説明

弾性表面波デバイス

【課題】寄生容量や寄生インダクタンスを低減しながら初期周波数調整を行なうことを可能とし、安定した特性を有する小型の弾性表面波デバイス、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】SAW発振器10は、回路定数の異なる複数の発振回路14〜16を有する半導体回路領域13と、IDT電極4を有する弾性表面波素子領域12とを有している。そして、IDT電極4のIDT接続パッド5a,5bと、複数の発振回路14〜16のうち選択された一つの発振回路15の回路接続パッド15a,15bのそれぞれとが、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線9により接続され、SAW発振器10の一つの回路が形成されている。回路接続配線9は液滴吐出用導電材料からなり、液滴吐出法により形成されているので、マスクが不要で工程の簡略化も可能となり、寄生容量や寄生インダクタンスを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板に回路領域と弾性表面波素子領域とを備えた弾性表面波デバイス、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高周波デバイスの分野では、圧電基板の表面に形成したIDT(Interdigital Transducer)電極により圧電体表面に弾性表面波を励振させたり、弾性表面波を検出したりするように構成された弾性表面波デバイスが様々な電子機器に用いられている。また、弾性表面波デバイスの小型化・高機能化の要求から、半導体基板に、複数の回路素子により形成した半導体回路と、圧電膜上にIDT電極を形成した弾性表面波素子を1つのチップに形成して接続し、一つの回路を構成した弾性表面波デバイスが製造され、需要が高まってきている。近年、このような弾性表面波デバイスにおいては、その用途に適した周波数の高精度化の要求が高まりを増している。
【0003】
半導体プロセスを利用して半導体基板に弾性表面波素子を形成するとき、薄膜形成誤差により目標周波数から外れるものが発生するため、周波数調整を行う必要がある。
弾性表面波素子をはじめとした圧電デバイスの従来の周波数調整方法としては、蒸着やスパッタリングにより励振電極の厚みを増すようにしたり、励振電極に周波数調整材料を塗布することにより質量を付加して表面弾性波素子の実質厚みを変化させる方法が知られている。
励振電極に周波数調整材料を塗布する方法では、例えば、所謂インクジェット法によって励振電極上に周波数調整インクの微小液滴を高精度に塗布し、その質量変化によって周波数を微調整(低下させる)する方法が提案されている。この方法では、予め目標周波数よりも高めの周波数になるように圧電振動子を形成し、その周波数を測定して、目標周波数と測定周波数との差から液滴吐出装置の塗布パターンおよび塗布回数を決定し、周波数調整インクを塗布して目標周波数に合わせこまれる(例えば特許文献1を参照)。
また、圧電振動子を励振させて周波数測定を行いながら周波数調整インクを塗布していき、目標周波数に到達したところで周波数測定および周波数調整インク塗布を停止する周波数調整装置を用いる方法も提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【0004】
上記の他に、例えば特許文献3では、圧電デバイスとしての水晶発振器を構成する水晶振動子に、可変容量ダイオードと抵抗切替回路およびプログラマブル・タイマを具備する周波数補正回路を接続することにより、周波数経年変化補正をおこなう方法が紹介されている。可変容量ダイオードに一定の直流入力電圧を印加する抵抗切替回路を、予め求められた水晶発振回路の周波数の経示劣化曲線に基づき、周波数変化率を補償するように抵抗切替回路を制御するプログラマブル・タイマにより、可変容量ダイオードに分圧電圧を与えて水晶振動子の周波数経年変化補正を行うものである。
【0005】
【特許文献1】特開平7−106892号公報
【特許文献2】特開平8−307186号公報
【特許文献3】特開平7−297639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の弾性表面波デバイスの初期周波数調整方法では、以下に示すような問題があった。
特許文献1および2に示されるIDT電極にインクを塗布して質量付加させて周波数調整する方法では、インク塗布量が過多となった場合に、インクを一部除去して再度周波数調整する必要が生じ、工程が煩雑になる虞があった。
また、周波数調整した弾性表面波素子と半導体回路とを接続するときに用いる接続材料により寄生容量が発生するという問題がある。例えば、接続方法として多く用いられるワイヤボンディングの場合、接続ワイヤの長さやループ形状の制御に限界があり、回路設計においてワイヤ形状による寄生容量に対するマージンを考慮せざるを得ないため、結果的に初期周波数特性の劣化をまねく。また、ワイヤ長が長くなると、寄生インダクタンスが大きくなって発振周波数や位相がシフトしてしまい、回路や配線にクロストークが生じる虞があった。特に、低電圧駆動に対応し、安定した特性を得るために、これらを低減する必要がある。
さらに、特許文献3に示されるプログラマブル・タイマを使用して周波数経年変化補正をする方法では、弾性表面波デバイスの初期周波数偏差の補正には適用できない。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、寄生容量および寄生インダクタンスを低減しながら初期周波数調整を行なうことを可能とし、安定した特性を有する小型の弾性表面波デバイス、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の弾性表面波デバイスは、半導体基板に、IDT電極を備えた弾性表面波素子が形成された弾性表面波素子領域と、弾性表面波素子領域とは異なる領域に、複数の回路素子が形成された半導体回路領域とを有し、IDT電極と回路素子とが、一つの回路を形成するように回路接続配線によって電気的に接続され、接続配線の一部または全部が液滴吐出用導電材料からなることを主旨とする。
【0009】
この構成によれば、複数の回路素子により半導体回路領域に形成された半導体回路と、IDT電極とを電気的に接続するための回路接続配線が、液滴吐出法にて形成することが可能な液滴吐出用導電材料により形成されている。これにより、従来のボンディング・ワイヤにより回路接続配線を形成した場合にワイヤループ形状やワイヤ長が制御し切れないのに対し、回路接続配線の形状を安定的に制御して形成することができる。従って、回路接続配線の、回路における寄生容量や寄生インダクタンスを低減することが可能となり、所望の周波数特性を有し、特に低電圧駆動にも対応可能な弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0010】
本発明の弾性表面波デバイスは、回路定数の異なる複数の発振回路が回路素子から形成され、複数の発振回路のうち一つが、IDT電極と回路接続配線により電気的に接続されて一つの回路が形成されている構成としてもよい。
【0011】
半導体基板に、半導体プロセスを利用して形成された弾性表面波素子を形成したとき、薄膜形成誤差により目標周波数から外れた初期周波数を有するものが発生する。上記の構成によれば、回路定数の異なる複数の発振回路が形成されているので、例えば、初期周波数を目標周波数に補正するために最も適した発振回路を選択して、IDT電極と電気的に接続することができる。これにより、所望の周波数特性を有する弾性表面波デバイスの製造に寄与することができる。
【0012】
本発明の弾性表面波デバイスは、半導体回路領域の回路素子のうちの複数が周波数調整用回路素子であって、複数の周波数調整用回路素子のうち一つの周波数調整用回路素子と、回路素子とが、発振回路内接続配線により電気的に接続されて発振回路が構成され、該発振回路とIDT電極とが電気的に接続されて一つの回路が形成されている構成としてもよい。
【0013】
この構成における周波数調整用回路素子は、製造される弾性表面波素子の目標周波数に対する初期周波数偏差を補正するために、発振回路の一部として接続可能な状態で形成される回路素子を指している。この複数の周波数調整用回路素子は、それぞれ異なる素子特性に調整して形成することができる。この複数の周波数調整用回路素子のそれぞれに、弾性表面波素子の予測される初期周波数偏差の範囲のうち、所定の周波数偏差範囲を補正可能な素子特性に調整して形成しておく。そして、弾性表面波素子の初期周波数と目標周波数との差を補正するために最適な素子特性の周波数調整用回路素子を選拓し、半導体回路の一部に接続して発振回路を構成することができる。この発振回路と、IDT電極とを接続することにより、製造された弾性表面波素子の初期周波数を、目標周波数に補正することが可能になる。これにより、比較的簡便な工程で精緻な周波数補正を行なうことができ、所望の周波数特性を有する弾性表面波デバイスを構成することが可能となる。
【0014】
本発明の弾性表面波デバイスは、発振回路とIDT電極とを電気的に接続する回路接続配線が液滴吐出用導電材料からなる構成にすることができる。
【0015】
この構成によれば、IDT電極と発振回路が電気的に接続されていない状態で弾性表面波素子の初期周波数を測定してから、この周波数測定値に基づいて最適な発振回路を選択し、IDT電極と電気的に接続することができる。これにより、弾性表面波素子の初期周波数をより正確に測定することができ、最適な発振回路を選択すること可能となるので、所望の周波数特性を有する弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0016】
本発明の弾性表面波デバイスは、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線が形成される位置に、該接続配線の形状を画定するように溝部が形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線を形成するときに、予め形成された溝部に液滴吐出用導電材料が埋設されるように塗布される。これにより、液滴吐出用導電材料の塗布形状は溝部によって画定されて形状が安定し、形成される回路の寄生容量や寄生インダクタンスを軽減することができる。また、回路接続配線形成時に液滴吐出用導電材料の塗布部周辺への濡れ広がりを抑えることができるので、回路接続配線の断線や隣接ショートを防止することができる。
【0018】
本発明の弾性表面波デバイスは、一つの前記回路を形成しない回路定数の異なる複数の発振回路および回路素子を覆うようにシールド膜が形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、複数形成された周波数調整用回路素子または発振回路のうち、IDT電極と接続されないものがシールド膜によりシールドされる。これにより、IDT電極と接続されて一つの回路が形成された弾性表面波デバイスを動作させたときに、回路に接続されていない周波数調整用回路素子または発振回路がノイズやクロストークの発生要因になることを抑制することができる。
【0020】
本発明の弾性表面波デバイスは、IDT電極が形成された面に半導体基板に接地された半導体接地パッドが設けられ、ひとつの回路を形成しない発振回路および回路素子と、接地パッドとが接地接続配線によって電気的に接続されている構成としてもよい。
【0021】
この構成によれば、周波数調整用回路素子または発振回路のうち、IDT電極と接続されないものを半導体基板に接地することができる。これにより、IDT電極と接続されて一つの回路が形成された弾性表面波デバイスを動作させたときに、回路と接続されていない周波数調整用回路素子または発振回路が、ノイズやクロストークの発生要因になることを抑制できる。
【0022】
本発明は、半導体基板に、弾性表面波素子領域と、弾性表面波素子領域とは異なる領域に、半導体回路領域とを有する弾性表面波デバイスの製造方法であって、半導体回路領域に複数の回路素子を備えた半導体回路を形成する工程と、弾性表面波素子領域に、圧電膜と、IDT電極とを有する弾性表面波素子を形成する工程と、IDT電極が形成された面と同じ表面に回路接続配線を液滴吐出用導電材料を用いて液滴吐出法により形成する工程と、を有することを主旨とする。
【0023】
この構成によれば、半導体回路とIDT電極とを電気的に接続する回路接続配線を、液滴吐出法により形成している。これにより、従来の蒸着やスパッタ法などにより回路接続配線を形成する場合に必要なマスクが不要となり、工程の簡略化が可能となるので、低コストにて弾性表面波デバイスを製造することができる。また、従来のボンディング・ワイヤによる回路接続配線のワイヤ・ループ形状やワイヤ長さがばらつくのに比して、回路接続配線の形状を制御して形成することができる。従って、形成される回路において回路接続配線による寄生容量や寄生インダクタンスを低減することが可能となるので、所望の周波数特性を有する弾性表面波デバイスの製造方法に寄与することができる。
【0024】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、半導体回路を形成する工程に、回路素子からなる回路定数の異なる複数の発振回路を形成する工程を含み、弾性表面波素子の目標周波数を得るために最適な一つの発振回路を選択する工程と、この選択された発振回路とIDT電極とを、液滴吐出法により形成する回路接続配線により電気的に接続する工程と、を有することを構成としてもよい。
【0025】
この構成によれば、半導体プロセスを利用して形成される弾性表面波素子の予測される初期周波数偏差の範囲のうち、任意の周波数範囲を補正可能な回路定数を有する複数の発振回路を形成しておくことができる。この複数の発振回路のうち、形成された弾性表面波素子の初期周波数を目標周波数に補正するのに最適な回路定数の発振回路が選拓し、IDT電極と接続することにより、所望の周波数特性を有する弾性表面波デバイスを製造することができる。また、従来の、IDT電極にインク材等を塗布して質量付加することにより周波数調整する方法において、インク塗布量が過多となった場合にインクを一部除去して再度周波数調整するなどの工程の煩雑化を避けることができる。従って、簡便な工程にて、弾性表面波素子の初期周波数を補正することが可能な弾性表面波素子を提供することができる。
【0026】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、半導体回路を形成する工程に、前記回路素子のうちの複数を周波数調整用回路素子として形成する工程を含み、複数の周波数調整用回路素子のうち、弾性表面波素子の目標周波数を得るために最適な一つの周波数調整用回路素子を選択する工程と、この選択された周波数調整用回路素子と回路素子とを、液滴吐出法により形成する発振回路内接続配線により電気的に接続して発振回路を形成する工程と、を有する構成としてもよい。
【0027】
この構成によれば、複数の周波数調整用回路素子のうち、発振回路に接続されたときに、製造された弾性表面波素子の周波数と目標周波数との差を補正するために最適な回路定数の周波数調整用回路素子を選拓し、複数の回路素子と電気的に接続する。これにより、製造された弾性表面波素子の初期周波数を比較的精緻に目標周波数に補正することが可能となり、所望の周波数特性を有する弾性表面波デバイスを製造することができる。
【0028】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、液滴吐出法により回路接続配線を形成する位置に、回路接続配線の形状を画定するための溝部を形成する工程を有することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、液滴吐出法により回路接続配線を形成するときに、回路接続配線を形成する位置に予め形成された溝部により液滴吐出用導電材料が画定されて塗布される。これにより、液滴吐出用導電材料の塗布形状は溝部の形状に沿って安定し、回路における回路接続配線の容量やインダクタンスを制御することが可能となる。また、液滴吐出用導電材料が塗布部周辺に濡れ広がるのを抑えることができるので、回路接続配線の断線や隣接ショートを防止することが可能になる。
【0030】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、一つの前記回路を形成しない回路素子または発振回路を覆うように、液滴吐出用導電材料によりシールド膜を形成する工程を有することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、複数形成された周波数調整用回路素子または発振回路のうち、IDT電極と接続されないものがシールド膜によりシールドされている。これにより、弾性表面波デバイスを動作させたときに、回路に接続されていない周波数調整用回路素子または発振回路がノイズやクロストークの発生要因になることを防ぐことができる。また、シールド膜を、回路接続配線と同様に液滴吐出法により形成することにより、蒸着やスパッタ法などに比してマスクが不要となり、工程の簡略化が可能となって低コストにてシールド膜を形成することができる。
【0032】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、IDT接続パッドの形成された面に半導体基板に接地された半導体接地パッドを設ける工程と、半導体接地パッドと、一つの回路を形成しない回路素子または発振回路とを電気的に接続する接地接続配線を形成する工程とを有することが好ましい。
【0033】
この構成によれば、周波数調整用回路素子または発振回路のうち、IDT電極と接続されないものが半導体基板に接地することができる。これにより、IDT電極と接続されて一つの回路が形成された弾性表面波デバイスを動作させたときに、回路と接続されていない周波数調整用回路素子または発振回路がノイズやクロストークの発生要因になることを抑制できる。また、IDT接続パッドが形成された面に半導体接地パッドが設けられているので、接地する周波数調整用回路素子または発振回路と半導体接地パッドとを、液滴吐出用導電材料からなる接地接続配線を液滴吐出法により形成して接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
【0035】
本実施形態では、弾性表面波デバイスとしてSAW(Surface Acoustic Wave)発振器の例を挙げて説明する。
図1(a)は、本実施形態のSAW発振器の概略平面図であり、図1(b)は、同図(a)のA−A断線に沿う概略断面図である。
【0036】
図1(a)に示すように、SAW発振器10は、IDT電極4を有する弾性表面波素子領域12と、発振回路14〜16を有する半導体回路領域13とを有している。また、図1(b)に示すように、SAW発振器10は、半導体基板1上に半導体プロセスにより形成されていく過程で絶縁層などが積層された半導体積層体11が形成されている。発振回路14〜16は半導体基板1上に形成され、さらに、発振回路14〜16上方の半導体積層体11の最上層の弾性表面波素子領域12に圧電膜3が形成されて、この圧電膜3上にIDT電極4と反射器8が形成されている。
【0037】
半導体基板1上の半導体回路領域13には、複数の回路素子が接続されてなる複数の発振回路14〜16が形成されている。発振回路14〜16は、弾性表面波素子領域12に形成される弾性表面波素子の初期周波数偏差の範囲のうち、任意の周波数範囲を補正可能な異なる回路定数を有してそれぞれ形されている。また、発振回路14〜16上方の半導体積層体11の最上層表面側から形成された凹部の凹底部には、各発振回路14〜16にそれぞれ対応したアルミニウム(Al)などの導電性金属材料からなる回路接続パッド14a,14b、15a,15b、16a、16bが設けられている。発振回路15は、図1(b)に示すように、アルミニウム(Al)などの導電性金属材料からなる回路配線15cにより回路接続パッド15aに電気的に接続されている。同様に、発振回路15は回路接続パッド15bにも接続され、また、発振回路14は回路接続パッド14a,14bに、発振回路16は回路接続パッド16a,16bに、それぞれ接続されている。
なお、半導体回路領域13には、発振回路14〜16の他にSAW発振器10の動作に供する半導体回路を有しているが、図示を省略している。
【0038】
半導体積層体11の最上層の弾性表面波素子領域12には、酸化亜鉛(ZnO)などで形成された圧電膜3と、圧電膜3上にアルミニウム(Al)などの導電性金属材料により形成されたIDT電極4と反射器8とが備えられ、弾性表面波素子を構成している。
【0039】
IDT電極4は、バスバー6aに連結された複数の電極指6と、バスバー7aに連結された複数の電極指7が交互に配置され、且つ接触しないように形成されている。IDT電極4は、バスバー6a,7aからそれぞれ引出し電極6c,7cにより延長され、それぞれが半導体積層体11最上層の表面側から形成された凹部の凹底部に設けられたIDT接続パッド5a,5bに接続されている。これにより、IDT接続パッド5a,5bを介して電極指6,7間に交流電圧を印加することにより、IDT電極4を駆動可能な構成としている。
【0040】
半導体積層体11最上層表面において、IDT接続パッド5a,5bと、それぞれに対応する回路接続パッド15a,15bとは、液滴吐出法により吐出可能な液滴吐出用導電材料が固化されてなる回路接続配線9により電気的に接続されている。本実施形態においては、IDT接続パッド5aと回路接続パッド15a、IDT接続パッド5bと回路接続パッド15bとがそれぞれ回路接続配線9により接続されている。本発明では、半導体回路領域13に複数形成された発振回路14〜16のうち、IDT電極4に接続されるのは、後述する選択方法により選択される最適な発振回路のみである。本実施形態では発振回路15が選択されてIDT電極4に電気的に接続され、発振回路14,16はSAW発振器10の動作に供する回路には接続されず使用されない。
【0041】
反射器8は、IDT電極4で励振される弾性表面波が伝播するする方向に、IDT電極4を両側から挟むように配置されている。そして、反射器8は、電極指6,7に対して向い合せに形成された複数の反射指8aと反射器バスバー8bとが連結された構造となっている。
【0042】
このような構成のSAW発振器10は、発振回路15によりIDT電極4が励振され、IDT電極4から発振する弾性表面波を反射器8で反射させ、IDT電極4内に弾性表面波エネルギーを閉じ込めることにより、エネルギー損失の少ない共振特性を得ている。
【0043】
以上、本実施形態のSAW発振器10は、IDT接続パッド5a,5bを有するIDT電極4と、回路接続パッド14a,14b、15a,15b、16a,16bとをそれぞれ有する複数の発振回路14,15,16を有している。これにより、複数の発振回路14〜16のうち、IDT電極4の周波数特性に最も適した発振回路を選択して、IDT電極4と接続して一つの回路を構成することができる。また、本実施形態で選択された発振回路15に回路接続パッド15a,15bと、対応するIDT電極4のIDT接続パッド5a,5bとのそれぞれが、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線9により接続されている。これにより、例えば、蒸着やスパッタ法などにより接続配線を形成する場合に比べ、マスクが不要となり、工程の簡略化も可能となるので、低コストにてSAW発振器10を製造することができる。また、ワイヤボンディング法を用いて接続した場合に、ワイヤ・ループ形状やワイヤ長を制御し切れないために発生する回路における寄生容量や寄生インダクタンスが発生する。本実施形態によれば、かかる寄生容量や寄生インダクタンスを低減できる。従って、比較的容易に、所望の周波数特性を有し、低電圧駆動に対応可能な弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、複数の発振回路を有する半導体回路領域と、弾性表面波素子領域を有する弾性表面波デバイスの製造方法を、上記第1の実施形態のSAW発振器10の製造方法に具現化した例について説明する。なお、本実施形態では、本発明の要旨である、複数形成された発振回路から最適な一つの発振回路を選択する工程と、選択された一つの発振回路をIDT電極4と接続する工程を中心に説明し、周知の半導体プロセスによる弾性表面波デバイスの製造方法の説明は省略する。
【0045】
上記第1の実施形態のSAW発振器10の製造には、例えば、RFスパッタリング法、DCスパッタリング法、CVD法、蒸着、およびフォトリソグラフィなどによる半導体プロセスが用いられている。
まず、半導体基板1上の半導体回路領域13に、複数の回路素子が接続されてなる複数の発振回路14〜16を含む半導体回路を形成する。また、半導体回路を形成する過程で、絶縁層などが積層されて半導体積層体11が形成されていく。このとき、各発振回路14〜16が有する入出力端子部と導通される接続配線を半導体積層体11の最上層表面に向けて形成する。
【0046】
次に、半導体積層体11最上層の弾性表面波素子領域12に、圧電膜3を形成する。
また、半導体積層体11最上層の、IDT電極4の引出し電極6c,7cのそれぞれと対応した位置に凹部を形成し、その凹底部にIDT電極パッド5a,5bを形成する。
これと同時に、半導体積層体11の最上層の、各発振回路14〜16の入出力端子部と導通される接続配線と対応した位置に凹部を形成し、その凹底部に回路接続パッド14a,14b,15a,15b,16a,16bを形成する。
【0047】
次に、圧電膜3上に、IDT電極4と反射器8を形成する。このとき、IDT電極4の各引出し電極6c,7cは、それぞれに対応するIDT電極パッド5a,5bと電気的に接続されるように形成する。
【0048】
ここから、図2に沿って、複数の発振回路14〜16のうちSAW発振器10に最適なものを選択し、IDT電極4に電気的に接続する一連の工程について説明する。
図2は、上記第1の実施形態のSAW発振器10(弾性表面波デバイス)の製造工程のうち、半導体回路領域に形成した複数の発振回路から、最適な発振回路を選定してIDTと接続し、所望の周波数測定を有する弾性表面波デバイスを得る工程を説明するフローチャート図である。
【0049】
上記したように、複数の発振回路14〜16を有する半導体回路領域13と、IDT電極4などを有する弾性表面波素子領域12を有したSAW発振器10の半導体プロセスによる形成体が用意され、以下の工程がスタートされる(ステップS1)。
先ず、ステップS2では、IDT電極4の各電極指6,7にそれぞれ導通する任意の箇所から励振電圧を印加し、弾性表面波素子の初期周波数を測定する。半導体プロセスにより形成されたIDT電極4などを有する弾性表面波素子は、薄膜形成誤差などから目標周波数に対してある程度の初期周波数偏差を有している。
【0050】
次に、ステップS3では、弾性表面波素子の初期周波数測定結果に基づいて、発振回路14〜16のうち、SAW発振器10に最も適した発振回路を選択する。具体的には、測定された弾性表面波素子の目標周波数に対する初期周波数偏差の大きさにより、異なる回路定数を有する発振回路14〜16のうち、初期周波数偏差を補正するのに最も適した回路定数を有する発振回路を選択する。本実施形態では、発振回路15が選択された例を以下説明する。
【0051】
次に、選択された発振回路15とIDT電極4とを電気的に接続するために、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線9の塗布経路および塗布パターン(塗布形状)を決定する(ステップS3)。具体的には、本実施形態で選択された発振回路15の回路接続パッド15a,15bと、対応するIDT電極4のIDT接続パッド5a,5bのそれぞれを接続するための回路接続配線9の平面形状、塗布幅、および塗布厚みなどが決定される。このとき、各回路接続パッド15a,15bと対応するIDT接続パッド5a,5bとをそれぞれ接続する各回路接続配線9の配線経路は、なるべく短い距離で、且つSAW発振器10の他の信号線と平面視で重ならないように形成することが望ましい。決定された回路接続配線9の配線経路および配線パターンは、描画データとして液滴吐出装置のメモリに書き込まれる。
なお、この描画データは、各発振回路14〜16とIDT電極4とをそれぞれ接続する回路接続配線9の描画データとして予めプログラミングしておき、最適な発振回路を選択したときに該当する発振回路用の描画データを選択する構成としてもよい。
【0052】
次に、決定された描画データにより、各回路接続パッド15a,15bと、対応するIDT接続パッド5a,5bとのそれぞれを電気的に接続するように、回路接続配線9用の液滴吐出用導電材料を液滴吐出装置により塗布する。このとき用いる液滴吐出装置は、帯電制御式のインクジェットプリンタや、ドロップオンディマインド(DOD)方式のインクジェットプリンタなど、液滴吐出用導電材料の塗布形状を制御して塗布できるものであればさまざまな方式のものを用いることができる。また、回路接続配線9用の液滴吐出用導電材料は、粘度の経時変化が小さく長時間に渡って精度よく塗布量を調整できるものであればよく、例えば溶剤系導電材料などを用いることができる。
塗布された液滴吐出用材料による回路接続配線9パターンは、例えば加熱して溶剤分を除去することによって固化させ、回路接続配線9を形成する(ステップS5)。
【0053】
次に、回路接続配線9により電気的に接続され、一つの回路が形成された発振回路15とIDT電極4とを有するSAW発振器10に励振電圧を印加して、周波数を測定する(ステップS6)。そして、測定周波数が目標周波数の許容範囲内であるか否かを判断し(ステップS7)、許容範囲内であれば(ステップS7でYes)良品として一連のSAW発振器10の製造工程を終了し(ステップS8)、許容範囲外であった場合(ステップ7でNo)には、ステップS9へ移る。
【0054】
ステップS9では、周波数が許容範囲外と判断されたSAW発振器10が、回路接続配線9に何らかの処置をすることにより修正可能かどうかを判断する。具体的には、液滴吐出用導電材料の塗布不良によるものや、発振回路14〜16のうち選定された一つの発振回路15以外の発振回路14,16のいずれかと接続すればよいものは修正が可能と判断できる。すなわち、塗布不良によって描画データと塗布形状との差が大きい場合には、形成された回路接続配線9が予想外の寄生容量や寄生インダクタンスの発生要因となる。また、回路接続配線9の断線やショートは、発振回路15とIDT電極4とによる一つの回路の正常な動作を妨げる。これらのような場合には、回路接続配線9の修正または除去して再配線することにより修正が可能と判断できる。修正可能と判断された場合(ステップS9でYes)にはステップS10に移る。
これに対して、修正が不可能と判断された場合(ステップS9でNo)には、SAW発振器10は不良と判定され不良表示されるなどの不良処置がされ(ステップS11)、製造工程を終了する。
【0055】
ステップS10では、回路接続配線9の修正を行なう。例えば、描画データよりも液滴吐出用導電材料の塗布量が少なく、且つ液滴吐出用導電材料の追加塗布量が予測できる場合には、所定の液滴吐出用導電材料を回路接続配線9に追加して塗布し、固化させる。
また、描画データと塗布形状との差が大きいなどにより、追加塗布による修正が不能と判断される場合や、回路接続配線9がショートしている場合には、回路接続配線9を所定の剥離液などにより除去する。なお、選択された発振回路15以外の発振回路14,16のいずれかと接続し直すことにより所望の周波数にできると判断された場合も、同様に回路接続配線9を剥離する。そして、所定の描画データにより、液滴吐出装置を用いて液滴吐出用導電材料を塗布して固化させることにより、回路接続配線9を再形成する。回路接続配線9を形成したSAW発振器10は、ステップS6に戻り、以降の上記工程を繰り返す。
【0056】
この構成によれば、半導体基板1上の半導体回路領域13に、IDT電極4を有する弾性表面波素子の予想される初期周波数偏差範囲うち、任意の範囲の初期周波数偏差を補正可能な回路定数をそれぞれ有する発振回路14〜16が形成される。また、弾性表面波素子領域12に形成される弾性表面波素子の初期周波数を測定し、この測定周波数に基づいて、弾性表面波素子の目標周波数を得るための最適な発振回路を選択することができる。従って、選択された最適な発振回路15とIDT電極4とを回路接続配線9により電気的に接続することにより、所望の周波数特性を有するSAW発振器10の製造に供することができる。
また、IDT電極4と選択された発振回路15とを電気的に接続するための回路接続配線9を、液滴吐出法を用いて液滴吐出用導電材料を塗布することにより形成できる。これにより、従来のボンディング・ワイヤにより回路接続配線9を形成する場合に比して、回路接続配線9の形状を制御し易く、寄生容量や寄生インダクタンスを軽減することができるので、目標周波数に近似な周波数特性を有するSAW発振器10を製造することができる。また、接続配線を蒸着やスパッタ法などにより形成する場合に比べ、マスクが不要となり、工程の簡略化も可能となるので、低コストにてSAW発振器10を製造することができる。また、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線9は、再塗布による形状修正や、剥離して再形成することも可能である。
さらに、形成された弾性表面波素子を、電気的に独立した状態で初期周波数を測定し、この周波数測定値に基づいて、目標周波数を得るための最適な一つの発振回路を選択してから、回路接続配線9によりIDT電極4と電気的に接続することができる。これにより、弾性表面波素子の初期周波数をより正確に測定することができるので、所望の周波数特性を有するSAW発振回路10を提供することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
上記第1の実施形態では、半導体回路領域13に、回路定数の異なる複数の発振回路14〜16を形成した。そして、弾性表面波素子領域12に形成された弾性表面波素子の初期周波数を目標周波数に補正するのに最も適した発振回路15を選択し、IDT電極4と電気的に接続する構成を示した。これに対して、この第3の実施形態では、半導体回路領域に、発振回路用半導体回路と、複数の周波数調整用コンデンサとを有し、複数の周波数調整用コンデンサのうちの一つを発振回路用半導体回路に接続して発振回路を形成する。そして、この発振回路を、IDT電極と電気的に接続して、SAW発振器を動作させる一つの回路を構成するようにしている。
【0058】
図3(a)は、第3の実施形態のSAW発振器30を示す平面図であり、同図(b)は、図3(a)中のB−B断面図である。なお、第3の実施形態におけるSAW発振器30の構成についての説明うち、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0059】
図3に示すように、SAW発振器30は、半導体基板21を含む半導体積層体31に、弾性表面波素子領域32と半導体回路領域33を有している。半導体積層体31の最上層の弾性表面波素子領域32には、半導体プロセスにより形成される圧電膜23と、この圧電膜23上にIDT電極24と反射器28とを有し、弾性表面波素子が構成されている。また、半導体回路領域33には、同じく半導体プロセスにより形成された発振回路用半導体回路34と、複数の周波数調整用コンデンサ36〜38とを有している。
【0060】
弾性表面波素子領域32の圧電膜23上には、バスバー26aに連結された複数の電極指26と、バスバー27aに連結された複数の電極指27が交互に配置され、且つ接触しないように形成されたIDT電極24を有している。IDT電極24のバスバー26a,27aからそれぞれ引出し電極26c,27cにより延長され、それぞれがIDT接続パッド25a,25bに接続されている。
また、IDT電極24の電極指26,27に対して向い合せの方向には、複数の反射指28aと反射器バスバー28bとが連結された構造の反射器28が、IDT電極24を両側から挟むように二つ配置されている。
【0061】
半導体回路領域33には、複数の回路素子が接続されてなる発振回路用半導体回路34と、複数の周波数調整用コンデンサ36〜38とを有している。
【0062】
発振回路用半導体回路34上方の半導体積層体31の最上層表面に形成された複数の凹部の凹低部には、アルミなどの導電性材料により形成された回路素子接続パッド34a,34bと、回路接続パッド35a,35bが設けられている。回路素子接続パッド34a,34bは周波数調整用コンデンサ36〜38側に、回路接続パッド35a,35bはIDT電極24側に配設されていて、それぞれが回路配線34cにより発振回路用半導体回路34に電気的に接続されている。
【0063】
一方、半導体積層体31の最上層表面の回路素子接続パッド34a,34b近傍には、各周波数調整用コンデンサ36,37,38のそれぞれと電気的に接続された回路素子接続パッド36a,36b、37a,37b、38a,38bが形成されている。これら回路素子接続パッド36a,36b、37a,37b、38a,38bと、回路素子接続パッドとが同一面に隣接して設けられていることにより、各周波数調整用コンデンサ36〜38と発振回路用半導体回路34とは電気的に接続可能な状態になっている。
【0064】
周波数調整用コンデンサ36〜38は、それぞれが発振回路用半導体回路34に接続されて発振回路を構成し、さらに発振回路とIDT電極24が接続されたときに、IDT電極24の発振周波数の位相を決定する回路素子である。また、周波数調整用コンデンサ36〜38は、それぞれ異なる静電容量を有している。半導体プロセスを用いて形成されるIDT電極24の初期周波数は、目的周波数に対してある程度の周波数偏差を有する。周波数調整用コンデンサ36〜38それぞれの静電容量は、この初期周波数偏差の範囲内における所定の周波数範囲を補正可能な静電容量値になっている。
【0065】
本実施形態では、周波数調整用コンデンサ36〜38のうち、IDT電極24の初期周波数に基づいて周波数調整用コンデンサ37が選択された例を説明する。選択された周波数調整用コンデンサ37の回路素子接続パッド37a,37bと、対応する発振回路用半導体回路34の回路素子接続パッド34a,34bとは、液滴吐出用導電材料からなる発振回路内接続配線39により電気的に接続されて発振回路が形成される。
そして、回路接続パッド35a,35bと、それぞれに対応するIDT接続パッド25a,25bとは、液滴吐出用導電材料により形成された回路接続配線29により電気的に接続さている。これにより、発振回路用半導体回路34と周波数調整用コンデンサ37が接続されてなる発振回路と、IDT電極24を有する弾性表面波素子とによる一つの回路が形成されている。
【0066】
この構成によれば、発振回路用半導体回路34と、複数の周波数調整用コンデンサ36〜38のうちのいずれか一つを接続することにより、半導体プロセスを用いて形成される弾性表面波素子の初期周波数を任意に補正可能な発振回路を形成することができる。この発振回路と、IDT電極24とを電気的に接続することにより、所望の周波数特性を有するSAW発振器を提供することが可能となる。従って、目標周波数により近似な周波数を有するSAW発振器30を提供することが可能になる。
【0067】
(第4の実施形態)上記第1および第2の実施形態では、複数の発振回路14〜16のうち、半導体プロセスにより製造された弾性表面波素子の初期周波数を所望の周波数に補正するために最も適した発振回路15を選択してIDT電極4と電気的に接続した。このとき、発振回路14,16はSAW発振器10には使用されない回路となるがSAW発振器10本体内に残存する。この第4の実施形態では、複数の発振回路のうち使用されない発振回路がSAW発振器に及ぼす虞のある悪影響を回避するために、使用されない発振回路を半導体基板に接地する構成を示す。
【0068】
図5は、IDT電極64に電気的に接続されない発振回路74,76が、半導体基板61に接地されたSAW発振器70を説明する図であり、図5(a)は平面図、同図(b)は図5(a)のD−D線断面図である。
【0069】
図5(a)および(b)に示すように、SAW発振器70は、半導体基板61を含む半導体積層体71に、弾性表面波素子領域72と発振回路領域73を有している。半導体積層体71の最上層の弾性表面波素子領域72には、圧電膜63と、この圧電膜63上に形成されたIDT電極64と反射器68とが備えられ、弾性表面波素子を構成している。また、発振回路領域53には、複数の発振回路74〜76が備えられている。
【0070】
圧電膜63上には、バスバー66aに連結された複数の電極指66と、バスバー67aに連結された複数の電極指67が交互に配置され、且つ接触しないように形成されたIDT電極64が備えられている。IDT電極64のバスバー66a,67aからそれぞれ引出し電極66c,67cにより延長され、それぞれがIDT接続パッド65a,65bに接続されている。
また、IDT電極64の電極指66,67に対して向い合せの方向には、複数の反射指68aと反射器バスバー68bとが連結された構造の反射器68が、IDT電極64を両側から挟むように二つ配置されている。
【0071】
半導体基板61上の半導体回路領域73には、弾性表面波素子領域72に形成された弾性表面波素子の初期周波数偏差を補正可能な異なる回路定数をそれぞれ有して形成された発振回路74〜76を備えている。発振回路74〜76上方の半導体積層体71の最上層表面側から形成された凹部の凹底部には、各発振回路74〜76にそれぞれ接続された回路接続パッド74a,74b、75a,75b、76a、76bが設けられている。
また、図5(b)にて発振回路76を代表例として図示すように、回路接続パッド76a、76bと異なる平面位置に、接地接続配線76dにより発振回路76の接地部と接続された接地用接続パッド76cが設けられている。さらに、接地用接続パッド76cの近傍には、接地接続配線76eにより半導体基板61の半導体基板接地部76Gに接続された半導体接地パッドG3が設けられている。同様に、発振回路74および75のそれぞれにも、接地用接続パッド74cおよび75c、半導体接地パッド74Gおよび75Gがそれぞれ設けられている。
【0072】
本実施形態では、発振回路75が選択されて、発振回路75の回路接続パッド75a,75bと、それぞれ対応するIDT電極64のIDT接続パッド65a,65bとが、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線69により電気的に接続されている。IDT電極64と回路接続配線69により接続された発振回路75以外の発振回路74および76は、SAW発振器70において電気的に開放されている。
【0073】
電気的に開放された発振回路74および75の各接地用接続パッド74cおよび75cと、半導体接地パッド74Gおよび75Gのそれぞれは、液滴吐出用導電材料からなる接地接続配線79によりそれぞれ電気的に接続されている。
【0074】
この構成によれば、複数形成された発振回路74〜76のうち、IDT電極64と電気的に接続されずに電気的に開放されている発振回路74および76が、接地接続配線79により半導体基板接地部76Gに接続されて半導体基板61に接地されている。これにより、発振回路75とIDT電極64とが接続されて一つの回路が形成されたSAW発振器70を動作させたときに、電気的に開放されている発振回路74および76が、ノイズやクロストークの発生要因になることを抑制することができる。また、液滴吐出用導電材料を使用いることから液滴吐出法により接地接続配線79を形成することができる。従って、従来の蒸着やスパッタ法などにより接地接続配線79を形成する場合と比べてマスクが不要となり、工程の簡略化が可能となるので、低コストにて接地接続配線79を形成することができる。
【0075】
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、以下の変形例を実施することもできる。
【0076】
(変形例1)上記第1の実施形態では、複数の発振回路14〜16のうち、選択された発振回路15とIDT電極4とを電気的に接続したとき、発振回路14,16は、SAW発振器10の動作に供する回路に使用されない。このような使用されない発振回路14,16がSAW発振器10の動作に悪影響を及ぼすのを抑えるようにシールドを施す構成としてもよい。
【0077】
図4は、IDT電極44に接続されない発振回路54,46がシールドされたSAW発振器50を説明する図であり、図4(a)は平面図、(b)は同図(a)のC−C線断面図である。
【0078】
図4(a)および(b)に示すように、SAW発振器50は、半導体基板41を含む半導体積層体51に、弾性表面波素子領域52と発振回路領域53を有している。半導体積層体51の最上層の弾性表面波素子領域52には、圧電膜43と、この圧電膜43上に形成されたIDT電極44と反射器48とが備えられ、弾性表面波素子を構成している。また、発振回路領域53には、複数の発振回路54〜56が備えられている。
【0079】
圧電膜43上には、バスバー46aに連結された複数の電極指46と、バスバー47aに連結された複数の電極指47が交互に配置され、且つ接触しないように形成されたIDT電極44が備えられている。IDT電極44のバスバー46a,47aからそれぞれ引出し電極46c,47cにより延長され、それぞれがIDT接続パッド45a,45bに接続されている。
また、IDT電極44の電極指46,47に対して向い合せの方向には、複数の反射指48aと反射器バスバー48bとが連結された構造の反射器48が、IDT電極44を両側から挟むように二つ配置されている。
【0080】
半導体基板41上の半導体回路領域53には、弾性表面波素子領域52に形成された弾性表面波素子の初期周波数偏差を補正可能な異なる回路定数をそれぞれ有して形成された発振回路54〜56を備えている。発振回路54〜56上方の半導体積層体51の最上層表面側から形成された凹部の凹底部には、各発振回路54〜56にそれぞれ接続された回路接続パッド54a,54b、55a,55b、56a、56bが設けられている。
本実施形態では、発振回路55が選択され、発振回路55の回路接続パッド55a,515bと、それぞれ対応するIDT電極44のIDT接続パッド45a,45bとが、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線49により電気的に接続されている。IDT電極44と回路接続配線49により接続された発振回路55以外の発振回路54および56は、SAW発振器50において電気的に開放されている。
【0081】
発振回路54および56の上方の半導体積層体51の最上層には、液滴吐出用導電材料からなるシールド膜58,59が、平面視で各発振回路54,56を覆うようにそれぞれ形成されている。
【0082】
この構成によれば、複数形成された発振回路54〜56のうち、IDT電極44と電気的に接続されずに電気的に開放されている発振回路54および56が、シールド膜58および59によりそれぞれシールドされる。これにより、発振回路55とIDT電極44とが接続されて一つの回路が形成されたSAW発振器50を動作させたときに、電気的に開放されている発振回路54および56が、ノイズやクロストークの発生要因になることを抑制することができる。また、液滴吐出用導電材料を使用していることから液滴吐出法によりシールド膜58,59を形成することができる。従って、従来の蒸着やスパッタ法などによりシールド膜58,59を形成する場合と比べてマスクが不要となり、工程の簡略化が可能となるので、低コストにてシールド膜58,59を形成することができる。
【0083】
(変形例2)上記第4の実施形態および上記変形例1では、IDT電極に電気的に接続されない発振回路が、ノイズやクロストークの発生要因となることを抑える方法として、半導体基板に接地する方法とシールドする方法を説明した。これらの方法は、併用することによってより顕著な効果を奏する。
【0084】
図6は、IDT電極に電気的に接続されない発振回路94,96が、半導体基板81に接地され、且つ、シールド膜100によりシールドされたSAW発振器90を説明する図であり、図6(a)は平面図、同図(b)は図6(a)のE−E線断面図である。
【0085】
図6(a)および(b)に示すように、SAW発振器90は、半導体基板81を含む半導体積層体91に、弾性表面波素子領域92と発振回路領域93を有している。半導体積層体91の最上層の弾性表面波素子領域92には、圧電膜83と、この圧電膜83上に形成されたIDT電極94と反射器88とが備えられ、弾性表面波素子を構成している。また、発振回路領域93には、複数の発振回路94〜96が備えられている。
【0086】
圧電膜83上には、バスバー86aに連結された複数の電極指86と、バスバー87aに連結された複数の電極指87が交互に配置され、且つ接触しないように形成されたIDT電極94が備えられている。IDT電極94のバスバー86a,87aからそれぞれ引出し電極86c,87cにより延長され、それぞれがIDT接続パッド95a,95bに接続されている。
また、IDT電極94の電極指86,87に対して向い合せの方向には、複数の反射指88aと反射器バスバー88bとが連結された構造の反射器88が、IDT電極94を両側から挟むように二つ配置されている。
【0087】
半導体基板81上の半導体回路領域93には、弾性表面波素子領域92に形成された弾性表面波素子の初期周波数偏差を補正可能な異なる回路定数をそれぞれ有して形成された発振回路94〜96を備えている。発振回路94〜96上方の半導体積層体91の最上層表面側から形成された凹部の凹底部には、各発振回路94〜96にそれぞれ接続された回路接続パッド94a,94b、95a,95b、96a、96bが設けられている。
また、図6(b)にて発振回路96を代表例として図示すように、回路接続パッド96a、96bと異なる平面位置に、接地回路接続配線96dにより発振回路96の接地部と接続された接地用接続パッド96cが設けられている。さらに、接地用接続パッド96cの近傍には、接地回路接続配線96eにより半導体基板81の半導体基板接地部96Gに接続された半導体接地パッドG3´が設けられている。同様に、発振回路74および75のそれぞれにも、接地用接続パッド74cおよび75c、半導体接地パッドG1´およびG2´がそれぞれ設けられている。
【0088】
本実施形態では、発振回路95が選択されて、発振回路95の回路接続パッド95a,95bと、それぞれ対応するIDT電極94のIDT接続パッド95a,95bとが、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線89により電気的に接続されている。IDT電極94と回路接続配線89により接続された発振回路95以外の発振回路94および96は、SAW発振器90において電気的に開放されている。
【0089】
電気的に開放された発振回路94および95の各接地用接続パッド94cおよび95cと、半導体接地パッド94Gおよび95Gのそれぞれは、液滴吐出用導電材料からなる接地接続配線99によりそれぞれ電気的に接続されている。
【0090】
発振回路94および96の上方の半導体積層体91の最上層表面には、液滴吐出用導電材料からなるシールド膜100が、平面視で各発振回路94,96を覆うようにそれぞれ形成されている。
【0091】
この構成によれば、複数形成された発振回路94〜96のうち、IDT電極94と電気的に接続されずに電気的に開放されている発振回路94および96が、接地接続配線99により半導体基板接地部96Gに接続されて半導体基板81に接地されている。また、発振回路94および96が、それぞれの上方の半導体積層体91の最上層に形成されたシールド膜100によりシールドされている。これにより、発振回路95とIDT電極94とが接続されて一つの回路が形成されたSAW発振器90を動作させたときに、電気的に開放されている発振回路94および96が、ノイズやクロストークの発生要因になることを抑制する効果がより強化される。また、接地接続配線99やシールド膜100の形成材料として液滴吐出用導電材料を使用していることから、液滴吐出法により接地接続配線99およびシールド膜100を形成することができる。従って、従来の蒸着やスパッタ法などに比べてマスクが不要となり、工程の簡略化が可能となるので、低コストにて接地接続配線99およびシールド膜を形成することができる。
【0092】
(変形例3)上記実施形態では、発振回路とIDT電極、また、発振回路用半導体回路と周波数調整用回路を電気的に接続するために、液滴吐出法を用いて液滴吐出用導電材料により接続配線を形成した。このとき、接続配線を形成面に、予め接続配線の形状を画定するための溝部を形成しておくことにより、安定した形状の接続配線を形成することが可能となる。
【0093】
図7は、半導体回路とIDT電極とを電気的に接続するための接続配線を形成する位置に、接続配線の形状を画定する溝が形成されたSAW発振回路の説明図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は同図(a)のF−F線断面図、(c)は溝部の幅方向の断面形状を示す同図(a)のf−f線断面図である。なお、説明の便宜上、図7(a)は接続配線を形成する前の状態を図示しており、図7(b),(c)は接続配線が形成された状態を図示している。
【0094】
図7(a)および(b)に示すように、SAW発振器110は、半導体基板101を含む半導体積層体111に、弾性表面波素子領域112と発振回路領域113を有している。半導体積層体111の最上層の弾性表面波素子領域112には、圧電膜103と、この圧電膜103上に形成されたIDT電極104と反射器108とが備えられ、弾性表面波素子を構成している。また、発振回路領域113には、複数の発振回路114〜116が備えられている。
【0095】
圧電膜103上には、バスバー106aに連結された複数の電極指106と、バスバー107aに連結された複数の電極指107が交互に配置され、且つ接触しないように形成されたIDT電極104が備えられている。IDT電極104のバスバー106a,107aからそれぞれ引出し電極106c,107cにより延長され、それぞれがIDT接続パッド105a,105bに接続されている。
また、IDT電極104の電極指106,107に対して向い合せの方向には、複数の反射指108aと反射器バスバー108bとが連結された構造の反射器108が、IDT電極104を両側から挟むように二つ配置されている。
【0096】
半導体基板101上の半導体回路領域113には、弾性表面波素子領域112に形成された弾性表面波素子の初期周波数偏差を補正可能な異なる回路定数をそれぞれ有して形成されている。発振回路114〜116上方の半導体積層体111の最上層表面側から形成された凹部の凹底部には、各発振回路114〜116にそれぞれ接続された回路接続パッド114a,114b、115a,115b、116a、116bが設けられている。
【0097】
発振回路114〜116の各回路接続パッド114a,114b、115a,115b、116a、116bと、それぞれ対応するIDT電極104のIDT接続パッド105a,105bを結ぶように溝部117が設けられている。このとき、溝部117は、対応する各接続パッド間を最短距離で結ぶよう形成すること、且つ、SAW発振器110の他の回路信号線と平面視で重ならないように配設することが望ましい。
【0098】
半導体積層体111最上層表面において、発振回路114〜116のうちIDT電極104の初期周波数補正に適した発振回路の回路接続パッドと、対応するIDT接続パッド105a,105bとは、液滴吐出法により吐出可能な導電性材料が固化されてなる接続配線により電気的に接続される。図8は、発振回路114〜116のそれぞれが選択されてIDT電極104と回路接続配線109により電気的に接続された状態を説明する平面図である。図8(a)は、発振回路114の回路接続パッド114a,114bが、それぞれ溝部117に画定されて形成された回路接続配線109によりIDT接続パッド105a,105bとそれぞれ接続された状態を示している。同様に、図8(b)は発振回路115の回路接続パッド115a,115bが、図8(c)は発振回路116の回路接続パッド116a,116bが、溝部117に画定されて形成された回路接続配線109によりIDT電極105a,105bと接続された状態をそれぞれ示している。
【0099】
この構成によれば、液滴吐出用導電材料からなる回路接続配線109を形成するときに、半導体積層体111の最上層に予め形成された溝部117に液滴吐出用導電材料が埋設されるように塗布される。これにより、回路接続配線109は溝部107によって画定されて形状が安定し、塗布部周辺への濡れ広がりを抑えることができるので、回路接続配線109の断線や隣接ショートを防止することが可能になる。
【0100】
(変形例4)上記第3の実施形態で説明したSAW発振器30は、発振回路用半導体回路34と接続されて発振回路を構成するための周波数調整用コンデンサ36〜38を、半導体プロセスを用いて形成したが、これに限らない。液滴吐出用の導電材料や誘電体材料などを用いて、液滴吐出法により周波数調整用コンデンサを形成する構成としてもよい。
【0101】
図9は、半導体回路領域133に発振回路を構成するための複数の周波数調整用コンデンサ136〜138が、液滴吐出法により形成されたSAW発振器130を説明する図であり、図9(a)は平面図、同図(b)は図9(a)のJ−J線断面図である。
【0102】
図9(a)および(b)に示すように、SAW発振器130は、半導体基板121を含む半導体積層体131に、弾性表面波素子領域32と半導体回路領域33を有している。半導体積層体31の最上層の弾性表面波素子領域32には、圧電膜23と、この圧電膜123上にIDT電極124と反射器128とを有し、弾性表面波素子が構成されている。また、半導体回路領域133には、発振回路用半導体回路34と、複数の周波数調整用コンデンサ136〜138とを有している。
【0103】
弾性表面波素子領域132の圧電膜123上には、バスバー126aに連結された複数の電極指126と、バスバー127aに連結された複数の電極指127が交互に配置され、且つ接触しないように形成されたIDT電極124を有している。IDT電極124のバスバー126a,127aからそれぞれ引出し電極126c,127cにより延長され、それぞれがIDT接続パッド125a,125bに接続されている。また、IDT電極124の電極指126,127に対して向い合せの方向には、複数の反射指128aと反射器バスバー128bとが連結された構造の反射器128が、IDT電極124を両側から挟むように二つ配置されている。
【0104】
半導体回路領域133には、複数の回路素子が接続されてなる発振回路用半導体回路134と、複数の周波数調整用コンデンサ136〜138とを有している。半導体プロセスを利用して形成された発振回路用半導体回路134は、半導体積層体131の最上層表面に形成された回路素子接続パッド134a,134bおよび回路接続パッド135a,135bに、それぞれ回路配線134cによって電気的に接続されている。
【0105】
一方、半導体積層体131の最上層表面に形成された回路素子接続パッド134a,134b近傍には、液滴吐出用材料からなり静電容量の異なる複数の周波数調整用コンデンサ136〜138が液滴吐出法により形成されている。液滴吐出用各周波数調整用コンデンサ136,137,138のそれぞれは、誘電体材料からなる誘電体膜の両端部に、液滴吐出用導電材料からなる回路素子接続電極136a,136b、137a,137b、138a,138bが設けられている。
【0106】
周波数調整用コンデンサ136〜138は、それぞれ異なる静電容量を有して形成されていて、そのうちの一つが発振回路用半導体回路134に接続されることにより発振回路を構成する。この発振回路とIDT電極24が接続されたときに、IDT電極24の目標周波数に対する初期周波数偏差を補正するのに最も適した静電容量値を有する周波数調整用コンデンサが選択されて発振回路が構成される。本実施形態では、周波数調整用コンデンサ137が選択された例を示している。選択された周波数調整用コンデンサ137の回路素子接続パッド137a,137bと、発振回路用半導体回路134の回路素子接続パッド134a,134bとは、液滴吐出用導電材料からなる発振回路内接続配線139により電気的に接続されて発振回路が形成されている。
そして、回路接続パッド35a,35bと、それぞれに対応するIDT接続パッド25a,25bとが、液滴吐出用導電材料により形成された回路接続配線129により電気的に接続されている。これにより、発振回路用半導体回路134と周波数調整用コンデンサ137が接続されてなる発振回路と、IDT電極124を有する弾性表面波素子とによる一つの回路が形成されている。
【0107】
この構成によれば、回路接続配線129および139の形成と同じ液滴吐出法により、半導体プロセスを利用した工程の後で回路調整用コンデンサ136〜138を形成することができる。例えば、IDT電極124を形成後に弾性表面波素子の初期周波数を測定し、測定結果に基づいて周波数調整用コンデンサを形成することもできるので、より精緻な周波数補正が可能になる。
【0108】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、圧電膜の材料としては、酸化亜鉛(ZnO)だけに限らず、窒化アルミニウム(AlN)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などを用いることができる。そして、IDT電極、反射器の材料としては、アルミニウム(Al)だけに限らず、金(Au)、タングステン(W)などを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】(a)は、第1実施形態に係る弾性表面波デバイスとしてのSAW発振器の概略平面図、(b)は、図1(a)のA−A線概略断面図。
【図2】第2の実施形態に掛かるSAW発振器の製造工程の一部の概要を説明するフローチャート図。
【図3】(a)は、第3実施形態に係るSAW発振器の概略平面図、(b)は、図3(a)のB−B線概略断面図。
【図4】第1の実施形態の変形例に係るSAW発振器の概略平面図、(b)は、図4(a)のC−C線概略断面図。
【図5】(a)は、第4実施形態に係るSAW発振器の概略平面図、(b)は、図2(a)のD−D線概略断面図。
【図6】(a)は、第4の実施形態に係る変形例2の構成を示す概略平面図、(b)は、図6(a)のE−E線概略断面図。
【図7】(a)は、本発明に係る変形例3の構成を示す概略平面図、(b)は、図7(a)のF−F線概略断面図、(c)は、図7(a)のf−f線概略断面図。
【図8】(a)〜(c)は、変形例3の具体的な実施例を説明する概略平面図。
【図9】(a)は、第3の実施形態に係る変形例4の構成を示す概略平面図、(b)は、図9(a)のJ−J線概略断面図。
【符号の説明】
【0110】
1,21,41,61,81,101,121…半導体基板、3,23,43,63,83,103,123…圧電膜、4,24,44,64,84,104,124…IDT電極、5a,5b,25a,25b,45a,45b,65a,65b,95a,95b,105a,105,125a,125b…IDT接続パッド、14,15,16,54,55,56,74,75,76,94,95,96,114,115,116…発振回路、14a,14b,15a,15b,16a,16b,35a,35b,74a,74b,75a,75b,76a,76b,94a,94b,95a,95b,96a,96b,114a,114b,115a,115b,116a,116b,134a,134b,135a,135b…回路接続パッド、36,37,38,136,137,138…発振回路を構成する回路素子としての周波数調整用コンデンサ、34a,34b,36a,36b,37a,37b,38a,38b,134a,134b,136a,136b,137a,137b,138a,138b…回路素子接続パッド、9,29,49,69,89,109,129…回路接続配線、10,30,50,70,90,110,130…弾性表面波デバイスとしてのSAW発振器、12,32,52,72,92,112,132…弾性表面波素子領域、13,33,53,73,93,113,133…半導体回路領域、39,139…発振回路内接続配線、79…接地接続配線、58,59,100…シールド膜、G1〜G3,G1´〜G3´…半導体接地パッド、74G,75G,76G,94G,95G,96G…半導体接地部、117…溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に、IDT電極を備えた弾性表面波素子が形成された弾性表面波素子領域と、前記弾性表面波素子領域とは異なる領域に、複数の回路素子が形成された半導体回路領域とを有し、
前記IDT電極と前記回路素子とが、一つの回路を形成するように回路接続配線によって電気的に接続され、
前記回路接続配線の一部または全部が液滴吐出用導電材料からなることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
回路定数の異なる複数の発振回路が前記回路素子から形成され、
複数の前記発振回路のうち一つが、前記IDT電極と前記回路接続配線により電気的に接続されて一つの前記回路が形成されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記半導体回路領域の回路素子のうちの複数が周波数調整用回路素子であって、
複数の前記周波数調整用回路素子のうち一つの前記周波数調整用回路素子と、前記回路素子とが、発振回路内接続配線により電気的に接続されて発振回路が構成され、該発振回路と前記IDT電極とが電気的に接続されて一つの前記回路が形成されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記発振回路と前記IDT電極とを電気的に接続する前記回路接続配線が液滴吐出用導電材料からなることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記液滴吐出用導電材料からなる前記回路接続配線が形成される位置に、該回路接続配線の形状を画定するように溝部が形成されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
一つの前記回路を形成しない回路定数の異なる複数の前記発振回路および回路素子を覆うようにシールド膜が形成されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスにおいて、
前記IDT電極が形成された面に前記半導体基板に接地された半導体接地パッドが設けられ、
ひとつの前記回路を形成しない前記発振回路および前記回路素子と、前記接地パッドとが接地接続配線によって電気的に接続されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項8】
半導体基板に、弾性表面波素子領域と、前記弾性表面波素子領域とは異なる領域に、半導体回路領域とを有する弾性表面波デバイスの製造方法であって、
前記半導体回路領域に複数の回路素子を備えた半導体回路を形成する工程と、
前記弾性表面波素子領域に、圧電膜と、IDT電極とを有する弾性表面波素子を形成する工程と、
前記IDT電極が形成された面と同じ表面に回路接続配線を液滴吐出用導電材料を用いて液滴吐出法により形成する工程と、を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、
前記半導体回路を形成する工程に、前記回路素子からなる回路定数の異なる複数の発振回路を形成する工程を含み、
前記弾性表面波素子の目標周波数を得るために最適な一つの前記発振回路を選択する工程と、この選択された前記発振回路と前記IDT電極とを、前記液滴吐出法により形成する前記回路接続配線により電気的に接続する工程と、を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、
前記半導体回路を形成する工程に、前記回路素子のうちの複数を周波数調整用回路素子として形成する工程を含み、
複数の前記周波数調整用回路素子のうち、前記弾性表面波素子の目標周波数を得るために最適な一つの周波数調整用回路素子を選択する工程と、この選択された前記周波数調整用回路素子と前記回路素子とを、前記液滴吐出法により形成する発振回路内接続配線により電気的に接続して発振回路を形成する工程と、を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、
前記液滴吐出法により前記回路接続配線を形成する位置に、前記回路接続配線の形状を画定するための溝部を形成する工程を有することを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項12】
請求項8〜11に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、
一つの前記回路を形成しない前記回路素子または前記発振回路を覆うように、液滴吐出用導電材料によりシールド膜を形成する工程を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項8〜12に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、
前記IDT接続パッドの形成された面に前記半導体基板に接地された半導体接地パッドを設ける工程と、
前記半導体接地パッドと、一つの前記回路を形成しない前記回路素子または前記発振回路とを電気的に接続する接地接続配線を形成する工程とを有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−281998(P2007−281998A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107281(P2006−107281)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】