説明

弾性表面波分波器

【課題】送信側通過帯域及び受信側通過帯域よりも高周波側における減衰量を改善することができ、かつ小型化を図ることが可能な弾性表面波分波器を提供する。
【解決手段】アンテナ端子に接続された送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタを有し、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタがパッケージ材に搭載されている弾性表面波分波器であって、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタに接続されており、かつ少なくとも送信側通過帯域及び受信側通過帯域よりも高周波側に2つのトラップ減衰極を有する高周波素子がさらに備えられている、弾性表面波分波器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機のような無線通信装置に用いられる弾性表面波分波器に関し、より詳細には、通過帯域よりも高域側において生じる高調波を抑圧する構成が備えられた弾性表面波分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機では、送信側の信号と、受信側の信号とを分離するために弾性表面波分波器が用いられている。ここでは、送信側周波数の2倍波及び3倍波の抑圧が求められている。
【0003】
特許文献1には、このような要求を満たすために、弾性表面波分波器において、ローパスフィルタが接続されている回路構成が開示されている。図20は、特許文献1に記載の弾性表面波分波器の回路構成を示す図である。弾性表面波分波器201では、アンテナに接続される共通信号端子202に、送信側弾性表面波フィルタ203及び受信側弾性表面波フィルタ204が接続されている。また、共通信号端子202と、送信側弾性表面波分波器203との間に第1のローパスフィルタ205が接続されており、共通信号端子202と受信側弾性表面波フィルタ204との間に第2のローパスフィルタ206が接続されている。
【0004】
ローパスフィルタ205,206は、並列コンデンサC1,C2と、直列に接続されたインダクタLとを有する。
【0005】
特許文献1に記載のローパスフィルタを用いる方法の他、従来、オープンスタブやショートスタブを用いてトラップを構成し、それによって送信側周波数の2倍波や3倍波の減衰量を改善する技術が知られている。
【0006】
他方、特許文献2には、弾性表面波装置を構成している圧電基板上に容量素子を構成する方法の一例が開示されている。図21は、この弾性表面波装置211を示す模式的平面図である。弾性表面波装置211では、圧電基板上に弾性表面波フィルタ213,214が構成されている。そして、インピーダンス整合を図るための容量素子215が同じく圧電基板212上に形成されている。容量素子215は、図示のように、櫛形電極により構成されており、かつ該櫛形電極の電極指が並ぶ方向が、弾性表面波フィルタ213,214における表面波伝搬方向に対して90度回転された方向とされている。
【0007】
また、特許文献3には、弾性表面波分波器において、相対的に周波数が高い弾性表面波フィルタとアンテナ側共通端子との間に、ガラスエポキシ基板やセラミック基板上に金属ストリップラインを形成することにより構成されたインダクタンスLが接続されている。このインダクタンスLは、位相回転用素子であり、インダクタンスLの接続されている側の弾性表面波フィルタの低周波数側の減衰域高インピーダンス化を図るように作用するとされている構造が開示されている。
【0008】
特許文献1に記載の弾性表面波分波器201では、並列コンデンサC1,C2及び直列に接続されたインダクタLからなるローパスフィルタ205,206を送信側弾性表面波フィルタ203及び受信側弾性表面波フィルタ204の双方に接続することにより、通過帯域よりも高周波側の減衰量が全体的に改善されている。そのため、送信側周波数の2倍波及び3倍波だけでなく、高周波側の減衰量が全体的に改善されるため、挿入損失が大きくなるという問題があった。
【0009】
他方、上述したオープンスタブやショートスタブなどを用いたトラップ型のフィルタを弾性表面波分波器に構成した場合には、該トラップの位置を送信側周波数の2倍波及び3倍波の周波数位置とすることにより、挿入損失の悪化をさほど招くことなく、上記2倍波及び3倍波における減衰量を改善することはできる。しかしながら、オープンスタブやショートスタブを用いたトラップフィルタを構成した場合、弾性表面波分波器のパッケージ内におけるトラップフィルタの占有面積が大きくなり、弾性表面波分波器の小型化が困難であった。
【0010】
なお、特許文献2には、上記のように、圧電基板を用いて構成された弾性表面波フィルタにおいて、弾性表面波フィルタの表面波伝搬方向に対して電極指が並ぶ方向が90度回転された方向に櫛形電極を配置することにより、容量素子を構成した構造が開示されているが、容量素子215はあくまでも弾性表面波フィルタ213,214の整合用素子として用いられているものにすぎない。
【0011】
また、特許文献3に記載の先行技術では、弾性表面波分波器における位相回転用素子として、上記インダクタLが開示されているにすぎない。
【特許文献1】特開平9−98046号公報
【特許文献2】特開平11−68512号公報
【特許文献3】特開平5−167388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、送信側周波数の2倍波及び3倍波における減衰量を改善することができ、しかも低損失であり、かつ小型化を図ることを可能とする弾性表面波分波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、アンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続されており、圧電基板を用いて構成された送信側弾性表面波フィルタと、前記アンテナ端子に接続されており、圧電基板を用いて構成された受信側弾性表面波フィルタと、前記送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタが搭載されたパッケージ材と、少なくとも1つのインダクタと、少なくとも1つの容量素子とを有する高周波素子とを備え、前記インダクタが、前記パッケージ材内に形成されており、前記容量素子は、前記送信側弾性表面波フィルタ及び/または受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板に形成されていることを特徴とする、弾性表面波分波器である。
【0014】
本発明に係る弾性表面波フィルタのある特定の局面では、前記容量素子が、前記送信側弾性表面波フィルタ及び/または前記受信側弾性表面波フィルタを構成している前記圧電基板上に形成された櫛形電極により構成されており、前記櫛形電極の電極指ピッチに沿う方向が、該櫛形電極が形成されている弾性表面波フィルタにおいて表面波が伝搬する方向に対して直交する方向とされており、前記容量素子によって発生するリップルが、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域及び受信側弾性表面波フィルタの通過帯域の2倍波及び3倍波並びにその近傍に位置しないことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る弾性表面波分波器の他の特定の局面では、前記圧電基板がLiTaO基板であり、前記容量素子を構成している櫛形電極における電極指の周期が下記の式(1)〜(3)〔但し、式(1)〜(3)において、fHは、受信側弾性表面波フィルタの通過帯域の上限周波数を、fLは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の下限周波数を意味し、Pは、櫛形電極の電極指ピッチ(電極指の幅と、電極指間のスペースの和)である〕のいずれかの範囲にあることを特徴とする。
5300/fH≧2×P …式(1)
6800/fL≦2×P≦16500/fH …式(2)
18800/fL≦2×P …式(3)
【0016】
本発明に係る弾性表面波分波器のさらに他の特定の局面では、前記櫛形電極の電極指周期が、下記の式(4)〜(12)〔但し、fTLは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の下限周波数、fTHは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の上限周波数、Pは、櫛形電極の電極指ピッチを示す。〕の範囲にあることを特徴とする。
5500/fH≧2×P …式(4)
6800/fL≦2×P≦16500/fH …式(5)
18800/fL≦2×P …式(6)
5500/(2×fTH)≧2×P …式(7)
6800/(2×fTL)≦2×P≦16500/(2×fTH)
…式(8)
18800/(2×fTL)≦2×P …式(9)
5500/(3×fTH)≧2×P …式(10)
6800/(3×fTL)≦2×P≦16500/(3×fTH)
…式(11)
18800/(3×fTL)≦2×P …式(12)
【0017】
本発明に係る弾性表面波分波器の別の特定の局面では、前記容量素子が、前記送信側弾性表面波フィルタ及び/または前記受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板上において、第1の電極膜と、第2の電極膜と、第1,第2の電極膜間に挟持された絶縁膜とからなる積層構造を形成することにより構成されている。
【0018】
本発明に係る弾性表面波分波器のさらに別の特定の局面では、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタが、それぞれの独立の圧電基板を用いて構成されており、前記高周波素子を形成するための容量素子が、前記受信側弾性表面波フィルタの圧電基板に形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る弾性表面波分波器の回路構成を示す図であり、図2は、該弾性表面波分波器の正面断面図である。
【0021】
本実施形態の弾性表面波分波器1は、送信側の通過帯域が824〜849MHzであり、受信側の通過帯域が869〜894MHzの携帯電話用弾性表面波分波器である。もっとも、本発明に係る弾性表面波分波器における送信側の通過帯域及び受信側の通過帯域はこれらに限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、弾性表面波分波器1は、アンテナANTに接続されるアンテナ端子2を有し、アンテナ端子2に送信側弾性表面波フィルタ3及び受信側弾性表面波フィルタ4が接続されている。
【0023】
送信側弾性表面波フィルタ3と受信側弾性表面波フィルタ4とは、共通接続点5において各々のアンテナ端子側の端部が共通に接続されている。そして、アンテナ端子2と、共通接続点5との間に高周波素子としてローパスフィルタ6が接続されている。ローパスフィルタ6の詳細は後程説明する。
【0024】
また、受信側弾性表面波フィルタ4と共通接続点5との間には、位相整合用素子7が接続されている。
【0025】
図2に示すように、本実施形態の弾性表面波分波器1のパッケージ構造は、パッケージ材11と、蓋材12とからなる。パッケージ材11は、上方に開いた開口11aを有し、該開口11aを閉成するように蓋材12がパッケージ材11に接合されている。パッケージ材11は、圧電性セラミックスあるいは合成樹脂等の適宜の材料により構成される。また、蓋材12は、金属もしくはセラミックスなどの適宜の材料により構成され得る。
【0026】
パッケージ材11の開口11a内には、送信側弾性表面波フィルタ3及び受信側弾性表面波フィルタ4が略図的に示すバンプ13,14を用いてフリップチップボンディング工法によりパッケージ材11のチップ搭載面11bに実装されている。なお、チップ搭載面11bは、開口11aの底面であるが、平板状パッケージ基板を用いた場合には、チップ搭載面は上面となる。
【0027】
また、パッケージ材11の受信側弾性表面波フィルタ4が設けられている側においてアンテナ端子2(図1参照)が設けられている。
【0028】
送信側弾性表面波フィルタ3及び受信側弾性表面波フィルタ4は、それぞれ、独立の圧電基板上に複数の1ポート型弾性表面波共振子を形成することにより構成されている。また、図1から明らかなように、送信側弾性表面波フィルタ3は、複数の直列腕共振子S1〜S6と、複数の並列腕共振子P1,P2とからなるラダー型回路構成を有する。同様に、受信側弾性表面波フィルタ4も、複数の直列腕共振子S7〜S10及び複数の並列腕共振子P3〜P5からなるラダー型回路構成を備えている。
【0029】
上記直列腕共振子S1〜S6,S7〜S10及び並列腕共振子P1,P2,P3〜P5は、それぞれ、前述したように1ポート型の弾性表面波共振子により構成されている。
【0030】
図3に示すように、受信側弾性表面波フィルタ4は、矩形の圧電基板21を用いて構成されている。上記圧電基板21上に、上述した直列腕共振子S7〜S10及び並列腕共振子P3〜P5が形成されている。なお、直列腕共振子S7,S8は、図3では1つの共振子として略図的に示す。同様に、直列腕共振子S9,S10も図3では1つの共振子として示す。各直列腕共振子S7〜S10及び並列腕共振子P3〜P5は、いずれも、櫛形電極からなるIDT(インターデジタルトランスデューサ)の表面波伝搬方向両側にグレーティング反射器を形成してなる1ポート型弾性表面波共振子により構成されている。
【0031】
送信側弾性表面波フィルタ3も同様に、矩形の圧電基板上に直列腕共振子S1〜S6及び並列腕共振子P1,P2を構成するように複数の1ポート型弾性表面波共振子が形成されている構造を有する。
【0032】
本実施形態では、上記送信側弾性表面波フィルタ3及び受信側弾性表面波フィルタ4を構成している圧電基板として、36度LiTaO基板が用いられている。もっとも、本発明においては、弾性表面波フィルタ3,4を構成するための圧電基板は、他の圧電単結晶あるいは圧電セラミックスにより構成されていてもよい。また、本実施形態では、圧電基板上に形成された各種電極の材料としてAlを主成分とするAl合金が用いられているが、Al以外のAuやCuなどの材料を用いてもよい。また、複数の金属を積層することにより、各種電極を形成してもよい。
【0033】
図1に戻り、受信側弾性表面波フィルタ4と共通接続点5との間には、位相整合用素子7が接続されている。この位相整合用素子7は、より具体的には、パッケージ材11内に埋設されたストリップラインにより構成されている。すなわち、図2に示すように、パッケージ材11のチップ搭載面11bと下面11cとの間の中間高さ位置に、ストリップライン15,16が形成されている。ストリップライン15の一端が、ビアホール電極17により受信側弾性表面波フィルタ4に接続されている。ストリップライン15の他端は、ビアホール電極18によりストリップライン16に接続されている。ストリップライン16は、ビアホール電極19によりパッケージ材11のチップ搭載面11bに形成された配線電極(図示せず)に接続されている。この配線電極が、図1の共通接続点5に接続されている。
【0034】
すなわち、上記位相整合用素子7は、弾性表面波分波器1を構成するパッケージ材11内に構成されている。上記ストリップライン15,16は50Ω付近の特性インピーダンスを有する。また、ストリップライン15,16の長さは、これらによる位相シフト量が、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域中心周波数836.5MHzにおいて位相が75度回転する長さとされている。
【0035】
他方、図1のローパスフィルタ6は、少なくとも1つの容量素子と、少なくとも1つのインダクタとを有する。より具体的には、図3に示すように、受信側弾性表面波フィルタ4を構成する圧電基板21上に、第1〜第3の容量素子22〜24が形成されている。
【0036】
第1〜第3の容量素子22〜24は、いずれも櫛形電極により構成されている。そして、第1〜第3の容量素子22〜24は、第1〜第3の共通端子25〜27にそれぞれ2つの容量素子が共通接続されて、Δ型に接続されている。
【0037】
ローパスフィルタ6は、前記第1〜第3の容量素子22〜24のΔ型接続により得られる容量と、図2に示されているパッケージ材11内に埋設されたインダクタンス素子29,30との共振を利用するように構成されている。すなわち、インダクタンス素子29,30は、パッケージ材11内において、複数の層において電極を形成することにより構成されている。インダクタンス素子29,30は、インダクタンス値に応じてらせん状またはミアンダ状などの形状に構成され得る。インダクタンス素子29,30はビアホール電極31で接続されている。インダクタンス素子29の一端は、ビアホール電極32によりパッケージ材11の上面に設けられた配線電極(図示せず)に接続されている。また、インダクタンス素子30は、ビアホール電極33に接続されており、ビアホール電極33は、パッケージ材11の下面11cに至っており、該下面11cに形成された配線電極(図示せず)に接続されている。上記インダクタンス素子29,30と同じようにして、もう一組のインダクタンス素子を構成する(図示せず)。
【0038】
上記インダクタンス素子29,30及びもう一組のインダクタンス素子と、第1〜第3の容量素子22〜24により、図4に示す回路構成のローパスフィルタ6が構成されている。なお、図4におけるインダクタンスL1,L2は図2のインダクタンス素子29,30と前述のもう一組のインダクタンス素子とによりそれぞれ構成されている。すなわち、図4に示す回路を構成するように、インダクタンス素子29,30が容量素子22〜24と接続されている。なお、インダクタンスLは、L2に比べて、インダクタンス値が小さいため、一層構造のビアホールのみでも構成することができる。
【0039】
上記ローパスフィルタ6は、上述したように、アンテナ端子2と共通接続点5との間に接続されている。ローパスフィルタ6は、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の中心周波数の2倍波及び3倍波もしくはその近傍に減衰極を有する周波数特性を有し、かつ送信側及び受信側弾性表面波フィルタの通過帯域におけるインピーダンス整合を図るように作用する。すなわち、本実施形態では、上記ローパスフィルタ6により、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域の2倍波及びその近傍に第1の減衰極が3倍波もしくはその近傍に第2の減衰極が発生されるため、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の2倍波及び3倍波を効果的に抑圧することができ、良好な周波数特性を得ることができる。
【0040】
図3に示すように、容量素子22〜24を構成している櫛形電極の電極指の並んでいる方向、すなわち、電極指ピッチの方向は、受信側弾性表面波フィルタ4における表面波伝搬方向と直交する方向に配置されている。なお、受信側弾性表面波フィルタにおいて表面波が伝搬する方向とは、直列腕共振子S7〜S10及び並列腕共振子P3〜P5における表面波伝搬方向をいう。言い換えれば、容量素子22〜24を構成している各櫛形電極の電極指ピッチの方向は、上記表面波伝搬方向に対して90度回転された方向とされている。
【0041】
また、容量素子22〜24における電極指ピッチ、すなわち、電極指の幅と電極指間のスペースの幅の合計は本実施形態では4.5μmとされている。
【0042】
図2から明らかなように、インダクタンス素子29,30は、位相整合用素子を構成するストリップライン15,16と同様に複数の層に渡って形成されており、かつインダクタンス素子29,30及びストリップライン15,16は、それぞれ同一平面内に形成されている。すなわち、本実施形態では、インダクタンス素子を構成する電極と、位相整合用素子7を構成する電極とが、複数の層に渡り、かつ同一平面内に位置するように配置されている。なお、図示していない前述のもう一組のインダクタンスは、インダクタンス29,30と同様に構成されている。
【0043】
次に、弾性表面波分波器1の作用効果につき説明する。
【0044】
上記実施形態の弾性表面波分波器と、上記実施形態から上記ローパスフィルタ6が取り除かれた比較例の弾性表面波分波器を用意し、周波数特性を測定した。図5は結果を示す。図5の実線が本実施形態の弾性表面波分波器1の周波数特性を、破線が比較例の弾性表面波分波器の周波数特性を示す。
【0045】
図5から明らかなように、本実施形態の弾性表面波分波器1では、受信側弾性表面波フィルタ4の中心周波数の2倍及び3倍の周波数位置に、矢印A,Bで示す第1,第2の減衰極が生じていることがわかる。すなわち、ローパスフィルタ6によれば、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域の2倍波及び3倍波における減衰量を改善し得ることがわかる。
【0046】
上記実施形態では、ローパスフィルタ6は、図4に示す回路構成を有するように構成されていたが、本発明においては、上記ローパスフィルタ6の回路構成は種々変形することができる。
【0047】
図7及び図9は、ローパスフィルタ6の変形例を示す各回路図である。
【0048】
図7に示すローパスフィルタ36では、4個の容量素子36a〜36dと、2個のインダクタンス素子36e,36fとが用いられている。すなわち、インダクタンス素子36eと容量素子36bとが並列に接続されており、同様にインダクタンス素子36fと容量素子36cとが並列に接続されている。そして、インダクタンス素子36e及び容量素子36bの並列接続構造と、インダクタンス素子36f及び容量素子36cの並列構造が直列に接続されており、これらの並列接続構造が設けられている部分の外側においてアース電位との間に、それぞれ、容量素子36a,36dが接続されている。
【0049】
また、図9に示すローパスフィルタ37では、3個の容量素子37a〜37cと、2個のインダクタンス素子37d,37eとが用いられている。ここでは、インダクタンス素子37dと、容量素子37bとが並列に接続されている。この並列接続構造の外側において、それぞれ、アース電位との間に、容量素子37a,37cが接続されている。また、容量素子37cとアース電位との間に、上記インダクタンス素子37eが接続されている。
【0050】
図6,図8及び図10は、上記ローパスフィルタ6,36,37の周波数特性を示す図である。
【0051】
なお、図6,図8,図10に示したローパスフィルタ6,36,37の特性は、上記ローパスフィルタにおけるインダクタンス素子及び容量素子の仕様を下記の表1に示す通りとした場合の特性である。
【0052】
【表1】

【0053】
図8及び図10から明らかなように、ローパスフィルタ36,37を用いた場合においても、ローパスフィルタ6の場合と同様に、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域の2倍波及び3倍波においてそれぞれ、第1,第2の減衰極が発生され得ることがわかる。
【0054】
しかしながら、ローパスフィルタ36,37では、減衰極の帯域における減衰量がローパスフィルタ6を用いた場合に比べて低くなるため、通過帯域における損失を最小限に抑制するには、上記ローパスフィルタ6を用いることが望ましい。
【0055】
上記のように、図4に示したローパスフィルタ6を用いることにより、少なくとも3つの容量素子と少なくとも2つのインダクタンス素子とを組み合わせることにより、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域である800〜900MHz付近で整合が取れ、その2倍波及び3倍波に減衰極を有するフィルタ特性の得られることがわかる。
【0056】
特に、ローパスフィルタ6では、第1〜第3の容量素子22〜24が上記のようにΔ型に接続されており、第1の共通端子25とアース電位との間に第1のインダクタンス素子L1が接続されており、第2,第3の共通端子26,27間に第2のインダクタンス素子L2が接続されている。ここでは、第2のインダクタンスL2と第2のインダクタンスL2に並列に接続された容量素子23との反共振により第1の減衰極が生じ、後述の容量Cと、第1のインダクタンスL1との共振により第2の減衰極が生じる。従ってローパスフィルタ6を用いた場合、ローパスフィルタ36,37に比べて、素子数の低減を測り得るだけでなく、全体としての容量値及びインダクタンス値を小さくすることができる。また、ローパスフィルタ6は、ローパスフィルタ36,37に比べてより小型に構成することができる。
【0057】
ローパスフィルタ6の第1〜第3の容量素子22〜24の接続を、例えば、図11(a)に示すΔ型の接続から、図11(b)に示すT型の接続構造に変形することにより、ローパスフィルタ6の減衰極の位置を計算することができる。T型の接続構造では、全体の容量Cの値は以下の通りとなる。
【0058】
=(Ca+Cb+Ca×Cc/Cb)
表1に示した場合に準じて、Ca=1.3pF、Cb=1.3pF及びCc=2.35pFを代入すると、C=3.3pFと大きな値となる。
【0059】
また、第2の減衰極の位置は、インダクタンス素子L2と容量Cの共振により決定される。従って、すなわち、1/(2×π×(L2×C1/2)により決定されるため、容量Cの値が大きくなると、インダクタンスLの値を小さくしても周波数が一致し、ローパスフィルタ36,37に比べて、より一層小型化を図ることができる。
【0060】
なお、ローパスフィルタを形成するインダクタンス素子は、受信側弾性表面波フィルタ4外に設けられてもよい。しかしながら、上記実施形態のように、パッケージ材11内にインダクタンス素子29,30等を内蔵させることにより、より一層の小型化を図ることができる。また、弾性表面波分波器1の付加価値を高めることができる。
【0061】
本実施形態においては、ローパスフィルタ6は、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域2倍波及び3倍波を減衰させるように構成されることが必要である。このローパスフィルタ6は、本実施形態では、受信側弾性表面波フィルタ4とアンテナ端子2との間に接続されていた。これに対して、ローパスフィルタ6を、受信側弾性表面波フィルタ4と出力端子41(図1参照)との間に接続した場合にも、受信側弾性表面波フィルタ4の周波数特性を改善することはできる。しかしながら、好ましくは、上記実施形態のように、受信側弾性表面波フィルタ4のアンテナ側にローパスフィルタ6を接続することにより、受信側弾性表面波フィルタの高周波数特性の改善にも寄与することができる。
【0062】
また、インダクタンス素子29,30等は、パッケージ材11内に形成されていたが、インダクタンス素子29,30等が、送信側弾性表面波フィルタ3側において構成されていると、位相整合用のストリップライン15,16との間で容量結合や誘導結合が生じ、減衰域の特性が極端に悪化する。これに対して、本実施形態のように、インダクタンス素子29,30等がストリップライン15,16とはパッケージ材11の主面方向において隔てられて、受信側弾性表面波フィルタ4側に位置された場合には、上記のような結合が生じ難いため、減衰域の特性の悪化を抑制することができる。しかも、インダクタンス素子29,30等を構成する電極19,20を、ストリップライン15,16と複数の層に渡り、かつ同一面内に配置することができ、パッケージ材11の小型化及び製造工程後の簡略化を果たすことができる。
【0063】
加えて、上記インダクタンス素子29,30を、ストリップライン15,16とそれぞれ同一面内に配置した構造では、上記のように製造工程の簡略化を果たすことができるので、コストの低減及び弾性表面波分波器1の低背化を果たすことも可能となる。特に、インダクタンス素子29,30等が複数の層に渡り形成されているため、インダクタンス素子29,30等では、自己誘導を高め合うことができ、それによっても、小型化を進めることができる。
【0064】
加えて、位相整合用のストリップライン15,16も同様に複数層に渡って形成されており、かつ上記インダクタンス素子29,30等と同一面内に形成されているので、同一プロセスにより同時に形成することができるので、コストを低減することができる。
【0065】
なお、上記ローパスフィルタを構成する容量は、パッケージ材11内に内蔵されてもよい。しかしながら、上記実施形態のように弾性表面波フィルタ4を構成する圧電基板21上に容量素子を形成することにより、パッケージ材11内に内蔵させた場合に比べて弾性表面波分波器1の低背化を進めることができる。特に、上記のように、櫛形電極からなる容量素子22〜24を用いた場合には、小さな面積で大きな容量を得ることができるため、容量素子の小型化を図ることができる。また、上記櫛形電極を用いて容量素子22〜24が構成されているので、容量素子を、弾性表面波共振子の電極形成と同時に形成することができ、それによってもコストを低減することができる。
【0066】
上記実施形態では、上記容量素子22〜24を構成する櫛形電極の電極指ピッチの方向が、前述した表面波伝搬方向に対して90度回転された方向とされているので、容量素子22〜24を構成している櫛形電極において所望でない応答が生じ難い。
【0067】
好ましくは、圧電基板としてLiTaO基板を用いる場合には、容量素子22〜24を構成する櫛形電極における電極指ピッチPの範囲は、下記の式(1)〜(3)の範囲とすることが望ましく、それによってより一層低損失の弾性表面波分波器1を提供することができる。
【0068】
なお、fHは、受信側弾性表面波フィルタの通過帯域の上限周波数を、fLは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の下限周波数を意味する。
【0069】
5300/fH≧2×P …式(1)
6800/fL≦2×P≦16500/fH …式(2)
18800/fL≦2×P …式(3)
【0070】
上記実施形態では、fH=894MHzであり、fL=824MHzであるため、
6.15×10−6≧2×P
8.25×10−6≦2×P≦18.5×10−6
22.8×10−6≦2×P
のいずれかを満たすように櫛形電極を構成すればよい。上記実施形態では、櫛形の電極指ピッチPは、前述したように4.5μmとされているため、上記条件を満たし、従って、良好なフィルタ特性を得ることができる。
【0071】
次に、式(1)〜(3)につき、図12を参照して説明する。
【0072】
弾性表面波フィルタが形成されている36度LiTaO基板上に、表面波フィルタ表面波伝搬方向であるX軸に対して90度回転した方向に電極指が並ぶように櫛形電極を形成し、該櫛形電極のインピーダンスを測定した。結果を図12に示す。この場合、櫛形電極の電極指ピッチは10μm、電極指の対数は25対とした。図12から明らかなように、300MHz付近及び900MHz付近に大きなリップルが存在することがわかる。位相はリアクタンス分と抵抗分の比率により決定される。位相が−90度に近ければ近い程、抵抗分が小さく、良好な容量が得られることを示し、位相が大きくなるに従って抵抗分が増えることを示す。従って、ローパスフィルタの容量素子では、上記リップルが現れる周波数帯を避ける必要のあることがわかる。位相がボトム付近である−85度よりも大きくなる領域に限定すると、避けるべき周波数帯は275MHz、340MHz、825MHz、及び940MHzとなる。
【0073】
電極指ピッチが10μmであるため、上記周波数位置を音速に換算すると、5500、6800、16500及び18800m/秒となる。従って、通過帯域の相対的に低いフィルタ、すなわち、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域の下限周波数から、通過帯域が相対的に高いフィルタ、すなわち、受信側弾性表面波フィルタ4の通過帯域の上限周波数までを、上記範囲から外す必要がある。ここで、式(1)〜(3)の範囲外、すなわち、電極指ピッチを10μm選択した場合と、式(1)〜(3)の範囲内である7μmに選択した場合との特性の差を図13に示す。図13の実線が7μmの場合を示し、破線が10μmの場合を示す。図13から明らかなように、ローパスフィルタ用の容量素子として、電極指の並ぶ方向が表面波伝搬方向に対して90度回転された方向となるように櫛形電極を形成した場合、式(1)〜(3)を満たすことにより、損失を低減し得ることがわかる。
【0074】
また、ローパスフィルタ6を用いて送信側の通過帯域の2倍波及び3倍波付近に減衰極を得る場合、さらに2倍波及び3倍波の周波数においても上述したリップルが存在することがある。これらのリップルを回避することができれば、2つの弾性表面波フィルタ3,4の帯域内特性と、減衰極における減衰量の悪化を防ぐことができ、より一般一層良好な弾性表面波分波器を提供することができる。
【0075】
また、本発明においては、送信側弾性表面波フィルタ3の通過帯域の下限周波数をfTL、通過帯域の上限周波数fTHとすると、電極指ピッチPは、下記の式(4)〜(12)のいずれかの範囲内に設定することがより一層望ましい。
【0076】
5500/fH≧2×P …式(4)
6800/fL≦2×P≦16500/fH …式(5)
18800/fL≦2×P …式(6)
5500/(2×fTH)≧2×P …式(7)
6800/(2×fTL)≦2×P≦16500/(2×fTH)
…式(8)
18800/(2×fTL)≦2×P …式(9)
5500/(3×fTH)≧2×P …式(10)
6800/(3×fTL)≦2×P≦16500/(3×fTH)
…式(11)
18800/(3×fTL)≦2×P …式(12)
【0077】
例えば、上記実施形態のように、送信側の通過帯域が824〜849MHz、受信側の通過帯域が869〜894MHzの場合、電極指ピッチは、下記のいずれかの範囲に限定することが望ましく、それによってリップルを通過帯域及び送信帯域の2倍波及び3倍波の領域の双方から外すことができる。
【0078】
(1)1.08μm以下
(2)1.37〜1.62μm
(3)2.06〜3.08μm
(4)4.13〜4.86μm
(5)5.70〜9.22μm
(6)11.4μm以上
【0079】
また、上記実施形態では、櫛形電極により、ローパスフィルタの容量素子が構成されていたが、櫛形電極以外の構造を採用することにより容量素子を構成してもよい。例えば、圧電基板上に、第1の電極、誘電体及び第2の電極を積層した構造により容量素子を形成してもよい。この場合には、誘電体のtanδでQ値が決定され、tanδの良好な誘電体膜を用いることにより、損失の低減を図ることができる。
【0080】
本実施形態では、上記櫛形電極からなる容量素子22〜24は、受信側弾性表面波フィルタ4を構成する圧電基板21上に配置されていたが、送信側弾性表面波フィルタ3に構成されてもよい。もっとも、弾性表面波分波器では、送信側弾性表面波フィルタ3に大電力が投入されるため、耐電力を高めるために、送信側弾性表面波フィルタ3は、より多段に構成されるのが普通である。従って、送信側弾性表面波フィルタ3は、受信側弾性表面波フィルタ4に比べてチップサイズが大きいのが普通である。よって、上記実施形態のように、受信側弾性表面波フィルタ4に容量素子22〜24を構成することにより、受信側弾性表面波フィルタ4と送信側弾性表面波フィルタ3のチップサイズを近づけることができ、あるいは等しくすることができる。それによって、弾性表面波分波器1の製造に際しての取扱い性を高めるこができるとともに、受信側弾性表面波フィルタ4のパッケージ材11との接合部の信頼性を高めることができる。
【0081】
さらに、ローパスフィルタを構成するための容量素子を、受信側弾性表面波フィルタ4のアンテナ端近傍に配置することにより、送信側弾性表面波フィルタ3の信号端子や受信側弾性表面波フィルタの出力端との間の容量結合や誘導結合を防ぐことができ、アイソレーション特性に優れた弾性表面波分波器を提供することができる。
【0082】
上記実施形態の弾性表面波分波器1では、位相整合用素子7による位相遅延量は75度とされていた。この場合には、送信側弾性表面波フィルタ3にとって、受信側弾性表面波フィルタ4が誘導性の素子にみえることとなる。すなわち、送信側弾性表面波フィルタ3に並列にインダクタンスが付加されたこととなる。この場合の受信側弾性表面波フィルタ4のみのインピーダンス特性を図16にスミスチャートで示す。
【0083】
弾性表面波フィルタを設計する場合、弾性表面波フィルタ単体の特性で帯域を拡げようとした場合、容量性に落ち込むため、最適な値の並列インダクタを付加することにより、実軸的に整合をとることができる。従って、位相遅延量を90度未満とすることにより、図17に送信側弾性表面波フィルタの整合状態をスミスチャートで矢印で示すように、弾性表面波分波器1のアンテナ端における整合状態を50Ω整合に近づけることができる。もっとも、位相遅延量がさらに小さくなり、60度程度になると、図18に送信側弾性表面波フィルタの整合状態をスミスチャートで矢印で示すように、誘導性に回り過ぎ、逆に整合状態が悪化する。この場合には、図19に送信側弾性表面波フィルタの整合状態をスミスチャートで矢印で示すように、誘電性に回り過ぎたインピーダンスを、ローパスフィルタの容量成分により制御し、それによってインピーダンス整合を図ることができる。
【0084】
但し、位相遅延量が小さくなり過ぎると、コンダクタ分が大きくなり過ぎ、送信側弾性表面波フィルタ3の損失の劣化につながる。従って、位相回転量は、好ましくは、60度以上とされる。また、小型化を図ることができ、単体では容量性に落ち込んだフィルタの実軸上で整合がとれるようにするには、位相回転量は80度未満とすることが望ましい。すなわち60度以上、80度未満とすることにより、より小型であり、整合状態に優れた弾性表面波分波器1を提供することができる。
【0085】
なお、上記実施形態では、送信側弾性表面波フィルタ3と受信側弾性表面波フィルタ4とは、それぞれ独立の圧電基板に構成されていたが、送信側弾性表面波フィルタ3及び受信側弾性表面波フィルタ4は、同一の圧電基板に構成されていてもよい。
【0086】
また、弾性表面波フィルタ3,4のパッケージ材11への接合方法についても、バンプを用いたものに限定されず、ワイヤボンディングを用いた接合方法を採用してもよい。
【0087】
なお、上記実施形態のように、バンプにより弾性表面波フィルタ3,4をパッケージ材11に接合した構造では、上記のように受信側弾性表面波フィルタ4と送信側弾性表面波フィルタ3とを独立の圧電基板に構成することが望ましく、それによって弾性表面波フィルタ3,4とパッケージ材11との接合強度を高めることができる。また、前述したように、受信側弾性表面波フィルタ4と送信側弾性表面波フィルタ3とを独立の圧電基板上に構成した場合には、受信側弾性表面波フィルタ4側に上記高周波素子を構成するための容量素子を搭載することが望ましい。
【0088】
また、上記実施形態では、位相整合用素子7を構成するストリップライン15,16と、高周波素子を構成するインダクタ素子29,30が、複数の層に渡り、かつそれぞれが同一平面内に位置するように構成されていたが、ストリップライン15,16と上記インダクタ素子29,30とは、パッケージ材11の異なる平面内に形成されていてもよく、またストリップライン15,16及びインダクタ素子29,30は、複数の層に渡り形成される必要は必ずしもない。しかしながら、上記実施形態のように、同一平面内にかつ複数層に渡るように形成することにより、インダクタ素子及びストリップラインが内蔵されている構造の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0089】
上記実施形態では、位相整合用素子7による位相シフト量が、75度とされていたが、位相シフト量は、これに限定されず、一般的に短絡から解放まで90度位相回転される位相整合用素子を用いてもよい。もっとも、上記実施形態のように、75度と位相遅延量を短めに設定することにより、パッケージ材11の小型化を図ることができる。加えて、ローパスフィルタのインピーダンスを含めることにより、インピーダンス整合が良好な弾性表面波分波器1を提供することができる。
【0090】
本発明に係る弾性表面波分波器は、上記のように、種々の構成により様々な効果を果たし得るものであるが、本発明においては、好ましくは、上記実施形態のように、第1〜第3の容量素子22〜24と2つの誘導素子であるインダクタンス素子29,30とを用いて高周波素子6が構成されているため、すなわちインダクタンス素子29,30がパッケージ材に内蔵され、容量素子22〜24が弾性表面波フィルタ4を構成する圧電基板上に形成されているため、より一層小型であり、かつ低背化を進め得る弾性表面波分波器を提供することができるという利点を有する。
【0091】
上記インダクタンス素子が弾性表面波フィルタを構成する圧電基板上に形成される場合には、薄膜プロセスなどによりインダクタンス素子を形成する必要がある。この場合には、Q値の高いインダクタンス素子を得ることが困難である。これに対して、上記実施形態のようにインダクタンス素子29,30がパッケージ材11に内蔵されている場合、特にパッケージ材11の複数の層に渡って形成されており、かつ位相調整用のストリップライン15,16を複数の層に渡ってかつさらに同一平面内に形成されている場合には、小型であり、Q値が高いインダクタを容易に構成することができる。
【0092】
さらに、弾性表面波分波器に付加される上記インダクタのQ値が悪いと、減衰極の減衰量が十分な大きさとならないだけでなく、通過帯域における損失の劣化が生じるおそれがある。また、容量素子をパッケージ材内に形成した場合には、特に本願発明のように複数のトラップを発生させる上記高周波素子では、3つの容量素子が必要となる。従って、容量素子をパッケージ材を内蔵した構造では、上記インダクタンス素子やストリップラインなどの他の素子との容量結合が避け難くなり、かつ小型化や低背化を進める上でも不利となる。よって、圧電基板上に容量素子を形成することにより、低背化を進め得るだけでなく、パッケージ材内の他の素子との所望でない結合を防ぐことができ、良好なローパス特性を得ることができる。
【0093】
また、圧電基板上に容量電極を形成して容量素子を構成する場合、上記櫛形電極の電極素子の並ぶ方向を表面波伝搬方向に対して90度回転させた構造では、前述したように、容量素子の容量に起因するリップルを弾性表面波フィルタ3,4の通過帯域に表れないように抑制することができ、より一層低損失かつ減衰量の抑圧素子を構成することができる。
【0094】
従って、上記種々の構成を組み合わせた本発明の弾性表面波分波器では、より一層特性が良好であり、小型化及び低背化が可能な弾性表面波分波器を提供することができる。
【0095】
特に、図4に示した2つの減衰極を有するローパスフィルタ6では、弾性表面波分波器に複合される場合、特定の部分に寄生成分が入ると、急激に減衰極の悪化がみられる。すなわち、図14に矢印Cで示す位置に寄生インダクタ成分Lxが入ると、トラップ減衰極の急激な悪化が生じる。これを、図15を参照して説明する。図15の実線は、上記寄生成分が存在しない場合のローパスフィルタ6の周波数特性を示し、一点鎖線は、寄生成分の大きさが0.1nHの場合、破線は寄生成分の大きさが0.5nHの場合の周波数特性をそれぞれ示す。
【0096】
図15から明らかなように、通過帯域の2倍波の減衰量が上記寄生インダクタ成分Lxが挿入されることにより極端に悪化することがわかる。
【0097】
上記のような寄生インダクタ成分Lxの影響を回避するには、パッケージ材11内にインダクタンス素子29,30を内蔵させた構造において、ストリップライン15,16の送信信号端子と接続される端子と、インダクタンス素子29,30の送信側信号端子と接続される端子が、パッケージ材内ではなく、パッケージ材11のバンプにより接合される面に寄生されることが望ましく、それによって上記寄生インダクタ成分Lxを極力小さくすることができる。
【0098】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタがパッケージ材に搭載された弾性表面波分波器において、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタに接続されており、かつ送信側通過帯域よりも高周波側に2つのトラップ減衰極を有する高周波素子が備えられているため、2つのトラップ減衰極により送信側通過帯域よりも高周波側の所望でない高調波やリップル等を抑圧することができ、それによって良好な周波数特性の弾性表面波分波器を提供することができる。
【0099】
2つのトラップ減衰極が、送信側通過帯域の2倍波及び3倍波もしくはその近傍に位置している場合には、送信側通過帯域の2倍波及び3倍波の減衰量を抑制することができる。
【0100】
高周波素子が、第1,第2のインダクタと、第1〜第3の容量素子とを有し、第1,第2のインダクタと第1〜第3の容量素子とにより、2つのトラップ減衰極が構成されている場合には、5個の素子のみで上記2つのトラップ減衰極を有する高周波素子を構成することができる。
【0101】
第1〜第3の容量素子が、Δ型に接続されており、第1の共通端子とアース電位との間に第1のインダクタが、第2,第3の共通端子間に第2のインダクタが接続されている構成を有する場合には、高周波素子を構成する容量素子の数を低減することができ、かつ全体の静電容量及びインダクタンスの値を大きくすることができ、弾性表面波分波器の小型化を進めることができる。第2のインダクタと、第2のインダクタに並列に接続されている容量素子との反共振により送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の2倍波もしくはその近傍に第1のトラップの減衰極が発生し、Δ型に接続された第1〜第3の容量素子から等価的に求められたY型接続の場合の容量と第1のインダクタとの共振により、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の3倍波もくしはその近傍に第2のトラップ減衰極が生じるように構成されている場合には、弾性表面波分波器の小型化を計ることができる。
【0102】
また、上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、受信側弾性表面波フィルタ及び送信側弾性表面波フィルタの一端が共通接続点で接続されており、共通接続点とアンテナ共振端子との間にだけ高周波素子が設けられており、該高周波素子を構成しているインダクタがパッケージ内に形成されているため、受信側の高周波特性を改善することができるとともに、弾性表面波分波器の小型化を進めることができる。
【0103】
パッケージ材内に設けられた位相整合用ストリップラインがさらに備えられ、上記高周波素子を構成しているインダクタがストリップラインとパッケージ内の同一の面内に形成されている場合には、弾性表面波分波器の小型化をさらに進めることができるとともに、ストリップラインとインダクタとの間の容量結合や誘導結合が生じ難く、従って減衰域の悪化を招かない、弾性表面波分波器を提供することができる。インダクタが誘導を強め合うようにパッケージ材内の少なくとも2つの層以上に配置されている場合には、インダクタにおいて自己誘導を高めることができ、より一層弾性表面波分波器の小型化を図ることができる。
【0104】
ストリップラインとインダクタの双方がパッケージ材内において2つの層以上に渡ってかつ同一の2つ以上の層に渡って形成されている場合には、弾性表面波分波器の小型化、減衰域の悪化を抑制することができるとともに、製造工程において、インダクタ及びストリップラインを同一プロセスで形成することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0105】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、受信側弾性表面波フィルタ及び送信側弾性表面波フィルタが搭載されたパッケージ材と、少なくとも1つのインダクタと少なくとも1つの容量素子とを有する高周波素子とを備え、容量素子が、弾性表面波フィルタを構成している圧電基板上に形成された櫛形電極により形成されており、櫛形電極の電極指ピッチに沿う方向が、櫛形電極が形成されている弾性表面波フィルタにおいて表面波が伝搬する方向に対して90度回転された方向とされている。従って、櫛形電極による容量素子では、同一面積で相対的に大きな静電容量を得ることができる。また、上記容量素子が表面波に応答し難いため、所望でないリップルが生じ難く、また容量素子によって発生するリップルが送信側弾性表面波フィルタの通過帯域及び受信側弾性表面波フィルタの通過帯域の2倍波、3倍波及びその近傍に位置しないため、良好な周波数特性を有する弾性表面波分波器を提供することができる。
【0106】
上記実施形態において、圧電基板がLiTaO基板からなり、容量素子を構成している櫛形電極の電極指の周期Pが上述した式(1)〜(3)のいずれかの範囲にある場合には、低損失の弾性表面波分波器を提供することができ、特に、上述した式(4)〜(12)を満たす場合には、容量素子によるリップルが受信側弾性表面波フィルタの通過帯域及び送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の2倍波、3倍波及びその近傍の領域から確実に外れることになる。
【0107】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、容量素子は、送信側及び/または受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板上において、第1の電極膜と第2の電極膜と、第1,第2の電極膜間に挟持された絶縁膜とからなる積層構造により構成されているので、圧電基板上にパッケージ製法によりこれらの膜を形成することにより、容易に容量素子を構成することができる。
【0108】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器において、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタが、それぞれ独立の圧電基板を用いて構成されており、高周波素子を形成するための容量素子が、受信側弾性表面波フィルタの圧電基板に形成されている場合には、各弾性表面波フィルタとパッケージ材との接合強度を容易に高めることができるとともに、送信側弾性表面波フィルタと受信側弾性表面波フィルタのサイズを近づけることができ、生産に際しての取扱い性を高めることが可能となる。
【0109】
高周波素子を構成している容量素子が、受信側弾性表面波フィルタのアンテナ端子側部の近傍に配置されている場合には、送信側弾性表面波フィルタの信号端子や、受信側弾性表面波フィルタの出力端子との間の容量結合や誘導結合を抑制することができ、アイソレーションや遅延特性を改善することができる。
【0110】
送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタが同一の圧電基板上に形成されており、高周波素子を構成するための容量素子が、受信側弾性表面波フィルタのアンテナ端子側の端部の近傍に形成されている場合には、1つの圧電基板で送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタを構成することができるため、組み立て作業を容易とすることができる。
【0111】
また、容量素子が、受信側弾性表面波フィルタのアンテナ端子側の端部近傍に配置されている場合には、送信側弾性表面波フィルタの送信信号端子や受信側弾性表面波フィルタの出力端との間の誘導結合や容量結合を抑制することができ、アイソレーションを改善することができる。
【0112】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、インダクタがパッケージ材内に形成されており、容量素子が送信側弾性表面波フィルタ及び/または受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板に形成されているために、弾性表面波分波器の小型化を図ることかできるとともに、容量素子が圧電基板に形成されているため、送信側弾性表面波フィルタまたは受信側弾性表面波フィルタの多機能化を図ることができる。
【0113】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板がLiTaO基板であり、高周波素子を構成する容量素子が、該圧電基板上に設けられた櫛形電極からなり、該櫛形電極が、弾性表面波フィルタにおいて表面波を伝搬する方向に対して90度回転された方向に配置されているため、櫛形電極による所望でないリップルを発生し難い。また、櫛形電極の電極指の周期が、上述した式(1)〜(3)の範囲にあるため、低損失の弾性表面波分波器を提供するこができる。
【0114】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器では、少なくとも1つの位相整合用素子と、ローパスフィルタとが備えられており、ローパスフィルタがアンテナ端子と、送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタとの間に接続されており、ローパスフィルタは、ローパスフィルタ機能とアンテナ整合機能とを併せ持つため、通過帯域における減衰量を改善することができ、良好な周波数特性を有するとともに、アンテナとのインピーダンス整合を容易に図り得る弾性表面波分波器を提供することができる。
【0115】
位相整合用素子が、周波数が相対的に高い側の弾性表面波フィルタと、アンテナ端子との間に配置され、位相整合用素子における位相遅延量が、周波数が相対的に低い側の弾性表面波フィルタが中心周波数において90度未満である場合には、弾性表面波分波器のアンテナ端における整合状態を50Ω整合に近づけることができる。特に、位相遅延量が60〜80度の範囲にある場合には、より一層良好な整合状態を実現することができる。
【0116】
ローパスフィルタを除いた弾性表面波分波器のアンテナ端子におけるインピーダンスが、少なくとも送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタの各通過帯域の50%以上の周波数配置で誘電性であり、ローパスフィルタの通過域におけるインピーダンスが容量性とされている場合には、それによってアンテナ側から実軸上に整合が図られる。
【0117】
上記実施形態に係る弾性表面波分波器は、良好な周波数特性を有し、小型化を図ることができ、さらに高周波における減衰量を改善することができ、所望でないリップルが生じ難い、弾性表面波分波器を提供することができ、特に、高周波素子が、送信側弾性表面波フィルタの2倍波及び3倍波もしくはその近傍に2つのトラップ減衰極を有し、高周波素子が、Δ型に接続された第1〜第3の容量素子と、上記第1,第2のインダクタとを有し、第2のインダクタがパッケージ内に設けられた位相調整用ストリップラインと同一の層にかつ複数層に渡って形成されており、ストリップラインの送信側信号端子と接続される端子と、第2のインダクタの送信側信号端子と接続される端子とがパッケージ材において短絡されている構成を有する場合には、本発明に従って、送信側弾性表面波フィルタの高調波の減衰域における減衰量を十分に改善することができ、従って受信側弾性表面波フィルタの損失特性を効果的に改善することができるとともに、弾性表面波分波器の小型化及び低背化を図ることができ、さらにインピーダンス整合が容易であり、かつ製造容易な弾性表面波分波器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波分波器の回路構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の弾性表面波分波器の略図的正面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に用いられる受信側弾性表面波フィルタ及び該受信側弾性表面波フィルタの圧電基板内に形成される第1〜第3の容量素子を説明するための模式的平面断面図である。
【図4】第1の実施形態の弾性表面波分波器で用いられている高周波素子の回路構成を示す図である。
【図5】第1の実施形態の弾性表面波分波器周波数特性、並びにこのために用意した高周波素子を有しない比較例の弾性表面波分波器の周波数特性を示す図である。
【図6】図4に示した高周波素子の周波数特性を示す図である。
【図7】高周波素子の変形例の回路構成を示す図である。
【図8】図7に示した変形例の高周波素子の周波数特性を示す図である。
【図9】高周波素子のさらに他の変形例を示す回路図である。
【図10】図9に示した高周波素子の周波数特性を示す図である。
【図11】(a)及び(b)は、Δ型接続された第1〜第3の容量素子からなる部分の回路図と、該Δ型接続をT字型回路に置き換えた場合の透過回路を示す図である。
【図12】36度LiTaO基板上に弾性表面波フィルタ及び櫛形電極を、弾性表面波伝搬方向に対して櫛形電極の電極指ピッチの方向が90度回転された方向となるように櫛形電極が形成されている構造における位相−周波数特性を示す図である。
【図13】櫛形電極の電極指ピッチが式(1)〜(3)のいずれかを満たす場合、及び式(1)〜(3)のいずれの範囲にも含まれない場合の弾性表面波分波器の周波数特性を示す図である。
【図14】高周波素子が接続されている部分に寄生インダクタンス成分が寄生されている場合の弾性表面波分波器の回路構成を示す図である。
【図15】図14に示した寄生インダクタンス成分が寄生されていない場合、寄生インダクタンス成分が挿入されている場合の高周波素子の周波数特性を示す図である。
【図16】位相整合用回路の位相遅延量が75度の場合の受信側弾性表面波フィルタのインピーダンス特性を示すスミスチャートである。
【図17】位相整合用素子における位相遅延量が90度未満とした場合の弾性表面波分波器の送信側弾性表面波フィルタの整合状態の変化を説明するためのスミスチャートである。
【図18】位相整合用素子の位相遅延量が60度程度になった場合の送信側弾性表面波フィルタの整合状態の変化を示すスミスチャートである。
【図19】誘電性に回り過ぎたインピーダンスを高周波素子の容量成分によって制御した場合の送信側弾性表面波フィルタの整合状態の変化を示すスミスチャートである。
【図20】従来の弾性表面波分波器の一例を示す回路図である。
【図21】従来の弾性表面波フィルタにおいて、インピーダンス整合を図るために櫛形の容量電極が圧電基板上に形成されている構造を示す模式的平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と、
前記アンテナ端子に接続されており、圧電基板を用いて構成された送信側弾性表面波フィルタと、
前記アンテナ端子に接続されており、圧電基板を用いて構成された受信側弾性表面波フィルタと、
前記送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタが搭載されたパッケージ材と、
少なくとも1つのインダクタと、少なくとも1つの容量素子とを有する高周波素子とを備え、
前記インダクタが、前記パッケージ材内に形成されており、前記容量素子は、前記送信側弾性表面波フィルタ及び/または受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板に形成されていることを特徴とする、弾性表面波分波器。
【請求項2】
前記容量素子が、前記送信側弾性表面波フィルタ及び/または前記受信側弾性表面波フィルタを構成している前記圧電基板上に形成された櫛形電極により構成されており、
前記櫛形電極の電極指ピッチに沿う方向が、該櫛形電極が形成されている弾性表面波フィルタにおいて表面波が伝搬する方向に対して直交する方向とされており、
前記容量素子によって発生するリップルが、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域及び受信側弾性表面波フィルタの通過帯域の2倍波及び3倍波並びにその近傍に位置しないことを特徴とする、請求項1に記載の弾性表面波分波器。
【請求項3】
前記圧電基板がLiTaO基板であり、前記容量素子を構成している櫛形電極における電極指の周期が下記の式(1)〜(3)〔但し、式(1)〜(3)において、fHは、受信側弾性表面波フィルタの通過帯域の上限周波数を、fLは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の下限周波数を意味し、Pは、櫛形電極の電極指ピッチ(電極指の幅と、電極指間のスペースの和)である〕のいずれかの範囲にあることを特徴とする、請求項2に記載の弾性表面波分波器。
5300/fH≧2×P …式(1)
6800/fL≦2×P≦16500/fH …式(2)
18800/fL≦2×P …式(3)
【請求項4】
前記櫛形電極の電極指周期が、下記の式(4)〜(12)〔但し、fTLは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の下限周波数、fTHは、送信側弾性表面波フィルタの通過帯域の上限周波数、Pは、櫛形電極の電極指ピッチを示す。〕の範囲にあることを特徴とする、請求項3に記載の弾性表面波分波器。
5500/fH≧2×P …式(4)
6800/fL≦2×P≦16500/fH …式(5)
18800/fL≦2×P …式(6)
5500/(2×fTH)≧2×P …式(7)
6800/(2×fTL)≦2×P≦16500/(2×fTH)
…式(8)
18800/(2×fTL)≦2×P …式(9)
5500/(3×fTH)≧2×P …式(10)
6800/(3×fTL)≦2×P≦16500/(3×fTH)
…式(11)
18800/(3×fTL)≦2×P …式(12)
【請求項5】
前記容量素子が、前記送信側弾性表面波フィルタ及び/または前記受信側弾性表面波フィルタを構成している圧電基板上において、第1の電極膜と、第2の電極膜と、第1,第2の電極膜間に挟持された絶縁膜とからなる積層構造を形成することにより構成されている、請求項1に記載の弾性表面波分波器。
【請求項6】
送信側弾性表面波フィルタ及び受信側弾性表面波フィルタが、それぞれの独立の圧電基板を用いて構成されており、前記高周波素子を形成するための容量素子が、前記受信側弾性表面波フィルタの圧電基板に形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性表面波分波器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−245310(P2008−245310A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118282(P2008−118282)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【分割の表示】特願2005−506151(P2005−506151)の分割
【原出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】