明したが、g線や赤外線等の他のスペクトル線の色収差の補正も行うことができる。
【0083】
また、各実施例では、焦点距離が可変であるズームレンズについて説明したが、本発明は、焦点距離が固定の単焦点レンズも実施例に含む。
【実施例4】
【0084】
図14には、上記実施例1〜3にて説明したズームレンズを撮影光学系として用いたデジタルスチルカメラ(光学機器)を示している。20はカメラ本体、21は撮影光学系(実施例1〜3のズームレンズ)、22はカメラ本体20に内蔵され、撮影光学系21によって形成された被写体像を受光するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)である。
【0085】
23は撮像素子22によって光電変換された被写体像に対応する情報を記録するメモリ、24は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、撮像素子22上に形成された被写体像を観察するためのファインダである。
【0086】
このように実施例1〜3のズームレンズを光学機器に適用することにより、高い光学性能を有する光学機器を実現することができる。光学機器には、デジタルスチルカメラだけでなく、ビデオカメラや交換レンズ等の様々な光学機器が含まれる。
【0087】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
屈折率分布型レンズを用いた色収差の補正と、屈折率分布型レンズにより発生するコマ収差、非点収差および像面湾曲の補正とを両立できる撮影光学系等に好適な結像光学系を提供できる。
【符号の説明】
【0089】
GR1,GR2,GL1,GL2 屈折率分布型レンズ
AP 開口絞り
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口絞りと、
該開口絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群と、
前記開口絞りよりも像側に配置された後側レンズ群とを有し、
前記前側レンズ群および前記後側レンズ群はそれぞれ、光軸からの距離に応じて屈折率が変化する屈折率分布型レンズを含み、
前記前側および後側レンズ群の前記屈折率分布型レンズのうち一方は、前記光軸からの距離が増加するにしたがって前記屈折率が減少する屈折率分布を有し、他方は、前記光軸からの距離が増加するにしたがって前記屈折率が増加する屈折率分布を有することを特徴とする結像光学系。
【請求項2】
前記開口絞りよりも物体側および像側のそれぞれに1又は複数のレンズ群を有しており、
前記屈折率分布型レンズを含む前記前側レンズ群および前記後側レンズ群はそれぞれ、物体側および像側において前記開口絞りに最も近いレンズ群であることを特徴とする請求項1に記載の結像光学系。
【請求項3】
前記前側レンズ群は、負の光学パワーを有し、
該前側レンズ群に含まれる前記屈折率分布型レンズは、前記光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が減少する屈折率分布を有し、
前記後側レンズ群に含まれる前記屈折率分布型レンズは、前記光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が増加する屈折率分布を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の結像光学系。
【請求項4】
前記前側レンズ群と前記後側レンズ群との間の間隔を変化させることにより該結像光学系の焦点距離が可変であり、
望遠端での前記前側レンズ群と前記後側レンズ群との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の結像光学系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の結像光学系を有することを特徴とする光学機器。
【請求項1】
開口絞りと、
該開口絞りよりも物体側に配置された前側レンズ群と、
前記開口絞りよりも像側に配置された後側レンズ群とを有し、
前記前側レンズ群および前記後側レンズ群はそれぞれ、光軸からの距離に応じて屈折率が変化する屈折率分布型レンズを含み、
前記前側および後側レンズ群の前記屈折率分布型レンズのうち一方は、前記光軸からの距離が増加するにしたがって前記屈折率が減少する屈折率分布を有し、他方は、前記光軸からの距離が増加するにしたがって前記屈折率が増加する屈折率分布を有することを特徴とする結像光学系。
【請求項2】
前記開口絞りよりも物体側および像側のそれぞれに1又は複数のレンズ群を有しており、
前記屈折率分布型レンズを含む前記前側レンズ群および前記後側レンズ群はそれぞれ、物体側および像側において前記開口絞りに最も近いレンズ群であることを特徴とする請求項1に記載の結像光学系。
【請求項3】
前記前側レンズ群は、負の光学パワーを有し、
該前側レンズ群に含まれる前記屈折率分布型レンズは、前記光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が減少する屈折率分布を有し、
前記後側レンズ群に含まれる前記屈折率分布型レンズは、前記光軸からの距離が増加するにしたがって屈折率の波長分散が増加する屈折率分布を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の結像光学系。
【請求項4】
前記前側レンズ群と前記後側レンズ群との間の間隔を変化させることにより該結像光学系の焦点距離が可変であり、
望遠端での前記前側レンズ群と前記後側レンズ群との間の間隔が、広角端での該間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の結像光学系。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の結像光学系を有することを特徴とする光学機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−61548(P2013−61548A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200783(P2011−200783)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]