説明

弁組立体を備えた多成分分配装置

共通の入口/出口(15)を有する弁組立体(9)であって、注射器の容器(2,3)を選択的に閉鎖し、あるいは共通の入口/出口を介して前記容器の一方の中へ外部から液体を吸引し、あるいは2個の容器を相互に接続し、あるいは混合物を前記共通の入口/出口を介して分配することができる弁組立体を備えた2個の構成要素からなる注射器(1)が提供される。この弁組立体は、弁体が回転すると接続がなされ、あるいは遮断されるように配置された通路(28,29)を有するシールディスク(13)が設けられた弁体(12)から構成されている。そのような弁組立体の設計は簡単で、かつコスト的に効果があり、液体を容器中へ吸引し、その液体を粉末を入れている別の容器まで移送し、多成分からなる液体あるいはペーストを効率的に、かつ最小の圧力および量的喪失で分配することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特許請求の範囲の請求項1の序文に記載され、少なくとも2個の容器と、入口/出口を備えた弁組立体を有する、多構成要素からなる分配装置に関するものである。弁組立体を有するこの種の装置は本発明の出願人に対する国際公開第2005/018830号から知られている。
【背景技術】
【0002】
弁組立体を備えたそのような装置は、液体用の容器と粉末用の容器とを有し、事前に充填された液体が粉末のところまで移送されて粉末と混合され、その後分配されるか、あるいは外部から液体が吸引され、移送されて、粉末と混合され、その後分配されるかのいずれかであるような多成分注射器には特に有利である。閉鎖、吸引、移送および分配という四つの機能は三方弁組立体によって提供される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の従来技術に基づき、本発明の目的はより簡単で、かつより効果的な弁組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のこの目的は特許請求の範囲の請求項1に記載の弁組立体によって達成される。
【0005】
実施例を示す図面を参照して本発明を以下詳細に説明する。
【実施例】
【0006】
図1に示す複式注射器1は2個の容器2,3と保持フランジ4とを含み、小さい方の容器は通常液体を入れるためのものであり、一方大きい方の容器3は粉末を入れるようにされたものである。国際公開第2005/018830号の図13に示す例と同様に、混合ロッド5が粉末用容器3中へ延在し、取り外し可能なスラストロッド6が液体用容器2中へ延在し、混合ロッドはピストンを貫通している。
【0007】
先の引例に開示されているように、粉末と液体との混合物は混合ロッドによって攪拌され、容器2のスラストロッド6を使用して分配することができる。そのような複式注射器あるいはカートリッジの可能な実施例および適用に関しは、引用した文書が明白に参照される。
【0008】
出口側には、本発明による弁組立体9が配置されており、該弁組立体にはルエルーロック(Luer−Lok)コネクタによってカニューレあるいは針10が固定されている。ルエルーロックコネクタの代わりに別の出口形態を設けてもよい。
【0009】
弁組立体9は下向きに保持され、固定リング11によって複式注射器1に固定されている。本実施例においては、固定リングは取り外し可能なバヨネット式リングの形態であるが、ネジを切ったリングあるいは嵌め込み(スナップ)リングとして設計してもよく、あるいは弁組立体を注射器に接着させるか、あるいは溶接することも可能である。
【0010】
図2から図5までにおいて、弁組立体9の構成要素、すなわち弁体12とシールディスク13が組み立てられた状態で四つの位置において示されている。それらの各々の下方にある平面図は容器の入口に対するシールディスクの位置を示している。共通の入口/出口15が弁体を通して導かれている。
【0011】
弁体12の接続フランジ12Aの上側には位置決め突起23が配置されており、その反対側にはハンドルつまみ24が配置されていて、前記位置決め突起とハンドルつまみとはそれぞれの機能に対して弁体を回転させ、かつ位置決めし易くする。この目的に対して、位置決めマークの受け入れに供する領域26が固定リングの外側に設けられている。図1参照。
【0012】
図6は弁体12の詳細を示す。容器に面する側において、接続フランジ12Aはシールディスクにおける駆動用くぼみ31に対応する4個の駆動ピン32を含む。更に、シールディスクに面する接続フランジの面には4個の案内セグメント33,34,35および36が配置されており、その中の少なくとも2個には複式注射器のバヨネットカラー8の対応するノッチ18と協働するカム25が設けられている。このことによって、弁体に対する対応の嵌め込み位置を提供する。
【0013】
接続フランジの下側の案内セグメント36の上には、バヨネットカラー8の内径部にある2個の停止部材37,38と協働し、弁が適当な方向にだけ回転しうるようにする停止部材22が設けられている。その結果、弁の閉鎖、吸引、移送および分配位置がこの特定の順序でのみで選択可能となる。
【0014】
図7および図8において、シールディスク13が詳細に示されている。図8において、容器に面している面27が通路28と移送用溝29を含むものとして示されている。通路28の他に、弁体の出口に向けられている図7に示す他方の側30は4個の駆動用くぼみ31を含む。シールディスクは、そのシール機能を達成するために他のプラスチック材料よりも軟質の、例えばシリコンあるいはポリウレタンからつくられる。
【0015】
図9によれば、複式注射器1の容器2の出口16および容器3の出口17が出口フランジ7に配置されている。出口フランジにはバヨネットカラー8が設けられ、該バヨネットカラーには、固定リング11の対応するバヨネット突起20,20Aを受け入れるよう作用するバヨネットタブ19および19Aが設けられている。
【0016】
図から判るように、組み立てるには、シールディスクが4個の固定用くぼみ31を駆動用ピン32に載せて押し下げて位置され、貫通孔28を弁体の共通の入口/出口15と整合させながら、案内セグメントによって位置決めされる。このようにして、シールディスクは回転できないように弁体に接続される。
【0017】
弁体は複式注射器1の出口フランジ7に固定フランジ11(図10参照)によって固定され、固定リングのバヨネット突起20,20Aが複式注射器のバヨネットカラー8の下方にあるバヨネットタブ19,19Aと係合する。しっかりとした、できれば取り外し不可の接続を提供するために、固定リングのバヨネット突起は例えばバヨネットタブの下側にある対応するカム39と協働する段21の形態の嵌め込み手段を含む。
【0018】
弁体と、それに接続されているシールディスクとを回転させることによって、容器2および3の入口/出口16,17は選択的に閉鎖、開放、相互接続、あるいは弁体の入口/出口15との接続ができる。
【0019】
四つの弁位置について、図2から図5までを参照して、以下説明する。
【0020】
図2において、双方の容器の出口16および17は閉鎖されている。移送用溝29は機能的に中立位置にある。
【0021】
図3において、90度回転した後、液体用容器2は液体を吸引することができるようにシールディスクの通路28および弁体の共通の入口/出口15に接続される。
【0022】
図4において、弁体がシールディスクと共に図3に示す位置に対して90度回転すると、2個の容器の出口16および17は移送用溝29を介して相互に接続され、従って液体は容器2から容器3まで移送することができる。
【0023】
図5において、弁体がシールディスクと共に更に90度回転した後の状態で示されている。容器3からの出口17はシールディスクの通路28および弁体の入口/出口15に接続されており、混合された成分は容器3から分配することができる。
【0024】
全てのそれぞれ吸引および分配位置において、吸引と、主として分配作業とは、偏向とか突出した角のない直線で行うことができ、そのためこれらの機能の間に発生する圧力損失が最小であることが重要である。更に、シールディスクにおける移送用溝が短いことが容器3への液体の移送の間の量的喪失を確実に最小にする。
【0025】
2個の容器を有する単一の実施例によって本発明を説明してきたが、当該技術分野の専門家には、本明細書の導入部分で引用した特許公報において既に開示されているように、例えば2個以上の容器を有する注射器あるいはカートリッジを備えた分配器具のような、その他の装置に対しても本発明の概念は適用可能であることが認められる。2個以上の容器を有する装置においては、弁組立体、特にシールディスクはそれに対応して適合させる必要がある。
【0026】
適当な形態で、例えば三角形に配置された3個の容器を有する分配器具においては、2個のシールディスクを使用することが適当であり、その中のすくなくとも1個は弁体に配置される
【0027】
更に、本発明による弁組立体は攪拌装置の無い容器に対しても使用しうる。
【0028】
更に、吸引作業の間共通の入口/出口に残っている液体が混合された成分の前に分配され、弁体中へ入りうるのを避けるような特殊なケースにおいては弁体にそれぞれ別個の入口および出口を使用する実施例が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による弁組立体を備えた複式注射器の斜視図を示す。
【図2】種々の位置における図1に示す弁組立体の縦断面図とそれらに対応する平面図を示す。
【図3】種々の位置における図1に示す弁組立体の縦断面図とそれらに対応する平面図を示す。
【図4】種々の位置における図1に示す弁組立体の縦断面図とそれらに対応する平面図を示す。
【図5】種々の位置における図1に示す弁組立体の縦断面図とそれらに対応する平面図を示す。
【図6】容器に面する側から見た、弁組立体の弁体を示す。
【図7】弁体に面する側から見た、シールディスクを示す。
【図8】容器に面する側から見た、シールディスクをその上に装着した図6に示す弁体を示す。
【図9】複式注射器の出口側の斜視図を示す。
【図10】固定リングの斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多成分注射器またはカートリッジを備えた分配装置であって、少なくとも2個の容器と、共通の入口/出口を有する弁組立体とを含み、前記弁組立体が、少なくとも四つの位置において、少なくとも1個のその共通の入口/出口を第一の容器の出口に、あるいは第二の容器の出口に接続し、あるいは少なくとも2個の容器の出口を相互に接続し、あるいは注射器あるいはカートリッジを閉鎖するように設計されている分配装置において、前記弁組立体が少なくとも1個の入口/出口(15)と、少なくとも1個のシールディスク(13)とを含み、その中の少なくとも一方が弁体に配置され、前記シールディスクが前記の少なくとも四つの位置が前記弁体を回転させることによって選択可能とするように配置されている通路(28,29)を有していることを特徴とする分配装置。
【請求項2】
前記弁体(12)の共通の入口/出口(15)と注射器(1)あるいはカートリッジの出口(16,17)が直線で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シールディスク(13)を備えた弁体(12)が固定リング(11)によって前記の多成分分配装置(1)に取り外し可能に、あるいは取り外し不可能に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記シールディスク(13)が駆動手段(31,32)によって前記弁体(12)に接続されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記シールディスクが選択的に、通路(28)を介して第一の容器(2)と前記共通の入口/出口(15)との間、第二の容器(3)と前記共通の入口/出口(15)との間、移送通路(29)を介して2個の容器の間を接続し、あるいは全ての容器の出口を閉鎖するように少なくとも1個の通路(28)と少なくとも1個の移送通路(29)とを有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記シールディスク(13)が残りに部分よりも軟質な材料、好ましくはシリコンあるいはポリウレタンからつくられていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記注射器(1)あるいはカートリッジが、開口として容器の出口(16,17)が配置されており、かつ固定リング(11)のための固定手段(8;19,19A)が設けられている出口フランジ(7)を有することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記出口フランジおよび固定リングにある固定手段が協働する嵌め込みロック手段(21,39)を含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記弁体が接続フランジ(12)を有し、該フランジの前記入口/出口に面する面が固定リングにあるインジケータ手段(26)と協働する位置決め突起(23)並びにハンドルつまみ(24)を含むことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記接続フランジは前記容器と面する側において、駆動ピン(32)と、前記シールディスク(13)を受け入れる案内セグメント(33−36)とを有していることを特徴とする請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記案内セグメント(33−36)が嵌め込みカム(25)並びに停止部材(22)を有していることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
複式注射器あるいはカートリッジの固定リングのための固定手段がバヨネット式(19,19A;20,20A)の固定手段であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
ピストンから取り外し可能であるスラストロッド(7)を含む液体用容器(2)が設けられ、かつ前記ピストンを貫通する混合ロッド(5)を含む粉末用の別の容器(3)が設けられていることを特徴とする複式注射器(1)を備えた、請求項1から12までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−544839(P2008−544839A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518586(P2008−518586)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000325
【国際公開番号】WO2007/003063
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507123729)メッドミックス システムズ アーゲー (24)
【Fターム(参考)】