説明

感光性樹脂組成物及びパターン形成方法

【課題】成膜した際の基板との密着性に優れ、高膜厚、高アスペクト比の微細な樹脂パターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】感光性樹脂組成物に密着増強剤としてジフェニルスルホン又はその誘導体を含有させる。ジフェニルスルホン誘導体としては、ジフェニルスルホンの1以上の水素原子がアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フッ素原子、塩素原子、又は酸無水物で置換されたものが好ましい。その中でも、ジフェニルスルホンの3,3’位及び/又は4,4’位の水素原子がアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フッ素原子、塩素原子、又は酸無水物で置換されたものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、回路基板の製造、回路基板に実装するCSP(チップサイズパッケージ)、微小電気機械システム(MEMS)素子及びMEMS素子を組み込んだ小型機械(マイクロマシン)、並びに高密度実装を行うための貫通電極などの電子部品の製造において、バンプやメタルポストなどの接続端子、配線パターンなどの形成に好適に用いられる感光性樹脂組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、精密微細加工技術の主流となっているホトファブリケーションとは、感光性樹脂組成物を被加工物表面に塗布して塗膜を形成し、ホトリソグラフィー技術によって塗膜をパターニングし、これをマスクとして化学エッチング、電解エッチング、及び/又は電気メッキを主体とするエレクトロフォーミングを行って、半導体パッケージなどの各種精密部品を製造する技術の総称である。
【0003】
近年、電子機器のダウンサイジングに伴い、半導体パッケージの高密度実装技術が進み、パッケージの多ピン薄膜実装化、パッケージサイズの小型化、フリップチップ方式による2次元実装技術、3次元実装技術に基づいた実装密度の向上が図られている。このような高密度実装技術においては、接続端子として、例えば、パッケージ上に突出したバンプなどの突起電極(実装端子)や、ウエーハ上のペリフェラル端子から延びる再配線と実装端子とを接続するメタルポストなどが基板上に高精度に配置される。
【0004】
上記のようなホトファブリケーションに使用される材料として厚膜用の感光性樹脂組成物がある。この感光性樹脂組成物は、厚膜ホトレジスト層を形成するものであり、例えば、メッキ工程によるバンプやメタルポストの形成などに用いられている。バンプやメタルポストは、例えば、支持体上に膜厚約20μmの厚膜ホトレジスト層を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像して、バンプやメタルポストを形成する部分が選択的に除去(剥離)されたレジストパターンを形成し、この除去された部分(非レジスト部)に銅などの導体をメッキによって埋め込んだ後、その周囲のレジストパターンを除去することにより形成することができる。
【0005】
厚膜用の感光性樹脂組成物としては、パンプ形成用や配線形成用として用いられるキノンジアジド基含有化合物を含有するポジ型の感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
一方、従来のキノンジアジド基含有化合物を含有する感光性樹脂組成物よりも高感度な感光性樹脂組成物として、酸発生剤を含有する化学増幅型の感光性樹脂組成物が知られている。化学増幅型の感光性樹脂組成物の特徴は、放射線照射(露光)により、酸発生剤から酸が発生し、露光後の加熱処理により酸の拡散が促進されて、樹脂組成物中のベース樹脂などに対し酸触媒反応を起こし、そのアルカリ溶解性を変化させることである。
【0007】
化学増幅型の感光性樹脂組成物には、放射線照射により、アルカリ不溶であったものがアルカリ可溶化するポジ型と、アルカリ可溶であったものがアルカリ不溶化するネガ型とがある。
このうち、ポジ型のものとしては、例えば、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの酸解離性官能基を有する繰り返し単位を含む樹脂、及びオニウム塩化合物などの酸発生剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献2参照)。
また、ネガ型のものとしては、例えば、エポキシ官能性ノボラック樹脂、トリアリールスルホニウム塩などの酸発生剤、及びエポキシ反応基と反応可能な希釈剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−258479号公報
【特許文献2】特開2001−281862号公報
【特許文献3】特公平7−78628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の化学増幅型の感光性樹脂組成物においては、成膜した際の基板との密着性が十分でないという問題があった。基板との密着性を向上させる密着増強剤としては、従来からシランカップリング剤が知られているが、特にエポキシ系樹脂を含有するネガ型の感光性樹脂組成物の場合、金、銅などの基板との密着性が非常に悪く、シランカップリング剤を添加しても、高膜厚、高アスペクト比の微細な樹脂パターンを形成することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成膜した際の基板との密着性に優れ、高膜厚、高アスペクト比の微細な樹脂パターンを形成することが可能な感光性樹脂組成物、及びそれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、感光性樹脂組成物に所定の化合物を含有させれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0011】
本発明の第一の態様は、密着増強剤としてジフェニルスルホン又はその誘導体を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0012】
本発明の第二の態様は、本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥してから所定のパターンに露光した後、現像して、所定形状の樹脂パターンを得ることを特徴とするパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、成膜した際の基板との密着性に優れるため、高膜厚、高アスペクト比の微細な樹脂パターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、密着増強剤としてジフェニルスルホン又はその誘導体を含有することを特徴とする。この感光性樹脂組成物は、ネガ型のものであってもポジ型のものであってもよい。以下、感光性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0015】
〔ネガ型感光性樹脂組成物〕
ネガ型感光性樹脂組成物としては、多官能エポキシ樹脂(A)、活性光線又は放射線照射により酸を発生する酸発生剤(B)、及び密着増強剤(C)を基本成分とし、必要に応じて高分子直鎖2官能エポキシ樹脂(D)などを含むものが好ましく、これらの各成分を溶剤(E)に溶解した溶液の形で用いるのが好ましい。多官能エポキシ樹脂(A)と酸発生剤(B)とを組み合わせて用いると、露光部分で発生した酸により、その部分がカチオン重合してアルカリ不溶性となり、現像の際に未露光部分だけが選択的に除去されて所定形状の樹脂パターンが得られる。
【0016】
(多官能エポキシ樹脂(A))
ネガ型感光性樹脂組成物は、ベース樹脂として多官能エポキシ樹脂(A)(以下、適宜「(A)成分」という。)を含有する。
この(A)成分としては特に限定されないが、厚膜の樹脂パターンを形成するのに十分なエポキシ基を1分子中に有するものが好ましい。このような(A)成分としては、多官能フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、多官能オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能トリフェニル型ノボラック型エポキシ樹脂、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。その中でも、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。その官能性は5官能以上が好ましく、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の「jER157S70」や、大日本インキ化学工業社製の「エピクロンN−885」が市販品として入手でき、特に好ましく用いられる。
【0017】
上記多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂は、下記一般式(a1)で表される。
【0018】
【化1】

【0019】
上記一般式(a1)中、R1a〜R6aは、水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位である。上記一般式(a1)で表されるビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂と重合した重合体でもよい。
【0020】
(A)成分の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物中の固形分に対して、80〜99.9質量%であることが好ましく、92〜99.4質量%であることがより好ましい。これにより、高感度で適当な硬度の樹脂パターンが得られる。
【0021】
(酸発生剤(B))
ネガ型感光性樹脂組成物は、活性光線又は放射線照射により酸を発生する酸発生剤(B)(以下、適宜「(B)成分」という。)を含有する。この酸発生剤(B)から発生した酸が多官能エポキシ樹脂(A)の重合反応を触媒する。
【0022】
このような(B)成分の第一の態様としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−ピペロニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−エチル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(5−プロピル−2−フリル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジエトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,5−ジプロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−エトキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3−メトキシ−5−プロポキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エテニル]−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリス(1,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)−1,3,5−トリアジンなどのハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの下記一般式(b1)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0023】
【化2】

【0024】
上記一般式(b1)中、R1b〜R3bは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜6である。
【0025】
また、(B)成分の第二の態様としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロフェニルアセトニトリル、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記一般式(b2)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化3】

【0027】
上記一般式(b2)中、R4bは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R5bは、置換、未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは1〜6の整数である。
【0028】
上記一般式(b2)中、R4bは、芳香族性化合物基であることが特に好ましく、このような芳香族性化合物基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基や、フリル基、チエニル基などの複素環基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基などを1個以上有していてもよい。また、R5bとしては炭素数1〜6の低級アルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0029】
上記一般式(b2)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R4bがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R5bがメチル基の化合物、具体的にはα−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メチルフェニル)アセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−(p−メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロキシチオフェン−3−イリデン〕(o−トリル)アセトニトリルなどが挙げられる。n=2のとき、上記一般式(b2)で表される酸発生剤としては、具体的には下記化学式(b2−1)〜(b2−8)で表される酸発生剤が挙げられる。
【0030】
【化4】

【0031】
さらに、(B)成分の第三の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩を用いることができる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基などの置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1〜3が好ましい。
【0032】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記一般式(b3)で表される構造が好ましい。
【0033】
【化5】

【0034】
上記一般式(b3)中、R6b〜R8bのうち少なくとも1つは下記一般式(b4)で表される基を表し、残りは炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ヒドロキシル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R6b〜R8bのうちの1つが下記一般式(b4)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立して炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0035】
【化6】

【0036】
上記一般式(b4)中、R9b、R10bは、それぞれ独立してヒドロキシル基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R11bは、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、p及びqはそれぞれ独立して0〜2の整数であり、p+qは3以下である。ただし、R10bが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R9bが複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
上記R6b〜R8bのうち、前記一般式(b4)で表される基の数は、化合物の安定性の点から、好ましくは1つであり、残りは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3〜9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5〜6である。
【0038】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、ヒドロキシル基などが挙げられる。
【0039】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、ヒドロキシル基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基などが挙げられる。
【0040】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記化学式(b5)、(b6)で表されるものなどを挙げることができ、特に化学式(b6)で表される構造が好ましい。
【0041】
【化7】

【0042】
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率などの点からスルホニウム塩が望ましい。
【0043】
したがって、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0044】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンが挙げられる。
【0045】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1〜10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。具体的には、安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基などを挙げることができる。
【0046】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられ、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には好ましいものとして、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基などを挙げることができる。
【0047】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネートなどが挙げられる。
【0048】
中でも、好ましいアニオン部としては、下記一般式(b7)で表されるものが挙げられる。
【0049】
【化8】

【0050】
上記一般式(b7)において、R12bは、下記一般式(b8)、(b9)で表される構造や、化学式(b10)で表される構造である。
【0051】
【化9】

【0052】
上記一般式(b8)中、lは1〜4の整数であり、一般式(b9)中、R13bは水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を示し、mは1〜3の整数である。中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0053】
また、アニオン部としては、下記一般式(b11)、(b12)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0054】
【化10】

【0055】
上記一般式(b11)、(b12)中、Xb1は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは3〜5、最も好ましくは炭素数3である。また、Xb2、Xb3は、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜3である。
【0056】
b1のアルキレン基の炭素数又はXb2、Xb3のアルキル基の炭素数が小さいほどレジスト溶媒への溶解性も良好であるため好ましい。
【0057】
また、Xb1のアルキレン基又はXb2、Xb3のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0058】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記化学式(b13)、(b14)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【化11】

【0060】
さらに、(B)成分の別の態様としては、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタンなどのビススルホニルジアゾメタン類;p−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナートなどのニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N−メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N−フェニルスルホニルオキシマレイミド、N−メチルスルホニルオキシフタルイミドなどのスルホン酸エステル;N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシナフタルイミドなどのトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのオニウム塩;ベンゾイントシラート、α−メチルベンゾイントシラートなどのベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナートなどが挙げられる。
【0061】
さらに、(B)成分の第四の態様としては、下記一般式(b15)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化12】

【0063】
上記一般式(b15)中、Xb4は、原子価sの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、sは1又は2である。nは繰り返し単位数である。R14bは、Xb4に結合している有機基であり、炭素数6〜30のアリール基、炭素数4〜30の複素環基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、又は炭素数2〜30のアルキニル基を表し、R14bは、アルキル、ヒドロキシ、アルコシキ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコシキカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R14bの個数はs+n(s−1)+1であり、R14aはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR14bが互いに直接、又は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR15a−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、Xb4を含む環構造を形成してもよい。R15bは、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表す。
【0064】
b5は下記一般式(b16)で表される構造である。
【0065】
【化13】

【0066】
上記一般式(b16)中、Xb7は炭素数1〜8のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、又は炭素数8〜20の複素環化合物の2価の基を表し、Xb7は炭素数1〜8のアルキル、炭素数1〜8のアルコキシ、炭素数6〜10のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。Xb8は−O−、−S−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR15b−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。nは繰り返し単位数を表す。n+1個のXb7及びn個のXb8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R15bは前述の定義と同じである。
【0067】
b6−はオニウムの対イオンである。その個数は1分子当たりn+1であり、そのうち少なくとも1個は下記一般式(b17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンであって、残りは他のアニオンであってもよい。
【0068】
【化14】

【0069】
上記一般式(b17)中、R16bは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。tはその個数を表し、1〜5の整数である。t個のR16bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0070】
上記一般式(b15)で表されるオニウムイオンの好ましい具体例としては、トリフェニルスルホニウム、トリ−p−トリルスルホニウム、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4−{ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4−[ビス(4−フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4−(4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ)フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジ−p−トリルスルホニウム、7−イソプロピル−9−オキソ−10−チア−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルジフェニルスルホニウム、2−[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4−[4−(4−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ−p−トリルスルホニウム、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2−ナフチルメチル(1−エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ−p−トリルヨードニウム、ビス(4−ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−メトキシフェニル)ヨードニウム、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4−デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルヨードニウム、4−イソプロピルフェニル(p−トリル)ヨードニウム、又は4−イソブチルフェニル(p−トリル)ヨードニウムが挙げられる。
【0071】
上記一般式(b15)のアニオン成分は、上記一般式(b17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンを少なくとも1個有する。残りのアニオン成分は他のアニオンであってよい。他のアニオンとしては、特に限定されず、従来公知のアニオンを用いることができる。例えば、F、Cr、Br、Iなどのハロゲンイオン;OH;ClO;FSO、ClSO、CHSO、CSO、CFSOなどのスルホン酸イオン類;HSO、SO2−などの硫酸イオン類;HCO、CO2−などの炭酸イオン類;HPO、HPO2−、PO3−などのリン酸イオン類;PF、PFOHなどのフルオロリン酸イオン類;BF、B(C、B(CCFなどのホウ酸イオン類;AlCl;BiFなどが挙げられる。その他、SbF、SbFOHなどのフルオロアンチモン酸イオン類、あるいはA、AsFOHなどのフルオロヒ素酸イオン類も挙げられる。
【0072】
上記一般式(b17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R16bはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1〜8、さらに好ましい炭素数は1〜4である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクヘキシルなどのシクロアルキル基などが挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記一般式(a15)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0073】
特に好ましいR16bは、炭素数が1〜4、かつフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF、CFCF、(CFCF、CFCFCF、CFCFCFCF、(CFCFCF、CFCF(CF)CF、(CFCが挙げられる。R16bの個数tは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4、特に好ましくは2又は3である。
【0074】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CFCFPF、[(CFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[(CFCFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[((CFCFCFPF、[(CFCFCFCFPF、又は[(CFCFCFPFが挙げられ、これらのうち、[(CFCFPF、[(CFCFCFPF、[((CFCF)PF、[((CFCF)PF、[((CFCFCFPF、又は[((CFCFCFPFが特に好ましい。
【0075】
上記一般式(b15)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩のうち、下記一般式(b18)で表されるジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスフルオロアルキルホスファートが特に好ましく用いられる。
【0076】
【化15】

【0077】
上記一般式(b18)中、uは1〜8の整数であり、好ましくは1〜4の整数である。
【0078】
(B)成分として、好ましくは一般式(b2)、(b18)の中から選ばれる少なくとも1種を用いるものであって、一般式(b2)中、好ましいnの値は2であり、また、好ましいR4bは、2価の炭素数1〜8の置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換の芳香族基であり、また、好ましいR5bは、炭素数1〜8の置換若しくは非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアリール基である。
【0079】
上述したような(B)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜20質量部であることが好ましい。(B)成分の含有量を0.5質量部以上とすることで十分な感度が得られるようになり、20質量部以下とすることで溶剤に対する溶解性が向上して均一な溶液が得られ、保存安定性が向上する傾向がある。
【0081】
(密着増強剤(C))
ネガ型感光性樹脂組成物は、成膜した際の基板との密着性を向上させる密着増強剤(C)(以下、適宜「(C)成分」という。)として、ジフェニルスルホン又はその誘導体を含有する。
ジフェニルスルホン誘導体としては、ジフェニルスルホンの1以上の水素原子がアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フッ素原子、塩素原子、又は酸無水物で置換されたものが好ましい。その中でも、ジフェニルスルホンの3,3’位及び/又は4,4’位の水素原子がアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フッ素原子、塩素原子、又は酸無水物で置換されたものが好ましい。酸無水物で置換されたジフェニルスルホン誘導体としては、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0082】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。ただし、(C)成分がアミノ基又はニトロ基を有する場合、これらの官能基が(B)成分から発生した酸を失活させるため、(A)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜2質量部であることがより好ましい。これにより、成膜した際の基板との密着性を向上させることができる。
【0083】
このジフェニルスルホン又はその誘導体は、ベース樹脂の種類によらず、基板との密着性を向上させることができるが、その密着増強効果は、ベース樹脂として多官能エポキシ樹脂(A)のようなエポキシ系樹脂を用いたときに特に顕著である。エポキシ系樹脂を含有するネガ型感光性樹脂組成物は、金、銅などの基板との密着性が非常に悪いが、(C)成分としてジフェニルスルホン又はその誘導体を含有させることにより、金基板上や銅基板上においても、高膜厚、高アスペクト比の微細な樹脂パターンを形成することができるようになる。
【0084】
(高分子直鎖2官能エポキシ樹脂(D))
ネガ型感光性樹脂組成物は、成膜性を改善するために、高分子直鎖2官能エポキシ樹脂(D)(以下、適宜「(D)成分」という。)を含有してもよい。この(D)成分は、具体的にはビスフェノールA型エポキシ又はビスフェノールF型エポキシが重合したものであり、質量平均分子量2,000〜7,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜5,000である。質量平均分子量を1,000以上とすることで成膜性が良好となり、7,000以下とすることで、上記(A)成分との相溶性が維持できる。この(D)成分としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の「エピコート1009」(質量平均分子量3,750)が好ましく用いられる。
【0085】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがより好ましい。(D)成分の含有量を1質量部以上とすることで成膜性が改善し、30質量部以下とすることで他の成分、特に(A)成分とのバランスをとることができる。
【0086】
(溶剤(E))
ネガ型感光性樹脂組成物は、その使用に当たっては上記各成分を溶剤(E)(以下、適宜「(E)成分」という。)に溶解した溶液の形で用いるのが好ましい。このような(E)成分としては、特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。例えば、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、炭酸プロピレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、メチルアミルケトン、2−ヘプタノン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどが挙げられる。この中でも、反応して感光性樹脂層中に取り込まれる観点から、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、炭酸プロピレンが好ましく用いられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0087】
(E)成分の使用量は、ネガ型感光性樹脂組成物を使用して得られる感光性樹脂層の膜厚が1μm以上となるように、固形分濃度が5〜30質量%となる範囲が好ましい。
【0088】
(その他成分)
ネガ型感光性樹脂組成物は、感度を向上させるために、上記多官能エポキシ樹脂(A)と架橋形成可能なナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体などの増感剤を含有してもよい。このような増感剤の増感機能により、多官能エポキシ樹脂の架橋密度を向上させ、感光性樹脂層自体を高密度化でき、感光性樹脂層を高硬度化、低吸水率化できる。さらには、複数の芳香環を有することから、感光性樹脂層を高Tg化、高硬度化、低熱膨張率化できる。
【0089】
また、ネガ型感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の硬化後の物性を低下させずに、硬化前の感光性樹脂組成物の柔軟性を向上させる観点から、オキセタン誘導体やエポキシ誘導体を含有してもよい。さらには、所望により、混和性のある添加剤、例えば、パターン性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤などの従来公知のものを適宜含有してもよい。
【0090】
〔ポジ型感光性樹脂組成物〕
ポジ型感光性樹脂組成物としては、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(F)、並びに上記と同様の酸発生剤(B)及び密着増強剤(C)を基本成分とし、必要に応じてアルカリ可溶性樹脂(G)などを含むものが好ましく、これらの各成分を溶剤(E)に溶解した溶液の形で用いるのが好ましい。酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(F)としては、アルカリ可溶性樹脂のヒドロキシル基が酸解離性溶解抑制基で保護されてアルカリ不溶性になっている樹脂が用いられる。このような樹脂(F)と酸発生剤(B)とを組み合わせて用いると、露光部分で発生した酸により酸解離性溶解抑制基が解離する。その結果、その露光部分がアルカリ可溶性となり、現像の際に露光部分だけが選択的に除去されて所定形状の樹脂パターンが得られる。
【0091】
(酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(F))
ポジ型感光性樹脂組成物は、ベース樹脂として、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂(F)(以下、適宜「(F)成分」という。)を含有する。
この(F)成分としては、ノボラック樹脂(F1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(F2)、及びアクリル樹脂(F3)、からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂、又はこれらの混合樹脂が用いられる。
【0092】
<ノボラック樹脂(F1)>
ノボラック樹脂(F1)としては、下記一般式(f1)で表される樹脂を使用することができる。
【0093】
【化16】

【0094】
上記一般式(f1)中、R1fは、酸解離性溶解抑制基を表し、R2f、R3fは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは繰り返し単位数を表す。
【0095】
さらに、上記R1fで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(f2)、(f3)で表される、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、テトラヒドロピラニル基、テトラフラニル基、又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0096】
【化17】

【0097】
上記一般式(f2)、(f3)中、R4f、R5fは、それぞれ独立して水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R6fは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、R7fは、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、oは0又は1である。
【0098】
上記炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0099】
ここで、上記一般式(f2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert−ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基などが挙げられ、上記一般式(f3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基などが挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ−tert−ブチルジメチルシリル基などの各アルキル基の炭素数が1〜6のものが挙げられる。
【0100】
<ポリヒドロキシスチレン樹脂(F2)>
ポリヒドロキシスチレン樹脂(F2)としては、下記一般式(f4)で表される樹脂を使用することができる。
【0101】
【化18】

【0102】
上記一般式(f4)中、R8fは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R9fは、酸解離性溶解抑制基を表し、nは繰り返し単位数を表す。
【0103】
上記炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0104】
上記R9fで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記一般式(f2)、(f3)に例示したものと同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0105】
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(F2)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物類などを挙げることができる。
【0106】
<アクリル樹脂(F3)>
アクリル樹脂(F3)としては、下記一般式(f5)〜(f7)で表される樹脂を使用することができる。
【0107】
【化19】

【0108】
上記一般式(f5)〜(f7)中、R10f〜R17fは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、フッ素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基を表し(ただし、R11bが水素原子であることはない)、Xは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の炭化水素環を形成し、Yは、置換基を有していてもよい脂肪族環式基又はアルキル基を表し、nは繰り返し単位数を表し、pは0〜4の整数であり、qは0又は1である。
【0109】
なお、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、フッ素化アルキル基とは、上記アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されたものである。
【0110】
上記R11fとしては、高コントラストで、解像度、焦点深度幅などが良好な点から、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましく、上記R13f、R14f、R16f、R17fとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0111】
上記Xは、それが結合している炭素原子とともに炭素数5〜20の脂肪族環式基を形成する。このような脂肪族環式基の具体例としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。特に、シクロヘキサン、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0112】
さらに、上記Xの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)などの極性基や、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の低級アルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0113】
上記Yは、脂肪族環式基又はアルキル基であり、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。特に、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基(さらに置換基を有していてもよい)が好ましい。
【0114】
さらに、上記Yの脂肪族環式基が、その環骨格上に置換基を有する場合、該置換基の例としては、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、酸素原子(=O)などの極性基や、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状の低級アルキル基が挙げられる。極性基としては特に酸素原子(=O)が好ましい。
【0115】
また、Yがアルキル基である場合、炭素数1〜20、好ましくは6〜15の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基は、特にアルコキシアルキル基であることが好ましく、このようなアルコキシアルキル基としては、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−エトキシプロピル基、1−メトキシ−1−メチル−エチル基、1−エトキシ−1−メチルエチル基などが挙げられる。
【0116】
上記一般式(f5)で表されるアクリル樹脂の好ましい具体例としては、下記一般式(f5−1)〜(f5−3)で表されるものを挙げることができる。
【0117】
【化20】

【0118】
上記一般式(f5−1)〜(f5−3)中、R18fは、水素原子又はメチル基を表し、nは繰り返し単位数を表す。
【0119】
上記一般式(f6)で表されるアクリル樹脂の好ましい具体例としては、下記一般式(f6−1)〜(f6−28)で表されるものを挙げることができる。
【0120】
【化21】

【0121】
【化22】

【0122】
上記一般式(f7)で表されるアクリル樹脂の好ましい具体例としては、下記一般式(f7−1)〜(f7−22)で表されるものを挙げることができる。
【0123】
【化23】

【0124】
【化24】

【0125】
【化25】

【0126】
さらに、アクリル樹脂(F3)は、上記一般式(f5)〜(f7)で表される構成単位に対して、さらにエーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位を含む共重合体からなる樹脂であることが好ましい。
【0127】
このような構成単位は、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位である。エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどのエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などのラジカル重合性化合物を例示することができ、好ましくは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
さらに、アクリル樹脂(F3)には、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物を構成単位として含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類;2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどのビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物類などを挙げることができる。
【0129】
上記の中でも、アクリル樹脂(F3)を用いることが好ましい。
【0130】
このようなアクリル樹脂(F3)の中でも、上記一般式(f7)で表される構成単位と、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導された構成単位と、(メタ)アクリル酸単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類からなる構成単位とを有する共重合体であることが好ましい。
【0131】
このような共重合体としては、下記一般式(f8)で表される共重合体であることが好ましい。
【0132】
【化26】

【0133】
上記一般式(f8)中、R20fは、水素原子又はメチル基を表し、R21fは、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はアルコキシアルキル基を表し、R22fは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、Xは前記のものと同じである。
【0134】
さらに、上記一般式(f8)で表される共重合体において、s、t、uは、それぞれ質量比で、sは1〜30質量%であり、tは20〜70質量%であり、uは20〜70質量%である。
【0135】
また、(F)成分の質量平均分子量は、10,000〜600,000であることが好ましく、50,000〜600,000であることがより好ましく、230,000〜550,000であることがさらに好ましい。これにより、基板との剥離性が低下することなく、感光性樹脂層の十分な強度を保持でき、さらにはメッキ時のプロファイルの膨れや、クラックの発生を引き起こすことがなくなる。
【0136】
さらに、(F)成分は、分散度が1.05以上であることが好ましい。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。このような分散度とすることにより、所望とするメッキに対する応力耐性や、メッキ処理により得られる金属層が膨らみやすくなるという問題を回避できる。
【0137】
(F)成分の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物中の固形分に対して、5〜60質量%であることが好ましい。
【0138】
(酸発生剤(B))
酸発生剤(B)としては、上記ネガ型感光性樹脂組成物における酸発生剤と同様のものが用いられる。
(B)成分の含有量は、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分に対して、0.05〜5質量%であることが好ましい。(B)成分の含有量を0.05質量%以上とすることによって十分な感度が得られるようになり、5質量%以下とすることによって溶剤に対する溶解性が向上して均一な溶液が得られ、保存安定性が向上する傾向がある。
【0139】
(密着増強剤(C))
密着増強剤(C)としては、上記ネガ型感光性樹脂組成物における密着増強剤と同様のものが用いられる。
(C)成分の含有量は、(F)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。ただし、(C)成分がアミノ基又はニトロ基を有する場合、これらの官能基が(B)成分から発生した酸を失活させるため、(F)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.01〜2質量部であることがより好ましい。これにより、成膜した際の基板との密着性を向上させることができる。
【0140】
(アルカリ可溶性樹脂(G))
ポジ型感光性樹脂組成物は、クラック耐性を向上させるために、アルカリ可溶性樹脂(G)(以下、適宜「(G)成分」という。)を含有してもよい。(G)成分としては、ノボラック樹脂(G1)、ポリヒドロキシスチレン樹脂(G2)、アクリル樹脂(G3)、及びポリビニル樹脂(G4)、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0141】
<ノボラック樹脂(G1)>
ノボラック樹脂(G1)としては、質量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0142】
このようなノボラック樹脂(G1)は、例えばフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」と称する。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られる。この際に使用されるフェノール類としては、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトールなどが挙げられる。
【0143】
また、アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒドなどが挙げられる。付加縮合反応時の触媒は、特に限定されるものではないが、例えば酸触媒では、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸などが使用される。
【0144】
なお、o−クレゾールを使用すること、樹脂中の水酸基の水素原子を他の置換基に置換すること、あるいは嵩高いアルデヒド類を使用することにより、樹脂の柔軟性を一層向上させることが可能である。
【0145】
<ポリヒドロキシスチレン樹脂(G2)>
ポリヒドロキシスチレン樹脂(G2)としては、質量平均分子量が1,000〜50,000であることが好ましい。
【0146】
このようなポリヒドロキシスチレン樹脂(G2)を構成するヒドロキシスチレン系化合物としては、p−ヒドロキシスチレン、α−メチルヒドロキシスチレン、α−エチルヒドロキシスチレンなどが挙げられる。さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂(G2)は、スチレン樹脂との共重合体とすることが好ましく、このようなスチレン樹脂を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
【0147】
<アクリル樹脂(G3)>
アクリル樹脂(G3)としては、質量平均分子量が50,000〜800,000であることが好ましい。
【0148】
このようなアクリル樹脂(G3)としては、エーテル結合を有する重合性化合物から誘導されたモノマー、及びカルボキシル基を有する重合性化合物から誘導されたモノマーを含有することが好ましい。
【0149】
上記エーテル結合を有する重合性化合物としては、2−メトキシエチル(メタ)アクリラート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリラート、3−メトキシブチル(メタ)アクリラート、エチルカルビトール(メタ)アクリラート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリラート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラートなどのエーテル結合及びエステル結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体などを例示することができ、好ましくは、2−メトキシエチルアクリラート、メトキシトリエチレングリコールアクリラートである。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0150】
上記カルボキシル基を有する重合性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基及びエステル結合を有する化合物などを例示することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0151】
<ポリビニル樹脂(G4)>
ポリビニル樹脂(G4)としては、質量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、50,000〜100,000であることがより好ましい。
【0152】
このようなポリビニル樹脂(G4)は、ポリ(ビニル低級アルキルエーテル)であり、下記一般式(g1)で表されるビニル低級アルキルエーテルの単独又は2種以上の混合物を重合することにより得られる(共)重合体からなる。
【0153】
【化27】

【0154】
上記一般式(g1)中、R1gは、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表す。
【0155】
このようなポリビニル樹脂(G4)は、ビニル系化合物から得られる重合体であり、このようなポリビニル樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体などが挙げられる。中でも、ガラス転移点の低さに鑑みてポリビニルメチルエーテルが好ましい。
【0156】
(G)成分の含有量は、上記(F)成分100質量部に対して、5〜95質量部であることが好ましく、10〜90質量部であることがより好ましい。(G)成分の含有量を5質量部以上とすることでクラック耐性を向上させることができ、95質量部以下とすることで現像時の膜減りを防ぐことができる傾向がある。
【0157】
(溶剤(E))
ポジ型感光性樹脂組成物は、その使用に当たっては上記各成分を溶剤(E)に溶解した溶液の形で用いるのが好ましい。このような(E)成分としては、特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0158】
(E)成分の使用量は、ポジ型感光性樹脂組成物を使用して得られる感光性樹脂層の膜厚が1μm以上となるように、固形分濃度が5〜30質量%となる範囲が好ましい。
【0159】
(その他成分)
ポジ型感光性樹脂組成物は、所望により、混和性のある添加物、例えば、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、増感剤、酸拡散制御剤、接着助剤、安定剤、着色剤、レベリング剤などの慣用されているものを添加含有してもよい。
【0160】
[パターン形成方法]
樹脂パターンを形成するに当たっては、まず、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を形成する。
基板としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたものなどを例示することができる。この基板としては、例えば、シリコン、窒化シリコン、チタン、タンタル、パラジウム、チタンタングステン、白金、金、銅、クロム、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの金属製の基板やガラス基板などが挙げられる。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、金基板や銅基板上においても微細な樹脂パターンを形成することができる。配線パターンの材料としては、例えば銅、ハンダ、クロム、アルミニウム、ニッケル、金などが用いられる。
【0161】
具体的には、感光性樹脂組成物を所定の基板上に塗布し、加熱により溶媒を除去することによって所望の感光性樹脂層を形成する。基板上への塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などの方法を採用することができる。加熱条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚などによって異なるが、通常は70〜120℃、好ましくは80〜100℃で、5〜20分間程度である。感光性樹脂層の膜厚は、5〜150μm、好ましくは10〜120μm、より好ましくは10〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0162】
次いで、得られた感光性樹脂層に、活性光線又は放射線、例えば波長が200〜500nmの紫外線又は可視光線を所定のパターンのマスクを介して選択的に照射(露光)する。
【0163】
ここで、活性光線とは、酸を発生するために酸発生剤を活性化させる光線を意味する。放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザーなどを用いることができる。また、放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線、イオン線などを意味する。放射線照射量は、組成物中の各成分の種類、配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100〜10,000mJ/cmである。
【0164】
そして、露光後、公知の方法を用いて加熱することにより酸の拡散を促進させて、次いで、現像液により不要な部分を溶解、除去して所定形状の樹脂パターンを得る。
【0165】
その後、メタルポストやバンプなどの接続端子を形成する場合には、得られた樹脂パターンの凹部(現像液で除去された部分)に、例えばメッキなどによって金属などの導体を埋め込む。なお、メッキ処理方法は特に制限されず、従来から公知の各種方法を採用することができる。メッキ液としては、特にハンダメッキ、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ液が好適に用いられる。残っている樹脂パターンは、最後に、定法に従って剥離液などを用いて除去する。
【実施例】
【0166】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0167】
<実施例1〜3、比較例1>
表1に記載の配合(単位は質量部)に従って、多官能エポキシ樹脂、酸発生剤、密着増強剤、溶剤、及び増感剤を配合したネガ型の感光性樹脂組成物を得た。
【0168】
これら感光性樹脂組成物を、5インチの金基板上にスピンコーターで塗布した後、乾燥させて、30μmの膜厚を有する感光性樹脂層を得た。この感光性樹脂層をホットプレートにより60℃で5分間、90℃で10分間プリベークした。プリベーク後、PLA−501F(コンタクトアライナー:キャノン社製)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、GHI線)を行い、ホットプレートにより90℃で5分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いた浸漬法により、8分間の現像処理を行った。次いで、現像後の樹脂パターンを基板ごと、オーブンを用いて200℃で1時間のポストベークを行い、基板上に硬化した樹脂パターンを得た。
【0169】
<評価>
細線密着性の評価として、600mJ/cmの露光量で形成された樹脂パターンにおいて、最も密着して細かいパターン幅を測定し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0170】
【表1】

(A):多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂:jER157S70(ジャパンエポキシレジン社製 商品名)
(B):酸発生剤:ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
(C−1):密着増強剤:3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
(C−2):密着増強剤:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
(C−3):密着増強剤:ジフェニルスルホン
(C−4):密着増強剤(シランカップリング剤):KBM−403(信越シリコーン社製 商品名)
(E):溶剤:γ−ブチロラクトン
(S):増感剤:α−ナフトール
【0171】
表1から分かるように、ジフェニルスルホン又はその誘導体を密着増強剤として用いた実施例1〜3の感光性樹脂組成物によれば、多官能エポキシ樹脂100質量部に対して密着増強剤を1質量部配合することにより、金基板上で4μmの微細な樹脂パターンが密着した。一方、シランカップリング剤を密着増強剤として用いた比較例1の感光性樹脂組成物によれば、多官能エポキシ樹脂100質量部に対して密着増強剤を5質量部配合しても、金基板上で80μmの樹脂パターンが密着しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密着増強剤としてジフェニルスルホン又はその誘導体を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記密着増強剤は、ジフェニルスルホンの1以上の水素原子がアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フッ素原子、塩素原子、又は酸無水物で置換されたジフェニルスルホン誘導体を含むことを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記密着増強剤は、ジフェニルスルホンの3,3’位及び/又は4,4’位の水素原子がアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、フッ素原子、塩素原子、又は酸無水物で置換されたジフェニルスルホン誘導体を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、多官能エポキシ樹脂と、活性光線又は放射線照射により酸を発生する酸発生剤と、を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能エポキシ樹脂100質量部に対して、前記密着増強剤を0.01〜20質量部含有することを特徴とする請求項4記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
金基板上に感光性樹脂層を形成するために用いられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、乾燥してから所定のパターンに露光した後、現像して、所定形状の樹脂パターンを得ることを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2008−310001(P2008−310001A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157316(P2007−157316)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】