説明

干渉チェック装置及びプログラム

【課題】ワークとロボットからなる複数の可動物体間の干渉をチェックして、干渉が発生する動作プログラムを自動で修正する。
【解決手段】取得手段21Aが、複数の可動物体の形状データ及び動作プログラムを取得する。モデル作成手段21Bが、形状データに基づいて、複数の可動物体モデルを作成する。シミュレーション手段21が、動作プログラムと可動物体モデルに基づいて、複数の可動物体モデルの動作をシミュレーションする。干渉判定手段22が、シミュレーション結果に基づいて、複数の可動物体モデル間の干渉の有無を判定する。回避動作設定手段25Aが、干渉する可動物体モデルの動作プログラムに干渉の回避動作を設定する。動作プログラム検証手段25Bが、回避動作を設定した動作プログラムの干渉の有無を判定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークとロボットからなる複数の物体間の干渉をチェックする干渉チェック装置とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットによりワークに対して作業するときには、動作する複数の物体間の干渉を防止する必要がある。そのため、従来は、例えば、実際にロボットやワークを動作させて、干渉が発生する都度、干渉する物体の動作を変更して、各物体の動作プログラムを手動で修正する。ところが、手動での修正作業は、手間や時間がかかり、工数が多くなることがある。
【0003】
また、従来、ロボットとワークの動作をオフラインでシミュレーションし、物体間の干渉を自動でチェックする干渉チェック装置が知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、この従来の干渉チェック装置では、干渉が発生するときに、複数の動作プログラムを手動で修正する必要がある。従って、動作プログラムの修正に手間や時間がかかるため、作業負担を軽減するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−78017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、ワークとロボットからなる複数の物体間の干渉をシミュレーションによりチェックして、干渉が発生する動作プログラムを自動で簡便に修正することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1以上のワークと、ワークに対して作業する1以上のロボットからなる複数の可動物体間の干渉をチェックする干渉チェック装置であって、複数の可動物体の形状データ及び複数のステップからなる動作プログラムを取得する取得手段と、形状データに基づいて、複数の可動物体の可動物体モデルを作成するモデル作成手段と、動作プログラムと可動物体モデルに基づいて、複数の可動物体モデルの動作をシミュレーションするシミュレーション手段と、シミュレーション結果に基づいて、複数の可動物体モデル間の干渉の有無を判定する干渉判定手段と、干渉する可動物体モデルの動作プログラムに干渉の回避動作を設定する回避動作設定手段と、回避動作を設定した動作プログラムに基づいて、シミュレーション手段及び干渉判定手段により干渉の有無を判定させる動作プログラム検証手段と、を備えた干渉チェック装置である。
また、本発明は、コンピュータを、干渉チェック装置の各手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークとロボットからなる複数の物体間の干渉をシミュレーションによりチェックして、干渉が発生する動作プログラムを自動で簡便に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態のシートパッドの製造装置を示す概略構成図である。
【図2】干渉チェック装置の機能ブロック図である。
【図3】干渉チェック装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の干渉チェック装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の干渉チェック装置は、例えば、ロボットによりワークに対して作業して各種製品を製造する製造装置や製造ラインで使用される。干渉チェック装置は、相対的に動作する複数の可動物体(動作物体)の動作を仮想空間でシミュレーションして、可動物体間の干渉をチェックする。また、干渉チェック装置は、可動物体の接触や衝突等、可動物体間で発生する動作や作業の妨げとなる状況を干渉としてチェックする。なお、ワークとは、ロボットが作業する対象物のことをいう。
【0010】
本実施形態では、発泡成形体である車両用シートパッドの製造装置(以下、製造装置という)を例に採り、可動物体の干渉チェックについて説明する。シートパッドは、自動車等の車両の座席内に設けられるパッドである。シートパッドは、各特性の樹脂フォーム(例えば、ポリウレタンフォーム)により、座席内の各部の形状に応じた形状に成形される。このシートパッドは、発泡成形用樹脂の各種原液に発泡剤や添加剤を添加した複数の原料により製造される。製造装置は、複数の原料を成形型内に充填し、原料を発泡成形してシートパッドを製造する。
【0011】
図1は、本実施形態の製造装置を示す概略構成図である。
製造装置1は、図示のように、1以上(図1では2つ)のワーク2と、ワーク2を搬送する搬送装置3と、ワーク2に対して作業する1以上(図1では2つ)のロボット4と、干渉チェック装置5と、ハブ6とを備えている。干渉チェック装置5は、ハブ6を介して、搬送装置3と各ロボット4に設けられた制御装置(図示せず)に接続されている。干渉チェック装置5は、製造装置1に設けられたワーク2とロボット4からなる複数の可動物体間の干渉を、シミュレーションにより予めチェックする。なお、ワーク2とロボット4をまとめて可動物体という。
【0012】
ワーク2は、シートパッドの成形型であり、上型2Aと下型2Bからなる。上型2Aと下型2Bは、組み合わされて内部にキャビティを区画する。シートパッドの成形時には、上型2Aを下型2Bから離して、下型2B内に発泡成形の原料を注入する。続いて、上型2Aを下型2Bに組み合わせ、キャビティ内で原料を発泡させる。これにより、原料を成形及び硬化させて、クッション状の発泡成形体(シートパッド)を成形する。ワーク2を開閉装置(図示せず)により開閉(図1では閉じたワーク2のみ示す)して、原料の注入とシートパッドの取り出しとが行われる。
【0013】
搬送装置3は、環状(図1では一部のみ示す)に配置されたコンベヤ3Aと、コンベヤ3Aを循環させる駆動装置(図示せず)とを有する。コンベヤ3A上には、複数のワーク2が一定間隔で配置される。搬送装置3は、コンベヤ3Aを駆動してワーク2を所定速度で搬送し、複数のワーク2を循環させる。製造装置1は、複数のロボット4により、循環する複数のワーク2に原料を注入する。また、原料の注入と硬化に連動して循環中のワーク2を開閉し、シートパッドを連続して製造する。
【0014】
ロボット4は、産業用(作業用)の多関節ロボットである。ロボット4は、旋回軸や回転軸を含む複数(例えば、6つ)の可動軸と、可動軸を駆動する駆動装置(図示せず)とを有する。また、ロボット4の先端には、作業ツールとして、発泡成形の原料を注入する注入ヘッド4Aが取り付けられている。ロボット4は、可動軸を駆動して、注入ヘッド4Aを任意の向きや状態に配置しつつ移動可能範囲内の任意の位置に移動させる。原料は、注入ヘッド4Aのノズルから射出されて、ワーク2内に注入される。
【0015】
複数のロボット4とワーク2(搬送装置3)は、予め設定された動作プログラムに基づいて動作する。これにより、各ロボット4は、それぞれワーク2に対して作業を行う。複数のロボット4は、それぞれの動作プログラムに規定されたパターンで動作して、1つのワーク2に対して所定のタイミングで原料を注入する。ワーク2には、複数の原料が同時に注入されて、上記のようにシートパッドが製造される。
【0016】
干渉チェック装置5は、データ設定装置(以下、設定装置という)10と動作プログラム作成装置(以下、作成装置という)20とを有する。設定装置10と作成装置20は、例えばパーソナルコンピュータからなり、通信装置により接続されている。また、設定装置10と作成装置20は、CPU(Central Processing Unit)と、各種コンピュータプログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、CPUが直接アクセスするデータを一時的に格納するRAM(Random Access Memory)とを有する。設定装置10と作成装置20は、CPUによりコンピュータプログラムを実行することで得られる機能実現手段として、干渉チェックに関する処理を実行する各手段(機能部)を有する。
【0017】
図2は、干渉チェック装置5の機能ブロック図である。
干渉チェック装置5内で、図示のように、設定装置10と作成装置20は、互いにデータを送受信する。設定装置10は、入力手段11と、設定データの記憶手段12と、表示手段13と、送信手段14とを有する。入力手段11は、オペレータがデータや指令の入力に使用するキーボード、マウス、又は、データ記録媒体の読取装置からなる。記憶手段12は、入力手段11により入力されたデータ、及び、作成装置20から受信したデータを記憶する。表示手段13は、干渉チェックに関する各種情報やチェック結果等を表示する。送信手段14は、搬送装置3とロボット4の制御装置に、それぞれを動作させる動作プログラムや制御指令を送信する。
【0018】
オペレータは、入力手段11により、複数の可動物体(ワーク2とロボット4)の形状データ及び動作パターンを入力する。形状データは、可動物体の3次元形状を表すデータである。ここでは、形状データは、CAD(Computer Aided Design)データからなる。形状データには、例えば、ワーク2とロボット4の外形、寸法、及び、可動軸のデータが設定される。また、オペレータは、動作パターンとして、ワーク2の移動速度やロボット4の動作をステップ毎に入力する。ロボット4の動作に対応して、例えば、ロボット4の所定箇所の各ステップにおける位置、ロボット4に設けられた複数の可動軸の動作、又は、ロボット4の動作速度が入力される。複数のワーク2の配置間隔や各ロボット4の設置位置も入力される。入力されたデータは、干渉チェックの基準データとして設定され、記憶手段12に記憶される。
【0019】
設定装置10は、オペレータにより設定された動作パターンに基づいて、複数の可動物体毎に、複数のステップ(動作ステップ)からなる動作プログラムを作成する。各動作プログラムには、各可動物体の動作が、連続するステップに分解されて設定される。複数の動作プログラムは、基準(初期)動作プログラムとして、記憶手段12に記憶される。記憶手段12に記憶された各データは、作成装置20により読み出されて使用される。
【0020】
作成装置20は、シミュレーション手段21と、干渉判定手段22と、干渉データの記憶手段23と、表示手段24と、動作プログラム修正手段(以下、修正手段という)25とを有する。作成装置20は、シミュレーション手段21によりシミュレートして、干渉判定手段22により可動物体の干渉を判定する。また、作成装置20は、干渉が発生する動作プログラムを修正手段25により修正して、干渉が発生しない動作プログラムを自動で作成する。以下、作成装置20の各手段について詳しく説明する。
【0021】
シミュレーション手段21は、設定装置10からデータを取得する取得手段21Aと、モデル作成手段21Bと、軌跡演算手段21Cとを有する。取得手段21Aは、設定装置10の記憶手段12に記憶された基準データから、シミュレーション処理に必要な所定データを取得する。その際、取得手段21Aは、記憶手段12から、複数の可動物体の形状データ及び複数のステップからなる動作プログラムを取得する。
【0022】
モデル作成手段21Bは、複数の可動物体の形状データに基づいて、複数の可動物体の可動物体モデルをそれぞれ作成する。可動物体モデルは、仮想空間で可動物体をモデル化したロボット4とワーク2のモデルであり、複数の可動物体毎に作成される。モデル作成手段21Bは、形状データに基づいて可動物体の立体形状を演算し、多面体で構成される可動物体の立体形状を作成する。これにより、シミュレーションに使用するロボットモデルとワークモデルが作成される。
【0023】
シミュレーション手段21は、複数の可動物体の動作プログラムと可動物体モデルに基づいて、複数の可動物体モデルの動作をシミュレーションする。その際、軌跡演算手段21Cが、取得手段21Aが取得した基準データに基づいて、複数の可動物体モデルを仮想空間に配置する。また、軌跡演算手段21Cは、各可動物体モデルの動作プログラムに基づく動きを演算するとともに、動作する可動物体モデルの位置と軌跡を演算する。シミュレーション手段21は、シミュレーションにより、複数の可動物体の動作を可動物体モデルで再現する。即ち、シミュレーション手段21は、複数のロボットモデルが複数のワークモデルに対して作業(例えば、原料の注入作業)するときの動作や、作業の間のロボットモデルとワークモデルの動作を再現する。
【0024】
干渉判定手段22は、シミュレーション手段21によるシミュレーション結果に基づいて、複数の可動物体モデル間の干渉の有無を判定する。干渉判定手段22は、位置対比手段22Aと干渉領域判別手段22Bとを有する。位置対比手段22Aは、動作プログラムのステップ毎に、複数の可動物体モデルの位置を対比する。干渉領域判別手段22Bは、位置対比手段22Aによる位置の対比結果に基づいて、ステップ毎に、複数の可動物体モデル間の干渉領域を判別する。
【0025】
ここでは、複数の可動物体モデルで、原点が同じ共通する座標系を使用する。この同一の座標系に基づいて、各可動物体モデルの表面や内部の位置(座標)を表す。位置対比手段22Aは、複数の可動物体モデルの座標を対比する。干渉領域判別手段22Bは、対比した可動物体モデルの間で、座標が重複する部分を干渉領域として判別する。干渉判定手段22は、干渉領域が有るときは、可動物体モデル同士が干渉すると判定し、干渉領域が無いときは、可動物体モデル同士が干渉しないと判定する。
【0026】
干渉判定手段22は、動作プログラムのステップ毎に、ロボットモデル同士、又は、ロボットモデルとワークモデルの干渉の有無を判定する。また、干渉判定手段22は、可動物体モデルの干渉が発生する位置(干渉位置という)を判定し、干渉領域に基づいて、干渉位置同士が重なり合う量(干渉量という)を判定する。干渉判定手段22の判定結果は、記憶手段23の判定結果記憶手段23Aに記憶される。判定結果記憶手段23Aには、例えば、干渉の有無、干渉する可動物体モデル、干渉位置(座標)、干渉量、干渉領域を記憶する。干渉判定手段22は、記憶手段23の動作プログラム記憶手段23Bに、干渉が発生した動作プログラムと干渉が発生するステップも記憶させる。
【0027】
作成装置20は、表示手段24に、干渉の判定結果や可動物体モデルの動作を表示する。表示手段24には、干渉の有無が、動作プログラムのステップ毎に表示される。また、作成装置20は、干渉が発生するときの可動物体モデルの動作を、表示手段24上で再現する。表示手段24への表示内容は、設定装置10へ送信されて、設定装置10の表示手段13へも表示される。
【0028】
修正手段25は、回避動作設定手段25Aと動作プログラム検証手段(以下、検証手段という)25Bとを有する。回避動作設定手段25Aは、干渉判定手段22により干渉が有ると判定されたときに、干渉する可動物体モデルの動作プログラムに、それぞれ干渉の回避動作を設定する。干渉の回避動作は、回避動作設定手段25Aにより、予め設定された条件や回避パターンに基づいて、干渉が発生するステップ毎に算出又は決定される。
【0029】
その際、回避動作設定手段25Aは、ロボット4の動作プログラムに設定されたロボット4の複数の可動軸の動作を、干渉を回避するように変更する。具体的には、可動軸の駆動装置へ出力する動作のための指令値(出力値)を変更して、ロボット4の動作を修正する。これにより、ロボット4の可動軸の動作、各部の位置、及び、動作軌道が変更される。また、回避動作設定手段25Aは、干渉を回避する動作を設定したステップを新たに作成して、可動物体の動作プログラムに、干渉の回避動作ステップを追加する。或いは、回避動作設定手段25Aは、可動物体同士の干渉時の動作や位置がずれるように、動作プログラムに設定された可動物体の動作速度(又は動作時間)を変更する。
【0030】
回避動作設定手段25Aは、以上の軸動作変更手段、ステップ追加手段、及び、速度変更手段を有する。各手段により、回避動作設定手段25Aは、各動作プログラムの干渉が有るステップ毎に、干渉を回避するための動作を設定する。修正手段25は、回避動作設定手段25Aにより動作プログラムを修正した後、修正した動作プログラムを検証手段25Bにより検証する。検証手段25Bは、回避動作を設定した動作プログラムに基づいて、シミュレーション手段21及び干渉判定手段22により干渉の有無を判定させる。シミュレーション手段21と干渉判定手段22は、動作プログラムと可動物体モデルに基づいて、上記と同様にして、それぞれシミュレーションと干渉の判定を行う。
【0031】
作成装置20は、オペレータからの要求に応じて、以上の処理を実行する。作成装置20は、全ての動作プログラムの干渉の有無を判定して、干渉が発生する全ての動作プログラムを修正する。修正後の動作プログラムは、記憶手段23に記憶される。また、作成装置20は、修正手段25により、動作プログラムの修正と検証を、干渉が発生しなくなるまで繰り返す。これにより、干渉が発生しない動作プログラムを作成して、可動物体の動作を修正する。最初の判定で干渉が発生しないと判定された動作プログラムは、そのまま記憶手段23に記憶される。
【0032】
干渉チェック装置5は、作成装置20により、複数の可動物体モデルの干渉をチェックして、干渉が発生する動作プログラムと可動物体の動作を予め修正する。干渉チェック装置5は、全ての動作プログラムに干渉が発生しないことが確認できた後に、送信手段14により、動作プログラムを、搬送装置3とロボット4の制御装置へ送信する。シートパッドの製造時に、搬送装置3は、ワーク2の動作プログラムに基づいて動作して、複数のワーク2を搬送する。複数のロボット4は、それぞれの動作プログラムに基づいて動作して、ワーク2に対して作業を行う。ワーク2には、ロボット4から原料が注入される。
【0033】
次に、干渉チェック装置5により干渉をチェックする手順について説明する。
図3は、干渉チェック装置5の処理手順を示すフローチャートである。
まず、オペレータが、設定装置10を操作して、入力手段11により、複数の可動物体(ワーク2とロボット4)の形状データ及び動作パターンを入力する。オペレータは、製造装置1内で動作する全ての可動物体の形状データ、動作パターン、及び、予め定められた所定データを入力する。入力されたデータは、図示のように、基準データとして設定され(S101)、記憶手段12に記憶される(S102)。設定装置10は、動作パターンに基づいて、複数の可動物体の動作プログラムを作成し、動作プログラムを基準データとして記憶手段12に記憶する。
【0034】
続いて、オペレータが処理開始を指示したときに、取得手段21Aが、設定装置10から、所定の基準データを取得する。取得手段21Aは、製造装置1内に設けられたシミュレーション対象である複数の可動物体の形状データ及び動作プログラムを取得する。取得した形状データに基づいて、モデル作成手段21Bにより、複数の可動物体モデルを作成する。動作プログラムと可動物体モデルに基づいて、シミュレーション手段21により、複数の可動物体モデルの動作をシミュレーションする(S103)。シミュレーション結果に基づいて、干渉判定手段22により、上記のように可動物体モデル同士の干渉領域を判別し(S104)、複数の可動物体モデル間の干渉の有無を判定する(S105)。
【0035】
判定の結果、全ての動作プログラムに干渉が無いと判定されたときには(S105−NO)、送信手段14により、複数の動作プログラムを、それぞれの送信先へ送信する(S106)。送信完了後に処理を終了する。これに対し、干渉が有ると判定されたときには(S105−YES)、動作プログラムの干渉が発生するステップ(干渉ステップという)を記憶する。また、干渉の判定結果を設定装置10へ送信して、表示手段13へ表示する(S107)。次に、回避動作設定手段25Aにより、干渉が有る全ての動作プログラムに干渉の回避動作を設定して、動作プログラムを修正する。回避動作設定手段25Aは、動作プログラムの干渉ステップ毎に、ロボット4の可動軸(駆動装置)への出力値を変更する。これにより、動作プログラムに設定されたロボット4の可動軸の動作を変更して(S108)、干渉の回避動作を設定する。
【0036】
干渉が有る全ての動作プログラムとロボット4の動作を修正した後、検証手段25Bにより、修正後の動作プログラムを検証する(S109)。検証手段25Bは、可動軸の動作を変更した動作プログラムと可動物体モデルにより、シミュレーション手段21及び干渉判定手段22に干渉の有無を判定させる。判定の結果、干渉が無いと判定されたときには(S110−NO)、送信手段14により、動作プログラムを送信して(S106)、処理を終了する。干渉が有ると判定されたときには(S110−YES)、動作プログラムの干渉ステップを記憶する。また、干渉ステップの修正が全て終了したか否かを判定するが(S111)、最初は未修正であるため(S111−NO)、処理を続行する。以降、修正手段25により、動作プログラムの干渉ステップを順に修正する。
【0037】
修正手段25は、修正する干渉ステップが、予め設定された作業ステップか否かを判定する(S112)。作業ステップは、ロボット4がワーク2に対して作業するステップであり、オペレータの指定に基づいて、動作プログラム中に作業ステップの識別情報が付加される。作業ステップでは、ロボット4の所定位置(ここでは、注入ヘッド4A)を、作業を行う位置に確実に配置する必要がある。修正手段25は、干渉ステップが作業ステップであるときには(S112−YES)、回避動作設定手段25Aにより、干渉する可動物体の一方又は両方の動作速度を変更する(S113)。
【0038】
本実施形態では、回避動作設定手段25Aは、干渉が発生しないように、動作プログラムに設定されたロボット4の動作速度を速く又は遅くする。これにより、ロボット4の動作又は位置をずらして、干渉を回避させる。ロボット4の注入ヘッド4Aは、他の可動物体に干渉されずに、変更された動作速度及びタイミングで、ワーク2に対して作業する位置に配置される。複数のロボット4は、互いに干渉を回避しつつ、それぞれワーク2に対して作業する。
【0039】
また、回避動作設定手段25Aは、2つのロボット4が干渉するときには、一方のロボット4の動作プログラムを変更する。回避動作設定手段25Aは、干渉ステップの1つ前のステップ(前ステップという)から干渉ステップまでのロボット4の動作時間を長く変更する。これにより、ロボット4の動作速度を遅くして、ロボット4の干渉位置を、干渉ステップにおける位置(目標位置)まで遅く移動させる。ただし、他方のロボット4が目標位置から動いたときに、一方のロボット4の干渉位置が目標位置へ短時間で達するように、最適な動作速度を設定する。なお、動作速度の変更に伴い、干渉ステップの前後の動作を変更する必要があるときには、回避動作設定手段25Aによりロボット4の各動作を変更する。
【0040】
動作プログラムの干渉ステップを修正した後、検証手段25Bにより、修正後の動作プログラムを検証する(S114)。検証手段25Bは、動作速度を変更した動作プログラムに基づいて、シミュレーション手段21及び干渉判定手段22により、修正した干渉ステップでの干渉の有無を判定させる。判定の結果、干渉が有ると判定されたときには(S115−YES)、再び動作速度を変更して(S113)、動作プログラムを修正する。また、修正後の動作プログラムを検証する(S114)。動作プログラムの修正と検証を、干渉が無いと判定(S115−NO)されるまで繰り返す。
【0041】
以上に対し、作業ステップ以外のステップは、ロボット4の作業に直接影響しないステップ、例えば、注入ヘッド4Aを作業位置へ移動させる移動ステップや、可動物体が動作しない待機ステップである。修正手段25は、修正する干渉ステップが作業ステップでないときには(S112−NO)、回避動作設定手段25Aにより、動作プログラムに干渉の回避動作ステップを追加する(S116)。これにより、可動物体の干渉時の動作又は位置を変更して、干渉を回避させる。その際、回避動作設定手段25Aは、干渉を回避させる方向にロボット4を移動させるステップを作成して、ロボット4の動作プログラムに追加する。この回避動作ステップは、干渉ステップと前ステップの間に追加される。また、回避動作設定手段25Aは、干渉ステップ付近のロボット4の動作速度を速くして、ロボット4をステップの追加前後で同じ時間で動作させる。
【0042】
動作プログラムの干渉ステップを修正した後、検証手段25Bにより、修正後の動作プログラムを検証する(S117)。検証手段25Bは、干渉の回避動作ステップを追加した動作プログラムに基づいて、シミュレーション手段21及び干渉判定手段22により、修正した干渉ステップでの干渉の有無を判定させる。判定の結果、干渉が有ると判定されたときには(S118−YES)、再び回避動作ステップを追加して(S116)、動作プログラムを修正する。また、修正後の動作プログラムを検証する(S117)。動作プログラムの修正と検証を、干渉が無いと判定(S118−NO)されるまで繰り返す。
【0043】
干渉が無いと判定されたときには(S115−NO、S118−NO)、干渉ステップの修正が全て終了したか否かを判定する(S111)。未修正の干渉ステップが有るときには、干渉ステップの修正が全て終了するまで以上の処理を繰り返し(S111−NO)、干渉ステップを順に修正する。干渉ステップの修正が全て終了したときには(S111−YES)、送信手段14により、複数の動作プログラムを、それぞれ送信して(S106)、処理を終了する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の干渉チェック装置5では、ワーク2とロボット4からなる複数の可動物体間の干渉を、シミュレーションにより精度よくチェックできる。また、干渉が発生する動作プログラムを自動で簡便に修正して、干渉が発生しない動作プログラムを取得できる。これに伴い、複数の可動物体間の干渉を防止できるため、ロボット4によりワーク2に対して正確かつ円滑に作業を行うことができる。回避動作設定手段25Aにより、複数種類の回避動作を設定できるため、修正する干渉ステップに応じて、動作プログラム及び可動物体の動作を適宜修正できる。
【0045】
なお、干渉の回避動作は、ロボット4の動作プログラムのみに設定してもよく、ロボット4とワーク2の動作プログラムに設定してもよい。干渉チェックと動作プログラムの修正は、全ての動作プログラムに対してまとめて実行してもよく、動作プログラムを複数グループに分けて実行してもよい。複数の可動物体は、1つのワーク2と1つのロボット4、複数のワーク2と複数のロボット4、1つのワーク2と複数のロボット4、複数のワーク2と1つのロボット4のいずれの組み合わせであってもよい。
【0046】
また、本発明は、コンピュータを、干渉チェック装置5の以上説明した各手段として機能させるためのプログラムとして実現することができる。本発明は、発泡成形体の製造作業以外の作業を行うロボットとワークの干渉チェック装置へ適用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・製造装置、2・・・ワーク、3・・・搬送装置、4・・・ロボット、5・・・干渉チェック装置、6・・・ハブ、10・・・データ設定装置、11・・・入力手段、12・・・記憶手段、13・・・表示手段、14・・・送信手段、20・・・動作プログラム作成装置、21・・・シミュレーション手段、21A・・・取得手段、21B・・・モデル作成手段、21C・・・軌跡演算手段、22・・・干渉判定手段、22A・・・位置対比手段、22B・・・干渉領域判別手段、23・・・記憶手段、23A・・・判定結果記憶手段、23B・・・動作プログラム記憶手段、24・・・表示手段、25・・・動作プログラム修正手段、25A・・・回避動作設定手段、25B・・・動作プログラム検証手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のワークと、ワークに対して作業する1以上のロボットからなる複数の可動物体間の干渉をチェックする干渉チェック装置であって、
複数の可動物体の形状データ及び複数のステップからなる動作プログラムを取得する取得手段と、
形状データに基づいて、複数の可動物体の可動物体モデルを作成するモデル作成手段と、
動作プログラムと可動物体モデルに基づいて、複数の可動物体モデルの動作をシミュレーションするシミュレーション手段と、
シミュレーション結果に基づいて、複数の可動物体モデル間の干渉の有無を判定する干渉判定手段と、
干渉する可動物体モデルの動作プログラムに干渉の回避動作を設定する回避動作設定手段と、
回避動作を設定した動作プログラムに基づいて、シミュレーション手段及び干渉判定手段により干渉の有無を判定させる動作プログラム検証手段と、
を備えた干渉チェック装置。
【請求項2】
請求項1に記載された干渉チェック装置において、
回避動作設定手段が、ロボットの動作プログラムに設定されたロボットの可動軸の動作を変更する手段を有する干渉チェック装置。
【請求項3】
請求項1に記載された干渉チェック装置において、
回避動作設定手段が、動作プログラムに干渉の回避動作ステップを追加する手段を有する干渉チェック装置。
【請求項4】
請求項1に記載された干渉チェック装置において、
回避動作設定手段が、動作プログラムに設定された可動物体の動作速度を変更する手段を有する干渉チェック装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された干渉チェック装置において、
干渉判定手段が、動作プログラムのステップ毎に複数の可動物体モデルの位置を対比する手段と、位置の対比結果に基づいて、複数の可動物体モデル間の干渉領域を判別する手段と、を有する干渉チェック装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1ないし5のいずれかに記載された干渉チェック装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−181574(P2012−181574A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42190(P2011−42190)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】