説明

情報処理システム、車載装置、情報処理方法およびプログラム

【課題】道路に関連する情報に関して、不要な通信を抑制し、最新情報を取得可能な情報処理システムを提供する。
【解決手段】道路に関係する情報を含む道路関連情報を格納するための記憶部、および路面の撮像データから特定パターンを検出すると、特定パターンに対応するパターン識別情報を外部に送信し、外部からパターン識別情報に対応する道路関連情報を受信すると、道路関連情報を記憶部に格納するとともに表示部に表示させる車載制御部を含む車載器と、パターン識別情報に対応して道路関連情報が格納された記憶部、および車載器からパターン識別情報を受信すると、パターン識別情報とともに格納された道路関連情報を記憶部から読み出して車載器に送信する制御部を含む情報処理装置と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に関係する情報などを更新するための情報処理システム、車載装置、情報処理方法、およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーナビゲーション装置に代表される車載装置の地図データの更新は年に一度程度の頻度でしか行われないため、車載装置の地図データが実際の道路状況と相違する状況がしばしば起こりうる。そこで、車載装置の地図データを最新の情報に保つべく、いくつかの方法が提案されている。
【0003】
情報センタと通信して最新の地図データなどを取得する機能を持ったカーナビゲーション装置が提案されている。このタイプのカーナビゲーション装置は、起動時、一定時間間隔毎、または運転者が指示を入力した時に、情報センタに最新情報の有無確認を行い、最新情報が存在する場合は情報をダウンロードするといった手順で地図を更新する。よって、情報センタ上に最新情報がない場合には、カーナビゲーション装置と情報センタとの間で無駄な通信が行われていた。
【0004】
また、別の方法として、情報センタから最新の情報を取得するのではなく、自車両の走行で取得した道路環境の情報である道路環境認識結果とカーナビゲーション装置の地図データとを照合することによって、自車両地図データの老朽化を検出して、道路環境認識結果に基づいて自車両地図データを更新するカーナビゲーション装置が、特許文献1〜3に開示されている。
【0005】
特許文献1には、GPS(Global Positioning System)などから取得される自車両位置と地図データベースとのマップマッチングができなくなった場合に、自車両地図データベースに記憶されていない新規の道路を走行中であると判断して走行軌跡を地図データベースに反映するカーナビゲーション装置が開示されている。この文献に開示された発明では、マップマッチングができなくなった場合に限り、ナビゲーション装置の地図データの更新が可能である。
【0006】
特許文献2には、自車両に搭載したカメラ映像から道路標識、区画線、看板、道路形状などを認識して、自車両地図データベース中に記述されていない物体を地図データベース中に追記し、地図データベースを更新するカーナビゲーション装置が開示されている。
【0007】
特許文献3には、道路形状の変化の有無を判定して、道路形状が変化している場合に自車両の走行軌跡データを記録し、走行軌跡に基づいて自車両地図データベース中のリンクデータを更新する車載用電子装置が開示されている。
【0008】
特許文献1〜3に開示されている発明によれば、情報センタを介することなく、自車両が自ら認識した物体や経路を自車の地図データベースに追加することができるため、情報センタとの通信が不要である。
【0009】
また、情報センタから情報を取得する技術と上記文献に開示された技術とを組み合わせた装置が特許文献4に開示されている。特許文献4に開示された発明によれば、移動体に搭載された情報処理装置は、自らが認識したさまざまな物体の位置情報を自車地図データに追加するとともに情報センタに通知し、さらに情報センタから情報センタが保持する地図情報を受信する機能を有する。
【特許文献1】特開2006−125883(第3図)
【特許文献2】特開2002−243469(第2図)
【特許文献3】特開2006−52972(第3図)
【特許文献4】特開2004−45051(第1図、段落[0009])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した方法には、それぞれ以下のような問題がある。
【0011】
情報センタが記憶している情報を通信によってダウンロードするタイプの方式では、情報センタが新たな情報を保持しているか否かにかかわらず、最低限情報の有無を問い合わせるための通信を行う必要がある。それゆえ、情報センタが提供すべき情報を持たない場合には、問い合わせのための通信が全く無意味となり、通信コストが無駄になってしまう。
【0012】
特許文献4では、情報処理装置が情報センタから情報を受信するタイミングなどの仕組みについては明確にされておらず、起動時や一定時間間隔毎、もしくは運転者が指示した時に、情報センタに最新情報の有無確認を行い、最新情報が存在する場合は情報をダウンロードするといった手順で更新を行うものと考えられる。そのため、最新情報が存在しない場合には、特許文献4に開示された技術にも上述の問題が発生し得る。
【0013】
一方、自車両が自ら認識した新たな経路や物体を自車両の地図データベースに追加する特許文献1〜3のような方式の問題点は、自車両が認識可能な事象しか自車両の地図データベースに追加できないことである。それゆえ、自車両から認識不可能な情報、例えば道路周辺の店舗で扱っている商品の特売情報などは、当然取得不可能である。また、自車両の地図データベースをできるだけ正しくするためには多種多様な物体を正しく認識せねばならず、そのために膨大な計算コストを必要としてしまう。さらに、日照条件や周囲物体の状況によっては認識できない場合も当然起こりうる。
【0014】
本発明は上述したような技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、道路に関連する情報に関して、不要な通信を抑制し、最新情報を取得可能な情報処理システム、車載装置、情報処理方法、およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の情報処理システムは、
道路に関係する情報を含む道路関連情報を格納するための記憶部、および路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を外部に送信し、外部から該パターン識別情報に対応する道路関連情報を受信すると、該道路関連情報を該記憶部に格納するとともに表示部に表示させる車載制御部を含む車載器と、
前記パターン識別情報に対応して前記道路関連情報が格納された記憶部、および前記車載器から前記パターン識別情報を受信すると、該パターン識別情報とともに格納された前記道路関連情報を該記憶部から読み出して前記車載器に送信する制御部を含む情報処理装置と、
を有する構成である。
【0016】
また、本発明の車載装置は、情報処理装置と通信接続される車載装置であって、
道路に関係する情報を含む道路関連情報を格納するための記憶部と、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を前記情報処理装置に送信し、該情報処理装置から該パターン識別情報に対応する道路関連情報を受信すると、該道路関連情報を前記記憶部に格納するとともに表示部に表示させる車載制御部と、
を有する構成である。
【0017】
また、本発明の情報処理方法は、情報処理装置と通信接続される車載装置による情報処理方法であって、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を前記情報処理装置に送信し、
前記パターン識別情報に対応する、道路に関係する情報を含む道路関連情報を前記情報処理装置から受信すると、該道路関連情報を格納するとともに表示部に表示させるものである。
【0018】
さらに、本発明のプログラムは、情報処理装置と通信接続され、車両に搭載されるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を前記情報処理装置に送信し、
前記パターン識別情報に対応する、道路に関係する情報を含む道路関連情報を前記情報処理装置から受信すると、該道路関連情報を格納するとともに表示部に表示させる処理を前記コンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、路面に標示されるパターン毎に道路関連情報が情報処理装置に予め登録されているため、車載装置は、検出したパターンを情報処理装置に通知すれば、そのパターンに対応する道路関連情報を情報処理装置から取得でき、不必要な通信を行うことなく最新の道路関連情報を取得できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本実施形態の情報処理システムについて図面を参照して説明する。図1は本実施形態の情報処理システムの一構成例を示すブロック図である。
【0021】
本実施形態の情報処理システムは、4輪自動車および2輪自動車などの移動車両に搭載されるナビゲーション装置102と、ナビゲーション装置102に情報を提供する情報処理装置103とを有する構成である。情報処理装置103は道路に関連する情報をユーザに提供するサービスの提供者により管理されている。以下では、この提供者を情報センタと称する。
【0022】
ナビゲーション装置102と情報処理装置103は、無線基地局を含む通信網(不図示)を介して通信接続される。通信網として、例えば、インターネットがある。ナビゲーション装置102および情報処理装置103のそれぞれは、お互いのネットワーク上のアドレスが予め登録され、データを送受信する際には、IP(Internet Protocol)と同様に、送信元および送信先のアドレスをそのデータに書き込むものとする。
【0023】
ナビゲーション装置102は、移動車両の電気系統の電源がオンすると起動し、その後、電源がオフするまで動作状態を維持する。なお、移動車両の電気系統の電源とは別にスイッチを設け、ナビゲーション装置102をオンさせるか否かを運転者が制御してもよい。
【0024】
ナビゲーション装置102は、カメラ702と、ハードディスクまたは不揮発性メモリなどの記憶部703と、表示部704と、無線通信のアンテナを含む車載通信部705と、車載制御部701とを有する。車載制御部701は、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)(不図示)と、プログラムを格納するためのメモリ(不図示)とを有する。表示部704は、例えば、液晶ディスプレイである。記憶部703は、道路に関係する情報を含む道路関連情報が格納される道路関連情報データベース106を含む。
【0025】
情報処理装置103は、ハードディスクまたは不揮発性メモリなどの記憶部708と、通信部707と、制御部706とを有する。制御部706は、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(不図示)と、プログラムを格納するためのメモリ(不図示)とを有する。記憶部708は、ナビゲーション装置102に提供する道路関連情報を記憶する道路情報データベース110を含む。
【0026】
次に、情報処理システムの各構成について詳しく説明する。図2は図1に示す情報処理システムの詳細な構成を示すブロック図である。はじめに、ナビゲーション装置102について詳しく説明する。
【0027】
図2に示すように、ナビゲーション装置102のカメラ702は、路面に標示された道路関連情報存在指示路面ペイント(以下では、単に「路面ペイント」と称する)101の画像を取り込む撮像部104を有する。撮像部104には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)が設けられている。
【0028】
車載制御部701は、路面ペイントを認識する道路関連情報存在指示路面ペイント認識部(以下では、単に「路面ペイント認識部」と称する)105と、情報更新部108とを有する。車載制御部701内のCPUがプログラムを実行することで、ペイント認識部105および情報更新部108がナビゲーション装置102に仮想的に構成される。
【0029】
記憶部703の道路関連情報データベース106には道路関連情報が格納される。道路関連情報は、路面ペイントに対応して、路面ペイント毎に異なる識別子である路面ペイント識別情報と共に登録される。
【0030】
道路関連情報は、道路地図の情報および道路の接続を示す情報だけでなく、道路沿いの店舗に関する情報を含む。店舗に関する情報として、本実施形態では、次の4つの情報がある。(1)駐車場入口の位置を示す情報である駐車場入口位置情報、(2)駐車場を立体的に示す地図の情報である駐車場3D地図情報、(3)店舗で扱っている商品の情報である取扱商品情報、(4)店舗の営業時間の情報である営業時間情報である。なお、道路関連情報は、これらの情報以外にも、道路に関連する多様な情報を含んでいてもよい。
【0031】
ここで、路面ペイント101について説明する。
【0032】
路面ペイント101は、対応する道路関連情報が情報処理装置103内の道路情報データベース110に記憶されていることを示す、路面上に描かれたパターンである。この路面ペイントが本発明の特定パターンに相当する。例えば、道路Aに関係する道路関連情報が道路情報データベース110に登録されると、その道路関連情報に対応する路面ペイントが道路Aの路面上に設けられる。なお、路面ペイント101は、道路交通法などで定義されている規制標示や指示標示などとは異なる形状であり、予め定められた仕様に基づいて描かれる。
【0033】
図3は路面ペイントの一例を示す図である。図3に示すように、路面201に路面ペイント202が標示されている。路面ペイント202は、内部が水色、輪郭が白線で描かれ、5角形の形状をしている。路面ペイント202を道路交通法で定められた他の路面標示と類似していない図案にすることによって、路面ペイント認識部105による路面ペイントの検出率向上、および他の路面ペイントを路面ペイントとして誤検出することの抑制といった効果が期待できる。なお、道路面上のさまざまな場所に標示される路面ペイントの図案は、同一形状でもよく、また、個々のパターンを区別しやすいようにそれぞれが部分的に異なる図案を含んでいてもよい。
【0034】
図4は図3に示した路面ペイントの別の例を示す図である。図4に示すように、路面301に標示された路面ペイント302は、路面ペイント識別情報となる識別ID303を図案中に含むものである。図4に示す例では、識別IDが「1234」という数字列で表現されており、この情報に基づいて個々の路面ペイントを区別することが可能となる。
【0035】
路面ペイント101を路面に標示するケースの例として、(i)新規に道路が開通した場合、(ii)道路工事を予告する場合、(iii)道路沿いに「道の駅(登録商標)」や駐車場付き新規店舗などができた場合などが挙げられる。(i)の場合、道路関連情報は新規道路周辺の地図や道路の接続関係を示すリンク情報である。(ii)の場合、道路関連情報は道路工事時期、工事区間および工事内容を含む情報である。(i)、(ii)の場合には、道路関連情報には店舗に関する情報は含まれない。(iii)の場合、道路関連情報は、店舗等の駐車場入口を示す地図や道路との接続関係を示すリンク情報、駐車場の構造を示す地図情報、店舗の説明などの情報である。
【0036】
図5は図4に示した路面ペイントの応用例を示す図である。図5(a)は一般の道路から大規模ショッピングセンターの駐車場への誘導路上の路面に路面ペイントが標記されている状態を示す。図5(b)は図5(a)に示した路面ペイントに関する道路関連情報の一例を示す。
【0037】
図5(a)に示すように、路面ペイント403は、道路401に接している店舗駐車場の誘導路402上に設けられ、識別ID404を図案中に含んでいる。ここでは、路面ペイント403について、GPSなどにより特定される位置をPとし、識別ID404を「1234」とする。位置Pが示す位置情報は、緯度および経度の情報の他に、地面からの高さの情報を含んでもよい。
【0038】
図5(b)に示すように、道路関連情報には、駐車場入口の位置Pを示す位置情報405、識別ID406、店舗名称407、道路との接続情報408、店舗地図情報409および店舗住所情報410などが登録されている。図5(b)に示す例では、路面ペイント識別情報として、位置情報と識別IDの両方が登録されている。
【0039】
図2を参照して、ナビゲーション装置102のその他の構成について説明する。撮像部104は、ナビゲーション装置102の動作中に連続的に自車両周辺の路面を撮影し、撮影した路面画像の撮像データを路面ペイント認識部105に送信する。
【0040】
路面ペイント認識部105は、撮像部104より受け取る路面画像から路面ペイントを検出する。路面ペイント認識部105は、路面画像に路面ペイントが含まれていなければ、路面画像が路面ペイントを含んでいないことを認識する。路面ペイント認識部105は、路面画像で路面ペイントを検出すると、認識した路面ペイントを特定するための路面ペイント識別情報を路面ペイントまたは位置情報から取得して自部内のメモリ(不図示)に記録する。その際、既に道路関連情報データベース106に登録済みの情報を情報処理装置103に再度要求しないようにするために、検出した路面ペイントの路面ペイント識別情報が自部内のメモリ(不図示)に既に登録されているか否かを調べる。
【0041】
検出した路面ペイントの路面ペイント識別情報と一致する識別情報が登録されている場合、路面ペイント認識部105は、情報更新部108に路面ペイント識別情報を渡す。一方、検出した路面ペイントの路面ペイント識別情報と一致する識別情報が登録されていない場合、路面ペイント認識部105は、その路面ペイント識別情報を車載通信部705を介して情報処理装置103に送信する。
【0042】
路面ペイント識別情報は、一般的なカーナビゲーション装置に含まれるGPSなどから得られる自車両の位置情報でもよく、路面ペイントを区別できるように路面ペイントの図案中に埋め込まれた識別IDでもよく、路面ペイントを特定できる情報であればよい。位置情報に関しては、自車両の位置情報の代わりに、自車両の位置に自車両と路面ペイントとの相対位置関係を加味して算出した路面ペイントの位置情報を用いてもよい。また、路面ペイントを特定するために、その位置情報と識別IDの両方を用いてもよい。
【0043】
車載通信部705は、情報処理装置103の通信部707と通信して情報を送受信する。車載通信部705は、路面ペイント認識部105から路面ペイント識別情報を受け取ると、情報処理装置103の通信部707に対して路面ペイント識別情報を送信する。また、車載通信部705は、道路関連情報を情報処理装置103の通信部707から受信すると、その道路関連情報を情報更新部108に渡す。
【0044】
情報更新部108は、車載通信部705から道路関連情報を受け取ると、路面ペイント識別情報と対応づけて道路関連情報を道路関連情報データベース106に登録することで道路関連情報データベース106の内容を更新し、道路関連情報を表示部704に渡す。また、情報更新部108は、路面ペイント認識部105から路面ペイント識別情報を受け取ると、その路面ペイント識別情報と対応づけて登録されている道路関連情報を道路関連情報データベース106から読み出して表示部704に渡す。表示部704は、情報更新部108から受け取る道路関連情報を表示する。
【0045】
次に、図2を参照して情報処理装置103について詳しく説明する。
【0046】
制御部706は情報検索部112を有する。制御部706内のCPUがプログラムを実行することで、情報検索部112が情報処理装置103内に仮想的に構成される。
【0047】
記憶部708の道路情報データベース110は、各路面ペイントに対応する道路関連情報を格納するためのデータベースであり、路面ペイント識別情報と道路関連情報とを対応づけて記憶している。ナビゲーション装置102に提供される道路関連情報が格納されている。そのため、道路情報データベース110に登録される道路関連情報は、道路関連情報データベース106と同様に、道路地図の情報および道路の接続を示す情報だけでなく、道路沿いの店舗に関する(1)駐車場入口位置情報、(2)駐車場3D地図情報、(3)取扱商品情報および(4)営業時間情報を含む。
【0048】
情報検索部112は、ナビゲーション装置102から通信部707を介して路面ペイント識別情報を受信すると、路面ペイント識別情報に対応する道路関連情報を道路情報データベース110中から読み出し、読み出した道路関連情報を通信部707を介してナビゲーション装置102に送信する。路面ペイント識別情報は、路面ペイントを特定するための位置情報であってもよく、路面ペイント毎に異なる識別IDであってもよい。
【0049】
通信部707は、ナビゲーション装置102の車載通信部705と通信を行って情報の送受信を行う。車載通信部705から受信する路面ペイント識別情報を情報検索部112に渡す。また、情報検索部112から受け取る道路関連情報をナビゲーション装置102の車載通信部705に送信する。
【0050】
次に、本実施形態の情報処理システムの動作手順を説明する。図6は本実施形態の情報処理システムの動作手順を示すシーケンス図である。なお、路面ペイントが事前に路面上に標示され、これに対応する道路関連情報が道路情報データベース110に登録済みであるが、道路関連情報データベース106には未登録であるものとする。
【0051】
自車両の走行中に、ナビゲーション装置102の撮像部104は路面の画像を時々刻々取得し、取得した路面画像を路面ペイント認識部105に渡す(ステップ501)。路面ペイント認識部105は、撮像部104から受け取る路面画像から路面ペイントの認識処理を行い(ステップ502)、路面画像中に路面ペイントが含まれているか否かを調べる(ステップ503)。路面ペイント認識部105は、受け取った画像中に路面ペイントを検出しなければ、ステップ501の処理に戻る。このようにして、路面ペイント認識部105は、連続的に撮影される路面画像に路面ペイントが含まれているか否かを順次調べる。
【0052】
ステップ503で、路面ペイント認識部105は、路面ペイントを路面画像で認識し、続いて、その路面ペイントに対応する路面ペイント識別情報が自部内のメモリ(不図示)に登録されていないことを認識すると、路面ペイント識別情報を車載通信部705を介して情報処理装置103に送信する(ステップ504)。路面ペイント識別情報は、路面ペイントの図案から取得した識別IDであってもよく、路面ペイントの位置情報であってもよい。
【0053】
情報処理装置103の通信部707は、ナビゲーション装置102の車載通信部705から路面ペイント識別情報を受信すると(ステップ505)、路面ペイント識別情報を情報検索部112に渡す。情報検索部112は、通信部707から受け取った路面ペイント識別情報に対応する道路関連情報を道路情報データベース110中から抽出し(ステップ506)、抽出した道路関連情報を通信部707に渡す。通信部707は、情報検索部112から受け取った道路関連情報をナビゲーション装置102に送信する(ステップ507)。
【0054】
ナビゲーション装置102の車載通信部705は、通信部707から道路関連情報を受信すると(ステップ508)、その道路関連情報を情報更新部108に渡す。情報更新部108は、車載通信部705から受け取った道路関連情報を新規に道路関連情報データベース106に登録し、道路関連情報データベース106の内容を更新する(ステップ509)。また、情報更新部108は、新規に登録した道路関連情報を表示部704に渡す。表示部704は、情報更新部108により更新された道路関連情報の内容を表示し(ステップ510)、運転者に情報を提供する。なお、表示部704は、道路関連情報に限らず、撮像部104が取得した路面画像を車載制御部701を介して受信して表示してもよい。
【0055】
本実施形態によれば、ナビゲーション装置102の路面ペイント認識部105が検出する路面ペイントについて、その路面ペイントに対応する道路関連情報が情報センタの情報処理装置103の道路情報データベース110内に確実に登録されている。そのため、ナビゲーション装置から要求があれば、道路関連情報を返信することが可能であり、ナビゲーション装置が情報処理装置に不必要なアクセスをすることなく、かつ、移動車両の運転手は道路関連情報を確実に取得できる。
【0056】
また、情報センタの情報処理装置に記憶される道路関連情報に、移動車両の走行に関連する情報以外にも多様な情報を含ませることが可能なので、ナビゲーション装置内の記憶部に全ての道路関連情報を登録する場合に比べて、扱う情報の種類および量を増やすことができる。
【0057】
また、過去に検出された路面ペイントに関しては、その路面ペイント識別情報がナビゲーション装置に記録される。そのため、路面ペイントが検出されたとき、その路面ペイント識別情報がナビゲーション装置に既に登録済みか否かを判定し、未登録のものだけを情報処理装置に問い合わせることによって、不要な通信を抑制できる。
【0058】
なお、本実施形態では、路面ペイント認識部105内のメモリ(不図示)に検出済みの路面ペイント識別情報を記憶させる場合を説明したが、路面ペイントについて検出済みであるか否かの判定を、道路関連情報データベース106に道路関連情報とともに登録される路面ペイント識別情報を参照して行ってもよい。この場合、路面ペイント認識部105が路面ペイント識別情報の読み書きを道路関連情報データベース106に対して行えばよい。また、路面ペイントについて検出済みであるか否かの判定を車載通信部705が行ってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、路面ペイントの図案例として5角形のパターンを示したが、路面ペイントの図案は5角形に限られない。既存の道路標識などの路面標示の図案と異なっていればよい。
【0060】
また、本実施形態では、撮像部104および撮像部104を含むカメラ702のそれぞれをナビゲーション装置102に含まれる構成として説明したが、これらの構成がナビゲーション装置とは別に設けられていてもよい。すなわち、ナビゲーション装置102とは別に設けられたカメラの映像を路面ペイント認識部105に入力する構成であってもよい。近年、販売されている4輪自動車の多くには、主に駐車支援用車載装置として車両後方に広角カメラが設けられている。この広角カメラは路面映像を撮像する上で好適であり、この広角カメラをカメラ702として使用してもよい。
【0061】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、道路関連情報が1つの情報処理装置で管理されている場合について説明したが、本実施形態は、道路関連情報が複数の情報処理装置に分散されて管理されている場合である。
【0062】
本実施形態の情報処理システムの構成を説明する。図7は本実施形態の情報処理システムの一構成例を示すブロック図である。なお、第1の実施形態と同様な構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略し、異なる点について詳しく説明する。
【0063】
図7に示すように、本実施形態の情報処理システムは、移動車両に搭載されるナビゲーション装置102と、道路関連情報を管理する複数の情報処理装置103a〜103zとを有する。なお、情報処理装置の符号103の添字のローマ字a〜zの数は26であるが、情報処理装置の数は26に限らない。
【0064】
第1の実施形態と異なる点は、情報処理装置103が複数設けられていること以外に、路面ペイント101の構成、ならびに路面ペイント認識部105および車載通信部705の機能である。
【0065】
路面ペイント101は、その図案の中に、対応する道路関連情報を保持している情報処理装置103を識別するための情報が含まれている。以下では、情報処理装置103を識別するための情報を装置識別情報と称する。装置識別情報を路面ペイントに設ける方法として、例えば、異なる図案の路面ペイントを情報処理装置103a〜103zの数だけ予め準備し、路面ペイントと情報処理装置とを1対1に対応付ける方法がある。それ以外の方法として、路面ペイントの図案の一部に、情報処理装置のネットワーク上のアドレスであるhttpアドレスを示す文字情報または2次元バーコードなどの図形情報を含めるようにしてもよい。
【0066】
本実施形態の路面ペイント認識部105は、路面ペイントの図案に含まれる装置識別情報を認識する。路面ペイントの図案が異なる場合は、図案の相違点を画像認識して、予め定められた図案と情報処理装置103との対応関係に基づいて情報処理装置103を特定し、特定した情報処理装置103の装置識別情報と路面ペイント識別情報を車載通信部705に渡す。なお、装置識別情報にhttpアドレスを使用し、路面ペイントの図案中にhttpアドレスを含む構成では、サービス開始後に情報処理装置103の数をさらに追加することが可能であるという利点がある。
【0067】
本実施形態の車載通信部705は、路面ペイント認識部105から装置識別情報および路面ペイント識別情報を受け取ると、装置識別情報で特定される情報処理装置宛に路面ペイント情報を送信し、情報処理装置103の通信部707から受信する道路関連情報を情報更新部108に渡す。
【0068】
本実施形態の情報処理システムの動作は、図6を参照して説明した手順のうち、ステップ502において路面ペイント認識部105が装置識別情報を認識することで通信先の情報処理装置103を特定し、特定した情報処理装置宛にステップ504において路面ペイント識別情報を送信することを除いて、第1の実施形態と同様である。そのため、本実施形態における動作の詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態によれば、道路関連情報を複数の情報センタで分散管理することができる。これにより、例えば、道路や店舗などを管理する会社が、それぞれ自身のホームページで道路関連情報を掲載することが可能となる。例えば、国道や県道に直接関係する情報はその道路を管轄する国や地方自治体が管理する情報処理装置に記憶させ、その沿線に存在する大型ショッピングセンターの駐車場情報、商品情報などは各店舗が管理する情報処理装置に記憶させることが可能である。
【0070】
なお、第1および第2の実施形態では、移動車両に搭載する装置としてナビゲーション装置の場合で説明したが、テレマティクスなどの他の車載器であってもよい。
【0071】
また、第1の実施形態では、ナビゲーション装置102および情報処理装置103のそれぞれについて、制御部と通信部を区別して説明したが、図8に示すように、通信部の機能を制御部に含むようにしてもよい。車載制御部701に車載通信部705の機能を含む構成を車載制御部715と表し、制御部706に通信部707の機能を含む構成を制御部767で表している。さらに、図8は第1の実施形態の別の構成例を示すが、第2の実施形態についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施形態の情報処理システムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す情報処理システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】路面ペイントの一例を示す図である。
【図4】図3に示した路面ペイントの別の例を示す図である。
【図5】図4に示した路面ペイントの応用例を示す図である。
【図6】第1の実施形態の情報処理システムの動作手順を示すシーケンス図である。
【図7】第2の実施形態の情報処理システムの一構成例を示すブロック図である。
【図8】第1の実施形態の情報処理システムの別の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0073】
102 ナビゲーション装置
103 情報処理装置
701 車載制御部
702 カメラ
703 記憶部
704 表示部
705 車載通信部
706 制御部
707 通信部
708 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に関係する情報を含む道路関連情報を格納するための記憶部、および路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を外部に送信し、外部から該パターン識別情報に対応する道路関連情報を受信すると、該道路関連情報を該記憶部に格納するとともに表示部に表示させる車載制御部を含む車載器と、
前記パターン識別情報に対応して前記道路関連情報が格納された記憶部、および前記車載器から前記パターン識別情報を受信すると、該パターン識別情報とともに格納された前記道路関連情報を該記憶部から読み出して前記車載器に送信する制御部を含む情報処理装置と、
を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記車載制御部は、
前記情報処理装置から受信する前記道路関連情報を前記パターン識別情報に対応づけて自装置の前記記憶部に格納し、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報が自装置の前記記憶部に格納されているか否かを判定し、該パターン識別情報が該記憶部に格納されていると、該パターン識別情報を前記情報処理装置に送信しない、請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記車載制御部は、
検出した特定パターンからパターン識別情報を特定する際、該特定パターンの図案に含まれる、該特定パターン毎に異なる識別子であるパターン識別子、および該特定パターンが標示されている位置を特定するための情報である位置情報のうち、少なくともいずれかを含む情報を前記パターン識別情報とする、請求項1または2記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記情報処理装置が複数設けられ、
前記車載制御部は、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンの図案に含まれる、前記情報処理装置毎に異なる識別子である装置識別情報を該特定パターンから読み出し、前記パターン識別情報を送信する際、該装置識別情報で特定される情報処理装置宛に該パターン識別情報を送信する、請求項1から3のいずれか1項記載の情報処理システム。
【請求項5】
情報処理装置と通信接続される車載装置であって、
道路に関係する情報を含む道路関連情報を格納するための記憶部と、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を前記情報処理装置に送信し、該情報処理装置から該パターン識別情報に対応する道路関連情報を受信すると、該道路関連情報を前記記憶部に格納するとともに表示部に表示させる車載制御部と、
を有する車載装置。
【請求項6】
前記車載制御部は、
前記情報処理装置から受信する前記道路関連情報を前記パターン識別情報に対応づけて前記記憶部に格納し、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報が前記記憶部に格納されているか否かを判定し、該パターン識別情報が該記憶部に格納されていると、該パターン識別情報を前記情報処理装置に送信しない、請求項5記載の車載装置。
【請求項7】
前記車載制御部は、
検出した特定パターンからパターン識別情報を特定する際、該特定パターンの図案に含まれる、該特定パターン毎に異なる識別子であるパターン識別子、および該特定パターンが標示されている位置を特定するための情報である位置情報のうち、少なくともいずれかを含む情報を前記パターン識別情報とする、請求項5または6記載の車載装置。
【請求項8】
前記車載制御部は、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンの図案に含まれる、複数の前記情報処理装置毎に異なる識別子である装置識別情報を該特定パターンから読み出し、前記パターン識別情報を送信する際、該装置識別情報で特定される情報処理装置宛に該パターン識別情報を送信する、請求項5から7のいずれか1項記載の車載装置。
【請求項9】
情報処理装置と通信接続される車載装置による情報処理方法であって、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を前記情報処理装置に送信し、
前記パターン識別情報に対応する、道路に関係する情報を含む道路関連情報を前記情報処理装置から受信すると、該道路関連情報を格納するとともに表示部に表示させる、情報処理方法。
【請求項10】
前記情報処理装置から受信する前記道路関連情報を前記パターン識別情報に対応づけて格納し、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報が格納されているか否かを判定し、
判定の結果、前記パターン識別情報が格納されていると、該パターン識別情報を前記情報処理装置に送信しない、請求項9記載の情報処理方法。
【請求項11】
検出した特定パターンからパターン識別情報を特定する際、該特定パターンの図案に含まれる、該特定パターン毎に異なる識別子であるパターン識別子、および該特定パターンが標示されている位置を特定するための情報である位置情報のうち、少なくともいずれかを含む情報を前記パターン識別情報とする、請求項9または10記載の情報処理方法。
【請求項12】
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンの図案に含まれる、複数の前記情報処理装置毎に異なる識別子である装置識別情報を該特定パターンから読み出し、
前記パターン識別情報を送信する際、前記装置識別情報で特定される情報処理装置宛に該パターン識別情報を送信する、請求項9から11のいずれか1項記載の情報処理方法。
【請求項13】
情報処理装置と通信接続され、車両に搭載されるコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報を前記情報処理装置に送信し、
前記パターン識別情報に対応する、道路に関係する情報を含む道路関連情報を前記情報処理装置から受信すると、該道路関連情報を格納するとともに表示部に表示させる処理を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
前記情報処理装置から受信する前記道路関連情報を前記パターン識別情報に対応づけて格納し、
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンに対応するパターン識別情報が格納されているか否かを判定し、
判定の結果、前記パターン識別情報が格納されていると、該パターン識別情報を前記情報処理装置に送信しない、請求項13記載のプログラム。
【請求項15】
検出した特定パターンからパターン識別情報を特定する際、該特定パターンの図案に含まれる、該特定パターン毎に異なる識別子であるパターン識別子、および該特定パターンが標示されている位置を特定するための情報である位置情報のうち、少なくともいずれかを含む情報を前記パターン識別情報とする、請求項13または14記載のプログラム。
【請求項16】
路面の撮像データから特定パターンを検出すると、該特定パターンの図案に含まれる、複数の前記情報処理装置毎に異なる識別子である装置識別情報を該特定パターンから読み出し、
前記パターン識別情報を送信する際、前記装置識別情報で特定される情報処理装置宛に該パターン識別情報を送信する、請求項13から15のいずれか1項記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101638(P2010−101638A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270758(P2008−270758)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】