説明

廃棄物焼却ボイラー装置

【課題】可燃性の廃棄物を乾留炉で乾留してガス化し、乾留ガスを燃焼炉で燃焼させ、燃焼時の熱エネルギーを廃熱回収装置によって回収するものにおいて、乾留炉内で発生した乾留ガスを燃焼炉へ送るまでに、乾留ガスが冷やされて液化することを防止して熱エネルギーの回収効率を向上させる。
【解決手段】廃棄物焼却ボイラー装置(A)は、乾留炉(2)、燃焼炉(4)、ガス送給路(3)、熱交換装置(5)、燃焼炉(4)における燃焼温度を検知し、乾留炉(2)への酸素または空気の供給量を制御する燃焼制御装置(6)を備えている。ガス送給路(3)は、乾留炉(2)の乾留部(29)より下側から導出され、燃焼炉(4)に導入される。燃焼炉(4)の内部には助燃装置(45)を備え、助燃装置(45)には乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化するリボンスクリュー(R)が燃焼ガスの移動方向に沿うように複数並行して設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物焼却ボイラー装置に関するものである。更に詳しくは、可燃性の廃棄物を乾留して発生した乾留ガスが燃焼する前に液化することがなく、さらに乾留ガスを効率的に燃焼させて有害物の発生を抑制し、熱エネルギーとして回収できる廃棄物焼却ボイラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、廃タイヤなどの可燃性の廃棄物を有害物の発生を抑制しながら処理することは、地球環境を維持または改善する上で重要な課題のひとつである。可燃性の廃棄物を上記のように好適に処理するものとして、例えば特許文献1記載の乾留ガス化燃焼装置の燃焼制御システムがある。
このシステムは、可燃性の廃棄物を乾留炉で乾留してガス化し、その乾留ガスを燃焼炉で燃焼させ、燃焼時の熱エネルギーを廃熱回収装置によって回収する工程を自動化したものである。
【0003】
【特許文献1】特許第3437951号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された乾留ガス化燃焼装置の燃焼制御システムには、次のような課題があった。
すなわち、このシステムは、上記したように可燃性の廃棄物を乾留してガス化し、その乾留ガスを燃焼させ、燃焼時の熱エネルギーを回収する工程を自動化したものであるが、乾留炉から燃焼炉へ乾留ガスを送る経路は、図1からも分かるように各炉の上部側をつなぐように設けられている。
【0005】
乾留ガスは乾留炉内において高温下で発生し、性質上、上方へ向かうために、このような構造となっているが、乾留炉の上部または経路は下部の乾留ガスが発生するところに比べて温度がやや低いので、乾留ガスがここを通るときに冷やされ、一部が液化してしまう。液化したガスは、乾留炉において下部に垂れ落ち、その回収はきわめて困難である。このため、乾留炉で発生した乾留ガスのうちの液化した一部は燃焼炉において燃焼させることができず、熱エネルギーの回収効率も悪くなる。
【0006】
そこで本発明の目的は、廃タイヤなど可燃性の廃棄物を乾留炉で乾留してガス化し、その乾留ガスを燃焼炉で燃焼させ、燃焼時の熱エネルギーを廃熱回収装置によって回収するものにおいて、乾留炉内で発生した乾留ガスを燃焼炉へ送るまでに、乾留ガスが冷やされて液化することを防止して、熱エネルギーの回収効率を向上させることである。
【0007】
また、本発明の他の目的は、さらに、燃焼炉において乾留ガスを効率的に燃焼させてダイオキシンなどの有害物の発生をより確実に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
可燃廃棄物を収容して乾留する乾留炉と、
乾留炉で生じた乾留ガスを燃焼させる燃焼炉と、
乾留炉から燃焼炉へ乾留ガスを送るガス送給路と、
燃焼炉において生じる燃焼熱を回収する熱交換装置と、
燃焼炉における燃焼温度を検知し、乾留炉への酸素または空気の供給量を制御する燃焼制御手段と、
を備えており、
ガス送給路は、乾留炉の乾留部または乾留部より下側から導出され、燃焼炉に導入されるよう構成されている、
廃棄物焼却ボイラー装置である。
【0009】
本発明は、
燃焼炉の内部に乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化する手段が設けられているのがより好ましい。
【0010】
本発明は、
乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化する手段が、燃焼ガスの移動方向に沿うように複数並行して設けられたリボンスクリューであるのがより好ましい。
【0011】
(作用)
本発明に係る廃棄物焼却ボイラー装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0012】
乾留炉(2)内へ廃タイヤ(T)などの可燃性廃棄物を送り所要量収容する。可燃性廃棄物は連続的に送ってもよいし、バッチ的に送ってもよい。
乾留炉(2)内に収容された可燃性廃棄物に着火し、可燃性廃棄物を乾留炉(2)内において低酸素状態で乾留する。乾留によって乾留ガスが発生する。乾留ガスは、乾留炉(2)の乾留部(29)または乾留部(29)より下側から導出されているガス送給路(3)を通り、燃焼炉(4)へ導入される。
乾留ガスは燃焼炉(4)へ移動するとき、乾留炉(2)において温度が低い炉上部側を移動することなく、高温のままで燃焼炉(4)へ導入され、冷やされて液化することが防止される。
【0013】
燃焼炉(4)において乾留ガスは燃焼し、熱交換装置(5)によって、例えば水を加熱して温水または熱水を得ることにより、熱エネルギーを回収することができる。なお、乾留ガスは上記のように液化することが防止されるので、乾留炉(2)で発生した乾留ガスのうちのほとんどを燃焼炉(4)において燃焼させることができる。これにより、熱エネルギーの回収効率が向上する。燃焼炉(4)で生じた排気は、熱交換装置(5)を通り、サイクロン(7)で塵埃が分離され、大気中へ放出される。
【0014】
また、燃焼制御手段(6)により、燃焼炉(4)(あるいはその近傍)における燃焼温度は検知されており、例えば燃焼温度が基準値より低いと乾留炉(2)への酸素または空気の供給量を増やして乾留ガスの発生量を増やし、逆に燃焼温度が基準値より高いと乾留炉(3)への酸素または空気の供給量を減らして乾留ガスの発生量を少なくする制御が行われる。これにより、燃焼炉(4)において乾留ガスを常に基準値以上の温度で燃焼させ、さらに過熱も防止できるので、比較的低温の燃焼により発生するダイオキシンなどの有害物質の発生を防止すると共に、過熱により燃焼炉(4)をはじめとする装置の傷み(劣化)を抑えることができる。
【0015】
燃焼炉(4)内に燃焼ガスの移動方向に沿うように複数並行して設けられたリボンスクリュー(R)など、乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化する手段(45)が設けられているものは、乾留ガスまたは燃焼ガスあるいはその混合ガスが燃焼する部分が平均化し、むらなく燃焼する。これにより、燃焼炉(4)内で乾留ガスが完全燃焼しやすくなるので、ダイオキシンなどの有害物の発生をより確実に抑制することができ、熱エネルギーの回収効率もさらに向上する。
【発明の効果】
【0016】
(a)本発明に係る廃棄物焼却ボイラー装置によれば、乾留炉から燃焼炉へ乾留ガスを送るガス供給炉が乾留炉の乾留部または乾留部より下側から導出されているので、乾留ガスは燃焼炉へ移動するとき、乾留炉において温度が低い炉上部側を通らないで高温のまま燃焼炉へ導入され、冷やされて液化することが防止される。したがって、乾留炉で発生した乾留ガスのうちのほとんどを燃焼炉において燃焼させることができるので、熱エネルギーの回収効率を向上させることができる。
【0017】
(b)燃焼炉内に燃焼ガスの移動方向に沿うように複数並行して設けられたリボンスクリューなど、乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化する手段が設けられているものは、乾留ガスまたは燃焼ガスあるいはその混合ガスが燃焼する部分が平均化し、むらなく燃焼させることができる。したがって、燃焼炉内で乾留ガスが完全燃焼しやすくなるので、ダイオキシンなどの有害物の発生をより確実に抑制することができ、熱エネルギーの回収効率もさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明に係る廃棄物焼却ボイラー装置の正面視一部断面説明図、
図2は廃棄物焼却ボイラー装置の正面視説明図、
図3は廃棄物焼却ボイラー装置の平面視説明図、
図4は廃棄物焼却ボイラー装置の背面視説明図である。
【0020】
廃棄物焼却ボイラー装置Aは、可燃性廃棄物である廃タイヤを乾留炉へ送る廃タイヤ送り装置1、廃タイヤを収容して乾留する乾留炉2、乾留炉2で生じた乾留ガスを燃焼炉へ送るガス送給路3、乾留ガスを燃焼させる燃焼炉4、燃焼炉4において生じる燃焼熱を回収する熱交換装置5、燃焼炉4における燃焼温度を検知し、乾留炉2への空気の供給量を制御する燃焼制御装置6、排気から塵埃を分離するサイクロン7および乾留炉2において生じる焼却灰を回収する灰回収装置8を備えている。
【0021】
廃棄物焼却ボイラー装置Aは、廃タイヤを処理できるものであるが、例えば可燃廃棄物を乾留炉へ送る装置を取り換えれば、他の可燃廃棄物を処理する装置として使用することもできる。なお、廃棄物焼却ボイラー装置Aは、殆どの部分が耐熱性に優れた鉄などの金属を材料として形成されており、下記説明においては材料について特に説明しない。
【0022】
(廃タイヤ送り装置1)
廃タイヤ送り装置1は、地面に設置されている基台10を有している。基台10から乾留炉2の投入口21にかけて、ガイドレール11が設けられている。ガイドレール11は、角管体の上面側に全長にわたり内外を貫通してガイド溝12が設けられている構造を有している。ガイドレール11は、下部側が傾斜し、上部側の一部は水平となっており、水平部には、送られてきた廃タイヤをさらに投入口21へ送り出すコンベヤ部を有する送出装置19が設けられている。
【0023】
ガイドレール11の上部先端側および下部先端側には、それぞれ軸支されたプーリ13、14が設けられている。プーリ13、14には、搬送チェーン15が掛けられている。搬送チェーン15の上り経路側はガイドレール11の内部を通り、下り経路側はガイドレール11の外部を通っている。搬送チェーン15には、一定の間隔で五箇所にタイヤ掛具16が取り付けられている。タイヤ掛具16は、搬送チェーン15に取り付けられる基体160の前後にローラ161を有し、中央部には引掛体162を有している。引掛体162は、タイヤ掛具16がガイドレール11内部を通るときに、ガイド溝12から外部へ突出する。
【0024】
なお、上記基台10には、ガイドレール11の下端に対応する箇所に、廃タイヤを置く載置部17が設けられている。また、基台10には、モータ(符号省略)を備え、上記ガイドレール11の下部側のプーリ14を駆動する駆動装置18が設けられている。
廃タイヤ送り装置1によれば、載置部17に置いた廃タイヤを上り移動するタイヤ掛具16の引掛体162で引っ掛け、ガイドレール11の上部にある乾留炉2の上部にある送出装置19まで送ることができる。廃タイヤは送出装置19に移り、送出装置19のコンベヤ部で送り出され、投入口21に投入される。
【0025】
(乾留炉2)
乾留炉2は、円筒形状の炉本体20を有している。炉本体20の上部には全体が開口した投入口21が設けられている。投入口21の口縁部には、蓋枠部材220が取り付けられており、蓋枠部材220には、蓋体22がヒンジ部221を介し回動可能に設けられている。蓋枠部材220の一方側(ヒンジ部221とは反対側)には、上記ガイドレール11の上部側の先端が取り付けられている。
【0026】
蓋体22は、炉本体20の上部側に設けられている吊り操作具23のワイヤ230による操作によって開閉操作を行うことができる。吊り操作具23によって蓋体22を上下方向に回動させることにより、投入口21を開閉することができる。なお、蓋体22及び蓋枠部材220は、蓋枠部材220の上面側に水を入れた溝を設け、この溝に蓋体22の外周部の条を嵌め入れる水封構造を採用しており、密封を確実にしている。
また、蓋体22及び蓋枠部材220は、下方の乾留部の高熱による劣化を抑えるために、内部に冷却水を入れることができるウォータジャケット構造となっている。蓋体22及び蓋枠部材220だけでなく、乾留炉2の炉本体20および燃焼炉4も外壁部が冷却水を入れるウォータジャケット構造となっている。
【0027】
炉本体20の下端部には、焼却灰を落下させるための筒状の落下口28が設けられている。落下口28の口縁部には、冷却水を入れるウォータジャケット構造を有する下部ロストル26が設けられている。下部ロストル26は、開閉可能な構造を有し、乾留時には封鎖される構造となっている。下部ロストル26の開閉構造は時に限定されるものではなく、公知の各種手段が採用できる。なお、乾留炉2下部の密封構造は、この構造に限定されるものではなく、例えば下部ロストルを開閉可能な構造とせず、乾留炉2の下部につながる灰回収装置8を密封可能な構造として乾留できる構造とすることもできる。
【0028】
下部ロストル26には、各部材の上部に給気部材260が設けられている。給気部材260は、断面L状のアングル部材を下部ロストル26上面との間に通気空間部をつくるように溶接されている。給気部材260には、全長にわたり一定間隔で通気空間部に通じる給気孔(符号省略)が設けられている。
【0029】
落下口28のやや上方には、廃タイヤを受けて支えるロストル構造体24が設けられている(図1参照)。ロストル構造体24は、ロストル部240を有し、ロストル部240はウォータジャケット構造の複数の管体(角管)を所要間隔で水平に並設した構造である。落下口28の下方には、後述の灰回収装置8が設けられている。
【0030】
ロストル部240の上方には、給気部材241、242が設けられている。給気部材241は、炉本体20の内壁に周方向へ沿うように全周にわたり固定されている。給気部材242は複数設けられており、それぞれ上端が給気部材241に連通し、下端はロストル部240に固着され、かつ炉本体20の中心方向へやや窄まる角度で設けられている。
【0031】
なお、給気部材241、242は、断面L状のアングル部材を炉本体20の内壁との間に通気空間部をつくるように溶接されている。給気部材241、242には、全長にわたり一定間隔で通気空間部に通じる給気孔243が設けられている。
また、炉本体20の下部側には取付口25が開口してあり、取付口25には蓋板250を介して着火用のガスバーナ251が設けられている。
【0032】
(灰回収装置8)
灰回収装置8は、設置面に設けられた穴89に収容して設けられている。灰回収装置8は穴89に入れられた箱体80を有し、箱体80の上部二箇所には開口部81、82が設けられている。一方の開口部81は、上記乾留炉2の真下に開口している。他方の開口部82は、乾留炉2と上記廃タイヤ送り装置1の基台10との間に開口しており、着脱可能な蓋体83が被せてある。
【0033】
箱体80の内部には、上部が開口した灰収容容器84が収容されている。灰収容容器84は底部に車輪85を有しており、箱体80の底部に敷設されているレール88に案内されて上記二箇所の開口部81、82の間で移動が可能である。また、レール88を設けずに、灰収容容器84の底部にキャスタを設けるようにしてもよい。
なお、灰回収装置8は、必ずしも設ける必要はないが、設けることによって、より安全で効率的な焼却灰の回収が可能になる。
【0034】
(ガス送給路3)
ガス送給路3は、乾留炉2の下端部に、隣接する燃焼炉4へ向け横方向に設けられている。ガス送給路3の高さは、乾留炉2のロストル構造体24を下限とする乾留部29からロストル構造体24より下側(つまり、乾留部29より下側)にかかるように設定されている。ガス送給路3によって、乾留ガスは乾留炉2から燃焼炉4の下部に導入される。
【0035】
(燃焼炉4)
図5は燃焼炉内に設けられている助燃装置の縦断面説明図、
図6の(a)は助燃装置の平面視説明図、(b)は底面視説明図、
図7は助燃装置に使用されているリボンスクリューの斜視図である。
【0036】
燃焼炉4は、円筒形状であり、上記したようにウォータジャケット構造である。燃焼炉4の内底部には、下部側がやや窄まり上部が開口した籠体40が設けられている。籠体40は、金属ネットでつくられており、通気(乾留ガスの流通)が可能である。なお、籠体40は、上方の燃焼部へ移動する乾留ガスに含まれる比較的大きな固形分を分離するためのものであるが、必ずしも設ける必要はない。
【0037】
籠体40の上端位置には、給気部材41が設けられている。給気部材41は、上記給気部材241と同様の構造であり、炉本体20の内壁に周方向へ沿うように全周にわたり固定されている。また、給気部材41のやや上方には、給気部材41と同様の構造の給気部材42が設けられている。なお、給気部材41、42には、全長にわたり一定間隔で通気空間部に通じる給気孔43が設けられている。
【0038】
上部の給気部材42のさらに上方には、中央に円形の通し口440を有する板状の載置台44が設けられている。載置台44は、本実施の形態において、それ自体は通気性がないが、板体に限定されるものではなく、通気ができる部材で形成してもよいし、複数の部材を所要間隔で配し、通気可能にした構造でもよい。載置台44には、助燃装置45が載置されている。
【0039】
図5を主に参照する。
助燃装置45は、乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化する手段を構成するものである。助燃装置45は、ケース450を有している。ケース450は、径大の円筒部451、径小の円筒部452、円筒部451、452をつなぐ円環板453、円筒部451の上端部に設けられている上板454、円筒部452の下端部に設けられている下板455により構成されている。径小の円筒部452には、多数の通気孔456が所要の間隔で周壁の全面にわたり設けられている。また、径大の円筒部451には、下端側に上下二列に全周にわたり多数の通気孔457が所要の間隔で設けられている。
【0040】
図6を主に参照する。
ケース450の上板454の中央部分には多数の円形の取付通孔458が貫通して設けられており、下板455にも同様に多数の円形の取付通孔459が貫通して設けられている。各取付通孔458と各取付通孔459は、それぞれ鉛直方向へ対応する箇所に設けられている。そして、互いに対応する取付通孔458と取付通孔459の間には、リボンスクリューRが取り付けてある。リボンスクリューRは、図7に示すように細い帯板を所要のピッチで螺旋状に捻った構造を有している。本実施の形態では、29本のリボンスクリューRが乾留ガスまたは燃焼ガスの移動方向に沿うように並設されている。
【0041】
各リボンスクリューRの上端部は上板454の取付通孔458を貫通し、下端部は下板455の取付通孔459を貫通している。そして、各リボンスクリューRは、その両端寄りに設けてある通孔460に、上板454と下板455の外面側に着脱可能に固定されている複数のピン461を通して固定されている。なお、リボンスクリューRの取付通孔458、459への取付構造は、上記に限定されるものではなく、取付通孔458、459を塞がないものであれば各種公知手段が採用できる。
【0042】
助燃装置45は、径小の円筒部452を載置台44の通し口440に差し込み、載置台44に円環板453を当てて載置されている(図1参照)。この状態で、径小の円筒部452と燃焼炉4の内壁との間には通気空間47が形成されており、径大の円筒部451と燃焼炉4の内壁との間にも通気空間48が形成されている。なお、通気空間47の下部側には、点火用のガスバーナ470が設けられている。
燃焼炉4の上端部には、ケース450の上板454及び円筒部451の上部側に沿うように板状の区画部材49が設けられている。区画部材49の中央部には、上記上板454の全取付通孔458を塞がないように排気口490が設けられている。排気口490には、熱交換装置5が接続されている。
【0043】
(熱交換装置5)
図8は熱交換装置の縦断面説明図、
図9は熱交換装置の平面視説明図、
図10は図8におけるI−I断面図である。
【0044】
熱交換装置5は、ウォータジャケット50を有している。ウォータジャケット50内の一端側には、上記排気口490と連通する通気路51を有している。また、ウォータジャケット50内の他端側には、後述するサイクロン7へ通じる通気路52を有している。通気路52は、図3に示すようにサイクロン7の導入部の円筒部分に接線方向に交わるように水平に設けられている。
【0045】
また、通気路51、52の間には、多数の熱交換用の通気管53が通気路51、52を連通させて設けられている。なお、通気路51には、後述する燃焼制御装置6を構成する燃焼温度センサ60が設けられている。
ウォータジャケット50の上面板54ほぼ中央には、蒸気排出筒55が設けられている。ウォータジャケット50内の水位は、上面板54と若干の隙間が空くように制御されている。ウォータジャケット50内で熱交換によりつくられた温水または熱水は、図示を省略した送給経路によって給湯装置などの所定の利用機器へ送られる。
【0046】
(燃焼制御装置6)
図2、図3、図4を主に参照する。
燃焼制御装置6は、上記ウォータジャケット50の通気路51内に設けられている燃焼温度センサ60を有している。また、一方のブロワ61から送られる空気は、給気経路62、63、64、65を通り、それぞれ給気部材260、給気部材241、242、給気部材41、給気部材42に送ることができる。また、他方のブロワ66から送られる空気は、後述する噴気管71に通じている。
【0047】
さらに、ブロワ66から送られる空気は、給気経路67、68を通り、燃焼炉4の通気空間47、48に送ることができる。給気経路67、68はそれぞれ三経路に分岐しており、通気空間47の三箇所及び通気空間48の三箇所に給気することができる。
なお、本実施の形態では、燃焼温度センサ60が検出した燃焼温度を基に、給気経路62、63、64、65及び給気経路67、68に設けられているバルブ(符号省略)を手動で調節して給気量を調節するが、公知の制御装置を使用して給気量の調節を自動化することもできる。
【0048】
(サイクロン7)
上記熱交換装置5から排出された排気はサイクロン7に導入され、排気中の塵埃が取り除かれて排気筒70を通り大気中へ放出される。
なお、排気筒70の内部下側には、上方へ向け空気を噴出する噴気管71が設けられている。噴気管71から空気を噴射することにより、排気筒70内部に排出側である上方へ向かう空気の流れをつくることができる。排気筒70は、比較的短くコンパクトにつくられているが、上記噴気管71の作用により円滑で効率的な排気が可能である。
【0049】
(作用)
図1ないし図10を参照して本実施の形態に係る廃棄物焼却ボイラー装置の作用を説明する。
(1)廃タイヤ送り装置1によって、廃タイヤTを乾留炉2へ送る。廃タイヤTを載置部17に載せるとタイヤ掛具16が引掛体162によって廃タイヤTを引っ掛ける。廃タイヤTは、搬送チェーン15の周動に伴いガイドレール11に沿って上昇する。廃タイヤTは、ガイドレール11の上部で送出装置19へ移り、送出装置19によって乾留炉2の投入口21へ投入される。この廃タイヤTの投入は、必要なだけ連続的に行われる。
【0050】
(2)廃タイヤTが乾留炉2内部に所要の量だけたまると、吊り操作具23の操作によって蓋体22が閉じられる。蓋体22は、投入口21を完全に密封する。
次に、ガスバーナ251によりロストル構造体24に受けられている廃タイヤTに着火する。乾留炉2内部は低酸素状態に調節されており、廃タイヤTは高温で分解され、揮発成分がガス化し、乾留ガスが発生する。着火以降の乾留は、自燃により行われる。
【0051】
(3)乾留ガスは、ガス送給路3を通り燃焼炉4へ導入される。乾留ガスは燃焼炉4へ移動するとき、乾留炉2において温度が低い炉上部側を移動せず、高温の乾留部29近傍を通り移動するので、高温のままで燃焼炉へ導入され、従来の装置のように冷やされて液化してしまうことが防止できる。また、廃タイヤTが高温で分解されて残った固形分(焼却灰)は、乾留終了後、下部ロストル26を開放することにより、落下口28を通り、灰回収装置8の灰回収容器84に落ちてたまる。灰回収容器84にたまった灰は、適宜、灰回収容器84を開口部82側へ移動させて取り出される。
【0052】
(4)燃焼炉4に導入された乾留ガスにガスバーナ470によって点火する。乾留ガスの燃焼によって、燃焼ガスが助燃装置5を下から上へ通ってさらに効率よく燃焼する。
燃焼ガスまたは燃焼前の乾留ガスまたは導入される空気は、図5に矢印で示すように、まず通気空間47から助燃装置45の各取付通孔459及び通気孔456から円筒部452内に入り、各リボンスクリューRに沿って攪拌され、または乱流を生じながら上方へ流れる。さらに、円筒部451内に入り、ガスの一部は各リボンスクリューRに沿って上昇し、他は円筒部451内の通気孔457が設けられていない部分の内部で乱流となる。また、通気空間47を通る空気などは通気孔457から円筒部451内に入り上記ガスと混合される。そして、燃焼ガスなどを含む排気(廃気)は助燃装置45の各取付通孔458を通り、上方の熱交換装置5へ導入される。
【0053】
このように、燃焼ガスまたは燃焼前の乾留ガスまたは導入される空気は、各リボンスクリューRに沿って流れることによって撹拌または乱流化され、乾留ガスまたは燃焼ガスあるいは空気を含む混合ガスが燃焼する部分が平均化するために、むらなく燃焼する。これにより、燃焼炉4内で乾留ガスが完全燃焼しやすくなるので、ダイオキシンなどの有害物の発生をより確実に抑制することができる。また、上記したように乾留ガスは液化することが防止されるので、乾留炉2で発生した乾留ガスのうちのほとんどを燃焼炉4において燃焼させることができる。これにより、次行程の熱交換装置5による熱エネルギーの回収効率が向上する。
【0054】
(5)上記のように、燃焼炉4で生じた排気は、熱交換装置5に導入され、熱交換によって温水または熱水がつくられ、熱エネルギーが回収されて利用される。なお、ウォータジャケット50内に生じる蒸気は、蒸気排出筒55から大気中へ排出され、内部は大気圧に保たれている。さらに、熱交換装置5によって熱交換に使用された排気は、サイクロン7で塵埃が分離され、大気中へ放出される。
【0055】
(6)なお、燃焼制御装置6により、燃焼炉4における燃焼温度は燃焼温度センサ60によって検知されており、燃焼温度が基準値より低いと乾留炉2への空気の供給量を増やして乾留ガスの発生量を増やし、逆に燃焼温度が基準値より高いと乾留炉2への空気の供給量を減らして乾留ガスの発生量を少なくする制御が行われる。また、必要に応じて燃焼炉4への空気の供給量を調節する。これにより、燃焼炉4において乾留ガスを常に基準値以上の温度で燃焼させることができ、さらに過熱も防止できるので、比較的低温の燃焼により発生するダイオキシンなどの有害物質の発生を防止すると共に、過熱により燃焼炉4をはじめとする装置の傷みを抑えることができる。
【0056】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る廃棄物焼却ボイラー装置の正面視一部断面説明図。
【図2】廃棄物焼却ボイラー装置の正面視説明図。
【図3】廃棄物焼却ボイラー装置の平面視説明図。
【図4】廃棄物焼却ボイラー装置の背面視説明図。
【図5】燃焼炉内に設けられている助燃装置の縦断面説明図。
【図6】(a)は助燃装置の平面視説明図、(b)は底面視説明図。
【図7】助燃装置に使用されているリボンスクリューの斜視図。
【図8】熱交換装置の縦断面説明図。
【図9】熱交換装置の平面視説明図。
【図10】図8におけるI−I断面図。
【符号の説明】
【0058】
A 廃棄物焼却ボイラー装置
1 廃タイヤ送り装置
10 基台
11 ガイドレール
12 ガイド溝
13 プーリ
14 プーリ
15 搬送チェーン
16 タイヤ掛具
160 基体
161 ローラ
162 引掛体
17 載置部
18 駆動装置
19 送出装置
2 乾留炉
20 炉本体
21 投入口
22 蓋体
220 蓋枠部材
221 ヒンジ部
23 吊り操作具
230 ワイヤ
24 ロストル構造体
240 ロストル部
241 給気部材
242 給気部材
243 給気孔
25 取付口
250 蓋板
251 ガスバーナ
26 下部ロストル
260 給気部材
28 落下口
29 乾留部
3 ガス送給路
4 燃焼炉
40 籠体
41 給気部材
42 給気部材
43 給気孔
44 載置台
440 通し口
45 助燃装置
450 ケース
451 円筒部
452 円筒部
453 円環板
454 上板
455 下板
456 通気孔
457 通気孔
458 取付通孔
459 取付通孔
460 通孔
461 ピン
R リボンスクリュー
47 通気空間
470 ガスバーナ
48 通気空間
49 区画部材
490 排気口
5 熱交換装置
50 ウォータジャケット
51 通気路
52 通気路
53 通気管
54 上面板
55 蒸気排出筒
6 燃焼制御装置
60 燃焼温度センサ
61 ブロワ
62、63、64、65 給気経路
66 ブロワ
67、68 給気経路
7 サイクロン
70 排気筒
71 噴気管
8 灰回収装置
80 箱体
81 開口部
82 開口部
83 蓋体
84 灰収容容器
85 車輪
88 レール
89 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃廃棄物を収容して乾留する乾留炉(2)と、
乾留炉(2)で生じた乾留ガスを燃焼させる燃焼炉(4)と、
乾留炉(2)から燃焼炉へ乾留ガスを送るガス送給路(3)と、
燃焼炉(4)において生じる燃焼熱を回収する熱交換装置(5)と、
燃焼炉(4)における燃焼温度を検知し、乾留炉(2)への酸素または空気の供給量を制御する燃焼制御手段(6)と、
を備えており、
ガス送給路(3)は、乾留炉(2)の乾留部(29)または乾留部(29)より下側から導出され、燃焼炉(4)に導入されるよう構成されている、
廃棄物焼却ボイラー装置。
【請求項2】
燃焼炉(4)の内部に、乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化する手段(45)が設けられている、
請求項1記載の廃棄物焼却ボイラー装置。
【請求項3】
燃焼炉(4)の内部に、乾留ガスまたは燃焼ガスの流れを撹拌または乱流化するために、リボンスクリュー(R)が燃焼ガスの移動方向に沿うように複数並行して設けられている、
請求項1記載の廃棄物焼却ボイラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−82588(P2008−82588A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261529(P2006−261529)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(592171371)株式会社有明工業 (1)
【Fターム(参考)】