説明

弁装置

【課題】組み立てが容易で、かつ螺子36,37による弁ロッド31と弁体32及びダイアフラム33の結合力を安定させることによって弁装置の品質を向上させる。
【解決手段】ボディ1のシリンダ部1E及び弁孔1Dを貫通して軸方向往復動可能に配置された弁ロッド31と、弁孔1Dに一次側通路と反対側から対向すると共に弁ロッド31の一端に螺子36により結合される弁体32と、弁ロッド31における弁体32と反対側の端部に螺子37により結合されるダイアフラム33を備え、弁ロッド31とボディ1が、係合手段5を介して互いに回り止め可能となっている。このため、弁ロッド31の端部に螺子36,37により弁体32及びダイアフラム33を結合する際に、弁ロッド31の共回りを防止することができ、組み立てが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁装置であって、例えば電気温水機などの給水配管に好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の弁装置として、従来から、例えば図6に示されるようなものが知られている。すなわち図6に示される弁装置は、ボディ100と、弁機構部110と、第二弁機構部120を備え、このうちボディ100は、上流側である一次側通路101と、下流側である二次側通路102と、これら一次側通路101と二次側通路102の間に形成されたシリンダ部103と、このシリンダ部103と対向する位置で前記一次側通路101と二次側通路102の間を連通する弁孔104が形成されている。
【0003】
弁機構部110は、ボディ100のシリンダ部103及び弁孔104を貫通するように配置された弁ロッド111と、この弁ロッド111に一体に形成され前記シリンダ部103の内周面にパッキン113を介して摺動可能に密嵌されたピストン112と、前記弁ロッド111の端部に螺子部115を介して結合され二次側通路102側から弁孔104を開閉する弁体114と、弁ロッド111における弁体114と反対側の端部(ピストン112の端部)に螺子部116によって結合され、二次側通路102の水圧によって弁体114を弁孔104に対する接近方向へ付勢するダイアフラム117と、弁体114を弁孔104に対する離間方向へ付勢するスプリング118からなる。
【0004】
第二弁機構部120は、一次側通路101とダイアフラム117側との間を連通する連通孔105を開閉する第二弁体121と、この第二弁体121を連通孔105に対する接近方向へ付勢する第二スプリング122からなり、一次側通路101の水圧が第二弁体121を連通孔105に対する離間方向へ作用するものである。
【0005】
そしてこの弁装置は、何らかの要因により二次側通路102の水圧が上昇した場合、この水圧を受けるダイアフラム117がスプリング118を圧縮する方向へ変位して、このダイアフラム117に結合された弁ロッド111を介して弁体114を閉弁方向へ変位させるので、弁孔104から二次側通路102への流路面積が減少して圧力損失が増加し、二次側通路102の水圧を所定値以下に維持するものである。また、弁機構部110における弁体114が弁孔104を閉塞することによって一次側通路101と二次側通路102の間を遮断した状態で、一次側通路101の水圧が所定値を超えて上昇した場合、この水圧によって、第二弁機構部120が開弁動作して一次側通路101と二次側通路102を連通させるので、一次側通路101の水圧を開放して減圧することができるようになっている(例えば下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−186106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の弁装置は、その組み立てに際して、弁ロッド111の端部に螺子部115によって弁体114を結合する作業は、弁ロッド111における弁体114と反対側の端部(ピストン112の端部)に螺子部116によってダイアフラム117を結合してから、弁ロッド111を弁孔104へ挿入しピストン112をシリンダ部103へ挿入した状態で行うことになるため、螺子部115を締め付ける際の弁ロッド111の共回りを防止するには、ダイアフラム117側の螺子部116を回り止めのために使用する必要があり、このため作業が困難であるばかりでなく、螺子部115,116による結合力にバラつきを生じやすい問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、組み立てが容易で、かつ螺子部による弁ロッドとダイアフラム及び弁体の結合力を安定させることによって弁装置の品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る弁装置は、ボディと、このボディ内に配置された弁機構部からなり、前記ボディは、互いに同軸上に開設された弁孔及びシリンダ部が形成され、前記弁機構部は、前記シリンダ部及び弁孔を貫通して軸方向往復動可能に配置された弁ロッドと、前記弁ロッドの一端に螺子により結合される弁体と、前記弁ロッドにおける前記弁体と反対側の端部に螺子により結合されるダイアフラムを備え、前記ボディに対して前記弁ロッドを回り止めする係合手段を備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明に係る弁装置は、請求項1に記載の構成において、弁ロッドの外周をシールするパッキンがボディのシリンダ部と係合手段の間に保持されたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明に係る弁装置は、請求項1に記載の構成において、係合手段が、ダイアフラムの外径部をボディに固定する固定手段によって、前記ダイアフラムの外径部と共にボディに固定されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る弁装置によれば、その組み立てに際して、弁ロッドをボディのシリンダ部及び弁孔へ挿入する際に、前記ボディと弁ロッドを、係合手段を介して円周方向に互いに係合させることによって、弁ロッドがボディに対して回り止めされるため、弁ロッドの端部に螺子によりダイアフラムを結合する際に、弁ロッドの共回りを防止することができ、また、弁ロッドにおけるダイアフラムと反対側の端部に螺子により弁体を結合する際に、弁ロッドの共回りを防止することができ、その結果、組み立て作業が容易になると共に、ダイアフラム及び弁体の結合力のバラつきも有効に抑制される。
【0013】
請求項2の発明に係る弁装置によれば、弁ロッドの共回りを防止する係合手段がパッキンの保持手段を兼備するため、簡素な構造とすることができる。
【0014】
請求項3の発明に係る弁装置によれば、ダイアフラムの外径部をボディに固定する固定手段が、係合手段をボディに固定するための固定手段を兼ねるため、簡素な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る弁装置の好ましい実施の形態を、弁ロッドの軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】本発明に係る弁装置の好ましい実施の形態を、図1の断面と直交し弁ロッドの軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図3】本発明に係る弁装置の好ましい実施の形態を示す要部分解斜視図である。
【図4】本発明に係る弁装置の組み立て過程を示す要部断面図である。
【図5】本発明に係る弁装置の組み立て過程を示す要部断面図である。
【図6】従来の減圧弁を弁ロッドの軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る弁装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1は、本発明に係る弁装置を給水装置の減圧弁に適用した好ましい実施の形態を、弁ロッドの軸心を通る平面で切断して示す断面図、図2は、図1の断面と直交し弁ロッドの軸心を通る平面で切断して示す断面図、図3は、要部分解斜視図である。
【0017】
図1及び図2において、参照符号1は合成樹脂製のボディで、上側に開口した皿状支持部11と、下側に開口した下部筒部12と、皿状支持部11及び下部筒部12の開口方向と直交する方向へ開口した筒状の第一継手部13、第二継手部14及び第二弁部取付部15とを備える。また、参照符号2は合成樹脂製のボトムで、ボディ1の下部筒部12を塞ぐように固定され、その嵌合面間はOリング21によって密封されている。
【0018】
ボディ1の内部には、第一継手部13の内周からボディ1の内部へ延びる一次側通路1Aと、第二継手部14の内周に形成された二次側通路1Bと、下部筒部12の内周及びボトム2により形成され二次側通路1Bと連続した弁室1Cと、一次側通路1Aと弁室1Cを互いに連通する弁孔1Dと、この弁孔1Dと同軸上に位置して一端が一次側通路1Aにおける弁孔1Dと反対側に開口し他端が皿状支持部11の内周空間に形成される導圧室S側に開口したシリンダ部1Eと、二次側通路1Bと前記導圧室Sを互いに連通する導圧路1Fが形成されている。また、一次側通路1Aと第二弁部取付部15の内周空間との間には、弁孔1Dよりも十分に小径の第二弁孔1Gが開設されている。
【0019】
参照符号3は弁機構部で、ボディ1のシリンダ部1E及び弁孔1Dを貫通して軸方向往復動可能に配置された弁ロッド31と、ボディ1の弁室1Cに配置されると共に前記弁ロッド31の一端に結合された弁体32と、前記弁ロッド31の他端に結合され導圧路1Fを介して導圧室Sに導入される二次側通路1Bの水圧により弁ロッド31を弁孔1Dに対する弁体32の接近方向へ付勢するダイアフラム33と、弁ロッド31を弁孔1Dに対する弁体32の離間方向へ付勢するスプリング34を備える。
【0020】
詳しくは、弁機構部3における弁ロッド31はシリンダ部1Eに挿通された部分にピストン部31aが形成されており、このピストン部31aの外周面とシリンダ部1Eとの間の隙間はパッキン35によって密封されている。
【0021】
弁機構部3における弁体32は、外径がボディ1の弁孔1Dよりも大径の環状をなすものであってゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなり、金属製のホルダ32aに保持されており、弁ロッド31の一端に形成された雄螺子31b及びこれに螺合したナット36によって、前記弁ロッド31の一端に結合され、前記弁孔1Dに、一次側通路1Aと反対側(弁室1C側)から対向している。なお、ナット36は請求項1に記載された螺子に相当する。
【0022】
弁ロッド31のピストン部31aの外径(パッキン35のシール径)は、ボディ1の弁孔1Dの内径よりも僅かに大きく、言い換えれば、一次側通路1Aの水圧に対するピストン部31aの受圧面積は、弁孔1Dの閉塞時にこの弁孔1Dを介して一次側通路1Aの水圧を受ける弁体32の受圧面積よりも僅かに大きい。
【0023】
弁機構部3におけるダイアフラム33は、円盤状のゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、弁ロッド31のピストン部31aよりも十分に大径であり、その内径部は、弁ロッド31の他端(弁体32と反対側の端部)に形成された雄螺子31c及びこれに螺合したナット37によって、ボディ1の皿状支持部11の内径よりも小径の円盤状の合成樹脂板又は金属板からなるリテーナ38を介して、このリテーナ38と弁ロッド31のピストン部31aとの間に挟持された状態で結合されている。なお、ナット37は請求項1に記載された螺子に相当する。
【0024】
参照符号4は金属等からなるカバーであって、そのフランジ部4aが複数の螺子部材41によってボディ1の皿状支持部11の端面に取り付けられている。そしてダイアフラム33の外径部は、前記フランジ部4aと皿状支持部11の間に挟持されることによって、この皿状支持部11の端面に密接状態で固定されている。なお、カバー4のフランジ部4a及び螺子部材41は、請求項3に記載された固定手段に相当する。
【0025】
そしてダイアフラム33は、ボディ1の皿状支持部11の外径フランジ部11bとカバー4のフランジ部4aとの間に挟持された外径部と、リテーナ38と弁ロッド31のピストン部31aとの間に挟持された内径部との間に、容易に変形可能な可撓部33aを有するため、導圧室Sに導入される二次側通路1Bの水圧の変化によって変位することができる。
【0026】
弁機構部3におけるスプリング34は、コイルスプリングからなるものであって、カバー4の上部筒部4bの内周に螺合された調節螺子42と、ダイアフラム33の内径部を押さえているリテーナ38との間に適当な圧縮状態で配置されており、その圧縮反力によって、弁孔1Dから弁体32が離間する方向へ弁ロッド31を付勢するものである。なお、調節螺子42はカバー4の上部筒部4bへのねじ込み量によってスプリング34の初期圧縮量、言い換えれば弁ロッド31への付勢力を調節するものであって、その中央部にはダイアフラム33の円滑な動作を確保するための通気孔42aが開設されている。
【0027】
参照符号5は合成樹脂等からなる円盤状のプレートで、請求項1に記載の係合手段に相当するものであり、図3の斜視図に示されるように、ボディ1の皿状支持部11の内周に嵌入されている。このプレート5は、弁ロッド31のピストン部31aを挿入可能な内径孔5aと、その外周側にあって円弧状に延びる円周方向複数の被係合孔5bと、さらにその外周側にあって円弧状に延びる円周方向複数の導圧孔5cが開設され、各被係合孔5bの間及び各導圧孔5cの間は径方向に延びる被係合リブ51となっており、その下面には各導圧孔5c間を互いに連通する導圧溝5dが形成されている。また、このプレート5の内径部には、内径孔5aを介して対向し、互いに平行な一対の平面からなる係合面5eが形成されている。
【0028】
導圧室Sは、ボディ1における皿状支持部11の内周空間にあってプレート5とダイアフラム33の間に画成されている。この導圧室Sは、プレート5に形成された複数の導圧孔5c及び導圧溝5dと、ボディ1の導圧路1Fを介してボディ1の二次側通路1Bに連通されている。
【0029】
プレート5の外径部の上面は突縁52となっていて、図1及び図2に示される組み立て状態では、この突縁52はダイアフラム33の外径部を介してカバー4のフランジ部4aと対向しており、これによってボディ1の皿状支持部11の内周に抜け止め状態で保持されている。
【0030】
弁ロッド31のピストン部31aの外周面とボディ1のシリンダ部1Eとの間の隙間を密封するパッキン35は、前記シリンダ部1Eにおける皿状支持部11側の端部に形成された環状溝18と、前記皿状支持部11の内周に嵌入されたプレート5の内径部との間に保持されている。
【0031】
一方、ボディ1における皿状支持部11の底面11aには、その内径近傍に位置して円周方向複数の係合突起17が形成されており、これらの係合突起17は、それぞれプレート5における被係合孔5bと円周方向に係合可能となっている。また、各係合突起17には、プレート5における各被係合リブ51と係合させることによってプレート5を皿状支持部11の底面11aから浮上した状態で支持可能な径方向の係合溝17aが形成されている。
【0032】
係合突起17の突出高さはプレート5の突縁52とほぼ同一高さであって、ダイアフラム33の内径部を押さえているリテーナ38と軸方向に対向する位置にある。このため、スプリング34の伸長方向(弁孔1Dから弁体32が離間する方向;開弁方向)への弁ロッド31の動作は、ダイアフラム33の内径部が係合突起17と当接することによって制限されるようになっている。
【0033】
また、弁ロッド31におけるピストン部31aのダイアフラム33側の端部には、軸方向の投影形状が多角形(図3に示される例では正六角形)をなしてピストン部31aより外径側へ張り出した被係合鍔部31dが形成されており、この被係合鍔部31dの多角形状の外周面を構成する互いに平行な複数対の平面のうちいずれか一対が、プレート5における一対の係合面5eと係合可能となっている。
【0034】
図2における参照符号6は第二弁部で、第二弁部取付部15の内周に配置されて、この第二弁部取付部15の内周空間と一次側通路1Aとの間を連通する第二弁孔1Gを開閉する第二弁体61と、この第二弁体61を前記第二弁孔1Gの閉塞方向へ付勢する第二スプリング62と、前記第二弁部取付部15にOリング64を介して密嵌されると共に不図示の螺子部材によって固定され、前記第二スプリング62を保持する中空のハウジング63とからなる。
【0035】
以上のように構成された本発明に係る弁装置は、ボディ1の第一継手部13が上流側の配管に接続され、ボディ1の第二継手部14が下流側の配管に接続されることによって、上流側の配管から一次側通路1A、弁孔1D、弁室1Cを経由して二次側通路1Bからさらに下流側の配管へ到る流路を形成する。
【0036】
そして、例えば二次側通路1Bの下流側の流路を開放することによって、二次側通路1B内の水圧が一次側通路1Aの水圧よりも低下した場合は、その圧力差は、弁ロッド31におけるピストン部31aに対しては弁体32を弁孔1Dへ接近させる閉弁方向へ作用する。しかしながら、二次側通路1Bの水圧低下と共に導圧室S内の水圧も低下するため、ダイアフラム33をスプリング34の圧縮方向へ変位させる方向への付勢力が小さくなって、弁ロッド31はスプリング34の伸長力によって弁体32が弁座16から離れる方向へ変位し、すなわち弁孔1Dが開放される(開弁する)。このため、不図示の給水源から供給される水が、一次側通路1Aから弁孔1D、弁座16と弁体32との隙間、弁室1C及び二次側通路1Bを経由してその下流側へ吐出される。
【0037】
そして、上述のように弁体32が弁孔1Dを開放した状態において、二次側通路1B内の水圧が上昇した場合は、二次側通路1Bと連通した導圧室S内の水圧も上昇するので、ダイアフラム33はスプリング34を圧縮させる方向、すなわち弁ロッド31を介して弁体32を弁孔1Dへ接近させる方向へ変位する。このため、弁孔1Dに対する弁体32の開度が小さくなって、弁座16と弁体32との隙間を水が通過する際の圧力損失が大きくなるので、二次側通路1Bの水圧が低下する。したがって、二次側通路1Bの水圧の変動を抑制して一定範囲に保持することができる。
【0038】
また、例えば二次側通路1Bの下流側の流路が閉鎖されることによって、一次側通路1Aから弁孔1D、弁座16と弁体32との隙間、弁室1C及び二次側通路1Bを経由してその下流側へ吐出される水の流れが止まると、二次側通路1B内の水圧が一次側通路1Aの水圧と同等になるので、ボディ1の導圧路1F及びプレート5の複数の導圧孔5c及び導圧溝5dを介して二次側通路1Bから導入されている導圧室S内の水圧によって、ダイアフラム33はスプリング34を圧縮させる方向へ変位する。このため、弁ロッド31は弁体32が弁座16と密接する位置まで変位し、弁孔1Dを閉塞(閉弁)する。
【0039】
また、弁体32が弁座16と密接して弁孔1Dを閉塞(閉弁)した状態において、何らかの原因により一次側通路1Aの水圧が上昇した場合は、一次側通路1Aの水圧に対する弁ロッド31のピストン部31aの受圧面積は、弁孔1Dを介して一次側通路1Aの水圧を受ける弁体32の受圧面積よりも僅かに大きいため、その受圧面積の差による弁ロッド31への付勢力は閉弁方向へ作用し、したがって弁孔1Dの閉塞状態が維持される。しかしながら、前記一次側通路1A内の水圧は、第二弁部6の第二弁体61を第二弁孔1Gから離間させる方向へ付勢するため、この一次側通路1A内の水圧があらかじめ設定された所定値を超えて上昇すると、第二弁体61は第二スプリング62の付勢力に抗して開弁動作する。このため、一次側通路1Aの水圧は第二弁孔1G及び中空のハウジング63を通じて開放され、一次側通路1Aの異常な水圧上昇が防止される。
【0040】
図4及び図5は、上記構成の弁装置の組み立て過程を示す要部断面図である。
【0041】
すなわち上記構成の弁装置の組み立てに際しては、図4に示されるように、まずボディ1のシリンダ部1Eにおける皿状支持部11側の端部に形成された環状溝18にパッキン35を挿入し、前記皿状支持部11にプレート5を嵌入する。このとき、プレート5の各被係合リブ51を、皿状支持部11の底面11aに突設された各係合突起17の係合溝17aに係合させることによって、プレート5を、皿状支持部11の底面11aから浮上した状態に支持する。
【0042】
次に弁ロッド31を、プレート5の内径孔5aを通じて、ボディ1のシリンダ部1E及び弁孔1Dへ挿入する。このとき、弁ロッド31のピストン部31aの端部に形成された被係合鍔部31dの外周面を構成する互いに平行な複数対の平面のうちいずれか一対が、プレート5における一対の係合面5eと同位相となるように、弁ロッド31を適当に回転させることによって、前記被係合鍔部31dがプレート5の係合面5eと係合される。
【0043】
なお、弁ロッド31のピストン部31aはプレート5の内径孔5aへ挿入されるが、被係合鍔部31dはピストン部31aより外径側へ張り出していて内径孔5aへの挿入が不可能であるため、図4に示されるように、弁ロッド31は、被係合鍔部31dの上端面がプレート5の内径孔5aから露出すると共に、ボディ1の皿状支持部11の底面11aに突設された係合突起17の上端面と略同一の高さとなるように支持される。
【0044】
次に、プレート5の内径孔5aから突出した弁ロッド31の端部にダイアフラム33の内径孔33b及びリテーナ38の内径孔38aを外挿し、リテーナ38の内径孔38aから突出した弁ロッド31の雄螺子31cにナット37を螺合させることによって、ダイアフラム33の内径部を弁ロッド31のピストン部31aとリテーナ38の間に挟持した状態に結合する。
【0045】
このとき、弁ロッド31の被係合鍔部31dはプレート5の係合面5eと係合しており、さらにプレート5はその各被係合リブ51が、ボディ1における各係合突起17に形成された係合溝17aと係合しているので、弁ロッド31はプレート5を介して回り止めされている。このため、雄螺子31cにナット37をねじ込む際に弁ロッド31が共回りすることがなく、しかもダイアフラム33の内径部及びその上のリテーナ38が、ボディ1の係合突起17の上端面及び弁ロッド31の被係合鍔部31dの上端面に支持されるので、ナット37を容易にかつしっかりと緊結することができる。
【0046】
一方、弁ロッド31におけるダイアフラム33と反対側の端部には、ボディ1の弁孔1Dの外側から弁体32を外挿し、この弁体32の内径孔から突出した弁ロッド31の雄螺子31bにナット36を螺合することによって、弁体32を、内径部がナット36と弁ロッド31の環状段差部31eの間に緊結されるホルダ32aと、弁ロッド31の鍔部31fによって固定する。そしてこの弁体32の取り付け作業でも、上述のように弁ロッド31はプレート5を介して回り止めされている。このため、雄螺子31bにナット36をねじ込む際に弁ロッド31が共回りすることがなく、ナット36を容易にかつしっかりと緊結することができる。
【0047】
弁ロッド31へのダイアフラム33及び弁体32の取り付け作業が終わったら、プレート5の被係合リブ51を、ボディ1における各係合突起17に形成された係合溝17aから外して、各係合突起17の間に位置させることによって、図5に示されるように、プレート5はボディ1における皿状支持部11の底面11a上に落し込まれると共に、このプレート5の被係合孔5bが前記係合突起17と係合される。なお、このときダイアフラム33の内径部が、プレート5の被係合孔5bから突出した係合突起17の上端と当接され、すなわちダイアフラム33の内径部、リテーナ38及びナット37(第二の螺子部37)を介して、弁ロッド31が係合突起17に支承され、弁ロッド31の被係合鍔部31dとプレート5の係合面5eとの係合状態が解除される。
【0048】
そしてダイアフラム33の外径部をボディ1の皿状支持部11の外径フランジ部11bに嵌合させ、スプリング34、カバー4及び調節螺子42を組み付ける。このとき、カバー4のフランジ部4aを複数の螺子部材41で前記皿状支持部11の端面に緊結することによって、ダイアフラム33の外径部が前記皿状支持部11に密接状態に固定されると共に、プレート5がボディ1の皿状支持部11の内周に抜け止め状態で保持される。
【0049】
また、プレート5がボディ1の皿状支持部11の内周に抜け止めされることによって、ボディ1における環状溝18に挿入されたパッキン35が、このプレート5の内径部によって抜け止めされる。
【0050】
そして、ボディ1に図2に示されるボトム2及び第二弁部6を取り付けることによって当該弁装置の組み立てが終了する。
【符号の説明】
【0051】
1 ボディ
1A 一次側通路
1B 二次側通路
1C 弁室
1D 弁孔
1E シリンダ部
17 係合突起
17a 係合溝
2 ボトム
3 弁機構部
31 弁ロッド
31d 被係合鍔部
32 弁体
33 ダイアフラム
34 スプリング
35 パッキン
36,37 ナット(螺子)
4 カバー
5 プレート(係合手段)
5b 被係合孔
5e 係合面
51 被係合リブ
52 突縁
S 導圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、このボディ内に配置された弁機構部からなり、前記ボディは、互いに同軸上に開設された弁孔及びシリンダ部が形成され、前記弁機構部は、前記シリンダ部及び弁孔を貫通して軸方向往復動可能に配置された弁ロッドと、前記弁ロッドの一端に螺子により結合される弁体と、前記弁ロッドにおける前記弁体と反対側の端部に螺子により結合されるダイアフラムを備え、前記ボディに対して前記弁ロッドを回り止めする係合手段を備えることを特徴とする弁装置。
【請求項2】
弁ロッドの外周をシールするパッキンがボディのシリンダ部と係合手段の間に保持されたことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
係合手段が、ダイアフラムの外径部をボディに固定する固定手段によって、前記ダイアフラムの外径部と共にボディに固定されることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−248512(P2011−248512A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119392(P2010−119392)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】