情報処理装置及びプログラム
【課題】検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出すること。
【解決手段】移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する。処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を抽出し、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する。また対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と比較情報とを比較し、比較の結果に関わる情報を出力する。
【解決手段】移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する。処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を抽出し、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する。また対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と比較情報とを比較し、比較の結果に関わる情報を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の現在位置を取得する位置情報取得手段と、作業対象物毎に、該作業対象物に関する作業を実施すべき位置の情報を登録する作業位置情報登録手段と、作業対象物を指定する情報を入力する入力手段と、該入力手段によって指定された作業対象物に関する作業位置情報を前記作業位置情報登録手段より読出し、該作業位置情報と前記位置情報取得装置により取得した移動体の現在位置とを比較することにより作業位置が正しいか否かを検出する比較手段とを有する構成としたシステムが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−312787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出すること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、情報処理装置であって、移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、を含むこととしたものである。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の情報処理装置であって、前記条件は、対象発信装置がともに移動する移動体と、他の移動体との間の関係に関わる条件であることとしたものである。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の情報処理装置であって、前記予め定められた条件を満足する比較対象発信装置の数が予め定めたしきい値を下回る場合に、前記条件を補正する補正手段をさらに含むこととしたものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、プログラムであって、コンピュータを、移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1、4記載の発明によると、検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出できる。
【0009】
請求項2記載の発明によると、移動体間の関係に係る条件により、検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出できる。
【0010】
請求項3記載の発明によると、条件を補正できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る情報処理装置1は、図1に例示するように、検出システム2に接続される。以下の例では、検出システム2は、企業などの組織で用いられるものとし、移動体は組織の従業者であるとする。また検出システム2は、検出場所の一例である各居室に、少なくとも1つの受信機21が設置され、これらの受信機21からの情報を、通信回線を介して受け入れて集計する集計装置22を含む。
【0012】
また、情報処理装置1は、この集計装置22に対してネットワーク等の通信手段を介して接続される。本実施の形態の情報処理装置1は、図1に例示したように、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15とを含んで構成される。
【0013】
ここでは各従業者(各移動体)は、それぞれ固有の情報(社員番号など:以下、移動体識別情報と呼ぶ)を含んだ情報を発信する発信装置を携帯しているものとする。この発信装置は、例えば、いわゆるアクティブRFID(Radio Frequency IDentification)などである。この発信装置は、発信の対象となる移動体識別情報を記憶しており、予め定められたタイミングごと(例えば30秒ごと)に、当該移動体識別情報を無線にて発信する。
【0014】
情報処理装置1の制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。この制御部11は、集計装置22から、移動体とともに移動する、互いに異なる移動体識別情報を発信する各発信装置を検出した場所の記録を取得する。そして制御部11は、処理の対象となる対象発信装置の検出場所の記録と、対象発信装置とは異なる発信装置のうち予め定められた条件を満足する、比較対象発信装置の検出場所の記録とを、取得した情報から抽出する。制御部11は、この抽出した、比較対象発信装置の検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成し、また、抽出した対象発信装置の検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成する。そして制御部11は、当該対象情報と前記比較情報とを比較して、当該比較の結果に関わる情報を出力する。この制御部11の詳しい処理の内容については、後に述べる。
【0015】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の記憶デバイスであり、制御部11によって実行されるプログラムを保持している。また、この記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。本実施の形態においては、この記憶部12には、移動先が類似すると仮定される移動体の移動体識別情報を互いに関連づける情報(グループ情報)が予め記録されているものとする。
【0016】
操作部13は、キーボードやマウスなどであり、利用者の操作を受け入れて、当該操作の内容を表す情報を制御部11に出力する。表示部14は、ディスプレイなどであり、制御部11から入力される指示に従って情報を表示する。通信部15は、ネットワークインタフェースなどであり、ネットワークなどの通信回線を介して集計装置22等との間で情報を送受する。
【0017】
検出システム2の受信機21は、それぞれ固有の受信機識別子が割り当てられており、当該割り当てられた受信機識別子を記憶している。受信機21は、移動体とともに移動する発信装置が発信した信号が無線にて到来すると、当該信号を受信して、受信した信号に含まれる移動体識別情報を取り出し、当該移動体識別情報と、記憶している受信機識別子とを関連づけて集計装置22に送出する。
【0018】
集計装置22は、受信機21から、当該受信機21が受信した移動体識別情報と、受信機識別子と関連づけて入力されると、図示しない計時部(カレンダーチップなど時刻を計時する装置)から入力の時点を表す日時情報を取得し、これら入力された移動体識別情報と受信機識別子、及び取得した日時情報を互いに関連付けて、ストレージデバイスなどに蓄積して記憶する(図2)。以下、この図2に記録した情報を「受信記録」と称する。
【0019】
また、この集計装置22は、図3に例示するように検出場所を特定する情報(例えば居室を特定する文字列)と、当該情報で特定される検出場所に配された受信機21の受信機識別子とを関連づけて記憶している。さらにこの集計装置22は後に述べるように、情報処理装置1から、集計期間を特定する情報とともに、集計の指示を受け入れて、次の処理を行う。
【0020】
すなわち集計装置22は、集計の指示を受けると、受信記録のうち、特定された集計期間に含まれる日時情報に関連づけられた受信記録を選択的に抽出し、抽出した受信記録について、検出場所を特定する情報ごとに、当該検出場所を特定する情報に関連づけられた受信機識別子の受信機21にて受信した移動体識別情報を集計して、検出場所の記録である集計情報(図4)を生成する。具体的には、移動体識別情報ごとの受信回数を累算することとすればよい。また、この集計の処理の別の例として、受信機識別子ごと、あるいは検出場所ごとに定められた重みを乗じた受信回数を累算するなどして、検出スコア値を算出してもよい。
【0021】
次に、情報処理装置1の制御部11の動作について説明する。本実施の形態の制御部11は、機能的には図5に例示するように、取得部31と、抽出部32と、比較情報生成部33と、比較部34と、出力部35とを含んで構成される。
【0022】
取得部31は、通信部15を介して集計装置22から、集計装置22にて集計された集計情報を取得する。この取得部31は、利用者から処理の対象とする期間を指定する情報の入力を受けて、当該入力された期間を集計期間として集計装置22に出力し、当該集計期間に係る集計情報を取得する。
【0023】
抽出部32は、処理の対象となる対象発信装置を特定する情報(例えば対象とする発信装置が発信する移動体識別情報)の入力を受けて、当該対象発信装置がともに移動する移動体と移動先が類似すると仮定される他の移動体に係る移動体識別情報を、グループ情報から読み出す。そして抽出部32は、取得部31が取得した集計情報のうち、比較対象識別情報を発信する発信装置(比較対象発信装置)の検出場所の記録を抽出する。
【0024】
比較情報生成部33は、各比較対象発信装置について、抽出部32によって抽出された検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する。なお、ここで検出機会の分布は、例えば検出回数の分布であってもよいし、検出場所や受信機21ごとなどに関連して予め定められた重みを乗じられた、検出スコア値の分布であっても構わない。
【0025】
比較部34は、対象発信装置に関する検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、比較情報と比較する。この比較は、分布同士の類似性を検定する統計的処理を行えばよい。一例として、このような統計的処理としてχ二乗分布による検定を行う例を次に示す。なお、以下では、移動体識別情報が、検出対象である移動体を所持する利用者の名称(ユーザA、ユーザB…などと呼ぶ)そのものであるとする。
【0026】
比較部34は、比較対象発信装置に係る比較情報、及び対象情報において、いずれもその検出機会を表す値が予め定めた閾値(例えば「10」)を下回る検出場所(稀少検出場所)については、「その他」として稀少検出場所での検出結果の値の累算値を演算することとしてもよい。
【0027】
比較部34は、対象情報(図6のユーザA(α))と、比較情報(図6のユーザBからE(β))とが同じ母集団からのサンプルであると仮定して、サンプルiごとの合計と、検出場所jごとの合計とから、各移動体の検出場所ごとの推定検出期待値tijを求め、これと各サンプルの値xijとから、次の式(1)により、χ二乗値を算出する。
【0028】
【数1】
【0029】
なお、ここで比較情報は、各比較対象発信装置の検出機会の分布であってもよいし、複数の比較対象発信装置の検出場所ごとの検出回数等を、検出場所ごとに総計したものであってもよい。以下の例では、比較情報は、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出回数等を、検出場所ごとに総計して得た検出機会の分布であるとする。
【0030】
具体的に比較部34は、図6に示したテーブルに従い、比較情報についてはサンプルごとに累算した結果を得ておく(図7)。仮に、ユーザAからEが移動先を共通にしているとすれば、ユーザAの検出場所の分布は全体の分布と同じ確率となるはずであるので、比較部34は、対象情報に係るユーザAの検出場所pでの推定期待値を、
【0031】
【数2】
【0032】
と演算する。ここで、Npは、検出場所pにおいて、ユーザAからEの各移動体が検出された回数の和であり、Tは、すべての検出場所における、ユーザAからEの各移動体の検出回数の総計を表し、Taは、すべての検出場所における、ユーザAの移動体の検出回数の総計を表す(図6)。
【0033】
同様に、比較情報の累算結果に対しても同様に、
【0034】
【数3】
【0035】
を演算しておく。ここに、Toは、すべての検出場所における比較情報に係る移動体(ユーザBからユーザE)の検出回数の総和を表す(図7)。比較部34は、こうして対象情報に係るユーザAの各検出場所での検出回数の推定期待値、及び比較情報となるユーザBからユーザEの各検出場所での検出回数の累計値の推定期待値を得る(図8)。
【0036】
そして、実際の検出回数(比較情報についてはその累計)から、対応する推定期待値を差し引いて二乗し、当該二乗値を推定期待値で除して、図8の各欄におけるχ二乗値を算出した結果を図9に示す(なお、図8,図9においては、有効数字については考慮していない)。
【0037】
さらに比較部34は、これらのχ二乗値の総和(R)を演算する。そして、この総和の値(R)が、予め定められた危険率のχ二乗分布の値よりも大きいか否かを調べる。ここに、定められた危険率のχ二乗分布は、一般に自由度に依存することとなるが、ここでは対象情報と比較情報との2つに分けたサンプルについて、n個(図6から図9の例ではn=6)の検出場所における値を用いているので、自由度は、
(2−1)×(n−1)
となる。
【0038】
すなわち、図6から図9に示した例では、自由度は「5」であり、この場合、危険率5%のときに11.07、危険率1%のときに15.09と定められているので、対応する危険率の値と、ここでの値Rとを比較する。図9の例では、
R=10.5
であるので、危険率が5%であると1%であるとに関わらず、ユーザAは、これらユーザBからユーザEと移動先が共通していると推定する。
【0039】
一方、演算されたχ二乗値の総和Rが、対応する自由度のχ二乗分布の値を超えている場合は、同じ母集団からのサンプルであるとの仮定を棄却する。すなわち、ユーザAは、ユーザBからユーザEまでの各移動体とは移動先が共通していないと推定する。
【0040】
出力部35は、比較部34において為された推定の結果を出力する。一例として、この出力部35は、対象情報となった移動体と、比較情報となった各移動体との移動先が共通していないと推定された場合に、対象情報となった移動体の配布に誤りがある可能性がある旨の情報を表示部14に出力する。
【0041】
[動作]
本実施の形態の情報処理装置1は、以上の構成を備え、次のように動作する。なお、以下の説明において、情報処理装置1に接続された検出システム2は、予め次の動作を行っているものとする。すなわち、検出システム2の受信機21は、それぞれの設置場所の近傍にある発信装置が発信する移動体識別情報を受信し、自己に割り当てられた受信機識別子と、受信した移動体識別情報とを集計装置22に出力している。集計装置22は、入力された移動体識別情報と受信機識別子、及び入力された日時を表す日時情報を互いに関連付けて、ストレージデバイスなどに蓄積して記憶している。
【0042】
ここでは利用者は、各移動体(従業者)に配布され、各移動体とともに移動する各発信装置の少なくとも一つを対象候補として、各対象候補の発信する移動体識別情報の一覧を対象候補一覧として、情報処理装置1に入力するものとする。
【0043】
情報処理装置1は、対象候補一覧が入力されると、次の図10に例示する処理を開始する。そして入力された対象候補一覧に含まれる移動体識別情報のうち、未だ選択していないものがあるか否かを調べる(S1)。ここで、未だ選択していないものがあれば(Yesならば)、対象候補一覧に含まれる移動体識別情報のうち、未だ選択していないものを一つ選択する(S2)。そして当該選択した移動体識別情報を発信する発信装置を、対象発信装置として以下の処理を行う。
【0044】
すなわち情報処理装置1は、記憶部12に格納されたグループ情報を参照し、選択した移動体識別情報に関連づけられている他の移動体識別情報を、比較対象識別情報として読み出す(S3)。また、情報処理装置1は、集計期間の情報を集計装置22に出力して、当該集計期間に係る集計情報を集計装置22から取得する(S4)。ここで集計期間は、既に述べたように、利用者から指定を受けてもよいが、例えば、「選択した移動体識別情報が最初に検出された日時から2週間以内」などというように、集計装置22側で保持している情報に関連する条件として指定されてもよい。
【0045】
この場合、集計装置22は、当該指定された条件に合致する集計期間の集計情報を選択的に、情報処理装置1へ送信することになる。一例として、上述のように、「選択した移動体識別情報が最初に検出された日時から2週間以内」と指定された場合、集計装置22は、保持している受信記録から、選択された移動体識別情報を最初に検出した記録を検索する。そして検索の結果見いだした記録に関連づけられている日時情報を参照し、当該日時情報を始期、当該始期となった日時情報に2週間を加算して得られた日時情報を終期として、これら始期から終期までの期間を表す集計期間の情報を生成する。そして、当該生成した集計期間内の記録を、選択的に読み出して、情報処理装置1へ送信する。
【0046】
情報処理装置1は、集計装置22から取得した集計情報のうち、処理S3で読み出した比較対象識別情報を発信する発信装置(比較対象発信装置)の検出場所の記録を抽出する(S5)。さらに情報処理装置1は、比較対象発信装置について、処理S5で抽出された検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する(S6)。なお、ここで検出機会の分布は、例えば検出回数の分布であってもよいし、検出場所や受信機21ごとなどに関連して予め定められた重みを乗じられた、検出スコア値の分布であっても構わない。
【0047】
さらに情報処理装置1は、処理S2で選択した、対象発信装置に関する検出場所の記録を、集計装置22から取得した集計情報のうちから抽出し、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成する(S7)。そして情報処理装置1は、比較情報と対象情報とを比較し、比較情報と対象情報との間に有意な差があるか否かを検定する(S8)。この比較は、分布同士の類似性を検定する統計的処理により行えばよい。情報処理装置1は、比較情報と対象情報との間に有意な差があると検定された場合(Yesの場合)は、対象発信装置を表す情報(対象発信装置が発信する移動体識別情報で構わない)を、提示リストに追加して記録し(S9)、処理S1に戻って処理を続ける。なお、提示リストはこの図10の処理開始前に空のリストとして初期化されているものとする。
【0048】
情報処理装置1は、また、処理S8において、比較情報と対象情報との間に有意な差がないと検定された場合(Noの場合)は、提示リストをそのままにして、処理S1に戻って処理を続ける。
【0049】
さらに情報処理装置1は、処理S1において、対象候補一覧に含まれる移動体識別情報のうち、未だ選択していないものがなければ(Noならば)、提示リストを出力して(S10)、処理を終了する。
【0050】
以上の処理により、情報処理装置1は、利用者が対象候補一覧に含めた移動体識別情報を発信する発信装置のうちに、グループ情報により、関連づけられている他の移動体識別情報に係る発信装置と類似の検出場所へ移動していない発信装置があると、その対象候補一覧に含められた移動体識別情報を提示リストに含めて提示することとなる。
【0051】
[グループ情報の別の例]
また、ここまでの説明では、グループ情報として、移動体識別情報同士を関連づける例について説明したが、グループ情報の例はこれだけに限られない。
【0052】
グループ情報の別の例としては、対象発信装置がともに移動する移動体と、他の移動体との間の関係に関わる条件であってもよい。例えばグループ情報は、図11に例示するように、移動体識別情報と、当該移動体識別情報で識別される移動体である従業者の所属を表す少なくとも一つの項目情報(所属部門、居所フロア、職制など)とを関連づけたものであってもよい。
【0053】
このようなグループ情報を用いる場合、情報処理装置1は、図10に例示した処理S2で選択した移動体識別情報に関連づけられた各項目情報を参照情報として読み出し、当該読み出した参照情報に完全一致することを条件(探索条件)として、当該条件に合致する(参照情報に含まれる各項目情報の値に、対応する項目情報のすべてが一致するような)項目情報の組を検索する。そして、検索の結果見いだされた項目情報の組に関連づけられた、他の移動体識別情報(処理S2で選択した移動体識別情報以外の移動体識別情報)を比較対象識別情報としてグループ情報から抽出することになる。
【0054】
また、この場合、情報処理装置1は、参照情報に完全一致するとの探索条件で見いだされる項目情報の組がグループ情報のうちにいくつあるかを調べ、この数が予め定めたしきい値(母集団数しきい値)よりも小さいときに、探索条件を、項目情報の一部が一致するとの条件に補正してもよい。
【0055】
一例として、情報処理装置1は、所属部門、居所フロア、職制のうち、例えば所属部門のみが一致するとの探索条件に補正して、参照項目情報の所属部門と同じ所属部門である項目情報に関連づけられた他の移動体識別情報を比較対象識別情報としてグループ情報から抽出する。
【0056】
この探索条件の補正の処理においては、情報処理装置1は、参照情報に含まれる各項目情報を注目情報として、注目情報の値に、対応する項目情報の値が一致するとの探索条件で見いだされる移動体識別情報の数をカウントする。そして、カウント値の最も多い注目情報を選択し、この選択した注目情報の値に、対応する項目情報の値が一致するとの探索条件で見いだされる他の移動体識別情報を、比較対象識別情報として抽出する。
【0057】
また、項目情報ごとに優先順位を設けて、優先順位の低いものから順に探索条件から排除してもよい。例えば、所属部門、居所フロア、職制の順で優先順位が低くなるとするとき、当初は、所属部門、居所フロア、職制のすべての項目情報が一致するものを探索し、探索の結果見いだされた項目情報の組の数が母集団しきい値より小さい場合は、予め、所属部門、居所フロア、職制の間で定めた優先順位に従い、最も優先順位の低い職制を排除して、所属部門と居所フロアとが一致するものを探索し、探索の結果見いだされた項目情報の組の数が母集団しきい値より小さいか否かを調べ…というようにしてもよい。
【0058】
[変形例]
また、ここまでの説明では、集計装置22が、集計期間の入力を受けて、集計情報を生成する処理を行っているが、情報処理装置1が集計装置22にて蓄積されている受信記録を取得し、この受信記録から集計情報を生成してもよい。
【0059】
また、情報処理装置1は、移動体識別情報に関連づけて、当該移動体識別情報を発信する発信機がともに移動する移動体が、検出されるべきでない検出場所を特定する情報を検出除外情報として保持して、次の処理を行ってもよい。
【0060】
すなわち情報処理装置1は、取得した集計情報を参照し、注目する移動体識別情報が、検出除外情報において、それに関連づけられた検出場所で検出された回数が予め定めたしきい値を超えている場合に、その旨を表す情報を出力してもよい。
【0061】
また、注目する移動体識別情報が、検出除外情報において、それに関連づけられた検出場所で検出された回数が予め定めたしきい値を超えている場合に、当該移動体識別情報を発信する発信装置を、対象発信装置として、図10に例示した処理を実行することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置及びそれに接続される検出システムの例を表す構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置に接続される検出システムが保持する受信記録の例を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報処理装置及びそれに接続される検出システムが用いる検出場所と受信機識別子とを関連づけたテーブルの例を表す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が取得する集計情報の例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の例を表す機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理例を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理課程の例を表す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理課程の例を表す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理課程の例を表す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる処理の例を表すフローチャート図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が用いるグループ情報の別の例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 情報処理装置、2 検出システム、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 通信部、21 受信機、22 集計装置、31 取得部、32 抽出部、33 比較情報生成部、34 比較部、35 出力部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の現在位置を取得する位置情報取得手段と、作業対象物毎に、該作業対象物に関する作業を実施すべき位置の情報を登録する作業位置情報登録手段と、作業対象物を指定する情報を入力する入力手段と、該入力手段によって指定された作業対象物に関する作業位置情報を前記作業位置情報登録手段より読出し、該作業位置情報と前記位置情報取得装置により取得した移動体の現在位置とを比較することにより作業位置が正しいか否かを検出する比較手段とを有する構成としたシステムが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2001−312787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出すること。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、情報処理装置であって、移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、を含むこととしたものである。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の情報処理装置であって、前記条件は、対象発信装置がともに移動する移動体と、他の移動体との間の関係に関わる条件であることとしたものである。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の情報処理装置であって、前記予め定められた条件を満足する比較対象発信装置の数が予め定めたしきい値を下回る場合に、前記条件を補正する補正手段をさらに含むこととしたものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、プログラムであって、コンピュータを、移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、として機能させることとしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1、4記載の発明によると、検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出できる。
【0009】
請求項2記載の発明によると、移動体間の関係に係る条件により、検出場所ごとの検出機会の分布がある条件を満足する他の発信装置と異なる発信装置を検出できる。
【0010】
請求項3記載の発明によると、条件を補正できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る情報処理装置1は、図1に例示するように、検出システム2に接続される。以下の例では、検出システム2は、企業などの組織で用いられるものとし、移動体は組織の従業者であるとする。また検出システム2は、検出場所の一例である各居室に、少なくとも1つの受信機21が設置され、これらの受信機21からの情報を、通信回線を介して受け入れて集計する集計装置22を含む。
【0012】
また、情報処理装置1は、この集計装置22に対してネットワーク等の通信手段を介して接続される。本実施の形態の情報処理装置1は、図1に例示したように、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15とを含んで構成される。
【0013】
ここでは各従業者(各移動体)は、それぞれ固有の情報(社員番号など:以下、移動体識別情報と呼ぶ)を含んだ情報を発信する発信装置を携帯しているものとする。この発信装置は、例えば、いわゆるアクティブRFID(Radio Frequency IDentification)などである。この発信装置は、発信の対象となる移動体識別情報を記憶しており、予め定められたタイミングごと(例えば30秒ごと)に、当該移動体識別情報を無線にて発信する。
【0014】
情報処理装置1の制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。この制御部11は、集計装置22から、移動体とともに移動する、互いに異なる移動体識別情報を発信する各発信装置を検出した場所の記録を取得する。そして制御部11は、処理の対象となる対象発信装置の検出場所の記録と、対象発信装置とは異なる発信装置のうち予め定められた条件を満足する、比較対象発信装置の検出場所の記録とを、取得した情報から抽出する。制御部11は、この抽出した、比較対象発信装置の検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成し、また、抽出した対象発信装置の検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成する。そして制御部11は、当該対象情報と前記比較情報とを比較して、当該比較の結果に関わる情報を出力する。この制御部11の詳しい処理の内容については、後に述べる。
【0015】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の記憶デバイスであり、制御部11によって実行されるプログラムを保持している。また、この記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。本実施の形態においては、この記憶部12には、移動先が類似すると仮定される移動体の移動体識別情報を互いに関連づける情報(グループ情報)が予め記録されているものとする。
【0016】
操作部13は、キーボードやマウスなどであり、利用者の操作を受け入れて、当該操作の内容を表す情報を制御部11に出力する。表示部14は、ディスプレイなどであり、制御部11から入力される指示に従って情報を表示する。通信部15は、ネットワークインタフェースなどであり、ネットワークなどの通信回線を介して集計装置22等との間で情報を送受する。
【0017】
検出システム2の受信機21は、それぞれ固有の受信機識別子が割り当てられており、当該割り当てられた受信機識別子を記憶している。受信機21は、移動体とともに移動する発信装置が発信した信号が無線にて到来すると、当該信号を受信して、受信した信号に含まれる移動体識別情報を取り出し、当該移動体識別情報と、記憶している受信機識別子とを関連づけて集計装置22に送出する。
【0018】
集計装置22は、受信機21から、当該受信機21が受信した移動体識別情報と、受信機識別子と関連づけて入力されると、図示しない計時部(カレンダーチップなど時刻を計時する装置)から入力の時点を表す日時情報を取得し、これら入力された移動体識別情報と受信機識別子、及び取得した日時情報を互いに関連付けて、ストレージデバイスなどに蓄積して記憶する(図2)。以下、この図2に記録した情報を「受信記録」と称する。
【0019】
また、この集計装置22は、図3に例示するように検出場所を特定する情報(例えば居室を特定する文字列)と、当該情報で特定される検出場所に配された受信機21の受信機識別子とを関連づけて記憶している。さらにこの集計装置22は後に述べるように、情報処理装置1から、集計期間を特定する情報とともに、集計の指示を受け入れて、次の処理を行う。
【0020】
すなわち集計装置22は、集計の指示を受けると、受信記録のうち、特定された集計期間に含まれる日時情報に関連づけられた受信記録を選択的に抽出し、抽出した受信記録について、検出場所を特定する情報ごとに、当該検出場所を特定する情報に関連づけられた受信機識別子の受信機21にて受信した移動体識別情報を集計して、検出場所の記録である集計情報(図4)を生成する。具体的には、移動体識別情報ごとの受信回数を累算することとすればよい。また、この集計の処理の別の例として、受信機識別子ごと、あるいは検出場所ごとに定められた重みを乗じた受信回数を累算するなどして、検出スコア値を算出してもよい。
【0021】
次に、情報処理装置1の制御部11の動作について説明する。本実施の形態の制御部11は、機能的には図5に例示するように、取得部31と、抽出部32と、比較情報生成部33と、比較部34と、出力部35とを含んで構成される。
【0022】
取得部31は、通信部15を介して集計装置22から、集計装置22にて集計された集計情報を取得する。この取得部31は、利用者から処理の対象とする期間を指定する情報の入力を受けて、当該入力された期間を集計期間として集計装置22に出力し、当該集計期間に係る集計情報を取得する。
【0023】
抽出部32は、処理の対象となる対象発信装置を特定する情報(例えば対象とする発信装置が発信する移動体識別情報)の入力を受けて、当該対象発信装置がともに移動する移動体と移動先が類似すると仮定される他の移動体に係る移動体識別情報を、グループ情報から読み出す。そして抽出部32は、取得部31が取得した集計情報のうち、比較対象識別情報を発信する発信装置(比較対象発信装置)の検出場所の記録を抽出する。
【0024】
比較情報生成部33は、各比較対象発信装置について、抽出部32によって抽出された検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する。なお、ここで検出機会の分布は、例えば検出回数の分布であってもよいし、検出場所や受信機21ごとなどに関連して予め定められた重みを乗じられた、検出スコア値の分布であっても構わない。
【0025】
比較部34は、対象発信装置に関する検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、比較情報と比較する。この比較は、分布同士の類似性を検定する統計的処理を行えばよい。一例として、このような統計的処理としてχ二乗分布による検定を行う例を次に示す。なお、以下では、移動体識別情報が、検出対象である移動体を所持する利用者の名称(ユーザA、ユーザB…などと呼ぶ)そのものであるとする。
【0026】
比較部34は、比較対象発信装置に係る比較情報、及び対象情報において、いずれもその検出機会を表す値が予め定めた閾値(例えば「10」)を下回る検出場所(稀少検出場所)については、「その他」として稀少検出場所での検出結果の値の累算値を演算することとしてもよい。
【0027】
比較部34は、対象情報(図6のユーザA(α))と、比較情報(図6のユーザBからE(β))とが同じ母集団からのサンプルであると仮定して、サンプルiごとの合計と、検出場所jごとの合計とから、各移動体の検出場所ごとの推定検出期待値tijを求め、これと各サンプルの値xijとから、次の式(1)により、χ二乗値を算出する。
【0028】
【数1】
【0029】
なお、ここで比較情報は、各比較対象発信装置の検出機会の分布であってもよいし、複数の比較対象発信装置の検出場所ごとの検出回数等を、検出場所ごとに総計したものであってもよい。以下の例では、比較情報は、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出回数等を、検出場所ごとに総計して得た検出機会の分布であるとする。
【0030】
具体的に比較部34は、図6に示したテーブルに従い、比較情報についてはサンプルごとに累算した結果を得ておく(図7)。仮に、ユーザAからEが移動先を共通にしているとすれば、ユーザAの検出場所の分布は全体の分布と同じ確率となるはずであるので、比較部34は、対象情報に係るユーザAの検出場所pでの推定期待値を、
【0031】
【数2】
【0032】
と演算する。ここで、Npは、検出場所pにおいて、ユーザAからEの各移動体が検出された回数の和であり、Tは、すべての検出場所における、ユーザAからEの各移動体の検出回数の総計を表し、Taは、すべての検出場所における、ユーザAの移動体の検出回数の総計を表す(図6)。
【0033】
同様に、比較情報の累算結果に対しても同様に、
【0034】
【数3】
【0035】
を演算しておく。ここに、Toは、すべての検出場所における比較情報に係る移動体(ユーザBからユーザE)の検出回数の総和を表す(図7)。比較部34は、こうして対象情報に係るユーザAの各検出場所での検出回数の推定期待値、及び比較情報となるユーザBからユーザEの各検出場所での検出回数の累計値の推定期待値を得る(図8)。
【0036】
そして、実際の検出回数(比較情報についてはその累計)から、対応する推定期待値を差し引いて二乗し、当該二乗値を推定期待値で除して、図8の各欄におけるχ二乗値を算出した結果を図9に示す(なお、図8,図9においては、有効数字については考慮していない)。
【0037】
さらに比較部34は、これらのχ二乗値の総和(R)を演算する。そして、この総和の値(R)が、予め定められた危険率のχ二乗分布の値よりも大きいか否かを調べる。ここに、定められた危険率のχ二乗分布は、一般に自由度に依存することとなるが、ここでは対象情報と比較情報との2つに分けたサンプルについて、n個(図6から図9の例ではn=6)の検出場所における値を用いているので、自由度は、
(2−1)×(n−1)
となる。
【0038】
すなわち、図6から図9に示した例では、自由度は「5」であり、この場合、危険率5%のときに11.07、危険率1%のときに15.09と定められているので、対応する危険率の値と、ここでの値Rとを比較する。図9の例では、
R=10.5
であるので、危険率が5%であると1%であるとに関わらず、ユーザAは、これらユーザBからユーザEと移動先が共通していると推定する。
【0039】
一方、演算されたχ二乗値の総和Rが、対応する自由度のχ二乗分布の値を超えている場合は、同じ母集団からのサンプルであるとの仮定を棄却する。すなわち、ユーザAは、ユーザBからユーザEまでの各移動体とは移動先が共通していないと推定する。
【0040】
出力部35は、比較部34において為された推定の結果を出力する。一例として、この出力部35は、対象情報となった移動体と、比較情報となった各移動体との移動先が共通していないと推定された場合に、対象情報となった移動体の配布に誤りがある可能性がある旨の情報を表示部14に出力する。
【0041】
[動作]
本実施の形態の情報処理装置1は、以上の構成を備え、次のように動作する。なお、以下の説明において、情報処理装置1に接続された検出システム2は、予め次の動作を行っているものとする。すなわち、検出システム2の受信機21は、それぞれの設置場所の近傍にある発信装置が発信する移動体識別情報を受信し、自己に割り当てられた受信機識別子と、受信した移動体識別情報とを集計装置22に出力している。集計装置22は、入力された移動体識別情報と受信機識別子、及び入力された日時を表す日時情報を互いに関連付けて、ストレージデバイスなどに蓄積して記憶している。
【0042】
ここでは利用者は、各移動体(従業者)に配布され、各移動体とともに移動する各発信装置の少なくとも一つを対象候補として、各対象候補の発信する移動体識別情報の一覧を対象候補一覧として、情報処理装置1に入力するものとする。
【0043】
情報処理装置1は、対象候補一覧が入力されると、次の図10に例示する処理を開始する。そして入力された対象候補一覧に含まれる移動体識別情報のうち、未だ選択していないものがあるか否かを調べる(S1)。ここで、未だ選択していないものがあれば(Yesならば)、対象候補一覧に含まれる移動体識別情報のうち、未だ選択していないものを一つ選択する(S2)。そして当該選択した移動体識別情報を発信する発信装置を、対象発信装置として以下の処理を行う。
【0044】
すなわち情報処理装置1は、記憶部12に格納されたグループ情報を参照し、選択した移動体識別情報に関連づけられている他の移動体識別情報を、比較対象識別情報として読み出す(S3)。また、情報処理装置1は、集計期間の情報を集計装置22に出力して、当該集計期間に係る集計情報を集計装置22から取得する(S4)。ここで集計期間は、既に述べたように、利用者から指定を受けてもよいが、例えば、「選択した移動体識別情報が最初に検出された日時から2週間以内」などというように、集計装置22側で保持している情報に関連する条件として指定されてもよい。
【0045】
この場合、集計装置22は、当該指定された条件に合致する集計期間の集計情報を選択的に、情報処理装置1へ送信することになる。一例として、上述のように、「選択した移動体識別情報が最初に検出された日時から2週間以内」と指定された場合、集計装置22は、保持している受信記録から、選択された移動体識別情報を最初に検出した記録を検索する。そして検索の結果見いだした記録に関連づけられている日時情報を参照し、当該日時情報を始期、当該始期となった日時情報に2週間を加算して得られた日時情報を終期として、これら始期から終期までの期間を表す集計期間の情報を生成する。そして、当該生成した集計期間内の記録を、選択的に読み出して、情報処理装置1へ送信する。
【0046】
情報処理装置1は、集計装置22から取得した集計情報のうち、処理S3で読み出した比較対象識別情報を発信する発信装置(比較対象発信装置)の検出場所の記録を抽出する(S5)。さらに情報処理装置1は、比較対象発信装置について、処理S5で抽出された検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する(S6)。なお、ここで検出機会の分布は、例えば検出回数の分布であってもよいし、検出場所や受信機21ごとなどに関連して予め定められた重みを乗じられた、検出スコア値の分布であっても構わない。
【0047】
さらに情報処理装置1は、処理S2で選択した、対象発信装置に関する検出場所の記録を、集計装置22から取得した集計情報のうちから抽出し、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成する(S7)。そして情報処理装置1は、比較情報と対象情報とを比較し、比較情報と対象情報との間に有意な差があるか否かを検定する(S8)。この比較は、分布同士の類似性を検定する統計的処理により行えばよい。情報処理装置1は、比較情報と対象情報との間に有意な差があると検定された場合(Yesの場合)は、対象発信装置を表す情報(対象発信装置が発信する移動体識別情報で構わない)を、提示リストに追加して記録し(S9)、処理S1に戻って処理を続ける。なお、提示リストはこの図10の処理開始前に空のリストとして初期化されているものとする。
【0048】
情報処理装置1は、また、処理S8において、比較情報と対象情報との間に有意な差がないと検定された場合(Noの場合)は、提示リストをそのままにして、処理S1に戻って処理を続ける。
【0049】
さらに情報処理装置1は、処理S1において、対象候補一覧に含まれる移動体識別情報のうち、未だ選択していないものがなければ(Noならば)、提示リストを出力して(S10)、処理を終了する。
【0050】
以上の処理により、情報処理装置1は、利用者が対象候補一覧に含めた移動体識別情報を発信する発信装置のうちに、グループ情報により、関連づけられている他の移動体識別情報に係る発信装置と類似の検出場所へ移動していない発信装置があると、その対象候補一覧に含められた移動体識別情報を提示リストに含めて提示することとなる。
【0051】
[グループ情報の別の例]
また、ここまでの説明では、グループ情報として、移動体識別情報同士を関連づける例について説明したが、グループ情報の例はこれだけに限られない。
【0052】
グループ情報の別の例としては、対象発信装置がともに移動する移動体と、他の移動体との間の関係に関わる条件であってもよい。例えばグループ情報は、図11に例示するように、移動体識別情報と、当該移動体識別情報で識別される移動体である従業者の所属を表す少なくとも一つの項目情報(所属部門、居所フロア、職制など)とを関連づけたものであってもよい。
【0053】
このようなグループ情報を用いる場合、情報処理装置1は、図10に例示した処理S2で選択した移動体識別情報に関連づけられた各項目情報を参照情報として読み出し、当該読み出した参照情報に完全一致することを条件(探索条件)として、当該条件に合致する(参照情報に含まれる各項目情報の値に、対応する項目情報のすべてが一致するような)項目情報の組を検索する。そして、検索の結果見いだされた項目情報の組に関連づけられた、他の移動体識別情報(処理S2で選択した移動体識別情報以外の移動体識別情報)を比較対象識別情報としてグループ情報から抽出することになる。
【0054】
また、この場合、情報処理装置1は、参照情報に完全一致するとの探索条件で見いだされる項目情報の組がグループ情報のうちにいくつあるかを調べ、この数が予め定めたしきい値(母集団数しきい値)よりも小さいときに、探索条件を、項目情報の一部が一致するとの条件に補正してもよい。
【0055】
一例として、情報処理装置1は、所属部門、居所フロア、職制のうち、例えば所属部門のみが一致するとの探索条件に補正して、参照項目情報の所属部門と同じ所属部門である項目情報に関連づけられた他の移動体識別情報を比較対象識別情報としてグループ情報から抽出する。
【0056】
この探索条件の補正の処理においては、情報処理装置1は、参照情報に含まれる各項目情報を注目情報として、注目情報の値に、対応する項目情報の値が一致するとの探索条件で見いだされる移動体識別情報の数をカウントする。そして、カウント値の最も多い注目情報を選択し、この選択した注目情報の値に、対応する項目情報の値が一致するとの探索条件で見いだされる他の移動体識別情報を、比較対象識別情報として抽出する。
【0057】
また、項目情報ごとに優先順位を設けて、優先順位の低いものから順に探索条件から排除してもよい。例えば、所属部門、居所フロア、職制の順で優先順位が低くなるとするとき、当初は、所属部門、居所フロア、職制のすべての項目情報が一致するものを探索し、探索の結果見いだされた項目情報の組の数が母集団しきい値より小さい場合は、予め、所属部門、居所フロア、職制の間で定めた優先順位に従い、最も優先順位の低い職制を排除して、所属部門と居所フロアとが一致するものを探索し、探索の結果見いだされた項目情報の組の数が母集団しきい値より小さいか否かを調べ…というようにしてもよい。
【0058】
[変形例]
また、ここまでの説明では、集計装置22が、集計期間の入力を受けて、集計情報を生成する処理を行っているが、情報処理装置1が集計装置22にて蓄積されている受信記録を取得し、この受信記録から集計情報を生成してもよい。
【0059】
また、情報処理装置1は、移動体識別情報に関連づけて、当該移動体識別情報を発信する発信機がともに移動する移動体が、検出されるべきでない検出場所を特定する情報を検出除外情報として保持して、次の処理を行ってもよい。
【0060】
すなわち情報処理装置1は、取得した集計情報を参照し、注目する移動体識別情報が、検出除外情報において、それに関連づけられた検出場所で検出された回数が予め定めたしきい値を超えている場合に、その旨を表す情報を出力してもよい。
【0061】
また、注目する移動体識別情報が、検出除外情報において、それに関連づけられた検出場所で検出された回数が予め定めたしきい値を超えている場合に、当該移動体識別情報を発信する発信装置を、対象発信装置として、図10に例示した処理を実行することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置及びそれに接続される検出システムの例を表す構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る情報処理装置に接続される検出システムが保持する受信記録の例を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る情報処理装置及びそれに接続される検出システムが用いる検出場所と受信機識別子とを関連づけたテーブルの例を表す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が取得する集計情報の例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の例を表す機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理例を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理課程の例を表す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理課程の例を表す説明図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる検定の処理課程の例を表す説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る情報処理装置によって行われる処理の例を表すフローチャート図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る情報処理装置が用いるグループ情報の別の例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 情報処理装置、2 検出システム、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 通信部、21 受信機、22 集計装置、31 取得部、32 抽出部、33 比較情報生成部、34 比較部、35 出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、
処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、
前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、
前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、
前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
前記条件は、対象発信装置がともに移動する移動体と、他の移動体との間の関係に関わる条件であることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予め定められた条件を満足する比較対象発信装置の数が予め定めたしきい値を下回る場合に、前記条件を補正する補正手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、
処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、
前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、
前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、
前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、
処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、
前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、
前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、
前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、
を含む情報処理装置。
【請求項2】
前記条件は、対象発信装置がともに移動する移動体と、他の移動体との間の関係に関わる条件であることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記予め定められた条件を満足する比較対象発信装置の数が予め定めたしきい値を下回る場合に、前記条件を補正する補正手段をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
移動体とともに移動し、当該ともに移動する移動体に固有の情報を発信する発信装置の移動先を検出し、当該発信装置を検出した検出場所の情報の記録を蓄積する蓄積装置から、当該情報を取得する取得手段と、
処理の対象となる対象発信装置に係る検出場所の記録と、予め定められた条件を満足する、前記対象発信装置とは異なる発信装置である比較対象発信装置に係る検出場所の記録と、を前記取得手段が取得した情報から抽出する抽出手段と、
前記抽出した、前記比較対象発信装置に係る検出場所の記録から、比較対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す比較情報を生成する生成手段と、
前記抽出した、前記対象発信装置に係る検出場所の記録から、対象発信装置の検出場所ごとの検出機会の分布を表す対象情報を生成し、当該対象情報と前記比較情報とを比較する比較手段と、
前記比較の結果に関わる情報を出力する出力手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−124354(P2010−124354A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297594(P2008−297594)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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