説明

微生物による表面汚染性の低下方法

下記の工程を含むことを特徴とする、少なくとも0.1m2の面積を有する無機材料製の表面の微生物による汚染性を低下させる方法:
a) 処理すべき前記表面上に、親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の層を適用する工程;および、
b) 工程a)で処理した表面を乾燥させて、前記親水性高分子物質の層で被覆した前記表面を得る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厳格な無菌条件を必要とする環境、とりわけ、農産食品産業、健康産業の分野、公共の場所等における微生物発生に対する表面処理の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物、とりわけ、細菌類、真菌類、単細胞藻類、さらにある場合におけるウイルス類の管理されていない発生は、病院、医薬品製造施設、農産食品産業、集中調理場または公共の場所のような感受性環境においては、可能な限り回避しなければならない。
微生物による表面の汚染は、土壌、技術用備品(手術台、病院ベッド等)、並びに製薬工業および農産食品産業において使用する生産装置(とりわけ、発酵反応器)のような大気と接触する全ての表面上で生じる。
病院環境においては、微生物による施設および大備品の汚染に対する予防は、いわゆる“院内”疾病の伝播に対処するときに、著しい重要性を有する。
農産食品産業並びに集中施設における調理場現場においては、食品生産施設等、とりわけ、料理した食事および食品料理設備の微生物による汚染の予防は、場合によっては最終使用者にとって致命的である食品中毒の発生に対し不可欠である。
同様に、反応器発酵法を実施する産業においても、望ましくない外来微生物による発酵培地の汚染を回避することが必要である。
また、多くの人々が接触する多くの公共使用の場所および物体の相対的無菌性を確保して、感染者に存在する病原菌の感受性の人々、例えば、免疫抑制個々人への容易な伝播を阻止することも重要である。
今日、表面の消毒は、例えば、病院環境においては、消毒剤と殺菌剤の組合せを含有する溶液をこれら表面上に適用することによって行なわれている。しかしながら、使用するある種の消毒剤および殺菌剤は、アレルギー性であり、従って、人の健康に関して欠点を示すことが観察されている。
さらにまた、これらの薬剤のある種のものは、有効ではあるが、最終消費者が摂取するときの毒性故に、農産食品産業または調理施設においては使用できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、当該技術の状況において、大面積を有し、ある場合には1000m2以上にも達し得る表面を処理して、微生物、とりわけヒトまたは動物に対して病原性の微生物によるこれら表面の汚染を防止する或いは少なくとも低減するための方法および組成物が求められている。
処理すべき表面の大面積を考慮すれば、これらのバイオ汚染防止方法は、実施するのに簡単であり且つほぼコスト高でないことが不可欠である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
大表面のバイオ汚染を防止または低減するための方法および組成物は、本発明によって提供される。
驚くべきことに、本発明は、微生物の細胞の付着および発生を防止する親水性ポリマーの層を、少なくとも0.1m2、1000m2以上までの処理すべき大表面上に、親水性ポリマー層と処理表面間に共有結合を形成させることなく、成功裏に適用し得ることを示す。上記親水性ポリマーの層は、処理表面上に、上記処理表面が受ける機械的応力によって数時間、おそらくは数日間適所に無欠のままであることが判明した。
この驚くべき結果から、本出願人は、無機材料、例えば、ガラス、セラミック、陶磁器、セメント、コンクリートまたは金属の表面の微生物による汚染性の低下方法を開発した。該方法は、親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の層を、処理すべき表面上に、親水性ポリマーの層とこのポリマー層を適用する表面間に何ら共有結合を形成させることなく適用する工程を含む。
本発明は、下記の工程を含むことを特徴とする、少なくとも0.1m2の面積を有する無機材料製の表面の微生物による汚染性を低下させる方法に関する:
a) 処理すべき上記表面上に、親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の層を適用する工程;および、
b) 工程a)で処理した表面を乾燥させて、上記親水性高分子物質の層で被覆した上記表面を得る工程。
上記方法によって適用した親水性高分子物質の層は、処理表面の無機材料と上記高分子物質の層間の弱い非共有結合、とりわけ弱い静電結合、水素結合またはファンデルワールス力の単純な形成により、処理表面に付着する。従って、処理無機材料表面上への親水性高分子物質層の付着は、上記高分子物質と無機材料間で何らの化学反応も含まない。即ち、本発明の方法によって処理した表面は、化学的に修飾されていない。従って、これらの表面は、何らの修正または変更に供することなく、本発明の方法によって繰返し処理し得る。
【0005】
にもかかわらず、驚くべきことに、上記親水性高分子物質の層は、無機材料表面に安定に接着する。何ら一定の理論によって拘束することは望まないが、出願人は、処理表面と上記親水性ポリマー層間の小相互作用(水素結合、静電力、ファンデルワールス力)は、それ自体で、上記高分子表面の接着を生じるのに十分であると信じている。処理表面上での上記高分子接着特性は、高分子表面が、本発明の方法によるこの表面のその後の処理まで、例えば、前の処理の7日、6日、5日、4日、3日、2日または1日後まで、適所に留まり、処理表面を有効且つ完全に被覆するのに十分である。
本発明の方法により、微生物の無機材料上への生物付着、即ち、細菌または真菌細胞と無機材料間の静電力の確立に基づく生物付着は、抑制または遮断される。本発明の方法によれば、表面上での微生物の生物付着は、無機材料の多くの場合の多孔質または粗い表面上でのこれら微生物の機械的引掛りを抑制または遮断しながら、抑制されているようである。
また、本発明によれば、とりわけ湿潤雰囲気環境において時間経過とともに急速に形成される多かれ少なかれ厚い細菌または真菌細胞のカーペットにより構成される生物膜の形成も阻止される。
一方、上記親水性高分子物質層の存在により、上記方法により処理した無機材料の表面は、小表面エネルギーを示し、微生物、とりわけ細菌または真菌細胞の付着を阻止する。
さらにまた、上記親水性高分子物質層の外環境と接触する外表面は、実質的に平坦で多孔質でも粗くもなく、処理表面上での微生物、とりわけ細菌または真菌細胞の機械的引掛りの可能性を低減し、結果として、処理表面のバイオ汚染現象を低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
“無機材料”とは、本発明によれば、ガラス、セラミック、陶磁器、セメント、コンクリートまたは金属製の材料を意味する。
第1の好ましい実施態様によれば、無機材料は、有機ガラスまたは無機ガラスである。
第2の好ましい実施態様によれば、無機材料は、スチール、例えば、ステンレススチール、またはアルミニウムのような金属材料である。
既に前述したように、本発明の方法に従って処理する無機材料の表面は、少なくとも0.1m2の面積を有する広い表面からなる。処理すべき表面の総面積は、上記親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の適用において使用する装置の能力によってのみ技術的に制限される。例えば、本発明に従う方法によって100m2よりも広い面積を処理するには、工場内または公共施設内の床をクリーニングするのに現在使用されているクリーニング用ビヒクルを使用し得る。
即ち、驚くべきことに、本発明の方法によって処理し得る表面の最小面積は、少なくとも0.1m2であり、少なくとも1m2、2m2、3m2、4m2、5m2、10m2、50m2または少なくとも100m2であり得る。1000m2までの表面も処理し得る。
100m2よりも小さい面積を有する表面の処理において本発明の方法を実施するには、小面積をクリーニングするのに現在使用されているブラシのような適切な装置を使用し得る。
第1の局面によれば、処理すべき無機材料の表面は、床、とりわけ、病棟の床、例えば、手術室の床のような患者を治療している病院寝室の床の表面からなる。また、処理すべき表面は、酪農食製品(乳、チーズ、アイスクリーム等)のような農産食製品の製造プラントの床、または集中施設の調理場の床であり得る。
また、処理すべき無機材料の表面は、手術台のような病院テーブルのトレーの表面または調理作業上面のような病院または産業界で使用する装置または備品の表面であり得る。
また、処理すべき無機材料の表面は、ガス類または水のような液流体の循環用管状体即ちパイプのような、とりわけ病院および農産食品産業における管状体または流体循環パイプの表面からなり得る。
さらにもう1つの局面によれば、処理すべき無機材料の表面は、例えば、農産食品産業または製薬工業において各種代謝物を製造するのに使用する発酵反応器の内部および/または外部表面からなり得る。
【0007】
好ましくは、本発明方法の工程a)においては、前記溶液または水性懸濁液は、親水性高分子物質を、前記溶液または水性懸濁液の総質量基準で0.5%〜5%、より良好には1%〜3%範囲の濃度で含む。
水溶液の親水性高分子物質の濃度が高いほど、水溶液の粘度は高く、処理表面上の親水性高分子物質層の厚さはより厚めで且つ保護性である。例えば、キャスター上の物体の頻繁な移動、多くの人々の交通等のような、処理すべき表面に加わり得る機械的応力により、親水性高分子物質の濃度は、親水性高分子物質層が、本発明方法による表面の次の処理まで、微生物の発生を阻止するのに十分な厚さを有するように調節される。
十分に保護性の親水性ポリマー層、即ち、処理すべき表面全体を必要以上には困難なく被覆するのに十分な厚さの親水性ポリマー層を得るためには、溶液の総質量に対する親水性高分子物質の量を、少なくとも1センチポイズの粘度を有する親水性高分子物質水溶液を得るように調達する。
親水性高分子物質の水溶液または水性懸濁液の粘度は、厚さの大きい親水性高分子物質層を、例えば、多数回の機械的応力を受けるのを意図する無機材料の表面上に適用する場合には、10センチポイズに達し得る。
本発明によれば、粘度測定は、標準化方法に従うブルックフィールド装置において、調整した温度(25℃)にて、DIN 30Dタイプのニードルを装着させたDIN粘度計を使用し、300〜500回転/分の回転速度で実施する。装置の構成要素により、回転トルクの関数である粘度値を自動的に得る。
【0008】
全く好ましくは、親水性高分子物質は、セルロースおよびその誘導体、ポリアクリルアミドおよびそのコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)およびそのコポリマー、酢酸ビニルコポリマーおよびビニルアルコールコポリマー、グリコールポリエチレン類、グリコールポリプロピレン類、親水性ポリアクリレート、親水性ポリメタクリレート、ポリオシド(polyoside)類およびキトサン類の中から選ばれたポリマーまたはポリマー類の組合せからなる。
好ましくは、親水性高分子物質は、下記の親水性ポリマーの中から選択する:
‐ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えば、DOW CHEMICALS社から販売されているHPMC E4MまたはHercules社から販売されているAqualonと標示されたもの、或いはDOW
CHEMICALS社から販売されているカルボキシメチルセルロース(CMC)のような、セルロースおよびその誘導体;
‐SIGMA社(スウェーデン国ウプサラ)から販売されているもののようなポリアクリルアミドおよびそのコポリマー;
‐BASF/LASERSON社から販売されているもの、例えば、Kollidon群のようなポリビニルピロリドン(PVP)およびそのコポリマー;
‐ビニルポリアセテートコポリマーのような酢酸ビニルのコポリマー類、およびHOECHST/CLARIANT社からMowiolの商品名で販売されているポリビニルアルコールコポリマー類;
‐SIGMA社から販売されているもののようなグリコールポリエチレン類;
‐グリコールポリプロピレン類;
‐DEGALAN社またはDEGUSSA社から販売されているもののようなポリ親水性(メタ)アクリレート類;
‐ポリオシド類;
‐SIGMA社から販売されているようなキトサン類。
本発明に従う親水性高分子物質とは、上記で定義したような親水性ポリマーの1種から形成された高分子物質、並びに上記親水性ポリマーの数種の混合物、一般的には上記親水性ポリマーの2種または3種の混合物を意味する。
【0009】
本発明によれば、本発明の方法により親水性高分子物質の層で被覆されたガラスまたはスチールの表面は、処理表面上で96時間まで安定であることを証明している。
また、親水性高分子物質層による本発明の方法に従う処理ガラスまたはスチールの表面は、溶液グラム当り106〜3・106範囲濃度の大腸菌または表皮ブドウ球菌のような細菌細胞を含有する溶液中に72時間浸漬後、これら細菌によってコロニー化されていないことも証明している。有意の死滅率が、大腸菌細胞において、初期接種細胞数に対して係数2の消滅でもって観察されている。表皮ブドウ球菌においては、72時間後の死滅率は、ほぼ完全である。注目すべきことに、細菌細胞膜は、処理材料表面において観察されていない。比較として、本発明の方法に従って処理しなかった同じ材料は、同じ細菌含有溶液中での72時間浸漬の終了時において、その総面積の70%程度の細菌類による被覆率を有している。
本発明の方法に従って処理した表面によれば、親水性ポリマー層上での細菌細胞の滑りが、これらの細胞が上記親水性ポリマー層の表面上に固定することなく観察されている。
本発明に従う方法の工程a)においては、親水性高分子物質の適用は、処理すべき装置のタイプおよび形状に従い、処理すべき表面を急冷することによって、或いは親水性ポリマー物質を、ブラシ、ペンシル、塗料スプレーガンのような任意のタイプのスプレー装置またはKarcherRタイプの装置のような高圧クリーニング装置を使用して、処理すべき表面上に適用することよって実施する。
また、布表面、例えば、親水性高分子物質の溶液または懸濁液を予め含浸させた布巾も使用し得る。
本発明方法の工程b)においては、乾燥は、何ら人の介入なしで、周囲雰囲気と接触した水性溶媒の蒸発に必要な十分な時間において単純に実施する。
また、乾燥工程b)は、工程a)に従って処理した表面上に、約20〜25℃の室温空気流または55℃に達し得る温度の空気流を処理表面の各部分上で水性溶媒の蒸発を生じさせるのに十分な時間、例えば、約10分間適用することによっても実施し得る。
【0010】
また、本発明は、少なくとも1種の殺菌剤または防腐剤を含む親水性高分子物質の水溶液からなることを特徴とする、少なくとも0.1m2の面積を有する無機材料表面の微生物による汚染に対する処理用組成物にも関する。
親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の粘度に応じて、本発明の方法は、処理すべき表面上に約100ナノメートル〜10μm範囲の親水性ポリマーの層を適用することを可能にすることが観察されている。
例えば、5〜10センチポイズ(cPs)程度の親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の粘度値は、1質量%濃度のPVP (BASF社から販売されているKollidon
K90)においてまたは0.2質量%濃度のHPMC (DOW
CHEMICALS社から販売されているE4M)において得られる。
本発明に従う“水溶液または水性懸濁液”とは、主として、使用する親水性高分子物質が、例えば0.1%〜5%(容量/容量)の小割合のエタノールまたはケトン、例えばアセトンのような水混和性溶媒或いは管理法規によって承認された他の任意の希釈剤が必要に応じて存在する水中溶液または懸濁液であることを意味する。
また、親水性高分子物質を含有する水溶液は、中性界面活性剤のような処理すべき表面上での溶液の拡散性の改良を意図する或いは酸または塩基特性を有する1種または数種の添加剤も含有する。しかしながら、グリコールポリエチレン類およびグリコールポリプロピレン類、ステアレートポリオキシエチルソルビトール(TweenR)、ポリエーテルまたはポリシロキサン-ポリエーテルのような中性界面活性添加剤が好ましい。これらの製品は、とりわけ、BYK CHEMIE社によって販売されている。
また、親水性高分子物質の水溶液は、有機ケイ酸化リン-アルミン酸塩もしくはジルコン-アルミン酸塩、またはリン酸塩のような処理表面上でのポリマー層のより良好な接着のための接着促進剤も含み得る。後者が最も好ましい。これらは、全て商業的起源を有する。ある場合には、酸または塩基特性を、コーティーングを施す材料の化学性に対して考慮して、処理すべき表面の如何なる変化も阻止すべきである。
【0011】
有利には、親水性高分子物質の水溶液は、細菌または真菌細胞の増殖のさらなる低減を可能にする、1種または数種の消毒剤、1種または数種の殺菌剤或いは1種または数種の防腐剤を含有する。例えば、防腐剤としては、好ましくは1質量%の最終濃度の安息香酸ナトリウムまたは好ましくは1質量%の最終濃度のアジ化ナトリウムを使用し得る。
本発明の方法に従い、高いまたは頻繁な機械的応力に晒すことを意図する表面を処理するためには、ある場合には、親水性高分子物質の水溶液に、磨耗に対する層の抵抗性を改善し得る硬化剤を添加することが有利であり得る。
全く好ましくは、硬化剤は、水性液媒中に分散させた合成シリカ粒子からなる。合成シリカ粒子は、集団構造がSiO4四面体の網状化によって生成しているケイ酸ポリマーから形成されている。粒子表面においては、このポリマーの構造は、シロキサン基とシラノール基によって終端している。好ましくは、親水性ヒュームドシリカ粒子を使用する。ヒュームドシリカは、蒸気相中の四塩化ケイ素(SiCl4)を少なくとも1000℃の水素および酸素の火炎中で加水分解することによって製造し、200〜400m2/g、より良好には250〜400 m2/g、最も好ましくは300〜400 m2/gの比表面積を有し、例えば、シリカは、315
m2/gまたは342m2/gの比表面積を有する。とりわけ、DEGUSSA社から商品名Aerosilとして販売されているシリカ分散液を使用し得る。Aerosilタイプのシリカ分散液のうち、好ましくは、それぞれ、グレードK315およびK342を有するタイプを使用する。
最も好ましくは、上記のシリカK315およびK342のような、僅かに酸性を有する水性液媒中に分散させたシリカ粒子を使用する。
逆に、高塩基性シリカ粒子の分散液は、望ましくないこのシリカのケイ酸塩を形成する媒体中での分解のリスク故に、回避する。
好ましくは、本発明方法のこの特定の局面によれば、上記高分子物質の水溶液または水性懸濁液は、50g/l〜250g/lのシリカ粒子、最も好ましくは70g/l〜200g/lのシリカ粒子を含有する。
【0012】
また、本発明によれば、水中0.2質量%のE4MタイプHPMCの水溶液による本発明方法の適用によって得られた親水性ポリマーの層は、マイクロインデンテイション(micro indentation) (Fisher H100Cシステム)により測定したとき、2.33N・mm-2硬度を有することも証明している。顕微鏡によって誘導するピラミッド型インデンター(136°)を25mN荷重下に20秒以内で材料中に侵入させ(温度22℃および湿度比45%)、インデンターが試験する層の厚さの1/4以上には侵入しないようにする。各最高荷重において達する侵入深さの測定により。硬度の算出が可能となる。
また、本発明によれば、50質量%のK315タイプのシリカ粒子の分散液を含有する水中0.2質量%のE4MタイプHPMCの水溶液による本発明方法の適用によって得られたポリマー表面の硬度は、マイクロインデンテイション(micro indentation)により測定したとき、約350N・mm-2硬度を有することも証明している。
本発明に従う組成物は、好ましくは、水溶液の総質量に対して、0.5質量%〜5質量%の上記親水性高分子物質を含む。
また、本発明は、ガラス、セラミックまたはスチール表面が親水性高分子物質の層で被覆されていることを特徴とする、少なくとも1m2の面積を有し且つ微生物による汚染に対し抵抗性である無機材料の表面にも関する。
上記表面は、親水性高分子物質の層がシリカ粒子を含み、100N・mm-2よりも高い表面硬度を有することに特徴を有する。大腸菌および表皮ブドウ球菌による結果は、24時間後に付着のないことを示している。
また、本発明を以下の実施例により具体的に説明する。
(実施例)
【実施例1】
【0013】
本発明の方法に従う親水性ポリマーによって処理したガラス表面上での付着性およびバイオ汚染試験
A. 親水性ポリマーで被覆したガラスプレートの製造プロトコール
各ガラスプレートを、(i) 石鹸水で洗浄し、次いで純水ですすぐか、或いは(ii)
清浄有機溶媒(とりわけ、エチルアルコール)で洗浄する。全ての場合、各プレートを、室内空気中で、必要な場合は高温空気流中で数分間乾燥させる。これらのプレートは、クリーン環境中に保つ。
その後、各プレートの表面を、親水性ポリマーの層で、0.2%HPMC溶液(質量/質量)の浴中に72時間浸漬することによって被覆する。
B. 生物付着試験の結果
生物付着試験は、下記のいずれかの生理学的培地中で実施する:
‐静止系中、即ち、対象物を数日間浸漬し、サンプルを定期的に採取する;
‐動的系中、本発明の方法に従って処理した表面を、微生物を含有する培地の溶液を含むタブ中に浸漬することによる。液体培地の流れをタブ内に発生させ、(i) 培地表面上の親水性ポリマー層の付着能力を試験し、そして、(ii) 処理表面のバイオ汚染防止能力を試験する。1・106微生物cm-3程度の濃度を有する溶液を使用する。
【0014】
ガラス表面上への本発明の方法の適用によって得られた結果
親水性ポリマー(HPMC、即ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)で被覆したガラスプレートを72時間までの時間接触させる。ある場合には、各プレートをリン酸化アルカリ清浄剤(RBS)により洗浄する。
結果は、下記の表1に示す。

【実施例2】
【0015】
本発明の方法に従うシリカ粒子を含む親水性ポリマーの結合によって処理したガラス表面上での付着性およびバイオ汚染試験
A. 無機負荷量のシリカ粒子を含有する層で被覆したガラスプレートの製造プロトコール
ガラスプレートの準備:各ガラスプレートを、石鹸水で洗浄し、次いで純水ですすぐか、或いは清浄有機溶媒(とりわけ、エチルアルコール)で洗浄する。全ての場合、各プレートを、室内空気中で、必要に応じて高温空気流中で数分間乾燥させる。これらのプレートは、クリーン環境中に保つ。
その後、各プレートの表面を、下記のようにして親水性ポリマーの層で被覆する:
‐0.2%HPMC溶液(質量/質量)の浴中に72時間浸漬する;または、
‐15.0g/lのK315シリカ粒子の水溶液の1.33mlを添加した100mlの0.2%HPMC溶液(質量/質量)の浴中に浸漬する。
B. 生物付着試験の結果
親水性ポリマー(HPMC、即ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)で被覆し且つ無機負荷量のシリカ粒子を含有するガラスプレートを72時間までの時間接触させる。ある場合には、上記各プラークをリン酸化アルカリ清浄剤(RBS)により洗浄する。上記親水性ポリマー溶液の組成は、150g・l-1のK315シリカ粒子の水溶液の1.33mlを添加した100mlの0.2%HPMC(質量/質量)の水溶液であり、これは、乾燥抽出物において、50質量部のポリマーと50質量部のシリカ粒子に相当する。
結果は、下記の表2に示す。
【0016】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むことを特徴とする、少なくとも0.1m2の面積を有する無機材料製の表面の微生物による汚染性を低下させる方法:
a) 処理すべき前記表面上に、親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液の層を適用する工程;および、
b) 工程a)で処理した表面を乾燥させて、前記親水性高分子物質の層で被覆した前記表面を得る工程。
【請求項2】
前記無機材料が、有機ガラスまたは無機ガラスである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記無機材料を、セラミック、陶磁器、セメントまたはコンクリートの中から選択する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記無機材料が、スチールまたはアルミニウムのような金属材料である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
無機材料の前記表面が、土壌、厨房作業上面、テーブル、ベッド、反応器または管状体の表面からなる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、前記溶液または水性懸濁液が、前記親水性高分子物質を、前記溶液または水性懸濁液の総質量基準で0.5質量%〜5質量%、好ましくは1質量%〜3質量%範囲の濃度で含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記親水性高分子物質を、セルロースおよびその誘導体、ポリアクリルアミドおよびそのコポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)およびそのコポリマー、酢酸ビニルコポリマーおよびビニルアルコールコポリマー、グリコールポリエチレン類、グリコールポリプロピレン類、親水性ポリアクリレート、親水性ポリメタクリレート、ポリオシド類およびキトサン類の中から選択する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液が、水性媒体中に分散させたシリカ粒子をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記親水性高分子物質の溶液または水性懸濁液が、50g・l-1〜250 g・l-1範囲のシリカ粒子含有量を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程a)において、前記親水性高分子物質の適用を、処理すべき前記表面を急冷することにより、またはブラシ、ロールまたはスプレー装置を使用して該物質を前記表面上に適用することにより実施する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
親水性高分子物質の水溶液からなり、50g・l-1〜250 g・l-1範囲の最終含有量を有するシリカ粒子を含み、且つ少なくとも1種の殺菌剤または防腐剤を含むことを特徴とする、少なくとも1m2の面積を有する表面の微生物による汚染に対する処理用組成物。
【請求項12】
ガラス、セラミックまたはスチール表面が、親水性高分子物質の層で被覆されていることを特徴とする、少なくとも1m2の面積を有し且つ微生物による汚染に対して抵抗性である無機材料の表面。
【請求項13】
前記親水性高分子物質の層が、シリカ粒子を含み、100 N・mm-2よりも高い表面硬度を有する、請求項11記載の表面。

【公表番号】特表2007−536070(P2007−536070A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501330(P2007−501330)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050142
【国際公開番号】WO2005/084719
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506298747)アソシアシオン プール レ トランスフェル ドゥ テクノロジー ドュ マン (1)
【出願人】(506299250)
【Fターム(参考)】