説明

微細構造体の製造方法および微細構造体の製造システム

【課題】本発明は、微細構造体の表面に形成された壁体間に残留する液体の表面張力を抑制することができる微細構造体の製造方法および微細構造体の製造システムを提供する。
【解決手段】壁体が形成された微細構造体の表面を液体により処理し、前記液体の表面を活性化させる物質を前記微細構造体の表面に供給し、前記微細構造体の表面の乾燥を行うこと、を特徴とする微細構造体の製造方法が提供される。または、壁体が形成された微細構造体の表面を親水化処理し、前記表面を液体により処理し、前記表面の乾燥を行うこと、を特徴とする微細構造体の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造体の製造方法および微細構造体の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) などの分野においては、リソグラフィ技術を用いて表面に微細な壁体を有する微細構造体が製造されている。そして、製造プロセスにおいて発生する有機物汚染や無機物汚染を除去して微細構造体の表面を清浄に保つなどのために洗浄が行われている。
【0003】
このような洗浄においては、微細構造体の表面に純水などの洗浄液を供給して付着した有機物などを除去するようにしている。そして、乾燥効果を高め、水滴残り、ウォーターマークを低減させるためにイソプロピルアルコールなどのアルコールを乾燥時に被洗浄面に供給するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示をされているような技術においては、微細構造体の表面に形成された微細な壁体間に残留する洗浄液の表面張力の影響が考慮されておらず、この表面張力により微細な壁体が変形、破壊されるおそれがあった。
【特許文献1】特開2000−3897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、微細構造体の表面に形成された壁体間に残留する液体の表面張力を抑制することができる微細構造体の製造方法および微細構造体の製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、壁体が形成された微細構造体の表面を液体により処理し、前記液体の表面を活性化させる物質を前記微細構造体の表面に供給し、前記微細構造体の表面の乾燥を行うこと、を特徴とする微細構造体の製造方法が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、壁体が形成された微細構造体の表面を親水化処理し、前記表面を液体により処理し、前記表面の乾燥を行うこと、を特徴とする微細構造体の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、壁体が形成された微細構造体の表面を液体により処理する処理手段と、前記液体の表面を活性化させる物質を前記微細構造体の表面に供給する活性剤供給手段と、前記微細構造体の表面の乾燥を行う乾燥手段と、を備えたことを特徴とする微細構造体の製造システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微細構造体の表面に形成された壁体間に残留する液体の表面張力を抑制することができる微細構造体の製造方法および微細構造体の製造システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について例示をする。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
図2は、壁体間に残留する液体の表面張力の影響を例示するための模式断面図である。なお、図1においては、一例として洗浄液を用いた洗浄を実施する場合を例示したが、本発明はこれには限定されず、その他、エッチングや堆積、表面処理などをはじめとして、液体を用いる各種のプロセスに適用することができる。これは、図3以降において後述する各具体例についても同様である。
【0011】
まず、壁体間に残留する液体の表面張力の影響について説明をする。
図2(a)に示すように、微細構造体1を洗浄液などの液体で処理する際には液体2により微細構造体1の表面が覆われ、表面に形成されている壁体1a、1b同士の間(パターン内)も洗浄液(液体)2により満たされる。なおここで、壁体1a、1bは、壁状のものでもよく、円柱状あるいは角柱状などの棒状のものでもよい。
【0012】
そして、図2(b)に示すように、処理後に行われる乾燥において、微細構造体1の表面から液体2が除去され、壁体1a、1bの上面が大気中に露出すると、壁体1a、1b同士の間に残留する液体2の表面張力により壁体1a、1bを側方から押す作用力Fが働くようになる。
【0013】
この場合、壁体1a、1bの強度が充分に強ければ作用力Fの影響は少ないが、微細構造体1の材質、微細化の程度(集積度)、アスペクト比などによっては作用力Fの発生を抑制する必要性が生じる。例えば、半導体装置、MEMSなどの分野において、デザインルールが30nm(ナノメートル)以下になると作用力Fの影響が無視できなくなる。
【0014】
そのような場合においては、図2(c)に示すように、壁体1a、1bが湾曲するようにして変形するおそれがある。そして、壁体1a、1bの変形が発生すると、その先端部Aにおいて接触が生じたり、基部Bにおいて破断や亀裂が生じたりするおそれがある。
【0015】
また、壁体1a、1bの形状が対称形でない場合には、表面張力により発生する作用力Fが不均一となり、壁体1a、1bの変形が発生しやすくなる。例えば、図2(d)に示す場合においては、壁体1a、1b同士の間に残留する液体2の量が異なり、表面張力により発生する作用力F1、F2の大きさ、作用する位置が異なるものとなる。すなわち、図2(d)に示すように、作用力F1の方が作用力F2よりも大きく、また、その作用する位置も作用力F1の方がより先端側となる。そのため、作用力F1により発生する曲げモーメントが大きくなるので、図2(e)に示すような向きの変形が発生しやすくなる。
【0016】
尚、図2に例示をした微細構造体1は、単一の材料(例えば、シリコンやアモルファスシリコンなど)からなる構造体であるが、例えば、微細構造体1が金属、シリコン、酸化物などからなる積層体である場合も同様である。
【0017】
この表面張力による影響を知るために、表面に30nmデザインルールによるパターンが形成されたウェーハの純水によるスピン洗浄(回転数;500rpm程度、洗浄時間;60秒程度)と、スピン乾燥(回転数;2500rpm程度、洗浄時間;60秒程度)とを行い、洗浄前と洗浄後のパターンをKLA社製のパターン検査装置により比較検査した。その結果、パターンの12箇所において変形が確認された。
【0018】
本発明者は検討の結果、液体表面を活性化させる物質を供給すれば、液体の表面張力を抑制することができるので、壁体の変形を抑制することができるとの知見を得た。
液体表面を活性化させる物質としては、例えば、界面活性剤や、アルコール、フラン、ケトン等の極性溶剤、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の数nm〜1μm程度の微小粒子を例示することができる。
【0019】
そして、界面活性剤としては、陽イオン(カチオン)系界面活性剤、陰イオン(アニオン)系界面活性剤、非イオン(ノニオン)系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤などを例示することができる。例えば、陰イオン(アニオン)系界面活性剤としては、カルボキシル基、スルホ基、硫酸基を有し、水中で解離して陰イオンとなるアルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩などを例示することができる。また、陽イオン(カチオン)系界面活性剤としては、水中で解離して陽イオンとなるアルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミン化合物などを例示することができる。また、非イオン(ノニオン)系界面活性剤としては、アルキルベタイン、イミダゾニウムベタインなどを例示することができる。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルベタイン型(例えば、商品名サーフロンS-131(旭硝子社製))、パーフルオロアルキルカルボン酸型(例えば、商品名サーフロンS-113、121(旭硝子社製))などを例示することができる。
【0020】
界面活性剤の種類には特に限定はないが、非イオン(ノニオン)系界面活性剤は電解質の影響を受けにくく、他の用途のための添加剤を含む場合にも併用することができるので好ましい。
【0021】
また、洗浄後の乾燥において界面活性剤が揮発除去できるものとすれば、界面活性剤が残留することで生じる影響を抑制することができる。そのためには、界面活性剤の分子量が低分子量であることが好ましい。
また、界面活性剤が残留する場合においては、加熱やオゾンなどによる分解、除去が容易であることが好ましい。そのためには、低分子量であるか、または、主鎖に二重結合などを有し低分子量のものに分解容易であるものが好ましい。
【0022】
次に、図1に戻って本発明の第1の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示する。 尚、説明の便宜上、微細構造体1を表面に30nmデザインルールによるパターンが形成されたウェーハとして説明する。
まず、パターンが形成されたウェーハの表面(壁体が形成された微細構造体の表面)を液体(例えば、純水)により洗浄する(ステップS1)。
洗浄は、スピン洗浄法を用いることができ、回転数を500rpm程度、洗浄時間を60秒程度とすることができる。
【0023】
次に、ウェーハの表面に液体表面を活性化させる物質を供給する。本実施の形態においては、非イオン(ノニオン)系界面活性剤を添加した純水をウェーハの表面に供給する(ステップS2)。
供給は、スピン洗浄法と同様に回転させたウェーハの表面に対して行うことができ、回転数を500rpm程度、供給時間を10秒程度とすることができる。この場合、非イオン(ノニオン)系界面活性剤の添加量は、0.05重量%以上、1重量%以下とすることが好ましい。0.05重量%未満とすれば表面張力を低減させる効果が少なくなりすぎ、1重量%を超えるものとすれば残留する界面活性剤の除去を考慮する必要が生じるからである。尚、高温の除去処理が可能な微細構造体1であったり、後工程のエッチングなどで下層の材料ごと界面活性剤が除去されるような場合においては、界面活性剤の残留の影響を考慮する必要がない。そのため、そのような場合においては1重量%を超える界面活性剤を添加することもできる。
【0024】
次に、回転をさせながら加熱を行いウェーハの乾燥と界面活性剤の分解除去を行う(ステップS3)。
この場合、加熱温度を150℃程度、加熱時間を60秒程度、回転数を500rpm程度とすることができる。
【0025】
この乾燥・界面活性剤の分解除去後のウェーハ表面をX線光電子分光(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)により分析したところ、炭素は1%以下であり、界面活性剤の残留は見られなかった。また、乾燥・界面活性剤の分解除去後のウェーハ表面をKLA社製のパターン検査装置により検査したところ、洗浄前のパターン形状と変化がなく、パターンの変形は見られなかった。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
尚、説明の便宜上、微細構造体1を表面に30nmデザインルールによるパターンが形成されたウェーハとして説明する。
まず、パターンが形成されたウェーハの表面(壁体が形成された微細構造体の表面)を液体により処理する。具体的には、例えば洗浄液(例えば、純水)により洗浄する(ステップS11)。
洗浄は、スピン洗浄法を用いることができ、回転数を500rpm程度、洗浄時間を60秒程度とすることができる。
次に、ウェーハの表面に液体表面を活性化させる物質を供給する。本実施の形態においては、低分子量の非イオン(ノニオン)系界面活性剤を添加した純水をウェーハの表面に供給する(ステップS12)。
供給は、スピン洗浄法と同様に回転させたウェーハの表面に対して行うことができ、回転数を500rpm程度、供給時間を10秒程度とすることができる。
【0027】
本実施の形態においては、低分子量の界面活性剤を用いるものとしている。この場合、分子量を、200程度以下とすれば揮発除去や分解除去などが容易となるので好ましい。
【0028】
また、非イオン(ノニオン)系界面活性剤の添加量は、0.05重量%以上、1重量%以下とすることが好ましい。0.05重量%未満とすれば表面張力を低減させる効果が少なくなりすぎ、1重量%を超えるものとすれば残留する界面活性剤の除去を考慮する必要が生じるからである。尚、高温の除去処理が可能な微細構造体1であったり、後工程のエッチングなどで下層の材料ごと界面活性剤が除去されるような場合においては、界面活性剤の残留の影響を考慮する必要がない。そのため、そのような場合においては1重量%を超える界面活性剤を添加することもできる。
【0029】
次に、スピン乾燥を行う(ステップS13)。
この場合、回転数を2500rpm程度、乾燥時間を60秒程度とすることができる。 この乾燥後のウェーハ表面をKLA社製のパターン検査装置により検査したところ、洗浄前のパターン形状と変化がなく、パターンの変形は見られなかった。
【0030】
次に、回転をさせながら加熱処理を行い残留する界面活性剤を分解除去する(ステップS14)。
この場合、加熱処理の温度を150℃程度、加熱処理時間を60秒程度、回転数を500rpm程度とすることができる。
この加熱処理後のウェーハ表面をX線光電子分光(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)により分析したところ、炭素は1%以下であり、界面活性剤の残留は見られなかった。
【0031】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
尚、説明の便宜上、微細構造体1を表面に30nmデザインルールによるパターンが形成されたウェーハとして説明する。
まず、パターンが形成されたウェーハの表面(壁体が形成された微細構造体の表面)を液体により処理する。具体的には、例えば、洗浄液(例えば、純水)により洗浄する(ステップS21)。
洗浄は、スピン洗浄法を用いることができ、回転数を500rpm程度、洗浄時間を60秒程度とすることができる。
【0032】
次に、ウェーハの表面に液体表面を活性化させる物質を供給する。本実施の形態においては、主鎖に二重結合を有する非イオン(ノニオン)系界面活性剤を添加した純水をウェーハの表面に供給する(ステップS22)。
供給は、スピン洗浄法と同様に回転させたウェーハの表面に対して行うことができ、回転数を500rpm程度、供給時間を10秒程度とすることができる。
【0033】
本実施形態においては、主鎖に二重結合を有する界面活性剤を用いるものとしている。このようなものとしては、例えば、以下の一般式で表される非イオン(ノニオン)系界面活性剤を例示することができる。尚、二重結合の数、位置などは特に限定されないが、揮発除去や分解除去などが容易となるような分子量に分解可能な数であることが好ましい。
(化1)
R O (EO)r H
ここで、Rは炭素数8〜20のアルケニル基である。EOはエチレンオキサイドを示す。p 、q 及びr は平均付加モル数であり、p は1〜13、q は1〜4、r は2〜26である。
この場合、以下の化学式で表されるものが好ましい。
(化2)
CH3-(CH2)3-(CH=CH)-(CH2)4-O(EO)10 H
【0034】
また、非イオン(ノニオン)系界面活性剤の添加量は、0.05重量%以上、1重量%以下とすることが好ましい。0.05重量%未満とすれば表面張力を低減させる効果が少なくなりすぎ、1重量%を超えるものとすれば残留する界面活性剤の除去を考慮する必要が生じるからである。尚、高温の除去処理が可能な微細構造体1であったり、後工程のエッチングなどで下層の材料ごと界面活性剤が除去されるような場合においては、界面活性剤の残留の影響を考慮する必要がない。そのため、そのような場合においては1重量%を超える界面活性剤を添加することもできる。
【0035】
次に、スピン乾燥を行う(ステップS23)。
この場合、回転数を2500rpm程度、乾燥時間を60秒程度とすることができる。 この乾燥後のウェーハ表面をKLA社製のパターン検査装置により検査したところ、洗浄前のパターン形状と変化がなく、パターンの変形は見られなかった。
【0036】
次に、オゾンガスを用いて残留する界面活性剤を分解除去する(ステップS24)。 この場合、オゾンガスの温度を40℃程度、処理時間を30秒程度とすることができる。 このオゾンガスによる処理後のウェーハ表面をX線光電子分光(XPS;X-ray Photoelectron Spectroscopy)により分析したところ、炭素は1%以下であり、界面活性剤の残留は見られなかった。
【0037】
尚、以上に例示をした実施の形態においては、純水に界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)を添加し、それを供給するようにしているが、界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)の溶液を霧状に噴霧するなどして直接供給するようにすることもできる。
【0038】
また、最初に行われる洗浄の際に、界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)が添加された液体を用いるようにすることもできる。ただし、界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)の量を抑制する観点からは、洗浄と、乾燥時における表面張力低減(界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)の供給)とを別々に行うようにすることが好ましい。
【0039】
また、残留する界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)の分解除去も例示をした方法に限定されるわけではなく、例えば、プラズマ処理やUV(紫外線)照射処理など界面活性剤(液体表面を活性化させる物質)の分解除去が可能な処理方法を適宜選択することができる。
【0040】
また、液体表面を活性化させる物質の供給は、微細構造体1の表面に液体が残留している間に行われるようにすることが好ましい。尚、供給のタイミングは、壁体の強度、例えば、微細構造体1の材質、微細化の程度(集積度)、アスペクト比などによって適宜変更することができる。
本発明者はさらなる検討の結果、微細構造体1の表面を親水化処理するようにすれば、液体の表面張力を抑制することができるので、壁体の変形を防止できるとの知見を得た。また、この場合、濡れ性が向上して液体が壁体間に侵入しやすくなるので、洗浄効果を高めることもできるとの知見を得た。
【0041】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
まず、壁体が形成された微細構造体の表面に親水化処理を施す(ステップS31)。
親水化処理は、微細構造体1の材質などにより適宜選択することができる。例えば、微細構造体1がシリコンからなるもの(例えば、ウェーハなど)の場合においては、表面に酸化シリコンを形成させることができる処理を適宜選択すればよい。酸化シリコンを形成させることができる処理としては、例えば、シリコンの熱酸化処理、酸素プラズマ処理などを例示することができる。また、その他の親水化処理としては、UV(紫外線)またはEB(電子線)照射による表面処理、常圧CVD処理・減圧CVD処理・プラズマCVD処理などによる親水性のある物質の成膜、薬剤による表面処理などを例示することができる。尚、これらの処理方法に限定されるわけではなく、微細構造体1の表面を親水化処理可能な処理方法を適宜選択することができる。
【0042】
次に、微細構造体1を液体により処理する。具体的には、例えば、洗浄をする(ステップS32)。
洗浄は、例えば、純水によるスピン洗浄などとすることができる。ただし、これに限定されるわけではなく、洗浄方法は適宜変更することができる。また、液体も純水に限定されるわけではなく、添加剤が添加されたものなどを適宜選択することができる。
次に、微細構造体1を乾燥する(ステップS33)。
乾燥は、例えば、スピン乾燥や加熱による乾燥などとすることができる。ただし、これに限定されるわけではなく、乾燥方法は適宜変更することができる。
尚、洗浄の後に、前述した液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)を供給するようにすることもできる。
【0043】
次に、本発明の実施の形態に係る微細構造体の製造システムについて説明をする。 図6は、本発明の第5の実施の形態に係る微細構造体の製造システムを例示するための模式図である。
尚、説明の便宜上、微細構造体1をウェーハWとして説明する。
【0044】
図6に示すように、微細構造体の製造システム100は、ウェーハW(微細構造体1)を保持する保持手段101と、パターンが形成されたウェーハW(壁体が形成された微細構造体)の表面を液体により洗浄する洗浄手段102と、パターンが形成されたウェーハW(壁体が形成された微細構造体)の表面に液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)を供給する活性剤供給手段103と、を備えている。
【0045】
また、パターンが形成されたウェーハW(壁体が形成された微細構造体)の表面に残留する液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の分解除去を行う除去手段120も備えている。尚、後述するように、除去手段120からの過熱蒸気により残留する液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の分解除去を行うとともに、ウェーハW(微細構造体1)の表面の乾燥を行うことができるようになっている。すなわち、本実施の形態においては、除去手段120にウェーハW(微細構造体1)の表面の乾燥を行う乾燥手段の機能が含まれている。
また、保持手段101を囲むようにしてチャンバー104が設けられている。
【0046】
保持手段101には、ウェーハW(微細構造体1)を保持可能なチャック105と、チャック105を回転させるための駆動手段106(例えば、モータなど)とが設けられている。チャック105は、ウェーハW(微細構造体1)を1枚づつ水平に保持し、駆動手段106により回転できるようになっている。
洗浄手段102は、チャック105の上方に設けられウェーハW(微細構造体1)の表面に向けて液体を吐出するノズル107と、配管108によりノズル107と接続された図示しない液体供給手段とを備えている。図示しない液体供給手段により供給される液体は、例えば、純水とすることができる。ただし、液体は純水に限定されるわけではなく、添加剤が添加されたものなどを適宜選択することができる。
【0047】
活性剤供給手段103には、チャック105の上方に設けられウェーハW(微細構造体1)の表面に向けて液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)が添加された液体(以下、界面活性液という)を吐出するノズル109が設けられている。ノズル109に接続された配管110は二分岐され、一方の配管110aには液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)を供給するための供給手段111が接続され、他方の配管110bには図示しない純水供給手段が接続されている。また、供給手段111は配管110cにより液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)を収容する容器112と接続されている。液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)が液体などの流動体である場合には、供給手段111をポンプなどとすることができる。また、容器112に収容される液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)は、例えば、非イオン(ノニオン)系界面活性剤とすることができる。ただし、これに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0048】
除去手段120には、飽和水蒸気を発生させるための蒸発器121と、過熱水蒸気を発生させるための過熱器122と、チャック105の上方に設けられウェーハW(微細構造体1)の表面に向けて過熱蒸気を噴射するノズル123とが主に設けられている。また、ノズル123はアーム125に保持され、アーム125は回転軸126を回転中心に回転自在とされている。
【0049】
蒸発器121と、過熱器122と、ノズル123とは、配管124aで接続され、蒸発器121は配管124bにより図示しない純水供給手段と接続されている。そのため、図示しない純水供給手段から供給された純水を、蒸発器121により加熱して飽和水蒸気とすることができる。そして、飽和水蒸気を、過熱器122により過熱してミストのない乾いた水蒸気(過熱水蒸気)とすることができ、ノズル123からウェーハW(微細構造体1)に向けて過熱蒸気を噴射することができるようになっている。そのため、過熱蒸気によりウェーハW(微細構造体1)の表面を乾燥させるとともに、残留する界面活性剤を加熱分解除去することができるようになっている。
【0050】
チャンバー104は、ウェーハW(微細構造体1)が回転することで飛び散る液体や界面活性液を受け止めて、それらを排出することができる。チャンバー104の上部には、飛び散る液体や界面活性液を受け止めてチャンバー104内に導くための傾斜部104aが設けられている。また、チャンバー104の底部には、チャンバー104内に回収された液体や界面活性液を外部に排出するための排出管104bが接続されている。
【0051】
次に、微細構造体の製造システム100の作用について説明をする。
図示しない搬送手段によりウェーハW(微細構造体1)がチャンバー104内に搬入され、チャック105上に載置、保持される。チャック105は、駆動手段106により1分間に数百から数千回転の速さで回転することができる。そのため、チャック105に保持されているウェーハW(微細構造体1)もチャック105とともに回転させることができる。
【0052】
ウェーハW(微細構造体1)の上方に配設されたノズル107から液体が回転しているウェーハW(微細構造体1)の表面に供給される。洗浄に必要な所定量の液体を回転しているウェーハW(微細構造体1)の表面に供給した後に、液体の供給が停止される。
【0053】
その後、回転しているウェーハW(微細構造体1)の表面に界面活性液が供給される。この際、界面活性液の供給は、回転により液体がウェーハW(微細構造体1)の表面から除去される前、すなわち、ウェーハW(微細構造体1)の表面に液体が残留している間に行われる。尚、液体の供給停止の直前に、界面活性液の供給を始めるようにすることもできる。そして、所定量の界面活性液を回転しているウェーハW(微細構造体1)の表面に供給した後に、界面活性液の供給が停止される。
【0054】
その後、ウェーハW(微細構造体1)の上方に配設されたノズル123から過熱水蒸気が回転しているウェーハW(微細構造体1)の表面に供給される。そして、所定量の過熱水蒸気を回転しているウェーハW(微細構造体1)の表面に供給した後に、過熱水蒸気の供給が停止される。この際、ウェーハW(微細構造体1)を高速回転させ表面の水滴を振り切ることで乾燥時間を早めることもできる。
ウェーハW(微細構造体1)の乾燥と、残留する界面活性剤の加熱分解、除去が終了すると、チャック105の回転が停止され、図示しない搬送手段によりウェーハW(微細構造体1)が搬出される。その後、必要があれば前述の手順を繰り返すことで、ウェーハW(微細構造体1)の製造が行われる。
【0055】
図7は、本発明の第6の実施の形態に係る微細構造体の製造システムを例示するための模式図である。尚、図6において例示をしたものと同様の要素には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
図7に例示をする微細構造体の製造システムは、図7(a)の示す第1の製造システム130aと、図7(b)に示す第2の製造システム130bとを備えている。また、第1の製造システム130aと第2の製造システム130bとの間でウェーハW(微細構造体1)の受け渡しを行う図示しない搬送手段が備えられている。
第1の製造システム130aには、保持手段101と、洗浄手段102と、活性剤供給手段103とが主に備えられ、ウェーハW(微細構造体1)の洗浄と液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の供給が主に行われる。
第2の製造システム130bには、保持手段101と、除去手段120とが主に備えられ、ウェーハW(微細構造体1)の乾燥と残留する液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の加熱分解、除去が主に行われる。
【0057】
尚、図6に例示をした微細構造体の製造システム100の構成要素と、第1の製造システム130a、第2の製造システム130bの構成要素とは同様なので、作用に関する説明も省略する。
【0058】
本実施の形態においては、図6に例示をした微細構造体の製造システム100を、第1の製造システム130aと第2の製造システム130bとに分割するようにしている。このように、機能を分割するようにすれば、処理時間の長い工程を担当する製造システムの数を増やして待ち時間を減らし、生産性を向上させるようにすることができる。
尚、図6や図7において、除去手段120として過熱蒸気を用いるものを例示したが、これに限定されるわけではなく、例えば、オゾンガスを用いた処理、プラズマ処理やUV(紫外線)照射処理、加熱エアーなどによる加熱処理など液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の分解除去が可能な処理方法を適宜選択することができる。
【0059】
また、微細構造体の製造システムとして枚葉処理方式のものを例示したが、バッチ処理方式のものとしてもよい。例えば、複数の微細構造体を処理槽内で一度に洗浄、液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の供給、乾燥、残留する液体表面を活性化させる物質(例えば、界面活性剤)の除去を行うようにすることもできる。
【0060】
また、微細構造体の製造システムとして、微細構造体の表面に壁体を形成させるための装置を含めることができる。例えば、レジスト塗布・露光・現像・エッチング・レジスト除去などのいわゆるリソグラフィ工程で使用される各装置をラインに組み込むなどして微細構造体の製造システムを構成させるようにすることもできる。尚、リソグラフィ工程で使用される各装置については、既知の技術を適用することができるのでその説明は省略する。
【0061】
また、説明の便宜上、微細構造体をウェーハとして説明をしたが、これに限定されるわけではない。例えば、液晶表示装置、位相シフトマスク、MEMS分野におけるマイクロマシーン、精密光学部品などにも適応が可能である。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、微細構造体や微細構造体の製造システムの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
【図2】壁体間に残留する液体の表面張力の影響を例示するための模式断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る微細構造体の製造方法を例示するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る微細構造体の製造システムを例示するための模式図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態に係る微細構造体の製造システムを例示するための模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 微細構造体、1a 壁体、1b 壁体、2 液体、100 製造システム、101 保持手段、102 洗浄手段、103 活性剤供給手段、104 チャンバー、120 除去手段、130a 第1の製造システム、130b 第2の製造システム、F 作用力、F1 作用力、F2 作用力、W ウェーハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体が形成された微細構造体の表面を液体により処理し、前記液体の表面を活性化させる物質を前記微細構造体の表面に供給し、前記微細構造体の表面の乾燥を行うこと、を特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記微細構造体の表面に残留する前記前記物質の分解除去を行うこと、を特徴とする請求項1記載の微細構造体の製造方法。
【請求項3】
前記物質の供給を、前記微細構造体の表面に前記液体が残留している間に行うこと、を特徴とする請求項1または2に記載の微細構造体の製造方法。
【請求項4】
前記物質は、界面活性剤であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の微細構造体の製造方法。
【請求項5】
壁体が形成された微細構造体の表面を親水化処理し、前記表面を液体により処理し、前記表面の乾燥を行うこと、を特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項6】
壁体が形成された微細構造体の表面を液体により処理する処理手段と、
前記液体の表面を活性化させる物質を前記微細構造体の表面に供給する活性剤供給手段と、
前記微細構造体の表面の乾燥を行う乾燥手段と、
を備えたことを特徴とする微細構造体の製造システム。
【請求項7】
さらに、前記微細構造体の表面に残留する前記物質の分解除去を行う除去手段と、を備えたことを特徴とする請求項6記載の微細構造体の製造システム。
【請求項8】
前記物質は、界面活性剤であること、を特徴とする請求項6または7に記載の微細構造体の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−88253(P2009−88253A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256188(P2007−256188)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】