説明

平行度確認治具

【課題】吸引保持パッドの吸着面とチャックテーブルの保持面との平行度が許容範囲であるか否かを容易に確認することができる平行度確認治具を提供する。
【解決手段】被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、下面に被加工物を吸引保持する吸着面を有する吸引保持パッドを備えチャックテーブルに被加工物を搬入または搬出する搬送手段とを具備する加工装置における、吸引保持パッドの吸着面とチャックテーブルの保持面との平行度を確認する平行度確認治具あって、第1の厚みを有する第1の厚み確認部と第2の厚みを有する第2の厚み確認部とを具備し、第1の厚み確認部の第1の厚みは該吸引保持パッドを基準待機位置に位置付けた状態においてチャックテーブルの保持面と吸引保持パッドの吸着面との基準間隔に設定されており、第2の厚み確認部の第2の厚みは第1の厚みより僅かに厚い許容できる平行度の上限値に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置等の加工装置における被加工物を保持するチャックテーブルの保持面と、被加工物を吸引保持して搬送する吸引保持パッドの吸着面との平行度を確認するための平行度確認治具に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、IC、LSI等のデバイスが複数個形成された半導体ウエーハは、個々のデバイスに分割される前にその裏面を研削装置によって研削して所定の厚さに形成されている。半導体ウエーハの裏面を研削する研削装置は、ウエーハを吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブル上に吸引保持されたウエーハを研削する研削手段と、チャックテーブル上に加工前のウエーハを吸引保持して搬入する第1の搬送手段と、チャックテーブル上で研削されたウエーハを吸引保持して搬出する第2の搬送手段を具備している。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
上述したウエーハの搬送手段は、下面にウエーハを吸引保持する吸着面を有する吸引保持パッドと、該吸引保持パッドを一端部に支持する搬送アームと、該搬送アームの一端部に吸引保持パッドを懸垂状態で支持する支持手段とを具備している。この支持手段は、上端部に係止部を備え該搬送アームの一端部に設けられた複数の挿通穴にそれぞれ挿通して配設され下端が該吸引保持パッドに形成された雌ねじ穴に螺合する複数の調整ボルトと、該複数の調整ボルトにそれぞれ遊嵌され吸引保持パッドと搬送アームを離反する方向に附勢する複数のコイルばねとからなっている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−91196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したウエーハの搬送手段は、吸引保持パッドの吸着面とチャックテーブルの保持面との平行度が許容範囲に構成されていないと、ウエーハの搬出入時に吸引保持パッドまたはチャックテーブルの保持面がウエーハに対して傾斜した状態で当接するため、ウエーハを損傷するという問題がある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、吸引保持パッドの吸着面とチャックテーブルの保持面との平行度が許容範囲であるか否かを容易に確認することができる平行度確認治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、下面に被加工物を吸引保持する吸着面を有する吸引保持パッドを備え該チャックテーブルに被加工物を搬入または搬出する搬送手段とを具備する加工装置における、該吸引保持パッドの吸着面と該チャックテーブルの保持面との平行度を確認する平行度確認治具であって、
面一の底面と、該底面から第1の厚みの第1の上面を有する第1の厚み確認部と、該底面から第2の厚みの第2の上面を有する第2の厚み確認部とを具備し、
該第1の厚み確認部の第1の厚みは該吸引保持パッドを基準位置に位置付けた状態において該チャックテーブルの保持面と該吸引保持パッドの吸着面との基準間隔に設定されており、該第2の厚み確認部の第2の厚みは第1の厚みより僅かに厚い許容できる平行度の上限値に設定されている、
ことを特徴とする平行度確認治具が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明による平行度確認治具は、面一の底面と、該底面から第1の厚みの第1の上面を有する第1の厚み確認部と、該底面から第2の厚みの第2の上面を有する第2の厚み確認部とを具備し、第1の厚み確認部の第1の厚みは吸引保持パッドを基準位置に位置付けた状態においてチャックテーブルの保持面と吸引保持パッドの吸着面との基準間隔に設定されており、第2の厚み確認部の第2の厚みは第1の厚みより僅かに厚い許容できる平行度の上限値に設定されているので、吸引保持パッドを基準位置に位置付けた状態においてチャックテーブルの保持面との間に第1の厚み確認部が挿入されるが第2の厚み確認部が挿入されないことを確認することにより、チャックテーブルの保持面と吸着パッドの吸着面の平行度が許容範囲であると判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】加工装置としての研削装置の斜視図。
【図2】図1に示す研削装置に装備され被加工物を吸引保持する吸着面を有する吸引保持パッドを備えた被加工物搬送手段の要部を破断して示す側面図。
【図3】図2に示す被加工物搬送手段の要部斜視図。
【図4】図3に示す被加工物搬送手段の要部を分解して示す斜視図。
【図5】本発明に従って構成された平行度確認治具の斜視図および正面図。
【図6】図5に示す平行度確認治具を用いて実施する平行度確認作業における吸引保持パッド位置付け工程の説明図。
【図7】図5に示す平行度確認治具を用いて実施する平行度確認作業における第1の厚み確認部挿入工程および第2の厚み確認部挿入工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された平行度確認治具の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0011】
図1には、加工装置としての研削装置の斜視図が示されている。
図示の実施形態における研削装置は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。装置ハウジング2の図1において右上端には、静止支持板21が立設されている。この静止支持板21の内側面には、上下方向に延びる2対の案内レール22、22および23、23が設けられている。一方の案内レール22、22には粗研削手段としての粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されており、他方の案内レール23、23には仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に装着されている。
【0012】
粗研削ユニット3は、ユニットハウジング31と、該ユニットハウジング31の下端に回転自在に装着されたホイールマウント32に装着された粗研削ホイール33と、該ユニットハウジング31の上端に装着されホイールマウント32を矢印32aで示す方向に回転せしめる電動モータ34と、ユニットハウジング31を装着した移動基台35とを具備している。
【0013】
上記移動基台35には被案内レール351、351が設けられており、この被案内レール351、351を上記静止支持板21に設けられた案内レール22、22に移動可能に嵌合することにより、粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に支持される。図示の形態における粗研削ユニット3は、上記移動基台35を案内レール22、22に沿って移動させ粗研削ホイール33を研削送りする研削送り手段36を具備している。研削送り手段36は、上記静止支持板21に案内レール22、22と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド361と、該雄ねじロッド361を回転駆動するためのパルスモータ362と、上記移動基台35に装着され雄ねじロッド361と螺合する図示しない雌ねじブロックを具備しており、パルスモータ362によって雄ねじロッド361を正転および逆転駆動することにより、粗研削ユニット3を上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる。
【0014】
上記仕上げ研削ユニット4も粗研削ユニット3と同様に構成されており、ユニットハウジング41と、該ユニットハウジング41の下端に回転自在に装着されたホイールマウント42に装着された仕上げ研削ホイール43と、該ユニットハウジング41の上端に装着されホイールマウント42を矢印42aで示す方向に回転せしめる電動モータ44と、ユニットハウジング41を装着した移動基台45とを具備している。
【0015】
上記移動基台45には被案内レール451、451が設けられており、この被案内レール451、451を上記静止支持板21に設けられた案内レール23、23に移動可能に嵌合することにより、仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に支持される。図示の形態における仕上げ研削ユニット4は、上記移動基台45を案内レール23、23に沿って移動させ仕上げ研削ホイール43を研削送りする研削送り手段46を具備している。研削送り手段46は、上記静止支持板21に案内レール23、23と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド461と、該雄ねじロッド461を回転駆動するためのパルスモータ462と、上記移動基台45に装着され雄ねじロッド461と螺合する図示しない雌ねじブロックを具備しており、パルスモータ462によって雄ねじロッド461を正転および逆転駆動することにより、仕上げ研削ユニット4を上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる。
【0016】
図示の実施形態における研削装置は、上記静止支持板21の前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル5を具備している。このターンテーブル5は、比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印5aで示す方向に適宜回転せしめられる。ターンテーブル5には、図示の実施形態の場合それぞれ120度の位相角をもって3個のチャックテーブル6が水平面内で回転可能に配置されている。このチャックテーブル6は、円盤状の基台61とポーラスセラミック材によって円盤状に形成され吸着保持チャック62とからなっており、吸着保持チャック62上(保持面)に載置された被加工物を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。このように構成されたチャックテーブル6は、図1に示すように図示しない回転駆動機構によって矢印6aで示す方向に回転せしめられる。ターンテーブル5に配設された3個のチャックテーブル6は、ターンテーブル5が適宜回転することにより被加工物搬入・搬出域A、粗研削加工域B、および仕上げ研削加工域Cおよび被加工物搬入・搬出域Aに順次移動せしめられる。
【0017】
図示の研削装置は、被加工物搬入・搬出域Aに対して一方側に配設され研削加工前の被加工物である半導体ウエーハをストックする第1のカセット11と、被加工物搬入・搬出域Aに対して他方側に配設され研削加工後の被加工物である半導体ウエーハをストックする第2のカセット12と、第1のカセット11と被加工物搬入・搬出域Aとの間に配設され被加工物の中心合わせを行う中心合わせ手段13と、被加工物搬入・搬出域Aと第2のカセット12との間に配設されたスピンナー洗浄手段14と、第1のカセット11内に収納された被加工物である半導体ウエーハを中心合わせ手段13に搬出するとともにスピンナー洗浄手段14で洗浄された半導体ウエーハを第2のカセット12に搬送する被加工物搬出・搬入手段15を具備している。なお、上記第1のカセット11には、半導体ウエーハWが表面に保護テープTが貼着された状態で複数枚収容される。このとき、半導体ウエーハWは、裏面を上側にして収容される。
【0018】
図示の研削装置は、上記中心合わせ手段13上に載置され中心合わせされた半導体ウエーハを被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送する第1の被加工物搬送手段7aと、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研削加工後の半導体ウエーハをスピンナー洗浄手段14に搬送する第2の被加工物搬送手段7bを具備している。この第1の被加工物搬送手段7aおよび第2の被加工物搬送手段7bは、実質的に同様の構成でよく、以下図2乃至図4を参照して説明する。
【0019】
図2乃至図4に示す第1の被加工物搬送手段7aおよび第2の被加工物搬送手段7bは、半導体ウエーハを吸引保持する吸引保持パッド71と、該吸引保持パッド71を一端部に支持する搬送アーム72と、該搬送アーム72の一端部に吸引保持パッド71を懸垂状態で支持する支持手段73と、搬送アーム72の他端に装着された作動軸74と、該作動軸74を上下方向に移動する昇降手段75と、該昇降手段75および作動軸74を回動せしめる回動手段76を具備している。昇降手段75は、正転・逆転可能なパルスモータおよび該パルスモータによって回転駆動されるスクリュー機構を含んでおり、パルスモータを正転駆動すると作動軸74を上昇せしめ、パルスモータを逆転駆動すると作動軸74を下降せしめる。回動手段76は、正転・逆転可能なパルスモータおよび該パルスモータによって駆動される駆動機構を含んでおり、パルスモータを正転駆動すると昇降手段75および回動軸74を一方向に回動せしめ、パルスモータを逆転駆動すると昇降手段75および回動軸74を他方向に回動せしめる。
【0020】
上記吸引保持パッド71は、図2に示すように下面に円形状の凹部711aを備えたパッド本体711と、該パッド本体711の凹部711aに嵌合された吸着パッド712とからなっている。パッド本体711は、セラミック材によって形成されており、その中央部には上記凹部711aに連通する吸引口711bが設けられている。また、パッド本体711の上面には、図2および図4に示すように吸引口711bを囲繞して形成されたコネクター取り付け凹部711cが設けられているとともに、該コネクター取り付け凹部711cと外周との間に複数個(図示の実施形態においては3個)の支持凹部711dが等間隔で設けられている。上記吸着パッド712は、ポーラスなセラミック材によって円盤状に形成されており、上記パッド本体711の円形状の凹部711aに嵌合しボンド剤によって固定される。なお、パッド本体711に設けられたコネクター取り付け凹部711cには、図2に示すように適宜の金属材料によって形成されたコネクター70が嵌合され、適宜のボンド剤によって固定されている。このコネクター70は、配管701を介して吸引手段700に接続されている。従って、吸引手段700が作動すると、配管701、コネクター70、吸引口711bおよび凹部711aを介して吸着パッド712の下面(吸着面)に負圧が作用せしめられる。
【0021】
上記搬送アーム72は、適宜の金属材料によって形成されており、図2および図4に示すように一端部に上記コネクター70が挿通する穴721が設けられている。また、搬送アーム72の一端部には、上記パッド本体711に設けられた複数個(図示の実施形態においては3個)の支持凹部711dと対応する位置に複数個(図示の実施形態においては3個)の挿通穴722が設けられている。このように形成された搬送アーム72の一端部に上記吸引保持パッド71が支持手段73によって支持される。
【0022】
支持手段73は、搬送アーム72の一端部と吸引保持パッド71を連結するための複数個(図示の実施形態においては3個)の調整ボルト731と、該複数個の調整ボルト731の下端部にそれぞれ螺合する複数個(図示の実施形態においては3個)のナット732と、複数個の調整ボルト731にそれぞれ遊嵌され吸引保持パッド71と搬送アーム72を離反する方向に附勢する複数個(図示の実施形態においては3個)のコイルばね733とからなっている。調整ボルト731は、適宜の金属材料によって形成されており、図2および図4に示すように上端部に係止部731aが設けられているとともに、下端部には雄ねじ731bが形成されている。上記ナット732は、上記調整ボルト731の下端部に形成された雄ねじ731bと螺合するように形成されており、その外径は上記吸引保持パッド71のパッド本体711に設けられた支持凹部711dにボンド剤を介して嵌合する大きさに形成されている。上記コイルばね733は、調整ボルト731に遊嵌可能な内径を有している。このように調整ボルト731とナット732およびコイルばね733とからなる支持手段73によって搬送アーム72の一端部に吸引保持パッド71を懸垂状態で支持するには、先ずナット732を吸引保持パッド71のパッド本体711に設けられた支持凹部711dに嵌合し、適宜のボンド剤によって固定する。次に、調整ボルト731を搬送アーム72の上側から一端部に形成された挿通穴722に挿通するとともに、該調整ボルト731にコイルばね733を嵌挿した後、調整ボルト731の下端部に形成された雄ねじ731bを吸引保持パッド71のパッド本体711に固定されたナット732にコイルばね733のばね力に抗して螺合する。この結果、図2および図3に示すように吸引保持パッド71のパッド本体711に固定されたナット732と搬送アーム72の下面との間に配設されたコイルばね733のばね力により、搬送アーム72の上面が調整ボルト731の上端部に形成された係止部731aに当接して、搬送アーム72に吸引保持パッド71が懸垂状態で支持される。このようにして搬送アーム72に吸引保持パッド71を懸垂状態で支持した支持手段73は、吸引保持パッド71のパッド本体711に固定されたナット732と搬送アーム72の下面との間に配設されたコイルばね733が緩衝部材として機能するので、吸引保持パッド71によって被加工物としてのウエーハを吸引保持する際にウエーハを損傷させることがない。なお、吸引保持パッド71を構成する吸着パッド712の下面である吸着面の水平度は、上記の複数個(図示の実施形態においては3個)の調整ボルト731とナット732の螺合量によって調整することができる。
【0023】
以上のように構成された第1の被加工物搬送手段7aおよび第2の被加工物搬送手段7bの吸引保持パッド71を構成する吸着パッド712の下面である吸着面は、上記チャックテーブル6の吸着保持チャック62の上面である保持面との平行度が許容範囲であることが重要である。もし、吸引保持パッド71を構成する吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の保持面との平行度が許容範囲を超えていると、チャックテーブル6に被加工物である半導体ウエーハWを搬入する際およびチャックテーブル6から半導体ウエーハWを搬出する際に、吸引保持パッド71に保持された半導体ウエーハWがチャックテーブル6の保持面に対して傾斜し、また、吸引保持パッド71がチャックテーブル6に保持されている半導体ウエーハWに対して傾斜した状態で当接するため、半導体ウエーハWを損傷するという問題がある。従って、第1のウエーハ搬送手段7aおよび第2のウエーハ搬送手段7bの吸引保持パッド71を構成する吸引保持パッドの吸着面とチャックテーブルの保持面との平行度が許容範囲であるか否かを定期的に確認する必要がある。
【0024】
以下、第1の被加工物搬送手段7aおよび第2の被加工物搬送手段7bの吸引保持パッド71を構成する吸着パッド712の下面である吸着面との平行度が許容範囲であるか否かを確認する平行度確認作業について説明する。この平行度確認作業を実施するために、図5の(a)および(b)に示す平行度確認治具を使用する。
図5(a)および(b)に示す平行度確認治具10は、ステンレス鋼等の金属材料によって例えば長さが60mm、幅が25mmの直方体状に形成されている。平行度確認治具10は、底面101が同一平面に形成されており、上面には長手方向中間部に仕切り溝102が設けられている。このように仕切り溝102が設けられた平行確認治具10は、仕切り溝102の一方側に底面101から第1の厚みの第1の上面103aを有する第1の厚み確認部103が形成されており、仕切り溝102の他方側に第2の厚みの第2の上面104aを有する第2の厚み確認部104が形成されている。第2の厚み確認部104の上面104aは、第1の厚み確認部103の上面103aより僅かに高く形成されている。このように形成された平行度確認治具10は、第1の厚み確認部103の第1の厚み(t1)が5mmに設定され、第2の厚み確認部104の第2の厚み(t2)が5.05mmに設定されている。第1の厚み確認部103の第1の厚み(t1)(図示の実施形態においては5mm)は、上記吸引保持パッド71を基準位置に位置付けた状態においてチャックテーブル6の保持面と吸引保持パッド71の吸着面との基準間隔に設定されている。また、第1の厚み確認部103の第1の厚み(t1)(図示の実施形態においては5mm)と第2の厚み確認部104の第2の厚み(t2)(図示の実施形態においては5.05mm)の差(図示の実施形態においては50μm)は、吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との許容できる平行度の上限値である。
【0025】
平行度確認治具10は以上のように構成されており、平行度確認治具10を用いて上記第1の被加工物搬送手段7aおよび第2の被加工物搬送手段7bの吸引保持パッド71を構成する吸着パッド712の下面である吸着面との平行度が許容範囲であるか否かを確認する平行度確認作業について説明する。
図6に示すように第1の被加工物搬送手段7a、第2のウエーハ搬送手段7bの回動手段76および昇降手段75を作動して吸引保持パッド71をチャックテーブル6の保持面である上面から5mm上方の基準位置に位置付ける(吸引保持パッド位置付け工程)。
【0026】
上述した吸引保持パッド位置付け工程を実施したならば、図7の(a)に示すように任意の箇所で平行度確認治具10の第1の厚み確認部103をチャックテーブル6の保持面である上面と吸着パッド712の下面である吸着面との間に挿入する(第1の間隔確認工程)。平行度確認治具10の第1の厚み確認部103が図7の(a)に示すようにチャックテーブル6の保持面である上面と吸着パッド712の下面である吸着面との間に挿入することができたならば、図7の(b)に示すように平行度確認治具10を更に押し込む(第2の間隔確認工程)。このとき、第2の厚み確認部104がチャックテーブル6の保持面である上面と吸着パッド712の下面である吸着面との間に挿入できなければ、チャックテーブル6の保持面である上面と吸着パッド712の下面である吸着面との間隔は許容範囲にある。この第1の間隔確認工程と第2の間隔確認工程を吸着パッド712の外周に沿って数箇所実施する。この第1の間隔確認工程と第2の間隔確認工程を実施した結果、全ての箇所において第1の厚み確認部103が挿入されて第2の厚み確認部104が挿入できなければ、吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との平行度は50μm以下で許容範囲であると判定することができる。
【0027】
一方、上述した第1の間隔確認工程および第2の間隔確認工程を実施した結果、第1の厚み確認部103が挿入できない場合、また第2の厚み確認部104も挿入された箇所が存在する場合には、吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との平行度は50μm以下の許容範囲でないことが判る。このように吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との平行度が許容範囲でない場合には、第1の被加工物搬送手段7aおよび第2の被加工物搬送手段7bを構成する支持手段73の調整ボルト731の螺合量を調整して吸着パッド712の支持状態を修正する。そして、上記吸引保持パッド位置付け工程と第1の厚み確認部挿入工程および第2の厚み確認部挿入工程を実施して吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との平行度を確認する。
【0028】
次に、上述した研削装置によって実施する研削作業について、主に図1を参照して説明する。
第1のカセット11に収容された研削加工前の被加工物である半導体ウエーハWは被加工物搬出・搬入手段15の上下動作および進退動作により搬送され、中心合わせされる。中心合わせ手段13において半導体ウエーハWが中心合わせされたならば、第1のウエーハ搬送手段7aの回動手段76を作動して搬送アーム72を作動軸74を中心として旋回し、吸引保持パッド71を中心合わせ手段13において中心合わせされた半導体ウエーハWの直上に移動するとともに昇降手段75を作動して降下させ、吸着パッド712の下面(吸着面)を半導体ウエーハWに接触させる。次に、吸引手段700を作動して吸着パッド712の下面(吸着面)に負圧を作用せしめることにより、吸着パッド712の下面(吸着面)に半導体ウエーハWを吸引保持する。このようにして、吸引保持パッド71に半導体ウエーハWを吸引保持したならば、昇降手段75を作動して吸引保持パッド71を上昇させるとともに回動手段76を作動して搬送アーム72を作動軸74を中心として旋回し、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6の直上に移動し、昇降手段75を作動して吸引保持パッド71を降下させ、吸引保持パッド71に吸引保持された半導体ウエーハWをチャックテーブル6上に載置する。このとき、吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との平行度が許容範囲になっているので、吸引保持パッド71に吸引保持された半導体ウエーハWは傾斜してチャックテーブル6に当接することがないため、破損することとはない。このようにして、吸引保持パッド71に吸引保持された半導体ウエーハWをチャックテーブル6上に載置したならば、吸引保持パッド71による半導体ウエーハWの吸引保持を解除する。このようにしてチャックテーブル6上に載置された半導体ウエーハWは、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル6上に吸引保持される。次に、ターンテーブル5を図示しない回転駆動機構によって矢印5aで示す方向に120度回動せしめて、半導体ウエーハWを載置したチャックテーブル6を粗研削加工域Bに位置付ける。
【0029】
半導体ウエーハWを吸引保持したチャックテーブル6は、粗研削加工域Bに位置付けられると図示しない回転駆動機構によって矢印6aで示す方向に回転せしめられる。一方、粗研削ユニット3の粗研削ホイール33は、矢印32aで示す方向に回転せしめられつつ研削送り手段36によって所定量下降する。この結果、チャックテーブル6上の半導体ウエーハWの裏面(上面)に粗研削加工が施される。なお、この間に被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられた次のチャックテーブル6上には、上述したように研削加工前の半導体ウエーハWが載置される。そして、チャックテーブル6上に載置された半導体ウエーハWは、図示しない吸引手段を作動することによりチャックテーブル6上に吸引保持される。次に、ターンテーブル5を矢印5aで示す方向に120度回動せしめて、粗研削加工された半導体ウエーハWを保持しているチャックテーブル6を仕上げ研削加工域Cに位置付け、研削加工前の半導体ウエーハWを保持したチャックテーブル6を粗研削加工域Bに位置付ける。
【0030】
このようにして、粗研削加工域Bに位置付けられたチャックテーブル6上に保持された粗研削加工前の半導体ウエーハWの裏面(上面)には粗研削ユニット3によって粗研削加工が施され、仕上げ研削加工域Cに位置付けられたチャックテーブル6上に保持され粗研削加工された半導体ウエーハWの裏面(上面)には仕上げ研削ユニット4によって仕上げ研削加工が施される。次に、ターンテーブル5を矢印5aで示す方向に120度回動せしめて、仕上げ研削加工された半導体ウエーハWを保持したチャックテーブル6を被加工物搬入・搬出域Aに位置付ける。なお、粗研削加工域Bにおいて粗研削加工された半導体ウエーハWを保持したチャックテーブル6は仕上げ研削加工域Cに、被加工物搬入・搬出域Aにおいて研削加工前の半導体ウエーハWを保持したチャックテーブル6は粗研削加工域Bにそれぞれ移動せしめられる。
【0031】
上述したように、粗研削加工域Bおよび仕上げ研削加工域Cを経由して被加工物搬入・搬出域Aに戻ったチャックテーブル6は、ここで仕上げ研削加工された半導体ウエーハWの吸引保持を解除する。次に、第2の被加工物搬送手段7bの回動手段76を作動して搬送アーム72を作動軸74を中心として旋回し、吸引保持パッド71をチャックテーブル6上の半導体ウエーハWの直上に移動するとともに、昇降手段75を作動して降下させ吸着パッド712の下面(吸着面)をチャックテーブル6上の半導体ウエーハWに接触させる。次に、吸引手段700を作動して吸着パッド712の下面(吸着面)に負圧を作用せしめることにより、吸着パッド712の下面(吸着面)に半導体ウエーハWを吸引保持する。このとき、吸着パッド712の下面である吸着面とチャックテーブル6の上面である保持面との平行度が許容範囲になっているので、吸引保持パッド71がチャックテーブル6上の半導体ウエーハWに傾斜して当接することがないため、破損することとはない。このようにして、吸引保持パッド71に半導体ウエーハWを吸引保持したならば、昇降手段75を作動して吸引保持パッド71を上昇させるとともに回動手段76を作動して搬送アーム72を作動軸74を中心として旋回し、吸引保持パッド71に半導体ウエーハWをスピンナー洗浄手段14に搬送する。スピンナー洗浄手段14に搬送された半導体ウエーハWは、ここで研削屑が洗浄除去されるとともに、スピン乾燥される。このようにして洗浄およびスピン乾燥された半導体ウエーハWは、ウエーハ搬出・搬入手段15によって第2のカセット12に搬送され収納される。
【符号の説明】
【0032】
2:装置ハウジング
3:粗研削ユニット
33:粗研削ホイール
4:仕上げ研削ユニット
43:仕上げ研削ホイール
5:ターンテーブル
6:チャックテーブル
7a:第1の被加工物搬送手段
7b:第2の被加工物搬送手段
71:吸引保持パッド
711:パッド本体
712:吸着パッド
70:コネクター
700:吸引手段
72:搬送アーム
73:支持手段
731:調整ボルト
732:ナット
733:コイルばね
11:第1のカセット
12:第2のカセット
13:中心合わせ手段
14:スピンナー洗浄手段
15:ウエーハ搬出・搬入手段
W:半導体ウエーハ
T:保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する加工手段と、下面に被加工物を吸引保持する吸着面を有する吸引保持パッドを備え該チャックテーブルに被加工物を搬入または搬出する搬送手段とを具備する加工装置における、該吸引保持パッドの吸着面と該チャックテーブルの保持面との平行度を確認する平行度確認治具あって、
面一の底面と、該底面から第1の厚みの第1の上面を有する第1の厚み確認部と、該底面から第2の厚みの第2の上面を有する第2の厚み確認部とを具備し、
該第1の厚み確認部の第1の厚みは該吸引保持パッドを基準位置に位置付けた状態において該チャックテーブルの保持面と該吸引保持パッドの吸着面との基準間隔に設定されており、該第2の厚み確認部の第2の厚みは第1の厚みより僅かに厚い許容できる平行度の上限値に設定されている、
ことを特徴とする平行度確認治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−40648(P2012−40648A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184319(P2010−184319)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】