説明

感光性樹脂組成物及びそれを用いて得られるフレキシブル配線板

【課題】ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、しかも十分な難燃性を発揮すると共に、その硬化物は可撓性に優れるFPC用の感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)リン元素含有アクリレート、(C)光重合開始剤を含有する。好適には、前記光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、特にオキシムエステル系光重合開始剤、アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)及び/又はアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)である。前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビフェニル骨格、ビキシレノール骨格もしくはその水添骨格である構造を有する樹脂であることが好ましく、特にウレタン構造を有する樹脂、又は2個以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有する樹脂が好ましい。さらに(D)熱硬化成分を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希アルカリ水溶液により現像可能な感光性樹脂組成物、その硬化物及びそれを用いて得られるレジストパターンを有するフレキシブル配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブル配線板(FPC)は、カバーレイといわれるポリイミドフィルムに接着剤を塗布した絶縁フィルムをプレス打ち抜き加工してラミネートし、さらにプレスで加圧条件下熱硬化することにより、回路形成されたフレキシブル基板の表面のカバー層としていた。このカバーレイはポリイミドフィルムをベースに低収縮熱硬化性樹脂で構成されていることから、ラミネート後及びプレス硬化後の反りは非常に小さく、さらにはその後の補強板の貼り付け、熱硬化後や実装のリフロー時の反りも非常に少なくすることができ、FPC用途に大量に使用されている。
【0003】
しかしながら、プレスにて打ち抜き加工するために、微細な加工が困難であり、かつ、回路形成された配線板とのラミネートの際に位置合せ精度がよくないという欠点がある。
それに対し、感光性カバーレイとしてアルカリ現像性感光性樹脂組成物やそのドライフィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、FPCは電子機器に搭載されるため難燃性の要求があり、このFPC用途のソルダーレジストにも要求されている。FPCは、通常、ポリイミド基板であり、ガラスエポキシ基板のプリント配線板とは異なり、薄膜である。しかしながら、塗布されるべきソルダーレジストは、プリント配線板もFPCも同じ膜厚であるため、相対的にソルダーレジストへの難燃化の負担が大きくなる。これに対してハロゲン化芳香環と重合可能な不飽和二重結合を有する化合物を有するFPC用ソルダーレジストの組成が提案されているが(特許文献2参照)、ハロゲン化合物の使用は環境負荷の観点から好ましくない。
【特許文献1】特開2000−131836号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許2007−10794号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような従来技術の問題を解消すべくなされたものであり、その主たる目的は、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、しかも十分な難燃性を発揮すると共に、その硬化物は可撓性に優れるFPC用の感光性樹脂組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、このような感光性樹脂組成物を用いることによって得られる、難燃性や可撓性に優れる硬化物及びレジストパターンを有するフレキシブル配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明によれば、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)リン元素含有アクリレート、(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物が提供される。
【0007】
好適な態様においては、前記光重合開始剤(C)は、オキシム系光重合開始剤(C’)、特に後述する一般式(II)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(C1)、又は、該オキシムエステル系光重合開始剤(C1)と、後述する一般式(III)で表されるアミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)及び/又は下記一般式(IV)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)との混合物であることが好ましい。
【0008】
また、他の好適な態様においては、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビフェニル骨格、ビキシレノール骨格もしくはその水添骨格である構造を有する樹脂であることが好ましく、特にウレタン構造を有する樹脂であることが好ましい。
また、前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、2個以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有する樹脂であることが好ましい。
【0009】
さらに他の好適な態様においては、前記リン元素含有アクリレート(B)は、後述する一般式(I)で示される誘導体であることが好ましい。
さらに(D)熱硬化成分を含有することが好ましく、それによって諸特性に優れたソルダーレジストを形成することができる。上記熱硬化成分(D)は、エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0010】
さらに好適な態様においては、有機リン系難燃剤(E)を含有する。それにより、難燃性をさらに向上させることができる。
上記有機リン系難燃剤(E)が、エポキシ樹脂と反応可能な反応性基を有する有機リン系難燃剤であることが好ましい。
【0011】
さらに本発明によれば、前記感光性樹脂組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる感光性ドライフィルムが提供される。
さらに本発明の別の態様によれば、前記感光性樹脂組成物又は前記感光性ドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物、あるいはさらに、前記感光性樹脂組成物又は前記感光性ドライフィルムを、光硬化して得られるレジストパターンを有するフレキシブル配線板が提供される。特に好適には、前記感光性樹脂組成物又は前記感光性ドライフィルムはフレキシブル配線板用ソルダーレジストである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)及び(C)光重合開始剤、特にオキシム系光重合開始剤、さらには熱硬化成分(D)と共に、リン元素含有アクリレート(B)を用いているため、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、しかも十分な難燃性を発揮すると共に、その硬化物は可撓性に優れている。従って、FPC用の感光性樹脂組成物として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者らは、カルボキシル基含有樹脂(A)及び(C)光重合開始剤、特にオキシム系光重合開始剤、さらには熱硬化成分(D)と共に、リン元素含有アクリレート(B)、特に後述する一般式(I)で示されるリン元素含有アクリレートを用いた場合、ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく、しかも十分な難燃性を発揮すると共に、可撓性に優れる硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
以下、本発明の感光性樹脂組成物の各構成成分について詳しく説明する。
【0014】
まず、本発明の感光性樹脂組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)としては、分子中にカルボキシル基を有している従来公知の各種樹脂化合物が使用できる。特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有感光性樹脂(A’)が、光硬化性や耐現像性の面からより好ましい。そして、その不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸又はそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0015】
カルボキシル基含有樹脂(A)の具体例としては、以下に列挙するような化合物が好ましい。
(1)(メタ)アクリル酸と不飽和基含有物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
(2)ジイソシアネートとカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(3)ジイソシアネートと2官能エポキシ(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物及びカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応による感光性のカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(4)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(5)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(6)多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性のカルボキシル基含有樹脂。
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性のカルボキシル基含有樹脂。
(8)2官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
(9)上記樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を付加してなる感光性のカルボキシル基含有樹脂。
【0016】
これらカルボキシル基含有樹脂の中でも好ましいものは、(X)前記(2)〜(5)の樹脂の合成に用いられるイソシアネート基を有する化合物(ジイソシアネートも含む)が、直接ベンゼン環に結合していないジイソシアネートの場合、及び(Y)前記(6)、(7)の樹脂の合成に用いられる多官能及び2官能エポキシ樹脂がビスフェノールA構造、ビスフェノールF構造、ビフェニル構造、ビキシレノール構造を有する化合物及びその水添化合物の場合が可撓性等の点で好ましい。また、別の側面では、前記(2)、(3)、(4)、(5)の樹脂及びそれらの前記(9)の如き変性物は、主鎖にウレタン結合を有しており、反りに対して好ましい。特に、ビフェニル構造の多官能エポキシ樹脂を用いた場合、難燃性を向上できるので最適である。また、前記(1)、(2)、(8)以外の樹脂は分子内に感光性基を有しているため好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0017】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂(A)は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0018】
また、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐湿性が悪く現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
【0019】
このようなカルボキシル基含有樹脂(A)の配合量は、全組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%である。上記範囲より少ない場合、塗膜強度が低下したりするので好ましくない。一方、上記範囲より多い場合、粘性が高くなったり、塗布性等が低下するので好ましくない。
【0020】
前記リン元素含有アクリレート(B)は、リン元素を有しており分子内に2個以上の(メタ)アクリレートを含む化合物が良く、具体的には下記一般式(I)で表されるリン元素含有アクリレートが好ましい。
【化1】

(式中、Rは、アクリレート残基を表す。)
【0021】
これらリン元素含有アクリレートは、一般に9,10−ジヒドロー9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイドと慣用公知の多官能アクリレートとのマイケル付加反応により合成することができる。そして、これらは組成物中のリン濃度が2%以上となるとき充分な効力を発揮するが、あまり多くするとはんだ耐熱性が劣るので、多くすることが出来ない。また、アクリレートとしては、反応性が悪いものを使用したり、添加量が少ないと、後で述べるオキシム系光重合開始剤を含むときにのみ充分な硬化性があり、それ以外の光重合開始剤では充分に使用することが難しい。よって、その硬化性を挙げる目的で、従来公知の(メタ)アクリレートモノマーを加えることができる。
リン元素含有アクリレート(B)の添加量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以上、100質量部以下が望ましく、好ましくは20質量部以上、80質量部以下の割合である。
【0022】
前記リン元素含有アクリレート(B)の合成に用いられ、あるいは添加されるアクリレートモノマーとしては、従来公知の各種アクリレートモノマーを用いることができ、特定のものに限定されないが、例えば、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物もしくはカプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;及び上記ポリアルコール類のウレタンアクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類などが挙げられる。
【0023】
さらに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる
【0024】
前記光重合開始剤(C)としては、下記一般式(II)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤(C1)、下記一般式(III)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)、及び下記式(IV)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することが好ましい。特に、オキシムエステル系光重合開始剤(C1)、又は、該オキシムエステル系光重合開始剤(C1)と、α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)及び/又はアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)との混合物が好ましい。
【化2】

(式中、Rは、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
は、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は2つが結合した環状アルキルエーテル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基を表し、但し、R及びRの一方は、R−C(=O)−基(ここでRは、炭素数1〜20の炭化水素基)を表してもよい)。
【0025】
前記一般式(II)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤(C1)としては、好ましくは、下記式(V)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オンや、下記一般式(VI)及び(VII)で表される化合物が挙げられる。
【化3】

【0026】
【化4】

(式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、又はフェノキシカルボニル基を表し、
11、R13は、それぞれ独立に、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
12は、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表す。)
【0027】
【化5】

(式中、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基を表し、
16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、及び
nは0〜5の整数を表す)
【0028】
前記したオキシムエステル系光重合開始剤(C1)中でも、下記式(V)で表される2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、及び式(VI)で表される化合物がより好ましい。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のCGI−325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02等が挙げられる。これらのオキシムエステル系光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
前記一般式(III)で表される基を有するα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0030】
前記一般式(IV)で表される基を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
【0031】
このような光重合重合開始剤(B)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜30質量部、好ましくは0.5〜15質量部の範囲が適当である。0.01質量部未満であると、銅上での光硬化性が不足し、塗膜が剥離したり、耐薬品性等の塗膜特性が低下するので好ましくない。一方、30質量部を超えると、光重合開始剤(B)のソルダーレジスト塗膜表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向があるために好ましくない。
【0032】
なお、前記式(II)で表される基を有するオキシムエステル系光重合開始剤の場合、その配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.01〜5質量部の範囲から選ぶことが望ましい。
【0033】
これら光重合開始剤(C)の中でも、特にオキシム系開始剤が有効である。これはリン元素含有アクリレートの反応性が悪いためであり、オキシム系開始材を用いたときのみ比較的良好な硬化性(実用的な範囲の感度)を示すことが明らかとなった。
【0034】
他に本発明の感光性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、及び3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0035】
ベンゾイン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルである。
アセトフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンである。
【0036】
アントラキノン化合物の具体例を挙げると、例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンである。
チオキサントン化合物の具体例を挙げると、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンである。
【0037】
ケタール化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールである。
ベンゾフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドである。
【0038】
3級アミン化合物の具体例を挙げると、例えば、エタノールアミン化合物、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−メチルクマリン)等のジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)である。
【0039】
前記した光重合開始剤の中でも、チオキサントン化合物及び3級アミン化合物が好ましい。本発明の組成物には、チオキサントン化合物が含まれることが深部硬化性の面から好ましく、中でも、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物が好ましい。
【0040】
このようなチオキサントン化合物の配合量としては、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下の割合である。チオキサントン化合物の配合量が多すぎると、厚膜硬化性が低下して、製品のコストアップに繋がるので、好ましくない。
【0041】
3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物が特に好ましい。ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ましい。最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物は、最大吸収波長が紫外線領域にあるため、着色が少なく、無色透明な感光性樹脂組成物はもとより、着色顔料を用い、着色顔料自体の色を反映した着色ソルダーレジスト膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0042】
このような3級アミン化合物の配合量としては、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部の割合である。3級アミン化合物の配合量が0.1質量部以下であると、十分な増感効果を得ることができない傾向にある。20質量部を超えると、3級アミン化合物による乾燥ソルダーレジスト塗膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下する傾向がある。
【0043】
前記したような光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
また、光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して35質量部以下となる範囲であることが好ましい。35質量部を超えると、これらの光吸収により深部硬化性が低下する傾向にある。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、熱硬化性成分(D)を加えることができる。特に好ましい熱硬化性成分(D)は、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)を有する熱硬化性樹脂である。これらの中でも2官能性のエポキシ樹脂が好ましく、他にはジイソシアネートやその2官能性ブロックイソシアネートも使用することができる。
【0045】
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物(D−1)、分子内に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物(D−2)、分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂(D−3)などが挙げられる。
【0046】
前記多官能エポキシ化合物(D−1)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のJER828、JER834、JER1001、JER1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドGY250、アラルダイドGY260、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER152、JER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製JER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER604、東都化成社製のエポトートYH−434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY−350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、大日本インキ化学工業社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のJER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL−931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製ESN−190、ESN−360、大日本インキ化学工業社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0047】
前記多官能オキセタン化合物(D−2)としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0048】
前記分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物(D−3)としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0049】
前記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.6〜2.5当量、より好ましくは、0.8〜2.0当量となる範囲にある。分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)の配合量が0.6未満である場合、ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性などが低下するので、好ましくない。一方、2.5当量を超える場合、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより、塗膜の強度などが低下するので、好ましくない。
【0050】
上記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物など、また市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0051】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えばカルボキシル基含有樹脂(A)又は分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分(D)100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、有機リン系難燃剤(E)を含むことが好ましい。有機リン系難燃剤(E)としては、リン酸エステル及び縮合リン酸エステル、環状フォスファゼン化合物、フォスファゼンオリゴマーもしくは下記一般式(VIII)で表される化合物がある。
【化6】

(式中、R20は、水素原子又はハロゲン原子以外の置換基を表す)
市販品としては三光社製HCA(上記式のR20が水素原子)、SANKO−220(上記式のR20が3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル基)、M−ESTER(上記式のR20が−CHCH(COOCHCHOH)CHCOOCHCHOH基)、HCA−HQ(上記式のR20が2,5−ベンゼンジオール基)などがある。
【0053】
有機リン系難燃剤で特に好ましいものは、前記エポキシ樹脂(D)と反応性を有するフェノール性水酸基を有する化合物である。このフェノール性水酸基を有する化合物は、疎水性、耐熱性が高く、加水分解による電気特性の低下がなく、はんだ耐熱が高い。また、好適な組み合わせとしてエポキシ樹脂(D)を使用することによって、エポキシ樹脂と反応してネットワークに取り込まれるので、硬化後にブリードアウトすることがない。しかしながら、フェノール性水酸基は、時には光反応の阻害(ラジカル重合の停止)を引き起こす。この場合にも、好適な組み合わせとして前記オキシム系光重合開始剤(C’)を使用することにより、その感度低下を抑えることができる。
これら有機リン系難燃剤(E)の配合量は、前記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、0〜30質量部の範囲が適当であり、特に好ましくは0〜25質量部である。これ以上多くなると、得られる硬化物の折り曲げ特性等が悪くなるので好ましくない。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物は、その塗膜の物理的強度等を上げるために、必要に応じて、フィラーを配合することができる。このようなフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられる。さらに、1個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物や前記多官能エポキシ樹脂(E−1)にナノシリカを分散したHanse−Chemie社製のNANOCRYL(商品名) XP 0396、XP 0596、XP 0733、XP 0746、XP 0765、XP 0768、XP 0953、XP 0954、XP 1045(何れも製品グレード名)や、Hanse−Chemie社製のNANOPOX(商品名) XP 0516、XP 0525、XP 0314(何れも製品グレード名)も使用できる。これらを単独で又は2種以上配合することができる。
【0055】
これらフィラーの配合量は、上記カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは300質量部以下、より好ましくは0.1〜300質量部、特に好ましくは、0.1〜150質量部である。フィラーの配合量が、300質量部を超えた場合、感光性樹脂組成物の粘度が高くなり印刷性が低下したり、硬化物が脆くなるので好ましくない。
【0056】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、上記カルボキシル基含有樹脂(A)の合成や組成物の調製のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
【0057】
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の熱重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物は、キャリアフィルムと、該キャリアフィルム上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。
ドライフィルム化に際しては、本発明の感光性樹脂組成物を適切な粘度に前記有機溶剤で希釈し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で支持体上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0060】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0061】
キャリアフィルム上に成膜した後、さらに、膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、膜の表面に剥離可能なカバーフィルムを積層することが望ましい。
剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離するときに膜と支持体との接着力よりも膜とカバーフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0062】
以上のような組成を有する本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて希釈して塗布方法に適した粘度に調整し、これを例えば、回路形成されたプリント配線板にスクリーン印刷法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の方法により塗布し、例えば約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。
【0063】
回路形成されたプリント配線板上に塗膜を形成した後(上記ドライフィルムを用いた場合は、回路形成されたプリント配線板上にラミネート後、支持体を剥がさず)、レーザー光等の活性エネルギー線をパターン通りに直接照射するか、又はパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成できる(上記ドライフィルムを用いた場合、露光後、支持体を剥がし、現像する)。その後さらに、加熱硬化のみ、又は活性エネルギー線の照射後加熱硬化もしくは加熱硬化後活性エネルギー線の照射で最終硬化(本硬化)させることにより、電気絶縁性、密着性、はんだ耐熱性、耐薬品性、無電解金めっき耐性などに優れた硬化膜(硬化物)が形成される。
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。また、前記ドライフィルムの形態の場合、基材上にホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる(前記感光性樹脂組成物層と基材とが接触するように貼り合わせる)。上記フィルムの感光性樹脂組成物層上に、さらに剥離可能なカバーフィルムを備えたドライフィルムの場合、カバーフィルムを剥がした後、上記感光性樹脂組成物層と基材とが接触するようにホットロールラミネーター等を用いて貼り合わせる。
【0065】
その後、得られた塗膜(感光性樹脂組成物層)に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。露光は、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光する方法、あるいはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光する方法のいずれでもよい。この露光により、塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。次いで、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、熱硬化性成分(D)を含有する光硬化性・熱硬化性樹脂組成物の場合、例えば約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基と、分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基を有する熱硬化性成分(D)が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0066】
上記基材としては、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板や、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0067】
本発明の感光性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法や、ノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0068】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザー、固体レーザーのどちらでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm、好ましくは20〜600mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0069】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0071】
合成例
(A−1)前述したカルボキシル基含有樹脂(3)に該当し、感光性基含有、ビスフェノールA構造、脂環式ジイソシアネート使用した感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂の合成
セパラブルフラスコ中に、ビスフェノールA 型エポキシ化合物として、日本化薬(株)製RE310S(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を368.0gアクリル酸(分子量:72.06)を142.7g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを2.94g及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを1.53g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物(a)(理論分子量:510.7)を得た。次いでこの反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを588.2g、ジメチロールプロピオン酸(b)(分子量:134.16)105.5gを加え、45℃に昇温させた。この溶液にイソホロンジイソシアネート(c)(分子量: 222.28)264.7gを反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃ に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させ、さらに98℃の温度で2時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂を60重量%含む樹脂溶液を得た。酸価を測定したところ、28.9mgKOH/g(固形分酸価:48.1mgKOH/g)であった。以下、この反応生成物を樹脂溶液(A−1)とする。
【0072】
(A−2)前記カルボキシル基含有樹脂(6)に該当し、感光性基含有でビフェニル骨格を有するビフェニルノボラックエポキシ樹脂を使用した感光性カルボキシル基含有樹脂日本化薬社製ZCR−1601H(固形分65%樹脂としての酸価は98mgKOH/g)この樹脂溶液をA−2とする。
【0073】
(A−3)前記カルボキシル基含有樹脂(7)に該当し、感光性基含有でビスフェノールF構造の多官能エポキシを使用した感光性カルボキシル基含有樹脂:日本化薬社製ZFR−1124(固形分63%樹脂としての酸価は102mgKOH/g)。この樹脂溶液をA−3とする。
【0074】
実施例1〜8、比較例1
上記各樹脂溶液(A−1)〜(A−3)を用い、表1に示す種々の成分とともに表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物を調製した。ここで、得られた感光性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ15μm以下であった。
【0075】
【表1】

【0076】
性能評価:
<最適露光量>
前記実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、メタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いてステップタブレット(コダック No.2)を介して露光し、現像(30℃、0.2MPa、1質量%炭酸ナトリウム水溶液)を60秒で行った際残存するステップタブレットのパターンが6段の時を最適露光量とした。
【0077】
<解像性>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、ライン/スペースが300/300μm、銅厚35μmの回路パターン基板をバフロール研磨後、水洗し、乾燥してからスクリーン印刷法により塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させる。乾燥後、最大波長355nmの半導体レーザーを搭載した直接描画装置を用いて露光した。露光パターンはスペース部に20/30/40/50/60/70/80/90/100μmのラインを描画させる直描用データを使用した。露光量は感光性樹脂組成物の最適露光量となるように活性エネルギー線を照射した。露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によって現像を行ってパターンを描き、150℃×60分の熱硬化をすることにより硬化塗膜を得た。
得られたソルダーレジスト用感光性樹脂組成物の硬化塗膜の最小残存ラインを200倍に調整した光学顕微鏡を用いて求めた(解像性)。
【0078】
特性試験:
上記各実施例及び比較例の組成物を、パターン形成されたポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥し、(ドライフィルムの場合は熱ラミネートし)室温まで放冷する。この基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)をもちいて最適露光量でソルダーレジストパターンを露光し、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、レジストパターンを得た。この基板を、150℃で60分加熱して硬化した。得られたプリント基板(評価基板)に対して以下のように特性を評価した。
【0079】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した評価基板を、予め260℃に設定したはんだ槽に浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の膨れ・剥がれについて評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:10秒間浸漬を1回で剥がれが認められない。
△:10秒間浸漬を1回で少し剥がれる。
×:10秒間浸漬を1回でレジスト層に膨れ、剥がれがある。
【0080】
<耐無電解金めっき性>
評価基板に、市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、テープピーリングにより、レジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した後、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:染み込み、剥がれが見られない。
△:めっき後にほんの僅かしみ込みが見られ、テープピール後に剥がれも見られる。
×:めっき後に剥がれが有る。
【0081】
<電気特性>
銅箔基板に代えてIPC B−25のクシ型電極Bクーポンを用い、上記の条件で評価基板を作製し、このクシ型電極にDC100Vのバイアス電圧を印加し、85℃、85%R.H.の恒温恒湿槽にて1,000時間後のマイグレーションの有無を確認した。判定基準は以下のとおりである。
○:全く変化が認められないもの
△:ほんの僅か変化したもの
×:マイグレーションが発生しているもの
【0082】
<耐酸性>
評価基板を10vol%HSO水溶液に室温で30分間浸漬し、染み込みや塗膜の溶け出し、さらにテープビールによる剥がれを確認した。判定基準は以下のとおり。
○:染み込み、溶け出し、剥がれなし。
△:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが少し確認される。
×:染み込み、溶け出し、もしくは剥がれが大きく確認される。
【0083】
<難燃性>
各実施例及び比較例の組成物を、25μm厚のポリイミドフィルム(カプトン100H)にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷する。さらに裏面を同様にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で20分乾燥して室温まで放冷し両面塗布基板を得た。この基板にメタルハライドランプ搭載の露光装置(HMW−680−GW20)を用いて最適露光量でソルダーレジストを全面露光し、30℃の1%NaCO水溶液をスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、150℃で60分間熱硬化を行い評価サンプルとした。この難燃性評価用サンプルついて、UL94規格に準拠した薄材垂直燃焼試験を行った。評価はUL94規格に基づいて、VTM−0又はVTM−1と表した。
【0084】
<可撓性(耐折性)の評価>
難燃性評価用サンプルと同様に作成したサンプルを、ハゼ折りにより180°折り曲げを数回繰り返して行い、その際のカバーレイにおけるクラック発生状況を目視及びx200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生し無かった回数を評価した。
【0085】
前記各評価試験の結果を表2にまとめて示す。
【表2】

【0086】
実施例9
表1に示す実施例4に従って調製した感光性樹脂組成物をメチルエチルケトンで希釈し、キャリアフィルム上に塗布し、加熱乾燥して、厚さ20μmの感光性樹脂組成物層を形成し、その上にカバーフィルムを貼り合わせてドライフィルムを得た。その後、カバーフィルムを剥がし、パターン形成された銅箔基板に、フィルムを貼り合わせ、次いで、キャリアフィルムを剥がし、80℃の熱風乾燥器で30分、乾燥させ、その後、150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化を行ない、試験基板を作製した。得られた硬化皮膜を有する試験基板について、前述した試験方法及び評価方法にて、各特性の評価試験を行なった。結果は、実施例4と同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)リン元素含有アクリレート、(C)光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記光重合開始剤(C)が、オキシム系光重合開始剤(C’)であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビフェニル骨格、ビキシレノール骨格もしくはその水添骨格である構造を有する樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、ウレタン構造を有する樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、2個以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有する樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン元素含有アクリレート(B)が、下記一般式(I)で示される誘導体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、Rは、アクリレート残基を表す。)
【請求項7】
前記光重合開始剤(C)が、下記一般式(II)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(C1)、又は、該オキシムエステル系光重合開始剤(C1)と、下記一般式(III)で表されるアミノアセトフェノン系光重合開始剤(C2)及び/又は下記一般式(IV)で表されるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(C3)との混合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、Rは、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
は、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又はアリールアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は2つが結合した環状アルキルエーテル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基、又はハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基を表し、但し、R及びRの一方は、R−C(=O)−基(ここでRは、炭素数1〜20の炭化水素基)を表してもよい)。
【請求項8】
前記一般式(II)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(C1)が、下記式(V)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤であることを特徴とする請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

【請求項9】
前記一般式(II)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤(C1)が、下記式(VI)で表されるオキシムエステル系光重合開始剤であることを特徴とする請求項7に記載の感光性樹脂組成物
【化4】

(式中、R10は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、又はフェノキシカルボニル基を表し、
11、R13は、それぞれ独立に、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表し、
12は、水素原子、フェニル基(炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)、炭素数1〜20のアルキル基(1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい)、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1〜6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されていてもよい)を表す。)
【請求項10】
さらに(D)熱硬化成分を含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱硬化成分(D)がエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項10に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
さらに有機リン系難燃剤(E)を含有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記有機リン系難燃剤(E)が、エポキシ樹脂と反応可能な反応性基を有する有機リン系難燃剤であることを特徴とする請求項12に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記請求項1乃至13のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を、キャリアフィルムに塗布・乾燥して得られる感光性ドライフィルム。
【請求項15】
前記請求項1乃至13のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、又は前記請求項14に記載の感光性ドライフィルムを、銅上にて光硬化して得られる硬化物。
【請求項16】
前記請求項1乃至13のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、又は前記請求項14に記載の感光性ドライフィルムを、光硬化して得られるレジストパターンを有するフレキシブル配線板。
【請求項17】
前記請求項1乃至13のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物、又は前記請求項14に記載の感光性ドライフィルムがフレキシブル配線板用ソルダーレジストであることを特徴とする感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−299293(P2008−299293A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148647(P2007−148647)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】