説明

感光性樹脂組成物、硬化膜の形成方法、硬化膜、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置

【課題】保存安定性及び現像性に優れ、優れた膜物性と高い透明性を有する硬化膜を与えることができる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(成分A)(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を有し、アルカリ可溶性基を有し、オキシラニル基及びオキセタニル基のいずれをも有さず、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を含有するアルカリ可溶性樹脂、(成分B)1,2−キノンジアジド化合物、並びに、(成分C)(メタ)アクリルエステルに由来し、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を含み、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を有しない架橋性樹脂を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜の形成方法、硬化膜、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置や、液晶表示装置などには、パターン形成された層間絶縁膜が設けられている。この層間絶縁膜の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なく、しかも十分な平坦性が得られるといったことから、感光性樹脂組成物が広く使用されている。
上記表示装置における層間絶縁膜には、絶縁性、耐溶剤性、耐熱性、及びITOスパッタ耐性に優れるといった硬化膜の物性に加えて、高い透明性が望まれている。このため、透明性に優れたアクリル系樹脂を膜形成成分として用いることが試みられている。
【0003】
層間絶縁膜を形成するための感光性樹脂組成物としては、例えば、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物、及び他のラジカル重合性化合物の共重合体である、アルカリ水溶液に可溶な樹脂と、感光性酸生成化合物と、を含有する感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。この組成物は、硬化膜の物性には優れるものの、エポキシ基とカルボン酸又は無水カルボン酸が同一分子中に存在するために、感光性樹脂組成物の保存安定性が極めて悪いという問題があった。
【0004】
この問題に対して、エポキシ基の代わりにオキセタン基を用いた共重合体であるアルカリ水溶液に可溶な樹脂と、感光性酸生成化合物と、を含有する感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。この組成物は、感光性樹脂組成物の保存安定性には優れるものの、オキセタン基の反応性がエポキシ基に対して劣るが故に、硬化膜物性が十分ではないという問題があった。
また、エポキシ基やオキセタン基を有しないアルカリ水溶液に可溶な樹脂と、エポキシ基を有する架橋剤と、感光性酸生成化合物と、を含有する感光性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)。この組成物は、感光性樹脂組成物の保存安定性に優れるものの、カルボン酸とエポキシ基による架橋密度が低く、膜物性が十分でなかった。
【0005】
特許文献4では、エポキシ基又はオキセタン基とカルボン酸との架橋反応ではなく、アルカリ水溶液に可溶な樹脂の側鎖に導入された側鎖を架橋させるタイプの感光性樹脂組成物が開示されているが、この感光性樹脂組成物で形成される硬化膜の物性も十分ではなかった。特許文献5では化学増幅型ポジレジストの原理を利用した感光性樹脂組成物が開示されているが、この感光性樹脂組成物で形成される硬化膜は、透過率が低いという問題があった。
【0006】
以上に述べたように、優れた保存安定性及び優れた現像性を有し、かつ、形成される硬化膜の物性及び透明性に優れる感光性樹脂組成物は、強く望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2961722号公報
【特許文献2】特開2001−330953号公報
【特許文献3】特開2007−34257号公報
【特許文献4】特開2008−256974号公報
【特許文献5】特許第3873261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、保存安定性及び現像性に優れ、優れた膜物性と高い透明性を有する硬化膜を与える感光性樹脂組成物を提供すること、及び、優れた膜物性と高い透明性を有する硬化膜及びその製造方法を提供することである。
また、本発明が解決しようとする別の課題は、優れた膜物性と高い透明性を有する層間絶縁膜を具備する有機EL表示装置、及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に関して鋭意検討を行ったところ、特定のアルカリ可溶性樹脂と特定の高分子架橋剤とを併用することにより、優れた保存安定性及び優れた現像性を有し、かつ、形成される硬化膜の物性及び透明性に優れる感光性樹脂組成物が得られることを見出した。
上記の課題は、詳しくは、下記の手段<1>〜<13>により解決された。
<1>(成分A)(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を含有し、アルカリ可溶性基を有し、オキシラニル基及びオキセタニル基のいずれをも有さず、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を含有するアルカリ可溶性樹脂、(成分B)1,2−キノンジアジド化合物、並びに、(成分C)(メタ)アクリルエステルに由来し、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を含み、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を有しない架橋性樹脂、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
<2>(成分D)溶媒を含む、<1>に記載の感光性樹脂組成物、
<3>(成分A)中の前記残基が、カルボン酸の第3級アルコールエステル構造、カルボン酸のアセタールエステル構造、及び、カルボン酸のケタールエステル構造よりなる群から選ばれた、<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物、
<4>(成分A)中の前記残基が、カルボン酸のtert−ブチルエステル構造である、<1>〜<3>いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
<5>(成分C)の前記樹脂が、オキシラニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を有し、重量平均分子量が2,000以上50,000以下である、<1>〜<4>いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
<6>(成分C)の前記樹脂が、オキシラニル基を含有するモノマー単位を50〜95モル%含有する、<1>〜<5>いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
<7>(成分E)アルコキシメチル基を有する架橋剤を含有する、<1>〜<6>いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
<8>(成分F)酸化防止剤、(成分G)密着促進剤、及び、(成分H)界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、<1>〜<7>いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、
<9>(1)<2>〜<8>いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程、(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去するプリベーク工程、(3)活性放射線で露光する工程、(4)水性現像液で現像する工程、及び、(5)熱硬化するポストベーク工程、を含む硬化膜の形成方法、
<10><9>に記載の方法により形成された硬化膜、
<11>層間絶縁膜である<10>に記載の硬化膜、
<12><10>又は<11>に記載の硬化膜を具備する、有機EL表示装置、
<13><10>又は<11>に記載の硬化膜を具備する、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存安定性及び現像性に優れ、優れた膜物性と高い透明性を有する硬化膜を与える感光性樹脂組成物を提供することができた。また、本発明によれば、優れた膜物性と高い透明性を有する硬化膜及びその製造方法が提供できた。この硬化膜は、層間絶縁膜として使用でき、有機EL表示装置や液晶表示装置に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】有機EL表示装置の一例の構成概念図を示す。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
【図2】液晶表示装置の一例の構成概念図を示す。液晶表示装置におけるアクティブマトリックス基板の模式的断面図を示し、層間絶縁膜である硬化膜17を有している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(成分A)(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を含有し、アルカリ可溶性基を有し、オキシラニル基及びオキセタニル基のいずれをも有さず、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を含有するアルカリ可溶性樹脂、(成分B)1,2−キノンジアジド化合物、並びに、(成分C)(メタ)アクリルエステルに由来し、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を含み、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を有しない架橋性樹脂、を含有することを特徴とする。
上記のポジ型の感光性樹脂組成物の必須成分である、成分A、成分B及び成分Cについて以下に説明する。
【0013】
(成分A)
成分Aは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を含有し、アルカリ可溶性基を有し、オキシラニル基及びオキセタニル基のいずれをも有さず、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を含有するアルカリ可溶性樹脂である。
このアルカリ可溶性樹脂を、以下、単に「アルカリ可溶性樹脂(A)」とも称する。
成分Aのアルカリ可溶性樹脂(A)は、付加重合性の樹脂であり、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を含む。なお、「(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位」を「アクリル系モノマー単位」ともいう。また、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を意味するものとする。
成分Aのアルカリ可溶性樹脂は、フッ素原子を有しないことが好ましい。
【0014】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有し、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸、すなわち、アクリル酸又はメタクリル酸を含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸に由来するモノマー単位は、成分Aの樹脂をアルカリ可溶性にするために充分な量を共重合することが好ましい。(メタ)アクリル酸の共重合量は、アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価を110〜150mgKOH/gにするためのものであることが好ましく、120〜140mgKOH/gであることがより好ましい。
また、成分Aは、アクリル系モノマー単位として、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとして、メタクリル酸メチル(MMA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが例示できる。
【0015】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、オキシラニル基又はオキセタニル基のいずれをも分子内に含有しない。したがって、アルカリ可溶性樹脂(A)は、単独ではカルボキシ基と反応する架橋性基を有しないが、後述の成分Cである、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を含む架橋性樹脂と併用することにより、熱硬化性を具備する。
【0016】
アルカリ可溶性樹脂(A)は、加熱によりカルボキシ基を生成する残基、すなわち、カルボキシ基の保護基を有する。この残基の化学構造とこの残基を有するモノマー単位の共重合比については、後述する。
アルカリ可溶性樹脂(A)は、単独で、23℃において、0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の100mlに0.1g以上可溶であることをいう。
アルカリ可溶性樹脂(A)は、アルカリ可溶性基として、カルボキシ基、カルボン酸無水物残基又はフェノール性水酸基を有することが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
【0017】
本発明に使用するアルカリ可溶性樹脂(A)に含まれるアクリル系モノマー単位の共重合比は、透過率が高い硬化膜を形成し得るという観点から20モル%〜100モル%が好ましく、35モル%〜100モル%がより好ましく、50モル%〜100モル%が特に好ましい。
【0018】
本発明に使用するアルカリ可溶性樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有するモノマー単位(A1)と、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)、とを必須のモノマー単位として含む共重合体(以下、特定共重合体(A)とも称する。)である。この特定共重合体(A)は、必要に応じて、以下に示す、(A1)及び(A3)とは異なるモノマー単位(A2)を含んでいてもよい。
以下、(A1)〜(A3)のモノマー単位について説明する。
【0019】
〔アルカリ可溶性基を有するモノマー単位(A1)〕
本発明に使用する特定共重合体(A)は、感光性樹脂組成物の現像液に対する溶解性を保持する観点から、カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)、エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを共に有するモノマー単位(A1−2)、フェノール性水酸基を有するモノマー単位(A1−3)のいずれかを含む。
【0020】
−カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)−
カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)としては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの、分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有する不飽和カルボン酸等に由来するモノマー単位が挙げられる。
【0021】
カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)を得るために用いられる不飽和カルボン酸としては、以下に例示するものが用いられる。
即ち、不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロロアクリル酸、けい皮酸などが例示できる。
また、不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが例示できる。
【0022】
また、カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)を得るために用いられる不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物であってもよい。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。また、不飽和多価カルボン酸は、多価カルボン酸のモノ(2−メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)などが挙げられる。
【0023】
さらに、不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0024】
また、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等も用いることができる。
【0025】
中でも、現像性の観点から、 カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)を形成するためには、アクリル酸、メタクリル酸、又は不飽和多価カルボン酸の無水物等を用いることが好ましい。
【0026】
カルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0027】
−エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを共に有するモノマー単位(A1−2)−
エチレン性不飽和基とカルボキシ基とを共に有するモノマー単位(A1−2)とは、後述のエチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)中に存在する水酸基と、酸無水物とを反応させて得られたモノマーに由来する単位であることが好ましい。
酸無水物としては、公知のものが使用でき、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物などの酸無水物が挙げられる。これらの中では、現像性の観点から、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、又は無水コハク酸、が好ましい。
酸無水物の水酸基に対する反応率は、現像性の観点から、好ましくは10モル%〜100モル%、更に好ましくは30モル%〜100モル%である。
【0028】
−フェノール性水酸基を有するモノマー単位(A1−3)−
フェノール性水酸基を有するモノマー単位(A1−3)としては、ヒロドキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等の分子中に少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物に由来するモノマー単位が挙げられる。
【0029】
アルカリ可溶性基を有するモノマー単位(A1)は、(A1−1)、(A1−2)、(A1−3)のそれぞれ1種単独で構成されていてもよいし、これらを複数種混合したもので構成されていてもよいが、現像性と透明性の観点から、(A1−1)のみで構成されていることが特に好ましい。
【0030】
本発明に使用する特定共重合体(A)中のアルカリ可溶性基を有するモノマー単位(A1)の含有量は、現像性の観点から、1〜50モル%が好ましく、3〜45モル%がより好ましく、5〜40モル%が更に好ましい。なお、ここで、アルカリ可溶性基を有するモノマー単位(A1)の含有量は、(A1−1)と(A1−2)及び(A1−3)との含有量の総和を意味する。
【0031】
〔加熱によりカルボン酸を生成する残基を有するモノマー単位(A3)〕
本発明に使用する特定共重合体(A)は、(A1)以外のモノマー単位として、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)を含む。ここで加熱とは、ポストベークの環境で使用される加熱条件を意味し、通常は、220〜230℃、60分である。ここで、ポストベークとは、現像工程後に、熱硬化する工程をいう。
すなわち、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)からポストベークによってカルボキシ基が生成する。生成したカルボキシ基は、後述の高分子架橋剤(C)と架橋することが可能であるため、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)を導入することにより、後述の高分子架橋剤(C)との良好な相溶性を保ちつつ、現像時に膜べり(膜厚の減少)等を発生させることなく、感光性組成物により形成された膜の架橋密度を向上させることが可能となり、優れた硬化膜の物性を得ることが可能となる。
【0032】
加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)は、ポストベークによりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位であれば、特に限定されない。
このような残基は、カルボン酸の第3級アルコールエステル構造、カルボン酸のアセタールエステル構造、及びカルボン酸のケタールエステル構造よりなる群から選ばれることが、カルボキシ基の生成効率とアウトガスの観点から好ましい。
【0033】
カルボン酸の第3級アルコールエステル構造としては、以下に示す式(I)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。
−COOC(R123) (I)
式中、R1、R2及びR3は、互いに独立に炭素数1〜12の鎖状アルキル基、炭素数3〜12の環状アルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数7〜12のアラルキル基を示し、R1、R2及びR3のいずれか2つが互いに結合してそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成していてもよい。
上記の式(I)で示される残基は、エチレン性不飽和基に由来するモノマー単位において主鎖の炭素原子に、直接結合しているか、2価の連結基を介して結合していることが好ましい。
【0034】
式(I)におけるR1、R2及びR3の炭素数1〜12の鎖状アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。
【0035】
炭素数3〜12の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等を挙げることができる。
【0036】
炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−ナフチル基等を挙げることができる。
【0037】
炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えばベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0038】
また、R1、R2及びR3は互いに結合して、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成することができる。R1とR2、R1とR3またはR2とR3が結合した場合の環構造としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、テトラヒドロフラニル基、アダマンチル基及びテトラヒドロピラニル基等を挙げることができる。
カルボン酸の第3級アルコールエステル構造の好ましい例は、R1=R2=R3=メチル基やR1=R2=メチル基でR3=ベンジル基の組み合わせが例示できる。
【0039】
前記カルボン酸のアセタールエステル構造の方が、前記カルボン酸のケタールエステル構造よりも好ましい。
前記カルボン酸のアセタールエステル構造(−COORae)におけるRaeとしては、例えば、1−メトキシエトキシ基、1−エトキシエトキシ基、1−n−プロポキシエトキシ基、1−i−プロポキシエトキシ基、1−n−ブトキシエトキシ基、1−i−ブトキシエトキシ基、1−sec−ブトキシエトキシ基、1−t−ブトキシエトキシ基、1−シクロペンチルオキシエトキシ基、1−シクロヘキシルオキシエトキシ基、1−ノルボルニルオキシエトキシ基、1−ボルニルオキシエトキシ基、1−フェニルオキシエトキシ基、1−(1−ナフチルオキシ)エトキシ基、1−ベンジルオキシエトキシ基、1−フェネチルオキシエトキシ基、(シクロヘキシル)(メトキシ)メトキシ基、(シクロヘキシル)(エトキシ)メトキシ基、(シクロヘキシル)(n−プロポキシ)メトキシ基、(シクロヘキシル)(i−プロポキシ)メトキシ基、(シクロヘキシル)(シクロヘキシルオキシ)メトキシ基、(シクロヘキシル)(フェノキシ)メトキシ基、(シクロヘキシル)(ベンジルオキシ)メトキシ基、(フェニル)(メトキシ)メトキシ基、(フェニル)(エトキシ)メトキシ基、(フェニル)(n−プロポキシ)メトキシ基、(フェニル)(i−プロポキシ)メトキシ基、(フェニル)(シクロヘキシルオキシ)メトキシ基、(フェニル)(フェノキシ)メトキシ基、(フェニル)(ベンジルオキシ)メトキシ基、(ベンジル)(メトキシ)メトキシ基、(ベンジル)(エトキシ)メトキシ基、(ベンジル)(n−プロポキシ)メトキシ基、(ベンジル)(i−プロポキシ)メトキシ基、(ベンジル)(シクロヘキシルオキシ)メトキシ基、(ベンジル)(フェノキシ)メトキシ基、(ベンジル)(ベンジルオキシ)メトキシ基、2−テトラヒドロフラニルオキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等を挙げることができる。
【0040】
これらのうち、1−エトキシエトキシ基、1−シクロヘキシルオキシエトキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、1−n−プロポキシエトキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基を好ましいものとして挙げることができる。
【0041】
前記カルボン酸のケタールエステル構造(−COORke)におけるRkeとしては、例えば、1−メチル−1−メトキシエトキシ基、1−メチル−1−エトキシエトキシ基、1−メチル−1−n−プロポキシエトキシ基、1−メチル−1−i−プロポキシエトキシ基、1−メチル−1−n−ブトキシエトキシ基、1−メチル−1−i−ブトキシエトキシ基、1−メチル−1−sec−ブトキシエトキシ基、1−メチル−1−t−ブトキシエトキシ基、1−メチル−1−シクロペンチルオキシエトキシ基、1−メチル−1−シクロヘキシルオキシエトキシ基、1−メチル−1−ノルボルニルオキシエトキシ基、1−メチル−1−ボルニルオキシエトキシ基、1−メチル−1−フェニルオキシエトキシ基、1−メチル−1−(1−ナフチルオキシ)エトキシ基、1−メチル−1−ベンジルオオキシエトキシ基、1−メチル−1−フェネチルオキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−メトキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−エトキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−n−プロポキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−i−プロポキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−シクロヘキシルオキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−フェノキシエトキシ基、1−シクロヘキシル−1−ベンジルオキシエトキシ基、1−フェニル−1−メトキシエトキシ基、1−フェニル−1−エトキシエトキシ基、1−フェニル−1−n−プロポキシエトキシ基、1−フェニル−1−i−プロポキシエトキシ基、1−フェニル−1−シクロヘキシルオキシエトキシ基、1−フェニル−1−フェニルオキシエトキシ基、1−フェニル−1−ベンジルオキシエトキシ基、1−ベンジル−1−メトキシエトキシ基、1−ベンジル−1−エトキシエトキシ基、1−ベンジル−1−n−プロポキシエトキシ基、1−ベンジル−1−i−プロポキシエトキシ基、1−ベンジル−1−シクロヘキシルオキシエトキシ基、1−ベンジル−1−フェニルオキシエトキシ基、1−ベンジル−1−ベンジルオキシエトキシ基、2−(2−メチルテトラヒドロフラニル)オキシ基、2−(2−メチルテトラヒドロピラニル)オキシ基、1−メトキシシクロペンチルオキシ基、1−メトキシ−シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0042】
これらのうち、1−メチル−1−メトキシエトキシ基、1−メチル−1−シクロヘキシルオキシエトキシ基を好ましいものとして挙げることができる。
【0043】
加熱によりカルボキシ基を生成する構造として、特に好ましいものとしては、アウトガスと原料の入手性の観点から、カルボン酸のtert−ブチルエステル構造が挙げられ、(メタ)アクリル酸に由来するモノマー単位のtert−ブチルエステルを挙げることができる。
【0044】
加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)としては、例えばカルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)で述べた不飽和カルボン酸類をその対応するエステル類としたエチレン性不飽和化合物に由来するものを好ましく例示することができる。これらの中でも、硬化膜の透明性の観点から(メタ)アクリル酸エステル化合物が特に好ましい。
【0045】
これら(A3)の中で好ましいものとしては、(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラニルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸−1−メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−t−ブトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−ベンジルオキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸(シクロヘキシル)(エトキシ)メチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−メチル−1−メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸−1−メチル−1−i−ブトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸(ベンジル)(エトキシ)メチルエステル、クロトン酸−t−ブチルエステル、クロトン酸テトラヒドロフラニルエステル、クロトン酸テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルエステル、クロトン酸−1−メトキシエチルエステル、クロトン酸−1−t−ブトキシエチルエステル、クロトン酸−1−ベンジルオキシエチルエステル、クロトン酸(シクロヘキシル)(エトキシ)メチルエステル、クロトン酸−1−メチル−1−メトキシエチルエステル、クロトン酸−1−メチル−1−i−ブトキシエチルエステル、クロトン酸(ベンジル)(エトキシ)メチルエステル、などが挙げられる。
【0046】
本発明における特定共重合体(A)中の加熱によりカルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)の含有量は、現像性及び硬化膜物性の観点から、1モル%〜90モル%が好ましく、3モル%〜80モル%がより好ましく、5モル%〜70モル%が更に好ましい。
別の観点によると、カルボキシ基を生成する残基を有するモノマー単位(A3)は、特定共重合体(A)の酸価を、40〜100mgKOH/g増大させるような共重合比であることが好ましく、50〜80mgKOH/g増大させる共重合比であることが好ましい。
【0047】
〔(A1)及び(A3)以外のモノマー単位(A2)〕
本発明における特定共重合体(A)には、(A1)及び(A3)以外のモノマー単位として、エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)や、その他のモノマー単位(A2−2)を含んでいてもよい。
【0048】
−エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)−
エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)としては、付加重合性を有するエチレン性不飽和基を有するモノマーに由来するモノマー単位が挙げられる。
このエチレン性不飽和基としては反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が最も好ましい。エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)としては、エポキシ基(「オキシラニル基」と同義である。)とエチレン性不飽和基とを含む化合物中のエポキシ基がカルボキシ基と付加してなる構造を有するモノマー単位、又は、カルボキシ基とエチレン性不飽和基とを含む化合物中のカルボキシ基がエポキシ基と付加してなる構造を有するモノマー単位であることが好ましい。より具体的には、前述のカルボキシ基を有するモノマー単位(A1−1)のカルボキシ基に、エポキシ基とエチレン性不飽和基とを含む化合物中のエポキシ基を反応させたモノマー単位、又は、後述のエポキシ基を有するモノマーに由来するモノマー単位中のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを含む化合物のカルボキシ基を反応させたモノマー単位であることが好ましい。
【0049】
エポキシ基とエチレン性不飽和基とを含む化合物としては、エポキシ基とエチレン性不飽和基とをそれぞれ1個以上有する化合物であればよく、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどの化合物を挙げることができる。
これらの中でも、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートが好ましく、グリシジルメタアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレートが、溶剤耐性、耐熱性の観点から最も好ましい。
【0050】
エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0051】
本発明における特定共重合体(A)中のエチレン性不飽和基を有するモノマー単位(A2−1)の含有量は、各種耐性と現像性の両立の点から、0モル%〜60モル%が好ましく、0モル%〜50モル%がより好ましく、0モル%〜40モル%が更に好ましい。
【0052】
−その他のモノマー単位(A2−2)−
その他のモノマー単位(A2−2)は、(A1)、(A3)及び(A2−1)のモノマー単位とは異なる構造を有するものである。特定共重合体(A)に含まれてもよいものとしては、特に制限はないが、その他のエチレン性不飽和化合物(「エチレン性不飽和化合物」を、以下「ビニルモノマー」ともいう。)に由来するモノマー単位や脂環構造を含むモノマー単位や、芳香環構造を含むモノマー単位などが挙げられる。なお、オキシラニル基及びオキセタニル基を含有するモノマー単位は、いずれも、感光性組成物の保存安定性の観点から、特定共重合体(A)に含まれない。
【0053】
その他のモノマー単位(A2−2)を含むことにより、特定共重合体(A)のパターン形成性が向上する場合がある。
(A2−2)のモノマー単位を形成し得るビニルモノマーとしては、特開2009−98691号公報の段落番号0046〜0051に記載されるビニルモノマーが挙げられる。
【0054】
また、本発明に使用するアルカリ可溶性樹脂(A)としては、形成された樹脂組成物膜が高透過率、且つ、低比誘電率であるという観点から、分子内に更に脂環構造を有するモノマー単位を含有することができる。
脂環構造としては、脂環5員環、脂環6員環、又はそれらが2つ以上連結した脂環構造等が好ましく、具体的には、シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニルオキシエチル、ジシクロペンタニル、イソボニル等が挙げられ、中でも、感光性樹脂組成物を用いてなる膜の耐熱性、絶縁安定性、及びITOスパッタ適性の点から、シクロヘキシル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニルオキシエチル、ジシクロペンタニルが好ましい。
【0055】
本発明における特定共重合体(A)は、感光性樹脂組成物から形成された膜パターンの現像性が良好になるという観点から、芳香環構造を有するモノマー単位を含むものとすることができる。
芳香環構造を有するモノマー単位は、以下に示すモノマーに由来するものが好ましい。
即ち、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えば、t−Boc(tert−ブトキシカルボニル基)など)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレンが挙げられ、このうち、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレンが好ましい。
【0056】
その他のモノマー単位(A2−2)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0057】
本発明における特定共重合体(A)中の(A2−2)のモノマー単位の含有量は、各種耐性と現像性の両立の点から、0モル%〜50モル%が好ましく、0モル%〜45モル%がより好ましく、0モル%〜40モル%が更に好ましい。
【0058】
以下、本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂(A)として、好ましいものを例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、下記に例示したアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、5,000〜80,000であることが好ましい。
また、例示する共重合体の中で、すべてのモノマー単位がメタクリル酸及び/又はメタクリル酸エステルであるメタクリル酸系共重合体が、膜物性の観点から、特に好ましい。
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/エチルビニルエーテル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、
(メタ)アクリル酸−t−ブチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/エチルビニルエーテル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−エトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル共重合体、
(メタ)アクリル酸テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルエステル/(メタ)アクリル酸/エチルビニルエーテル共重合体、
(メタ)アクリル酸−1−メトキシエチルエステル/(メタ)アクリル酸/エチルビニルエーテル共重合体、
クロトン酸−t−ブチルエステル/クロトン酸/エチルビニルエーテル共重合体、
クロトン酸テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルエステル/クロトン酸/エチルビニルエーテル共重合体、
クロトン酸−1−メトキシエチルエステル/クロトン酸/エチルビニルエーテル共重合体、などが挙げられる。
【0059】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂(A)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、現像マージンや感度の観点から、好ましくは2×103〜1×105、より好ましくは3×103〜5×104である。
また、Mwとポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比である分子量分布(以下、「Mw/Mn」という。)は、パターン形状が良好になるという観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは1.0以上3.0以下である。
上記のアルカリ可溶性樹脂(A)を含む感光性樹脂組成物は、現像する際に現像残り(残渣)を生じることなく容易に所定のパターン形状を形成することができる。
【0060】
本発明の感光性樹脂組成物中のアルカリ可溶性樹脂(A)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、20〜90重量%であることが好ましく、25〜85重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となる。
【0061】
(成分B)
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分B)1,2−キノンジアジド化合物を必須成分として含有する。ただし、成分Bとして、ニトロベンジル基を有する化合物、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルを含まないことが好ましく、以下、「1,2−キノンジアジド化合物」はこれらの化合物を除いたものを指すものとする。
本発明における(成分B)1,2−キノンジアジド化合物は、1,2−キノンジアジド部分構造を有する化合物であり、分子内に少なくとも1個の1,2−キノンジアジド部分構造を有することを要し、2個以上の部分構造を有することが好ましい。
(成分B)1,2−キノンジアジド化合物は、未露光部においては感光性樹脂組成物塗布膜のアルカリ溶解性を抑制し、露光部ではカルボキシ基を発生することにより感光性樹脂組成物塗布膜のアルカリ溶解性を向上させるため、ポジ型のパターン形成を可能とする。
【0062】
1,2−キノンジアジド化合物は、例えば、1,2−キノンジアジドスルホニルクロリド類と、ヒドロキシ化合物、アミノ化合物などと、を脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる。
1,2−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド等を挙げることができる。具体的には、J.Kosar著“Light−Sensitive Systems”、pp.339〜352(1965)、John Wiley&Sons社(New York)やW.S.De Forest著“Photoresist”50(1975)、McGraw−Hill,Inc,(New York)に記載されている1,2−キノンジアジド化合物、特開2004−170566号公報、特開2002−40653号公報、特開2002−351068号公報、特開2004−4233号公報、特開2004−271975号公報等に記載されている1,2−キノンジアジド化合物を挙げることができる。特開2008−224970号公報の0066〜0081に記載されているものも好ましい。
【0063】
本発明においては、1,2−キノンジアジド化合物の中でも、1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物が好ましい。1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物を用いると高感度で現像性が良好となる。
1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物の中でも、以下の構造を有する化合物が特に高感度であることから好ましく使用することができる。
【0064】
【化1】

【0065】
さらに、最も好ましい1,2−ナフトキノンジアジド基を有する化合物としては、下記化合物である。DにおけるHと1,2−ナフトキノンジアジド基の割合(モル比)としては、感度と透明性の観点から50:50〜1:99であることが好ましい。
【0066】
【化2】

【0067】
本発明の感光性樹脂組成物において、(成分B)1,2−キノンジアジド化合物の配合量は、露光部と未露光部の溶解速度差と、感度の許容幅の点から、アルカリ可溶性樹脂(A)の総量を100重量部としたとき、1〜100重量部が好ましく、5〜80重量部がより好ましく、15〜60重量部が最も好ましい。
1,2−キノンジアジド化合物としては、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
(成分C)
成分Cは、(メタ)アクリルエステルに由来し、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を含み、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を有しない架橋性樹脂、である。
【0069】
本発明に使用する成分Cは、(メタ)アクリルエステルに由来し、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を有し、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を含有しない。成分(C)は、アクリル系高分子架橋剤である。成分Cについても、「アクリル系」とは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を意味するものとする。成分Cのアクリル系高分子架橋剤を、「特定高分子架橋剤(C)」ともいう。
本発明の感光性樹脂組成物において、オキシラニル基及びオキセタニル基をアルカリ可溶性樹脂(A)から分離して、特定高分子架橋剤(C)に含有させることは、組成物の保存安定性の観点から好ましい。
特定高分子架橋剤(C)の例として、オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する共重合体(以下、特定共重合体(C1)と述べることがある。)を挙げることができる。なお、反応しやすさの観点からはオキシラニル基が、組成物の保存安定性の観点からはオキセタニル基が、それぞれ好ましい。
以下に詳しく説明する。
【0070】
本発明において、特定共重合体(C1)は、オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー単位(C1−1)を含む共重合体である。更に必要に応じて、(C1−2)その他のモノマー単位を含んでいてもよい。
ただし、特定共重合体(C1)は、その構造中に、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を有さない。また、特定共重合体(C1)は、透明性、絶縁安定性、反応性の点から、アクリル系エポキシ共重合体であることが好ましい。
【0071】
〔オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー単位(C1−1)〕
オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー単位(C1−1)としては、オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマーに由来するモノマー単位が挙げられる。
オキシラニル基を有するモノマーとして、具体的には、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシル−n−ブロピル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロへキシル−i−プロピル(メタ)アクリレート、1−ビニル−2,3−エポキシシクロヘキサン、1−ビニル−3,4−エポキシシクロヘキサン、1−アリル−2,3−エポキシシクロヘキサン、1−アリル−3,4−エポキシシクロヘキサンなどの化合物を挙げることができ、中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、が、耐溶剤性、耐熱性の観点から好ましい。
【0072】
オキセタニル基を有するモノマーとしては、例えば特開2001−330953号公報に記載されているようなオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。このようなモノマーとして、具体的には3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−トリフロロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−(メタクリロイルオキシメチル)−4−トリフロロメチルオキセタンなどが得られる感光性樹脂組成物の現像寛容度(プロセスマージン)が広く、かつ、得られる硬化膜の耐薬品性を高める点から好ましい。
【0073】
オキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー単位(C1−1)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0074】
本発明における特定共重合体(C1)のオキシラニル基及びオキセタニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するモノマー単位(C1−1)の含有量は、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜の耐溶剤性、耐熱性に優れるといった点から、20モル%〜98モル%が好ましく、30モル%〜95モル%がより好ましく、40モル%〜90モル%が更に好ましい。
【0075】
〔(C1−2)その他のモノマー単位〕
本発明における特定共重合体(C1)は、その他のモノマー単位(C1−2)を含んでいてもよい。このその他のモノマー単位(C1−2)としては、特に限定はないが、アルカリ可溶性樹脂(A)との相溶性の観点から、水酸基、ポリエチレンオキサイド基を含むことが好ましい。
また、その他のビニルモノマーに由来するモノマー単位を含ませることができる。
その他のモノマー単位(C1―2)を形成し得るビニルモノマーとしては、特開2009−98691号公報の段落番号0046〜0051に記載されるビニルモノマーが挙げられる。
【0076】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類、又はスチレン類が好ましい。最も好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類であり、(メタ)アクリル酸エステル類の中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテルが現像によるパターン形成性と透明性の観点から好ましい。これらの中でも、特に(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが、透明性の観点から好ましい。
【0077】
さらに、形成される硬化膜の透明性、絶縁安定性に優れるといった点から、脂環構造を有するモノマー単位を含ませることができる。脂環構造を有するモノマーとして、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボニルなどが挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが好ましい。
【0078】
その他のモノマー単位(C1−2)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
本発明における特定共重合体(C1)中のその他のモノマー単位(C1−2)の含有量は、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜の透明性、現像性に優れるといった点から、0モル%〜50モル%が好ましく、3モル%〜40モル%がより好ましく、5モル%〜30モル%が更に好ましい。
【0079】
上述のような特定共重合体(C1)は、少なくとも、(C1−1)のモノマー単位、必要に応じて(C1−2)のモノマー単位を形成し得るモノマーを共重合することによって合成することができる。
以下、本発明に好適に使用し得る特定共重合体(C1)の例示を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体
(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
(メタ)アクリル酸グリシジル/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル/ブレンマーPME400(日油(株)製)共重合体
(メタ)アクリル酸グリシジル/ブレンマーPME400(日油(株)製)共重合体
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸メチル共重合体
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル/(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル/ブレンマーPME400(日油(株)製)共重合体
(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート/ブレンマーPME400(日油(株)製)共重合体
また、例示した共重合体の中で、すべてのモノマー単位がメタクリル酸エステルである共重合体が、膜物性の観点から好ましい。
【0081】
本発明で用いる特定共重合体(C1)の分子量には特に制限はないが、アルカリ溶解速度や膜物性の観点から、重量平均分子量で、2,000〜50,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。
【0082】
本発明で用いる特定共重合体(C1)で、透明性と膜物性の観点からも好ましいものとして、重量平均分子量2,000以上50,000以下のアクリル系のエポキシ樹脂を挙げることができる。また、素材の入手性、透明性の観点から更に好ましいものとして、グリシジル(メタ)アクリレートを50〜95モル%含む共重合体を挙げることができる。
本発明における架橋性樹脂である特定共重合体(C1)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。本発明に使用する架橋性樹脂の感光性樹脂組成物への添加量は、前述したアルカリ可溶性樹脂(A)の総量を100重量部としたとき、5〜120重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。添加量がこの範囲にあると、感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜の耐溶剤性、耐熱性、絶縁安定性が優れたものとなる。
【0083】
本発明においては、架橋剤としては上記特定共重合体(C1)以外のオキシラニル基含有化合物を併用してもよい。例えば、セロキサイド2021P、同3000、エポリードGT401、EHPE3150、EHPE3150E(以上、ダイセル化学工業(株)製)などを挙げることができる。上記特定共重合体(C1)以外のオキシラニル基含有化合物を併用する場合の添加量は、前述したアルカリ可溶性樹脂(A)の総量を100重量部としたとき1〜50重量部が好ましく、3〜30重量部がより好ましい。
【0084】
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分D)溶媒を含むことが好ましい。使用できる溶媒の種類とその配合量について説明する。
【0085】
(成分D)溶媒
本発明の感光性樹脂組成物の調製に用いられる(成分D)溶媒としては、(成分A)アルカリ可溶性樹脂、(成分B)1,2−キノンジアジド化合物、(成分C)アクリル系高分子架橋剤、及び、任意に配合されるその他の成分を均一に溶解し、且つ、これらの成分と反応しないものが用いられる。
溶媒(D)として、各成分の溶解性、各成分との反応性、塗膜形成のしやすさなどの点から、アルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、エステルまたはジエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのうち、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニル−1−プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチルまたはエトキシプロピオン酸エチルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びジエチエレングリコールエチルメチルエーテルがより好ましい。
【0086】
さらに前記溶媒とともに膜厚の面内均一性を高めるため、高沸点溶媒を併用することもできる。併用できる高沸点溶媒としては、例えばN−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられる。これらのうち、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンまたはN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物を調製するための溶媒として、高沸点溶媒を併用する場合、その使用量は、溶媒全量に対して50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下とすることができる。高沸点溶媒の使用量がこの使用量を越えると、塗膜の膜厚均一性、感度及び残膜率が低下する場合がある。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、溶液中に占める溶媒以外の成分の固形分濃度は、使用目的や所望の膜厚の値などに応じて任意に設定することができるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは12〜35重量%である。
このようにして調製された組成物溶液は、孔径0.2μm程度の開口部を有するミリポアフィルタなどを用いて濾過したうえで使用に供してもよい。
【0089】
(成分E)アルコキシメチル基を含有する架橋剤
本発明においては、架橋剤として(成分E)アルコキシメチル基を含有する架橋剤を併用することも好ましい。アルコキシメチル基含有架橋剤(E)としては、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル及びアルコキシメチル化尿素等が好ましい。これらはそれぞれメチロール化メラミン、メチロール化ベンゾグアナミン、メチロール化グリコールウリル及びメチロール化尿素のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えばメトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等を挙げることができるが、アウトガスの観点から、特にメトキシメチル基が好ましい。
これらの架橋性化合物のうち、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリルが好ましい架橋性化合物として挙げられ、透明性の観点から特にアルコキシメチル化グリコールウリルが好ましい。
【0090】
これら(成分E)アルコキシメチル基含有架橋剤は、市販品として入手可能であり、例えば、サイメル300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174、UFR65、300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMx−750、−032、−706、−708、−40、−31、−270、−280、−290、ニカラックMs−11、ニカラックMw−30HM、−100LM、−390、(以上、(株)三和ケミカル製)などを好ましく使用することができる。
【0091】
これら(成分E)アルコキシメチル基を含有する架橋剤の添加量は、アルカリ可溶性樹脂(A)の100重量部に対して、好ましくは0.05〜50重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。この範囲で添加することにより、現像時の好ましいアルカリ溶解性と、硬化後の膜の優れた耐溶剤性が得られる。
【0092】
(成分F)酸化防止剤
さらに、本発明の感光性樹脂組成物には、公知の酸化防止剤を添加することも好ましい。酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にフェノール系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0093】
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブAO−60((株)ADEKA製)、アデカスタブAO−80((株)ADEKA製)、イルガノックス1098(チバジャパン(株)製)、イルガノックス1010(チバジャパン(株)製)、スミライザーGA−80(住友化学(株)製)等が、挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜6重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜4重量%が最適である。この範囲にすることで、形成された膜の十分な透明性が得られ、且つ、パターン形成時のも感度が発現される。
また、酸化防止剤以外の添加剤として、“高分子添加剤の新展開(日刊工業新聞社)”に記載の各種紫外線吸収剤や、金属不活性化剤等を本発明の感光性樹脂組成物に添加してもよい。
【0094】
(成分G)密着促進剤
本発明の感光性樹脂組成物には、必要により、固体表面への密着性付与のために、有機ケイ素化合物、シランカップリング剤、レベリング剤等の密着促進剤を添加してもよい。
これらの例としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
感光性樹脂組成物に密着促進剤を用いる場合は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0095】
(成分H)界面活性剤
本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性を向上するため、(成分H)界面活性剤を含有することができる。ここで、界面活性剤(H)としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤またはノニオン系界面活性剤を好適に用いることができ、例えば特開2001−330953号公報に記載の各種界面活性剤を用いることができる。
これらの界面活性剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物において、これらの界面活性剤(H)は、塗布性向上の観点から、感光性樹脂組成物100重量部に対して、0.001〜10重量部使用することが好ましく、0.001〜5重量部がより好ましく、0.005〜2重量部が最も好ましい。
【0096】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述の必須成分である(成分A)、(成分B)及び(成分C)、好ましい併用成分である(成分D)溶媒、(成分E)架橋剤、(成分F)酸化防止剤、(成分G)密着促進剤、及び、(成分H)界面活性剤、の他に、(成分I)感熱性酸生成化合物、(成分J)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物、及び、(成分K)熱ラジカル発生剤、などの任意成分を目的に応じて、更に含んでいてもよい。
以下、任意成分について説明する。
【0097】
(成分I)感熱性酸生成化合物
(成分I)感熱性酸生成化合物は、得られる硬化膜の耐熱性や硬度をより向上させるために用いることができる。その例としては、例えばスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのオニウム塩を挙げることができる。上記スルホニウム塩の例として、例えばアルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩などを挙げることができる。
感熱性酸生成化合物としては、スルホニウム塩またはベンゾチアゾニウム塩が好ましく用いられ、特に4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートまたは3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネートが好ましく用いられる。
これらの市販品としては、例えばサンエイドSI−L85、同SI−L110、同SI−L145、同SI−L150、同SI−L160(以上、三新化学工業(株)製)などが
挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物における(成分I)の使用割合は、耐熱性や硬度の観点からアルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
【0098】
本発明において、成分Iは併用しないことが好ましい。本発明において成分Iを併用する場合においても、画像露光の後で現像前の段階において、いわゆる化学増幅のために樹脂組成物膜を加熱する工程は不必要である。
【0099】
(成分J)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物
上記(成分J)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(以下、適宜、「重合性化合物(J)」とも称する。)としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレートまたは3官能以上の(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
上記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレートなどが挙げられる。
上記2官能(メタ)アクリレートとしては、例えばエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートなどが挙げられる。
【0100】
上記3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
これらのうち、3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましく用いられ、そのうちでもトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらの単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートは、単独であるいは組み合わせて用いられる。
本発明の感光性樹脂組成物における重合性化合物(J)の使用割合は、アルカリ可溶性樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。このような割合で(J)成分を含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物から得られる層間絶縁膜の耐熱性及び表面硬度を向上させることができる。
【0101】
(成分K)熱ラジカル発生剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分K)熱ラジカル発生剤を含んでいてもよい。
本発明における熱ラジカル発生剤としては、一般にラジカル発生剤として知られているものを用いることができる。(成分K)は、前記の(成分J)エチレン性不飽和基を有する重合性化合物又はエチレン性不飽和基を有する樹脂と併用することが好ましい。
熱ラジカル発生剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル発生剤を添加することによって、得られた硬化膜がより強靭になり、耐熱性、耐溶剤性が向上する場合がある。
【0102】
以下、熱ラジカル発生剤について詳述するが、本発明はこれらの記述により制限を受けるものではない。
本発明において、好ましい熱ラジカル発生剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物、ビベンジル化合物等が挙げられる。
本発明においては、得られた硬化膜の耐熱性、耐溶剤性の観点から、有機過酸化物、アゾ系化合物、ビベンジル化合物がより好ましく、ビベンジル化合物が特に好ましい。
【0103】
また、ビベンジル化合物としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0104】
【化3】

【0105】
上記式(1)中、複数存在するR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜20の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜20のアルコキシル基、又はハロゲン原子を表す。
【0106】
式(1)で表される化合物として、具体的には、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、α,α’−ジメトキシ−α,α’−ジフェニルビベンジル、α,α’−ジフェニル−α−メトキシビベンジル、α,α’−ジメトキシ−α,α’ジメチルビベンジル、α,α’−ジメトキシビベンジル、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニル−n−ヘキサン、2,2,3,3−テトラフェニルコハク酸ニトリル、ジベンジルなどを挙げることができる。
【0107】
本発明における(成分K)熱ラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
(成分K)熱ラジカル発生剤の本発明の感光性樹脂組成物への添加量は、膜物性向上の観点から、アルカリ可溶性樹脂(A)を100重量部としたとき、0.01重量部〜50重量部が好ましく、0.1重量部〜20重量部がより好ましく、0.5重量部〜10重量部であることが最も好ましい。
【0108】
≪硬化膜、層間絶縁膜、有機EL表示装置、及び液晶表示装置≫
(硬化膜の形成方法)
本発明において、溶剤を含む感光性樹脂組成物を使用して、硬化膜を形成することができる。この場合において、硬化膜の形成方法は、以下の工程を採用する。
(1)溶剤を含む感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程、(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去するプリベーク工程、(3)活性放射線で露光する工程、(4)水性現像液で現像する工程、及び、(5)熱硬化するポストベーク工程。
上記の必須工程の他に任意の工程を含むことができる。
なお、工程(1)において、基板とは、シリコンウエハのような加工していない半導体基板の他に、表示装置の製造工程において途中で得られる半製品であってもよい。
【0109】
上記の硬化膜の形成方法により得られる硬化膜は、半導体装置又は表示装置等の電子デバイスにおける層間絶縁膜として好適に使用することができる。
本発明の層間絶縁膜は、本発明の感光性樹脂組成物からなる塗膜に対し、光により活性放射線によるエネルギーを付与し、エネルギー付与領域の現像性を向上させ、現像により当該領域を除去し、さらに、好ましくは熱硬化処理することで形成される。
このような硬化膜は、透明性、耐熱性、及び絶縁性に優れ、特に、電子デバイス用の層間絶縁膜として好適である。本発明でいう電子デバイスとは、有機EL表示装置、及び液晶表示装置用の電子デバイスを意味し、本発明の感光性樹脂組成物は、この有機EL表示装置、及び液晶表示装置用の層間絶縁膜に特に効果を発揮するのである。
本発明の感光性樹脂組成物は以下のようなポジ型のパターン形成方法に適用され、所望の形状を有する硬膜膜として、層間絶縁膜として利用することができる。
【0110】
〔パターン形成方法〕
本発明の感光性樹脂組成物を用いて、パターン状の硬化膜を形成する方法としては、(1)本発明の感光性樹脂組成物を適当な基板上に塗布し、(2)塗布されたこの基板をベーキングし(プリベーク)、(3)活性光線又は放射線で露光し、(4)水性現像液で現像し、(5)必要に応じ全面露光し、そして(6)熱硬化(ポストベーク)する、といったパターン形成のための諸工程が用いられる。このパターン形成方法を用いることで、基板上に、所望の形状(パターン)の硬化膜を形成することができる。
【0111】
また、上記のパターン形成方法において、(5)における全面露光は、任意の工程であって、必要に応じて行えばよい。
【0112】
上記のパターン形成方法のように、(1)本発明の感光性樹脂組成物を、硬化後の厚みが所望厚み(好ましくは、0.1〜30μmである。)になるように、半導体素子上又はガラス基板上に塗布した後、少なくとも、(2)プリベーク、(3)露光、(4)現像、及び(6)熱硬化することで、有機EL表示装置用、又は液晶表示装置用のパターン状の硬化膜を形成することができる。
【0113】
以下、パターン形成方法についてより詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は(1)適当な基板上に塗布される。
基板は、形成される硬化膜の用途に応じて選択されればよく、例えば、シリコンウエハのような半導体基板又はセラミック基板や、ガラス、金属、又はプラスチックからなる基板が用いられる。硬化膜が半導体装置用であれば、シリコンウエハを、硬化膜が表示装置用であれば、ガラス基板を用いるのが一般的である。
塗布方法には、スプレーコーティング、スピンコーティング、スリットコーティング、オフセット印刷、ローラーコーティング、スクリーン印刷、押し出しコーティング、メニスカスコーティング、カーテンコーティング、及びディップコーティング等が用いられるが、これらに限られることはない。
この(1)塗布工程により、基板上には感光性樹脂組成物層が形成される。
【0114】
上記(1)塗布工程後、感光性樹脂組成物層中に残留する溶媒を蒸発させるために、(2)プリベークが行われる。この(2)プリベークは、70℃〜130℃の温度で、30秒から30分の範囲で行われる。
【0115】
次いで、(2)プリベークにより乾燥した感光性樹脂組成物層に対し、(3)所望のパターンを備えたマスクを介して、活性放射線を用いた露光が施される。露光エネルギーは、10〜1,000mJ/cm2であることが好ましく、20〜500mJ/cm2のエネルギーであることがより好ましい。活性放射線として、X線、電子ビーム、紫外線、可視光線などを使用することができる。最も好ましい活性放射線は、波長が436nm(g−線)、405nm(h−線)、及び365nm(i−線)を有するものである。また、紫外光レーザー等、レーザー方式により露光も可能である。この(3)露光工程により、基板上の感光性樹脂組成物層には、水性現像液により現像される領域と、現像されない領域と、が形成される。本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ作用を有しているため、露光部が水性現像液により現像される領域となる。
【0116】
次いで、(3)露光後の感光性樹脂組成物層は、(4)水性現像液で現像される。この現像により、感光性樹脂組成物層の露光部が水性現像液、好ましくはアルカリ性水溶液により現像され、未露光部が基板上に残ることで、所望の形状を有するパターンが残る感光性樹脂組成物層が形成される。
水性現像液には、無機アルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア水)、1級アミン(例えば、エチルアミン、n−プロピルアミン)、2級アミン(例えば、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン)、3級アミン(例えば、トリエチルアミン)、アルコールアミン(例えば、トリエタノールアミン)、4級アンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド)、及びこれらの混合物を用いたアルカリ溶液がある。最も好ましい現像液は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを含有するものである。加えて、現像液には、適当な量の界面活性剤が添加されてよい。また、現像は、ディップ、スプレー、パドリング、又は他の同様な現像方法によって実施してもよい。
【0117】
(4)現像工程後、基板上に残存する感光性樹脂組成物層は、場合によっては、脱イオン水を使用してすすぎ洗いされてもよい。
【0118】
さらに、(4)現像工程後には、基板上に残存する感光性樹脂組成物層は、必要に応じて、(5)全面露光が施される。この全面露光の露光エネルギーは100〜1,000mJ/cm2のエネルギーであることが好ましい。この(5)全面露光を行うことで、表示装置用の硬化膜を形成する際には、その透明性が向上するため、好ましい。
【0119】
次いで、(4)現像工程後において基板上に残存する感光性樹脂組成物層は、最終的なパターン状の硬化膜を得るため、(6)熱硬化するポストベーク工程が施される。
このポストベーク工程では、現像工程で形成されたパターン状の樹脂組成物膜全体において、保護されたカルボキシ基から遊離のカルボキシ基が生成され、エポキシ基等の架橋反応に寄与する。
この熱硬化により、耐熱性、耐薬品性、膜強度の大きい硬化膜が形成される。従来法の一般的な感光性ポリイミド前駆体組成物を用いた場合は、約300〜400℃の温度で加熱硬化されてきた。一方、本発明の感光性樹脂組成物は、150℃〜300℃、より具体的には160℃〜250℃の加熱により、従来の感光性ポリイミド前駆体組成物と同等以上の膜物性を有する硬化膜が得られる。
【0120】
本発明の感光性樹脂組成物により、絶縁性に優れ、高温でベークされた場合においても高い透明性を有する層間絶縁膜が得られる。本発明のポジ型の感光性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁膜は、高い透明性を有し、硬化膜物性に優れるため、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
本発明の有機EL表示装置や液晶表示装置としては、前記本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される平坦化膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとる公知の各種有機EL表示装置や液晶表示装置を挙げることができる。
【0121】
図2は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置10の一例を示す概念的断面図である。このカラー液晶表示装置10は、背面にバックライトユニット12を有する液晶パネルであって、液晶パネルは、偏光フィルムが貼り付けられた2枚のガラス基板14,15の間に配置されたすべての画素に対応するTFT16の素子が配置されている。ガラス基板上に形成された各素子には、硬化膜17中に形成されたコンタクトホール18を通して、画素電極を形成するITO透明電極19が配線されている。ITO透明電極19の上には、液晶20の層とブラックマトリックスを配置したRGBカラーフィルター22が設けられている。
【実施例】
【0122】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は重量基準である。
【0123】
以下の合成例において、以下の符号はそれぞれ以下の化合物を表す。
tert−BMA:tert−ブチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
V−601:ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GMA:グリシジルメタクリレート
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
【0124】
<アルカリ可溶性樹脂:バインダーAの合成>
tert−BMA(14.22g)、MMA(56.07g)、MAA(20.66g)、HEMA(13.01g)及びPGMEA(144.9g)の混合溶液を窒素気流下、75℃に加熱した。 この混合溶液を攪拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製、1.0g)及びPGMEA(100.0g)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、75℃で2時間反応させた後、温度を90℃に調整し、更に1時間反応させることによりバインダーAのPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。得られたバインダーAのGPCにより測定した重量平均分子量は30,000であった。
【0125】
<アルカリ可溶性樹脂:バインダーBの合成>
メタクリル酸1−エトキシエチル(15.81g)、MMA(56.07g)、MAA(20.66g)、HEMA(13.01g)及びPGMEA(148.6g)の混合溶液を窒素気流下、75℃に加熱した。 この混合溶液を攪拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製、1.0g)及びPGMEA(100.0g)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、75℃で2時間反応させた後、温度を90℃に調整し、更に1時間反応させることによりバインダーBのPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。得られたバインダーBのGPCにより測定した重量平均分子量は31,000であった。
【0126】
<アルカリ可溶性樹脂:バインダーCの合成>
tert−BMA(12.80g)、MMA(51.06g)、MAA(21.52g)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(DCPM)(11.02g)、HEMA(13.01g)及びPGMEA(157.6g)の混合溶液を窒素気流下、75℃に加熱した。この混合溶液を攪拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製、1.0g)及びPGMEA(100.0g)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、75℃で2時間反応させた後、温度を90℃に調整し、更に1時間反応させることによりバインダーCのPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。得られたバインダーCのGPCにより測定した重量平均分子量は29,000であった。
【0127】
<アルカリ可溶性樹脂:バインダーGの合成>
tert−BMA(14.22g)、MMA(66.08g)、MAA(20.66g)及びPGMEA(137.9g)の混合溶液を窒素気流下、75℃に加熱した。 この混合溶液を攪拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製、1.0g)及びPGMEA(100.0g)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、75℃で2時間反応させた後、温度を90℃に調整し、更に1時間反応させることによりバインダーGのPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。得られたバインダーGのGPCにより測定した重量平均分子量は28,000であった。
【0128】
<比較アルカリ可溶性樹脂:バインダーDの合成>
フラスコ内を窒素置換した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル9.0gを溶解
したジエチレングリコールジメチルエーテル溶液459.0gを仕込んだ。引き続きスチ
レン22.5g、メタクリル酸67.5g、ジシクロペンタニルメタクリレート45.0g及びメタクリル酸グリシジル90.0gを仕込んだ後、ゆるやかに撹拌を始めた。溶液
の温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間保持した後、90℃で1時間加熱させて重合を終結させた。
その後、反応生成溶液を多量の水に滴下し反応物を凝固させた。この凝固物を水洗後、テトラヒドロフラン200gに再溶解し、多量の水で再度、凝固させた。
この再溶解−凝固操作を計3回行った後、得られた凝固物を60℃で48時間真空乾燥し、目的とする共重合体を得た。その後固形分濃度が30重量%になるようにジエチレングリコールエチルメチルエーテルを用いて共重合体溶液とした。
【0129】
<比較アルカリ可溶性樹脂:バインダーEの合成>
MMA(60.07g)、MAA(17.22g)、HEMA(26.03g)及びPGMEA(143.4g)の混合溶液を窒素気流下、75℃に加熱した。 この混合溶液を攪拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製、1.0g)及びPGMEA(100.0g)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、75℃で2時間反応させた後、温度を90℃に調整し、更に1時間反応させることによりバインダーEのPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。得られたバインダーEのGPCにより測定した重量平均分子量は32,000であった。
【0130】
<比較アルカリ可溶性樹脂:バインダーFの合成>
MMA(52.06g)、MAA(24.11g)、HEMA(26.03g)及びPGMEA(140.8g)の混合溶液を窒素気流下、75℃に加熱した。 この混合溶液を攪拌しながら、ラジカル重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製、1.0g)及びPGMEA(100.0g)の混合溶液を2.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから、75℃で2時間反応させた後、温度を90℃に調整し、更に1時間反応させることによりバインダーFのPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。得られたバインダーFのGPCにより測定した重量平均分子量は30,000であった。
【0131】
<アクリル系エポキシ共重合体:架橋剤1の合成>
アクリル系エポキシ共重合体を形成するためのモノマー成分として、MMA(10.01g)、GMA(113.72g)、及びHEMA(13.01g)を使用し、ラジカル重合開始剤としてV−601(和光純薬工業(株)製、18.0g)を使用し、これらを溶剤PGMEA(361.1g)中において4時間重合反応させることにより架橋剤1のPGMEA溶液(固形分濃度:30重量%)を得た。なお、重合温度は、温度90℃に調整した。
得られた架橋剤1のGPCにより測定した重量平均分子量は6,000であった。
【0132】
(比較例1)
<感光性樹脂組成物の作製>
下記組成を溶解混合し、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過し、比較例1の感光性樹脂組成物を得た。
・〔(A)アルカリ可溶性樹脂〕として
上述の合成法で得られたバインダーE溶液 (固形分で10.5部相当の量)
・〔(B)キノンジアジド化合物〕として、
感光剤(東洋合成工業(株)製 TAS−200 下記構造) 5.0部
・〔(C)架橋性樹脂〕として
上述の合成法で得られた架橋剤1 (固形分で6.5部相当の量)
・密着促進剤(信越化学工業(株)製 KBM−403 下記構造) 0.5部
・溶剤(PGMEA)
(バインダー溶液及び架橋剤溶液に含まれるものとの合計で60.0部)
・溶剤(ジエチレングリコールエチルメチルエーテル) 17.5部
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファックF172) 0.02部
【0133】
(実施例1〜7、及び比較例2〜4)
比較例1の各成分量を、下記表1及び表2に記載のように変更した以外は、比較例1と同様にして、実施例1〜7、及び比較例2〜4の感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。なお、実質酸価は加熱によりカルボキシ基が生成した場合の酸価の計算値であり、酸価の値と共に、mgKOH/gの単位で示した。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
表1、表2において用いた化合物の詳細を下記に示す。
【0137】
【化4】

【0138】
<液経時安定性の評価>
調製直後の感光性樹脂組成物の粘度(初期粘度)と、30℃で2週間保管後の感光性樹脂組成物の粘度(経時粘度)をE型粘度計(東機産業(株)製)にて測定し、経時粘度が初期粘度に対して10%以上変化するものを「2」、粘度の変化が10%未満の場合を「1」とした。
【0139】
<透明性の評価>
ガラス基板(コーニング1737、0.7mm厚(コーニング社製))上に、スピンナーを用いて、各感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃で1分間ホットプレート上でプリベークして溶剤を揮発させ、膜厚3.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
得られた感光性樹脂組成物層を、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)で積算照射量が300mJ/cm2(照度:20mW/cm2)となるように露光し、その後、この基板をオーブンにて230℃で1時間加熱して硬化膜を得た。
【0140】
この硬化膜を有するガラス基板の光線透過率を分光光度計「150−20型ダブルビーム((株)日立製作所製)」を用いて400〜800nmの範囲の波長で測定した。そのときの最低光線透過率の評価を表2に示す。なお、評価基準は下記の通りである。
1:92%以上
2:90%以上92%未満
3:90%未満
【0141】
<耐熱透明性の評価>
上記透明性評価後の基板をオーブンにて230℃で2時間更に加熱した後、光線透過率を分光光度計「150−20型ダブルビーム((株)日立製作所製)」を用いて400〜800nmの範囲の波長で測定した。そのときの最低光線透過率の評価を表3に示す。評価基準は下記の通りである。
1:83%以上
2:81%以上83%未満
3:79%以上81%未満
4:79%未満
【0142】
<現像性の評価>
ガラス基板(コーニング1737、0.7mm厚(コーニング社製))上に、スピンナーを用いて、各感光性樹脂組成物を塗布した後、100℃にて1分間ホットプレート上でプリベークして膜厚3.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層を、10μm角のパターン開口部を有するマスクを介して、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)で現像後に10μm角のパターンが得られる露光量(照度:20mW/cm2)で露光を行った。
露光後の基板を、0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として、23℃で60秒のパドル現像を行った。純水でリンスを実施し、得られた基板について、露光部の現像残渣の観察と、未露光部の膜厚測定を実施した。
露光部に現像残渣が確認されなかったものを「1」、確認されたものを「2」とした。また現像前に対する未露光部の膜厚減少率が10%未満のものを「1」、10%以上のものを「2」とした。
【0143】
<スパッタ耐性の評価>
透明性の評価と同様にして硬化膜を作製後、ULVAC製SIH−3030で基板温度200℃にてITOスパッタを行い、0.14μmのITO膜を硬化膜上に作製した。スパッタ後の表面を光学顕微鏡で観察し、表面荒れの有無を評価した。
1:表面荒れが観察されない
2:僅かに表面荒れが観察されるが、実用上問題ないレベルである
3:表面荒れが観察され、実用上許容されないレベルである
4:激しく表面が荒れている
得られた評価結果を纏めて表3に示した。
【0144】
【表3】

【0145】
(実施例8)
実施例1〜7において使用した(成分B)1,2−キノンジアジド化合物を下記の1,2−キノンジアジド化合物(エステル化率66%)に変更した以外は全く同様にして、感光性組成物膜を形成し、同様の評価を行ったところ、同様の結果が得られた。
【0146】
【化5】

【0147】
【化6】

【0148】
(実施例9)
薄膜トランジスター(TFT)を用いた有機EL表示装置を以下の方法で作製した(図1参照)。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34から成る絶縁膜3を形成した。次に、この絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)を絶縁膜3上に形成した。この配線2は、TFT1間又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
【0149】
さらに、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上へ平坦化層4を形成した。絶縁膜3上への平坦化膜4の形成は、実施例1の感光性樹脂組成物を基板上にスピン塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を100mJ/cm2(照度20mW/cm2)照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、220℃で60分間の加熱処理を行った。該感光性樹脂組成物を塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、焼成の後に得られた硬化膜には、しわやクラックの発生は認められなかった。さらに、配線2の平均段差は500nm、作製した平坦化膜の膜厚は2,000nmであった。
【0150】
次に、得られた平坦化膜4上に、ボトムエミッション型の有機EL素子を形成した。まず、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5を、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとDMSOの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。こうして得られた第一電極は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0151】
次に、第一電極の周縁を覆う形状の絶縁膜8を形成した。絶縁膜には、実施例1の感光性樹脂組成物を用い、前記と同様の方法で絶縁膜8を形成した。この絶縁膜を設けることによって、第一電極とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
【0152】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAlから成る第二電極を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止した。
【0153】
以上のようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続してなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることが分かった。
【0154】
(実施例10)
特許第3321003号公報の図1及び図2に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、層間絶縁膜として硬化膜17を以下のようにして形成し、実施例12の液晶表示装置を得た。
即ち、実施例1の感光性樹脂組成物を用い、上記実施例9における有機EL表示装置の平坦化膜4の形成方法と同様の方法で、層間絶縁膜として硬化膜17を形成した。
【0155】
得られた液晶表示装置に対して、駆動電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることが分かった。
【符号の説明】
【0156】
1:TFT
2:配線
3:絶縁膜
4:平坦化膜
5:第一電極
6:ガラス基板
7:コンタクトホール
8:絶縁膜
10:液晶表示装置
12:バックライトユニット
14,15:ガラス基板
16:TFT(薄層フィルムトランジスター)
17:硬化膜
18:コンタクトホール
19:ITO透明電極
20:液晶
22:カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を含有し、アルカリ可溶性基を有し、オキシラニル基及びオキセタニル基のいずれをも有さず、加熱によりカルボキシ基を生成する残基を含有するアルカリ可溶性樹脂、
(成分B)1,2−キノンジアジド化合物、並びに、
(成分C)(メタ)アクリルエステルに由来し、オキシラニル基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を含み、不飽和カルボン酸又は不飽和酸無水物に由来するモノマー単位を有しない架橋性樹脂、を含有することを特徴とする
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(成分D)溶媒を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(成分A)中の前記残基が、カルボン酸の第3級アルコールエステル構造、カルボン酸のアセタールエステル構造、及び、カルボン酸のケタールエステル構造よりなる群から選ばれた、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(成分A)中の前記残基が、カルボン酸のtert−ブチルエステル構造である、請求項1〜3いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(成分C)の前記樹脂が、オキシラニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を有し、重量平均分子量が2,000以上50,000以下である、請求項1〜4いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(成分C)の前記樹脂が、オキシラニル基を含有するモノマー単位を50〜95モル%含有する、請求項1〜5いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(成分E)アルコキシメチル基を有する架橋剤を含有する、請求項1〜6いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
(成分F)酸化防止剤、(成分G)密着促進剤、及び、(成分H)界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1〜7いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
(1)請求項2〜8いずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去するプリベーク工程、
(3)活性放射線で露光する工程、
(4)水性現像液で現像する工程、及び、
(5)熱硬化するポストベーク工程、を含む
硬化膜の形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により形成された硬化膜。
【請求項11】
層間絶縁膜である請求項10に記載の硬化膜。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の硬化膜を具備する、有機EL表示装置。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の硬化膜を具備する、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−53246(P2011−53246A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199329(P2009−199329)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】