説明

応荷重弁及びブレーキ制御装置

【課題】フェールセーフ機能を確保しつつ、小型化を可能とする応荷重弁を提供する。
【解決手段】応荷重弁21は、満車相当の応荷重圧力に相当する圧力を出力可能な調圧弁50と、パイロット圧力センサ52bと、給排気が可能であり、前記調圧弁50から出力された圧力を、パイロット圧力センサ52bの検出値に基づいて給排気することによって調整して出力する電磁弁52と、電磁弁52から出力された圧力がパイロット圧力として入力される出力弁51と、を備える。出力弁51は、空車相当の応荷重圧力に相当する圧力を発生するための空車保証ばね51dを有し、空車保証ばね51dの付勢力による空車相当の応荷重圧力に相当する圧力とパイロット圧力とを合わせた圧力を、空気ばねの圧力を検出するセンサの検出値に応じた応荷重圧力として出力可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の応荷重弁及びブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力センサで取得した空気ばねの圧力に基づいて、給気用電磁弁及び排気用電磁弁を制御してパイロット圧力を生成し、このパイロット圧力に応じたブレーキ圧を出力する鉄道車両用のブレーキ制御装置が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献2に開示されているブレーキ制御装置では、電源フェール時であっても、過剰な圧力(空気源の圧力)がかからないように、車両荷重状態にしたがって、最大圧力設定になるように圧力制限弁(応荷重弁)が設けられている。具体的に、図13に示すように、この圧力制限弁は、入口ポートを有する第1室81と、出口ポートを有する第2室82と、第1室81と第2室82との間の通路を開閉する弁組立体83と、入口ポートから第1室81に流入した圧縮空気によって変位する第1ダイアフラムピストン84と、第2室82内に配設された第2ダイアフラムピストン85と、支点部材86に支持された状態で両ピストン84,85を連結する平衡ビーム87と、支点部材86を移動させるためのステッピングモータ88と、を有する。弁組立体83は、第1ダイアフラムピストン84のカートリッジ89内に収容された弁体90を有する。支点部材86を移動させることにより、第1室81内の圧力と第2室82内の圧力との比に応じて第1ダイアフラムピストン84と第2ダイアフラムピストン85のストローク比を調整でき、これにより、圧力設定を変更することができる。そして、出口ポートに現れる比例圧力を、電源フェール時に入口ポートに発生する圧力に関係なく、一定に維持することができる。
【特許文献1】実開平4−043562号公報
【特許文献2】特開平8−295236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されたブレーキ制御装置では、平衡ビーム87の支点位置に応じて圧力設定の変更を可能にする構成なので、電源フェール時にも車両荷重状態に応じた圧力を維持することができる。しかしながら、この構成では、平衡ビーム87及びステッピングモータ88が必要となるので、ブレーキ制御装置を小型化するには限界がある。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フェールセーフ機能を確保しつつ、小型化を可能とする応荷重弁及びそれを用いたブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、車両の空気ばねの圧力を検出するセンサの検出値に応じた応荷重圧力が出力される応荷重弁であって、空気源から供給される圧力が満車相当の前記応荷重圧力に相当する圧力に制限して出力される調圧弁と、前記調圧弁から出力された圧力が検出されるパイロット圧力センサと、給排気が可能であり、前記パイロット圧力センサの検出値に基づいて、前記調圧弁から出力された圧力が給排気によって調整されて出力される電磁弁と、前記電磁弁から出力された圧力がパイロット圧力として入力される出力弁と、を備え、前記出力弁は、空車相当の応荷重圧力を発生させるための空車保証ばねを有し、前記空車保証ばねの付勢力による空車相当の応荷重圧力と前記パイロット圧力とを合わせた圧力が、応荷重圧力として出力される応荷重弁である。
【0007】
本発明では、パイロット圧力センサによる検出圧力に応じて出力される電気信号に基づいて、電磁弁が給排気を行い、これによって出力弁へのパイロット圧力が調整される。そして、出力弁は、このパイロット圧力と空車保証ばねの付勢力による空車相当の応荷重圧力とを合わせた圧力を応荷重圧力として出力することができる。すなわち、応荷重圧力を得るための圧力調整を電気的な信号に基づいて行うことができるので、従来技術で必要となっていた平衡ビームやステッピングモータが不要となり、これにより応荷重弁を小型化することができる。しかも、出力弁の空車保証ばねによって空車相当圧力を確保しているので、仮に故障等によりパイロット圧力が消失したとしても、最低限度のブレーキ力を出力することができる(フェールセーフ)。したがって、最低限のフェールセーフ機能を確保しつつ、応荷重弁の小型化が可能である。
【0008】
ここで、前記電磁弁は、通電されていない状態のときに前記調圧弁と前記出力弁との間が遮断されるように構成されるのが好ましい。この態様では、電気的フェール時等のように電磁弁に通電されていない場合には、調圧弁と出力弁との間が遮断される。このため、電気的フェール時等でも、その直前までの出力弁内の圧力が維持されるので、応荷重圧力を維持させることができる。
【0009】
また、前記調圧弁と前記出力弁は、ブロック内に一体的に設けられているのが好ましい。この態様では、管座への取り付けを容易に行うことができる。
【0010】
本発明は、前記応荷重弁と、前記応荷重圧力が入力されるように構成された電磁弁の給排気によって生成された制御圧に基づいて、ブレーキシリンダが駆動されるブレーキ圧が出力される中継弁と、を備えているブレーキ制御装置である。
【0011】
本発明では、応荷重弁の小型化により、それに応じてブレーキ制御装置を小型化することができる。
【0012】
前記ブレーキ制御装置において、前記応荷重弁及び前記中継弁を収容可能な収容空間とこの空間に臨む開口とを有するケース本体と、前記開口を開閉可能な蓋体と、前記蓋体と対向する面に設けられた管座と、を備え、前記応荷重弁は、管座に取り付け可能な背面を有し、前記調圧弁は、その出力される圧力が満車相当の前記応荷重圧力に相当する圧力に制限するための満車保証ばねと、この満車保証ばねの付勢力を調整するための満車圧力調整ねじとを有し、前記出力弁は、前記空車保証ばねの付勢力を調整するための空車圧力調整ねじを有し、前記満車圧力調整ねじ及び前記空車圧力調整ねじは、前記背面と反対側の前面に配設されているのが好ましい。
【0013】
この態様では、満車圧力調整ねじ及び空車圧力調整ねじが蓋体のある前面側に配置されるので、圧力調整作業を容易に行うことができ、しかも、ブレーキ制御装置内において、圧力調整作業を行うための空間を確保する必要がなくなるので、ブレーキ制御装置の更なる小型化に寄与する。
【0014】
前記ブレーキ制御装置において、前記応荷重弁及び前記中継弁を制御可能な制御基板を備える場合には、前記制御基板は、前記中継弁及び前記応荷重弁の手前に配設されているのが好ましい。
【0015】
この態様では、制御基板が中継弁及び応荷重弁の手前に配設されているので、その分だけブレーキ制御装置の横幅及び上下幅を小さくすることができる。
【0016】
この態様において、前記応荷重弁及び前記中継弁を収容可能な収容空間とこの空間に臨む開口とを有するケース本体と、前記開口を開閉可能な蓋体と、を備え、前記制御基板は、前記蓋体の裏側に配設されているのが好ましい。
【0017】
この態様では、応荷重弁及び中継弁の手前に配設されている制御基板を取り外さなくても、蓋体による収容空間の開放によって応荷重弁及び中継弁を露出することができる。このため、応荷重弁及び中継弁のメンテナンス作業が煩雑になることを防止することができる。
【0018】
また、前記蓋体は、左右に開くようにヒンジ部を介して前記ケース本体に結合されており、前記中継弁は、互いに横に並ぶように2つ設けられ、前記応荷重弁は、前記2つの中継弁のうち、前記ヒンジ部とは反対側の前記中継弁の上側又は下側の空間に配設され、前記ヒンジ部側に前記応荷重弁と中継弁とによって形成される空間に、電気配線を入線させる入線部が面しているのが好ましい。
【0019】
この態様では、応荷重弁と中継弁とによって形成される空間に電気配線が収納可能となるため、電気配線を収納するための空間を別途設ける必要がなくなる。このため、ブレーキ制御装置の小型化を図る上で、有効なものとなる。しかも、この収納場所がヒンジ側となっているので、蓋体が開き戸として構成されていても、配線が蓋体の開閉によって悪影響を受けることを防止することができる。
【0020】
また、前記蓋体の前記制御基板に対して前記ケース本体に面する側には、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のカバーが設けられているのが好ましい。
【0021】
この態様では、中継弁又は応荷重弁の取り付け作業又は取り外し作業の際に、工具が制御基板に直接触れることを防止することができる。このため、制御基板に配設されている素子を破損したり、作業者が感電したりすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、フェールセーフ機能を確保しつつ、応荷重弁を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るブレーキ制御装置10は、矩形箱体状に形成されたケーシング11を備えており、ケーシング11の内部は、後述の応荷重弁21、中継弁22,22、制御基板23等を収容可能な収容空間として形成されている。ケーシング11は、前面側が開口したケース本体12と、このケース本体12の開口を開閉可能な蓋体13とを有する。
【0025】
ケース本体12の一側面である後面(背面)は、管座14によって構成されており、この管座14が配設された後面と反対側の前面(他側面)が前記開口として形成されている。管座14は、ケーシング11の外部から導入される元圧等の配管と、ケーシング11内部に配設された応荷重弁21、中継弁22,22等とを接続する空気通路等が内部に形成された板状の部材である。
【0026】
ケーシング11には、車両の台車(図示省略)に取り付け可能な取付台座16が設けられている。図3(a)(b)に示すように、取付台座16は、ケーシング11の左右両側に設けられ、車両の台車に結合される一対の懸架部16a,16aと、これら懸架部16a,16a間に架設される台座部16bとを有する。懸架部16a,16aは、その上端部が前後方向に長くなっており、台座部16bの固定位置から前方へ張り出す形状となっている。これにより、取付台座16がケーシング11の後面側に固定されるとしても、安定してケーシング11を保持することができる。台座部16bは、横長の直方体形状に形成されており、管座14の後面側に重ね合わされる。
【0027】
なお、本明細書において、前側とは、ケース本体12の開口が向いている側、すなわちメンテナンス時に作業者と向かい合う側を意味し、後側とは、その反対側、すなわちケース本体12の管座14側を意味している。したがって、この前側及び後側は、車両の前後方向とは無関係である。そして、左右とは、前側から見て左右という意味である。
【0028】
台座部16bは、突起状の凸部である第1係合部17aを有する。本実施形態では、第1係合部17aが2つ設けられている。第1係合部17aは、台座部16bから前面側に水平方向に延びるように台座部16bに固定されており、管座14の前後方向の厚み以上の突出長さを有している。
【0029】
管座14は、第1係合部17aと係合可能な第2係合部17bを有する。第2係合部17bは、第1係合部17aが挿通可能な貫通孔によって構成されている。第1係合部17aは、第2係合部17bに挿通された状態で管座14を貫通しており、先端部が管座14の前面から突出している(図1参照)。この状態で、第1係合部17aと第2係合部17bとが互いに係合し、管座14は、取付台座16によって支持された状態で保持されている。したがって、ブレーキ制御装置10を車両の台車に取り付ける際には、まず取付台座16を台車に固定し、取付台座16の第1係合部17aが、ケーシング11の管座14に形成された貫通孔である第2係合部17bに挿通されるようにケーシング11を取付台座16に仮保持させる。そして、この状態でケーシング11を取付台座16に締結する作業を行い、その後、部品等の取り付け作業を行うことができるので、このブレーキ制御装置10の台車への取付作業は、1人で行うことができる。なお、第1係合部17aの根元には図略のパッキンが設けられており、ブレーキ制御装置10が固定された状態で、気密が保たれるようになっている。また、ブレーキ制御装置10の台車からの取外作業は逆の手順で行うことができる。
【0030】
図1に示すように、ケーシング11の収納空間内には、少なくとも応荷重弁21と中継弁22とが配設されている。中継弁22は互いに横に並ぶように2つ設けられている。そして、応荷重弁21は、前面から見て左側の中継弁22の上側に配設されており、右側の中継弁22の上側には、本実施例の場合、応荷重弁21の大きさに相当する空間が形成されている。この空間(前面から見て応荷重弁21の右側の空間)は、ケーシング11内に入線された電気配線の収容部となっている。電気配線は、ケース本体12において前面から見て右側の側壁に設けられた入線部25からケーシング11内に導入されている。また、この空間には、圧力センサユニット26が配設されている。圧力センサユニット26には、車両の荷重を受ける空気ばね(図示省略)の圧力を検出する圧力センサAS(図7参照)等が含まれている。更に中継弁22の下方には、ヒータ24が設けられている。
【0031】
ケーシング11の蓋体13は、開き戸として構成されている。すなわち、蓋体13は、図4(a)(b)に示すヒンジ部28を介してケース本体12に対して結合されており、このヒンジ部28を回動軸として回動可能となっている。ヒンジ部28は、前面から見てケーシング11の右側に設けられている。したがって、入線部25は、ケース本体12におけるヒンジ部28側の側壁に設けられており、電気配線の収容部に面している。このため、電気配線が蓋体13の開閉によって引っ張られる等の影響を受け難くなっている。なお、ケーシング11の左側にヒンジ部28及び入線部25が設けられ、応荷重弁21が右側の中継弁22の上側に配設される構成としてもよい。
【0032】
ヒンジ部28は、図4(a)(b)に示すように、ケース本体12に結合される本体側部28aと、蓋体13に結合される蓋側部28bとを有する。蓋側部28bは、本体側部28aに対して回動可能であるとともに、本体側部28aから分離可能でもある。すなわち、本体側部28aには、ピン状の支軸部28cが設けられる一方、蓋側部28bには、支軸部28cが挿入可能な筒状部28dが設けられている。そして、蓋側部28bの筒状部28dが支軸部28cに外嵌されるとともに本体側部28aの上に載置され、この状態で、蓋側部28bが本体側部28aに対して回動可能となっている。そして、蓋側部28bを上に向けて移動させることにより、蓋側部28bが本体側部28aから分離される。したがって、蓋体13は、開いているときにケース本体12から容易に分離可能となっている。なお、この構成に代え、蓋側部28bに支軸部28cが設けられるとともに、本体側部28aに筒状部28dが設けられる構成としてもよい。
【0033】
図5に示すように、蓋体13には、ヒンジ部28とは反対側に留め金29が設けられている。留め金29は、ケース本体12に設けられたロック金具30の引っ掛け部31aを留めるためのものである。ロック金具30は、引っ掛け部31aを有するレバー状の可動部31と、この可動部31の上下両側に設けられた一対の挿通部32a,32aを有し、ケース本体12に固定された固定部材32と、一対の挿通部32a,32aに挿通されて、可動部31を押え付けるロック部材33と、を有する。可動部31は、パチン錠によって構成されており、引っ掛け部31aが留め金29に係合する係合位置と、引っ掛け部31aが留め金29から外れる解錠位置との二位置を取り得る。ロック部材33は、可動部31が係合位置にある状態で、一対の挿通部32a,32aに挿通される。ロック部材33は、線材をU字状に折り曲げた構成のものであり、両側から押え付けることで弾性的に撓み、この状態で挿通部32に挿入し、その後は、自身の弾性力で挿通部32a,32aに係合した状態となっている。ロック部材33を挿通部32a,32aに挿通した状態で可動部31を押え付けておくことにより、可動部31が係合状態に確実に維持され、意図しない蓋体13の開き動作を防止することができる。
【0034】
図2に示すように、蓋体13は、前面部、上面部、下面部及び左右の側面部を有し、前後方向に所定の深さを有している。そして、上面部、下面部及び左右の側面部の後端部が内側に折り曲げられて、蓋体13の後面部が形成されている。蓋体13の後面部は、大きな開口の周縁部を構成する。
【0035】
蓋体13の前面部における裏面には、取付金具35が固定されていて、この取付金具35に制御基板23が取り付けられている。すなわち、制御基板23は、蓋体13の裏側に配設されている。つまり、制御基板23は、応荷重弁21及び中継弁22,22に対して管座14と反対側に位置している。制御基板23は、中継弁22,22及び応荷重弁21の手前(前側)に位置しているが、蓋体13を開動作することにより、制御基板23も一体となって移動するため、蓋体13の開動作に伴って応荷重弁21及び中継弁22,22は露出することになる。制御基板23は、応荷重弁21、中継弁22,22の電磁弁等を制御可能な電子回路基板である。
【0036】
蓋体13には、浸水防止部37が設けられている。浸水防止部37は、蓋体13の後面部における開口縁部に設けられている。浸水防止部37は、開口縁部を外側に折り曲げることにより傾斜状に形成されており、開口の全周に亘っている。浸水防止部37は、上側の部位においては後方に向かうほど上側となる傾斜状となっているので、ケース本体12と蓋体12との間に浸入した水滴は、左右の浸水防止部37を伝って流れ落ちる。このため、ケース本体12と蓋体13との間を通してケース本体12内へ浸水することを防止可能となっている。浸水防止部37の後端部は、ケース本体12における開口周縁に設けられたパッキン38に当接している。
【0037】
図6に示すように、制御基板23のケース本体12に面する側には、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のカバー40が設けられている。このカバー40は、メンテナンス時等のように、蓋体13を開けて作業するときに工具等によって制御基板23を傷めないようにするためのものである。カバー40は、制御基板23の大部分を覆っているが、適所に切欠き部40aが形成されている。この切欠き部40aを通して制御基板23の中の必要な部分を目視できるようになっている。この部分の制御基板23には、例えば、応荷重弁21及び中継弁22,22の制御状況を表示可能な表示器41、例えば、LED(発光ダイオード)やLCD(液晶ディスプレイ)が取り付けられている。したがって、蓋体13によってケース本体12の開口を開放した状態で表示器41を視認可能となっている。また、切欠き部40aは、コネクタ端子42が設けられている部分にも形成されている。なお、カバー40をパンチングメタルによって構成することで、放熱性を確保するようにしてもよい。また、制御基板23の表示器41に加え、後述の電磁弁にも表示器(図示省略)を設けるようにしてもよい。この場合には、両表示器41で制御基板23及び電磁弁の動作状況を確認しながらメンテナンス作業をすることができる。
【0038】
制御基板23には、応荷重弁21又は中継弁22,22の電磁弁やセンサに接続された信号線を制御基板23に対して着脱可能にするコネクタ43が設けられている。このため、蓋体13をケース本体12から取り外したときに、制御基板23を信号線から分離でき、蓋体13のみを別の場所に移動させることができるので、制御基板23を含む電気系統のメンテナンスをする場合に便利である。なお、コネクタ43は、主にケーシング11のヒンジ部28側に配設されている。
【0039】
ここで、図7を参照しつつ、本実施形態に係るブレーキ制御装置10の圧力制御系統について説明する。図7は、ブレーキ制御装置10に設けられた圧縮空気回路47を示している。圧縮空気回路47は、圧縮空気の供給元である空気源(図示省略)から得られた空気圧力を調整した上で図外のブレーキシリンダに付与するための空気回路であり、応荷重圧力VLを生成する応荷重圧力生成部47a(図8参照)と、応荷重圧力VLに基づいてブレーキ圧力BCを生成するブレーキ圧力生成部47b(図10参照)とを有する。
【0040】
応荷重圧力生成部47aは、応荷重弁21の構成要素となっている。応荷重弁21は、調圧弁50と、出力弁51と、電磁弁52とを有している。図9に示すように、調圧弁50、出力弁51及びこれらを繋ぐ管路は、応荷重弁ブロック53の中に一体的に設けられている。
【0041】
調圧弁50は、空気源から供給される元圧SRを満車相当の応荷重圧力に相当する圧力に制限するための弁である。満車相当の応荷重圧力とは、車両が満員の場合において、非常ブレーキを作用させる際にブレーキシリンダに付与されるべき圧力に相当する圧力を意味している。
【0042】
調圧弁50は、入力ポートを有する入力室50aと、出力ポートを有する出力室50bと、ピストン50cと、満車相当の応荷重圧力に相当する圧力に制限するための満車保証ばね50dを有する調圧室50eと、満車保証ばね50dの付勢力を調整するための満車圧力調整ねじ50fと、を有する。入力室50aには、入力ポートを通して元圧SRが入力される。
【0043】
ピストン50cは、満車保証ばね50dによる押圧力と出力室50b内の空気圧力との差圧によって、入力室50aと出力室50bとの仕切りに形成された開口の開口量を調整し、差圧が無くなるとこの開口を閉じる。開口が開くことによって、入力室50aの圧縮空気が出力室50bに流入し、出力室50b内の圧力が満車相当の応荷重圧力に相当する圧力に調整され、この圧力が出力ポートを通して出力される。
【0044】
満車圧力調整ねじ50fは、応荷重弁21における前面側に配置されており、ブロック53の前面壁を貫通している。満車圧力調整ねじ50fの内端部は円錐状になっており、調圧室50e内で、押え部材50gを介して満車保証ばね50dの一端部を押圧している。
【0045】
そして押え部材50gの満車圧力調整ねじ50fと接する部分は、円錐状の凹部になっている。更に満車保証ばね50dの他端には、押え部材50hが設けられており、押え部材50hの満車保証ばね50dとは反対側の面には円錐状の凹部が設けられている。一方、先端が円錐状になっている受け部材50iが、ピストン50cに取り付けられている。受け部材50iの先端が押え部材50hの凹部と接しており、ピストン50cと押え部材50hとの間にわずかな隙間が存在している。したがって押え部材50hは、受け部材50iの先端を中心として揺動可能となっている。
【0046】
このように構成されているので、ばね50dの付勢力がピストン50cに対して偏心していても、ピストン50cを傾ける方向の力が働かないので、シール等の寿命を延ばすことができる。更に満車圧力調整ねじ50fの操作時に満車保証ばね50dの位置がずれることもない。
【0047】
さて、この調整ねじ50fのねじ込み量を調整することにより、満車相当の応荷重圧力に相当する圧力を調整することができる。この調整は、原則として、車両製造時に行われるが、応荷重弁21の交換後や分解メンテナンス完了後にも行われる。
【0048】
電磁弁52は、給気部AVと排気部RVと接続路52aとを有し、調圧弁50から出力された圧力を、乗客が乗っている現在の車両荷重に応じて調整する。電磁弁52の給気部AV及び排気部RVは、応荷重弁ブロック53にその前面側から取り付けられている(図1参照)。給気部AVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、調圧弁50の出力ポートに繋がる入口ポートINと、接続路52aが接続された出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。排気部RVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、接続路52aに繋がる入口ポートINと、出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。電磁弁52は、制御信号に基づいて、給気部AV及び排気部RVの弁位置を制御することにより、調圧弁50から出力された圧力を調整する。電磁弁52によって調整された圧力HVLは、パイロット圧力として出力弁51に入力される。制御信号は、制御基板23に実装されているマイコン回路からなる制御回路から電磁弁52に送信される信号であり、車両の荷重を受ける図外の空気ばねの圧力を検出する圧力センサASからの信号に応じて、また、接続路52aに設けられたパイロット圧力センサ52bの検出値に応じて、応荷重圧力VLが生成されるように出力される。
【0049】
給気部AV及び排気部RVは、通電されていない状態のときに図8の状態となっている。すなわち、この状態では、調圧弁50と出力弁51との間が遮断され、かつ排気部RVの入口ポートINが閉じられている。このため、停電時等のように電気的フェール時の場合であって、電磁弁52に制御信号が入力できない場合でも、その直前まで設定されていた圧力HVLが維持されるため、出力弁51の調圧室51eでの圧力が確保されることとなる。
【0050】
出力弁51は、電磁弁52によって調整された圧力HVLをパイロット圧力として、元圧SRを乗客が乗っている現在の車両荷重に応じた応荷重圧力VLに調整して、応荷重弁21から出力する。出力弁51は、元圧SRが入力される入力ポートを有する入力室51aと、出力ポートを有する出力室51bと、ピストン51cと、調圧ポートを有する調圧室51eと、を有する。調圧ポートには、圧力HVLがパイロット圧力として入力される。調圧室51e内には、空車相当の応荷重圧力を発生させるための空車保証ばね51dが配設されている。空車相当の応荷重圧力とは、車両が空車の場合において、非常ブレーキを作用させる際にブレーキシリンダに付与されるべき圧力に相当する圧力を意味している。
【0051】
出力弁51には、空車相当の応荷重圧力に相当する圧力を発生させる空車保証ばね51dが設けられているので、仮に故障等によりパイロット圧力が消失したとしても、空車保証ばね51dによって少なくとも空車相当の応荷重圧力に相当する圧力が確保されることになる。つまり、調圧弁50から給気がされない状態になったとしても、空車保証ばね51dの付勢力で入力室51aと出力室51bとの間の開口が開放可能となっているため、出力室51b内は空車保証ばね51dの付勢力による圧力相当の圧力に維持される。
【0052】
ピストン51cは、空車保証ばね51dによる付勢力による圧力及び調圧室50e内の空気圧力の合計圧力と、出力室51b内の空気圧力との差圧によって、入力室51aと出力室51bとの仕切りに形成された開口の開口量を調整し、差圧が無くなるとこの開口を閉じる。開口が開くことによって、入力室51aの圧縮空気が出力室51bに流入し、出力室51b内の圧力が応荷重圧力VLに調整される。
【0053】
出力弁51には、空車保証ばね51dの付勢力による圧力を調整するための空車圧力調整ねじ51fが設けられている。空車圧力調整ねじ51fは、応荷重弁21における前面側に配置されており、ブロック53の前面壁を貫通している。空車圧力調整ねじ51fの内端部は調圧室51e内にあり、押え部材51gを介して空車保証ばね51dの一端部を押圧している。
【0054】
そして押え部材51gの空車圧力調整ねじ51fと接する部分は、円錐状の凹部になっている。更に空車保証ばね51dの他端には、押え部材51hが設けられており、押え部材51hの空車保証ばね51dとは反対側の面には円錐状の凹部が設けられている。一方、先端が円錐状になっている受け部材51iが、ピストン51cに取り付けられている。受け部材51iの先端が押え部材51hの凹部と接しており、ピストン51cと押え部材51hとの間にわずかな隙間が存在している。したがって押え部材51hは、受け部材51iの先端を中心として揺動可能となっている。
【0055】
このように構成されているので、ばね51dの付勢力がピストン51cに対して偏心していても、ピストン51cを傾ける方向の力が働かないので、シール等の寿命を延ばすことができる。更に空車圧力調整ねじ51fの操作時に空車保証ばね51dの位置がずれることもない。なお、押え部材51gにはシールが設けられているので、調圧室51e内の気密は確保されている。
【0056】
さて、この調整ねじ51fのねじ込み量を調整することにより、空車相当の応荷重圧力に相当する圧力を調整することができる。この調整は、原則として、車両製造時に行われるが、応荷重弁21の交換後や分解メンテナンス完了後にも行われる。
【0057】
図7に戻る。
【0058】
前記ブレーキ圧力生成部47bは、中継弁22の構成要素となっている。本実施形態では中継弁22が2つ設けられているので、ブレーキ圧力生成部も2つ形成されている。中継弁22は、中継弁部56と供給カット弁57と排気弁58と電磁弁59と開放用電磁弁60とを有する。
【0059】
図10に示すように、電磁弁59は、給気部AVと排気部RVと接続路59aとを有する。給気部AV及び排気部RVは、中継弁ブロック61にその前面側から取り付けられている(図1参照)。給気部AVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、応荷重圧力VLが入力される入口ポートINと、接続路59aが接続された出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。排気部RVは、2位置3ポートの切換弁によって構成されており、接続路59aに繋がる入口ポートINと、出口ポートOUTと、排出ポートEXとを有する。
【0060】
電磁弁59には、制御基板23に実装されているマイコン回路からなる制御回路から出力された制御信号が入力される。制御信号は、車両側からブレーキ制御装置10に送られる常用ブレーキ指令に応じた信号と、接続路59aに設けられたパイロット圧力センサ63による検出値に基づく信号と、後述のブレーキ圧力センサ64による検出値に基づく信号と、図外の車輪滑走検知部から出力された信号に応じた信号と、に基づいて生成される。なお、車輪滑走検知部は、車輪の回転速度、車速等から車輪の滑走を検知するものである。
【0061】
制御回路は、常用ブレーキ指令を受信すると、それに応じて中継弁部56から出力されるべきブレーキ圧力BCを設定し、制御信号を電磁弁59へ送信する。そして、電磁弁59は、制御信号に応じて給気部AV及び排気部RVの弁位置を調整することにより、応荷重弁21から出力された応荷重圧力VLを調整し、接続路59aを通して中継弁部56に入力させる。また、コントローラは、パイロット圧力センサ63の検出値及びブレーキ圧力センサ64の検出値に応じて、給気部AV及び排気部RVの弁位置を調整する。
【0062】
また、制御回路は、車輪滑走検知部からの信号を受信すると、それに応じて、中継弁部56から出力されるべきブレーキ圧力BCを修正する。このとき、制御回路は、車輪滑走検知部からの車輪の滑走を示す信号が受信されなくなるまで、ブレーキ圧力BCを緩める。このとき、ブレーキ圧力BCは段階的に緩めるようにしてもよい。
【0063】
図11に示すように、中継弁部56と供給カット弁57と排気弁58とこれらを繋ぐ管路とは、中継弁ブロック61の中に一体的に設けられている。中継弁部56は、電磁弁59によって調整された圧力がパイロット圧力として入力され、ブレーキ圧力BCを出力する。具体的に、中継弁部56は、入力ポートを有する入力室56aと、出力ポートを有する出力室56bと、パイロットポートを有する制御室56cと、排出ポートを有する排出室56dと、中空のピストン56eと、膜板56fと、ばね56gと、弁体56hと、ばね56iとを有する。
【0064】
入力室56aには、供給カット弁57を介して供給された元圧SRが入力ポートを通して入力される。パイロットポートは、電磁弁59の接続路59aに接続されており、制御室56cには、パイロットポートを通してパイロット圧力が入力される。出力室56bは、パイロット圧力に応じたブレーキ圧力を生じさせ、出力ポートを通して出力する。排出室56dは、排出ポートを通して余剰圧力を排気する。排出ポートに繋がる排出管路66には、消音器67が設けられている。
【0065】
膜板56fは、制御室56c内の空気圧力と出力室56b内の空気圧力との差圧によって撓み、ばね56gの付勢力に抗しながらピストン56eを変位させる。ピストン56eが上方に変位する場合は、弁体56hがばね56iの付勢力に抗しながら、上方に移動させられ、入力室56aと出力室56bが連通状態となる。そして差圧が無くなるとピストン56eは下方に変位し、弁体56hはばね56iによって移動させられ、入力室56aと出力室56bは非連通状態となる。逆にピストン56eが下方に変位する場合は、ピストン56eの中空部を介して出力室56bと排出室56dが連通状態となる。そして差圧が無くなるとピストン56eは上方に変位し、出力室56bと排出室56dは非連通状態となる。
【0066】
すなわち、入力室56aの圧縮空気が出力室56bに流入したり、出力室56bの圧縮空気が排出室56dに排出されることにより、出力室56b内の圧力がパイロット圧力に応じたブレーキ圧力に調整される。
【0067】
なお、出力室56bの過渡的な変化にピストン56eが過敏に反応し過ぎるのを防ぐために、ばね室56jと出力室56bとは絞り56kを介して連通している。
【0068】
開放用電磁弁60は、2位置3ポート切換弁によって構成されており、入口ポートIN、出口ポートOUT及び排出ポートEXを有する。開放用電磁弁60は、第1状態と第2態とに切り換え可能である。第1状態では、図10に示すように、入口ポートINが遮断されるとともに、出口ポートOUTと排出ポートEXとが連通されている。排出ポートEXは、ブレーキ制御装置10の排気口に繋がっている。このため、第1状態では、ばね室57fのばね力によって図10の状態となっている。第2状態には、運転席からの強制緩解指令に基づいて切り換えられ、この第2状態では、入口ポートINに入力された元圧SRが出口ポートOUTから出力される。開放用電磁弁60は、通常第1状態にあるが、制御基板23によって実装されているマイコン回路からなる制御回路に強制緩解指令が入力されると、これを受けて、開放用電磁弁60は第2状態に切り換えられる。なお、強制緩解指令は、車輪の不緩解状態が検出されたときに、運転席から運転手等の操作によりブレーキ制御装置10へ送られる信号である。
【0069】
図12に示すように、供給カット弁57及び排気弁58は、それぞれ前後方向に直交する方向(左右方向)に細長い形状を有する。そして、左右方向に見たときに、供給カット弁57及び排気弁58は、少なくともその一部が、中継弁部56の膜板56fからみて弁体56h側であり、かつ管座14と弁体56hとの間であって、膜板56fの径方向内側の範囲内に入り込んでいる(図11参照)。また、供給カット弁57は排気弁58より大きいため、中継弁部56の膜板56fからみてより弁体56hに近い側に配置されている(図11参照)。
【0070】
供給カット弁57は、入口ポート57aと出口ポート57bと制御ポート57cとピストン57dとを有する。供給カット弁57内の空間は、ピストン57dによって、制御室57eと、ばね室57fと、第1室57gと、第2室57hとに仕切られている。制御室57eには制御ポート57cが設けられている。制御ポート57cは、開放用電磁弁60の出口ポート57bに連通されていて、開放用電磁弁60の状態に応じてピストン57dを第1位置と第2位置との間で変位させる。そして、開放用電磁弁60が第1状態にある場合には、ピストン57dは、入口ポート57aと出口ポート57bとがばね室57fに開口する第1位置となり、第2状態にある場合には、入口ポート57aが第1室57gに開口する一方、出口ポート57bが第2室57hに開口する第2位置となる。したがって、供給カット弁57は、開放用電磁弁60が第1状態にある場合に、元圧SRを中継弁部56の入力室56aに入力する一方、開放用電磁弁60が第2状態に切り換えられることに伴って、中継弁部56に入力される元圧SRを遮断する。
【0071】
排気弁58は、入口ポート58aと出口ポート58bと制御ポート58cと排気ポート58eとピストン58dとを有する。排気弁58内の空間は、ピストン58dによって、制御室58fと、ばね室58gと、切換室58hとに仕切られている。入口ポート58aは、中継弁部56の出力ポートに接続されている。出口ポート58bは、図外のブレーキシリンダに接続されていて、出口ポート58bから出力される圧力はブレーキ圧力BCとなる。出口ポート58bからブレーキシリンダに繋がる管路には、ブレーキ圧力センサ64が設けられている。排気ポート58eは、排出管路66に接続されている。制御室58fには制御ポート58cが設けられている。制御ポート58cは、開放用電磁弁60の出口ポートOUTに連通されていて、開放用電磁弁60の状態に応じてピストン58dを第1位置と第2位置との間で変位させる。そして、開放用電磁弁60が第1状態にある場合には、ピストン58dは、入口ポート58aと出口ポート58bとが切換室58hに開口するとともに、排気ポート58eがばね室58gに開口する第1位置となり、開放用電磁弁60が第2状態にある場合には、ピストン58dは、入口ポート58aと出口ポート58bと排気ポート58eとが何れもばね室58gに開口する第2位置となる。したがって、排気弁58は、開放用電磁弁60が第1状態にある場合に、出口ポート58bからブレーキ圧力BCを出力する一方、開放用電磁弁60が第2状態に切り換えられることに伴って、排気ポート58eを通してブレーキ圧力BCを排気する。
【0072】
なお、図7、図10の排気弁58は、図12に示されている排気弁58の構成と若干異なるところがあるが、これは表記を簡略化するためであり、機能的には図12に示した排気弁58と等価な構成となっている。
【0073】
応荷重弁21、中継弁22,22に設けられている各電磁弁52,59,60及び各センサ52b,63,64には、信号線を接続するためのコネクタ69(図1参照)が設けられているが、これらコネクタ69は、いずれも、前側を向いた姿勢で応荷重弁21等の前面側に配置されている。
【0074】
次に、本実施形態に係るブレーキ制御装置10の動作制御について説明する。
【0075】
マイコン回路からなる制御回路(制御基板23)が常用ブレーキ指令を受信すると、制御回路はそれに応じて、圧力HVL、応荷重圧力VL、ブレーキ圧力を設定し、応荷重弁21の電磁弁52及び中継弁22,22の電磁弁59,59に制御信号を送信する。
【0076】
応荷重弁21では、調圧弁50から満車相当圧力が出力されており、電磁弁52の給気部AV及び排気部RVがパイロット信号に応じて動作することにより、出力弁51に圧力HVLが入力される。応荷重弁21の出力弁51では、圧力HVLをパイロット圧力としてピストン51cを変位させ、応荷重圧力VLを出力する。
【0077】
この応荷重圧力VLは、応荷重弁21から出力されて中継弁22,22に入力される。中継弁22,22では、制御信号に応じて電磁弁59の給気部AV及び排気部RVの弁位置が調整され、これにより、応荷重圧力VLが所定の圧力に調整される。この圧力は接続路59aを通して中継弁部56にパイロット圧力として入力される。中継弁部56では、このパイロット圧力に応じてピストン56eが変位し、出力ポートからブレーキ圧力BCを出力する。このとき、パイロット圧力センサ63の検出値及びブレーキ圧力センサ64の検出値に応じて、給気部AV及び排気部RVの弁位置が調整される。
【0078】
また、制御回路が車輪滑走検知部(図示省略)からの信号を受信すると、それに応じて、制御回路は、中継弁部56から出力されるべきブレーキ圧力BCを修正する。このとき、制御回路は、車輪滑走検知部からの車輪の滑走を示す信号が受信されなくなるまで、ブレーキ圧力BCを緩める。このとき、ブレーキ圧力BCは段階的に緩めるようにしてもよい。なお、滑走検知は、車両の速度と車輪の回転速度から算出される速度との不一致によって検知される。
【0079】
中継弁22の開放用電磁弁60は、通常第1状態にあるが、運転席から制御回路に強制緩解指令が入力されると、これを受けて、開放用電磁弁60は第2状態に切り換えられる。これにより、排気弁58を通してブレーキ圧力BCが排気され、不緩解が解除される。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の応荷重弁21では、パイロット圧力センサ52bによる検出圧力に応じて出力される制御信号に基づいて、電磁弁52が給排気を行い、これによって出力弁51へのパイロット圧力HVLが調整される。そして、出力弁51は、このパイロット圧力HVLと空車保証ばね51dの付勢力による空車相当の応荷重圧力に相当する圧力とを合わせた圧力を応荷重圧力VLとして出力することができる。すなわち、応荷重圧力VLを得るための圧力調整を電気的な信号に基づいて行うことができるので、従来技術で必要となっていた平衡ビームやステッピングモータが不要となり、これにより応荷重弁21を小型化することができる。しかも、出力弁51の空車保証ばね51dによって空車相当の応荷重圧力に相当する圧力を確保しているので、仮に故障等によりパイロット圧力が消失したとしても、最低限度のブレーキ力を出力することができる(フェールセーフ)。したがって、最低限のフェールセーフ機能を確保しつつ、応荷重弁21の小型化が可能である。
【0081】
さらに本実施形態の応荷重弁21では、電磁弁52に通電されていない場合には、調圧弁50と出力弁51との間が遮断されているので、電気的フェール時等でも、その直前までの出力弁51内の圧力が維持される。したがって、電気的フェール時においても、その直前まで出力していた応荷重圧力VLを維持させることができ、電気的フェール時に急激にブレーキ力が変化することがない。
【0082】
また本実施形態の応荷重弁21では、調圧弁50と出力弁51が応荷重弁ブロック53内に一体的に設けられているので、管座14への取り付けを容易に行うことができる。
【0083】
また本実施形態のブレーキ制御装置10では、応荷重弁21の小型化により、それに応じてブレーキ制御装置10を小型化することができる。
【0084】
また本実施形態のブレーキ制御装置10では、応荷重弁21の満車圧力調整ねじ50f及び空車圧力調整ねじ51fが前面側に配置されるので、圧力調整作業を容易に行うことができ、しかも、ブレーキ制御装置10内において、圧力調整作業を行うための空間を確保する必要がなくなるので、ブレーキ制御装置10の更なる小型化に寄与する。
【0085】
また本実施形態のブレーキ制御装置10では、制御基板23が中継弁22,22及び応荷重弁21の手前に配設されているので、その分だけブレーキ制御装置10の横幅及び上下幅を小さくすることができる。
【0086】
さらに、制御基板23が蓋体13の裏側に配設されているので、応荷重弁21及び中継弁22,22の手前に配設されている制御基板23を取り外さなくても、蓋体13による収容空間の開放によって応荷重弁21及び中継弁22,22を露出することができる。このため、応荷重弁21及び中継弁22,22のメンテナンス作業が煩雑になることを防止することができる。
【0087】
また本実施形態では、ケーシング11内において、応荷重弁21と中継弁22,22とによって形成される空間に電気配線を収納できるため、電気配線を収納するための空間を別途設ける必要がない。このため、ブレーキ制御装置10の小型化を図る上で、有効である。しかも、この収納場所がケーシング11のヒンジ側となっているので、蓋体13が開き戸として構成されていても、配線が蓋体13の開閉によって悪影響を受けることを防止することができる。
【0088】
また本実施形態では、制御基板23にカバー40が設けられているので、中継弁22,22又は応荷重弁21の取り付け作業又は取り外し作業の際に、工具が制御基板23に直接触れることを防止することができる。このため、制御基板23に配設されている素子を破損したり、作業者が感電することを防止することができる。
【0089】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、中継弁22が2つ設けられる構成としたが、中継弁22が1つだけ設けられる構成としてもよい。
【0090】
また、前記実施形態では、蓋体13がケース本体12に回動可能に支持される構成としたが、蓋体13を回動させる構成ではなく、そのまま着脱させることによってケーシング11内の収納空間を開閉する構成としてもよい。
【0091】
また、前記実施形態では、浸水防止部37が蓋体13に設けられる構成としたが、浸水防止部37をケース本体12に設けるようにしてもよい。
【0092】
また、前記実施形態では、取付台座16に設けられた第1係合部17aを突起状に形成するとともに、管座14の第2係合部17bを貫通孔によって構成したが、これに代え、取付台座16の第1係合部17aを貫通孔とし、管座14の第2係合部17bを突起状(凸状)に形成してもよい。
【0093】
なお、図面は、図7,8,10を除いて設計図の精度をもって記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置を前側から見た状態で示す断面図である。
【図2】前記ブレーキ制御装置を右側から見たものを一部破断した状態で示す図である。
【図3】(a)(b)取付台座を示す図である。
【図4】(a)(b)ヒンジ部を示す図である。
【図5】前記ブレーキ制御装置を左側から見たものを一部破断した状態で示す図である。
【図6】ケーシングの蓋体を裏側から見たときの制御基板及びカバーを示す図である。
【図7】前記ブレーキ制御装置の圧縮空気回路を示す回路図である。
【図8】圧縮空気回路の応荷重圧力生成部を示す回路図である。
【図9】上側から見たときの応荷重弁の断面図である。
【図10】圧縮空気回路のブレーキ圧力生成部を示す回路図である。
【図11】右側から見たときの中継弁の断面図である。
【図12】後側から見たときの、図11のXII−XII線における供給カット弁及び排気弁の断面図である。
【図13】従来のブレーキ制御装置の断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 ブレーキ制御装置
11 ケーシング
12 ケース本体
13 蓋体
14 管座
16 取付台座
17a 第1係合部
17b 第2係合部
21 応荷重弁
22 中継弁
23 制御基板
37 浸水防止部
40 カバー
40a 切欠き部
41 表示器
50 調圧弁
51 出力弁
52 電磁弁
52b パイロット圧力センサ
53 応荷重弁ブロック
56 中継弁部
56f 膜板
57 供給カット弁
58 排気弁
59 電磁弁
60 開放用電磁弁
61 中継弁ブロック
AS 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の空気ばねの圧力を検出するセンサの検出値に応じた応荷重圧力が出力される応荷重弁であって、
空気源から供給される圧力が満車相当の前記応荷重圧力に相当する圧力に制限して出力される調圧弁と、
前記調圧弁から出力された圧力が検出されるパイロット圧力センサと、
給排気が可能であり、前記パイロット圧力センサの検出値に基づいて、前記調圧弁から出力された圧力が給排気によって調整されて出力される電磁弁と、
前記電磁弁から出力された圧力がパイロット圧力として入力される出力弁と、を備え、
前記出力弁は、空車相当の応荷重圧力を発生させるための空車保証ばねを有し、前記空車保証ばねの付勢力による空車相当の応荷重圧力と前記パイロット圧力とを合わせた圧力が、応荷重圧力として出力される応荷重弁。
【請求項2】
前記電磁弁は、通電されていない状態のときに前記調圧弁と前記出力弁との間が遮断される請求項1に記載の応荷重弁。
【請求項3】
前記調圧弁と前記出力弁は、ブロック内に一体的に設けられている請求項2に記載の応荷重弁。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の応荷重弁と、
前記応荷重圧力が入力されるように構成された電磁弁の給排気によって生成された制御圧に基づいて、ブレーキシリンダが駆動されるブレーキ圧が出力される中継弁と、を備えているブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記応荷重弁及び前記中継弁を収容可能な収容空間とこの空間に臨む開口とを有するケース本体と、
前記開口を開閉可能な蓋体と、
前記蓋体と対向する面に設けられた管座と、
を備え、
前記応荷重弁は、管座に取り付け可能な背面を有し、
前記調圧弁は、その出力される圧力が満車相当の前記応荷重圧力に相当する圧力に制限するための満車保証ばねと、この満車保証ばねの付勢力を調整するための満車圧力調整ねじとを有し、
前記出力弁は、前記空車保証ばねの付勢力を調整するための空車圧力調整ねじを有し、
前記満車圧力調整ねじ及び前記空車圧力調整ねじは、前記背面と反対側の前面に配設されている請求項4に記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記応荷重弁の電磁弁及び前記中継弁の電磁弁が制御される制御基板を備え、
前記制御基板は、前記中継弁及び前記応荷重弁の手前に配設されている請求項4に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記応荷重弁及び前記中継弁を収容可能な収容空間とこの空間に臨む開口とを有するケース本体と、
前記開口を開閉可能な蓋体と、を備え、
前記制御基板は、前記蓋体の裏側に配設されている請求項6に記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記蓋体は、左右に開くようにヒンジ部を介して前記ケース本体に結合されており、
前記中継弁は、互いに横に並ぶように2つ設けられ、
前記応荷重弁は、前記2つの中継弁のうち、前記ヒンジ部とは反対側の前記中継弁の上側又は下側の空間に配設され、
前記ヒンジ部側に前記応荷重弁と中継弁とによって形成される空間に、電気配線を入線させる入線部が面している請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記蓋体の前記制御基板に対して前記ケース本体に面する側には、アルミニウム製又はアルミニウム合金製のカバーが設けられている請求項6に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−70177(P2010−70177A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243150(P2008−243150)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】