説明

常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造およびこのスパイラルコアの製造方法

【課題】 合成樹脂を用いても、被さる常温収縮チューブの大きさに関わらず、その収縮力に十分対応でき、精度良く容易に製造できること。
【解決手段】 拡径された常温収縮チューブが被さる常温収縮チューブ用スパイラルコア100である。常温収縮チューブ用スパイラルコア100は、押出成形されるリボン110を螺旋状に巻いて筒状に形成されてなる。リボン110は、長手方向に延在する中空部113を有し、ポリプロピレン樹脂を用いて成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温収縮チューブを拡径状態で支持するための支持治具である常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造およびこのスパイラルコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
常温収縮チューブは、例えば、電力ケーブルの端末や、電力ケーブルを接続する際の接続部分の被覆に用いられ、電界緩和作用、絶縁作用を発揮する。
【0003】
この常温収縮チューブは、ゴム弾性体で作られ、例えば、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(Ethylene Propylene Diene Methylene Linkage:EPDM、EPM)等の材料で作られた筒状体であり、常温で収縮状態となる。この常温収縮チューブを使用する際には、予め常温収縮チューブを押し広げる必要があり、この押し広げた状態(以下「拡径」という)を維持するため、常温収縮チューブ内に設ける支持治具として、一般的にスパイラルコアが用いられている。
【0004】
このスパイラルコアは従来、合成樹脂で作られ、常温収縮チューブに押し潰されない強度を持つ帯状あるいは紐状に加工された中実の成形体を螺旋状の筒体にすることによって形成される。これに拡径された常温収縮チューブを被せることにより、常温収縮チューブは所定の径を維持できる。このようにスパイラルコアに支えられた常温収縮チューブは、当該常温収縮チューブを取り付ける目的の箇所で、スパイラルコア片端の紐、帯状体を他端に導き、他端側へスパイラルコアを取り除くことによって収縮し、目的物を被覆する。
【0005】
図6に従来のスパイラルコアを構成する紐状体の一例の断面図を示す。図6に示す紐状体1は、両側部に互いに嵌合可能な形状の鈎型の嵌合部11、12を有し、合成樹脂を用いて押出機により注型される。また、図7は、従来のスパイラルコアの部分断面図である。
【0006】
この注型された紐状体1を、マンドレルなど、コイル状(螺旋状)に巻き上げるための部材に巻き付け、隣接する紐状体1同士の嵌合部11、12を嵌合させることによって、筒状のスパイラルコア10が形成される(図7参照)。
【0007】
図6及び図7に示す紐状体によって構成される従来のスパイラルコアは、例えば、ポリプロピレン(Polypropylene)樹脂などの高分子材料を使い、高価なダイ、ニップルを用いて押出機により成型され、更に、人手により、マンドレルに巻かれて完成する。なお、従来のスパイラルコアは、拡径された常温収縮チューブが被さる状態において、環境温度で軟化せず、常温収縮チューブの収縮力に対応した強度を有する合成樹脂が用いられことが望ましい。
【特許文献1】特開平9−141742号公報
【特許文献2】特開2002−271970号公報
【特許文献3】実開平7−2692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスパイラルコアにおいては、常温収縮チューブの大型に伴い、スパイラルコア自体の強度を増加させなければならず、スパイラルコアを形成する紐状体の厚みと幅を大きくして大型にする必要がある。
【0009】
これに対応して、合成樹脂を紐状体の材料とするスパイラルコアでは、環境適応性を考慮して、軟化温度が高い合成樹脂を用いることが考えられるが、押し出し成形しにくくなるという問題がある。また、従来の合成樹脂を用いた紐状体は、押し出し成形の後、収縮による変形が生じる。特に、成形される紐状体の厚みと幅が大きい場合、その変形は大きくなり、寸法精度の高い紐状体を成形することは困難であるという問題がある。つまり、紐状体を組み立ててなる大型のスパイラルコアを精度よく製造することは難しい。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、合成樹脂を用いても、被さる常温収縮チューブの大きさに関わらず、その収縮力に十分対応できるとともに、精度良く容易に製造できる常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造およびこのスパイラルコアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造は、拡径された常温収縮チューブが被さる常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造であって、押出成形される紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて筒状に形成されてなり、前記紐状体または前記帯状体は、前記紐状体または前記帯状体の長手方向に延在する中空部を有する構成を採る。
【0012】
この構成によれば、螺旋状に巻いて筒状のスパイラルコアを構成する紐状体または帯状体が、長手方向に延在する中空部を有するため、大型の紐状体または帯状体を押出成形する際においても収縮変形がおきにくい。したがって、合成樹脂を用いて押出成形される紐状体または帯状体は、設定される形状の寸法を有したまま、精度良く成形される。よって、幅や厚みが大きく、高い精度で容易に製造される紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて組み立てることによって、常温収縮チューブの大きさに対応し、且つその収縮力に耐え得る大きさに精度良く容易に製造できる。
【0013】
本発明の常温収縮チューブ用スパイラルコアの製造方法は、紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて筒状に組み上げてなる常温収縮チューブ用スパイラルコアの製造方法であって、樹脂を押出成形して、中空の長尺の紐状体または帯状体を成形する成形工程と、押出成形された前記紐状体または前記帯状体の表面を冷却する表面冷却工程と、表面が冷却された前記紐状体または前記帯状体をサイジングするサイジング工程とを備えるようにした。
【0014】
この方法によれば、押出成形された中空の紐状体または帯状体をサイジングする前に、表面を冷却するため、中空であっても精度良くサイジングが行われ、所定形状の寸法を有した状態で中空の紐状体または帯状体を形成することができる。つまり、大型になっても押出成形する際において収縮変形がおきにくい中空の紐状体または帯状体を精度良く製造できる。そして、これを組み立てることによって精度の高いスパイラルコアとなる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、合成樹脂を用いても、被さる常温収縮チューブの大きさに関わらず、十分対応できるとともに、精度良く容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造を示す全体図である。図1に示す常温収縮チューブ用スパイラルコア100は、長尺の紐状体または帯状体(この実施の形態では、以下「リボン」という)110を螺旋状に巻いて筒状に形成され、螺旋状に巻かれたリボン110の隣接部分110aを互いに接合することによりなる。
【0018】
このスパイラルコア100では、螺旋状に巻き上げられて筒状体を形成するリボン110の先端部111は、筒状体の一端部となる所定位置(ここでは、一端部101)で折り返されて、筒状体の内部に通され、他端部102側に導かれて、筒状体の他端部102から外方に導出されている。この先端部111を含む、筒状体の他端部102から外部に導出されている部分が、スパイラルコア100のテールとなっている。
【0019】
このスパイラルコア100は、テールを他端部102側(矢印A方向)に引いて、リボン110を他端部102側に引き抜くことによって分解除去可能となっている。
【0020】
図2は、図1に示す常温収縮チューブ用スパイラルコア100を形成するリボン110の断面図である。
【0021】
図2に示すリボン110は、可撓性を有する長尺のものであり、被さる常温収縮チューブの収縮しようとする力に耐えうる強度が要求されるとともに、環境温度において軟化しにくく、常温収縮チューブの拡径状態を維持できる材料によって構成される。
【0022】
リボン110は、押出合成樹脂製のものであり、ここでは、無色透明なポリプロピレン(Polypropylene)樹脂からなる。なお、リボン110の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate)樹脂を用いても良い。
【0023】
特に、ポリプロピレン樹脂は、密度が小さいことから軽く、軟化温度が高いので環境対応性があり、引張り強さ、曲げ強さ及び剛性が大きく、耐曲げ疲労性も良好である。更に、ポリプロピレン樹脂は加工性に優れ、透明性、表面光沢は良好で成型収縮率が小さく、成型品の外観及び寸法精度が高くなる。
【0024】
このような性質を持つ材料(ここでは、ポリプロピレン樹脂)からなるリボン110は、リボン110の長手方向に沿って形成された中空部113を有する本体部120と、本体部120の両側面にそれぞれ形成され、互いに嵌合可能な嵌合部130及び被嵌合部140とを備える。
【0025】
本体部120は、ここでは、断面略矩形状に形成され、平行に配置されるリボンの表裏面104、105と、それぞれ一部に嵌合部130及び被嵌合部140が設けられ、外方に向かって湾曲する部分(ここでは一側面106a、他側面107a)を備える側面部106、107とを有する。また、本体部120は、断面視略矩形状となるように中空部113を画成する内周壁122を有する。この断面視略矩形状の内周壁122を構成する各内壁面122a〜122dの交差部分123a〜123dはアールとなっており、これにより、中空部113は、断面視して角に丸みを有する矩形状をなしている。なお、本体部120において中空部113を挟む表裏面104、105側のそれぞれの肉厚122e、122fは、それぞれ均一の厚みとなるように成形されている。
【0026】
嵌合部130及び被嵌合部140は、互いに嵌合する形状をなし、ここでは、それぞれ鈎型状をなし、本体部120の両側面側に、リボン110の軸心を中心に点対称をなして形成されている。嵌合部130は、被嵌合部140に対して、リボン110(紐状体または帯状体)の隣り合う方向への移動を規制されるとともに筒状体(ここではスパイラルコア100自体)の軸方向と交差する方向に取り外し可能に嵌合されている(図3参照)。詳細には、嵌合部130は、本体部120の一側面106aから、裏面105と面一で幅方向に張り出す張り出し部131と、一側面106aから離間する張り出し部131の先端から表面104側に突出する突出部133とを有する。
【0027】
また、被嵌合部140は、本体部120の他側面107aから、表面104と面一で幅方向に張り出す張り出し部141と、他側面107aから離間する張り出し部141の先端から裏面105側に突出する突出部143とを有する。
【0028】
張り出し部131、141の張り出した先端面131a、141aは、それぞれ張り出し方向(幅方向)に向かって凸状に湾曲し、嵌合部130が被嵌合部140に嵌合する際に、隣接するリボン110の側面部107、106における他側面107a及び一側面106aと接触する。
【0029】
突出部133、143は、本体部120の軸方向、つまり、本体部120の長手方向(延在方向)に向かって延在しており、突出部133、143の先端部133a、143aは、側面部106、107において、それぞれ対向する側面106a、107a側に向かって屈曲し、対向する側面106a、107aと、張り出し部131、141とでそれぞれ窪み部115、117を形成している。窪み部115には、嵌合部130が被嵌合部140に嵌合する際に、隣接するリボン110の他側面側の突出部143が内嵌するとともに、他側面側の窪み部117には一側面側の突出部133が内嵌する。なお、窪み部115、117はそれぞれ、対向する内側の両側面で、突出部133、143と接触する。
【0030】
なお、窪み部115、117は、突出部133、143の先端部133a、143aがそれぞれ本体部120側に向かって屈曲しているため、それぞれ、底面から開口部側に向かって狭窄した形状(ここでは、蟻溝状)となっている。
【0031】
このように構成される嵌合部130と被嵌合部140とを嵌合させることによって、螺旋状に巻かれ、軸方向に隣接するリボン110同士は、その隣接部分110a(図1参照)で接合される。
【0032】
図3は、常温収縮チューブ用スパイラルコア100を形成するリボン110同士の接合状態を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように隣り合うリボン110同士は、突出部133を窪み部117に、突出部143を窪み部115にそれぞれ挿入して嵌合されている。このとき、隣接するリボン110の表面104同士及び裏面105同士はそれぞれ、平滑な面一となっており、重ね合わせの段差や各面が突起になっておらず重ね厚さBが略均一となっている。
【0034】
図4は、図3におけるリボン110同士の嵌合状態を示す拡大図である。
【0035】
リボン110を螺旋状に巻き上げ、隣接するリボン110同士の嵌合部130と被嵌合部140とを接合する際には、突出部133を窪み部117に、突出部143を窪み部115に挿入する。
【0036】
すると、蟻溝状の窪み部115、117にそれぞれ、先端部133a、143aが屈曲する突出部143、133がそれぞれ嵌合する。また、同時に、それぞれ湾曲面であるとともに対向する張り出し部の先端面131aと側面107aとが互いに強固に接する。
【0037】
この突出部133,143の先端部133a、143aと、窪み部117、115とが係合するとともに、先端面131aと他側面107aとが接触しているため、先端部133a、143aと窪み部117、115の互いに対向する面同士が押し付けられた状態となる。よって、両者は強固に接合された状態となっている。
【0038】
次に、常温収縮チューブ用スパイラルコア100の製造方法について説明する。
【0039】
図5は、常温収縮チューブ用スパイラルコアを製造する工程を示す図である。
【0040】
図5に示すようにスパイラルコア100を構成するリボン110の製造には、ポリプロピレンなどの材料となる材料Jを加工するために、押出金型200とサイジング金型300とを用いる。なお、ここでは、サイジング金型300は、押出金型200を介して押し出されるリボン押出材J2を冷却して固化する冷却水槽400に設けられている。
【0041】
押出金型200は、ここでは、樹脂Jを押し出す押出機220に取り付けられ、樹脂Jは、押出金型200を介して、長尺の中空部を有するスパイラルコア100となるリボン押出材J2として矢印C方向に押し出される。
【0042】
サイジング金型300は、押し出し金型200から所定間隔D、ここでは、約300mm離間して配置されており、押出金型200を介して押し出されるリボン押出材J2を冷却して固化する冷却水槽400に備え付けられている。なお、冷却水槽400により冷却されるリボン押出材J2は、引き抜き機500によって引き抜かれる。
【0043】
サイジング金型300は、押出成形の寸法精度を高めるために、内部で真空引きを行いつつ、リボン押出材J2の外表面を金型300に密着させるために、リボン押出材J2を中空にして肉厚を限りなく均一にして整形する。また、サイジング金型300は、リボン押出材J2を中空にして断面係数を小さくして曲げ強度や捻り強度を低減することなく巻き加工及び解体引き抜き作業を容易ならしめる。
【0044】
これら、押出金型200とサイジング金型300との間には、サイジング金型300の近傍に、風冷装置600が配置され、サイジング金型300内に挿入されるリボン押出材J2にエアを吹き付ける。
【0045】
風冷装置600によるエアの吹き付けは、サイジング金型300に挿入される前のリボン押出材J2の外表面を少し硬化させる。すなわち、押出金型200を介して押し出されたリボン押出材J2は、サイジング金型300を介して成形される前に、エアの吹き付けによって、外表面が固化される。
【0046】
そして、エアにより外表面が固化されたリボン押出材J2は、サイジング金型300により整形された後、押出装置220の押出動作及び引き抜き機500による引き抜き動作によって、冷却水槽400内に挿入される。
【0047】
このように、リボン110を製造する際に、サイジング金型300によるサイジング工程の前に、リボン押出材J2へのエア吹き付け工程を行うため、中空部113(図2及び図3参照)を有するリボン110における成形品としての形状及び寸法の精度は、より高いものとなっている。
【0048】
なお、所定間隔Dは、長尺の中空部を有するスパイラルコア100となるリボン押出材J2が形状及び寸法精度の良好な注型品とするために設けられた風冷装置600によるエアで、リボン押出材J2の外表面を冷却硬化させるための距離であり、約300mmが最適である。所定間隔Dはリボン形状により異なり、例えば、従来の長尺の中空部を持たない中実したリボンでは約200mmとなる。
【0049】
このように成型されたリボン110は、図示しないマンドレルなどの所定の巻き芯を軸に、嵌合部130と被嵌合部140とを嵌合させつつ適当径及び適当長さで自在に巻き加工され、これによって常温収縮チューブ用スパイラルコア100が組み立てられる。この巻き上げられたスパイラルコア100では、軸方向で隣接するリボン110同士において、被嵌合部140が一端部101(図1参照)側、嵌合部130が他端部140側となっており、筒状体を構成するリボン110は、筒状体内において、一端部101側のリボン110を他端部方向に引っ張ることで他端部102側で隣接するリボン110から外れるように嵌合している。
【0050】
なお、本実施の形態では、嵌合部130及び被嵌合部140の形状は、リボン110の断面中心に対して点対称の形状をなしているため、被嵌合部140を他端部102側に位置させ、嵌合部130を一端部101側に位置させて筒状体を組み立てても良い。リボン110を巻き加工した際、スパイラルコア100の外表面は、嵌合部130及び被嵌合部140の重ね合わせが平滑で強固に嵌合状態が保たれる。
【0051】
また、リボン110は無色透明であるため、巻き加工する際にリボン110自体への異物の混入を容易に検出できる。
【0052】
組み上げたスパイラルコア100(図1参照)に、図示しない常温収縮チューブ用を被せる。そして、常温収縮チューブを被せたスパイラルコア100を、目的とする被被覆物上に移動した後、テール部であるリボン110の先端部111を引き抜く方向(図1及び図3に示す矢印A方向)に引張る。
【0053】
これにより、筒状体を構成するリボン110は、スパイラルコア100の一端部101側から捻れながら他端部102側に引かれる。すると、一端部101側から隣合うリボン110同士は、嵌合状態の嵌合部130と被嵌合部140において、隣り合うリボン110同士の突出部133、143はそれぞれ窪み部117、115から捻られながら外れる。
【0054】
このとき、張り出し部131の先端面と、側面部とは互いに対向する方向に向かって凸状に湾曲し、両者は線接触にて接合されているため、テールを引く力の多くは、突出部133、143と窪み部117、115の嵌合部分に作用する。
【0055】
よって、突出部133、143は窪み部117、115から捻れながら一定の力で一定の長さに引き剥がされ、スパイラルコア100は、一端部101側から他端部102側に向かって解体されていく。これにより、常温収縮チューブも一端部側から他端部側に向かって収縮し、リボン110を引き抜き終わることで、被被覆物上に常温収縮チューブを密着設置できる。
【0056】
また、リボン110の引き抜きを停止した場合、つまり、突出部133、143の窪み部117、115に対する引き剥がしを停止した場合でも、両者の係止状態は維持され、スパイラルコア100の解体における引き抜き時の自走を防止することができる。
【0057】
本実施の形態によれば、常温収縮チューブ用スパイラルコア100を構成するリボン110が、ポリプロピレン等の合成樹脂材料によって形成されているため、比重が小さく(軽い)、さらに、軟化温度が著しく高くなるとともに、引張り強さ、曲げ強さ及び剛性なども大きくなり、耐曲げ疲労性も改善されたものとなる。
【0058】
また、押出成形性されたリボン110を螺旋状に巻き上げてスパイラルコア100を組み上げる際に、リボン110自体が、透明性を有するとともに、成型後の製品として外観及び寸法精度が高いものとなっている。
【0059】
また、スパイラルコア100では、筒状体を解体した後に残される使用後のリボン110がポリプロピレン樹脂からなる。このため、スパイラルコア100の構成によれば、使用済みのリボン110が焼却によって廃棄された際に、水と二酸化炭素のみが発生し、大気汚染の原因となる物質を放出することがない。よって、環境的にも優れたものとなっている。また、使用後のリボン110に熱を加えて溶かし、再び押し出し成形したリボン110として再利用できる。
【0060】
ここで、リボン110の材料をポリプロピレン樹脂としても、被せられる常温収縮チューブ(図示しない)が大型になると、自ずと、スパイラルコア100の強度を増す必要がある。つまり、常温収縮チューブが厚く、長い形状になると収縮力が増し、このような常温収縮チューブの拡径状態を保持するための強度を確保すべくスパイラルコア100は、大口径、長尺になる。これに伴い、スパイラルコア100を構成するリボン110は、スパイラルコア100の収縮力に耐え得る強度を有するように、幅が広く、厚い構造のものが要求される。
【0061】
このため、リボン材料として用いられる軟化温度が高いポリプロピレン樹脂は、押し出し成形しにくくなり、また、如何に収縮率が小さいとはいえ、ポリプロピレン樹脂は押出成形後、収縮により変形しやすい。このため精度よく注型するために、ポリプロピレン樹脂の冷却による収縮を如何に制御するかが重要となる。これに対応して、リボン110の材料として、高分子材料で密度の小さい物質を選定することが考えられる。
【0062】
しかし、高分子材料で密度の小さい物質を用いて、従来構造と同様のリボンを成形しても、製品としての重量の増加は避けられず、重くならざるを得ない。
【0063】
本実施の形態では、リボン110が大きくなった場合でも、リボン110を精度よく成形するためにリボン110の肉厚部分を中空にして軽量、高強度のものとしている。また、可撓性があるため螺旋状に巻き上げてスパイラルコア100である筒状体に組み立て易くなっている。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、リボン110の材料として合成樹脂、ここではポリプロピレンを用いても、被せられる常温収縮チューブの大きさに関わらず、その拡径状態を維持することができるとともに、精度良く容易に形成できる。
【0065】
本発明の第1の態様に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造は、拡径された常温収縮チューブが被さる常温収縮チューブ用スパイラルコアであって、押出成形される紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて筒状に形成されてなり、前記紐状体または前記帯状体は、前記紐状体または前記帯状体の長手方向に延在する中空部を有する構成を採る。
【0066】
この構成によれば、螺旋状に巻いて筒状のスパイラルコアを構成する紐状体または帯状体が、長手方向に延在する中空部を有するため、大型の紐状体または帯状体を押出成形する際においても収縮変形がおきにくい。したがって、例えば、合成樹脂を用いて押出成形される紐状体または帯状体は、設定される形状の寸法を有したまま、精度良く成形される。よって、幅や厚みが大きく、高い精度で容易に製造される紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて組み立てることによって、常温収縮チューブの大きさに対応し、且つその収縮力に耐え得る大きさに精度良く容易に製造できる。
【0067】
本発明の第2の態様に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造は、上記構成において、前記紐状体または前記帯状体は、合成樹脂からなる構成を採る。
【0068】
この構成によれば、紐状体または帯状体は合成樹脂製であるため、押出成形の際に加工が施しやすいとともに、耐久性、耐水性に優れたものとなる。
【0069】
なお、上記構成において、前記紐状体または前記帯状体は、ポリプロピレンからなる構成を採ってもよい。この構成によれば、紐状体または前記帯状体がポリプロピレンからなるため、加工性に優れるとともに、透明性、表面光沢性を有し、さらに成型収縮率が小さくなり、成形品として外観に優れ、寸法精度の向上が図られたものとなる。
【0070】
本発明の第3の態様に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造は、上記構成において、前記紐状体または前記帯状体の軸を対称中心とする両側部に、互いに嵌合可能な嵌合部と被嵌合部とがそれぞれ設けられ、螺旋状に巻かれた前記紐状体または前記帯状体の隣り合う部分同士は、互いに対向する前記嵌合部と被嵌合部の嵌合によって筒状体に形成され、前記嵌合部は、前記被嵌合部に対して、前記紐状体または前記帯状体の隣り合う方向への移動が規制されるとともに前記筒状体の軸方向と交差する方向に取り外し可能に嵌合され、前記嵌合部において、前記筒状体の軸方向と交差する方向で前記被嵌合部に接触する接触面は、前記被嵌合部の接触面に向かって突出した曲面である構成を採る。
【0071】
この構成によれば、螺旋状に巻かれて筒状体をなす紐状体または帯状体の隣り合う部分同士は、互いに対向する嵌合部と被嵌合部との嵌合によって、紐状体または帯状体の隣り合う方向への移動が規制されるとともに筒状体の軸方向と交差する方向に取り外し可能にに接続されている。また、嵌合部において、筒状体の軸方向と交差する方向で被嵌合部に接触する接触面は、被嵌合部の接触面に向かって突出した曲面であるため、嵌合部の接触面では、被嵌合部に対し、被嵌合部へ向かって突出した断面山形状をなし、その山形状の先端部分で接触することとなり、両者が面接触する場合よりも小さい接触領域となっている。
【0072】
このため、筒状体をなす紐状体または帯状体の一方の嵌合部または被嵌合部を筒状体の軸方向と交差する方向に取り外して、スパイラルコアを解体する際に、嵌合部は被嵌合部から容易に取り外すことができる。
【0073】
本発明の第4の態様に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの製造方法は、前記紐状体または前記帯状体を螺旋状に巻いて筒状に組み上げる常温収縮チューブ用スパイラルコアの製造方法であって、樹脂を押出成形して、中空の長尺の紐状体または帯状体を成形する成形工程と、押出成形された前記紐状体または前記帯状体の表面を冷却する表面冷却工程と、表面が冷却された前記紐状体または前記帯状体をサイジングするサイジング工程とを備えるようにした。
【0074】
この方法によれば、押出成形された中空の紐状体または帯状体をサイジングする前に、表面を冷却するため、中空であっても精度良くサイジングが行われ、所定形状の寸法を有した状態で中空の紐状体または帯状体を形成することができる。つまり、大型になっても押出成形する際において収縮変形がおきにくい中空の紐状体または帯状体を精度良く製造できる。そして、これを組み立てることによって精度の高いスパイラルコアとなる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造は、合成樹脂を用いても、被さる常温収縮チューブの大きさに関わらず、十分対応できるとともに、精度良く容易に形成できる効果を有し、電力ケーブルの接続部等に用いられるものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施の形態に係る常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造を示す全体図
【図2】同常温収縮チューブ用スパイラルコアを形成するリボンの断面図
【図3】同常温収縮チューブ用スパイラルコアを形成するリボン同士の接合状態を示す断面図
【図4】図3におけるリボン同士の嵌合状態を示す拡大図
【図5】常温収縮チューブ用スパイラルコアを製造する工程を示す図
【図6】従来のスパイラルコアを構成する紐状体の断面図
【図7】従来のスパイラルコアの部分断面図
【符号の説明】
【0077】
J2 リボン押出材
100 スパイラルコア
101 一端部
102 他端部
104 表面
105 裏面
106a、107a 側面
110 リボン
110a 隣接部分
111 先端部
113 中空部
115、117 窪み部
120 本体部
122 内周壁
122e 肉厚
130 嵌合部
131a 先端面
133、143 突出部
133a、143a 先端部
140 被嵌合部
200 押出金型
220 押出機
300 サイジング金型
600 風冷装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡径された常温収縮チューブが被さる常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造であって、
押出成形される紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて筒状に形成されてなり、
前記紐状体または前記帯状体は、前記紐状体または前記帯状体の長手方向に延在する中空部を有することを特徴とする常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造。
【請求項2】
前記紐状体または前記帯状体は、合成樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造。
【請求項3】
前記紐状体または前記帯状体には、前記紐状体または前記帯状体の軸を対称中心とする両側部に、互いに嵌合可能な嵌合部と被嵌合部とがそれぞれ設けられ、
螺旋状に巻かれた前記紐状体または前記帯状体の隣り合う部分同士は、互いに対向する前記嵌合部と被嵌合部の嵌合によって筒状体に形成され、
前記嵌合部は、前記被嵌合部に対して、前記紐状体または前記帯状体の隣り合う方向への移動が規制されるとともに前記筒状体の軸方向と交差する方向に取り外し可能に嵌合され、
前記嵌合部において、前記筒状体の軸方向と交差する方向で前記被嵌合部に接触する接触面は、前記被嵌合部の接触面に向かって突出した曲面であることを特徴とする請求項1記載の常温収縮チューブ用スパイラルコアの構造。
【請求項4】
紐状体または帯状体を螺旋状に巻いて筒状に組み上げる常温収縮チューブ用スパイラルコアの製造方法であって、
樹脂を押出成形して、中空の長尺の紐状体または帯状体を成形する成形工程と、
押出成形された前記紐状体または前記帯状体の表面を冷却する表面冷却工程と、
表面が冷却された前記紐状体または前記帯状体をサイジングするサイジング工程と、を備えることを特徴とする常温収縮チューブ用スパイラルコアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−187106(P2006−187106A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377493(P2004−377493)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(502122521)株式会社エクシム (25)
【出願人】(302004263)角一化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】