説明

弾性履帯の製造方法及びこれを用いた加硫成形装置

【課題】強固に加硫接着することができる弾性履帯の製造方法及びこれを用いた加硫成形装置を提供する。
【解決手段】帯長手方向において加熱ゾーンHと冷却ゾーンCとに区画された金型8によって帯長手方向の一端部を未加硫または半加硫のままにして帯状ゴム様体7を加硫成形する。このあと、この帯状ゴム様体7の一端部に形成された未加硫または半加硫状態の接合面14をそれと同じ帯状ゴム様体71または他の帯状ゴム様体72の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部に接合させて加硫接着する。この単一または複数の前記帯状ゴム様体7の一端部と他端部同士を互いに一体化するようにして製品を構成する。上記の製造方法において、帯状ゴム様体7の接合面14と製品の外面となる製品外面2Aとの境界線Bを冷却ゾーンC内でかつ加熱ゾーンHから離れたところに位置させた状態で当該接合面14を帯状ゴム様体7の他端部に加硫接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種のクローラ式走行装置に装着される弾性クローラなどの弾性履帯の製造方法及びこれを用いた加硫成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農林作業車両や建設車両などに装着される無端状弾性履帯として、例えば、弾性クローラが知られている。この弾性クローラの製造方法として、予め周形状とされた抗張帯を使用した(ラップジョイントではない)スパイラルクローラ等を製造するための送り加硫と称される製造方法が知られており、実用化されている。
この送り加硫による弾性クローラの製造方法は、帯長手方向において加熱ゾーンと冷却ゾーンとに区画された金型によって、帯長手方向の一端部を未加硫または半加硫のままにして帯状ゴム様体を加硫成形する。そのあと、この帯状ゴム様体の一端部に形成された未加硫または半加硫状態の接合面を、それと同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部に接合させて加硫接着する。これによって、単一または複数の前記帯状ゴム様体の一端部と他端部同士を互いに一体化するようにして製品を構成する方法である(例えば、特許文献1参照)。また、送り加硫と呼ばれていないが、長尺部分の1次加硫、ラップジョイント部分のジョイント2次加硫により周形状をなすゴムクローラを完成させる製造方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−120231号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の弾性クローラの製造方法では、帯状ゴム様体の接合面と製品の外面となる製品外面との境界線が、冷却ゾーンと加硫成形ゾーンとの境界と同位置に配置され、その接合面と製品の外面となる製品外面との境界線の周囲を充分に冷却することができない場合があった。充分に冷却されない部分は、硬くなり過ぎるいわゆるオーバー加硫状態となる。このオーバー加硫状態で加硫接着を行うと、充分な接着性を確保することができず、製品使用時における亀裂の発生や欠けなどの原因となる場合があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、強固に加硫接着することができる弾性履帯の製造方法及びこれを用いた加硫成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法は、帯長手方向において加熱ゾーンと冷却ゾーンとに区画された金型によって帯長手方向の一端部を未加硫または半加硫のままにして帯状ゴム様体を加硫成形したあと、この帯状ゴム様体の一端部に形成された未加硫または半加硫状態の接合面をそれと同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部に接合させて加硫接着することにより、単一または複数の前記帯状ゴム様体の一端部と他端部同士を互いに一体化するようにして製品を構成する弾性履帯の製造方法において、前記帯状ゴム様体の接合面と製品の外面となる製品外面との境界線を前記冷却ゾーン内でかつ前記加熱ゾーンから離れたところに位置させた状態で当該接合面を前記帯状ゴム様体の他端部に加硫接着させることを特徴とする。
本発明の方法によれば、帯状ゴム様体の接合面と製品外面との境界線を冷却ゾーン内でかつ加熱ゾーンから離れたところに位置させた状態で当該接合面を帯状ゴム様体の他端部に加硫接着させるので、接合面を加硫接着するのに適した未加硫または半加硫の状態を保持することができる。
【0006】
また、上記の弾性履帯の製造方法において、前記接合面と製品外面との境界線は、弾性履帯の外周側に形成されるラグ間に配置されてもよく、同ラグの上面に配置されてもよい。特に、接合面と製品外面との境界線が、熱の制御が困難なゴムボリュームの大きいラグの上面に配置された場合においても、接合面を加硫接着するのに適した未加硫または半加硫の状態に保持することができる。
【0007】
また、上記の弾性履体の製造方法は、次のような加硫成形装置によって行うことができる。すなわち、この加硫成形装置は、未加硫ゴムを加硫成形するための互いに接近離反自在な一対の加熱金型と、前記未加硫ゴムを未加硫または半加硫状態のままで成形するために前記各加熱金型の帯長手方向一端側に接続された冷却金型とを備えている弾性履帯の加硫成形装置において、前記冷却金型は、加硫接着用の接合面を成形するための第一成形面と、この第一成形面と前記加熱金型との境界の間に配置された弾性履帯の製品外面を成形するための第二成形面とを備えている。
【0008】
また、本発明の方法は、帯長手方向において加熱ゾーンと冷却ゾーンとに区画された金型によって帯長手方向の一端部を未加硫または半加硫のままにして帯状ゴム様体を加硫成形したあと、この帯状ゴム様体の一端部に形成された未加硫または半加硫状態の接合面をそれと同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部に接合させて加硫接着することにより、単一または複数の前記帯状ゴム様体の一端部と他端部同士を互いに一体化するようにして製品を構成する弾性履帯の製造方法において、加硫接着時に前記金型で押圧されて流動して製品外面を形成しつつあとから接合される同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部と一体化する流動部を単一または複数の前記帯状ゴム様体の一端部に設け、前記流動部と前記製品外面との境界線を前記冷却ゾーン内に位置させた状態で当該一端部を前記帯状ゴム様体の他端部に加硫接着させることを特徴とする。
【0009】
本発明の方法によれば、加硫接着時に金型で押圧されて流動して製品外面を形成しつつあとから接合される同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部と一体化する流動部が、単一または複数の帯状ゴム様体の一端部に設けられており、この流動部が冷却ゾーン内に位置させた状態で当該一端部を帯状ゴム様体の他端部に加硫接着させるので、接合される部分には、明確な接合面が形成されることなく、連続した製品外面が形成されて接合される。従って、より一層強固に加硫接着することができる。
【0010】
また、上記の弾性履体の製造方法は、次のような加硫成形装置によって行うことができる。すなわち、この加硫成形装置は、未加硫ゴムを加硫成形するための互いに接近離反自在な一対の加熱金型と、前記未加硫ゴムを未加硫または半加硫状態のままで成形するために前記各加熱金型の帯長手方向一端側に接続された冷却金型とを備えている弾性履帯の加硫成形装置において、前記冷却金型は、流動して製品外面を形成しつつあとから接合される同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の端部と一体化する流動部を成形するための第一成形面と、この第一成形面と前記加熱金型との境界の間に配置された弾性履帯の製品外面を成形するための第二成形面とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、接合面の接着性を充分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる弾性履帯の製造方法を有する加硫成形装置の部分断面図である。
【図2】弾性履帯を示す側面図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる弾性履帯の製造方法を示す工程図である。
【図4】本発明の第二実施形態にかかる弾性履帯の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明の第三実施形態にかかる弾性履帯の製造方法を有する加硫成形装置の部分断面図である。
【図6】本発明の第三実施形態にかかる弾性履帯の製造方法を示す工程図である。
【図7】加硫接着後の帯状ゴム様体を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかる弾性履帯の製造方法を備えた加硫成形装置1を示し、図2は、加硫成形装置1を用いて製造される製品としての弾性履帯2を示している。なお、図1の左右方向を前後方向とし、これ以降に示す図面は、全てこの図1と同様とする。
図2に示すように、この弾性履帯2は、コンバインやハーベスタなどのクローラ走行装置に用いられる弾性クローラであり、弾性ゴム材を無端状にしてなるクローラ本体3と、クローラ本体3に埋設されたスチールコードなどの抗張体4と、クローラ本体3の内周側(図の下側)に突出して設けられる駆動突起5と、クローラ本体3の外周側(図の上側)に突出して設けられるラグ6とを有している。
【0014】
抗張体4は、クローラ本体3の内部で無端状に周回して設けられている。本実施形態の抗張体4は、予め帯状のゴム様体に複数本のスチールコード4aが埋設されて一本の平ベルト状に構成されたものが用いられており、この平ベルト状の抗張体4が、他の未加硫ゴムと加硫成形されてクローラ本体3に埋設された状態となっている。
駆動突起5は、クローラ走行装置の転動輪(図示せず)からの駆動力を弾性クローラ2に伝達するためのものであり、クローラ本体3の幅方向中央、かつ、周方向に所定の間隔で複数配置されている。そして、ラグ6は、断面ほぼ台形状で、かつ、クローラ本体3の幅方向に伸びるほぼ直線上に形成されており、駆動突起5と同ピッチで複数配置されている。なお、図示しないが、弾性クローラ2は、クローラ本体に設けられた芯金にスプロケットが係合することで弾性クローラを回転方向に駆動する芯金有りタイプのものであってもよい。
【0015】
図1に示すように、この加硫成形装置1は、成形される帯状ゴム様体7の帯長手方向において、加熱ゾーンHと冷却ゾーンCとに区画された金型8を有している。この金型8は、帯状ゴム様体7を構成する未加硫ゴム9を加硫成形するための互いに接近離反自在な一対の加熱金型10と、未加硫ゴム9を未加硫または半加硫状態のままで成形するために、各加熱金型10の帯長手方向一端側に接続された冷却金型11とを備えている。
一対の加熱金型10は、弾性クローラ2のラグ6側を成形する上型10aと、弾性クローラ2の駆動突起5側を成形する下型10bとを有しており、上型10a及び下型10bの外面側には、加熱部13が設けられている。加熱部13には、加熱装置(図示せず)が接続されており、加熱装置からの熱によって、当該加熱部13が加熱されるようになっている。また、図示しないが上下型10a、10bと加熱部13との間にモールド引き出しの為の鉄板を入れてもよい。
【0016】
冷却金型11は、帯状ゴム様体7の帯長手方向一端部に加硫接着用の接合面14を成形するための第一成形面11aと、この第一成形面11aと加熱金型10との境界の間に配置された弾性クローラ2の製品外面2Aを成形するための第二成形面11bとを備えている。第一成形面11aは、側面形状が前方に向かって先細り状に設けられており、第二成形面11bは、帯長手方向に水平に設けられている。上記のように冷却金型11を構成することで、帯状ゴム様体7の接合面14と製品外面2Aとの境界線Bが、冷却ゾーンC内でかつ加熱ゾーンHから離れたところに位置されるようにしている。そして、本実施形態では、接合面14と製品外面2Aとの境界線Bが弾性クローラ2の外周側に形成されるラグ6間に配置されるように、金型8が構成されている。なお、帯状ゴム様体7の内周側に設けられる接合面14と製品外面2Aとの境界線Bは、弾性クローラ2の内周側に形成される駆動突起5間に配置されている。すなわち、境界線Bが、冷却ゾーンC内に設けられている。
【0017】
上記の第一成形面11aの近傍には、冷却金型11を冷却するための冷却通路16がそれぞれ設けられており、この冷却通路16には、ほぼ一定温度の冷却水(水又は温水)を供給可能な冷却水供給装置(図示せず)が接続されている。この冷却水供給装置からの冷却水が当該冷却通路16を流れることによって、冷却金型11の温度が加熱金型10の温度よりも低くなるように構成されており、冷却金型11によって成形される帯状ゴム様体7を適度な硬さに未加硫または半加硫できるようになっている。
【0018】
図3は、弾性クローラ2の製造工程を示している。この図を用いて、複数の帯状ゴム様体7x(x=1,2,3…)を順次加硫成形して1本の帯状ゴム様体7を構成し、無端状の弾性クローラ2を製造する方法について説明する。なお、ここでは、2つの帯状ゴム様体71,72を加硫成形して、1本の帯状ゴム様体7を得るものとする。
【0019】
まず、図3(a)に示すように、第1工程として、抗張体4の内周側と外周側とに、所定の長さの未加硫ゴム9を添設し、抗張体4と未加硫ゴム9とを上型10aと下型10bとで挟持する。この時、接合面14と製品外面2Aとの境界線Bは、弾性クローラ2の外周側に形成されるラグ6間に配置されている。
また、加熱金型10の他端部には上記冷却金型11とほぼ同じ形状を呈しかつ冷却通路16が形成された冷却金型12が接続されており、最初に成形される帯状ゴム様体71の他端部(後方端部)が未加硫または半加硫とされることで、次に説明する第5工程で当該他端部が最後に無端状となるように加硫接着される。
【0020】
次に、第2工程として、加熱部13によって加熱金型10を加熱し、抗張体4と未加硫ゴム9とを加硫成形して帯状ゴム様体71を構成する。この第2工程において、帯状ゴム様体71の帯長手方向の一端部(前方端部)に形成される接合面14aは、金型8の冷却金型11によって未加硫または半加硫のままにして加硫成形される。
次に、第3工程として、加硫成形された帯状ゴム様体71を、帯長手方向前方へ所定長さでずらすように送る。そして、他の帯状ゴム様体72を加硫成形によって構成するために、上記の第1工程と同様に準備を行う。
【0021】
次に、図3(b)に示すように、第4工程として、加熱部13によって加熱金型10を加熱し、抗張体4と未加硫ゴム9とを加硫成形して帯状ゴム様体72を構成する。この第4工程において、帯状ゴム様体72の帯長手方向の一端部(前方端部)に形成される接合面14bは、金型8の冷却金型11によって未加硫または半加硫のままにして加硫成形される。そして、先の帯状ゴム様体71の一端部(前方端部)に形成された未加硫または半加硫状態の接合面14aには、他の帯状ゴム様体72の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部(後方端部)が一体化するように加硫接着される。
【0022】
最後に、第5工程として、加硫成形された1本の帯状ゴム様体7の一端部(前方端部)と他端部(後方端部)との接合部分に未加硫ゴム等の成形材を入れて、これらを一体化するように加硫接着する。
このように、第1〜第5の工程を経て、無端状の弾性クローラ2を得ることができる。
なお、3つ以上の帯状ゴム様体7xを加硫成形して1本の帯状ゴム様体7を構成する場合には、第5工程の前工程として、上記の第3,4工程を繰り返して行う工程を導入すればよい。また、1回の加硫成形で所定の長さの帯状ゴム様体7を構成し、無端状の弾性クローラ2を得る場合には、第3,4工程を省略するとよい。
【0023】
上記のような弾性履帯の製造方法によれば、帯状ゴム様体7の接合面14と製品外面2Aとの境界線Bを冷却ゾーンC内で、かつ、加熱ゾーンHから離れたところに位置させた状態で、当該接合面14を帯状ゴム様体7の他端部に加硫接着させるので、接合面14を、加硫接着するのに適した未加硫または半加硫の状態に保持することができる。
【0024】
図4は、本発明の第二実施形態にかかる弾性履帯2の製造方法を示している。
本実施形態が第一実施形態と異なる点は、帯状ゴム様体7の外周側の接合面14と製品外面2Aとの境界線Bが、ラグ6の上面6aにかかるように設けられている点である。なお、帯状ゴム様体7の内周側の接合面14と製品外面2Aとの境界線Bは、弾性クローラ2の内周側に形成される駆動突起5の上面(突出する頂面)5aにかかるように設けられている。また、芯金がある場合には境界線Bが芯金(突起)間にくるようにしてもよい。
【0025】
図4(b)に示すように、互いに加硫接着された帯状ゴム様体7は、後から加硫成形された他の帯状ゴム様体72の他端部(後方端部)が、先に加硫成形された帯状ゴム様体71の接合面14aに沿って流動して加硫接着されており、その加硫接着された部分で一つのラグ6が構成されている。
本発明の方法によれば、接合面14と製品外面2Aとの境界線Bが、熱の制御が困難なゴムボリュームの大きいラグ6の上面6aや駆動突起5の上面5aに配置された場合においても、接合面14を加硫接着するのに適した未加硫または半加硫の状態に保持することができる。
【0026】
図5は、本発明の第三実施形態にかかる弾性履帯2の製造方法を有する加硫成形装置1を示している。
図5に示すように、この加硫成形装置1は、第一実施形態と同様に、帯状ゴム様体7の帯長手方向において、加熱ゾーンHと冷却ゾーンCとに区画された金型8を有している。この金型8は、一対の加熱金型10と、各加熱金型10の帯長手方向一端側に接続された冷却金型11とを備えている。一対の加熱金型10は、上型10aと、下型10bとを有しており、上型10a及び下型10bの外面側には、加熱部13が設けられている。また、図示しないが上下型10a、10bと加熱部13との間にモールド引き出しの為の鉄板を入れてもよい。
【0027】
冷却金型11には、流動して製品外面2Aを形成しつつ、あとから接合される同じ帯状ゴム様体7または他の帯状ゴム様体7の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の端部と一体化する流動部20を成形するための流動部成形面11cが設けられている。この成形面11cは、側面形状が前方に向かって先細り状に設けられている。上記のように冷却金型11を構成することで、帯状ゴム様体7または他の帯状ゴム様体7Aの流動部20と製品外面2Aとの境界線Bが、冷却ゾーンC内に配置されるようにしている。そして、本実施形態では、流動部20と製品外面2Aとの境界線Bが弾性クローラ2の外周側に形成されるラグ6の斜面6bに配置されるように、金型8が構成されている。なお、帯状ゴム様体7の内周側に設けられる流動部20と製品外面2Aとの境界線Bは、弾性クローラ2の内周側に形成される駆動突起5の斜面5aに配置されている。また、芯金有りの場合には、境界線Bが芯金の突起の斜面にくるようにしてもよい(図示せず)。
【0028】
上記の第一成形面11cの近傍には、冷却金型11を冷却するための冷却通路16がそれぞれ設けられており、この冷却通路16には、ほぼ一定温度の冷却水を供給可能な冷却水供給装置(図示せず)が接続されている。この冷却水供給装置からの冷却水が当該冷却通路16を流れることによって、冷却金型11の温度が加熱金型10の温度よりも低くなるように構成されている。
【0029】
図6は、弾性クローラ2の製造方法を示しており、図7は、加硫接着後の帯状ゴム様体7を示している。これらの図を用いて、複数の帯状ゴム様体7x(x=1,2,3…)を順次加硫成形して1本の帯状ゴム様体7を構成し、無端状の弾性クローラ2を製造する方法について説明する。なお、ここでは、2つの帯状ゴム様体71,72を加硫成形して、1本の帯状ゴム様体7を得るものとする。なお、図7は、帯状ゴム様体7のラグ6側のみを示し、駆動突起5側の図示は省略している。
【0030】
まず、図6(a)に示すように、第1工程として、抗張体4の内周側と外周側とに、所定の長さの未加硫ゴム9を添設し、抗張体4と未加硫ゴム9とを上型10aと下型10bとで挟持する。この時、流動部20と製品外面2Aとの境界線Bは、弾性クローラ2の外周側に形成されるラグ6の斜面6bに配置されている。また、加熱金型10の他端部には上記冷却金型11とほぼ同じ形状を呈しかつ冷却通路16が形成された冷却金型12が接続されており、最初に成形される帯状ゴム様体71の他端部(後方端部)が未加硫または半加硫とされることで、次に説明する第5工程で当該他端部が最後に無端状に加硫接着される。
【0031】
次に、第2工程として、加熱部13によって加熱金型10を加熱し、抗張体4と未加硫ゴム9とを加硫成形して帯状ゴム様体71を構成する。この第2工程において、帯状ゴム様体71の帯長手方向の一端部(前方端部)に形成される流動部20aは、金型8の冷却金型11によって未加硫または半加硫のままにして加硫成形される。
次に、第3工程として、加硫成形された帯状ゴム様体71を、帯長手方向前方へ所定長さでずらすように送る。そして、他の帯状ゴム様体72を加硫成形によって構成するために、上記の第1工程と同様に準備を行う。
【0032】
次に、図6(b)に示すように、第4工程として、加熱部13によって加熱金型10を加熱し、抗張体4と未加硫ゴム9とを加硫成形して帯状ゴム様体72を構成する。この第4工程において、他の帯状ゴム様体72の帯長手方向の一端部(前方端部)に形成される流動部20bは、金型8の冷却金型11によって未加硫または半加硫のままにして加硫成形される。この際、図7の拡大図に示すように、未加硫または半加硫状態の上記流動部20aには製品形状よりも大きなゴム付き部40が設けられているので、このゴム付き部40が上型10aに押圧されて矢方向に流動する。流動したゴム付き部40は、製品外面2Aを形成しつつ、他の帯状ゴム様体72の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部(後方端部)と一体化するように加硫接着される。このようなゴム付き部40が設けられていない場合には、製品外面におけるオーバー加硫部上に次の加硫ゴムが流れ込むことで、未接着界面あるいは接着力の弱い界面を作ってしまう。この場合、成形品の屈曲によって当該界面における剥がれが起こることがあり、さらには内部のスチールコードにまで亀裂が達することがある。
【0033】
最後に、第5工程として、加硫成形された1本の帯状ゴム様体7の一端部と他端部との接合部分に未加硫ゴム等の成形材を入れて、これらを一体化するように加硫接着する。このように、第1〜第5の工程を経て、無端状の弾性クローラ2を得ることができる。なお、3つ以上の帯状ゴム様体7xを加硫成形して1本の帯状ゴム様体7を構成する場合には、第5工程の前工程として、上記の第3,4工程を繰り返して行う工程を導入すればよい。また、1回の加硫成形で所定の長さの帯状ゴム様体7を構成して無端状の弾性クローラ2を得る場合には、第3,4工程を省略するとよい。
【0034】
上記のような弾性履帯の製造方法によれば、加硫接着時に金型8で押圧されて流動して製品外面2Aを形成しつつあとから接合される同じ帯状ゴム様体71または他の帯状ゴム様体72の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部と一体化する流動部20が、単一または複数の帯状ゴム様体7xの一端部に設けられており、この流動部20を冷却ゾーンC内に位置させた状態で、当該一端部を帯状ゴム様体の未加硫又は半加硫状態の他端部に加硫接着させるので、接合される部分には、明確な接合面が形成されることなく、連続した製品外面2Aが形成されて接合される。従って、より一層強固に加硫接着することができる。
【0035】
なお、本発明の方法は、帯状ゴム様体7同士を加硫接着するものであれば適用可能であり、上記の実施形態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 加硫成形装置
2 弾性クローラ(弾性履帯)
2A 製品外面
6 ラグ
6a ラグの上面
6b ラグの斜面
7 帯状ゴム様体
8 金型
9 未加硫ゴム
10 加熱金型
11 冷却金型
14 接合面
20 流動部
C 冷却ゾーン
H 加熱ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯長手方向において加熱ゾーンと冷却ゾーンとに区画された金型によって帯長手方向の一端部を未加硫または半加硫のままにして帯状ゴム様体を加硫成形したあと、この帯状ゴム様体の一端部に形成された未加硫または半加硫状態の接合面をそれと同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部に接合させて加硫接着することにより、単一または複数の前記帯状ゴム様体の一端部と他端部同士を互いに一体化させて製品を構成する弾性履帯の製造方法において、
前記帯状ゴム様体の接合面と製品の外面となる製品外面との境界線を前記冷却ゾーン内でかつ前記加熱ゾーンから離れたところに位置させた状態で当該接合面を前記帯状ゴム様体の他端部に加硫成形させることを特徴とする弾性履帯の製造方法。
【請求項2】
前記接合面と製品外面との境界線が弾性履帯の外周側に形成されるラグ間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性履帯の製造方法。
【請求項3】
前記接合面と製品外面との境界線が弾性履帯の外周側に形成されるラグの上面に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性履帯の製造方法。
【請求項4】
未加硫ゴムを加硫成形するための互いに接近離反自在な一対の加熱金型と、前記未加硫ゴムを未加硫または半加硫状態のままで成形するために前記各加熱金型の帯長手方向一端側に接続された冷却金型とを備えている弾性履帯の加硫成形装置において、
前記冷却金型は、加硫接着用の接合面を成形するための第一成形面と、この第一成形面と前記加熱金型との境界の間に配置された弾性履帯の製品外面を成形するための第二成形面とを備えていることを特徴とする弾性履帯の加硫成形装置。
【請求項5】
帯長手方向において加熱ゾーンと冷却ゾーンとに区画された金型によって帯長手方向の一端部を未加硫または半加硫のままにして帯状ゴム様体を加硫成形したあと、この帯状ゴム様体の一端部に形成された未加硫または半加硫状態の接合面をそれと同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部に接合させて加硫接着することにより、単一または複数の前記帯状ゴム様体の端部と他端部同士を互いに一体化させて製品を構成する弾性履帯の製造方法において、
加硫接着時に前記金型で押圧されて流動して製品外面を形成しつつあとから接合される同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部と一体化する流動部を単一または複数の前記帯状ゴム様体の端部に設け、前記流動部を前記冷却ゾーン内に位置させた状態で当該端部を前記帯状ゴム様体の他端部に加硫成形させることを特徴とする弾性履帯の製造方法。
【請求項6】
未加硫ゴムを加硫成形するための互いに接近離反自在な一対の加熱金型と、前記未加硫ゴムを未加硫または半加硫状態のままで成形するために前記各加熱金型の帯長手方向の少なくとも一端側に接続された冷却金型とを備えている弾性履帯の加硫成形装置において、
前記冷却金型には、流動して製品外面を形成しつつあとから接合される同じ帯状ゴム様体または他の帯状ゴム様体の未加硫または半加硫となっている帯長手方向の他端部と一体化する流動部を成形するための流動部成形面が設けられていることを特徴とする弾性履帯の加硫成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−137307(P2009−137307A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24760(P2009−24760)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【分割の表示】特願2004−334227(P2004−334227)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】