説明

微生物を制御するための徐放性を有する組成物

【課題】 微生物を制御するための徐放性を有する組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、ポリオールの脂肪酸エステルと短鎖モノカルボン酸および/またはその塩との混合物を有効量含有する微生物制御組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオールのエステルと短鎖脂肪酸の塩とを有効量含有する、微生物を制御するための徐放性(depot effect)を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌作用を有する多くの化学物質およびこれらの物質の混合物は、皮膚や毛髪の表面、衣服、身体洗浄用および身体手入れ用具(例えば歯科分野におけるものなど)、医療器具、さらには部屋や家具に存在する微生物(グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコバクテリウム、皮膚糸状菌、酵母および糸状菌、ウイルス、ならびに胞子)を制御することで知られている。上記物質および混合物はその使用目的に応じて分類されるが、その幾つかの例として、消毒剤、防腐剤、殺菌剤、および化粧料の有効成分が挙げられる。
【0003】
これらの群のなかの代表的なものとしては、主に、ホルムアルデヒド、グリオキサル、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4−クロロ−3−メチルフェノール等のフェノール誘導体、第四級アンモニウム化合物、塩化ベンザルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、それ以外にも、例えば、過酸化水素、有機過酸、アルキルペルオキシド、アルキルヒドロペルオキシド等の活性酸素を放出する化合物もある。
【0004】
しかしこれらの化合物は多くの欠点を有している。それはこれらが実用の際に課される多様な要求、例えば、活性スペクトルが広いこと、低温下において短時間で作用すること、皮膚との良好な相性、低毒性、材料の相溶性などを満たしていないか、あるいは不十分にしか満たさないためである。
【0005】
アルデヒド系またはフェノール系の消毒剤は、毒性的および環境的に受け容れ難いとされており、特に皮膚や呼吸器の感作性を引き起こす場合も多く、しかも特徴的な刺激性のある不快臭を有している。なかには発癌性を有する可能性のある物質もある。
【0006】
第四級アンモニウム化合物(クアット)は、大部分が毒性的に許容できるものであり、皮膚感作性も全くないかあるいは非常に低く、しかも実質的に無臭である。しかしこれらは相当な皮膚刺激作用を有している。アルデヒドを使用した場合と同様に、クアットの使用は被処理面に望ましくない付着物や被膜を生じさせる場合がある。これらは見た目にも悪く、しかも再び除去するためには慣用の洗浄法を用いるしかなく、完全に除去できるとしても難しい。
【0007】
(特許文献1)には、ジ−およびトリグリセロールの脂肪酸エステルを有効成分として含有する防臭化粧料が開示されている。当該明細書の教示によれば、グラム陽性菌の制御に有効なのはモノエステルのみである。
【0008】
このようなモノエステルは、従来技術(特許文献2)より知られている化学的方法に従い、アルカリを触媒として、1.5〜2.5倍モル過剰の脂肪酸または脂肪酸誘導体にジ−およびトリグリセロールのイソプロピリデン誘導体を反応させ、次いで反応生成物を精製し、次いでイソプロピリデン基を酸加水分解またはアルコーリシスに付すことによって調製することができる。
【0009】
また、酵素を触媒としたポリグリセロール脂肪酸エステルの調製方法も知られている。これに関連して、ディー・シャルマグネ(D.Charlemagne)およびエム・ディー・レゴイ(M.D.Legoy)(非特許文献1)は、まずポリグリセロールを同量のシリカゲルに吸着させた後、懸濁液中でリパーゼの触媒作用を用いて脂肪酸メチルエステルと反応させている。この場合の主な欠点は、反応完了後にシリカゲルをろ過することによって高価な酵素が一緒に分離されて失われてしまうことにある。(非特許文献2)はこの方法の修正形態を利用し、ポリグリセロールエステルを合成するために20重量%の酵素を用いている。(特許文献1)に述べられている教示によれば、発明者らは、既知の抗菌活性を有する純粋なモノエステルを得るために高額な費用をかけてカラムクロマトグラフィーを行うことによってさらなる精製を実施している。
【0010】
(特許文献3)には、酵素触媒反応によって調製されたポリグリセロールの脂肪酸モノ−、ジ−、およびトリエステルの混合物が開示されている。これらの微生物制御活性は、化学合成または酵素的な調製および精製によって調製されたモノエステルに匹敵するか、場合によってはそれをはるかに超えるとさえ言われている。
【0011】
【特許文献1】DE−A−4237081号明細書
【特許文献2】DE−A−3818293号明細書
【特許文献3】EP−B−1250842号明細書
【特許文献4】EP−B−0451461号明細書
【非特許文献1】ディー・シャルマグネ(D.Charlemagne)およびエム・ディー・レゴイ(M.D.Legoy)、JAOCS、1995年、第72巻第1号、p.61〜65
【非特許文献2】エス・マツムラ(S.Matsumura)、エム・マキ(M.Maki)、ケー・トシマ(K.Toshima)、およびケー・カワダ(K.Kawada)、J.Jpn.Oil Chem.Soc.、1999年、第48巻第7号、p.681〜692
【非特許文献3】カバラ・ジェージェー(Kabara JJ)、「Fatty acids and derivatives as antimicrobial agents(抗菌剤としての脂肪酸およびその誘導体)」、カバラ・ジェージェー編、「The Pharmacological Effect of Lipids I. イリノイ州シャンペイン(Champaign,IL)、米国油化学者学会(American Oil Chemists’ Society)、1978年、p.1〜14
【非特許文献4】ウイス・オー(Wyss O)、ルートウィヒ・ビージェー(Ludwig BJ)、ジョイナー・アールアール(Joiner RR)、「The fungistatic and fungicidal action of fatty acids and related compounds(脂肪酸およびその関連化合物の静菌および殺菌活性)」、Arch Biochem、1943年、第7巻、p.415
【非特許文献5】ジー・ジェイコブソン(G.Jakobson)、「Fette Seifen Anstrichmittel(脂肪、石鹸、塗料組成物)」、1986年、第88巻第3号、p.101〜106
【非特許文献6】エイチ・ドルハイネ(H.Dolhaine)、ダブリュ・プロイス(W.Preuss)、およびケー・ウルマン(K.Wollmann)、「Fette Seifen Anstrichmittel」、1984年、第86巻第9号、p.339〜343
【非特許文献7】ディー・ラガード(D.Lagarde)、エイチ・ケー・グエン(H.K.Nguyen)、ジー・ラボット(G.Ravot)、ディー・ワーラー(D.Wahler)、ジェー・エル・レイモンド(J.−L.Reymond)、ジー・ヒルズ(G.Hills)、ディー・ベイト(T.Veit)、エフ・レフェブレ(F.Lefevre)、Org.Process Res.、2002年12月6日、p.441
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的は、高い抗菌効果を示し、容易に入手可能な原料から経済的に実現可能かつ環境的に許容可能な方法によって簡単に調製することができる、上述した従来技術の組成物の欠点を大幅に改善する微生物制御組成物を見出すことにあった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、短鎖脂肪酸またはその塩と従来技術より知られているポリオールエステルとの混合物の抗菌効果は同ポリオールエステルをはるかに上回っており、したがって、改善された抗菌組成物が提供できることがわかった。本発明の機構を一つに限定するわけではないが、ポリオールエステルの作用は、基本的に、皮膚に存在する酵素がこのエステルを切断することに基づいている可能性がある。十分な微生物が存在しないとエステルの切断が十分に起こらないことから、ポリオールエステルを用いて調製された防臭剤は、不快な体臭の形成を完全に阻止するにはその作用を開始するのが遅すぎる場合が多い。このため、さらなる抗菌活性成分を添加剤として用いる必要があった。
【0014】
したがって、本発明により、ポリオールの脂肪酸モノ−およびジエステル、好ましくはポリグリセロール、特にモノ−、ジ−、および/またはトリグリセロールのC6−14モノカルボン酸エステルと、飽和または不飽和、場合により分岐の、場合によりヒドロキシ置換された短鎖モノカルボン酸、特にC3−14脂肪酸、および特にその塩との混合物を有効量含有する、微生物を制御するための抗菌効果を有する組成物が提供される。
【0015】
しかし、短鎖脂肪酸を比較的高用量とすると不快臭および皮膚刺激性を呈するため、それ自体を使用することは非常に望ましいとはいえない。さらにこれらは皮膚表面で急速に代謝されることから、長期間の保護効果は得られない(非特許文献3)、(非特許文献4)。
【0016】
さらに本発明は、抗菌作用を有するこのような混合物を、表面および手術器具の滅菌および消毒、ならびに防腐、特に化粧料および皮膚外用剤の防腐用として好適な、消毒剤、滅菌用組成物、殺菌剤、防腐剤の製造に使用することを提供する。
【0017】
さらにこの組成物は食品の防腐用としても好適であり、食品包装の抗菌仕上げに使用することもできる。本発明による抗菌組成物は作用が穏やかなこともあり、特に、体臭抑制、フケ抑制、にきび肌(blemished skin)抑制、および虫歯抑制用化粧料の製造に好適である。
【0018】
本発明のさらなる主題は特許請求の範囲に定義されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に従い使用されるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、特にその1,2−位置異性体、トリメチロールプロパン、グリセロール、および糖類(例えばソルビトールやグルコースなど)、ならびに上記ポリオールの重合体が挙げられる。一般式、
HO−CH−CH(OH)−CH−O−[CH−CH(OH)−CH−O]−H
(式中、nは0〜9、好ましくは1〜6、特に1〜3、具体的には1および2)のポリグリセロールが好ましい。さらに、使用されるポリグリセロールは分岐していても環式部分を含んでいてもよい。
【0020】
これらは室温下で高粘性の液体であり、ジグリセロール以外にも、主としてより縮合度の高いグリセロールの低重合体を含んでいる。本発明の目的のためには、通常、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、およびペンタグリセロールを含む工業用のポリグリセロール混合物を使用することが好ましい。
【0021】
これらは、例えば塩基を触媒としてグリセロールを縮合させるか、それ以外では、エピクロロヒドリンの加水分解および縮合によって工業的に調製することができる。また、ポリグリセロールは、グリシドールの重合によっても得ることができる。個々のポリグリセロールの分離および単離は、従来技術において知られている様々な試薬を用いた処理によって行うことができる。(非特許文献5)においては様々な合成経路についての概説を見ることができる。ポリグリセロールに可能な様々な構造は(非特許文献6)で調べることができる。
【0022】
標準的な市販品は、通常、様々な縮合度のポリグリセロールの混合物であり、最大縮合度は通常は10までの可能性もあるが、例外としてそれを超える場合もある。特に好ましくは、ジ−およびトリグリセロールのみを含むか、または主としてこれらを含むポリグリセロールを使用する。
【0023】
本発明の目的のためのエステル形成用として好ましく使用される脂肪酸および脂肪酸誘導体ならびにこれらの混合物は、主鎖中に炭素原子を6〜14個、好ましくは8〜12個、特に炭素原子を8〜10個有する、直鎖または分岐の、飽和または一価もしくは多価不飽和のカルボン酸および脂肪酸のエステルから誘導されたものである。
【0024】
使用可能な脂肪酸誘導体はいずれも、エステル化(エステル交換)反応に関わる慣用の誘導体である。本発明によれば、この脂肪酸誘導体は、アルコール基中に1〜4個の炭素原子を有する脂肪酸アルキルエステルから選択することが特に好ましい。
【0025】
脂肪酸またはそのエステルは、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、2−エチルヘキサン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の脂肪酸であり、単独または混合物として使用される。原則として、脂肪酸の連鎖分布がすべて似通っているものが好適である。
【0026】
好ましくは、カプリル酸およびカプリン酸を使用する。
【0027】
エステルの調製は、例えば(特許文献1)、(特許文献3)、(特許文献4)等の従来技術において知られている化学的方法または酵素的方法によって行われる。
【0028】
本発明によるポリオールの脂肪酸エステルは、簡潔に言うと、エステル化されていないポリオール部分を相当量含んでいてもよい、エステル化度の異なる化合物の混合物からなる。この場合における元のポリオールは同一であってもよく、またこの点に関して言えば、その替わりに、縮合度の異なる生成物の混合物であってもよい。
【0029】
本発明による混合物のさらなる必須成分は、主鎖中に3〜14個の炭素原子を有し、場合によりOH基および/または二重結合を含む、直鎖または分岐のモノカルボン酸、例えば、乳酸、カプロン酸、ラウリン酸、2,4−ヘキサジエン酸、特にカプリル酸およびカプリン酸の塩である。皮膚の生理学的条件下においては、このような塩は、デポ(depot)のエステルが防臭効果を発現し始めるまでの間、即効的かつ十分な効果を発揮する。
【0030】
このような塩は、酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属、および/またはアンモニウム塩であってもよい。エステル中で塩の透明な溶液を調製するためには、本発明によれば、アルカリ金属塩、特にカリウム塩を併用することが好ましい。
【0031】
エステルと塩との混合比は基本的には重要でなく、広範囲に変化させることができる。しかしながら、最大の徐放性および十分かつ即効的な効果が所望されるため、通常は塩部分を1〜20%、特に5〜10%とすれば十分である。
【0032】
さらに、本発明による微生物制御組成物は、その使用目的に応じて、この分野で慣用されているアニオン性、非イオン性、カチオン性、および/または両性界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0033】
このような界面活性剤の典型例を示す。
1.アルキレンオキシド系非イオン性界面活性剤、例えば、長鎖分岐アルコールのエトキシレート、ソルビタンエステルのエトキシレート、プロピレンオキシド−エチレンオキシドコポリマー、ヒドロキシアルキル脂肪酸アミド、ポリジメチルシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、糖系界面活性剤(アルキルポリグリコシド、アルキルグリコシドエステル、N−アシルグルカミド等)、およびポリグリセロールエステル、
2.アニオン性界面活性剤、例えば、アルキル硫酸エステル塩およびアルキルエーテル硫酸エステル塩、a−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸エステルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルまたはアルコキシアルキルリン酸エステル塩、酒石酸塩、N−アシルアミノ酸誘導体、サルコシン酸塩、イセチオン酸塩、および石鹸
3.カチオン性界面活性剤、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジ−およびトリエタノールアンモニウム塩の脂肪酸エステル、アルキルイミダゾリニウム塩、アシルアミドプロピルジメチルアンモニウム塩、ポリジメチルシロキサンのカチオン性誘導体、
4.両イオン性および両性界面活性剤、例えば、ベタイン、スルホベタイン、アミンオキシド、およびアンホ酢酸塩。
【0034】
本発明による微生物制御組成物は、例えば、滅菌用組成物、消毒剤、消毒洗浄用組成物、多目的洗剤、衛生設備用洗剤、浴室用洗剤、食器洗浄機用洗剤、洗濯用洗剤、洗浄用化粧料、および手入れ用組成物である。上述したポリオール脂肪酸エステルをベースとした化粧用組成物は、体臭、フケ、にきび肌、および虫歯を抑制することを目的として、特に0.01〜5重量%の量で使用される。これらは、均質な液体、ゲル、軟膏、ペースト、ワックス状またはエマルジョン状調合物のような形態となるように配合してもよい。ウエットワイプ形態で使用することも可能である。特にエマルジョン形態の場合は、エステル油等の油、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性または低揮発性シリコーン誘導体、パラフィン油等を含有させる。
【0035】
本発明の混合物は、特にpH範囲が7未満である場合は、従来技術において微生物制御用として通常用いられている必須の抗菌性物質をさらに併用することなく適用することも可能である。しかしながら、必要であればこれを用いることも基本的に可能であり、不利益が伴うこともない。
【0036】
そのようなものとしては、トリクロサン、ファルネソール、2−エチルヘキシルオキシグリセロール、または乳酸オクチルを挙げることができる。具体例を挙げた界面活性剤以外にも、使用目的に応じて、各場合に応じた特定の助剤および添加剤をさらに含有させてもよい。例えば、溶剤、ビルダー、抑泡剤、塩類、漂白剤、漂白活性剤、増白剤、灰色化防止剤(graying inhibitor)、可溶化剤、増粘剤、香料および染料、乳化剤、植物抽出物やビタミン複合体等の生理活性成分が挙げられる。好適な溶剤は、特に、水またはアルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−メチル−2−プロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、またはグリセロール等)である。
【0037】
各場合に使用されるこの種の添加剤の量は具体的な製品の性質に依存し、当業者に知られているか、または必要であれば簡単な実験によって容易に確認することができる。
【0038】
本発明による組成物のさらなる可能性のある使用は、食品および食品包装用の防腐剤としての使用であり、通常は0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%の濃度で使用される。本発明によるエステルは食品に見合った量を単に添加するだけでもよい。包装に使用する場合は、ポリオールエステルを使用し、例えば、エステルの溶液またはエマルジョン中に紙を含浸させるか、または対応するエステルの調合液をフィルムに噴霧する。包装を成形する押出成形などの工程の前または途中にエステルを添加してもよい。
【0039】
本発明による混合物の調製は、好ましくはポリオールを脂肪酸でエステル化することによって、好ましくはモル比を1:1とし、溶媒を用いて、不活性雰囲気中、180〜260℃の温度で、それ自体知られている方法によって行う。脂肪酸の転化率が90〜95%になった時点でその混合物を好ましくは100℃未満の温度に冷却し、塩基、好ましくは炭酸塩、特に炭酸カリウムで中和する。
【0040】
同様に、第1段階でエステル化を完了し、続いて酸を添加して第2段階で中和を行うことも、酸の塩を添加することも可能である。
【0041】
以下の実施例は本発明の好ましい反応を説明するものであるが、本発明をこれらに限定するのは適切ではない。
【実施例】
【0042】
微生物試験
本発明による生成物の効果を負荷試験(欧州製薬指導(European Pharmaceuticals Directive)に準ずる)を用いて確認する。これにより、本発明による生成物は従来技術と比較してはるかに優れていることがわかる。
【0043】
微生物試験の実施
A)対コリネバクテリウム・キセロシス(Corynebacterium xerosis)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(表皮ブドウ球菌、Staphylococcus epidermidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
【0044】
1.試料および原料
1.1.試料
a.ジグリセロールカプリル酸エステル(従来技術による比較用物質)
b.ジグリセロールカプリル酸エステルおよびカプリル酸カリウム5%
c.ジグリセロールカプリル酸エステルおよびカプリル酸カリウム10%
d.ジグリセロールカプリル酸エステルおよびカプリル酸カリウム15%
e.ポリグリセロール−3カプリル酸エステル
f.ポリグリセロール−3カプリル酸エステルおよびカプリル酸カリウム7%
g.トリエチレングリコールカプリル酸エステル
h.トリエチレングリコールカプリル酸エステルおよびカプリル酸カリウム5%
i.カプリル酸ソルビタン
j.カプリル酸ソルビタンおよびカプリル酸カリウム5%
【0045】
1.2 試験用微生物
コリネバクテリウム・キセロシス DSM 20743
スタフィロコッカス・エピデルミディス DSM 3269
カンジダ・アルビカンス ATCC 10231
【0046】
1.3 使用培地
栄養培地:
CSL:カゼインペプトン−大豆粉ペプトン溶液
CSA:カゼインペプトン−大豆粉ペプトン溶液−寒天
サブローグルコースブロス/寒天
不活性化剤を添加した希釈液:
不活性化剤(トゥイーン(Tween)(登録商標)80を3%、レシチン0.3%、ヒスチジン0.1%、チオ硫酸Na0.5%)加NaClペプトン緩衝液
【0047】
2.方法
2.1.試験液の調製
検査前日、各試料から試験液(CSL中、0.1%(w/v))を調製した。このために、それぞれの場合ごとにCSL100mlを湯浴で60℃に加熱し、それぞれの場合ごとに各試料0.1gを秤量して60℃のCSL100ml中に加えた。この調製液を手で激しく振り、30℃のインキュベータ内に一夜放置した。
【0048】
2.2.試験用微生物懸濁液の調製
コリネバクテリウム・キセロシスを3〜4日超培養する。他の微生物をブロス中に、またはエルトリエーションによって単離する。
【0049】
2.3.試料の汚染および微生物減少数の測定
各試験用微生物ごとに、各試験液20mlをガラスビーズを含む50mlの茶色の滅菌ガラス瓶に導入し、微生物懸濁液0.2mlで汚染した。対照として、試料を含まないCSL20mlも試験用微生物ごとに調製した。汚染された試料を振とう機で3分間振とうした後、インキュベータに入れ、これを取り出すまで30℃に維持した。
【0050】
取り出す時間(1、2、3、24、および48時間)ごとに各調製液から1mlを採取し、各場合ごとに、不活性化剤加NaCl−ペプトン緩衝液9ml中に移し替え、コロニー数を計測した。
【0051】
0時間として示した値は、使用した試験用微生物懸濁液が試料を汚染する際に10−2倍に希釈されることを考慮したコロニーの数である。
【0052】
3.結果
以下のグラフに個々の試料に関する結果を示す。有効成分を含まないブランク試料の24時間培養後の菌数も(単独の)対照値として各グラフにプロットした。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
B)対マラセチア・フルフル(Malassezia furfur)
Aに記載した手順と同様にして、カプリル酸カリウム7%を含むジグリセロールカプリル酸エステルのマラセチア・フルフルに対する効果を試験した。M・フルフルはフケ形成の原因に関与している。
【0057】
本発明による混合物を水中に溶解し、3.0重量%を含む溶液を得た。この溶液を微生物懸濁液で処理し、振とうによって均質化した後、30℃で培養した。対照として、ジグリセロールカプリル酸エステルを添加しない第2溶液も調製した。
【0058】
以下の結果を得た。
【0059】
【表4】

【0060】
皮膚微生物によるポリオールエステル切断性の証明
腋窩用綿棒(underarm swab)を用いて微生物を収集した。このために、緩衝液(トリトン(Triton)X100を0.1重量%含む酢酸塩緩衝液(0.lM、pH5.6))に浸した綿棒で腋窩の皮膚を約1分間擦った。次いでこの綿棒を2−ヒドロキシ−4−p−ニトロフェノキシブチルデカノエート溶液に入れた。皮膚微生物で発現した酵素によってこのエステルを1.5時間切断した。切断された分子はNaIOによる酸化およびBSAによる切断によって容易にp−ニトロフェノールに転化させることができる。p−ニトロフェノールは紫外分光によって定量化することができる。(非特許文献7)と比較する。被験者によって吸収強度が変化することが観測される。
【0061】
【表5】

【0062】
化粧料
本発明による生成物を使用し得る配合例を以下に示す。
【0063】
配合1:
防臭スプレー(本発明による)
【0064】
【表6】

【0065】
液体成分を混合した後、この配合物を加圧下でスプレー缶に注入する。
【0066】
配合2:
防臭スプレー(本発明によらない)
【0067】
【表7】

【0068】
液体成分を混合した後、この配合物を加圧下でスプレー缶に注入する。
【0069】
配合3:
透明防臭ポンプスプレー
【0070】
【表8】

【0071】
相Aに記載の成分を記載順に撹拌しながら混合した後、水(相B)の上にゆっくりと継ぎ足す。クエン酸を用いてpHを5.5に調節する。
【0072】
配合4:
O/Wエマルジョン(スプレー可能)
【0073】
【表9】

【0074】
相AおよびBを70〜75℃に加熱する。相Aを相Bに撹拌しながら加えた後、均質化する。この混合物を撹拌しながら30℃に冷却する。
【0075】
重要:
相Aを先に導入する場合は、相Bは撹拌せずに添加すること。
【0076】
配合5:
透明防臭ロールオン
【0077】
【表10】

【0078】
相Aに記載の成分を記載順に撹拌しながら混合する。相Aを相Bに撹拌しながら加える。クエン酸を用いてpHを5.5に調節する。
【0079】
配合6:
透明防臭ロールオン
【0080】
【表11】

【0081】
ヒドロキシエチルセルロースを水中で膨潤させる。防腐剤を加える。相Aに記載の成分を50℃に加熱する。相Bに記載の成分を撹拌しながら相Aに加える。次いで相A/Bを撹拌しながら相Cに加える。
【0082】
配合7:
AP/防臭スティック
【0083】
【表12】

【0084】
相Aに記載の成分を、透明相が得られるまで80〜85℃で攪拌する。相Bに記載の成分を撹拌しながら約75℃で加える。相CおよびDに記載の成分を撹拌しながら加える。
【0085】
配合8:
透明防臭ポンプスプレー
【0086】
【表13】

【0087】
相Aに記載の成分を50℃に加熱する。相Bに記載の成分を記載順に撹拌しながら相Aに加える。クエン酸でpHを5.5に調節する。
【0088】
配合9:
アニオン性家庭用洗剤(濃縮)
【0089】
【表14】

【0090】
相Aに記載の成分を記載順に撹拌しながら混合した後、水(相B)にゆっくりと継ぎ足す。
【0091】
配合10:
液体石鹸
【0092】
【表15】

【0093】
全成分を記載順に混合する。
【0094】
配合11:
練り歯磨き
【0095】
【表16】

【0096】
安息香酸ナトリウムを水中に溶解し、ヒドロキシエチルセルロースを加える。これを十分に膨潤させた後、他の成分を記載順に加える。
【0097】
配合12:
フケ取りシャンプー
【0098】
【表17】

【0099】
この成分を記載順に混合する。クエン酸でpHを約6に調節する。
【0100】
化粧料適用試験
2種類の配合物を用いる。これらを配合物1および2とする。この配合物を熟練者3人によって被験者20人に適用し、その前後の腋臭を調査する。詳細には、この試験は以下の手順を含む。
1.腋窩を石鹸で洗浄し、熟練者が臭いを評価する。
2.片方の腋窩に当該生成物を1回適用する。6および24時間後に臭いを調査し、その差を評価する。
【0101】
この調査結果は以下の通りであった。使用開始から6時間後も24時間後も、本発明に従い(配合物1)処理された腋窩はその臭いが著しく改善されていることがわかった。未処理の腋窩と比較しても同様に改善されていることがわかった。従来技術による配合物(配合物2)で処理された腋窩は臭いが改善されておらず、未処理の腋窩と比べて改善されていただけであった。
【0102】
【表18】

【0103】
食品の保存
加熱後に細かく刻んだジャガイモ750g、細かく刻んだ玉ねぎ25g、調理塩1.2g、酢(酢酸6%を含む)10ml、およびマヨネーズ200gからなるポテトサラダを、実施例4のポリグリセロールエステル0.5%で処理した。細菌および酵母を検査するため、このポテトサラダを30℃で72時間保管した。その後の計測により、以下の微生物数を得た。
【0104】
ポテトサラダ、ポリグリセロールエステル不使用
1.2×10微生物数/ml
ポテトサラダ、ポリグリセロールエステル使用
1.3×10微生物数/ml
【0105】
酵母およびカビを検査するために、このポテトサラダを25℃で72時間保管した。その後の計測により、以下の微生物数を得た。
【0106】
ポテトサラダ、ポリグリセロールエステル不使用
6.7×10微生物数/ml
ポテトサラダ、ポリグリセロールエステル使用
2.5×10微生物数/ml
【0107】
96時間保管後は、ポリグリセロールエステルを使用しないポテトサラダには肉眼でもはっきりとわかる青色のカビが生え、一方、ポリグリセロールエステルを使用したポテトサラダの見た目に変化はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールの脂肪酸エステルと、短鎖モノカルボン酸および/またはその塩との混合物を有効量含有する微生物制御組成物。
【請求項2】
グリセロール/ポリグリセロールの脂肪酸エステルと、短鎖モノカルボン酸および/またはその塩との混合物を有効量含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モノ−、ジ−、および/またはトリグリセロールのモノエステルおよびジエステルを有効量含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
脂肪酸エステル対モノカルボン酸塩の比が80:20〜99:1の範囲にある、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
エステル化に使用される前記酸および酸誘導体が、主鎖中に6〜14個の炭素原子を有し、かつ場合によりOH基および/または二重結合を含む、直鎖または分岐の脂肪酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記塩の形成に使用される前記酸および酸誘導体が、主鎖中に3〜14個の炭素原子を有し、かつ場合によりOH基および/または二重結合を含む、直鎖または分岐の脂肪酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
グラム陽性菌、グラム陰性菌、マイコバクテリウム、皮膚糸状菌、酵母および糸状菌、ウイルス、ならびに胞子を制御するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項8】
消毒剤、消毒洗浄剤、滅菌用組成物、殺菌剤、および防腐剤を製造するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項9】
食品を保存するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項10】
内容物の保存期間を延長するべく食品包装を抗菌仕上げするための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項11】
身体洗浄および身体手入れ分野用の化粧料を製造するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項12】
体臭を防ぎ、かつフケの形成を防ぐ化粧料を製造するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項13】
にきび肌および軽症のにきびを防ぐ化粧料を製造するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項14】
練り歯磨き、口腔洗浄液等の歯の手入れ用品を製造するための、請求項1に記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2006−89483(P2006−89483A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276462(P2005−276462)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(500442021)ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】